説明

視聴契約確認装置および視聴契約確認方法

【課題】起動後において速やかに暗号化放送コンテンツを利用できるようにする。
【解決手段】ネットワークを介してライセンスサーバLSおよびコンテンツサーバCSに接続される通信部11と、ライセンスサーバLSから取得されるライセンスの有効期間を確認してコンテンツサーバCSから取得される暗号化放送コンテンツの暗号を解除する受信処理部12−16とを備える。この受信処理部12−16は起動からの経過時間が猶予期間内である場合に有効期間の確認を省略するように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネットワーク経由で配信されるデジタル放送の視聴契約を確認する視聴確認装置および視聴契約確認方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、衛星やネットワーク経由のデジタル放送が開始され、視聴可能なデジタル放送の数が増大しつつある。アナログ放送では、放送コンテンツの著作権を確実に保護することが難しいため、放送コンテンツの数はスポンサー広告等による収益で無料放送できる範囲に制約されていた。これに対してデジタル放送では、視聴契約の確認が放送コンテンツを利用するために行われる(例えば、特許文献1を参照)。このため、無料放送が難しい様々な放送コンテンツが視聴契約者に有料で提供されるようになった。
【0003】
ネットワーク経由で配信されるデジタル放送を視聴する場合、デジタル放送受信機は、所望の放送コンテンツをコンテンツサーバから取得し、この放送コンテンツのEMM(Entitlement Management Message)情報を視聴契約ライセンスとしてライセンスサーバから取得する。放送コンテンツはコンテンツ情報、並びにこのコンテンツ情報を有効にするECM(Entitlement Control Message)情報を含み、暗号化された状態で配信される。コンテンツ情報、ECM情報およびEMM情報はいずれも独立に暗号化されている。デジタル放送受信機は、この受信機に固有のIDおよび鍵を用いて放送コンテンツに対するEMM情報を取得すると、このEMM情報からECM鍵を取出し、このECM鍵でECM情報の暗号を解除し、これにより得られる暗号解除鍵によりコンテンツ情報の暗号を解除する。
【0004】
ところで、放送コンテンツや視聴契約には、一般に有効期間が設けられている。このため、現在時刻を正確に把握し、この現在時刻が放送コンテンツの有効期間または視聴契約の有効期間を越えている場合にコンテンツ情報の暗号解除を阻止する必要がある。従来のデジタル放送受信機は、現在時刻を把握するための時計部を備え、通常時計サーバを兼ねるライセンスサーバに対してセキュア時刻情報を電源投入後の初期化処理で要求し、この結果として取得したセキュア時刻情報を用いて時計部の誤差を修正する。
【特許文献1】特開2007−36626号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、デジタル放送受信機がセキュア時刻情報の要求を行っても、ライセンスサーバがネットワークトラフィックの増大によりデジタル放送受信機からの要求に応答できないことがある。このような理由から、視聴契約者、すなわちデジタル放送受信機のユーザは、放送コンテンツや視聴契約の有効期間内であっても、電源投入による起動後において速やかに放送コンテンツを利用できないという問題があった。また、ユーザの待ち時間、すなわちセキュア時刻情報がトラフィックの低下に伴って取得されるまでの時間が変動的であった。
【0006】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、起動後において速やかに暗号化放送コンテンツを利用できる視聴契約確認装置および視聴契約確認方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1観点によれば、ネットワークを介してライセンスサーバおよびコンテンツサーバに接続される通信部と、ライセンスサーバから取得されるライセンスの有効期間を確認してコンテンツサーバから取得される暗号化放送コンテンツの暗号を解除する受信処理部とを備え、この受信処理部は起動からの経過時間が猶予期間内である場合に有効期間の確認を省略するように構成される視聴契約確認装置が提供される。
【0008】
本発明の第2観点によれば、ネットワークを介してライセンスサーバおよびコンテンツサーバに接続し、ライセンスサーバから取得されるライセンスの有効期間を確認してコンテンツサーバから取得される暗号化放送コンテンツの暗号を解除し、起動からの経過時間が猶予期間内である場合に有効期間の確認を省略する視聴契約確認方法が提供される。
【発明の効果】
【0009】
これら視聴契約確認装置および視聴契約確認方法では、有効期間の確認が起動からの経過時間が猶予期間内である場合に省略される。これにより、起動後において速やかに暗号化放送コンテンツを利用できるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の第1実施形態に係るデジタル放送受信機について添付図面を参照して説明する。
【0011】
図1はこのデジタル放送受信機RXの構成を概略的に示す。デジタル放送受信機RXは通信部11、セキュリティ管理部12、TSストリーム受信部13、暗号解除部14、TS多重分離部15、およびAVデコーダ部16を備える。通信部11はインターネットのようなネットワークを介してコンテンツサーバCSおよびライセンスサーバLSに接続される。コンテンツサーバCSは様々な暗号化放送コンテンツを配信するサーバであり、ライセンスサーバLSはコンテンツサーバから配信される暗号化放送コンテンツの各々に対するライセンスを配信するサーバである。このライセンスサーバLSは、ライセンスの有効期限を確認するために必要なセキュア時刻をセキュア時刻情報として配信する時刻情報源を兼ねる。セキュリティ管理部12はライセンスサーバLSに対してライセンスやセキュア時刻情報を要求すると共にコンテンツサーバCSに対して放送コンテンツを要求するよう通信部11を制御する。また、セキュリティ管理部12はこれらライセンスサーバLSからのライセンスおよびコンテンツサーバCSからの放送コンテンツに対する暗号解除のために暗号化解除部14を制御する。TSストリーム受信部13は通信部11を介してライセンスおよび放送コンテンツのストリームを受信してパケットの再配置を行う。暗号解除部14はTSストリーム受信部13から得られたライセンスおよび放送コンテンツに対して暗号解除処理を行う。TS多重分離部15は暗号解除部14から得られる暗号解除処理結果において多重化されている後述のEMM情報、ECM情報、コンテンツ情報のような多重化情報を分離する。EMM情報およびECM情報はセキュリティ管理部11に供給され、コンテンツ情報はAVデコーダ部16に供給される。AVデコーダ部16はコンテンツ情報をデコードして音声および映像を再生する。
【0012】
図2は図1に示すセキュリティ管理部12の構成を示す。セキュリティ管理部12はCPU21、ROM22、RAM23、時計部24、ユーザインタフェース25を含み、これらは通信部11、暗号解除部14、およびTS多重分離部15と共にバスラインにより相互接続される。CPU21はデジタル放送受信機RX全体の動作を制御する処理を行う。ROM22はCPU21の制御プログラムや初期化データ等を保持する。RAM23はCPU21の入出力データを一時的に格納する。時計部24は受信機RXの電源投入による起動からの経過時間や現在時刻を計時する。現在時刻の計時動作は、受信機RXの電源オフ状態でもバッテリにより継続される。ユーザインタフェース25は例えば放送コンテンツ選択用の入力操作キーやエラー表示用の表示パネルを含む。
【0013】
図3は図1に示すTS多重分離部14から得られるECM情報およびEMM情報のフォーマットを示す。コンテンツサーバCSからの放送コンテンツは図3に示すECM情報がコンテンツ情報に任意の間隔で挿入されたストリームである。このECM情報は、ECM鍵IDデータ、有効期間データ、猶予期間データ、暗号解除鍵データ(odd)、暗号解除鍵データ(even)、改ざん検出データを含む。ECM情報において、ECM鍵データおよび改ざん検出データは非暗号化範囲にあり、有効期間データ、猶予期間データ、暗号解除鍵データ(odd)、および暗号解除鍵データ(even)は暗号化範囲にある。ECM鍵IDデータはECM情報の鍵IDを表す。有効期間データはコンテンツ情報に対する有効期間を表す。猶予期間データはコンテンツ情報に対する有効期間を表す。暗号解除鍵データ(odd)はコンテンツ情報のoddフレーム用の暗号解除鍵を表す。暗号解除鍵データ(even)はコンテンツのevenフレーム用の暗号解除鍵を表す。改ざん検出データはECM情報の改ざん検出に必要な値を表す。
【0014】
ライセンスサーバLSからのライセンスは図3に示すEMM情報である。このEMM情報は、有効期間データ、猶予期間データ、ECM鍵IDデータ、およびECM鍵データを含み、これらは非暗号化範囲にある。有効期間データはユーザの視聴契約に対する有効期間を表す。猶予期間データはユーザの視聴契約に対する有効期間を表す。ECM鍵IDデータはECM情報の鍵IDを表す。ECM鍵データはECM情報用の暗号解除鍵を表す。
【0015】
図4は図1に示すセキュリティ管理部12の動作を示す。この動作は、受信機RXの電源投入に伴って開始される。ステップS1では、初期化処理が行われる。この初期化処理では、例えば起動からの経過時間のリセットが時計部24に対して行われる。放送コンテンツの選択がステップS2で行われると、この放送コンテンツのライセンスが取得済であるかステップS3でチェックされる。取得済でなければ、ステップS4で選択放送コンテンツのライセンスがライセンスサーバLSから取得される。ライセンスが取得済であることがステップS3で確認された場合、あるいはステップS4でライセンスが取得された場合、ステップS5でコンテンツ受信処理が行われる。このコンテンツ受信処理後には、再び放送コンテンツの選択がステップS2で行われる。
【0016】
図5は図4に示すコンテンツ受信処理をさらに詳しく示す。このコンテンツ受信処理が開始されると、ステップS10でECM情報がECM処理要求として検出されたかチェックされる。検出されなければ、ステップS10が繰り返される。ECM情報が検出されると、ステップS11でこのECM情報が保持ライセンスで復号される。具体的には、暗号解除部14がライセンスに含まれるECM鍵でECM情報の暗号を解除するように制御される。ステップS12では、ECM情報の復号が成功したかチェックされる。成功であれば、ステップS13でセキュア時刻情報が電源投入による起動後に取得済であるかチェックされる。セキュア時刻情報が取得済であれば、ステップ14で現在時刻が保持ライセンスにある有効期間内であるかチェックされる。現在時刻がこの有効期間内であれば、ステップS15で現在時刻がECM情報にある有効期間内であるかチェックされる。現在時刻がこの有効期間内であれば、ステップS16でECM情報から得られた暗号解除鍵(odd,even)が暗号解除部14に設定される。
【0017】
ステップS12で復号に失敗したことが確認された場合、ステップS14で現在時刻が保持ライセンスの有効期間を越えたことが確認された場合、あるいはステップS15で現在時刻がECM情報にある有効期間を越えたことが確認された場合には、ステップS17で暗号解除鍵(odd,even)が抹消され、ステップS18でエラー表示が行われる。
【0018】
ステップS16またはステップS18に続くステップS19では、放送コンテンツが全て受信済かチェックされる。全て受信済でなければ、ステップS10が再度実行される。他方、全て受信済であれば、コンテンツ受信処理が終了する。
【0019】
ステップS13でセキュア時刻情報が電源投入による起動後に取得済でない場合には、ステップS20で保持ライセンスおよびECM情報にある猶予期間が確認され、ステップS21で起動から現在時刻までの経過時間がこれら猶予期間内であるかチェックされる。この経過時間が猶予期間内であることが確認されれば、ステップS16でECM情報から得られた暗号解除鍵(odd,even)が暗号解除部14に設定される。これに対して、経過時間が猶予期間内でないことが確認されれば、ステップS22でセキュア時刻情報の要求がライセンスサーバLSに送信され、セキュア時刻情報がこの結果として取得される。この場合、時計部24の現在時刻がセキュア時刻情報に基づいて修正される。
【0020】
本実施形態では、有効期間の確認が起動からの経過時間が猶予期間内である場合に省略される。これにより、起動後において速やかに暗号化放送コンテンツを利用できるようになる。また、ユーザの待ち時間が変動的でなくなる。
【0021】
尚、本発明は上述の実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で様々に変形可能である。
【0022】
上述の実施形態では、セキュリティ管理部12が起動からの経過時間が猶予期間内である場合に有効期間の確認を省略するが、さらに前回の起動からの経過時間が猶予期間内である場合に有効期間の確認を省略するように構成されてもよい。これにより、ライセンスサーバLSをアクセスする頻度を低減させることが可能になる。
【0023】
また、上述の実施形態では、猶予期間データ(コンテンツ情報に対する有効期間およびユーザの視聴契約に対する有効期間)がECM情報およびEMM情報に組み込まれたが、セキュリティ管理部12がこれらの猶予期間データを予め保持するように構成されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1実施形態に係るデジタル放送受信機の構成を示す図である。
【図2】図1に示すセキュリティ管理部の構成を示す図である。
【図3】図1に示すTS多重分離部から得られるECM情報およびEMM情報のフォーマットを示す図である。
【図4】図1に示すセキュリティ管理部12の動作を示す図である。
【図5】図4に示すコンテンツ受信処理をさらに詳しく示す図である。
【符号の説明】
【0025】
11…通信部、12…セキュリティ管理部、13…TSストリーム受信部、14…暗号解除部、15…TSストリーム分離部、16…AVデコーダ部、RX…デジタル放送受信機、LS…ライセンスサーバ、CS…コンテンツサーバ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワークを介してライセンスサーバおよびコンテンツサーバに接続される通信部と、ライセンスサーバから取得されるライセンスの有効期間を確認してコンテンツサーバから取得される暗号化放送コンテンツの暗号を解除する受信処理部とを備え、この受信処理部は起動からの経過時間が猶予期間内である場合に有効期間の確認を省略するように構成されることを特徴とする視聴契約確認装置。
【請求項2】
前記受信処理部は前記有効期間の確認を省略した場合に前記ネットワークを介してセキュア時刻情報を取得しないように構成されることを特徴とする請求項1に記載の視聴契約確認装置。
【請求項3】
前記受信処理部はさらに前回の起動からの経過時間が猶予期間内である場合に有効期間の確認を省略するように構成されることを特徴とする請求項1に記載の視聴契約確認装置。
【請求項4】
前記受信処理部は前記猶予期間をライセンスから取得するように構成されることを特徴とする請求項1に記載の視聴契約確認装置。
【請求項5】
前記受信処理部は前記猶予期間を予め保持するように構成されることを特徴とする請求項1に記載の視聴契約確認装置。
【請求項6】
ネットワークを介してライセンスサーバおよびコンテンツサーバに接続し、ライセンスサーバから取得されるライセンスの有効期間を確認してコンテンツサーバから取得される暗号化放送コンテンツの暗号を解除し、起動からの経過時間が猶予期間内である場合に有効期間の確認を省略することを特徴とする視聴契約確認方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2009−147466(P2009−147466A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−320081(P2007−320081)
【出願日】平成19年12月11日(2007.12.11)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】