説明

観察装置及び画像補正プログラム

【課題】 観察画像の取得時に発生する照明ムラを特定することで、観察画像に発生する照明ムラを適切に取り除く。
【解決手段】 観察対象を照明する照明光を発光する光源と、照明光により照明される観察対象を撮像する撮像素子と、照明光の光軸と直交する面上で光源及び観察対象の相対位置を変更する移動機構と、光源及び観察対象の相対位置を複数回変更したときに、撮像素子の撮像により得られる複数の画像の背景領域に基づいて、照明光の照明ムラを特定する照明ムラ特定部と、を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、観察対象に対して照明光を照明しながら、観察対象の観察画像を取得する観察装置及び画像補正プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
顕微鏡装置などの観察装置を用いた細胞観察の分野では、細胞などの観察対象を撮像し、画像解析することが一般的に行われている。この細胞観察においては、観察対象に対して均一な照明分布となる照明光を用いることが望ましいが、実際には観察環境や光源の特性等により不均一の光量分布となる照明光が用いられている。このため、撮像により得られる画像(以下、観察画像)は、照明光の照明ムラが生じた画像となる。この観察画像に生じた照明ムラを除去するために、得られた観察画像に対してシェーディング補正処理などの画像処理を施す、又は、観察対象を観察装置に設置しない状態での画像(以下、非観察画像)を事前に取得しておき、観察画像から非観察画像を減算する画像補正などが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−151163号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したシェーディング補正処理は、画像に含まれる低周波数成分の領域の輝度を高くする補正である。例えば観察対象となる細胞が占有する領域が大きく、該領域が高周波成分から低周波数成分に跨っている観察画像に対してシェーディング補正処理を施した場合、には、シェーディング補正処理後に実行される細胞領域の抽出処理では、細胞の領域を正確に抽出することができないという問題がある。また、非観察画像を事前に取得する場合には、非観察画像の取得時と、観察画像の取得時との照明ムラが変化してしまう場合には対応することができないという欠点がある。
【0005】
そこで、本発明は、観察画像の取得時に発生する照明ムラを特定することで、観察画像に発生する照明ムラを適切に取り除くことができるようにした観察装置及び画像補正プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明の観察装置は、観察対象を照明する照明光を発光する光源と、前記照明光により照明される前記観察対象を撮像する撮像素子と、前記照明光の光軸と直交する面上で前記光源及び前記観察対象の相対位置を変更する移動機構と、前記光源及び前記観察対象の相対位置を複数回変更したときに、前記撮像素子の撮像により得られる複数の画像の背景領域に基づいて、前記照明光の照明ムラを特定する照明ムラ特定部と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
また、前記撮像素子は、前記移動機構による前記光源及び前記観察対象の相対位置の変更前に前記撮像を実行することが可能であり、前記複数の画像は、前記移動機構により前記光源及び前記観察対象の相対位置を複数回変更する前に前記撮像素子の撮像により得られた画像を含むことが好ましい。
【0008】
また、前記複数の画像のいずれか1つの画像を用いて、該複数の画像のそれぞれから抽出する前記背景領域の位置を設定する領域設定部を、備え、前記照明ムラ特定部は、前記領域設定部により設定された前記位置に基づいて、前記複数の画像のそれぞれから前記背景領域を抽出することが好ましい。
【0009】
また、前記移動機構は、前記光源及び前記観察対象の相対位置を、前記背景領域の幅方向、又は高さ方向の少なくともいずれか1方向に変更することが好ましい。
【0010】
なお、前記照明ムラ特定部により抽出される前記背景領域に含まれる画素の画素値は、前記観察対象に照射される前記照明光のうち、前記撮像素子の撮像範囲を照明する前記照明光の輝度値からなることが好ましい。
【0011】
また、前記照明ムラ特定部は、前記複数の画像のそれぞれから抽出された前記背景領域に含まれる画素の画素値を用いた最小二乗法により、前記照明光の照明ムラを特定することが好ましい。
【0012】
また、前記撮像素子は、前記複数の画像の他に、観察用画像を撮像することが可能であり、前記観察用画像と前記照明光の照明ムラとを用いて、前記観察用画像を補正する画像補正部とを備えていることが好ましい。
【0013】
また、本発明の画像補正プログラムは、観察対象を照明する照明光を発光させる発光工程と、前記照明光の照明範囲及び前記観察対象の相対位置を、該照明光の光軸と直交する面上で変更する移動工程と、前記移動工程により前記照明光の照明範囲及び前記観察対象の相対位置を複数回変更させたときに、前記観察対象を撮像する撮像工程と、前記撮像工程により得られる複数の画像の背景領域に基づいて、前記照明光の照明ムラを特定する照明ムラ特定工程と、をコンピュータに実行させることが可能なものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、観察画像の取得時に発生する照明ムラを特定することで、観察画像に発生する照明ムラを適切に取り除くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の観察装置の構成の一例を示す図である。
【図2】撮像範囲及び撮像範囲から設定される背景領域の一例を示す図である。
【図3】光源を移動させる前の照明光の照明範囲、撮像範囲及び背景領域を示す図である。
【図4】光源移動機構により光源を−X方向に移動させたときの照明光の照明範囲、撮像範囲及び背景領域を示す図である。
【図5】照明光の照明範囲と、光源を−X方向に5回、−Y方向に5回、計25回移動させたときに得られる撮像範囲における照明分布の位置とを示す図である。
【図6】観察装置により被検物を観察するときに得られる観察画像データに対して画像補正を実行する際の処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の観察装置の構成を図1に示す。図1に示すように、観察装置10は、観察ユニット11及びコンピュータ(PC)12などから構成され、これらが例えば接続ケーブルなどの有線により電気的に接続される。これにより、観察ユニット11から各種画像データをコンピュータ12に向けて出力することができる他、コンピュータ12から観察ユニット11に向けて、動作信号を出力することができる。なお、本実施形態では、観察ユニット11及びコンピュータ12から観察装置10を構成しているが、これに限定される必要はなく、本発明の観察ユニット11を観察装置とし、該観察装置とコンピュータとを有線等により接続した観察システムであってもよい。なお、図1においては、観察ユニット11は要部のみを記載している。
【0017】
この観察装置10は、観察対象となる被検物35の画像観察の際に、照明光の照明ムラを特定するための画像(以下、参照画像)を、光源21及び被検物35の相対位置を変更する前と、光源21及び被検物35の相対位置を複数回変更した後のそれぞれで取得する。以下では、光源21を移動させることで、光源21及び被検物35の相対位置を変更する場合について説明する。また、観察装置10は、これら参照画像を取得した後、光源21及び被検物35の相対位置を初期の状態に戻して、被検物35を観察するための画像(以下、観察画像)を取得する。
【0018】
観察ユニット11は、光源21からの照明光を用いて、図示を省略したステージに載置される被検物35を、その下方から照明し、被検物35を透過する光を撮像素子27にて受光することで、被検物の観察画像を取得する、所謂透過型の観察ユニットから構成される。ここで、被検物としては、プレパラート、培養される細胞が内包されるシャーレ、フラスコ、ペトリディッシュ或いはウェルプレートなどの培養容器が挙げられる。なお、図1においては、プレパラートを被検物とした場合について記載している。
【0019】
この観察ユニット11は、光源21、光源移動機構22、集光光学系23、対物光学系24、レンズ駆動機構25、結像光学系26、撮像素子27、A/D変換器28、バッファメモリ29、コントローラ30及びインターフェイス(I/F)31などを備えている。
【0020】
光源21は、例えばランプ、LED、レーザ光発振器などが用いられる。この光源21は、図示を省略したステージ上に載置される被検物35に向けて照明光を発光する。この照明光は、その光軸LがZ方向に平行となる光である。光源移動機構22は、光源21を、光軸Lに直交する平面、言い換えればXY平面上で移動させる。なお、光源移動機構22による光源21の移動方法や、光源21の移動量については、後述する。
【0021】
集光光学系23は、光源21からの照明光を平行光に変換する。この平行光に変換された照明光は、ステージの下方から被検物35を照明する。被検物35の下方から被検物35を照明する照明光の一部は被検物35を透過し、対物光学系24に入射する。対物光学系24を出射した照明光は、結像光学系26に入射する。結像光学系26は、対物光学系24から出射する照明光を撮像素子27の撮像面に結像する。なお、レンズ駆動機構25は、焦点調整時に対物光学系24を光軸Lに沿って移動させる。
【0022】
撮像素子27は、例えばCCDイメージセンサやCMOSイメージセンサが用いられる。この撮像素子27は、結像光学系26により結像された照明光を受光することで、被検物35の光学像を取得する。この撮像素子27における撮像範囲が、被検物35の観察時の観察視野範囲となる。この撮像素子27により得られる光学像に基づく画像信号は、A/D変換器28に出力する。
【0023】
A/D変換器28は、撮像素子27から出力されるアナログの画像信号をデジタルの画像信号に変換する。このA/D変換部20によりデジタルの画像信号に変換された画像信号は、バッファメモリ29に書き込まれる。
【0024】
コントローラ30は、光源21の点灯/消灯制御、光源移動機構22やレンズ駆動機構25の駆動制御、さらには撮像素子27における撮像制御を実行する。インターフェイス31は、コンピュータ12のインターフェイス50と接続ケーブルなどの有線により電気的に接続される。
【0025】
コンピュータ12は、観察ユニット11による各種動作を実行させるために設けられる。このコンピュータ12は、CPU41、メモリ42、バッファメモリ43、画像メモリ44、画像処理回路45、画像補正回路46、表示装置47、表示制御回路48、操作部49及びインターフェイス(I/F)50等から構成される。なお、CPU41、メモリ42、バッファメモリ43、画像メモリ44、画像処理回路45、画像補正回路46、表示制御回路48及びインターフェイス50は、バス51を介して電気的に接続される。
【0026】
CPU41は、メモリ42に記憶された制御プログラムに基づいてコンピュータ12の各部を制御する。また、CPU41は、メモリ42に記憶された動作プログラムに基づく動作信号を観察ユニット11に出力する。ここでは、詳細を省略するが、CPU41は、メモリ42に記憶された背景領域の位置データと、画像メモリ44に記憶された参照画像データとを用いて、被検物35を照明する照明光の輝度分布の状態を示す照明分布データを生成する。なお、背景領域を設定する手順や、照明分布データを生成する手順については、後述する。
【0027】
メモリ42は、上述した制御プログラムや動作プログラムなどが記憶される他、後述する背景領域の位置データが記憶される。バッファメモリ43は、観察ユニット11から出力された観察画像データ、照明分布データ、画像補正(シェーディング補正)が施された観察画像データの他、画像処理後の画像データが記憶される。なお、画像処理後の画像データとしては、例えば観察が開始された直後に得られる参照画像データや、画像補正済みの観察画像データに対して画像処理を施した後の画像データが挙げられる。画像メモリ44は、観察ユニット11から出力される参照画像データが複数記憶される。なお、画像メモリ44に記憶される参照画像データには、光源21の位置データが付帯される。
【0028】
画像処理回路45は、観察を開始した直後に取得される参照画像データや観察画像データに対して、ホワイトバランス処理、色補間処理、階調変換処理などの画像処理を施す。なお、これら画像処理の各処理の内容は周知であることから、ここでは、詳細を省略する。この画像処理回路45により画像処理が施された画像データは、バッファメモリ43に記憶される。
【0029】
画像補正回路46は、バッファメモリ43に一時記憶された観察画像データを、照明分布データを用いて補正する。なお、この補正としては、観察画像データの各画素の画素値(輝度値)から、照明分布データの各画素の画素値(輝度値)を減算する処理である。なお、この画像補正が施された観察画像データは、再度バッファメモリ43に記憶される。
【0030】
表示装置47は、例えばLCDパネルや有機ELパネルなどから構成される。この表示装置47は、観察を開始した直後に取得される参照画像、観察画像、設定用画像などを表示する。この表示装置47における表示制御は、表示制御回路48により実行される。
【0031】
操作部49は、例えばキーボードやマウスなどから構成される。これらキーボードやマウスを操作したときに、これら操作に基づく操作信号がCPU41に入力される。なお、操作部49は、例えば表示装置47に表示される参照画像に対して、背景領域を指定する際に操作される。インターフェイス50は、観察ユニット11のインターフェイス31と接続ケーブルなどの有線により電気的に接続される。
【0032】
次に、背景領域の設定について説明する。例えば、観察を開始した直後に実行される撮像素子27における撮像により参照画像が取得されると、該参照画像が表示装置47に表示される。ユーザは、操作部49を操作して背景領域を指定する。操作部49がマウスであれば、マウスを操作して、表示装置47に表示されるマウスポインタを参照画像上に移動させた後、マウスをドラック操作して背景領域を指定する。なお、図2においては、参照画像55に対して、枠56で囲まれる領域57がマウスのドラック操作により指定された領域となる。
【0033】
この操作を受けて、CPU41は、マウスのドラック操作に伴う矩形の領域57を背景領域として設定し、設定した背景領域の位置データをメモリ42に記憶する。この背景領域の位置データは、マウスのドラック操作の開始点に対応する参照画像の画素の位置データと、マウスのドラック操作の終了点に対応する参照画像の画素の位置データとからなる。なお、背景領域57を設定する方法として、ユーザによるマウスのドラック操作を挙げているが、これに限定される必要はなく、参照画像55から自動的に背景領域57を設定することも可能である。
【0034】
次に、光源21を移動させるときの移動量の設定について説明する。上述したように、表示装置47に表示される参照画像に対して、操作部49を操作することで背景領域が設定される。この背景領域の設定により、メモリ42には背景領域の位置データが記憶される。CPU41は、メモリ42に記憶される背景領域の位置データを読み出す。CPU41は、読み出した背景領域の位置データから、背景領域におけるX方向及びY方向の各方向における画素数を求める。そして、CPU41は、求めた背景領域におけるX方向及びY方向における画素数に基づいて、光源21のX方向への移動量と、Y方向への移動量とを決定する。
【0035】
また、CPU41は、光源21をX方向に移動させる回数(X方向への移動回数)と、Y方向への移動回数とを決定する。例えば撮像素子27の有効画素領域におけるX方向及びY方向の各方向における画素数は予め設定されていることから、CPU41は、背景領域におけるX方向及びY方向の各方向における画素数と、撮像素子27の有効画素領域におけるX方向及びY方向の各方向における画素数とから、光源21のX方向への移動回数と、Y方向への移動回数とを求める。そして、CPU41は、光源21のX方向への移動量、光源21のY方向への移動量、光源21のX方向への移動回数及びY方向への移動回数をコントローラ30に出力する。コントローラ30は、コンピュータ12からの駆動信号を受けて、これらデータを参照しながら、光源21の移動制御を実行する。なお、光源21の移動制御としては、例えば、−X方向に光源21を移動させる動作を複数回行い、光源21をX方向の初期位置に戻した後、−Y方向に光源21を移動させて、再度−X方向に光源21を移動させる動作を複数回行う制御や、−X方向に光源21を移動させる動作を複数回行った後、Y方向に光源21を移動させ、X方向に光源21を移動させる動作を複数回行う制御などが挙げられる。この光源21の移動制御に併せて、コントローラ30は、撮像素子21を制御し、撮像素子21における撮像処理を実行させる。
【0036】
最後に、照明分布データを生成する手順について説明する。CPU41は、メモリ42に記憶された背景領域の位置データを読み出す。そして、CPU41は、画像メモリ44に記憶される参照画像データを読み出して、背景領域の位置データに対応する画素の画素値を各参照画像データから抽出する。次に、CPU41は、参照画像データの背景領域を、参照画像データに付帯される光源の位置データと、光源21のX方向への移動量及びY方向への移動量とを参照し、配列する。
【0037】
図3は、光源21を移動させる前に実行される撮像素子27における撮像範囲と、照明光の照明範囲とを示す。図3では、照明光の照明範囲60に対して、撮像素子27における撮像範囲を枠61で示している。また、枠62に囲まれる領域63が背景領域である。
【0038】
図3に示す状態を初期状態として、光源21を−X方向に移動させると、照明光の照明範囲60も−X方向に移動する。この光源21の−X方向への移動に対して、被検物35や撮像素子27は固定である。図4は、光源21を−X方向へ移動させた場合の照明光の照明範囲と、撮像素子27における撮像範囲及び背景領域との位置関係を示す。なお、図4においては、一点鎖線で囲まれる範囲61が光源21を移動させる前の撮像素子27の撮像範囲、実線で囲まれる範囲61’が光源21を−X方向へ移動させたときの撮像素子27の撮像範囲である。また、点線で囲まれる領域63が光源21を移動させる前の背景領域であり、実線で囲まれる領域63’が光源21を−X方向へ移動させたときの背景領域である。ここで、光源21の移動に伴って移動する照明範囲60を基準に考慮すると、光源21の−X方向への移動時には、撮像素子21の撮像範囲61や背景領域63はX方向に移動していることになる。
【0039】
なお、光源21をX方向又はY方向に移動させたときに撮像素子27により得られる参照画像データは各画素の画素値が輝度値からなる画像データである。このため、光源21を−X方向又は−Y方向に、それぞれ複数回移動したときに得られる複数の参照画像データから抽出した背景領域を配列すると、光源21を固定したときの撮像素子27の撮像範囲における照明光の照明分布となる。図5においては、枠65で示される範囲が撮像素子27の撮像範囲であり、撮像範囲65に含まれる複数の領域63が、各参照画像データから抽出される背景領域である。CPU41は、各参照画像データから抽出される背景領域をそれぞれ配列したときの各背景領域内の画素の画素値を1つの画像データとしてまとめることで、照明分布データを生成する。なお、図5においては、光源21を−X方向に5回、−Y方向に5回、計25回、光源21を移動させた場合を例としている。
【0040】
次に、観察装置10により被検物を観察するときに得られる観察画像データに対して画像補正を実行する際の処理の流れを図6のフローチャートに基づいて説明する。
【0041】
ステップS101は、参照画像データを取得する処理である。CPU41は、コントローラ30に向けて、参照画像データを取得するための撮像信号を出力する。これを受けて、コントローラ30は、撮像素子27における撮像処理を実行する。これにより、光源21が初期の位置にあるときの参照画像データが取得される。なお、この参照画像データは、コントローラ30により、観察ユニット11からコンピュータ12に向けて出力される。参照画像データがコンピュータ12に出力されると、CPU41は、参照画像データを画像メモリ44に記憶する。この際、CPU41は、光源21の位置データを参照画像データに付帯する。画像メモリ44に記憶された参照画像データは、画像処理回路45により読み出され、画像処理が実行される。画像処理回路45により画像処理が施された参照画像データは、バッファメモリ43に一時記憶される。
【0042】
ステップS102は、背景領域を設定する処理である。上述したように、ステップS101の処理により参照画像データが取得されると、得られた参照画像データがコンピュータ12に出力される。ステップS102の処理が実行されると、表示制御回路48は、バッファメモリ43に一時記憶された画像処理済みの参照画像データを読み出し、表示装置47に、読み出した参照画像データに基づく参照画像を表示する。参照画像の表示を受けて、ユーザは操作部49を操作し、参照画像から背景領域を指定する。この操作部49の操作に基づいて背景領域が指定されると、CPU41は、操作部49の操作に基づく位置データ(背景領域の位置データ)をメモリ42に記憶する。これにより、参照画像における背景領域が設定される。
【0043】
ステップS103は、光源の移動量及び移動回数を算出する処理である。ステップS102の処理を実行することで、参照画像における背景領域が設定される。CPU41は、メモリ42から設定された背景領域の位置データを読み出し、背景領域におけるX方向及びY方向の各方向における画素数を求める。この背景領域におけるX方向及びY方向における画素数に基づいて、CPU41は、光源21のX方向への移動量と、Y方向への移動量とを決定する。また、CPU41は、撮像素子27における撮像範囲におけるX方向及びY方向の各方向における画素数と、背景領域におけるX方向及びY方向における画素数とを用いて、光源21のX方向への移動回数と、Y方向への移動回数とを求める。CPU41は、算出された光源の移動量及び移動回数を観察ユニット11のコントローラ30に出力する。
【0044】
ステップS104は、光源を移動させる処理である。CPU41は、コントローラ30に向けて駆動信号を出力する。これを受けて、コントローラ30は、ステップS103により算出された光源21の移動量及び移動回数を参照する。そして、コントローラ30は、光源移動機構22を駆動させて、ステップS103にて決定された移動量分、光源21を移動させる。
【0045】
ステップS105は、参照画像データを取得する処理である。ステップS104の処理が実行されると、光源21が移動している。コントローラ30は、撮像素子27における撮像処理を実行する。これにより、光源21が初期の位置の位置から所定量移動したときの参照画像データが取得される。コントローラ30は、取得された参照画像データを、コンピュータ12に向けて出力する。参照画像データがコンピュータ12に出力されると、CPU41は、参照画像データを画像メモリ44に記憶する。この際、CPU41は、光源21の位置データを参照画像データに付帯する。
【0046】
ステップS106は、光源の移動が終了したか否かを判定する処理である。ステップS103の処理を実行することで、CPU41は、光源21をX方向に移動させる回数と、Y方向に移動させる回数とを算出している。CPU41は、これら回数とから、光源21の移動回数を算出する。そして、CPU41は、画像メモリ44に記憶される参照画像データの数をカウントすることで、光源21の移動が終了したか否かを判定する。画像メモリ44に記憶される参照画像データの数が、算出された光源21の移動回数に到達している場合には、CPU41はステップS106の判定処理をYesとする。この場合、ステップS107に進む。なお、このステップS106の判定処理がYesとなる場合には、CPU41は、コントローラ30に向けて、光源21を初期の位置(ステップS101における光源21の位置)に移動させる動作信号を出力する。これを受けて、コントローラ30は、光源移動機構22を駆動させて、光源21を初期の位置に移動させる。
【0047】
一方、画像メモリ44に記憶される参照画像データの数が、算出された光源21の移動回数に到達していない場合には、CPU41はステップS106の判定処理をNoとする。この場合、ステップS104に戻る。つまり、算出された光源21の移動回数に到達するまで、光源21を移動させながら、参照画像データを取得する処理が繰り返し実行される。
【0048】
ステップS107は、照明ムラを特定する処理である。ステップS104及びステップS105の処理が複数回実行されることで、複数の参照画像データが画像メモリ44に記憶される。CPU41は、メモリから、背景領域の位置データを読み出す。そして、CPU41は、背景領域の位置データに基づいて、各参照画像データの背景領域に含まれる画素の画素値を抽出する。なお、参照画像データには、光源21の位置データが付帯されていることから、CPU41は、該光源21の位置データを参照して、抽出した各参照画像データの背景領域に含まれる画素の画素値を、バッファメモリ43に配列する。
【0049】
上述したように、背景領域は、観察対象を含まない領域であることから、この背景領域に含まれる各画素の画素値は、照明光の輝度値を示している。このため、各参照画像データから抽出される背景領域を配列することで、撮像素子27の撮像範囲を照明する照明光の照明分布(輝度分布)が得られることになる。抽出した各参照画像データの背景領域に含まれる画素の画素値をバッファメモリ43に配列した後、CPU41は、これら配列される各画素の画素値を1つの画像データとしてまとめる。これにより、照明分布データが生成される。つまり、この照明分布データを生成することで、撮像素子27の撮像範囲における照明光の照明ムラが特定される。なお、照明分布データは、バッファメモリ43に記憶される。
【0050】
ステップS108は、観察画像データを取得する処理である。このステップS108の処理が実行されることで、撮像素子27による撮像が実行され、観察画像データが取得される。なお、この観察画像データは、コントローラ30からコンピュータ12に向けて出力される。CPU41は、この観察画像データをバッファメモリ43に記憶する。
【0051】
ステップS109は、観察画像データを補正する処理である。画像補正回路46は、バッファメモリ43に記憶される観察画像データ及び照明分布データをそれぞれ読み出す。画像補正回路46は、照明分布データを用いて観察画像データを補正する。なお、観察画像データの補正としては、観察画像データの各画素の画素値から、照明分布データの各画素の画素値をそれぞれ減算すればよい。これにより、観察画像データに対する補正(シェーディング補正)が実行される。なお、補正済みの観察画像データは、バッファメモリ43に記憶される。このステップS109の処理が実行されることで、照明ムラが除去された観察画像データが取得される。
【0052】
ステップS110は、画像処理である。画像処理回路45は、バッファメモリ43に記憶された補正済みの観察画像データに対して、画像処理を実行する。この画像処理が施された観察画像データは、バッファメモリ43に書き込まれる。
【0053】
ステップS111は、画像を表示する処理である。表示制御回路48は、バッファメモリ43に記憶された画像処理済みの観察画像データを読み出し、該観察画像データに基づく観察画像を表示する。なお、表示される観察画像に対して、ユーザは、操作部49による各種操作を行うことができる。例えば操作部49の操作が表示装置47に表示される観察画像を、そのまま記憶する旨の操作であれば、CPU41は、画像処理済みの観察画像データを、ハードディスクドライブやメモリカードなどの図示を省略した記憶媒体に記憶する。また、操作部49の操作が、表示装置47に表示される観察画像に対して、細胞の領域を抽出する処理を行う旨の操作であれば、CPU41は、画像処理回路45に、表示された観察画像の基になる観察画像データに対して例えばハイパスフィルタを用いて、細胞の領域を抽出する処理を実行させればよい。
【0054】
このように、被検物を観察する直前に複数の参照画像に含まれる背景領域から照明光の照明分布を示すデータを取得することで、細胞観察時における照明光の照明ムラを容易に特定することができる。また、観察視野範囲、言い換えれば撮像範囲に対して被検物が占める領域が大きい場合であっても、撮像範囲に背景領域が含まれているのであれば、背景領域を利用した照明光の照明分布を示すデータを取得することができるので、観察画像データに対して適切なシェーディング補正を行うことができる。
【0055】
本実施形態では、得られる複数の参照画像データから抽出される各背景領域を配列したときに、配列した全背景領域の大きさが撮像範囲の大きさと一致する場合について説明している。しかしながら、実際には、配列した全背景領域の大きさと撮像範囲とが一致しない場合もある。このように、配列される背景領域全体と撮像範囲とが一致しない場合には、予め、配列される背景領域全体の領域が撮像範囲よりも大きくなるように、参照画像データを取得しておき、各参照画像データから抽出される背景領域を配列したときに、撮像範囲に含まれる画素の画素値を照明分布データとしてまとめることも可能である。
【0056】
また、この他に、複数回の撮像により得られる複数の参照画像データから抽出される背景領域を配列したときに、配列される背景領域の大きさが、撮像範囲よりも小さくなる場合もある。例えば、照明光の照明分布が球面近似できることを考慮すると、撮像範囲に含まれる画素のうち、背景領域が配置されない箇所に該当する画素の画像値を、複数の背景領域に含まれる画素の画素値を用いた最小二乗法により求めるができる。
【0057】
本実施形態では、設定された背景領域の幅と同一の長さを光源21のX方向の移動量とし、背景領域の高さと同一の長さを光源21のY方向の移動量としているが、これに限定される必要はなく、背景領域の幅の所定倍の長さを光源21のX方向の移動量、背景領域の高さの所定倍の長さを光源21のY方向の移動量としてもよい。この場合、各参照画像データから得られる背景領域を配列すると、各背景領域が間引いて配列される。この場合も、照明光の照明分布が球面近似できることを考慮すると、配列される各背景領域に含まれる画素の画素値を用いた最小二乗法により、撮像範囲のうち、背景領域が配置されていない領域に含まれる画素の画素値を求めることができる。
【0058】
本実施形態では、得られる参照画像データを全て取得した後に各参照画像データから背景領域を抽出しているが、これに限定される必要はなく、各参照画像データが取得された直後に背景領域を抽出し、背景領域に基づく画像データをコンピュータ12に記憶させることも可能である。
【0059】
本実施形態では、光源21及び被検物35の相対位置を変更する例として、光源21を移動させる場合について説明しているが、これに限定される必要はなく、被検物35のみを移動させる、或いは、被検物35及び撮像素子27を移動させることで、光源21と被検物35との相対位置を変更することも可能である。
【0060】
本実施形態では、観察装置10を例に取り上げたが、観察ユニット11を駆動制御するコンピュータ12が実行する画像補正プログラムの形態であってもよい。この場合、図6に示すフローチャートに示す処理の流れをコンピュータ12にて実行できるような画像補正プログラムであればよい。なお、この画像補正プログラムは、メモリカード、光学ディスクや磁気ディスクなどの、コンピュータが読み取り可能な記憶媒体に記憶されていることが好ましい。
【符号の説明】
【0061】
10…観察装置、11…観察ユニット、12…コンピュータ、21…光源、22…光源移動機構、27…撮像素子、41…CPU、42…メモリ、44…画像メモリ、45…画像処理回路、46…画像補正回路、47…表示装置、49…操作部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
観察対象を照明する照明光を発光する光源と、
前記照明光により照明される前記観察対象を撮像する撮像素子と、
前記照明光の光軸と直交する面上で前記光源及び前記観察対象の相対位置を変更する移動機構と、
前記光源及び前記観察対象の相対位置を複数回変更したときに、前記撮像素子の撮像により得られる複数の画像の背景領域に基づいて、前記照明光の照明ムラを特定する照明ムラ特定部と、
を備えたことを特徴とする観察装置。
【請求項2】
請求項1に記載の観察装置において、
前記撮像素子は、前記移動機構による前記光源及び前記観察対象の相対位置の変更前に前記撮像を実行することが可能であり、
前記複数の画像は、前記移動機構により前記光源及び前記観察対象の相対位置を複数回変更する前に前記撮像素子の撮像により得られた画像を含むことを特徴とする観察装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の観察装置において、
前記複数の画像のいずれか1つの画像を用いて、該複数の画像のそれぞれから抽出する前記背景領域の位置を設定する領域設定部を、備え、
前記照明ムラ特定部は、前記領域設定部により設定された前記位置に基づいて、前記複数の画像のそれぞれから前記背景領域を抽出することを特徴とする観察装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の観察装置において、
前記移動機構は、前記光源及び前記観察対象の相対位置を、前記背景領域の幅方向、又は高さ方向の少なくともいずれか1方向に変更することを特徴とする観察装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の観察装置において、
前記照明ムラ特定部により抽出される前記背景領域に含まれる画素の画素値は、前記観察対象に照射される前記照明光のうち、前記撮像素子の撮像範囲を照明する前記照明光の輝度値からなることを特徴とする観察装置。
【請求項6】
請求項5に記載の観察装置において、
前記照明ムラ特定部は、前記複数の画像のそれぞれから抽出された前記背景領域に含まれる画素の画素値を用いた最小二乗法により、前記照明光の照明ムラを特定することを特徴とする観察装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の観察装置において、
前記撮像素子は、前記複数の画像の他に、観察用画像を撮像することが可能であり、
前記観察用画像と前記照明光の照明ムラとを用いて、前記観察用画像を補正する画像補正部とを備えていることを特徴とする観察装置。
【請求項8】
観察対象を照明する照明光を発光させる発光工程と、
前記照明光の照明範囲及び前記観察対象の相対位置を、該照明光の光軸と直交する面上で変更する移動工程と、
前記移動工程により前記照明光の照明範囲及び前記観察対象の相対位置を複数回変更させたときに、前記観察対象を撮像する撮像工程と、
前記撮像工程により得られる複数の画像の背景領域に基づいて、前記照明光の照明ムラを特定する照明ムラ特定工程と、
をコンピュータに実行させることが可能な画像補正プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図6】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−163795(P2012−163795A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−24598(P2011−24598)
【出願日】平成23年2月8日(2011.2.8)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】