説明

触覚表示装置及び触覚表示機能付タッチパネル装置

【課題】効率的に触覚情報を表示する。
【解決手段】 触覚表示機能付タッチパネル装置10のディスプレイ部200に表示される黒色又は白色の表示パターンに対応して、光導電層420の導電率が変化する。この導電率の変化に伴って、電気粘性流体層430における粘性も係る表示パターンと対応するように変化する。係る変化は、視覚情報として表示される表示パターンに対応した触覚情報として操作者に提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触覚情報を表示可能な触覚表示装置、及びそれを備えたタッチパネル装置の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
このような触覚表示の方法として、例えば、電気粘性流体を利用した凸状キーの出現制御方法が提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
この方法によれば、ディスプレイの上方に設置したプレート状の容器内に電気粘性流体を封入し、部位に応じて通電を制御することによって、キーに対応する部分を押圧手段たるポンプで持ち上げ、立体的なキーを出現させることが可能であるとされている。
【0004】
尚、電気粘性流体を利用して、呈示素子に対し変位に応じた反力を付与することが可能であるとされる技術も提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
【特許文献1】特開平11―273501号公報
【特許文献2】特開2000−89895号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した従来技術は以下に示す問題点を有する。
【0007】
電気粘性流体の粘性を変化させるためには、係る電気粘性流体に作用させる電圧を、表示させるパターン等に応じて制御する必要がある。従って、そのような駆動制御を行うための手段が別途必要となって、装置規模や処理負荷が増大する。即ち、効率的に触覚情報を表示することは技術的に困難である。
【0008】
本発明は上述した問題点に鑑みてなされたものであり、例えば、効率的に触覚情報を表示することを可能とした触覚表示装置、及びそれを備えた触覚表示機能付タッチパネル装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するために、請求項1に記載の触覚表示装置は、表示パターンに応じた表示光を出力する表示画面上に配置される触覚表示装置であって、前記表示画面に対面して設けられると共に光透過性を有する一対の電極と、光透過性を有すると共に前記一対の電極間に配置され、前記表示光の強度に応じて導電率及び透磁率のうち少なくとも一方が前記表示画面上における各部位毎に変化する特性変化層と、光透過性を有すると共に前記一対の電極間に配置され且つ前記特性変化層に対面して設けられ、前記一対の電極により前記特性変化層を介して印加される印加電圧に応じて前記表示画面上における各部位毎に粘性が変化する電気粘性流体層とを具備することを特徴とする
上述した課題を解決するために、請求項4に記載の触覚表示機能付タッチパネル装置は、前記表示画面に対面して設けられ、前記表示パターンとして前記表示画面に表示される入力を促す視覚情報が表示された部分と対応する部位が押圧されることによって前記入力を行うことが可能な光透過性のタッチパネルと、前記タッチパネルにおける前記表示画面とは反対側に対面して設けられた請求項1から4のいずれか一項に記載の触覚表示装置とを具備することを特徴とする。
【0010】
上述した課題を解決するために、請求項8に記載の触覚表示機能付タッチパネル装置は、表示光を出力する表示画面上に配置されており、(1)前記表示画面に対面して設けられると共に光透過性を有する一対の電極と、(2)光透過性を有すると共に前記一対の電極間に配置され、前記表示光の強度に応じて導電率及び透磁率のうち少なくとも一方が変化する特性変化層と、(3)光透過性を有すると共に前記一対の電極間に配置され且つ前記特性変化層に対面して設けられ、前記一対の電極により前記特性変化層を介して印加される印加電圧に応じて粘性が変化する電気粘性流体層とを具備する触覚表示装置と、該触覚表示装置と前記表示画面の間において前記表示画面に対面して設けられると共に、前記表示画面に表示される入力を促す視覚情報が表示された部分と対応する部位が押圧されることによって前記入力を行うことが可能な光透過性のタッチパネルと、前記電気粘性流体層の少なくとも一部が押圧されると、前記少なくとも一部について前記粘性を更に変化させる変化付与手段とを具備することを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
<触覚表示装置の実施形態>
触覚表示装置の実施形態は、表示パターンに応じた表示光を出力する表示画面上に配置される触覚表示装置であって、前記表示画面に対面して設けられると共に光透過性を有する一対の電極と、光透過性を有すると共に前記一対の電極間に配置され、前記表示光の強度に応じて導電率及び透磁率のうち少なくとも一方が前記表示画面上における各部位毎に変化する特性変化層と、光透過性を有すると共に前記一対の電極間に配置され且つ前記特性変化層に対面して設けられ、前記一対の電極により前記特性変化層を介して印加される印加電圧に応じて前記表示画面上における各部位毎に粘性が変化する電気粘性流体層とを具備する。
【0012】
触覚表示装置の実施形態によれば、その動作時には、一対の電極間に電圧が印加される。この電圧の一部は、電気粘性流体層に印加される。ここで、本発明に係る「電気粘性流体」とは、印加電圧に応じて粘性が変化する性質をもった流体を指す。この電気粘性流体層に印加される電圧を、表示させたいパターンに応じて変化させると、例えば、パターン内部を高粘性に(即ち、硬く)、それ以外の部分を低粘性に(即ち、柔らかく)変化させるなどして、当該パターンの形状を操作者に触覚的に認識させることが可能となる。即ち、触覚情報を表示することが可能となる。
【0013】
ここで特に、表示させたいパターンに応じて、例えば係るパターンを構成する画素毎に印加電圧を制御して電気粘性流体の粘性を制御しようとすると、従来技術に述べた如き問題点が生じる。即ち、処理負荷が増大して非効率である。
【0014】
然るに、本実施形態に係る触覚表示装置では、電気粘性流体層と対面して特性変化層が設けられることによって係る問題点が解決されている。
【0015】
ここで、本発明に係る「特性変化層」とは、照射光の強度に応じて導電率及び透磁率のうち少なくとも一方が変化する性質を有する物質で構成された層を指す。このような特性変化層に対し、表示させたいパターンに応じて照射光の強度を変化させると、当該パターンに応じて特性変化層の導電率及び透磁率のうち少なくとも一方が変化する。係る導電率又は透磁率の変化により、電気粘性流体層に印加される分圧が変化し、電気粘性流体層の粘性も変化する。例えば、照射光強度が大きい部分は硬く(又は柔らかく)、小さい部分は柔らかく(又は硬く)させることが可能となる。即ち、上述した如き触覚情報の表示が可能となる。
【0016】
ここで更に、一対の電極、特性変化層、及び電気粘性流体層の夫々は、光透過性を有しているため、係る照射光の強度の変化は、これら各層を介して操作者に提供される視覚情報、即ち、表示画面上に表示される表示パターンに応じて出力される表示光の変化に相当する。例えば、表示画面上に表示される表示パターンが白黒の2値化パターンであれば、白い部分の表示光は強度の大きい照射光、黒い部分の表示光(表示していない場合を含む)は強度の小さい照射光に相当する。このように、本発明に係る触覚表示装置は、視覚情報である表示パターンを、触覚情報を与えるための照射光の光源として使用することが可能である。従って、極めて効率的に触覚情報の表示が可能となるのである。
【0017】
一方、本発明に係る触覚表示装置において、特性変化層の導電率及び透磁率のうち少なくとも一方は、前記表示画面上における各部位毎に変化する。ここで述べられる「各部位毎」とは、特性変化層の全面が一様に変化しなければよい趣旨である。従って、必ずしも表示画面に表示される表示パターン通りに、又は係る表示パターンと相似的に、導電率又は透磁率が変化する必要はない。但し、触覚情報を視覚情報にある程度関連付けて表示するためには、このような導電率又は透磁率の変化は、表示画面に表示される表示パターンと少なくとも相似的であるのが望ましい。この観点から言えば、特性変化層は、基板(表示画面)に垂直な方向の電気抵抗が光によって低くなり、基板に平行な電気抵抗は高いような異方位を有するのが好適である。
【0018】
尚、特性変化層の導電率が高過ぎると、特性変化層内、ひいては電気粘性流体内における電圧の面内分布が生じにくいため、特性変化層は、照射光(表示光)が当っていない部位では電気的な抵抗が十分に高いことが望ましい。
【0019】
更に、このような特性変化層と対面して設けられる電気粘性流体層についても同様なことが言える。電気粘性流体層も印加される電圧に応じて表示画面上における各部位毎に粘性が変化するのであるが、ここで示される「各部位毎」も、電気粘性流体層の全面が一様に変化しなければよい趣旨である。即ち、操作者が触った場合に硬軟などの差異を知覚し得る限りにおいて、粘性の変化は必ずしも表示画面に表示される表示パターン通り、又は係る表示パターンと相似的でなくともよい。但し、このような粘性の変化は、表示パターンを視覚的触覚的に知覚する観点から言えば、表示パターンと少なくとも相似的であるのが望ましい。従って、電気粘性流体層は、なるべく表示光通りに触覚情報が表示されるよう、基板(例えば、特性変化層)に垂直な電気抵抗が低く、基板に平行な電気抵抗が高いような異方位を有するのが好適である。
【0020】
尚、電気粘性流体の導電性が高い場合、面内における部位毎の電圧変化が生じにくいため、電気粘性流体は誘電体であることが一層望ましく、またその厚みが極めて薄い(基板に垂直な方向の電気抵抗が、平行な方向の抵抗と比べて極めて低くなる)ことが望ましい。
【0021】
尚、このような触覚情報を表示するために必要な、電気粘性流体層の厚み、特性変化層の厚み、表示光強度、及び印加電圧値などは、夫々、表示させたい触覚情報の形状及び感触、並びに触覚表示装置全体に要求される装置規模などに鑑み、予め実験的、経験的、或いはシミュレーションなどによって最適な値が与えられている。
【0022】
尚、本発明において「光透過性を有する」とは、光を通さない性質をもったもの以外を全て含む趣旨である。従って、厳密な光透過率の範囲を規定するものではない。
【0023】
尚、本発明に係る特性変化層は、ここで述べた性質を有する限りにおいて、その構成材料、及び導電率又は透磁率の変化範囲は何ら限定されない。
【0024】
触覚表示装置の実施形態の一の態様では、前記特性変化層は、前記表示光の強度に応じて導電率が前記表示画面上における各部位毎に変化する光導電層からなる。
【0025】
この態様では、特性変化層を光導電層、例えば、光の照射が無い場合に高抵抗であるような半導体層として構成することによって、特性変化層に求められる特性を比較的簡便に実現することが可能である。
【0026】
触覚表示装置の実施形態の他の態様では、前記表示画面上における前記電気粘性流体層の下方に、前記電気粘性流体層よりも弾性率の低い弾性体層を更に具備する。
【0027】
本発明に係る触覚表示装置において、触覚表示を実現する電気粘性流体層の厚みは、大き過ぎると十分な触感を得られる反面、印加電圧が大きくなり易く、小さ過ぎると印加電圧が小さくて済む反面、得られる触感が不十分となり易い。
【0028】
この態様によれば、表示画面上における電気粘性流体層の下方に、電気粘性流体層よりも弾性率の低い弾性体層を具備するので、操作者に提供される触感が改善され、高品質な触覚情報を効率的に表示させることが可能となる。
【0029】
触覚表示装置の実施形態の他の態様では、光透過性を有する可撓性基板を更に具備し、
前記一対の電極、前記特性変化層及び前記電気粘性流体層は、前記可撓性基板上に形成されている。
【0030】
この態様によれば、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)などのプラスチックフィルムである可撓性基板によって、電気粘性流体層の粘性変化によって生じる触覚情報が、操作者に好適に知覚される。本発明に係る「可撓性」とは、例えば、一般的な概念の範囲で規定される「触る」行為によって、操作者にその撓みが知覚可能な性質を指す趣旨である。
<触覚表示機能付タッチパネル装置の第1実施形態>
触覚表示機能付タッチパネル装置の第1実施形態は、前記表示画面に対面して設けられ、前記表示パターンとして前記表示画面に表示される入力を促す視覚情報が表示された部分と対応する部位が押圧されることによって前記入力を行うことが可能な光透過性のタッチパネルと、前記タッチパネルにおける前記表示画面とは反対側に対面して設けられた上記いずれかの触覚表示装置とを具備する。
【0031】
触覚表示機能付タッチパネル装置の実施形態によれば、その動作時には、表示画面に表示パターンとして示された入力を促す視覚情報と対応するタッチパネルの部位が押圧される。即ち、銀行のATM(Automated Teller Machine)や、駅の券売機などに設置される通常のタッチパネルと同様の動作が行われる。
【0032】
ここで更に、係る触覚表示機能付タッチパネル装置は、本発明に係る触覚表示装置を備えており、以下に例示する如く動作する。
【0033】
タッチパネル装置の情報表示面(即ち、表示画面とは反対側の面)に設けられた触覚表示装置では、表示画面によって表示される視覚情報の表示光が照射光となり、係る視覚情報に応じた触覚情報を操作者に提供する。
【0034】
例えば、ATMにおいて、「0」から「9」までを表示する視覚情報に対応して、「0」から「9」までの触覚的に認識可能な触覚情報が提供される。操作者においては、表示画面に表示される視覚情報を視認しつつ、触覚表示装置によって提供される触覚情報によって確かな操作感を得ながらタッチパネルを操作することが可能となる。即ち、触覚表示機能付タッチパネル装置の実施形態によれば、極めて高品質な操作感を、効率良く実現することが可能となるのである。
【0035】
触覚表示機能付タッチパネル装置の第1実施形態の一の態様では、前記電気粘性流体層の少なくとも一部が押圧されると、前記少なくとも一部について前記粘性を更に変化させる変化付与手段を更に具備する。
【0036】
本発明に係る触覚表示装置において、単に触覚のみならず、触った後のリアクションが重要となる場合がある。例えば、押しボタンなどが触覚情報として表示された場合、そこに押しボタンが存在することは触覚で認識可能であるが、実際にその押しボタンが「押された」のかを触覚的に認識することは難しい。
【0037】
この態様は、このような場合に特に効果的であって、変化付与手段が、電気粘性流体層の少なくとも一部が押圧された際に、係る少なくとも一部について粘性を変化させることによって、リアクションに係る触覚情報を表示することが可能となる。
【0038】
例えば、触覚表示された押しボタンなどを操作者が実際に押圧すると、この変化付与手段は押圧されたことを検出して、特性変化層へ与えられる照射光の強度を直接的又は間接的に変化させ、これまで「硬く」表示されていた押しボタンを「柔らかく」する。こうすると、操作者は、押しボタンが「押された」ことを容易に且つ確実に認識することが可能となる。尚、変化付与手段によって付与されるこのようなリアクションに係る触覚情報は、これに限定されず、操作者の操作と何らかの関係をもった、電気粘性流体の粘性の変化を広く含むものである。
【0039】
触覚表示機能付タッチパネル装置の第1実施形態の他の態様では、前記表示画面を有すると共に前記表示画面に前記視覚情報を表示する表示手段を更に具備する。
【0040】
この態様では、表示画面を有する表示手段を更に具備するので、表示画面への表示パターンの表示や、それに対応する触覚情報の提供などの処理に係る一連の負荷を低減しやすく、一層効率的な触覚表示機能付タッチパネル装置を実現することが可能である。
<触覚表示機能付タッチパネル装置の第2実施形態>
触覚表示機能付タッチパネル装置の第2実施形態は、表示光を出力する表示画面上に配置されており、(1)前記表示画面に対面して設けられると共に光透過性を有する一対の電極と、(2)光透過性を有すると共に前記一対の電極間に配置され、前記表示光の強度に応じて導電率及び透磁率のうち少なくとも一方が変化する特性変化層と、(3)光透過性を有すると共に前記一対の電極間に配置され且つ前記特性変化層に対面して設けられ、前記一対の電極により前記特性変化層を介して印加される印加電圧に応じて粘性が変化する電気粘性流体層とを具備する触覚表示装置と、該触覚表示装置と前記表示画面の間において前記表示画面に対面して設けられると共に、前記表示画面に表示される入力を促す視覚情報が表示された部分と対応する部位が押圧されることによって前記入力を行うことが可能な光透過性のタッチパネルと、前記電気粘性流体層の少なくとも一部が押圧されると、前記少なくとも一部について前記粘性を更に変化させる変化付与手段とを具備する。
【0041】
上述した第1実施形態では、電気粘性流体層の粘性の変化は電気粘性流体層の全面で一様に生じなければよいとしたが、第2実施形態によれば、係る粘性の変化は、電気粘性流体層の全面で一様に生じてもよい。この場合、操作者が電気粘性流体層に直接的又は間接的に触った場合に、電気粘性流体層の全面が一様に、触る前とは異なる粘性に変化すればよい。即ち、操作者は「触る」という行為を行う際には粘性の変化という形で触覚情報を知覚可能なのであり、このような粘性の変化を与える変化付与手段を備える限りにおいて、このような形態も本発明に係る触覚表示機能付タッチパネル装置の実施形態に含まれるものである。
【0042】
変化付与手段を具備する触覚表示機能付タッチパネル装置の第1及び第2実施形態の他の態様は、前記表示画面を有すると共に前記表示画面に前記視覚情報を表示する表示手段を更に具備し、前記変化付与手段は、前記表示手段による前記視覚情報を変化させることにより前記粘性を更に変化させる。
【0043】
この態様によれば、電気粘性流体層の粘性の変化は、表示手段に表示される表示パターンなどの視覚情報の変化によって与えられる。このような変化は、例えば、表示パターン自体の変更及び表示光強度の変更などを指す。このように視覚情報を変化させることによって粘性の変化を実現すると、タッチパネル装置の構成を簡略化することができ、一層効率的である。
【0044】
以上説明したように、触覚表示装置の実施形態によれば、一対の電極と、電気粘性流体層と、特性変化層とを具備するので、効率良く触覚情報を表示することが可能である。触覚表示機能付タッチパネル装置の第1実施形態によれば、タッチパネルと、触覚表示装置とを具備するので、極めて高品質な操作感を効率良く実現することが可能である。触覚表示機能付タッチパネル装置の第2実施形態によれば、タッチパネルと、触覚表示装置と、変化付与手段とを具備するので、効率良く触覚情報を表示することが可能である。
【0045】
本発明の作用及び他の利得は次に説明する実施例から明らかにされる。
【実施例】
【0046】
以下、図面を参照して本発明の実施例について説明する。
<第1実施例>
<タッチパネル装置10の構成>
始めに、図1を参照して、本発明の第1実施例に係る触覚表示機能付タッチパネル装置10(以下、適宜「タッチパネル装置10」と称する)の構成について説明する。ここに、図1は、タッチパネル装置10のブロック図である。
【0047】
図1において、タッチパネル装置10は、制御部100、ディスプレイ部200、タッチパネル部300、及び触覚表示部400を備え、ディスプレイ部200に視覚的に表示される数字や文字などの各種キーの画像に基づいて、触覚表示部400によって付与される触覚情報と共にタッチパネル部300から情報を入力することが可能に構成された、本発明に係る触覚表示機能付タッチパネル装置の一例である。
【0048】
制御部100は、CPU(Central Processing Unit)110、及びメモリ120を備える。CPU110は、タッチパネル装置10の後述する各部を制御する制御ユニットである。メモリ120は、CPU110がタッチパネル装置110の動作を制御する過程で生じるデータなどを一時的に保管可能に構成されている。
【0049】
ディスプレイ部200は、入力を促す視覚情報、例えば、数字や文字などの各種キーの画像を表示することが可能に構成された、本発明に係る「表示手段」の一例である。ディスプレイ部200は、例えば、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ、又はプラズマディスプレイなどの各種ディスプレイの態様を採ることが可能である。尚、本実施例において、ディスプレイ部200の図示せぬ各画素は、白色、又は黒色(即ち、何も表示しない)のいずれかを表示するように構成されている。
【0050】
タッチパネル部300は、ディスプレイ部200に表示された視覚情報に促された操作者が、係る視覚情報と対応する部位を押圧した際に、その押圧部位の座標を(即ち、如何なる視覚情報が選択されたのかを)特定することが可能に構成された、本発明に係る「タッチパネル」の一例である。タッチパネル部300の詳細構成については後述する。
【0051】
触覚表示部400は、操作者がタッチパネル部300を操作して情報の入力を行う際に、操作者に触覚情報を与えることが可能に構成された、本発明に係る「触覚表示装置」の一例である。触覚表示部400の詳細構成については後述する。
【0052】
次に、図2を参照して、タッチパネル装置10の詳細な構成について説明する。ここに、図2は、タッチパネル装置10の積層構成を示す略構成図である。
【0053】
図2において、タッチパネル装置10は、図示する表示方向に向かって、ディスプレイ部200、タッチパネル部300、及び触覚表示部400の順に積層された構成を有しており、ディスプレイ部200に表示される視覚情報が、タッチパネル部300及び触覚表示部400を順次介して操作者に視認される構成となっている。
【0054】
タッチパネル部300は、ディスプレイ部200における図示略のガラス基板上に形成されており、表示方向に向かって、下部電極膜310、電極間間隙部320、上部電極膜330、及びプラスチックフィルム340の順に積層された構成を有している。
【0055】
下部電極膜310は、ディスプレイ部200のガラス基板上に、スパッタリング法などによって形成された、ITO(Indium Tin Oxide)薄膜である。下部電極膜310は、光透過性(透明)且つ導電性の薄膜である。
【0056】
上部電極膜330は、プラスチックフィルム340下面に、ITO薄膜が接着されてなる光透過性の導電性薄膜である。
【0057】
プラスチックフィルム340は、例えば、PETなどの光透過性樹脂からなり、上部電極膜330を物理的な接触から保護するための保護膜として機能すると共に、上部電極膜330と一体的且つ可逆的に撓むことが可能に構成されている。
【0058】
電極間間隙部320は、上部電極膜330及び下部電極膜310に挟まれた間隙であり、100〜300μm程度の厚みを有する。尚、電極間間隙部320の詳細については後述する。
【0059】
ここで、図3を参照して、タッチパネル部300の詳細構成を、その基本的な動作原理と共に説明する。ここに、図3は、タッチパネル部300の略断面図である。尚、図3において、図2と重複する箇所には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0060】
図3(a)において、電極間間隙部320には、絶縁層321、ドットスペーサ322が形成されている。尚、図3(a)は、操作者によって操作される前のタッチパネル部300の断面構造を示したものである。
【0061】
絶縁層321は、相互に対面する下部電極膜310及び上部電極膜330を電気的に絶縁するために電極間間隙部320に介在する絶縁体の層である。ドットスペーサ322は、例えば、紫外線硬化インクなどで形成された絶縁性の緩衝剤であり、タッチパネルの操作感向上、及び誤入力の防止などのために複数設けられている。
【0062】
下部電極膜310及び上部電極膜330は、夫々FPC(Flexible Printed Circuit)基板323と電気的に接続されている。FPC基板323は、後述する接触点座標を演算するための演算回路が搭載された可撓性の基板であり、演算した接触点座標のデータを更に制御部100に出力可能に構成されている。
【0063】
尚、上部電極膜330及び下部電極膜310における、相互に直交する方向(夫々便宜的にx軸方向とy軸方向とする)の両端部には、上部電極膜330及び下部電極膜310に夫々接触点座標検出用の電圧を印加するための電源や配線パターンなどが形成されるが、図3においては省略されている。
【0064】
図3(b)には、タッチパネル部300が操作者によって操作された際の模式的な断面構成が示される。図3(b)において、タッチパネル部300におけるプラスチックフィルム340の任意の一箇所が押圧されたとする。このように押圧されるに伴って、プラスチックフィルム340と上部電極膜330とは一体的に図中下方に歪み、上部電極膜330の一部と下部電極膜310の一部とが接触して短絡する。
【0065】
ここで、上部電極膜330における前述のx軸方向両端部に所定の電圧を印加し、下部電極膜310のy軸方向両端部を開放した時に測定される電圧値から、上部電極膜330と下部電極膜310との接触点のx軸方向の座標点が演算される。同様に、下部電極膜310における前述のy軸方向両端部に所定の電圧を印加し、上部電極膜330のx軸方向両端部を開放した時に測定される電圧値から、上部電極膜330と下部電極膜310との接触点のy軸方向の座標点が演算される。これら演算された二つの座標から、押圧された部位が特定される。タッチパネル部300では概ね以上のようにして操作者による操作を認識することが可能に構成されている。
【0066】
図2に戻り、触覚表示部400は、タッチパネル部300におけるプラスチックフィルム340上に形成されており、表示方向に向かって、第1電極膜410、光導電層420、電気粘性流体層430、第2電極膜440、及びプラスチックフィルム450の順に積層された構成を有している。
【0067】
第1電極膜410、及び第2電極膜440は、夫々ITOで構成された光透過性の導電性薄膜であり、本発明に係る「一対の電極」の一例である。
【0068】
光導電層420は、CGL(Carrier Generation Layer:電荷生成層)たるベンズイミダゾールペリレン(BZP)、CTL(Carrier Transfer Layer:電荷輸送層)たるポリビニルカルバゾール(PVC)、及びBZPが順次積層された構成を有する有機材料系の光導電層であり、光透過性を有すると共に照射光の強度に応じて導電率が変化する性質を有する、本発明に係る「特性変化層」の一である「光導電層」の一例である。光導電層420は、照射光の強度が大きい程導電率が大きく、強度が小さい程導電率が小さくなる。
【0069】
本実施例において、光導電層420は、ディスプレイ部200に表示される視覚情報を照射光源とするように構成されている。前述したように、ディスプレイ部200は、各画素が白色又は黒色のいずれかを表示するように構成されているから、光導電層420に照射される照射光の強度も、係る白色又は黒色の夫々に対応する2種類の値を取る。
【0070】
尚、本実施例において、光導電層を構成する材料は、光透過性を有し、照射光の強度に応じて導電率を変化させ得る限りにおいて、何ら限定されるものではなく、例えば、水素化アモルファスシリコンなどの無機材料であってもよい。また、有機系材料によって光導電層を形成する場合には、上述したようにCGL層とCTL層を積層させる構成が一般的に採られるが、この場合、CGL層としてCuPc(銅フタロシアニン)、CTL層としてTPD(トリフェニルジアミン)などが使用されてもよい。
【0071】
電気粘性流体層430は、絶縁性流体中に誘電性の固体微粒子を散在させてなり、光透過性を有し、印加される電圧に応じて粘性が変化する性質を有する、本発明に係る「電気粘性流体層」の一例である。電気粘性流体層430は、印加電圧が大きい程硬く、小さい程軟らかくなる性質を有する。尚、電気粘性流体層430を構成する電気粘性流体は、光透過性を有し、印加電圧に応じて粘性を変化させ得る限りにおいて自由に決定されてよい。
【0072】
プラスチックフィルム450は、例えばPETで構成された保護膜であり、本発明に係る「可撓性基板」の一例である。プラスチックフィルム450の下面には、前述の第2電極膜440が形成されている。プラスチックフィルム450と第2電極膜440とは、操作者の操作によって、図中下方向に可逆的に撓むことが可能に構成されている。尚、触覚表示部400には、図示せぬ電源回路によって、所定の電圧が印加されているものとする。
<触覚表示機能付タッチパネル装置10の動作>
上記構成を有する触覚表示機能付タッチパネル装置10において、操作者は、ディスプレイ部200に表示される視覚情報を参照し、タッチパネル部300を操作して情報の入力を実行する。即ち通常のタッチパネル装置を操作するのと同様の操作を実行する。しかしながら、本実施例に係るタッチパネル装置10は、触覚表示部400を備えることによって、係る通常のタッチパネル操作に触覚情報を付与することが可能に構成されている。以下、触覚表示部400の動作を中心に、タッチパネル装置10の動作について説明する。
【0073】
始めに、図4を参照して、触覚表示部400の基本動作について説明する。ここに、図4は、触覚表示部400の等価回路図である。尚、図4において、図2と重複する箇所には同一の符号を付してその説明を省略することとする。
【0074】
図4において、触覚表示部400は、第1電極膜410と第2電極膜420との間に、抵抗部と容量部との並列回路として表される光導電層420及び電気粘性流体層430が相互に直列に配置された構成を有する。
【0075】
光導電層420を構成する並列回路は抵抗部421及び容量部422からなり、電気粘性流体層430を構成する並列回路は抵抗部431及び容量部432からなる。ここで、光導電層420の抵抗部421は、照射光の強度に応じて導電率が変化するため、可変抵抗として表すことができる。
【0076】
抵抗部421の抵抗値が変化する(光導電層420の導電率が変化する)と、光導電層420と電気粘性流体層430との間の分圧比が変化する。即ち、触覚表示部400においては、光導電部420に照射される照射光の強度に応じて、電気粘性流体層430に印加される電圧の相対的な高低が決定される。前述の通り、照射光の強度は2種類の値を取り得るから、電気粘性流体層430に印加される電圧も相対的に高低2種類の値を取り得る。
【0077】
具体的には、ディスプレイ部200において白色で表示される部位と対応する光導電部420の部位では、抵抗部421の抵抗値が下がり、電気粘性流体層430の分圧が大きくなり、印加電圧は相対的に高くなる。反対に、黒色で表示される部位に対応する部位では抵抗部421の抵抗値は変化しないから、印加電圧は相対的に低くなる。粘性を示す指標として降伏応力を用いると、電気粘性流体層430は、印加電圧の高低に応じて、夫々130kPa及び10kPaの降伏応力が得られるように構成されている。
【0078】
次に、図5を参照して、触覚表示部400の具体的な動作について説明する。ここに、図5は、タッチパネル装置10の模式的斜視図である。尚、同図において、図2と重複する箇所には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0079】
図5において、ディスプレイ部200には、「1」なる視覚情報(本発明に係る「入力を促す視覚情報」の一例である)が表示されている。この視覚情報は、ディスプレイ部200と対面するタッチパネル部300(図示略)を透過して、光導電部420に到達する。光導電部420では、この視覚情報のうち、黒に対応する部位(即ち「1」の部位)の導電率は変化せず、白に対応する部位(即ち、「1」以外の部分)では導電率が上昇する。
【0080】
その結果、電気粘性流体層430においては、「1」以外の部分の粘性が変化し、硬くなり、「1」と対応する部分の粘性は変化せず相対的に軟らかくなる。このような粘性の変化によって生じる硬軟の触感は、プラスチックフィルム450を介して操作者に伝達される。プラスチックフィルム450の厚みは、このような触感を阻害しない範囲で決定されている。即ち、触覚表示部400によれば、操作者がディスプレイ部200に表示された「1」なる視覚情報を選択しようと図示略のタッチパネル部300を操作する際、操作者に対し、電気粘性流体層430の粘性の差によって生じる硬軟の触感を、触覚情報として提供することが可能となるのである。
【0081】
このように、触覚表示機能付タッチパネル装置10によれば、電気粘性流体層430の粘性を、ディスプレイ部200の視覚情報を使用して、言わば光入力によって変化させることが可能である。従って、効率的に触覚情報を表示することが可能となるのである。
【0082】
尚、電気粘性流体層430を構成する電気粘性流体の種類、電気粘性流体層430の厚み、光導電部420を構成する光導電材料の種類、光導電部420の厚み、及び触覚表示部400に与える電圧の値などは、予め実験的、経験的、或いはシミュレーションなどによって、係る触覚情報が好適に提供されるように決定されている。
【0083】
尚、本実施例では、ディスプレイ部200は白黒の2値情報のみを表示したが、無論ディスプレイ部200は、通常のフルカラーディスプレイと同様の表示を行うディスプレイ装置であってもよい。この場合には、電気粘性流体層430の粘性が多様に変化する可能性が生じるが、例えば、黒色の部位とそれ以外の色の部位とで粘性が大きく変化するように触覚表示部430及び光導電部420が構成されればよい。
【0084】
尚、タッチパネル部300は、本実施例において例示したようなITOなどを使用した抵抗膜方式に限定されず、既存の静電容量方式、赤外線方式、圧電センサ方式、電磁誘導方式、表面弾性波(SAW)方式、光学的な非接触方式などの各種方式が同様に使用可能である。
<第2実施例>
上述の第1実施例においては、操作者がプラスチックフィルム450を押圧し、ボタンなどの視覚情報を選択しても、電気粘性流体層430の粘性が変化しないため操作上の違和感が生じる可能性がある。第2実施例では、CPU110が、以下に説明する如き触覚付与処理を実行することによって(即ち、本発明に係る「変化付与手段」の一例として機能することによって)、その問題を解決している。以下、図6及び図7を参照して本発明の第2実施例について説明する。ここに、図6は、触覚付与処理に係る表示画面の模式平面図であり、図7は、触覚付与処理のフローチャートである。
【0085】
尚、第2実施例は、第1実施例において制御部100が実行する処理を説明するものであるから、第2実施例に係る構成は第1実施例と同等である。従って、以下の説明において、第1実施例と重複する箇所の説明に際しては同一の符号を参照してその説明を適宜省略するものとする。
【0086】
図7において、制御部100のCPU110は、通常の視覚情報を表示する(ステップS10)。ここで、通常の視覚情報とは、例えば、第1実施例に示した如き「1」なる視覚情報である。本実施例においては、「1」の周囲を四角で囲んだ視覚情報が示される。
【0087】
図6(a)には、ステップS10に係るディスプレイ部200の状態が示されている。この状態において、「1」の部分と、及びその外周を囲う四角形部分のみが黒色であり、他は白色で表示される。この視覚情報は、例えば、銀行のATMなどにおける数字キーと同様のものである。
【0088】
また、図6(b)には、図6(a)と対応する電気粘性流体層430の状態が示されている。この状態では、既に述べた通り、ディスプレイ部200の黒色表示に対応する部分は軟らかく、白色表示に対応する部分は硬くなっている。
【0089】
図7に戻り、ある時刻において、操作者がこの視覚情報を選択し、プラスチックフィルム450における、この視覚情報に該当する部分を押圧したとする(ステップS11)。この押圧によって生じる圧力は、触覚表示部400から更にタッチパネル部300に伝達され、図3(b)に示すように、FPC基板323からは、その視覚情報のディスプレイ部200上における表示位置を示す座標データが制御部100に出力され、メモリ120に格納される。CPU110は、メモリ120にこの座標データが格納されることによって、係る視覚情報が選択された(即ち、操作者により「1」が入力された)ことを検出する(ステップS12)。
【0090】
次に、CPU110は、ディスプレイ部200における、選択された視覚情報の表示パターンを変更する(ステップS13)。具体的には、図6(c)のような表示パターンを生成すると共に、メモリ120から係る座標データを読み出し、それまで図6(a)のように表示されていた領域に表示させる。即ち、その視覚情報に係る表示領域全域を黒色に変更する。
【0091】
このようにディスプレイ部200における、選択された視覚情報に係る表示パターンが変更されることによって、触覚表示部400の電気粘性流体層430の粘性も変化する。即ち、ディスプレイ部200からの光入力が無くなるため、これまで図6(b)のように硬軟が混ざった状態から、図6(d)のように、該当部分が全て軟らかい状態に変化する。
【0092】
このように触覚情報が変化すると、視覚情報の選択及び押圧に伴い、それまで硬かった部分(即ち「1」以外の部分)が軟らかくなるので、操作者に対し、あたかもボタンを押下したかの如き感覚が提供されることとなる。
【0093】
CPU110は、このように表示パターンを変更するのと同時に、内蔵タイマを作動させ(ステップS14)、表示パターン変更からの経過時間が2秒に達したか否かを判別する(ステップS15)。2秒に満たない場合には(ステップS15:NO)、2秒経過するまで待つと共に、経過時間が2秒に達すると(ステップS15:YES)、表示パターンを元に戻す(ステップS16)。即ち、ディスプレイ部200に表示されるパターンを再び図6(a)に示す如き表示パターンに復帰させる。表示パターンが元に戻ると、CPU110は、触覚付与処理を終了する。
【0094】
尚、この2秒とは、通常のボタン操作などを押圧するに要する平均的な時間として設定されたものであり、内蔵タイマによって検出される時間は、如何なる値であってもよい。
【0095】
以上説明したように、第2実施例に係る触覚付与処理よれば、操作者がタッチパネル操作を行う際に感じ得る違和感を簡便に改善することが可能であり、操作感を一層向上させることが可能となる。
<変形例>
尚、触覚表示機能付タッチパネル装置の構成は、上述の実施例に係る構成に限定されない。例えば、以下の如き構成を採ることも容易である。ここでは、図8を参照して、このような本発明の変形例について説明する。ここに、図8は、本発明の変形例に係る触覚機能付タッチパネル装置20における触覚表示部500の構成を示す略構成図である。尚、同図において、図2と重複する箇所には同一の符号を付してその説明を省略することとする。
【0096】
図8において、触覚表示機能付タッチパネル装置20は、触覚表示部400の代わりに、光導電層420と電気粘性流体層430との間に弾性体層510を介在させてなる触覚表示部500を備える点において、上述の実施例と異なっている。尚、図8において、タッチパネル部300及びディスプレイ部200は省略されている。
【0097】
弾性体層510は、光透過性を有する樹脂材料であり、例えば、光透過性のゴムである。このように弾性体層510を介在させることによって、操作者がプラスチックフィルム450を押圧する際の触感が更に改善される。即ち、電気粘性流体層430の厚みに加えて、弾性体層510の厚み分だけ、操作者は、指等を押し込む感触を更に得ることができるのである。電気粘性流体層430に印加する電圧と電気粘性流体層430によってもたらされる触感とはトレードオフの関係があり、印加電圧を下げ、装置構成をコンパクトにするためには、電気粘性流体層430を薄くする必要があって、その場合には触感が犠牲になることがあるが、本変形例に係る構成によれば、容易に両者を望ましい形態とすることが可能である。
【0098】
尚、このような弾性体層を介在させる位置は、図8の態様に限定されない。例えば、光導電層430の下部に弾性体層を設けてもよい。また、場合によっては、複数の弾性体層を設けてもよい。
【0099】
本発明は、上述した実施例に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う触覚表示装置、及び触覚表示機能付タッチパネル装置もまた、本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】本発明の第1実施例に係るタッチパネル装置のブロック図である。
【図2】図1のタッチパネル装置の積層構成を示す略構成図である。
【図3】図1のタッチパネル装置におけるタッチパネル部の略断面図である。
【図4】図1のタッチパネル装置における触覚表示部の等価回路図である。
【図5】図1のタッチパネル装置の模式的斜視図である。
【図6】本発明の第2実施例に係る触覚付与処理に係る表示画面の模式平面図である。
【図7】触覚付与処理のフローチャートである。
【図8】本発明の変形例に係るタッチパネル装置の略構成図である。
【符号の説明】
【0101】
10…触覚表示機能付タッチパネル装置(タッチパネル装置)、20…触覚表示機能付タッチパネル装置、100…制御部、110…CPU、120…メモリ、200…ディスプレイ部、300…タッチパネル部、310…下部電極膜、320…電極間間隙部、330…上部電極膜、340…プラスチックフィルム、400…触覚表示部、410…第1電極膜、420…光導電層、430…電気粘性流体層、440…第2電極膜、450…プラスチックフィルム、500…触覚表示部、510…弾性体層。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示パターンに応じた表示光を出力する表示画面上に配置される触覚表示装置であって、
前記表示画面に対面して設けられると共に光透過性を有する一対の電極と、
光透過性を有すると共に前記一対の電極間に配置され、前記表示光の強度に応じて導電率及び透磁率のうち少なくとも一方が前記表示画面上における各部位毎に変化する特性変化層と、
光透過性を有すると共に前記一対の電極間に配置され且つ前記特性変化層に対面して設けられ、前記一対の電極により前記特性変化層を介して印加される印加電圧に応じて前記表示画面上における各部位毎に粘性が変化する電気粘性流体層と
を具備することを特徴とする触覚表示装置。
【請求項2】
前記特性変化層は、前記表示光の強度に応じて導電率が前記表示画面上における各部位毎に変化する光導電層からなる
ことを特徴とする請求項1に記載の触覚表示装置。
【請求項3】
前記表示画面上における前記電気粘性流体層の下方に、前記電気粘性流体層よりも弾性率の低い弾性体層を更に具備する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の触覚表示装置。
【請求項4】
光透過性を有する可撓性基板を更に具備し、
前記一対の電極、前記特性変化層及び前記電気粘性流体層は、前記可撓性基板上に形成されている
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の触覚表示装置。
【請求項5】
前記表示画面に対面して設けられ、前記表示パターンとして前記表示画面に表示される入力を促す視覚情報が表示された部分と対応する部位が押圧されることによって前記入力を行うことが可能な光透過性のタッチパネルと、
前記タッチパネルにおける前記表示画面とは反対側に対面して設けられた請求項1から4のいずれか一項に記載の触覚表示装置と
を具備することを特徴とする触覚表示機能付タッチパネル装置。
【請求項6】
前記電気粘性流体層の少なくとも一部が押圧されると、前記少なくとも一部について前記粘性を更に変化させる変化付与手段を更に具備する
ことを特徴とする請求項5に記載の触覚表示機能付タッチパネル装置。
【請求項7】
前記表示画面を有すると共に前記表示画面に前記視覚情報を表示する表示手段を更に具備する
ことを特徴とする請求項5又は6に記載の触覚表示機能付タッチパネル装置。
【請求項8】
表示光を出力する表示画面上に配置されており、(1)前記表示画面に対面して設けられると共に光透過性を有する一対の電極と、(2)光透過性を有すると共に前記一対の電極間に配置され、前記表示光の強度に応じて導電率及び透磁率のうち少なくとも一方が変化する特性変化層と、(3)光透過性を有すると共に前記一対の電極間に配置され且つ前記特性変化層に対面して設けられ、前記一対の電極により前記特性変化層を介して印加される印加電圧に応じて粘性が変化する電気粘性流体層とを具備する触覚表示装置と、
該触覚表示装置と前記表示画面の間において前記表示画面に対面して設けられると共に、前記表示画面に表示される入力を促す視覚情報が表示された部分と対応する部位が押圧されることによって前記入力を行うことが可能な光透過性のタッチパネルと、
前記電気粘性流体層の少なくとも一部が押圧されると、前記少なくとも一部について前記粘性を更に変化させる変化付与手段と
を具備することを特徴とする触覚表示機能付タッチパネル装置。
【請求項9】
前記表示画面を有すると共に前記表示画面に前記視覚情報を表示する表示手段を更に具備し、
前記変化付与手段は、前記表示手段による前記視覚情報を変化させることにより前記粘性を更に変化させる
ことを特徴とする請求項6又は8に記載の触覚表示機能付タッチパネル装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−11646(P2006−11646A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−185323(P2004−185323)
【出願日】平成16年6月23日(2004.6.23)
【出願人】(000005016)パイオニア株式会社 (3,620)
【Fターム(参考)】