説明

解離を治療するための経皮的な方法および装置(優先権情報および参照による組み入れ)

【課題】本開示のいくつかの実施形態は、限定はされないが、大動脈のような患者の血管における解離を経皮的に治療するための方法および装置に向けられる。
【解決手段】上記方法は、第1の血管を通って上記解離の進入ポイントへ、折り畳まれた固定要素、フレーム、およびカバーを含むカテーテルを展開することを含むことができる。いくつかの実施形態では、上記固定要素は、第2の血管枝に固定され得る。上記フレームは、第1の血管枝に拡張され得る。上記カバーは、上記進入ポイントの少なくとも一部上に広げられ得る。これにより上記カバーは、進入ポイントへの血流を減少させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は2009年5月1日に出願された米国仮特許出願第61/174,888号の利益を主張するものであって、参照により前述の仮特許出願の内容全体が本明細書に組み入れられ、また、その内容全体が本明細書の一部と見なされるべきである。更に、2008年4月11日に出願された(「Bifurcated Graft Deployment Systems And Methods」と題する)米国特許出願第12/101,863号も、参照により、あたかも本明細書で完全に記述されているかの如くにして、その内容全体が本明細書に組み入れられる。
【0002】
(本開示の背景)
本発明の開示は大動脈解離を治療するための方法および装置に関する。
【背景技術】
【0003】
(本開示の背景)
大動脈解離は死亡率の高い危険な状態である。大動脈解離になると、典型的には、大動脈の内膜に裂けが生じ、その裂けが血管壁に沿って広がり、大動脈の外層から内層を剥離させてしまう。偽腔を作り出しているこれらの層の間の空間に血液が入り込む。大動脈の真腔と上述の偽腔との間にいくつかの付加的な裂けまたは侵入ポイントが作り出されることがある。急性期の場合には、解離が大動脈から生命の維持に必要不可欠な重要な器官への潅流を塞いでしまうことがある。慢性期の場合には、その脆弱化した組織が高じて動脈瘤になり、最終的に破裂してしまうことがある。上行大動脈が関与する解離はA型の解離と呼ばれている。一方、下行大動脈のみが関与する解離はB型の解離と呼ばれている。
【0004】
現在の解離の治療法は、患者の血圧を下げて、その病変血管に及ぼされる血行力学的応力を低減することを目的とした医学的管理を含む。もし解離が症候性の場合には、外科的介入が必要になる。その場合、大動脈の病変部分が外科的なグラフトと取り替えられ、解離のフラップが取り付けし直される。もっと最近では、偽腔に血栓を形成し、且つ、真の管腔の開存性を維持することを目標として、その偽腔内への一次的侵入ポイントを塞ぐべく、ステントグラフトが用いられている。
【0005】
胸部大動脈ステントグラフトを用いる大動脈解離の血管内治療は、術中合併症および術後合併症を伴うリスクを負っている。胸部ステントグラフトのカテーテル送達システムは典型的には20−24フレンチ(Fr)の形状を有しており、そのため、静脈切開または送達用導管が必要になる。大きな送達用カテーテルを用いることによる血管損傷はよく起こる事象である。また、ステントグラフトは、胸部大動脈を流れる血流量が多量であるため、胸部大動脈内で正確に展開することは難しい。更に、ステントグラフトの近位側端部、特にカバーされていないステント区域は、解離による裂けが大動脈弓内へ向かって近位側に広がる状態を引き起こす可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
大動脈解離を治療するための改善された方法に対する明らかなニーズが存在する。本出願は、大動脈に及ぼす影響を最小化しながら、大動脈解離の治療に関する解決策を提供する特定の実施形態について開述する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(いくつかの実施形態の概要)
本開示のいくつかの実施形態は血管の解離を治療するための方法を対象としており、その方法は:フレームに接続されたカバーと折り畳まれた固定要素とを含むカテーテルを、第1の血管を通じて、解離の侵入ポイントまで進めるステップ;第1の血管と連通している第2の血管に前記固定要素を確保するステップ;第1の血管内で上述のフレームを拡張するステップ;および上述の侵入ポイントの少なくとも一部上で上述のカバーを広げ、且つ、位置決定するステップ;を含んでいる。いくつかの実施形態においては、前記カバーは、上述の侵入ポイント内への血流を低減させることができる。
【0008】
いくつかの実施形態は血管の解離を治療するための方法を対象としており、その方法は:解離の侵入ポイントに対するプロテーゼを担持しているカテーテルを進めるステップであって、ここで、前述の解離の侵入ポイントが第1の血管にあり、また、前記プロテーゼがカバーおよびそのカバーと連通している折り畳み式の固定要素を含んでいる、カテーテルの前進ステップ;第1の血管と連通している第2の血管に前記固定要素を確保するステップ;第1の血管内において上述のカバーを拡張するステップ;および上述の解離の侵入ポイントの少なくとも一部上で前記カバーをポジショニングするステップ;を含んでいる。いくつかの実施形態においては、上述のカバーは、解離の侵入ポイント内への血流を低減させることができるように構成されていてよい。
【0009】
いくつかの実施形態は血管の解離を治療するための装置を対象としており、その装置は:固定要素;前記固定要素により担持されたフレーム;および前記フレームにより担持されたカバー;を含んでいる。前記カバーは、侵入ポイント内への血流を少なくとも実質的に低減させるべく、解離への侵入ポイント上で第1の血管の壁の一部を覆うことができるように構成されていてよい。前記固定要素は、第1の血管と連通している第2の血管により担持されるように構成することができる。いくつかの実施形態は血管の解離を治療するための装置を対象としていて、その装置は固定要素とその固定要素により担持されたカバーとを含んでおり、ここで、前記カバーは、解離への侵入ポイント上で第1の血管の壁の一部のみを覆うように構成されていて、且つ、侵入ポイント内への血流を少なくとも実質的に低減させることができるように構成されており、さらに、前記固定要素は、第1の血管と連通している第2の血管内で展開することができるように構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
次に、添付図面を参照しながら、いくつかの非排他的な実施形態との関連において、本開示のこれらの特徴、態様および利点、ならびに他の特徴、態様および利点を説明する。しかしながら、ここで説明されている実施形態は単なる実施例であって、本発明を限定することを意図したものではない。以下の記述は添付図面の簡単な説明であり、また、それらの図面は一定の縮尺では描かれていない可能性がある。
【0011】
【図1】図1は、大動脈のB型の解離を示す概略図である。
【図2】図2Aは、解離を治療するための装置の1つの実施形態を描いている。図2Bは、図2Aの線2B−2Bに沿って取った、図2Aに描かれている治療装置の実施形態を示す概略図である。
【図3】図3Aおよび3Bは、解離を治療するための装置の別の実施形態を描いている。
【図4】図4Aおよび4Bは、解離を治療するための装置の別の実施形態を描いている。
【図5】図5は、解離を治療するための装置の別の実施形態を描いている。
【図6】図6Aおよび6Bは、解離を治療するための装置の別の実施形態を描いている。
【図7】図7Aおよび7Bは、解離を治療するための装置の別の実施形態を描いている。
【図8】図8Aおよび8Bは、解離を治療するための装置の1つの実施形態を表す概略的な側面図であり、図8Aでは支持部材が折り畳まれた状態で示されており、一方、図8Bではその支持部材が拡張された状態で示されている。
【図9】図9Aは、本明細書で開示されている解離を治療するための装置のいくつかの実施形態を展開するために使用することができる送達用カテーテルの1つの実施形態の部分的な断面概略図である。図9Bは、図9Aに示されている送達用カテーテルの実施形態の部分的な断面概略図であり、そのカテーテル内に担持された解離を治療するための装置の1つの実施形態を示している。
【図10】図10は、そこにB型の解離を有する患者の大動脈を表す概略図であり、患者の鎖骨下動脈を通じてその大動脈内へ進められているガイドワイヤーを示している。
【図11】図11は、図10のガイドワイヤー上に沿って進められている送達用カテーテルの1つの実施形態を示す概略図である。
【図12】図12は、図11の送達用カテーテルの実施形態から展開されている図9Bの解離を治療するための装置の実施形態を示す概略図である。
【図13】図13は、図11の送達用カテーテルの実施形態から展開されている図9Bの解離を治療するための装置の実施形態を示す概略図である。
【図14】図14は、患者の血管系で展開された図9Bの解離を治療するための装置の実施形態を示す概略図である。
【図15】図15は、そこにB型の解離を有する患者の大動脈を表す概略図であり、患者の大動脈を通じて鎖骨下動脈内へ進められているガイドワイヤーを示している。
【図16】図16は、図16のガイドワイヤー上に沿って進められている送達用カテーテルの1つの実施形態を示す概略図である。
【図17】図17は、図16の送達用カテーテルの実施形態から展開されている解離を治療するための装置の1つの実施形態を示す概略図である。
【図18】図18は、図16の送達用カテーテルの実施形態から展開されている解離を治療するための装置の1つの実施形態を示す概略図である。
【図19】図19は、患者の血管系で展開された、解離を治療するための装置の1つの実施形態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(いくつかの例証的実施形態の詳細な説明)
本出願のいくつかの実施形態は大動脈解離を治療する方法に関係する。限定するものではないが、特に、これらの方法は、下行大動脈が関与する急性B型解離の治療、または人間もしくは動物の血管構造におけるいずれかの場所で生じた解離もしくは裂けの治療に非常に適していると言える。
【0013】
解離の血管内治療で現在用いられている装置は、20−24Frの送達システムを必要とする大動脈ステントグラフトである。これらのステントグラフトは、その大動脈内での固定を目的とした大きな直径のステントに依存しており、且つ、その大動脈の辺縁全体を覆うグラフトを有している。
【0014】
本開示のいくつかの実施形態の場合のように、血管枝に本装置を固定させることにより、大動脈ステントの必要性は排除される。また、本明細書で開示されているいくつかの実施形態の場合のように、解離のフラップ部分のみを覆うことにより、覆うための材料を少しで済ませることができる。以下でもっと詳しく説明されているように、本プロテーゼのいくつかの実施形態は12Fr未満の細いカテーテルで送達することができ、また、いくつかの実施形態では更に8Fr未満の細いカテーテルで送達することができる。その上、本装置を血管枝から直接的に送達することもできる。
【0015】
本明細書で開述されているいくつかの実施形態は、解離の一次的侵入ポイントをステントグラフトの代わりにパッチまたはカバーで塞ぐことにより、解離の偽腔に血栓形成を創出するための装置および方法に関係する。B型の解離においては、典型的には、一次的侵入ポイントは、鎖骨下動脈の遠位側であって、大動脈弓から下行胸部大動脈への移行領域に在る。本明細書で開示されているいくつかの実施形態では、パッチをその解離の侵入ポイント上に位置付けすることができる。そのパッチは、例えば、限定するものではないが、鎖骨下動脈に固定または確保することができる。例えば、いくつかの実施形態においては、本装置を鎖骨下動脈内へ送達するために橈骨動脈を穿刺することができる。解離への侵入ポイントがその大動脈の異なる区域に在る場合には、他の血管枝を利用して本装置を固定することができる。いくつかの実施形態においては、上述のパッチは、その血管の内面全体(例えば、これに限定するものではないが、その大動脈の内面全体)を覆うのではなく、その血管の壁の一部のみを覆うことができるように構成されていてよい。
【0016】
図1は大動脈におけるB型の解離を示す概略図である。鎖骨下動脈2の遠位側での大動脈1の内層における裂けまたは侵入ポイント3は、血液がその大動脈壁内へ入り込み、大動脈の外層5から内層4を剥離させてしまいかねない程充分に重症であり得る。図1中の矢印A1は大動脈壁内への血液の流れを表している。血液によりそれら2つの層の間に創出されたスペースは偽腔6と呼ばれている。上述の裂け3は、その偽腔への侵入ポイントと呼ばれている。また、分離された内層4はフラップと呼ばれている。いくつかの実施形態においては、この解離は、血液が偽腔6に入り込めず、そして、偽腔6を加圧することができなくなるように、前記侵入ポイントを塞ぐことにより治療される。
【0017】
図2Aおよび2Bは、大動脈におけるB型解離の侵入ポイントを実質的または完全に塞ぐための治療装置の1つの実施形態を示している。いくつかの実施形態においては、本装置または本プロテーゼは、カバー11および支持部材または固定要素12を含むことができる。いくつかの実施形態においては、本カバー11、または本明細書で開示されているあらゆる他の装置もしくはプロテーゼのあらゆるカバーは、展開された後、その標的血管内で自立できる程度に充分に剛性であってよい。しかしながら、ここで例示されている実施形態のように、本装置は、カバー11を担持することができるように構成された折り畳み式のフレーム10を有することができる。また、いくつかの実施形態においては、カバー11または本明細書で開示されているあらゆる他のカバーは、付加的なフレームを必要としないような仕方で、一体的なフレームまたは一体的な支持構造を有することができるように構成されていてよい。更に、これらに限定するものではないが、カバー11およびフレーム10を含め、本明細書で開示されているカバーまたはフレームのいくつかの実施形態は、適切な送達装置から展開された際に、解離の侵入ポイントが所在する位置で、その血管壁に寄せて、またはその血管壁に隣接して、偏向または移動するようにバイアスがかけられてよく、または別な仕方でそのような偏向もしくは移動が可能なように構成されていてよい。
【0018】
本装置は、治療部位へ経皮的に送達するために、細い送達用カテーテル内に折り畳むことができる。好適には、本装置は、橈骨動脈または大腿動脈から送達することができる。折り畳み式のフレーム10は、これに限定するものではないが、ニチノールを含む形状記憶材料で製作することができる。いくつかの実施形態においては、フレーム10の形状は、大動脈壁に合わせて楕円形であってよい。カバー11はフレーム10内に吊り下げておくことができる。
【0019】
いくつかの実施形態においては、カバー11は、生体適合性を有し、且つ、柔軟性を有する薄い材料から製作することができる。可能性のある材料は、これらに限定するものではないが、ポリエステル、ePTFE、ポリウレタン、シルク、動物組織、または長期間の埋め込みに適した他のあらゆる材料を含む。いくつかの実施形態においては、カバー11は、組織の修復や大動脈壁内へのカバー11の一体化を促進または補助する材料から製作することができる。いくつかの実施形態においては、カバー11は、組織工学によって作製されたグラフトに対する足場(スカフォールド)として作用すべく設計された基質(マトリックス)から製作することができる。カバー11は、例えば、これらに限定するものではないが、大動脈壁における細胞外マトリックスの天然ビルディングブロックであるであるコラーゲンおよびエラスチンのようなタンパク質を含むことができる。
【0020】
いくつかの実施形態においては、カバー11はフィブリンや、キトサンまたはグリコサミノグリカンのような多糖類を含むことができる。いくつかの実施形態においては、上述のタンパク質は適切な架橋剤によって架橋することができる。適切な架橋剤は、これらに限定するものではないが、グルタルアルデヒド、カルボジイミド、タンニン、ポリフェノールおよび光活性化架橋剤を含むことができる。いくつかの実施形態においては、上述のタンパク質層は哺乳動物から採取することができる。哺乳動物由来タンパク質層の可能なソースは、これらに限定するものではないが、心膜、小腸粘膜下層、血管および皮膚を含む。
【0021】
いくつかの実施形態においては、カバー11の厚みは約0.0001インチから約0.01インチまでの範囲であってよい。いくつかの実施形態においては、カバー11の厚みは約0.0005インチから約0.0020インチまでであり得る。カバー11は非多孔質材料、多孔質材料もしくはメッシュから作製されてよく、または編物繊維もしくは織物繊維から作製されてもよい。いくつかの実施形態においては、カバー11の生化学的特性および表面特性は大動脈壁への本カバーの付着を促進するものであってよい。例えば、カバー11はポリエステルの編物またはシルクの織物から作製することができる。また、カバー11は縫合糸もしくは接着剤でフレーム10に取り付けられてよく、またはあらゆる他の適切な締結手段もしくは技術を用いてフレーム10に取り付けることができる。いくつかの実施形態においては、カバー11はフレーム上に直接的に成形することができる。
【0022】
フレーム10は、展開中の折り畳まれた状態から大動脈内への展開後における拡張された状態へ移動することができる。いくつかの実施形態においては、フレーム10は、展開中にカバー11を広げることができる。血液の流れはそのカバーを大動脈壁に押し付けることができ、これはカバー11を標的位置に固定するのに役立つ。柔軟性のあるカバー11は大動脈1の壁に合わせることができ、且つ、侵入ポイント3を封鎖することができる。カバー11の移動を防止するため、フレーム10は、その大動脈の側枝内、好適には鎖骨下動脈2内に位置付けされ得る固定要素12に接続することができる。固定要素12は、これらに限定するものではないが、頸動脈または腕頭動脈を含め、その大動脈のあらゆる適切な血管枝に位置付けすることができる。前記固定要素12、または何らかの他の固定要素もしくは支持部材は、自己拡張型のステント、バルーン拡張型のステント、コイル、フック、鉤状構造物、バルーン、ステントグラフト、ネジ、ステープル、または他の同様なもしくは適切な装置であってよい。
【0023】
図3Aおよび3Bは、解離を治療するための装置の別の実施形態を例示している。図3Aを参照しながら説明すると、いくつかの実施形態では、カバー22は半円形状または卵形状を有することができる。フレーム21は弓形状のワイヤーを含むことができる。いくつかの実施形態においては、カバー22は遠位側端部が支えられていなくてよい。図3Bには、カバー32の更なる代替的な実施形態が示されている。図3Bに示されているように、カバー32のいくつかの実施形態は固定要素33を越えて近位側に延びていてよく、この実施形態は、侵入ポイント3が鎖骨下動脈または鎖骨下動脈の近位側に在るような状況に適していると考えられる。そのような場合に、鎖骨下動脈をカバー32で覆うことができる。いくつかの実施形態においては、カバー32は、血液が鎖骨下動脈内に進入するのを可能に成すための開口を有していてよい。いくつかの実施形態においては、フレーム31は、カバー31を担持するため、またはカバー31を大動脈壁に押し付けるため、付加的な中央のストラット34を有することができる。
【0024】
図4Aおよび4Bは、解離を治療するための装置の別の実施形態を描いている。図4Aを参照しながら説明すると、本装置は、固定要素43に接続することができる1つもしくはそれ以上の支持具41a−eを含んでいてよい。これらの支持具41a−eは固定要素43の近位側端部により一端を支えられていてよい。代替的に、図4Bに示されているように、支持具51a−eを固定要素53の遠位側端部により支えることもできる。
【0025】
図5は解離を治療するための装置の別の実施形態を描いており、この実施形態は、大動脈内におけるB型解離の侵入ポイントを実質的にまたは完全に塞ぐことができるように構成されている。いくつかの実施形態においては、本装置は図2に示されているものと同様であってよい。いくつかの実施形態においては、支持要素64をフレーム61の遠位側端部に接続することができる。いくつかの実施形態においては、支持要素64はフレーム61およびカバー62をその解離のフラップ4に押し付けることができる。支持要素64は楕円状の形状を有していてよく、また、フレーム61と同様な材料から作製することができる。上述の楕円は、支持要素64がフラップ4および対向する大動脈壁65と接触した状態になり得るように、大動脈1の直径よりも僅かに大きくてよい。支持要素64は、カバー62の遠位側部分がフラップ4から引き離されてしまったり、またはフラップ4から離れる方向に移動してしまうのを防止もしくは阻止するため、フレーム61の遠位側部分を担持することができるように構成されていてよい。
【0026】
図6Aおよび6Bは、大動脈内におけるB型解離の侵入ポイントを実質的にまたは完全に塞ぐことができるように構成された装置の別の実施形態を描いている。いくつかの実施形態においては、フレーム71は、開かれたケージを形成することができる2つの楕円状の要素71aおよび71bを含むことができる。カバー72は、そのフレーム71の一方の半分と合わせることができるように、またはフレーム71の一方の半分によって担持され得るように構成することができる。大動脈1内に配置されたとき、そのフレームのいくつかの実施形態は、カバー72がフラップ4から引き離されてしまったり、またはフラップ4から離れる方向に移動してしまうのを防止することができる。更に、このフレームのいくつかの実施形態は、その大動脈の局所的な断面領域に合わせることができる。
【0027】
図7Aおよび7Bは、大動脈内におけるB型解離の侵入ポイントを実質的にまたは完全に塞ぐことを目的とした装置の別の実施形態を描いている。いくつかの実施形態においては、本装置は、以下で述べられている点を除き、図2に示されている装置と同様であってよい。支持要素84をアンカ要素81により担持することができる。支持要素84は侵入ポイント3を通じて偽腔6内へ進めることができ、且つ、その偽腔6内からフレーム81を担持することができる。フレーム81および支持要素84はそれらの間にフラップ4を効果的に挟むことができ、また、カバー82がフラップ4から引き離されてしまうのを防止することができる。いくつかの実施形態においては、フレーム81または支持要素84はクリップ様の機能を果たすことができる。
【0028】
図8Aおよび8Bは解離を治療するための装置100の1つの実施形態の概略的な側面図を表しており、図8Aでは支持部材92が折り畳まれた状態で示されており、一方の図8Bでは拡張された状態で示されている。装置100は、本明細書で開示されている解離を治療するための装置のあらゆる他の実施形態の場合と同一のどのような特徴、コンポーネントまたは他の詳細事項をも有することができる。従って、支持部材92(本明細書ではアンカ部材と呼ばれることもある)は、これらに限定するものではないが、自己拡張型のステント、バルーン拡張型のステント、またはそこに解離を有する血管に隣接した血管内で展開することができる、本明細書で開示されているあらゆる他の固定要素を含め、何らかの適切なステントであってよい。支持部材92は送達中には折り畳んでおくことができ、そして、支持部材92が標的血管の場所に位置付けられた時点で拡張することができる。ここで描かれているように、支持部材92にカバー部材94を取り付けることができ、そのカバー部材94は、解離への侵入ポイントを実質的にまたは完全に覆うように構成することができる。
【0029】
図9Aは、これに限定するものではないが、上で説明されている装置90などの本明細書で開示されている解離を治療するための装置のいくつかの実施形態を展開するために使用することができる、送達用カテーテル100の部分的な断面概略図である。いくつかの実施形態においては、送達用カテーテル100は、2008年4月11日に出願された「Bifurcated Graft Deployment Systems And Methods」と題する米国出願第12/101,863号に開示されている送達用カテーテルの実施形態のいずれかの特徴、コンポーネントもしくは他の詳細事項、またはそのような特徴、コンポーネントもしくは他の詳細事項のあらゆる組み合わせを有することができ、前記米国出願は、参照により、本明細書で完全に記述されているかの如くにして本明細書に組み入れられる。
【0030】
図9Aを参照しながら説明すると、送達用カテーテル100は、その送達用カテーテル100の近位側端部から外側シース104の管腔を通じて延びていてよい内部コア102を有することができる。前記内部コア102は外側シース104内で軸方向および回転方向に関して移動可能であってよい。内部コア102の遠位側終端部分からチューブ部材106が延びていてよく、このチューブ部材106は非外傷性の遠位側先端部108を担持することができる。遠位側先端部108、チューブ部材106および内部コア102の軸方向の中心線を通じてガイドワイヤー用の管腔110が形成されていてよい。
【0031】
図9Bは、図9Aに示されている送達用カテーテルの部分的な断面概略図であり、その内部に担持されている解離を治療するための装置90の実施形態を示している。いくつかの実施形態においては、外側シース104は固定部材92およびカバー94を抑えるために使用することができ、前記固定部材92とカバー94との両者は折り畳まれた配置構成で送達用カテーテル100内に担持することができる。これに加え、いくつかの実施形態においては、必須ということではないが、固定部材92にフレーム部材を取り付けることができ、カバー106を担持するためにそのフレーム部材を使用することができる。本装置100はチューブ部材106により担持することができ、また、以降で説明されているように、外側シース104により半径方向に抑えることができる。以降で説明されているように、前記半径方向に関する抑えは、内部コア102との相対的な関係において外側シース104を引っ込め、これにより本装置100を露出させることによって解除することができる。
【0032】
次に、前記説明を活かしながら、解離を治療するための装置を展開するための方法に関するいくつかの装置について説明する。そこにB型の解離を有する患者の大動脈の概略図である図10を参照しながら説明すると、患者の鎖骨下動脈2を通じてガイドワイヤー120を大動脈7内へ進めることができる。いくつかの実施形態においては、そのガイドワイヤーは患者の橈骨動脈を通じて鎖骨下動脈2内へ進めることができる。図11は、ガイドワイヤー120上に沿って進められている送達用カテーテル100を示す概略図である。この装置においては、送達用カテーテル100は、患者の橈骨動脈を通じて鎖骨下動脈および大動脈内へ進めることができる。
【0033】
図12および13は、送達用カテーテル100から展開された状態での図9Bの解離を治療するための装置90を示す概略図である。図12に描かれているように、カバー94は、チューブ部材106との関係において相対的に外側シース104を軸方向に引っ込め、これによりカバー部材94を露出する送達用カテーテル100から展開することができる。送達用カテーテル100およびプロテーゼ90は、その送達用カテーテル100および/またはプロテーゼ90に担持されている1つもしくはそれ以上の放射線不透過性マーカーを利用して適切に位置付けすることができる。送達用カテーテル100が鎖骨下動脈2を通じて大動脈7内に進められたため、内部コア102およびチューブ部材106に対して相対的な外側シース104の更なる軸方向の引き込みは、アンカ部材92が送達用カテーテル100から鎖骨下動脈2内へ展開される状態をもたらすことができる。その後、展開用カテーテル100は、図14に示されているように、鎖骨下動脈および橈骨動脈を通じて軸方向に引っ込め、身体から取り外すことができる。この後、解離を治療するための装置90のみを残し、ガイドワイヤー120を取り除くことができる。
【0034】
いくつかの実施形態においては、装置90のカバー94は、図15に描かれているように、最初に患者の大腿動脈を通じてガイドワイヤー120をその大動脈および鎖骨下動脈に進めることにより、患者の大動脈内で展開することができる。その後、図16に描かれているように、そのガイドワイヤー120上に沿って、上で説明されている展開用カテーテル100を進めることができる。一旦送達用カテーテル100が目標の場所、例えば鎖骨下動脈2の内部の目標位置に達すると、図17に描かれているように、チューブ部材106および装置90に対して相対的に外側シース104を軸方向に引っ込めることにより、固定部材92をその鎖骨下動脈2内で展開することができる。外側シース104を更に引き込むことにより、装置90の残りのコンポーネントが患者の血管内で展開される状態をもたらすことができる。例えば、図18を参照しながら説明すると、外側シース104の更なる引き込みは、カバー部材94が展開されて、解離の侵入ポイント3が実質的にまたは完全に覆われる状態をもたらすことができる。
【0035】
その後、展開用カテーテル100は、図19に示されているように、その大動脈および大腿動脈を通じて軸方向に引っ込め、身体から取り外すことができる。この後、解離を治療するための装置90のみを残し、ガイドワイヤー120を取り除くことができる。
【0036】
図2−19は本開示の装置および方法に関するいくつかの実施形態を描いている。ここで提示されている侵入ポイントを塞ぐ方法を支持する他の実施形態も本開示の範囲内である。例えば、いくつかの実施形態においては、細いカテーテルをベースとした送達システムを用いて送達することができる折り畳み式の装置を侵入ポイント上に配置し、大動脈の血管枝に固定することができる。
【0037】
本発明を好適な実施形態および実施例との絡みにおいて開示してきたが、当業者であれば、本開示はそれらの特定的に開示された実施形態を越えて、本発明の他の代替的な実施形態および/または使用、ならびに本発明の明らかな変形態様および同等物にまで広がることが理解されよう。更に、本発明の数多くのバリエーションが開述され且つ詳細に説明されてきたが、当業者にとっては、この開示をベースとすれば、この発明の範囲内に収まる他の様々な変形態様が苦も無く明らかになるであろう。また、それらの実施形態の個別の特徴および態様の様々な組み合わせもしくはサブコンビネーションを作ることができるが、そのような組み合わせもしくはサブコンビネーションは尚も本発明の範囲内に収まることが想定されている。従って、ここで開示されている実施形態の様々な特徴および態様は、その開示されている発明の変形様式を形成するために、相互に組み合わせることができ、または相互に置換することができるものと理解すべきである。それ故、ここで開示されている本開示の範囲はこれまでの箇所で開述されている個別の開示された実施形態に限定されるべきではないということが意図されていると言える。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
血管の解離を治療するための方法であって、当該方法が:
プロテーゼを担持しているカテーテルを該解離の侵入ポイントにまで進めるステップであって、ここで、上記解離の侵入ポイントが第1の血管内に在り、そして、上記プロテーゼがカバーおよび前記カバーと連通した折り畳み式の固定要素を含んでいる、カテーテルの前進ステップ;
上記固定要素を前記第1の血管と連通している第2の血管に固定するステップ;
該第1の血管内で上記カバーを拡張するステップ;および
上記カバーを該解離の侵入ポイントの少なくとも一部上にポジショニングするステップ;
を含み、
ここで、上記カバーが該解離の侵入ポイント内への血流を低減することができるように構成されている;
血管の解離の治療方法。
【請求項2】
上記カバーが折り畳み式のフレームにより担持されていて、該フレームが上記固定要素に接続されている、請求項1記載の方法。
【請求項3】
上記フレームが楕円状の形状を有している、請求項2記載の方法。
【請求項4】
上記第1または第2の血管が大動脈である、請求項1記載の方法。
【請求項5】
上記カバーが前記第1の血管の内側周囲の一部のみを覆うように構成されている、請求項1記載の方法。
【請求項6】
上記第2の血管が該解離の侵入ポイントの近位側にある、請求項1記載の方法。
【請求項7】
上記第1の血管が鎖骨下動脈である、請求項1記載の方法。
【請求項8】
上記第1の血管が左頸動脈である、請求項1記載の方法。
【請求項9】
上記第2の血管が腕頭動脈である、請求項1記載の方法。
【請求項10】
上記カバーがタンパク質マトリックスを含んでいる、請求項1記載の方法。
【請求項11】
上記タンパク質マトリックスが、コラーゲン、エラスチンおよび哺乳動物組織のうちの少なくとも1つを含む、請求項10記載の方法。
【請求項12】
上記哺乳動物組織が、心膜または小腸粘膜下層から採取した組織を含む、請求項10記載の方法。
【請求項13】
更に、該解離の侵入ポイントを通じて上記プロテーゼの支持要素を進めるステップを含む、請求項1記載の方法。
【請求項14】
上記固定要素がステントである、請求項1記載の方法。
【請求項15】
血管の解離を治療するための装置であって、当該装置が:
固定要素;および
上記固定要素によって担持されたカバー;
を含み、ここで:
上記カバーが、該解離への侵入ポイント上で第1の血管の壁の一部のみを覆うように構成されていて、且つ、前記侵入ポイント内に流入する血液の流れを少なくとも実質的に低減することができるように構成されており;そして
上記固定要素が、前記第1の血管と連通した第2の血管内で展開することができるように構成されている;
血管の解離を治療する装置。
【請求項16】
上記固定要素およびカバーが、カテーテル内におけるポジショニング用の第1の折り畳まれた状態に折り畳み可能であり、且つ、第2の拡張された状態へ拡張可能である、請求項15記載の装置。
【請求項17】
更に、上記カバーを担持することができるように構成されたフレームを含み、前記フレームが上記固定要素に取り付けられている、請求項15記載の装置。
【請求項18】
上記固定要素、フレームおよびカバーが、カテーテル内におけるポジショニング用の第1の折り畳まれた状態に折り畳み可能であり、且つ、第2の拡張された状態へ拡張可能である、請求項17記載の装置。
【請求項19】
上記フレームが、該フレームの展開中に上記カバーを広げることができるように構成されている、請求項17記載の装置。
【請求項20】
上記カバーが縫合糸または接着剤を用いて上記フレームに取り付けられている、請求項17記載の装置。
【請求項21】
上記フレームが、相互に連結された2つの楕円状コンポーネントを含んでいる、請求項17記載の装置。
【請求項22】
上記フレームがニチノールなどの記憶性材料を含んでいる、請求項17記載の装置。
【請求項23】
上記カバーが、タンパク質マトリックス、ポリエステル、ePTFE、ポリウレタン、シルクおよび動物組織のうちの少なくとも1つを含んでいる、請求項15記載の装置。
【請求項24】
上記タンパク質マトリックスが、哺乳動物組織、コラーゲン、エラスチン、フィブリン、キトサンまたはグリコサミノグリカンなどの多糖類および架橋剤のうちの少なくとも1つを含んでいる、請求項23記載の装置。
【請求項25】
上記架橋剤が、グルタルアルデヒド、カルボジイミド、タンニン、ポリフェノールおよび光活性化架橋剤のうちの少なくとも1つを含んでいる、請求項24記載の装置。
【請求項26】
上記哺乳動物組織が、心膜、小腸粘膜下層、血管または皮膚から採取された組織を含んでいる、請求項24記載の装置。
【請求項27】
上記固定要素がステントである、請求項15記載の装置。
【請求項28】
上記固定要素が、コイル、フック、鉤状構造物、バルーン、ステントグラフト、ネジまたはステープルを含んでいる、請求項15記載の装置。
【請求項29】
上記カバーが前記第1の血管の少なくとも一部と接触するように構成されている、請求項15記載の装置。
【請求項30】
更に、上記固定要素に取り付けられていて、且つ、上記カバーを担持することができるように構成されている、複数の支持具を含んでいる、請求項15記載の装置。
【請求項31】
上記カバーの厚みが約0.0001インチから約0.01インチまでの間である、請求項15記載の装置。


【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公表番号】特表2012−525239(P2012−525239A)
【公表日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−508800(P2012−508800)
【出願日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際出願番号】PCT/US2010/033274
【国際公開番号】WO2010/127305
【国際公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【出願人】(500413010)エンドロジックス、インク (7)
【Fターム(参考)】