説明

視線誘導灯及びこれを用いた自発光視線誘導システム

【課題】視線誘導灯の低コスト化及び高信頼性を提供する。
【解決手段】発光視線誘導システムAは、道路やトンネル等に沿って所定間隔を開けて複数配置された視線誘導灯1と、視線誘導灯1の発光を遠隔制御するために調光用駆動電圧eを生成して各視線誘導灯1に供給する道路管理側制御部2とを備える。視線誘導灯1は、発光部20と、発光部20が接続可能な多出力端子18と、電力線を通じて調光用駆動電圧eが入力可能な入力端子11と、調光用駆動電圧eに基づいて発光部20を点灯させるのに必要な駆動電圧Eを生成して多出力端子18に切替可能に出力する電源部10と、発光部20に流れる駆動電流Iの大きさを調節する駆動電流調節部30と、調光用駆動電圧eの大きさの大きさ、波形及び極性を検知するとともに当該検知結果に基づいて電源部10及び駆動電流調節部30を制御する発光制御部40とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は安全且つ円滑な自動車走行を目的として道路やトンネル等に設置される視線誘導灯及びこれを用いた自発光視線誘導システムに関する。
【背景技術】
【0002】
最近、昼間にも注意喚起を行うことが可能なLEDを用いた視線誘導灯が普及しつつある。このような視線誘導灯の点灯/消灯の切り替えや光量調整等については、従来の視線誘導灯と変わりなく有線方式や無線方式による遠隔制御で行なわれるのが一般的である。
【0003】
有線方式の場合、電力線を利用するケースが多く、商用交流に制御信号を重畳して遠隔制御していた(特許文献1等)。一方、無線方式の場合、電波により遠隔制御していた(特許文献2等)。
【0004】
【特許文献1】特開2003-134577 号公報
【特許文献2】特開平5-109000号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来例による場合、以下のような種々の欠点が指摘されている。即ち、有線方式の場合、特別な回線の敷設が不要であるものの、変調信号が高周波であることから他の機器に影響を与えないようにノイズ対策を施す必要があり、この点でコスト高になるという欠点がある。また、LEDの発光色を切り替えつつ調光制御を行うときには、発光色の情報も伝送することが必要不可欠となり、これに伴って制御回路の構成が複雑になり、この点で一層のコスト高になる。一方、無線方式の場合、電磁ノイズの影響を受け易く信頼性が劣るという別の問題がある。
【0006】
本発明は上記した背景の下で創作されたものであり、その目的とするところは、低コスト化及び高信頼性を図ることが可能な視線誘導灯及びこれを用いた自発光視線誘導システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る視線誘導灯は多種類又は多色の発光部と、前記発光部が接続可能な多出力端子と、調光用駆動電圧が入力可能な入力端子と、当該調光用駆動電圧に基づいて前記発光部を点灯させるのに必要な駆動電圧を生成して前記多出力端子に切替可能に出力する電源部と、前記発光部に流れる駆動電流の大きさを調節する駆動電流調節部と、前記調光用駆動電圧の大きさ、波形及び/又は極性を検知するとともに当該検知結果に基づいて前記電源部及び駆動電流調節部を制御する発光制御部とを備えている。
【0008】
上記発明による場合、調光用駆動電圧の大きさ、波形及び/又は極性に基づいて発光部のLEDの輝度、発光色、発光パターンその他の発光状態を変化可能になっているので、回路構成が簡単となり電磁ノイズの影響も受け難いことから低コスト化及び高信頼性を図ることが可能になる。
【0009】
具体的には、発光制御部については、駆動電流調節部を制御するに当たり、前記調光用駆動電圧の大きさに対応した前記発光部に流れるようにする構成にすると良い。また、電源部を制御するに当たり、調光用駆動電圧の波形及び/又は極性に対応した種類又は色の発光部に駆動電圧を通電させる構成とすると良い。
【0010】
本発明に係る自発光視線誘導システムは、上記した複数の視線誘導灯と、視線誘導灯の発光を遠隔制御するために調光用駆動電圧を生成して視線誘導灯の各々に供給する道路管理制御部とを備えている。
【0011】
上記発明による場合、調光用駆動電圧の大きさ、波形及び/又は極性に基づいて視線誘導灯の明るさ、発光色、発光パターンその他の発光部の発光状態を変化させるようになっているので、回路構成が簡単になるだけでなく特別なノイズ対策を施す必要が殆どないことから低コスト化及び高信頼性を図ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態を説明するための図であって、自発光視線誘導システムの概略構成図である。
【図2】同システムを構成する視線誘導灯の発光部の配置例を示す正面図であって、(a)はタイプ1の発光部を示す図であり、(b)はタイプ2の発光部を示す図である。
【図3】同システムを構成する道路管理側制御部から出力される調光用駆動電圧を示す図であって、(a)はタイプ1の発光部の橙色のLEDを点灯させるのに必要な正極性全波整流波形を示す波形図、(b)はタイプ1の発光部の緑色のLEDを点灯させるのに必要な負極性全波整流波形を示す波形図、(c)はタイプ2の発光部のLEDを点灯させるのに必要な正弦波形を示す波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。ここに例として挙げる自発光視線誘導システムAは、道路やトンネル等に沿って所定間隔を開けて配置され且つ光源としてLEDが使用された複数の視線誘導灯1と、安全且つ円滑な自動車交通を目的として視線誘導灯1の発光を遠隔制御するために調光用駆動電圧eを生成して電力線LINEを通じて各視線誘導灯1に供給する道路管理側制御部2とを備えている。
【0014】
なお、本案例では、視線誘導灯1が2種類あり、緑色のLED211及び橙色のLED212を内蔵したタイプ1の発光部20を有するもの(図2(a)参照)と、橙色のLED221を内蔵したタイプ2の発光部20を有するもの((図2(b)参照)とがある。
【0015】
道路管理側制御部2については、交通管理センター等の施設に設置され且つ調光用駆動電圧eを生成して電力線LINEに出力する電源装置であって、現在の自動車交通状況に応じたパターンで視線誘導灯1を動作させるために調光用駆動電圧eの大きさ、極性及び波形を随時変化させる機能を併有している。
【0016】
なお、自動車交通状況に応じて視線誘導灯1の発光を変化させるパターン自体については従来と何ら異なることはない。
【0017】
道路管理側制御部2は、商用交流を変成し、これを調光用駆動電圧eとして出力している。具体的には、調光用駆動電圧eの極性及び波形が視線誘導灯1の種類の他、タイプ1の発光部20の発光色の設定指令値を示し、調光用駆動電圧eの大きさ(波高値)が視線誘導灯1の発光部20の照度指令値を示している。即ち、本案例では、調光用駆動電圧eが図3(a)に示された正極性全波整流波であるときにはタイプ1の発光部20の橙色のLED212を発光させ、図3(b)に示された負極性全波整流波形であるときにはタイプ1の発光部20の緑色のLED211を発光させ、図3(c)に示された正弦波形であるときにはタイプ2の発光部20の橙色のLED221を発光させるようになっている。
【0018】
視線誘導灯1は、タイプ1又はタイプ2の発光部20と、タイプ1/タイプ2の発光部20が接続可能な多出力端子18と、電力線LINEを通じて調光用駆動電圧eが入力され調光用駆動電圧eに基づいて発光部20を点灯させるのに必要な駆動電圧Eを生成して多出力端子18に切替可能に出力する電源部10と、発光部20に流れる駆動電流I の大きさを調節する駆動電流調節部30と、調光用駆動電圧eの大きさの大きさ、波形及び極性を検知するとともに当該検知結果に基づいて電源部10及び駆動電流調節部30を制御する発光制御部40とを備えている。
【0019】
発光部20については、本案例では上記したようにライト21(図2(a)参照)を有するものと、ライト22(図2(b)参照)を有するものとの合計2種類ある。ライト21は格子状に配置された合計4つの緑色のLED211と十字状に配置された合計5つの橙色のLED212とを有し、各LEDは図1に示すような結線となっている。ライト22は十字状に配置された合計5つの橙色のLED221を有し、各LEDは図1中破線で示すような結線となっている。
【0020】
入力端子11については、視線誘導灯1の電源入力端子であり、電力線LINEの末端に接続されている。多出力端子18については、タイプ1又はタイプ2の発光部20の中継接続端子であり、電源部10の出力側に接続されている。
【0021】
電源部10は入力端子11の出力段に接続された電源ノイズフィルタ12と、電源ノイズフィルタ12の出力段に接続され且つ入力端子11等を通じて入力された調光用駆動電圧eを整流して直流の駆動電圧Eを生成するダイオードブリッジDBと、ダイオードブリッジDBの出力段に接続され且つ発光部20に流れる駆動電流Iの大きさを制限する抵抗R1と、LED212、LED211に各々直列接続された点灯切り替え用の電界効果トランジスタQ1,Q2と、LED211、212、221に直列に接続された駆動電流調節用の電界効果トランジスタQ3と、LED221に対して並列に各々接続された逆起電圧保護用のダイオードD1と、LED211等とダイオードD1等との間に接続された電流制限用のリアクトルLとを有している。
【0022】
電源部10は、上記したLED点灯回路部に加えて、発光制御部40等に供給する直流の電源電圧を生成する電源回路部と、調光用駆動電圧eの極性を検知して発光制御部40に出力する極性検知回路部と、調光用駆動電圧eの大きさを検知して発光制御部40に出力する電圧検知回路とを有している。
【0023】
電源回路部は、電源ノイズフィルタ12の出力段に接続された倍圧回路13と、倍圧回路13の出力段に接続されたAC/DCコンバータ14から構成され、調光用駆動電圧eを逓倍し直流変換して電源電圧を生成している。
【0024】
極性検知回路部は、電源ノイズフィルタ12の出力側に抵抗R5を介して又は直接に各々接続されたフォトカプラ17,17から構成され、調光用駆動電圧eがプラス(正極性)を示しているかマイナス(負極性)を示しているかを検知し、この検知結果を信号α1として発光制御部40に出力する回路構成となっている。
【0025】
電圧検知回路部は、調光用駆動電圧eをダイオードD3を用いて半波整流しコンデンサC1を用いて平滑化する整流回路部と、整流回路部の出力電圧を抵抗R2、R3を用いて分圧し、この分圧電圧を信号α2として発光制御部40に出力する回路構成となっている。
【0026】
発光制御部40は、コンピュータを中心とした制御回路であって、デジタル入力ポートには信号α1が入力され、アナログ入力ポートには信号α2が入力されている。電源部10を制御するためにデジタルの信号β1、β2を生成して出力し、駆動電流調節部30を制御するためにデジタルのPWM信号β3を生成して出力するようになっている。
【0027】
発光制御部40は、具体的には、電源部10を制御するに当たり、信号α1の所定時間当たりの極性の変化を監視し、調光用駆動電圧eの波形が正弦波(図3(c)参照)、正極性全波整流波(図3(a)参照)、負極性全波整流形(図3(b)参照)のいずれであるかを認識し、その結果、調光用駆動電圧eの波形に対応したLEDに駆動電圧Eを通電させるようになっている。即ち、調光用駆動電圧eが正弦波であるときには電界効果トランジスタQ1,Q2をいずれもオフ、正極性全波整流波であるときには電界効果トランジスタQ1をオン、電界効果トランジスタQ2をオフ、負極性全波整流波形であるときには電界効果トランジスタQ1をオフ、電界効果トランジスタQ2をオンにさせるような信号β1、β2を生成し電源部10に出力している。
【0028】
発光制御部40は、また、駆動電流調節部30を制御するに当たり、信号α2に基づいて調光用駆動電圧eの大きさに対応した駆動電流Iがタイプ1又はタイプ2の発光部20の各LEDに流れるようになっている。即ち、信号α2に対応したPWM値をデータテーブル(調光用駆動電圧eの電圧値と駆動電流Iの電流指令値であるPWM値との対応関係を示すテーブルであり、予め用意されている。)を参照して求め、当該PWM値を示すPWM信号β3を生成し駆動電流調節部30に出力するようになっている。
【0029】
駆動電流調節部30は、タイプ1又はタイプ2の発光部20の各LEDに流れる駆動電流Iを調節する電界効果トランジスタQ3と、駆動電流Iの大きさを検出し逆起電圧の信号γ2として出力する抵抗R4と、PWM信号β3に対してレベル変換の処理を行なうレベル変換器31と、レベル変換器31で処理された信号β3に係る電流指令値と信号γ2に係る電流検出値との偏差に基づいてPWM信号γ1を生成して電界効果トランジスタQ3をスイッチングさせる制御部32とを有しており、タイプ1又はタイプ2の発光部20の各LEDに流れる駆動電流IをPWM信号β3に係る電流指令値に定電流制御する回路構成となっている。
【0030】
以上のように構成された自発光視線誘導システムによる場合、調光用駆動電圧eの大きさや波形等に基づいてタイプ1又はタイプ2の発光部20の明るさや発光色等の発光状態を変化させるようになっているので、視線誘導灯1及び道路管理側制御部2の回路構成が簡単となり、電磁ノイズの影響も受け難いことから低コスト化及び高信頼性を図ることが可能になる。
【0031】
なお、本発明に係る視線誘導灯は上記実施形態に限定されず、例えば、発光部については、LEDの数、配列及び発光色、光源の種類等が任意である。電源部については、調光用駆動電圧に基づいて発光部を点灯させるのに必要な駆動電圧を生成し、各LED毎に選択可能に通電する機能を有する限り、どのように設計変更しても良い。駆動電流調節部についても同様であり、各色LEDに流れる駆動電流の大きさを調節する機能を有する限り、回路構成は任意である。発光制御部については、調光用駆動電圧の大きさ並びに極性又は波形を検知し、この検知結果に基づいて発光部の発光状態が変化するように電源部及び駆動電流調節部を制御する機能を有する限り、どのように設計変更しても良い。
【符号の説明】
【0032】
A 自発光視線誘導システム
1 視線誘導灯
10 電源部
11 入力端子
18 多出力端子
20 発光部
30 駆動電流調節部
40 発光制御部
2 道路管理側制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多種類又は多色の発光部と、前記発光部が接続可能な多出力端子と、調光用駆動電圧が入力可能な入力端子と、当該調光用駆動電圧に基づいて前記発光部を点灯させるのに必要な駆動電圧を生成して前記多出力端子に切替可能に出力する電源部と、前記発光部に流れる駆動電流の大きさを調節する駆動電流調節部と、前記調光用駆動電圧の大きさ、波形及び/又は極性を検知するとともに当該検知結果に基づいて前記電源部及び駆動電流調節部を制御する発光制御部とを備えていることを特徴とする視線誘導灯。
【請求項2】
請求項1記載の視線誘導灯において、前記発光制御部は、前記電源部を制御するに当たり、前記調光用駆動電圧の波形及び/又は極性に対応した種類又は色の発光部に前記駆動電圧を通電させるようになっていることを特徴とする視線誘導灯。
【請求項3】
請求項1記載の視線誘導灯において、前記発光制御部は、前記駆動電流調節部を制御する当たり、前記調光用駆動電圧の大きさに対応した駆動電流が前記発光部に流れるようになっていることを特徴とする視線誘導灯。
【請求項4】
請求項1乃至3の複数の視線誘導灯と、前記視線誘導灯の発光を遠隔制御するために前記調光用駆動電圧を生成して前記視線誘導灯の各々に供給する道路管理制御部とを備えたことを特徴とする自発光視線誘導システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−202138(P2012−202138A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−68496(P2011−68496)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000195029)星和電機株式会社 (143)
【Fターム(参考)】