触媒燃焼器の燃焼状態検知装置
【課題】触媒上流側が気相燃焼状態にあることを的確、且つ、速やかに検知する。
【解決手段】空気供給配管11には、バイパス配管14が設けられ、バイパス配管14を介して空気を直接燃焼器9に供給可能なように構成されている。これにより、カソードオフガスと比較して湿度が低く、且つ、酸素分圧が高い空気を燃焼器9に供給できるようになるので、カソードオフガスの高湿・低酸素濃度状態による悪影響を防止し、失火や着火遅れなどの燃焼不具合を防止し、確実な触媒燃焼が可能となる。またこの結果、触媒上流側の昇温速度や温度を用いて触媒上流側での気相燃焼状態を検知することができると共に、昇温速度を用いることによって燃焼状態の判定時間を短縮することができる。
【解決手段】空気供給配管11には、バイパス配管14が設けられ、バイパス配管14を介して空気を直接燃焼器9に供給可能なように構成されている。これにより、カソードオフガスと比較して湿度が低く、且つ、酸素分圧が高い空気を燃焼器9に供給できるようになるので、カソードオフガスの高湿・低酸素濃度状態による悪影響を防止し、失火や着火遅れなどの燃焼不具合を防止し、確実な触媒燃焼が可能となる。またこの結果、触媒上流側の昇温速度や温度を用いて触媒上流側での気相燃焼状態を検知することができると共に、昇温速度を用いることによって燃焼状態の判定時間を短縮することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒部の上流側が気相燃焼状態にあることを検知するための触媒燃焼器の燃焼状態検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、燃料電池システムでは、アノード極側の窒素濃度及び水蒸気濃度が上昇することによって、発電効率が低下したり、発電が停止したりすることを防止するために、アノード極側のガス及び凝縮水を系外に排出するパージ処理が行われる。また、このパージ処理によって系外に排出されるガス(以下、アノードオフガスと表記)には、窒素や水蒸気と共に燃料ガスである水素の未使用分が含まれるために、アノードオフガスに他のガスを混合することにより水素濃度を希釈する処理や、アノードオフガスに酸化剤ガスを混合して水素を燃焼する処理がパージ処理と併せて行われる。
【0003】
ところで、水素の燃焼媒体として触媒燃焼器を利用する場合、燃焼温度の上昇に伴い逆火が発生し、触媒燃焼器の燃焼状態が通常の触媒燃焼状態から気相燃焼状態へと変化する。そして、燃焼状態が気相燃焼状態に変化すると、燃焼温度の上昇に伴う熱害による触媒燃焼器,触媒,及び周辺環境に対するダメージや、高温気相燃焼によるNOx等の副生成ガスの生成等、環境への影響が大きくなる。このような背景から、触媒燃焼器の燃料供給部上流側近傍に温度検知手段を設け、温度検知手段により検知された温度に基づいて触媒からの逆火による気相燃焼を検知する装置が提案されている(特許文献1参照)。また、触媒燃焼器の燃料供給部近傍に火炎センサを設け、火炎センサによって触媒からの逆火を検知する装置も提案されている(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平11−118115号公報
【特許文献2】特開2004−37034号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、一般に、触媒燃焼器に供給される酸化剤ガスが多量の水分を含有している場合や酸化剤ガス中の酸素濃度が低い場合には、触媒の着火性能が損なわれる。特に、水分の影響は著しく、触媒が水分に覆われてしまった場合には、反応面積を確保することができないために本来の着火性能を発揮することができなくなる。そして、触媒の着火性能が損なわれた場合には、燃料電池システムの排気特性に問題が生じることがある。また、正しく着火できない場合には、触媒燃焼器の制御に支障をきたすために、その副作用として燃料電池システムとしての効率が悪化する可能性がある。
【0005】
また、触媒燃焼器の下流側の温度を検出したとしても逆火等による触媒部の上流側における気相燃焼状態を速やかに検知することはできない。また、温度検知手段によって触媒部の上流側での気相燃焼状態を検知する際、触媒部から温度検出手段までの距離が離れている場合には、相当な距離の逆火が発生しない限り気相燃焼状態を検知することができない。このため、実際に気相燃焼状態を検知した時には、燃焼温度がある程度上昇しており、その結果、触媒性能が熱の影響によって劣化する恐れがある。特に、触媒は、ある一定の触媒耐熱温度を超えた温度に曝されると劣化が促進されるために、触媒燃焼器の寿命が短くなる可能性がある。
【0006】
また、触媒燃焼器が燃料電池車両に搭載されている場合には、気相燃焼によってNOx等の規制物質が生成されるために、気相燃焼状態を早急に検知する必要がある。しかしながら、車両に搭載可能な十分な信頼性や寿命を有する温度検出手段を利用したとしても、温度反応が遅く、温度検知に要する時間が長くなってしまう。また、火炎センサを用いることにより気相燃焼状態を検知することができるが、燃料電池等に使用した場合には水分の影響によって炎の検知が遅れる恐れがある。
【0007】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、その目的は、触媒部の上流側が気相燃焼状態にあることを的確、且つ、速やかに検知することが可能な触媒燃焼器の燃焼状態検知装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の課題を解決するために、本発明に係る触媒燃焼器の燃焼状態検知装置は、燃料電池の燃料極から排出されるアノードオフガスを、前記燃料電池の酸化剤極から排出されるカソードオフガスとは異なる酸化剤ガスと混合し、触媒部において燃焼処理する触媒燃焼器と、触媒部の上流側のガス温度を測定する触媒上流側温度測定手段と、触媒上流側温度測定手段により測定された温度と昇温速度の少なくとも一方を判定基準値と比較することにより、触媒部の上流側における気相燃焼を検知する気相燃焼検知手段とを備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る触媒燃焼器の燃焼状態検知装置によれば、アノードオフガスを燃料電池の酸化剤極から排出されるカソードオフガスとは異なる酸化剤ガスと混合し燃焼処理することにより、カソードオフガスの高湿・低酸素濃度状態による悪影響を防止するので、失火や着火遅れなどの燃焼不具合を防止し、確実な触媒燃焼が可能となる。またこの結果、触媒部の上流側の昇温速度や温度を用いて触媒部の上流側での気相燃焼状態を検知することができると共に、昇温速度を用いることによって燃焼状態の判定時間を短縮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は例えば図1に示すような燃料電池システムに適用することができる。以下図面を参照して、本発明の一実施形態となる燃料電池システムの構成と動作について説明する。
【0011】
〔燃料電池システムの構成〕
本発明の一実施形態となる燃料電池システム1は、図1に示すように、アノード極(燃料極)及びカソード極(酸化剤極)にそれぞれ水素及び空気の供給を受けて発電する燃料電池2が複数積層された燃料電池スタック3を備える。なお、アノード極及びカソード極における電気化学反応及び燃料電池スタック3全体としての電気化学反応は以下に示す式(1)〜(3)による。また、本実施形態では、アノード極に水素を供給したが、水素の代わりに水素リッチな改質ガスを供給するようにしてもよい。
【0012】
〔アノード極〕 H2 → 2H+ +2e- …(1)
〔カソード極〕 1/2 O2 +2H+ +2e- → H2O …(2)
〔全体〕 H2 +1/2 O2 → H2O …(3)
〔水素系の構成〕
上記燃料電池システム1は、図示しない水素タンク及び水素供給弁を備え、水素供給弁により水素タンク内の水素の圧力を燃料電池2の運転状態に合わせた圧力まで減圧した後、水素供給配管4を介してアノード極に水素を供給する。また、アノード極で未使用の水素は、水素循環配管5及び水素循環ポンプ6を介してアノード極の上流側へ循環される。水素循環配管5及び水素循環ポンプ6を設けることにより、アノード極で未使用の水素を再利用することが可能となり、燃料電池システム1の燃費性能を向上させることができる。なお、燃料電池2の運転条件と適合すれば、水素循環ポンプ6に代えて流体ポンプであるエゼクタを使用してもよい。また、水素タンク内に貯蔵された水素ではなく、液体水素や水素吸蔵合金から得られる水素や燃料ガスを改質することにより得られる水素をアノード極に供給するようにしてもよい。
【0013】
水素循環配管5及び水素循環ポンプ6を介してアノード極に戻る水素の循環流路には、カソード極からリークした空気中の窒素や水蒸気等の不純物ガス、或いは、過剰な水分が液化した液水が蓄積することがある。そして、これらの不純物ガスは、水素の分圧を低下させて発電効率を低下させたり、循環ガスの平均分子量を上昇させ水素の循環を困難(循環効率が悪化)にしたりする。また液水は水素の循環やスタックの発電を妨げる場合がある。このため、アノード極の出口側には、アノードオフガス配管7と、これを開閉するアノードパージ弁8が設けられている。そして、不純物ガスや液水が蓄積した際には、アノードパージ弁8を開き、空気を利用してアノードパージ弁8から排出されたガス(以下、アノードオフガスと表記)を燃焼器9で燃焼処理した後に系外へ排出するパージを行う。これにより、アノード極を含む水素循環配管5内の水素分圧や循環性能を回復させることができる。なお、アノードパージ弁8から燃焼器9に排出するアノードオフガス量や排出タイミングは、運転条件に応じて制御される量を連続的にパージし続けたり(連続パージ)、運転条件に応じてパージ量を断続的に制御したりする(断続パージ)等、設計者が任意に設定するとよい。
【0014】
〔空気系の構成〕
上記燃料電池システム1は、コンプレッサ10と図示しない加湿装置を備え、コンプレッサ10が吐出した空気を加湿装置で加湿した後に空気供給配管11を介してカソード極に供給する。そして、カソード極で未使用の空気はカソードオフガス配管12を介して排気配管13に送られる。また、空気供給配管11には、バイパス配管14が設けられ、バイパス配管14を介して加湿装置によって加湿される前の空気を直接燃焼器9に供給可能なように構成されている。このような構成によれば、カソードオフガスと比較して湿度が低く、且つ、酸素分圧が高い空気を燃焼器9に供給できるので、カソードオフガスの高湿・低酸素濃度状態による悪影響を防止し、失火や着火遅れなどの燃焼不具合を防止し、確実な触媒燃焼が可能となる。すなわち、燃焼器9において確実な触媒燃焼処理を行い、燃焼器9の燃焼効率を高く保つことができる。
【0015】
なお、図2に示すように、バイパス配管14によって分岐された空気を燃料電池スタック3周辺のケース内に導入し、ケース内を通流した空気を燃焼器9に供給するようにしてもよい。このような構成によれば、カソードオフガスと比較して湿度が低く、且つ、酸素分圧が高い空気を燃焼器9に供給できるので、燃焼器9の燃焼効率を高く保つことができる。また、アノード極からケース内部に透過,拡散した水素を燃焼器9に供給できるので、アノード極からケース内部に透過,拡散した水素を確実、且つ、効果的に燃焼させることができる。また、ケース内換気用空気と燃焼器9用空気を兼用することによって、システムを簡素化し、サイズ,質量,部品点数を削減することができる。
【0016】
また、図3に示すように、コンプレッサ10の他にブロア等の燃焼器9用の空気供給装置15を設け、空気供給装置15から燃焼器9にアノードオフガスの燃焼に必要な空気を供給するようにしてもよい。このような構成によれば、カソードオフガスと比較して湿度が低く、且つ、酸素分圧が高い空気を燃焼器9に供給できるので、燃焼器9の燃焼効率を高く保つことができる。また、図1や図2に示すような空気供給装置が1台しかないシステムと比較して、燃料電池2及び燃焼器9それぞれの要求空気量を供給可能な空気供給装置を設ければよくなるので、空気供給装置の小型化が可能となると共に、質量,コスト,消費電力,運転効率,制御のロバスト性等の面で有利となる。また特に低空気流量側では、2台の小型の空気供給装置を用いる方が1台の大型の空気供給装置を用いる場合よりも高効率運転が可能である。また、1台の空気供給装置から吐出された空気を2流路に分岐する場合には、各流路の空気流量を制御が困難であるために制御系の部品点数が増加する可能性があるが、このような構成によれば、制御系の部品点数の増加を抑えることができる。
【0017】
また、図4に示すように、コンプレッサ10の他に空気供給装置16を設け、空気供給装置16によって燃料電池スタック3周辺のケース内を通流した空気を燃焼器9に供給するようにしてもよい。このような構成によれば、燃料電池スタック3内のアノード極からケース内部に透過,拡散した水素を燃焼器9に供給できるので、燃料電池スタック3から周辺へと透過,拡散した水素を確実、且つ、効果的に燃焼処理することができる。なお、本実施形態では、燃料電池スタック3と燃焼器9間に空気供給装置16を設置したが、燃料電池スタック3の上流側に空気供給装置16を設置するようにしてもよい。
【0018】
〔燃焼器の構成〕
上記燃焼器9は、ステンレス合金等の燃焼温度や圧力に耐え得る材質により構成され、アノードオフガス配管7からの水素が供給されるアノードオフガス導入口18と、バイパス配管14からの空気が供給される酸化剤ガス導入口19と、アノードオフガス導入口18の下流側に配設された混合気形成部20と、混合気形成部20の下流側に配設された触媒部21と、触媒部21の下流側に配設された排気配管13とを備える。このような構成によれば、逆火火炎がアノードオフガス導入口18まで到達したり、アノードオフガス導入口18において拡散火炎が発生したりすることを防止できるので、余混合燃焼となり、拡散火炎と比較して排気がクリーンになる。なお、燃焼器9の形状や材質は、燃料電池システム1に要求されるガス流量や発熱量等の仕様値を満足するものであれば、設計者の意図に応じて適宜変更してもよい。
【0019】
アノードオフガス導入口18は、先端側部分が燃焼器9内部方向に突出した状態でアノードオフガス配管7に接続された燃料噴射パイプにより構成され、先端側部分に形成された燃料噴出孔からアノードオフガスを排出する。より具体的には、アノードオフガス導入口18は、先端部分に穴を有する1/4インチのステンレスパイプから成る配管により構成され、パイプの周面には燃料噴射孔が形成されている。
【0020】
混合気形成部20は、空間,スワラー,複数枚の多孔板等の公知のガス混合技術を用いて構成され、アノードオフガス導入口18及び酸化剤ガス導入口19から供給された水素と空気を混合する。なお、混合気形成部20として、図5に示すようにフレームアレスタ機能を有する混合気形成部22を用いてもよい。フレームアレスタ機能は、混合気形成部の熱容量を大きくしたり、多孔板を用いて混合気形成部を形成したりすることによって構成することができ、フレームアレスタ機能によって、混合気形成部上流側に熱(燃焼)エネルギーが伝達することを防止することができる。
【0021】
触媒部21は、メタルハニカムやセラミックハニカム等の担体に白金等の貴金属を担持した公知の触媒技術を用いて構成され、混合気形成部20により形成された水素と空気の混合気体を燃焼する。
【0022】
排気配管13は、燃焼器9から排出されるガスの熱に耐えられる材質により形成され、触媒部21から排出されたガスを系外に排出する。なお、排気配管13の形状は設計者の意図に応じて設計可能であり、排気配管13にマフラー等の消音装置を設けることもできる。また、触媒部21の下流側に熱交換器やタービン等を設置し、燃焼器9の排熱を利用可能にすることにより、システム効率を向上させることもできる。
【0023】
〔排気系の構成〕
上記排気配管13は、図6に示すように、カソードオフガス及び燃焼排気ガスがそれぞれカソードオフガス配管12側及び燃焼器9側に逆流することを防止するために、カソードオフガス配管12及び燃焼器9の下流側にチェックバルブ方式の逆流防止弁25を備える。このような構成によれば、排気圧損を低減することができるので、システムを効率化することができると共に、空気供給装置の小型化,軽量化,低コスト化を実現することができる。また、排気が逆流することによって制御性能が悪化することを防止できるので、制御を簡素化することができる。また、カソードオフガスと燃焼排気ガスを合流させた後に系外に排出することにより、排出水素濃度管理及び排気システムを簡素化することができる。また、不具合等によって未処理水素が排出された場合であっても、排出水素濃度を低濃度に抑えることができる。また、排出濃度測定部位を一カ所に集約することができるので、排気濃度試験を簡略化することができる。
【0024】
なお、逆流防止弁25は、カソードオフガス配管12の下流側に設けられたものと燃焼器9の下流側に設けられたものとで同じである必要はなく、それぞれの流路や通流流体の特性に合わせて変更してもよい。また、カソードオフガス配管12及び燃焼器9の一方にのみ逆流防止弁25を設けるようにしてもよい。また一般に、チェックバルブ方式の逆流防止弁では、上流側からのガス流圧によって弁を閉じているバネが押され、バネが押されることによって弁を閉じる蓋が移動し、蓋が移動することによって流路が開き、流路が開くことによってガスが通流可能となる。そして逆に、下流側から圧力が供給された場合には、バネが蓋を閉じる力を支持する方向に圧力が掛かるために、流路は開かず、ガスは通流することができない。従って、上記逆流防止弁25によれば、カソードオフガス配管12及び燃焼器9側の圧力の方が排気配管13側の圧力よりも高い場合においてのみ、逆流防止弁25が開き、ガスが通流可能になる。
【0025】
なお、排気配管13に、図7に示すように、燃焼器9から排出された燃焼排気ガスを排気配管13内に導入する排気ガス導入部26と、排気ガス導入部26に設けられた、上流側から下流側に広がる円盤形状の板からなる渦発生源27を設けるようにしてもよい。このような構成によれば、渦発生源27の下流側でガスの流れが剥離し、剥離した点を起点として大規模な乱流渦が発生し、乱流渦によるガス流動によって排気ガス導入部26近傍のカソードオフガス圧力(排気抵抗)が低下するので、燃焼器9から排出された燃焼排気ガスを効果的に排気配管13内に導入することができる。また、空気供給装置の小型化,軽量化,低コスト化を実現することができると共に、システムを効率化することができる。なお、排気ガス導入部26としては、燃焼温度に耐えられるステンレス等の材質からなるパイプを用いることが望ましく、この場合、パイプの先端に複数の孔を形成し、この孔を介して排気配管13内に燃焼排気ガスを供給するとよい。また、渦発生源27は、邪魔板等の固定障害物や可変可能なバタフライバルブ等、要求される渦を発生可能なものであればどのようなものであってもよい。また、渦発生源27の代わりに、流路断面を狭めて内部のガス流速を速めることにより、排気ガス導入部26周辺の圧力を低下させるようにしてもよい。
【0026】
〔制御系の構成〕
上記燃料電池システム1は、触媒部21の上流側のガス温度T1を検出する温度センサ31と、触媒部21の下流側のガス温度T2を検出する温度センサ32と、燃料電池システム1全体の動作を制御するコントローラ33とを備える。混合気形成部20と触媒部21の間に温度センサ31を設けることにより、混合気形成部20の熱容量の影響を受け難い位置で温度を検出し、逆火が発生した時の温度変化を速やかに検知することができる。なお、温度センサ31,32としては、利用条件に耐えられるサーミスタ等の公知の温度計測手段を用いることができる。また、この実施形態では、コントローラ33は、CPUと、プログラムROMと、作業用RAMと、入出力インタフェースとを備えたマイクロプロセッサにより構成される。
【0027】
〔触媒部上流側及び下流側のガス温度変化〕
次に、図8乃至図10を参照して、(1)燃焼開始直後、(2)連続パージ時及び断続パージ時における触媒部21上流側及び下流側のガス温度変化を、通常の触媒燃焼時及び触媒部21上流側での気相燃焼時の場合に分けて説明する。
【0028】
〔燃焼開始時の温度推移〕
始めに、図8を参照して、燃焼開始直後における触媒部21上流側及び下流側のガス温度変化について説明する。なお、システム構成や制御の種類によってはシステム起動時に起動燃焼処理を行うことがある。すなわち、燃料電池2が発電を開始する前に、水素と空気を燃焼器9に供給し、触媒部21において燃焼処理を行うことがある。また、システムの種類によっては、起動パージとして、ある一定時間、アノード極からアノードオフガスを排出する場合がある。しかしながら、触媒部21の上流側及び下流側のガス温度変化はこのような場合でも同じであるので、以下では、通常起動時を例として説明する。
【0029】
燃料開始直後、燃焼器9の燃焼状態が通常の触媒燃焼状態にある場合、触媒部21において反応が生じて発熱する。そして、触媒部21で発生した熱はガス流によって触媒部21の下流側に運ばれるため、図8(a)に示すように、下流側温度センサ32の検出温度T2が上昇し燃焼温度を示す。また、上流側温度センサ31の検出温度T1は、触媒部21からの放射熱によって上昇することがあるが、図8(a)に示すように、概して下流側温度センサ32の検出温度T2より低い温度を示し、またその上昇速度a1は遅い(曲線の傾きa1<a2)。
【0030】
一方、逆火等によって触媒部21の上流側が気相燃焼状態になった場合には、燃焼はアノードガス導入口18から触媒部21の間(より具体的には混合気形成部20と触媒部21の間)で行われ、図8(b)に示すように、その燃焼熱によって上流側温度センサ31の検出温度T1が上昇し燃焼温度を示す。また、下流側温度センサ32の検出温度T2は、図8(b)に示すように、気相燃焼によって発生した熱を直接受けることがないために、上昇速度が遅く、且つ、上流側のガス温度T1に対して低い温度を示す。そして、このまま燃焼が継続すると、図8(b)に示すように、検出温度T2は上昇し、検出温度T1と検出温度T2の温度差は小さくなる。
【0031】
〔連続パージ時及び断続パージ時の温度推移〕
次に、図9,10を参照して、連続パージ時及び断続パージ時における触媒部21の上流側及び下流側のガス温度変化について説明する。
【0032】
連続パージや断続パージ時において、燃焼器9の燃焼状態が通常の触媒燃焼状態にある場合、触媒部21において反応が生じ発熱する。そして、触媒部21で発生した熱はガス流によって触媒部21の下流側に運ばれるため、図9(a)や図10(a)に示すように、下流側温度センサ32の検出温度T2が上昇し、燃焼温度を示す。また、検出温度T2は、パージ条件によって、安定した温度になったり(連続パージ時、図9(a)参照)、燃料の供給に合わせて変動したりする(断続パージ時、図10(a)参照)。また、上流側温度センサ31の検出温度T1は、触媒部21からの放射熱によって上昇することがあるが、図9(a)や図10(a)に示すように、概して下流側温度センサ32の検出温度T2より低い温度を示し、また、その上昇速度a1は遅い(曲線の傾きa1<a2)。一方、逆火等によって触媒部21の上流側が気相燃焼状態になった場合には、燃焼はアノードガス導入口18から触媒部21の間(より具体的には混合気形成部20と触媒部21の間)で生じ、その燃焼熱によって上流側温度センサ31の検出温度T1が上昇し、燃焼温度を示す。
【0033】
このように、通常の触媒燃焼時と触媒部21上流側で気相燃焼が発生している時とでは、触媒部21上流側及び下流側のガス温度変化が異なるので、この温度変化を監視することにより、燃焼器9の燃焼状態を判別することができる。なお、燃焼器9の燃焼状態が通常の触媒燃焼状態にある際と触媒部21上流側が気相燃焼状態にある際の、触媒部21上流側及び下流側の温度T1,T2とその上昇速度a1,a2の関係は図11に示すテーブルのようになる。以下、通常の触媒燃焼時と触媒部21上流側で気相燃焼が発生している時における触媒部21上流側及び下流側のガス温度変化特性の違いを利用した、本発明の実施形態となる燃焼状態判定処理を実行する際のコントローラ33の動作について説明する。
【0034】
〔燃焼状態判定処理〕
【実施例1】
【0035】
始めに、図12に示すフローチャートを参照して、本発明の第1の実施形態となる燃焼状態判定処理を実行する際のコントローラ33の動作について説明する。
【0036】
図12に示すフローチャートは、燃料電池システム1が起動され、上位制御処理から燃焼状態判定処理に移行するのに応じて開始となり、この燃焼状態判定処理はステップS1の処理に進む。なお、この燃焼状態判定処理は、燃料電池システム1が起動してから停止するまでの間、100[msec]〜1[sec]程度の一定のサンプリング間隔t毎に繰り返し実行することが望ましい。但し、サンプリング間隔tが短いと、ノイズ等の影響を受け易くなり、ノイズ対策が必要になる一方、サンプリング間隔tが長いと触媒部21上流側での気相燃焼の検知が遅れるので、サンプリング間隔tはシステムの運転特性に応じて設計者が設定することが望ましい。また、この燃焼状態判定処理は、上位制御とは独立して一定のサンプリング間隔t毎に実行し、燃焼状態を示す診断フラグへの入力を繰り返すようにしてもよい。この場合、コントローラ33は診断フラグを参照して上位制御処理を行う。
【0037】
ステップS1の処理では、コントローラ33が、温度センサ31を利用して、触媒部21の上流側のガス温度T1を検出する。これにより、このステップS1の処理は完了し、この判定処理はステップS2の処理に進む。
【0038】
ステップS2の処理では、コントローラ33が、前回及び今回のステップS1の処理により検出したガス温度T1の差分値を算出し、算出された差分値をサンプリング間隔tで除算することによりガス温度T1の昇温速度a1(=dT1/dt)を算出する。これにより、このステップS2の処理は完了し、この判定処理はステップS3の処理に進む。
【0039】
ステップS3の処理では、コントローラ33が、ステップS2の処理により算出された昇温速度a1が判定基準値α以上であるか否かを判別する。なお、この判定基準値αは、25[℃/sec]等の固定値,図13(a),(b)に示すようなシステムの運転負荷(出力)に応じて変動する値,又は図13(c)に示すようなガス温度T1に応じて変動する値のいずれでもよく、システムの運転特性や設計者の意図に応じて設定するとよい。そして、判別の結果、昇温速度a1が判定基準値α以上である場合(判定基準A1)、コントローラ33は、この判定処理をステップS5の処理に進める。一方、昇温速度a1が判定基準値α以上でない場合には、コントローラ33はこの判定処理をステップS4の処理に進める。
【0040】
ステップS4の処理では、コントローラ33が、燃焼器9が通常の触媒燃焼状態にあると判断し、上位制御に対して通常の触媒燃焼状態である旨を伝える信号を送ることにより上位制御に戻る。なお、コントローラ33は、上位制御に戻らずに、判定処理をステップS1の処理に戻すようにしてもよい。
【0041】
ステップS5の処理では、コントローラ33が、温度T1の昇温速度a1がシステムの運転条件に基づいて算出された許容昇温速度よりも速いと判断し、触媒部21の上流側で気相燃焼が発生していると判断する。そして、コントローラ33は、気相燃焼状態を抑制するための気相処理制御へと制御を移行する。なお、コントローラ33は、直接気相処理制御へと移行しないで、上位制御に対して気相燃焼状態が発生した旨を伝える信号を送ったり、気相燃焼判定フラグを立てたりしてもよい。
【0042】
以上の説明から明らかなように、本発明の第1の実施形態となる燃焼状態判定処理によれば、コントローラ33が、触媒部21上流側のガス温度T1の昇温速度a1を用いて燃焼器9の燃焼状態を検知するので、触媒部21の上流側で気相燃焼が発生していることを的確、且つ、速やかに検知することができる。
【0043】
また、本発明の第1の実施形態となる燃焼状態判定処理によれば、コントローラ33が、昇温速度a1が判定基準値α以上である場合(判定基準A1)、触媒部21の上流側が気相燃焼状態にあると判定するので、気相燃焼によって温度が高温になる前に、燃焼器9の燃焼状態を検知することができる。
【0044】
なお、コントローラ33は、判定基準A1が満たされた場合であって、且つ、触媒部21上流側のガス温度T1が運転条件に従って定められる許容温度以上になった場合(判定基準B1)において、触媒部21の上流側が気相燃焼状態にあると判定してもよい。これにより、測定ノイズ等による誤診断を防止できると共に、単純に温度のみを用いて判定するよりも判定閾値を下げることができるので、燃焼状態判定時間を短縮することができる。なおこの処理は、図17のフローチャートに示すように、図12に示すステップS3の処理を昇温速度a1が判定基準値α以上、且つ、ガス温度T1が判定基準値β以上であるか否か判別する処理に変更することにより実施することができる。また、例えば温度T1が800[℃]であることを検知するのに10秒程度必要だとしても、この処理によれば、昇温速度a1が25[℃/sec]以上、且つ、ガス温度T1が200[℃]以上を判定閾値とした場合、5秒程度で気相燃焼状態を検知することができ、燃焼器9の温度が十分に低い状態で燃焼状態制御処理に移行することができる。
【実施例2】
【0045】
次に、図14に示すフローチャートを参照して、本発明の第2の実施形態となる燃焼状態判定処理を実行する際のコントローラ33の動作について説明する。
【0046】
図14に示すフローチャートは、燃料電池システム1が起動され、上位制御処理から燃焼状態判定処理に移行するのに応じて開始となり、この燃焼状態判定処理はステップS11の処理に進む。
【0047】
ステップS11の処理では、コントローラ33が、温度センサ31,32を利用して、触媒部21の上流側及び下流側のガス温度T1,T2を検出する。これにより、このステップS11の処理は完了し、この判定処理はステップS12の処理に進む。
【0048】
ステップS12の処理では、コントローラ33が、前回及び今回のステップS11の処理により検出したガス温度T1,T2の差分値を算出し、算出された差分値をサンプリング間隔tで除算することによりガス温度T1,T2の昇温速度a1,a2(=dT2/dt)を算出する。これにより、このステップS12の処理は完了し、この判定処理はステップS13の処理に進む。
【0049】
ステップS13の処理では、コントローラ33が、ステップS12の処理により算出された昇温速度a1が昇温速度a2以上であるか否かを判別する。そして、判別の結果、昇温速度a1が昇温速度a2以上である場合(判定基準A2)、コントローラ33は、ステップS15の処理として触媒部21の上流側が気相燃焼状態にあると判断し、気相処理制御へと制御を移行する。一方、昇温速度a1が昇温速度a2以上でない場合には、コントローラ33は、ステップS14の処理として燃焼器9が通常の触媒燃焼状態にあると判断し上位制御に戻る。なお、コントローラ33は、上位制御に戻らずに、判定処理をステップS11の処理に戻すようにしてもよい。また、上記ステップS13の処理において、コントローラ33は、昇温速度a1が昇温速度a2に所定値γを加算した値以上であるか否かを判別するようにしてもよい。この場合、所定値γは、判定基準値αと同様、運転状態に応じて変動する値であってもよい。
【0050】
以上の説明から明らかなように、本発明の第2の実施形態となる燃焼状態判定処理によれば、コントローラ33が、触媒部21の上流側のガス温度と昇温速度の少なくとも一方を触媒部21の下流側のガス温度及び昇温速度の少なくとも一方と比較することにより、触媒部21の上流側における気相燃焼を検知するので、燃焼時間の判定時間を短縮することができると共に、ノイズによる誤判定を防止することができる。また、触媒部21の下流側にある構成要素を過昇温による熱害から守ることができる。
【0051】
また、本発明の第2の実施形態となる燃焼状態判定処理によれば、コントローラ33が、昇温速度a1が昇温速度a2以上である場合(判定基準A2)、触媒部21の上流側が気相燃焼状態にあると判定するので、気相燃焼によって温度が高温になる前に、触媒部21の上流側での気相燃焼状態を検知することができる。
【0052】
なお、コントローラ33は、昇温速度a1が判定基準値α以上である場合(判定基準A1)、且つ、昇温速度a1が昇温速度a2以上である場合(判定基準A2)において、触媒部21の上流側が気相燃焼状態にあると判定してもよい。これにより、測定ノイズ等による誤診断を防止できる。なおこの処理は、図18のフローチャートに示すように、図14に示すステップS13の処理を昇温速度a1が判定基準値α以上であり、且つ、昇温速度a1が昇温速度a2以上であるか否か判別する処理に変更することにより実施することができる。
【0053】
また、コントローラ33は、触媒部21上流側のガス温度T1が運転条件に従って定められる許容温度以上になった場合(判定基準B1)、且つ、昇温速度a1が昇温速度a2以上である場合(判定基準A2)において、触媒部21の上流側が気相燃焼状態にあると判定してもよい。これにより、測定ノイズ等による誤診断を防止できると共に、単純に温度のみを用いて判定するよりも判定閾値を下げることができるので、燃焼状態判定時間を短縮することができる。なおこの処理は、図19のフローチャートに示すように、図14に示すステップS13の処理を触媒部21上流側のガス温度T1が運転条件に従って定められる許容温度β以上、且つ、昇温速度a1が昇温速度a2以上であるか否か判別する処理に変更することにより実施することができる。
【0054】
また、コントローラ33は、昇温速度a1が判定基準値α以上である場合(判定基準A1)、且つ、昇温速度a1が昇温速度a2以上である場合(判定基準A2)、且つ、触媒部21上流側のガス温度T1が運転条件に従って定められる許容温度β以上になった場合(判定基準B1)において、触媒部21の上流側が気相燃焼状態にあると判定してもよい。これにより、測定ノイズ等による誤診断を防止できる。なおこの処理は、図20のフローチャートに示すように、図14に示すステップS13の処理を昇温速度a1が判定基準値α以上であり、且つ、昇温速度a1が昇温速度a2以上であり、且つ、触媒部21上流側のガス温度T1が運転条件に従って定められる許容温度β以上であるか否か判別する処理に変更することにより実施することができる。
【0055】
また、コントローラ33は、昇温速度a1が判定基準値α以上である場合(判定基準A1)、及び/又は、昇温速度a1が昇温速度a2以上である場合(判定基準A2)、且つ、触媒部21上流側のガス温度T1が触媒部21下流側のガス温度T2以上になった場合(判定基準B2)において、触媒部21の上流側が気相燃焼状態にあると判定してもよい。これにより、測定ノイズ等による誤診断を防止できる。なおこの処理は、図21のフローチャートに示すように、図14に示すステップS13の処理を昇温速度a1が判定基準値α以上であり、及び/又は、昇温速度a1が昇温速度a2以上であり、且つ、触媒部21上流側のガス温度T1が触媒部21下流側のガス温度T2以上であるか否か判別する処理に変更することにより実施することができる。
【実施例3】
【0056】
次に、図15に示すフローチャートを参照して、本発明の第3の実施形態となる燃焼状態判定処理を実行する際のコントローラ33の動作について説明する。
【0057】
図15に示すフローチャートは、燃料電池システム1が起動され、上位制御処理から燃焼状態判定処理に移行するのに応じて開始となり、この燃焼状態判定処理はステップS21の処理に進む。
【0058】
ステップS21の処理では、コントローラ33が、温度センサ31,32を利用して触媒部21の上流側及び下流側のガス温度T1,T2を検出する。これにより、このステップS21の処理は完了し、この判定処理はステップS22の処理に進む。
【0059】
ステップS22の処理では、コントローラ33が、前回及び今回のステップS21の処理により検出したガス温度T1,T2の差分値を算出し、算出された差分値をサンプリング間隔tで除算することによりガス温度T2,T3の昇温速度a1,a2を算出する。これにより、このステップS22の処理は完了し、この判定処理はステップS23の処理に進む。
【0060】
ステップS23の処理では、コントローラ33が、第1の判定基準に従って燃焼器9が通常の触媒燃焼状態と触媒部21上流側での気相燃焼状態のどちらの状態にあるかを判別する。なお、この第1の判定基準としては、設計者がシステムに応じて上記判定基準A1,A2,B1,B2のうちの任意の判定基準の組み合わせを用いることができる。そして、判別の結果、燃焼器9が通常の触媒燃焼状態にある場合、コントローラ33はこの判定処理をステップS27の処理に進める。一方、触媒部21上流側が気相燃焼状態にある場合には、コントローラ33はこの判定処理をステップS24の処理に進める。
【0061】
ステップS24の処理では、コントローラ33が、第2の判定基準に従って燃焼器9が通常の触媒燃焼状態と触媒部21上流側での気相燃焼状態のどちらの状態にあるかを判別する。なお、この第2の判定基準は、上記判定基準A1,A2,B1,B2のうちの任意の判定基準の組み合わせのうち、上記第1の判定基準以外のものを示す。そして、判別の結果、燃焼器9が通常の触媒燃焼状態にある場合、コントローラ33はこの判定処理をステップS27の処理に進める。一方、触媒部21上流側が気相燃焼状態にある場合には、コントローラ33はこの判定処理をステップS25の処理に進める。
【0062】
ステップS25の処理では、コントローラ33が、第3の判定基準に従って燃焼器9が通常の触媒燃焼状態と触媒部21上流側での気相燃焼状態のどちらの状態にあるかを判別する。なお、この第3の判定基準は、上記判定基準A1,A2,B1,B2のうちの任意の判定基準の組み合わせのうち、上記第1及び第2の判定基準以外のものを示す。そして、判別の結果、燃焼器9が通常の触媒燃焼状態にある場合、コントローラ33はこの判定処理をステップS27の処理に進める。一方、触媒部21上流側が気相燃焼状態にある場合には、コントローラ33はこの判定処理をステップS26の処理に進める。
【0063】
以上の説明から明らかなように、本発明の第3の実施形態となる燃焼状態判定処理によれば、コントローラ33は、判定基準A1,A2,B1,B2のうちの任意の判定基準の組み合わせに従って触媒部21上流側での気相燃焼状態を検知するので、最も誤診断が少なく、且つ、診断時間が速い判定基準を設定することができる。
【0064】
なお、この実施形態では、触媒部21上流側が気相燃焼状態にあると判定された際、コントローラ33は次の判定ステップに処理を進めたが、図16に示すように、燃焼器9が通常の触媒燃焼状態にあると判定された際に次の判定ステップに処理を進めるようにしてもよい。また、コントローラ33は、3つの判定ステップにより燃焼器9の触媒燃焼状態を判別したが、判定ステップは2つであっても、4つ以上であってもよい。なお、判定ステップ数が増えることにより触媒部21の上流側での気相燃焼状態を確実に検知することができるようになるが、判定ステップ数が必要以上に多いとその分気相燃焼状態の検知に要する時間が長くなるので、設計者はシステムの特徴等を考慮して判定ステップ数を適切に設定することが望ましい。
【0065】
以上、本発明者らによってなされた発明を適用した実施の形態について説明したが、この実施の形態による本発明の開示の一部をなす論述及び図面により本発明は限定されることはない。例えば、上記実施形態では、一回の判定処理で触媒部21の上流側が気相燃焼状態にあるか否かを判別したが、図12のフローチャートに示す処理を図22や図23のフローチャートに示す処理に変更し、燃焼状態判定処理を複数回行った後に触媒部21の上流側が気相燃焼状態にあるか否かを判別するようにしてもよい。具体的には、劣化判定処理が0.1[sec」のサンプリング間隔で実行されている場合には、1[sec](10サイクル)中5回気相燃焼が検知された場合(図22に示すステップS93,94,96,97,99の処理)や、0.1[sec」サイクルにおいて4サイクル連続(0.4秒間)で気相燃焼が検知された場合(図23に示すステップS112,115,116の処理)において、触媒部21の上流側が気相燃焼状態にあると判定するようにしてもよい。このような処理によれば、ノイズ等の影響による誤診断を防止することができる。このように、上記実施の形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施の形態、実施例及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれることは勿論であることを付け加えておく。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の一実施形態となる燃料電池システムの構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示す燃料電池システムの応用例の構成を示すブロック図である。
【図3】図1に示す燃料電池システムの応用例の構成を示すブロック図である。
【図4】図1に示す燃料電池システムの応用例の構成を示すブロック図である。
【図5】図1に示す燃焼器の応用例の構成を示す模式図である。
【図6】図1に示す排気配管の内部構成を示す模式図である。
【図7】図6に示す排気配管の応用例の内部構成を示す模式図である。
【図8】燃焼開始時における触媒部上流側及び触媒部下流側のガス温度の時間的変化を示す図である。
【図9】連続パージ時における触媒部上流側及び触媒部下流側のガス温度の時間的変化を示す図である。
【図10】断続パージ時における触媒部上流側及び触媒部下流側のガス温度の時間的変化を示す図である。
【図11】通常燃焼時及び触媒部上流側での気相燃焼時における触媒部上流側のガス温度と昇温速度,及び触媒部下流側のガス温度と昇温速度の関係を示す図である。
【図12】本発明の第1の実施形態となる燃焼状態判定処理の流れを示すフローチャート図である。
【図13】本発明の実施形態となる判定基準値を示す図である。
【図14】本発明の第2の実施形態となる燃焼状態判定処理の流れを示すフローチャート図である。
【図15】本発明の第3の実施形態となる燃焼状態判定処理の流れを示すフローチャート図である。
【図16】図15に示す燃焼状態判定処理の応用例の流れを示すフローチャート図である。
【図17】図12に示す燃焼状態判定処理の応用例の流れを示すフローチャート図である。
【図18】図14に示す燃焼状態判定処理の応用例の流れを示すフローチャート図である。
【図19】図14に示す燃焼状態判定処理の応用例の流れを示すフローチャート図である。
【図20】図14に示す燃焼状態判定処理の応用例の流れを示すフローチャート図である。
【図21】図14に示す燃焼状態判定処理の応用例の流れを示すフローチャート図である。
【図22】本発明の他の実施形態となる燃焼状態判定処理の流れを示すフローチャート図である。
【図23】本発明の他の実施形態となる燃焼状態判定処理の流れを示すフローチャート図である。
【符号の説明】
【0067】
1:燃料電池システム
2:燃料電池
3:燃料電池スタック
4:水素供給配管
5:水素循環配管
6:水素循環ポンプ
7:アノードオフガス配管
8:アノードパージ弁
9:燃焼器
10:コンプレッサ
11:空気供給配管
12:カソードオフガス配管
13:排気配管
14:バイパス配管
15,16:空気供給装置
18:アノードオフガス導入口
19:酸化剤ガス導入口
20,22:混合気形成部
21:触媒部
25:逆流防止弁
26:排気ガス導入部
27:渦発生源
31,32:温度センサ
33:コントローラ
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒部の上流側が気相燃焼状態にあることを検知するための触媒燃焼器の燃焼状態検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、燃料電池システムでは、アノード極側の窒素濃度及び水蒸気濃度が上昇することによって、発電効率が低下したり、発電が停止したりすることを防止するために、アノード極側のガス及び凝縮水を系外に排出するパージ処理が行われる。また、このパージ処理によって系外に排出されるガス(以下、アノードオフガスと表記)には、窒素や水蒸気と共に燃料ガスである水素の未使用分が含まれるために、アノードオフガスに他のガスを混合することにより水素濃度を希釈する処理や、アノードオフガスに酸化剤ガスを混合して水素を燃焼する処理がパージ処理と併せて行われる。
【0003】
ところで、水素の燃焼媒体として触媒燃焼器を利用する場合、燃焼温度の上昇に伴い逆火が発生し、触媒燃焼器の燃焼状態が通常の触媒燃焼状態から気相燃焼状態へと変化する。そして、燃焼状態が気相燃焼状態に変化すると、燃焼温度の上昇に伴う熱害による触媒燃焼器,触媒,及び周辺環境に対するダメージや、高温気相燃焼によるNOx等の副生成ガスの生成等、環境への影響が大きくなる。このような背景から、触媒燃焼器の燃料供給部上流側近傍に温度検知手段を設け、温度検知手段により検知された温度に基づいて触媒からの逆火による気相燃焼を検知する装置が提案されている(特許文献1参照)。また、触媒燃焼器の燃料供給部近傍に火炎センサを設け、火炎センサによって触媒からの逆火を検知する装置も提案されている(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平11−118115号公報
【特許文献2】特開2004−37034号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、一般に、触媒燃焼器に供給される酸化剤ガスが多量の水分を含有している場合や酸化剤ガス中の酸素濃度が低い場合には、触媒の着火性能が損なわれる。特に、水分の影響は著しく、触媒が水分に覆われてしまった場合には、反応面積を確保することができないために本来の着火性能を発揮することができなくなる。そして、触媒の着火性能が損なわれた場合には、燃料電池システムの排気特性に問題が生じることがある。また、正しく着火できない場合には、触媒燃焼器の制御に支障をきたすために、その副作用として燃料電池システムとしての効率が悪化する可能性がある。
【0005】
また、触媒燃焼器の下流側の温度を検出したとしても逆火等による触媒部の上流側における気相燃焼状態を速やかに検知することはできない。また、温度検知手段によって触媒部の上流側での気相燃焼状態を検知する際、触媒部から温度検出手段までの距離が離れている場合には、相当な距離の逆火が発生しない限り気相燃焼状態を検知することができない。このため、実際に気相燃焼状態を検知した時には、燃焼温度がある程度上昇しており、その結果、触媒性能が熱の影響によって劣化する恐れがある。特に、触媒は、ある一定の触媒耐熱温度を超えた温度に曝されると劣化が促進されるために、触媒燃焼器の寿命が短くなる可能性がある。
【0006】
また、触媒燃焼器が燃料電池車両に搭載されている場合には、気相燃焼によってNOx等の規制物質が生成されるために、気相燃焼状態を早急に検知する必要がある。しかしながら、車両に搭載可能な十分な信頼性や寿命を有する温度検出手段を利用したとしても、温度反応が遅く、温度検知に要する時間が長くなってしまう。また、火炎センサを用いることにより気相燃焼状態を検知することができるが、燃料電池等に使用した場合には水分の影響によって炎の検知が遅れる恐れがある。
【0007】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、その目的は、触媒部の上流側が気相燃焼状態にあることを的確、且つ、速やかに検知することが可能な触媒燃焼器の燃焼状態検知装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の課題を解決するために、本発明に係る触媒燃焼器の燃焼状態検知装置は、燃料電池の燃料極から排出されるアノードオフガスを、前記燃料電池の酸化剤極から排出されるカソードオフガスとは異なる酸化剤ガスと混合し、触媒部において燃焼処理する触媒燃焼器と、触媒部の上流側のガス温度を測定する触媒上流側温度測定手段と、触媒上流側温度測定手段により測定された温度と昇温速度の少なくとも一方を判定基準値と比較することにより、触媒部の上流側における気相燃焼を検知する気相燃焼検知手段とを備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る触媒燃焼器の燃焼状態検知装置によれば、アノードオフガスを燃料電池の酸化剤極から排出されるカソードオフガスとは異なる酸化剤ガスと混合し燃焼処理することにより、カソードオフガスの高湿・低酸素濃度状態による悪影響を防止するので、失火や着火遅れなどの燃焼不具合を防止し、確実な触媒燃焼が可能となる。またこの結果、触媒部の上流側の昇温速度や温度を用いて触媒部の上流側での気相燃焼状態を検知することができると共に、昇温速度を用いることによって燃焼状態の判定時間を短縮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は例えば図1に示すような燃料電池システムに適用することができる。以下図面を参照して、本発明の一実施形態となる燃料電池システムの構成と動作について説明する。
【0011】
〔燃料電池システムの構成〕
本発明の一実施形態となる燃料電池システム1は、図1に示すように、アノード極(燃料極)及びカソード極(酸化剤極)にそれぞれ水素及び空気の供給を受けて発電する燃料電池2が複数積層された燃料電池スタック3を備える。なお、アノード極及びカソード極における電気化学反応及び燃料電池スタック3全体としての電気化学反応は以下に示す式(1)〜(3)による。また、本実施形態では、アノード極に水素を供給したが、水素の代わりに水素リッチな改質ガスを供給するようにしてもよい。
【0012】
〔アノード極〕 H2 → 2H+ +2e- …(1)
〔カソード極〕 1/2 O2 +2H+ +2e- → H2O …(2)
〔全体〕 H2 +1/2 O2 → H2O …(3)
〔水素系の構成〕
上記燃料電池システム1は、図示しない水素タンク及び水素供給弁を備え、水素供給弁により水素タンク内の水素の圧力を燃料電池2の運転状態に合わせた圧力まで減圧した後、水素供給配管4を介してアノード極に水素を供給する。また、アノード極で未使用の水素は、水素循環配管5及び水素循環ポンプ6を介してアノード極の上流側へ循環される。水素循環配管5及び水素循環ポンプ6を設けることにより、アノード極で未使用の水素を再利用することが可能となり、燃料電池システム1の燃費性能を向上させることができる。なお、燃料電池2の運転条件と適合すれば、水素循環ポンプ6に代えて流体ポンプであるエゼクタを使用してもよい。また、水素タンク内に貯蔵された水素ではなく、液体水素や水素吸蔵合金から得られる水素や燃料ガスを改質することにより得られる水素をアノード極に供給するようにしてもよい。
【0013】
水素循環配管5及び水素循環ポンプ6を介してアノード極に戻る水素の循環流路には、カソード極からリークした空気中の窒素や水蒸気等の不純物ガス、或いは、過剰な水分が液化した液水が蓄積することがある。そして、これらの不純物ガスは、水素の分圧を低下させて発電効率を低下させたり、循環ガスの平均分子量を上昇させ水素の循環を困難(循環効率が悪化)にしたりする。また液水は水素の循環やスタックの発電を妨げる場合がある。このため、アノード極の出口側には、アノードオフガス配管7と、これを開閉するアノードパージ弁8が設けられている。そして、不純物ガスや液水が蓄積した際には、アノードパージ弁8を開き、空気を利用してアノードパージ弁8から排出されたガス(以下、アノードオフガスと表記)を燃焼器9で燃焼処理した後に系外へ排出するパージを行う。これにより、アノード極を含む水素循環配管5内の水素分圧や循環性能を回復させることができる。なお、アノードパージ弁8から燃焼器9に排出するアノードオフガス量や排出タイミングは、運転条件に応じて制御される量を連続的にパージし続けたり(連続パージ)、運転条件に応じてパージ量を断続的に制御したりする(断続パージ)等、設計者が任意に設定するとよい。
【0014】
〔空気系の構成〕
上記燃料電池システム1は、コンプレッサ10と図示しない加湿装置を備え、コンプレッサ10が吐出した空気を加湿装置で加湿した後に空気供給配管11を介してカソード極に供給する。そして、カソード極で未使用の空気はカソードオフガス配管12を介して排気配管13に送られる。また、空気供給配管11には、バイパス配管14が設けられ、バイパス配管14を介して加湿装置によって加湿される前の空気を直接燃焼器9に供給可能なように構成されている。このような構成によれば、カソードオフガスと比較して湿度が低く、且つ、酸素分圧が高い空気を燃焼器9に供給できるので、カソードオフガスの高湿・低酸素濃度状態による悪影響を防止し、失火や着火遅れなどの燃焼不具合を防止し、確実な触媒燃焼が可能となる。すなわち、燃焼器9において確実な触媒燃焼処理を行い、燃焼器9の燃焼効率を高く保つことができる。
【0015】
なお、図2に示すように、バイパス配管14によって分岐された空気を燃料電池スタック3周辺のケース内に導入し、ケース内を通流した空気を燃焼器9に供給するようにしてもよい。このような構成によれば、カソードオフガスと比較して湿度が低く、且つ、酸素分圧が高い空気を燃焼器9に供給できるので、燃焼器9の燃焼効率を高く保つことができる。また、アノード極からケース内部に透過,拡散した水素を燃焼器9に供給できるので、アノード極からケース内部に透過,拡散した水素を確実、且つ、効果的に燃焼させることができる。また、ケース内換気用空気と燃焼器9用空気を兼用することによって、システムを簡素化し、サイズ,質量,部品点数を削減することができる。
【0016】
また、図3に示すように、コンプレッサ10の他にブロア等の燃焼器9用の空気供給装置15を設け、空気供給装置15から燃焼器9にアノードオフガスの燃焼に必要な空気を供給するようにしてもよい。このような構成によれば、カソードオフガスと比較して湿度が低く、且つ、酸素分圧が高い空気を燃焼器9に供給できるので、燃焼器9の燃焼効率を高く保つことができる。また、図1や図2に示すような空気供給装置が1台しかないシステムと比較して、燃料電池2及び燃焼器9それぞれの要求空気量を供給可能な空気供給装置を設ければよくなるので、空気供給装置の小型化が可能となると共に、質量,コスト,消費電力,運転効率,制御のロバスト性等の面で有利となる。また特に低空気流量側では、2台の小型の空気供給装置を用いる方が1台の大型の空気供給装置を用いる場合よりも高効率運転が可能である。また、1台の空気供給装置から吐出された空気を2流路に分岐する場合には、各流路の空気流量を制御が困難であるために制御系の部品点数が増加する可能性があるが、このような構成によれば、制御系の部品点数の増加を抑えることができる。
【0017】
また、図4に示すように、コンプレッサ10の他に空気供給装置16を設け、空気供給装置16によって燃料電池スタック3周辺のケース内を通流した空気を燃焼器9に供給するようにしてもよい。このような構成によれば、燃料電池スタック3内のアノード極からケース内部に透過,拡散した水素を燃焼器9に供給できるので、燃料電池スタック3から周辺へと透過,拡散した水素を確実、且つ、効果的に燃焼処理することができる。なお、本実施形態では、燃料電池スタック3と燃焼器9間に空気供給装置16を設置したが、燃料電池スタック3の上流側に空気供給装置16を設置するようにしてもよい。
【0018】
〔燃焼器の構成〕
上記燃焼器9は、ステンレス合金等の燃焼温度や圧力に耐え得る材質により構成され、アノードオフガス配管7からの水素が供給されるアノードオフガス導入口18と、バイパス配管14からの空気が供給される酸化剤ガス導入口19と、アノードオフガス導入口18の下流側に配設された混合気形成部20と、混合気形成部20の下流側に配設された触媒部21と、触媒部21の下流側に配設された排気配管13とを備える。このような構成によれば、逆火火炎がアノードオフガス導入口18まで到達したり、アノードオフガス導入口18において拡散火炎が発生したりすることを防止できるので、余混合燃焼となり、拡散火炎と比較して排気がクリーンになる。なお、燃焼器9の形状や材質は、燃料電池システム1に要求されるガス流量や発熱量等の仕様値を満足するものであれば、設計者の意図に応じて適宜変更してもよい。
【0019】
アノードオフガス導入口18は、先端側部分が燃焼器9内部方向に突出した状態でアノードオフガス配管7に接続された燃料噴射パイプにより構成され、先端側部分に形成された燃料噴出孔からアノードオフガスを排出する。より具体的には、アノードオフガス導入口18は、先端部分に穴を有する1/4インチのステンレスパイプから成る配管により構成され、パイプの周面には燃料噴射孔が形成されている。
【0020】
混合気形成部20は、空間,スワラー,複数枚の多孔板等の公知のガス混合技術を用いて構成され、アノードオフガス導入口18及び酸化剤ガス導入口19から供給された水素と空気を混合する。なお、混合気形成部20として、図5に示すようにフレームアレスタ機能を有する混合気形成部22を用いてもよい。フレームアレスタ機能は、混合気形成部の熱容量を大きくしたり、多孔板を用いて混合気形成部を形成したりすることによって構成することができ、フレームアレスタ機能によって、混合気形成部上流側に熱(燃焼)エネルギーが伝達することを防止することができる。
【0021】
触媒部21は、メタルハニカムやセラミックハニカム等の担体に白金等の貴金属を担持した公知の触媒技術を用いて構成され、混合気形成部20により形成された水素と空気の混合気体を燃焼する。
【0022】
排気配管13は、燃焼器9から排出されるガスの熱に耐えられる材質により形成され、触媒部21から排出されたガスを系外に排出する。なお、排気配管13の形状は設計者の意図に応じて設計可能であり、排気配管13にマフラー等の消音装置を設けることもできる。また、触媒部21の下流側に熱交換器やタービン等を設置し、燃焼器9の排熱を利用可能にすることにより、システム効率を向上させることもできる。
【0023】
〔排気系の構成〕
上記排気配管13は、図6に示すように、カソードオフガス及び燃焼排気ガスがそれぞれカソードオフガス配管12側及び燃焼器9側に逆流することを防止するために、カソードオフガス配管12及び燃焼器9の下流側にチェックバルブ方式の逆流防止弁25を備える。このような構成によれば、排気圧損を低減することができるので、システムを効率化することができると共に、空気供給装置の小型化,軽量化,低コスト化を実現することができる。また、排気が逆流することによって制御性能が悪化することを防止できるので、制御を簡素化することができる。また、カソードオフガスと燃焼排気ガスを合流させた後に系外に排出することにより、排出水素濃度管理及び排気システムを簡素化することができる。また、不具合等によって未処理水素が排出された場合であっても、排出水素濃度を低濃度に抑えることができる。また、排出濃度測定部位を一カ所に集約することができるので、排気濃度試験を簡略化することができる。
【0024】
なお、逆流防止弁25は、カソードオフガス配管12の下流側に設けられたものと燃焼器9の下流側に設けられたものとで同じである必要はなく、それぞれの流路や通流流体の特性に合わせて変更してもよい。また、カソードオフガス配管12及び燃焼器9の一方にのみ逆流防止弁25を設けるようにしてもよい。また一般に、チェックバルブ方式の逆流防止弁では、上流側からのガス流圧によって弁を閉じているバネが押され、バネが押されることによって弁を閉じる蓋が移動し、蓋が移動することによって流路が開き、流路が開くことによってガスが通流可能となる。そして逆に、下流側から圧力が供給された場合には、バネが蓋を閉じる力を支持する方向に圧力が掛かるために、流路は開かず、ガスは通流することができない。従って、上記逆流防止弁25によれば、カソードオフガス配管12及び燃焼器9側の圧力の方が排気配管13側の圧力よりも高い場合においてのみ、逆流防止弁25が開き、ガスが通流可能になる。
【0025】
なお、排気配管13に、図7に示すように、燃焼器9から排出された燃焼排気ガスを排気配管13内に導入する排気ガス導入部26と、排気ガス導入部26に設けられた、上流側から下流側に広がる円盤形状の板からなる渦発生源27を設けるようにしてもよい。このような構成によれば、渦発生源27の下流側でガスの流れが剥離し、剥離した点を起点として大規模な乱流渦が発生し、乱流渦によるガス流動によって排気ガス導入部26近傍のカソードオフガス圧力(排気抵抗)が低下するので、燃焼器9から排出された燃焼排気ガスを効果的に排気配管13内に導入することができる。また、空気供給装置の小型化,軽量化,低コスト化を実現することができると共に、システムを効率化することができる。なお、排気ガス導入部26としては、燃焼温度に耐えられるステンレス等の材質からなるパイプを用いることが望ましく、この場合、パイプの先端に複数の孔を形成し、この孔を介して排気配管13内に燃焼排気ガスを供給するとよい。また、渦発生源27は、邪魔板等の固定障害物や可変可能なバタフライバルブ等、要求される渦を発生可能なものであればどのようなものであってもよい。また、渦発生源27の代わりに、流路断面を狭めて内部のガス流速を速めることにより、排気ガス導入部26周辺の圧力を低下させるようにしてもよい。
【0026】
〔制御系の構成〕
上記燃料電池システム1は、触媒部21の上流側のガス温度T1を検出する温度センサ31と、触媒部21の下流側のガス温度T2を検出する温度センサ32と、燃料電池システム1全体の動作を制御するコントローラ33とを備える。混合気形成部20と触媒部21の間に温度センサ31を設けることにより、混合気形成部20の熱容量の影響を受け難い位置で温度を検出し、逆火が発生した時の温度変化を速やかに検知することができる。なお、温度センサ31,32としては、利用条件に耐えられるサーミスタ等の公知の温度計測手段を用いることができる。また、この実施形態では、コントローラ33は、CPUと、プログラムROMと、作業用RAMと、入出力インタフェースとを備えたマイクロプロセッサにより構成される。
【0027】
〔触媒部上流側及び下流側のガス温度変化〕
次に、図8乃至図10を参照して、(1)燃焼開始直後、(2)連続パージ時及び断続パージ時における触媒部21上流側及び下流側のガス温度変化を、通常の触媒燃焼時及び触媒部21上流側での気相燃焼時の場合に分けて説明する。
【0028】
〔燃焼開始時の温度推移〕
始めに、図8を参照して、燃焼開始直後における触媒部21上流側及び下流側のガス温度変化について説明する。なお、システム構成や制御の種類によってはシステム起動時に起動燃焼処理を行うことがある。すなわち、燃料電池2が発電を開始する前に、水素と空気を燃焼器9に供給し、触媒部21において燃焼処理を行うことがある。また、システムの種類によっては、起動パージとして、ある一定時間、アノード極からアノードオフガスを排出する場合がある。しかしながら、触媒部21の上流側及び下流側のガス温度変化はこのような場合でも同じであるので、以下では、通常起動時を例として説明する。
【0029】
燃料開始直後、燃焼器9の燃焼状態が通常の触媒燃焼状態にある場合、触媒部21において反応が生じて発熱する。そして、触媒部21で発生した熱はガス流によって触媒部21の下流側に運ばれるため、図8(a)に示すように、下流側温度センサ32の検出温度T2が上昇し燃焼温度を示す。また、上流側温度センサ31の検出温度T1は、触媒部21からの放射熱によって上昇することがあるが、図8(a)に示すように、概して下流側温度センサ32の検出温度T2より低い温度を示し、またその上昇速度a1は遅い(曲線の傾きa1<a2)。
【0030】
一方、逆火等によって触媒部21の上流側が気相燃焼状態になった場合には、燃焼はアノードガス導入口18から触媒部21の間(より具体的には混合気形成部20と触媒部21の間)で行われ、図8(b)に示すように、その燃焼熱によって上流側温度センサ31の検出温度T1が上昇し燃焼温度を示す。また、下流側温度センサ32の検出温度T2は、図8(b)に示すように、気相燃焼によって発生した熱を直接受けることがないために、上昇速度が遅く、且つ、上流側のガス温度T1に対して低い温度を示す。そして、このまま燃焼が継続すると、図8(b)に示すように、検出温度T2は上昇し、検出温度T1と検出温度T2の温度差は小さくなる。
【0031】
〔連続パージ時及び断続パージ時の温度推移〕
次に、図9,10を参照して、連続パージ時及び断続パージ時における触媒部21の上流側及び下流側のガス温度変化について説明する。
【0032】
連続パージや断続パージ時において、燃焼器9の燃焼状態が通常の触媒燃焼状態にある場合、触媒部21において反応が生じ発熱する。そして、触媒部21で発生した熱はガス流によって触媒部21の下流側に運ばれるため、図9(a)や図10(a)に示すように、下流側温度センサ32の検出温度T2が上昇し、燃焼温度を示す。また、検出温度T2は、パージ条件によって、安定した温度になったり(連続パージ時、図9(a)参照)、燃料の供給に合わせて変動したりする(断続パージ時、図10(a)参照)。また、上流側温度センサ31の検出温度T1は、触媒部21からの放射熱によって上昇することがあるが、図9(a)や図10(a)に示すように、概して下流側温度センサ32の検出温度T2より低い温度を示し、また、その上昇速度a1は遅い(曲線の傾きa1<a2)。一方、逆火等によって触媒部21の上流側が気相燃焼状態になった場合には、燃焼はアノードガス導入口18から触媒部21の間(より具体的には混合気形成部20と触媒部21の間)で生じ、その燃焼熱によって上流側温度センサ31の検出温度T1が上昇し、燃焼温度を示す。
【0033】
このように、通常の触媒燃焼時と触媒部21上流側で気相燃焼が発生している時とでは、触媒部21上流側及び下流側のガス温度変化が異なるので、この温度変化を監視することにより、燃焼器9の燃焼状態を判別することができる。なお、燃焼器9の燃焼状態が通常の触媒燃焼状態にある際と触媒部21上流側が気相燃焼状態にある際の、触媒部21上流側及び下流側の温度T1,T2とその上昇速度a1,a2の関係は図11に示すテーブルのようになる。以下、通常の触媒燃焼時と触媒部21上流側で気相燃焼が発生している時における触媒部21上流側及び下流側のガス温度変化特性の違いを利用した、本発明の実施形態となる燃焼状態判定処理を実行する際のコントローラ33の動作について説明する。
【0034】
〔燃焼状態判定処理〕
【実施例1】
【0035】
始めに、図12に示すフローチャートを参照して、本発明の第1の実施形態となる燃焼状態判定処理を実行する際のコントローラ33の動作について説明する。
【0036】
図12に示すフローチャートは、燃料電池システム1が起動され、上位制御処理から燃焼状態判定処理に移行するのに応じて開始となり、この燃焼状態判定処理はステップS1の処理に進む。なお、この燃焼状態判定処理は、燃料電池システム1が起動してから停止するまでの間、100[msec]〜1[sec]程度の一定のサンプリング間隔t毎に繰り返し実行することが望ましい。但し、サンプリング間隔tが短いと、ノイズ等の影響を受け易くなり、ノイズ対策が必要になる一方、サンプリング間隔tが長いと触媒部21上流側での気相燃焼の検知が遅れるので、サンプリング間隔tはシステムの運転特性に応じて設計者が設定することが望ましい。また、この燃焼状態判定処理は、上位制御とは独立して一定のサンプリング間隔t毎に実行し、燃焼状態を示す診断フラグへの入力を繰り返すようにしてもよい。この場合、コントローラ33は診断フラグを参照して上位制御処理を行う。
【0037】
ステップS1の処理では、コントローラ33が、温度センサ31を利用して、触媒部21の上流側のガス温度T1を検出する。これにより、このステップS1の処理は完了し、この判定処理はステップS2の処理に進む。
【0038】
ステップS2の処理では、コントローラ33が、前回及び今回のステップS1の処理により検出したガス温度T1の差分値を算出し、算出された差分値をサンプリング間隔tで除算することによりガス温度T1の昇温速度a1(=dT1/dt)を算出する。これにより、このステップS2の処理は完了し、この判定処理はステップS3の処理に進む。
【0039】
ステップS3の処理では、コントローラ33が、ステップS2の処理により算出された昇温速度a1が判定基準値α以上であるか否かを判別する。なお、この判定基準値αは、25[℃/sec]等の固定値,図13(a),(b)に示すようなシステムの運転負荷(出力)に応じて変動する値,又は図13(c)に示すようなガス温度T1に応じて変動する値のいずれでもよく、システムの運転特性や設計者の意図に応じて設定するとよい。そして、判別の結果、昇温速度a1が判定基準値α以上である場合(判定基準A1)、コントローラ33は、この判定処理をステップS5の処理に進める。一方、昇温速度a1が判定基準値α以上でない場合には、コントローラ33はこの判定処理をステップS4の処理に進める。
【0040】
ステップS4の処理では、コントローラ33が、燃焼器9が通常の触媒燃焼状態にあると判断し、上位制御に対して通常の触媒燃焼状態である旨を伝える信号を送ることにより上位制御に戻る。なお、コントローラ33は、上位制御に戻らずに、判定処理をステップS1の処理に戻すようにしてもよい。
【0041】
ステップS5の処理では、コントローラ33が、温度T1の昇温速度a1がシステムの運転条件に基づいて算出された許容昇温速度よりも速いと判断し、触媒部21の上流側で気相燃焼が発生していると判断する。そして、コントローラ33は、気相燃焼状態を抑制するための気相処理制御へと制御を移行する。なお、コントローラ33は、直接気相処理制御へと移行しないで、上位制御に対して気相燃焼状態が発生した旨を伝える信号を送ったり、気相燃焼判定フラグを立てたりしてもよい。
【0042】
以上の説明から明らかなように、本発明の第1の実施形態となる燃焼状態判定処理によれば、コントローラ33が、触媒部21上流側のガス温度T1の昇温速度a1を用いて燃焼器9の燃焼状態を検知するので、触媒部21の上流側で気相燃焼が発生していることを的確、且つ、速やかに検知することができる。
【0043】
また、本発明の第1の実施形態となる燃焼状態判定処理によれば、コントローラ33が、昇温速度a1が判定基準値α以上である場合(判定基準A1)、触媒部21の上流側が気相燃焼状態にあると判定するので、気相燃焼によって温度が高温になる前に、燃焼器9の燃焼状態を検知することができる。
【0044】
なお、コントローラ33は、判定基準A1が満たされた場合であって、且つ、触媒部21上流側のガス温度T1が運転条件に従って定められる許容温度以上になった場合(判定基準B1)において、触媒部21の上流側が気相燃焼状態にあると判定してもよい。これにより、測定ノイズ等による誤診断を防止できると共に、単純に温度のみを用いて判定するよりも判定閾値を下げることができるので、燃焼状態判定時間を短縮することができる。なおこの処理は、図17のフローチャートに示すように、図12に示すステップS3の処理を昇温速度a1が判定基準値α以上、且つ、ガス温度T1が判定基準値β以上であるか否か判別する処理に変更することにより実施することができる。また、例えば温度T1が800[℃]であることを検知するのに10秒程度必要だとしても、この処理によれば、昇温速度a1が25[℃/sec]以上、且つ、ガス温度T1が200[℃]以上を判定閾値とした場合、5秒程度で気相燃焼状態を検知することができ、燃焼器9の温度が十分に低い状態で燃焼状態制御処理に移行することができる。
【実施例2】
【0045】
次に、図14に示すフローチャートを参照して、本発明の第2の実施形態となる燃焼状態判定処理を実行する際のコントローラ33の動作について説明する。
【0046】
図14に示すフローチャートは、燃料電池システム1が起動され、上位制御処理から燃焼状態判定処理に移行するのに応じて開始となり、この燃焼状態判定処理はステップS11の処理に進む。
【0047】
ステップS11の処理では、コントローラ33が、温度センサ31,32を利用して、触媒部21の上流側及び下流側のガス温度T1,T2を検出する。これにより、このステップS11の処理は完了し、この判定処理はステップS12の処理に進む。
【0048】
ステップS12の処理では、コントローラ33が、前回及び今回のステップS11の処理により検出したガス温度T1,T2の差分値を算出し、算出された差分値をサンプリング間隔tで除算することによりガス温度T1,T2の昇温速度a1,a2(=dT2/dt)を算出する。これにより、このステップS12の処理は完了し、この判定処理はステップS13の処理に進む。
【0049】
ステップS13の処理では、コントローラ33が、ステップS12の処理により算出された昇温速度a1が昇温速度a2以上であるか否かを判別する。そして、判別の結果、昇温速度a1が昇温速度a2以上である場合(判定基準A2)、コントローラ33は、ステップS15の処理として触媒部21の上流側が気相燃焼状態にあると判断し、気相処理制御へと制御を移行する。一方、昇温速度a1が昇温速度a2以上でない場合には、コントローラ33は、ステップS14の処理として燃焼器9が通常の触媒燃焼状態にあると判断し上位制御に戻る。なお、コントローラ33は、上位制御に戻らずに、判定処理をステップS11の処理に戻すようにしてもよい。また、上記ステップS13の処理において、コントローラ33は、昇温速度a1が昇温速度a2に所定値γを加算した値以上であるか否かを判別するようにしてもよい。この場合、所定値γは、判定基準値αと同様、運転状態に応じて変動する値であってもよい。
【0050】
以上の説明から明らかなように、本発明の第2の実施形態となる燃焼状態判定処理によれば、コントローラ33が、触媒部21の上流側のガス温度と昇温速度の少なくとも一方を触媒部21の下流側のガス温度及び昇温速度の少なくとも一方と比較することにより、触媒部21の上流側における気相燃焼を検知するので、燃焼時間の判定時間を短縮することができると共に、ノイズによる誤判定を防止することができる。また、触媒部21の下流側にある構成要素を過昇温による熱害から守ることができる。
【0051】
また、本発明の第2の実施形態となる燃焼状態判定処理によれば、コントローラ33が、昇温速度a1が昇温速度a2以上である場合(判定基準A2)、触媒部21の上流側が気相燃焼状態にあると判定するので、気相燃焼によって温度が高温になる前に、触媒部21の上流側での気相燃焼状態を検知することができる。
【0052】
なお、コントローラ33は、昇温速度a1が判定基準値α以上である場合(判定基準A1)、且つ、昇温速度a1が昇温速度a2以上である場合(判定基準A2)において、触媒部21の上流側が気相燃焼状態にあると判定してもよい。これにより、測定ノイズ等による誤診断を防止できる。なおこの処理は、図18のフローチャートに示すように、図14に示すステップS13の処理を昇温速度a1が判定基準値α以上であり、且つ、昇温速度a1が昇温速度a2以上であるか否か判別する処理に変更することにより実施することができる。
【0053】
また、コントローラ33は、触媒部21上流側のガス温度T1が運転条件に従って定められる許容温度以上になった場合(判定基準B1)、且つ、昇温速度a1が昇温速度a2以上である場合(判定基準A2)において、触媒部21の上流側が気相燃焼状態にあると判定してもよい。これにより、測定ノイズ等による誤診断を防止できると共に、単純に温度のみを用いて判定するよりも判定閾値を下げることができるので、燃焼状態判定時間を短縮することができる。なおこの処理は、図19のフローチャートに示すように、図14に示すステップS13の処理を触媒部21上流側のガス温度T1が運転条件に従って定められる許容温度β以上、且つ、昇温速度a1が昇温速度a2以上であるか否か判別する処理に変更することにより実施することができる。
【0054】
また、コントローラ33は、昇温速度a1が判定基準値α以上である場合(判定基準A1)、且つ、昇温速度a1が昇温速度a2以上である場合(判定基準A2)、且つ、触媒部21上流側のガス温度T1が運転条件に従って定められる許容温度β以上になった場合(判定基準B1)において、触媒部21の上流側が気相燃焼状態にあると判定してもよい。これにより、測定ノイズ等による誤診断を防止できる。なおこの処理は、図20のフローチャートに示すように、図14に示すステップS13の処理を昇温速度a1が判定基準値α以上であり、且つ、昇温速度a1が昇温速度a2以上であり、且つ、触媒部21上流側のガス温度T1が運転条件に従って定められる許容温度β以上であるか否か判別する処理に変更することにより実施することができる。
【0055】
また、コントローラ33は、昇温速度a1が判定基準値α以上である場合(判定基準A1)、及び/又は、昇温速度a1が昇温速度a2以上である場合(判定基準A2)、且つ、触媒部21上流側のガス温度T1が触媒部21下流側のガス温度T2以上になった場合(判定基準B2)において、触媒部21の上流側が気相燃焼状態にあると判定してもよい。これにより、測定ノイズ等による誤診断を防止できる。なおこの処理は、図21のフローチャートに示すように、図14に示すステップS13の処理を昇温速度a1が判定基準値α以上であり、及び/又は、昇温速度a1が昇温速度a2以上であり、且つ、触媒部21上流側のガス温度T1が触媒部21下流側のガス温度T2以上であるか否か判別する処理に変更することにより実施することができる。
【実施例3】
【0056】
次に、図15に示すフローチャートを参照して、本発明の第3の実施形態となる燃焼状態判定処理を実行する際のコントローラ33の動作について説明する。
【0057】
図15に示すフローチャートは、燃料電池システム1が起動され、上位制御処理から燃焼状態判定処理に移行するのに応じて開始となり、この燃焼状態判定処理はステップS21の処理に進む。
【0058】
ステップS21の処理では、コントローラ33が、温度センサ31,32を利用して触媒部21の上流側及び下流側のガス温度T1,T2を検出する。これにより、このステップS21の処理は完了し、この判定処理はステップS22の処理に進む。
【0059】
ステップS22の処理では、コントローラ33が、前回及び今回のステップS21の処理により検出したガス温度T1,T2の差分値を算出し、算出された差分値をサンプリング間隔tで除算することによりガス温度T2,T3の昇温速度a1,a2を算出する。これにより、このステップS22の処理は完了し、この判定処理はステップS23の処理に進む。
【0060】
ステップS23の処理では、コントローラ33が、第1の判定基準に従って燃焼器9が通常の触媒燃焼状態と触媒部21上流側での気相燃焼状態のどちらの状態にあるかを判別する。なお、この第1の判定基準としては、設計者がシステムに応じて上記判定基準A1,A2,B1,B2のうちの任意の判定基準の組み合わせを用いることができる。そして、判別の結果、燃焼器9が通常の触媒燃焼状態にある場合、コントローラ33はこの判定処理をステップS27の処理に進める。一方、触媒部21上流側が気相燃焼状態にある場合には、コントローラ33はこの判定処理をステップS24の処理に進める。
【0061】
ステップS24の処理では、コントローラ33が、第2の判定基準に従って燃焼器9が通常の触媒燃焼状態と触媒部21上流側での気相燃焼状態のどちらの状態にあるかを判別する。なお、この第2の判定基準は、上記判定基準A1,A2,B1,B2のうちの任意の判定基準の組み合わせのうち、上記第1の判定基準以外のものを示す。そして、判別の結果、燃焼器9が通常の触媒燃焼状態にある場合、コントローラ33はこの判定処理をステップS27の処理に進める。一方、触媒部21上流側が気相燃焼状態にある場合には、コントローラ33はこの判定処理をステップS25の処理に進める。
【0062】
ステップS25の処理では、コントローラ33が、第3の判定基準に従って燃焼器9が通常の触媒燃焼状態と触媒部21上流側での気相燃焼状態のどちらの状態にあるかを判別する。なお、この第3の判定基準は、上記判定基準A1,A2,B1,B2のうちの任意の判定基準の組み合わせのうち、上記第1及び第2の判定基準以外のものを示す。そして、判別の結果、燃焼器9が通常の触媒燃焼状態にある場合、コントローラ33はこの判定処理をステップS27の処理に進める。一方、触媒部21上流側が気相燃焼状態にある場合には、コントローラ33はこの判定処理をステップS26の処理に進める。
【0063】
以上の説明から明らかなように、本発明の第3の実施形態となる燃焼状態判定処理によれば、コントローラ33は、判定基準A1,A2,B1,B2のうちの任意の判定基準の組み合わせに従って触媒部21上流側での気相燃焼状態を検知するので、最も誤診断が少なく、且つ、診断時間が速い判定基準を設定することができる。
【0064】
なお、この実施形態では、触媒部21上流側が気相燃焼状態にあると判定された際、コントローラ33は次の判定ステップに処理を進めたが、図16に示すように、燃焼器9が通常の触媒燃焼状態にあると判定された際に次の判定ステップに処理を進めるようにしてもよい。また、コントローラ33は、3つの判定ステップにより燃焼器9の触媒燃焼状態を判別したが、判定ステップは2つであっても、4つ以上であってもよい。なお、判定ステップ数が増えることにより触媒部21の上流側での気相燃焼状態を確実に検知することができるようになるが、判定ステップ数が必要以上に多いとその分気相燃焼状態の検知に要する時間が長くなるので、設計者はシステムの特徴等を考慮して判定ステップ数を適切に設定することが望ましい。
【0065】
以上、本発明者らによってなされた発明を適用した実施の形態について説明したが、この実施の形態による本発明の開示の一部をなす論述及び図面により本発明は限定されることはない。例えば、上記実施形態では、一回の判定処理で触媒部21の上流側が気相燃焼状態にあるか否かを判別したが、図12のフローチャートに示す処理を図22や図23のフローチャートに示す処理に変更し、燃焼状態判定処理を複数回行った後に触媒部21の上流側が気相燃焼状態にあるか否かを判別するようにしてもよい。具体的には、劣化判定処理が0.1[sec」のサンプリング間隔で実行されている場合には、1[sec](10サイクル)中5回気相燃焼が検知された場合(図22に示すステップS93,94,96,97,99の処理)や、0.1[sec」サイクルにおいて4サイクル連続(0.4秒間)で気相燃焼が検知された場合(図23に示すステップS112,115,116の処理)において、触媒部21の上流側が気相燃焼状態にあると判定するようにしてもよい。このような処理によれば、ノイズ等の影響による誤診断を防止することができる。このように、上記実施の形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施の形態、実施例及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれることは勿論であることを付け加えておく。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の一実施形態となる燃料電池システムの構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示す燃料電池システムの応用例の構成を示すブロック図である。
【図3】図1に示す燃料電池システムの応用例の構成を示すブロック図である。
【図4】図1に示す燃料電池システムの応用例の構成を示すブロック図である。
【図5】図1に示す燃焼器の応用例の構成を示す模式図である。
【図6】図1に示す排気配管の内部構成を示す模式図である。
【図7】図6に示す排気配管の応用例の内部構成を示す模式図である。
【図8】燃焼開始時における触媒部上流側及び触媒部下流側のガス温度の時間的変化を示す図である。
【図9】連続パージ時における触媒部上流側及び触媒部下流側のガス温度の時間的変化を示す図である。
【図10】断続パージ時における触媒部上流側及び触媒部下流側のガス温度の時間的変化を示す図である。
【図11】通常燃焼時及び触媒部上流側での気相燃焼時における触媒部上流側のガス温度と昇温速度,及び触媒部下流側のガス温度と昇温速度の関係を示す図である。
【図12】本発明の第1の実施形態となる燃焼状態判定処理の流れを示すフローチャート図である。
【図13】本発明の実施形態となる判定基準値を示す図である。
【図14】本発明の第2の実施形態となる燃焼状態判定処理の流れを示すフローチャート図である。
【図15】本発明の第3の実施形態となる燃焼状態判定処理の流れを示すフローチャート図である。
【図16】図15に示す燃焼状態判定処理の応用例の流れを示すフローチャート図である。
【図17】図12に示す燃焼状態判定処理の応用例の流れを示すフローチャート図である。
【図18】図14に示す燃焼状態判定処理の応用例の流れを示すフローチャート図である。
【図19】図14に示す燃焼状態判定処理の応用例の流れを示すフローチャート図である。
【図20】図14に示す燃焼状態判定処理の応用例の流れを示すフローチャート図である。
【図21】図14に示す燃焼状態判定処理の応用例の流れを示すフローチャート図である。
【図22】本発明の他の実施形態となる燃焼状態判定処理の流れを示すフローチャート図である。
【図23】本発明の他の実施形態となる燃焼状態判定処理の流れを示すフローチャート図である。
【符号の説明】
【0067】
1:燃料電池システム
2:燃料電池
3:燃料電池スタック
4:水素供給配管
5:水素循環配管
6:水素循環ポンプ
7:アノードオフガス配管
8:アノードパージ弁
9:燃焼器
10:コンプレッサ
11:空気供給配管
12:カソードオフガス配管
13:排気配管
14:バイパス配管
15,16:空気供給装置
18:アノードオフガス導入口
19:酸化剤ガス導入口
20,22:混合気形成部
21:触媒部
25:逆流防止弁
26:排気ガス導入部
27:渦発生源
31,32:温度センサ
33:コントローラ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池の燃料極から排出されるアノードオフガスを、前記燃料電池の酸化剤極から排出されるカソードオフガスとは異なる酸化剤ガスと混合し、触媒部において燃焼処理する触媒燃焼器と、
前記触媒部の上流側のガス温度を測定する触媒上流側温度測定手段と、
前記触媒上流側温度測定手段により測定された温度と昇温速度の少なくとも一方を判定基準値と比較することにより、前記触媒部の上流側における気相燃焼を検知する気相燃焼検知手段と
を備えることを特徴とする触媒燃焼器の燃焼状態検知装置。
【請求項2】
請求項1に記載の触媒燃焼器の燃焼状態検知装置であって、前記触媒部の下流側のガス温度を測定する下流側温度測定手段を備え、前記気相燃焼検知手段は、触媒部の上流側のガス温度と昇温速度の少なくとも一方を触媒部の下流側のガス温度及び昇温速度の少なくとも一方と比較することにより、触媒部の上流側における気相燃焼を検知することを特徴とする触媒燃焼器の燃焼状態検知装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の触媒燃焼器の燃焼状態検知装置であって、前記燃料電池の上流側に設けられ、燃料電池の酸化剤極に供給される酸化剤ガスを前記触媒燃焼器側に分岐、供給する分岐手段を備えることを特徴とする触媒燃焼器の燃焼状態検知装置。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の触媒燃焼器の燃焼状態検知装置であって、前記触媒燃焼器に供給される酸化剤ガスは、前記燃料電池の酸化剤極に酸化剤ガスを供給する酸化剤ガス供給手段とは異なる酸化剤ガス供給手段によって触媒燃焼器に供給されることを特徴とする触媒燃焼器の燃焼状態検知装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のうち、いずれか1項に記載の触媒燃焼器の燃焼状態検知装置であって、前記触媒燃焼器に供給される酸化剤ガスは、前記燃料電池を覆うケース内を通流した後に触媒燃焼器に供給されることを特徴とする触媒燃焼器の燃焼状態検知装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のうち、いずれか1項に記載の触媒燃焼器の燃焼状態検知装置であって、前記触媒燃焼器は、酸化剤ガスを導入する酸化剤ガス導入部と、前記酸化剤ガス導入部の下流側に設けられ、アノードオフガスを導入する燃料供給部と、前記燃料供給部の下流側に設けられ、酸化剤ガスとアノードオフガスを混合する混合気形成部と、前記混合気形成部の下流側に設けられ、混合気体を燃焼する触媒部とを備え、前記触媒上流側温度測定手段は、前記触媒部の上流側に設けられていることを特徴とする触媒燃焼器の燃焼状態検知装置。
【請求項7】
請求項1乃至請求項5のうち、いずれか1項に記載の触媒燃焼器の燃焼状態検知装置であって、前記カソードオフガスと前記触媒燃焼器から排出された燃焼排気ガスを合流させた後に系外に排出する排気手段を備えることを特徴とする触媒燃焼器の燃焼状態検知装置。
【請求項8】
請求項7に記載の触媒燃焼器の燃焼状態検知装置であって、前記排気手段にカソードオフガス及び燃焼排気ガスを供給するカソードオフガス配管及び燃焼排気ガス配管の少なくとも一方にガスの逆流を防止するための逆流防止弁が設けられていることを特徴とする触媒燃焼器の燃焼状態検知装置。
【請求項9】
請求項7に記載の触媒燃焼器の燃焼状態検知装置であって、前記排気手段に燃焼排気ガスを供給する燃焼排気ガス配管周辺のカソードオフガスの圧力を低下させる手段を備えることを特徴とする触媒燃焼器の燃焼状態検知装置。
【請求項10】
請求項1乃至請求項9のうち、いずれか1項に記載の触媒燃焼器の燃焼状態検知装置であって、前記気相燃焼検知手段は、前記触媒部の上流側の昇温速度が運転条件に応じて定められる許容昇温速度以上になることにより第1の判定基準が満たされた場合、触媒部の上流側が気相燃焼状態にあると判定することを特徴とする触媒燃焼器の燃焼状態検知装置。
【請求項11】
請求項1乃至請求項9のうち、いずれか1項に記載の触媒燃焼器の燃焼状態検知装置であって、前記気相燃焼検知手段は、前記触媒部の上流側の昇温速度が運転条件に応じて定められる許容昇温速度以上になることにより第1の判定基準が満たされ、且つ、触媒部の上流側のガス温度が運転条件に応じて定められる許容温度以上になることにより第2の判定基準が満たされた場合、触媒部の上流側が気相燃焼状態にあると判定することを特徴とする触媒燃焼器の燃焼状態検知装置。
【請求項12】
請求項2乃至請求項9のうち、いずれか1項に記載の触媒燃焼器の燃焼状態検知装置であって、前記気相燃焼検知手段は、前記触媒部の上流側の昇温速度と触媒部の下流側の昇温速度の差が運転条件に応じて定められる昇温速度差以上になることにより第3の判定基準が満たされた場合、触媒部の上流側が気相燃焼状態にあると判定することを特徴とする触媒燃焼器の燃焼状態検知装置。
【請求項13】
請求項2乃至請求項9のうち、いずれか1項に記載の触媒燃焼器の燃焼状態検知装置であって、前記気相燃焼検知手段は、前記触媒部の上流側の昇温速度が運転条件に応じて定められる許容昇温速度以上になることにより第1の判定基準が満たされ、且つ、触媒部の上流側の昇温速度と触媒部の下流側の昇温速度の差が運転条件に応じて定められる昇温速度差以上になることにより第3の判定基準が満たされた場合、触媒部の上流側が気相燃焼状態にあると判定することを特徴とする触媒燃焼器の燃焼状態検知装置。
【請求項14】
請求項2乃至請求項9のうち、いずれか1項に記載の触媒燃焼器の燃焼状態検知装置であって、前記気相燃焼検知手段は、前記触媒部の上流側の温度が運転条件に応じて定められる許容温度以上になることにより第2の判定基準が満たされ、且つ、触媒部の上流側の昇温速度と触媒部の下流側の昇温速度の差が運転条件に応じて定められる昇温速度差以上になることにより第3の判定基準が満たされた場合、触媒部の上流側が気相燃焼状態にあると判定することを特徴とする触媒燃焼器の燃焼状態検知装置。
【請求項15】
請求項2乃至請求項9のうち、いずれか1項に記載の触媒燃焼器の燃焼状態検知装置であって、前記気相燃焼検知手段は、前記触媒部の上流側の昇温速度が運転条件に応じて定められる許容昇温速度以上になることにより第1の判定基準が満たされ、且つ、触媒部の上流側のガス温度が運転条件に応じて定められる許容温度以上になることにより第2の判定基準が満たされ、且つ、触媒部の上流側の昇温速度と触媒部の下流側の昇温速度の差が運転条件に応じて定められる昇温速度差以上になることにより第3の判定基準が満たされた場合、触媒部の上流側が気相燃焼状態にあると判定することを特徴とする触媒燃焼器の燃焼状態検知装置。
【請求項16】
請求項2乃至請求項9のうち、いずれか1項に記載の触媒燃焼器の燃焼状態検知装置であって、前記気相燃焼検知手段は、触媒部の上流側の昇温速度が運転条件に応じて定められる許容昇温速度以上になることにより第1の判定基準が満たされ、及び/又は、触媒部の上流側の昇温速度と触媒部の下流側の昇温速度の差が運転条件に応じて定められる昇温速度差以上になることにより第3の判定基準が満たされ、且つ、触媒部の上流側のガス温度が触媒部の下流側のガス温度よりも運転条件に応じて定められる温度差以上高温になることにより第4の判定基準が満たされた場合、触媒部の上流側が気相燃焼状態にあると判定することを特徴とする触媒燃焼器の燃焼状態検知装置。
【請求項17】
請求項10乃至請求項16のうち、いずれか1項に記載の触媒燃焼器の燃焼状態検知装置であって、前記気相燃焼検知手段は、運転条件によって定められた時間中に前記判定基準が連続して満たされた場合、触媒部の上流側が気相燃焼状態にあると判定することを特徴とする触媒燃焼器の燃焼状態検知装置。
【請求項18】
請求項10乃至請求項16のうち、いずれか1項に記載の触媒燃焼器の燃焼状態検知装置であって、前記気相燃焼検知手段は、運転条件によって定められた時間中に前記判定基準が所定割合以上の間満たされた場合、触媒部の上流側が気相燃焼状態にあると判定することを特徴とする触媒燃焼器の燃焼状態検知装置。
【請求項19】
請求項10乃至請求項16のうち、いずれか1項に記載の触媒燃焼器の燃焼状態検知装置であって、前記気相燃焼検知手段は、前記第1乃至第4の判定基準の組み合わせを用いて触媒部の上流側が気相燃焼状態にあると判定することを特徴とする触媒燃焼器の燃焼状態検知装置。
【請求項1】
燃料電池の燃料極から排出されるアノードオフガスを、前記燃料電池の酸化剤極から排出されるカソードオフガスとは異なる酸化剤ガスと混合し、触媒部において燃焼処理する触媒燃焼器と、
前記触媒部の上流側のガス温度を測定する触媒上流側温度測定手段と、
前記触媒上流側温度測定手段により測定された温度と昇温速度の少なくとも一方を判定基準値と比較することにより、前記触媒部の上流側における気相燃焼を検知する気相燃焼検知手段と
を備えることを特徴とする触媒燃焼器の燃焼状態検知装置。
【請求項2】
請求項1に記載の触媒燃焼器の燃焼状態検知装置であって、前記触媒部の下流側のガス温度を測定する下流側温度測定手段を備え、前記気相燃焼検知手段は、触媒部の上流側のガス温度と昇温速度の少なくとも一方を触媒部の下流側のガス温度及び昇温速度の少なくとも一方と比較することにより、触媒部の上流側における気相燃焼を検知することを特徴とする触媒燃焼器の燃焼状態検知装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の触媒燃焼器の燃焼状態検知装置であって、前記燃料電池の上流側に設けられ、燃料電池の酸化剤極に供給される酸化剤ガスを前記触媒燃焼器側に分岐、供給する分岐手段を備えることを特徴とする触媒燃焼器の燃焼状態検知装置。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の触媒燃焼器の燃焼状態検知装置であって、前記触媒燃焼器に供給される酸化剤ガスは、前記燃料電池の酸化剤極に酸化剤ガスを供給する酸化剤ガス供給手段とは異なる酸化剤ガス供給手段によって触媒燃焼器に供給されることを特徴とする触媒燃焼器の燃焼状態検知装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のうち、いずれか1項に記載の触媒燃焼器の燃焼状態検知装置であって、前記触媒燃焼器に供給される酸化剤ガスは、前記燃料電池を覆うケース内を通流した後に触媒燃焼器に供給されることを特徴とする触媒燃焼器の燃焼状態検知装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のうち、いずれか1項に記載の触媒燃焼器の燃焼状態検知装置であって、前記触媒燃焼器は、酸化剤ガスを導入する酸化剤ガス導入部と、前記酸化剤ガス導入部の下流側に設けられ、アノードオフガスを導入する燃料供給部と、前記燃料供給部の下流側に設けられ、酸化剤ガスとアノードオフガスを混合する混合気形成部と、前記混合気形成部の下流側に設けられ、混合気体を燃焼する触媒部とを備え、前記触媒上流側温度測定手段は、前記触媒部の上流側に設けられていることを特徴とする触媒燃焼器の燃焼状態検知装置。
【請求項7】
請求項1乃至請求項5のうち、いずれか1項に記載の触媒燃焼器の燃焼状態検知装置であって、前記カソードオフガスと前記触媒燃焼器から排出された燃焼排気ガスを合流させた後に系外に排出する排気手段を備えることを特徴とする触媒燃焼器の燃焼状態検知装置。
【請求項8】
請求項7に記載の触媒燃焼器の燃焼状態検知装置であって、前記排気手段にカソードオフガス及び燃焼排気ガスを供給するカソードオフガス配管及び燃焼排気ガス配管の少なくとも一方にガスの逆流を防止するための逆流防止弁が設けられていることを特徴とする触媒燃焼器の燃焼状態検知装置。
【請求項9】
請求項7に記載の触媒燃焼器の燃焼状態検知装置であって、前記排気手段に燃焼排気ガスを供給する燃焼排気ガス配管周辺のカソードオフガスの圧力を低下させる手段を備えることを特徴とする触媒燃焼器の燃焼状態検知装置。
【請求項10】
請求項1乃至請求項9のうち、いずれか1項に記載の触媒燃焼器の燃焼状態検知装置であって、前記気相燃焼検知手段は、前記触媒部の上流側の昇温速度が運転条件に応じて定められる許容昇温速度以上になることにより第1の判定基準が満たされた場合、触媒部の上流側が気相燃焼状態にあると判定することを特徴とする触媒燃焼器の燃焼状態検知装置。
【請求項11】
請求項1乃至請求項9のうち、いずれか1項に記載の触媒燃焼器の燃焼状態検知装置であって、前記気相燃焼検知手段は、前記触媒部の上流側の昇温速度が運転条件に応じて定められる許容昇温速度以上になることにより第1の判定基準が満たされ、且つ、触媒部の上流側のガス温度が運転条件に応じて定められる許容温度以上になることにより第2の判定基準が満たされた場合、触媒部の上流側が気相燃焼状態にあると判定することを特徴とする触媒燃焼器の燃焼状態検知装置。
【請求項12】
請求項2乃至請求項9のうち、いずれか1項に記載の触媒燃焼器の燃焼状態検知装置であって、前記気相燃焼検知手段は、前記触媒部の上流側の昇温速度と触媒部の下流側の昇温速度の差が運転条件に応じて定められる昇温速度差以上になることにより第3の判定基準が満たされた場合、触媒部の上流側が気相燃焼状態にあると判定することを特徴とする触媒燃焼器の燃焼状態検知装置。
【請求項13】
請求項2乃至請求項9のうち、いずれか1項に記載の触媒燃焼器の燃焼状態検知装置であって、前記気相燃焼検知手段は、前記触媒部の上流側の昇温速度が運転条件に応じて定められる許容昇温速度以上になることにより第1の判定基準が満たされ、且つ、触媒部の上流側の昇温速度と触媒部の下流側の昇温速度の差が運転条件に応じて定められる昇温速度差以上になることにより第3の判定基準が満たされた場合、触媒部の上流側が気相燃焼状態にあると判定することを特徴とする触媒燃焼器の燃焼状態検知装置。
【請求項14】
請求項2乃至請求項9のうち、いずれか1項に記載の触媒燃焼器の燃焼状態検知装置であって、前記気相燃焼検知手段は、前記触媒部の上流側の温度が運転条件に応じて定められる許容温度以上になることにより第2の判定基準が満たされ、且つ、触媒部の上流側の昇温速度と触媒部の下流側の昇温速度の差が運転条件に応じて定められる昇温速度差以上になることにより第3の判定基準が満たされた場合、触媒部の上流側が気相燃焼状態にあると判定することを特徴とする触媒燃焼器の燃焼状態検知装置。
【請求項15】
請求項2乃至請求項9のうち、いずれか1項に記載の触媒燃焼器の燃焼状態検知装置であって、前記気相燃焼検知手段は、前記触媒部の上流側の昇温速度が運転条件に応じて定められる許容昇温速度以上になることにより第1の判定基準が満たされ、且つ、触媒部の上流側のガス温度が運転条件に応じて定められる許容温度以上になることにより第2の判定基準が満たされ、且つ、触媒部の上流側の昇温速度と触媒部の下流側の昇温速度の差が運転条件に応じて定められる昇温速度差以上になることにより第3の判定基準が満たされた場合、触媒部の上流側が気相燃焼状態にあると判定することを特徴とする触媒燃焼器の燃焼状態検知装置。
【請求項16】
請求項2乃至請求項9のうち、いずれか1項に記載の触媒燃焼器の燃焼状態検知装置であって、前記気相燃焼検知手段は、触媒部の上流側の昇温速度が運転条件に応じて定められる許容昇温速度以上になることにより第1の判定基準が満たされ、及び/又は、触媒部の上流側の昇温速度と触媒部の下流側の昇温速度の差が運転条件に応じて定められる昇温速度差以上になることにより第3の判定基準が満たされ、且つ、触媒部の上流側のガス温度が触媒部の下流側のガス温度よりも運転条件に応じて定められる温度差以上高温になることにより第4の判定基準が満たされた場合、触媒部の上流側が気相燃焼状態にあると判定することを特徴とする触媒燃焼器の燃焼状態検知装置。
【請求項17】
請求項10乃至請求項16のうち、いずれか1項に記載の触媒燃焼器の燃焼状態検知装置であって、前記気相燃焼検知手段は、運転条件によって定められた時間中に前記判定基準が連続して満たされた場合、触媒部の上流側が気相燃焼状態にあると判定することを特徴とする触媒燃焼器の燃焼状態検知装置。
【請求項18】
請求項10乃至請求項16のうち、いずれか1項に記載の触媒燃焼器の燃焼状態検知装置であって、前記気相燃焼検知手段は、運転条件によって定められた時間中に前記判定基準が所定割合以上の間満たされた場合、触媒部の上流側が気相燃焼状態にあると判定することを特徴とする触媒燃焼器の燃焼状態検知装置。
【請求項19】
請求項10乃至請求項16のうち、いずれか1項に記載の触媒燃焼器の燃焼状態検知装置であって、前記気相燃焼検知手段は、前記第1乃至第4の判定基準の組み合わせを用いて触媒部の上流側が気相燃焼状態にあると判定することを特徴とする触媒燃焼器の燃焼状態検知装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【公開番号】特開2007−212006(P2007−212006A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−29538(P2006−29538)
【出願日】平成18年2月7日(2006.2.7)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年2月7日(2006.2.7)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
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