記録ヘッド、液滴吐出装置及び液滴吐出方法
【課題】構成を複雑化することなく、マトリックス型記録ヘッドが主走査方向に移動する際にヘッド姿勢が傾斜することによって生じる形成画像の副走査方向の濃度ムラの発生を抑制することのできる記録ヘッド、液滴吐出装置及び液滴吐出方法を得る。
【解決手段】記録ヘッド50は、複数のノズル60が主走査方向に対して所定角度で傾斜した直線上に配列された複数組のノズル群60Aが、副走査方向に隣接するノズル60の副走査方向に対する間隔が略同一となり、且つ各ノズル群60Aに属するノズル60の副走査方向に対する位置が略同一となるように、副走査方向に配置されており、補正用ノズル60γが、副走査方向に隣接するノズル群60A間の隣接するノズル60の間の主走査方向の略中央で、且つ他のノズル60の主走査方向に対して重なることなく設けられている。
【解決手段】記録ヘッド50は、複数のノズル60が主走査方向に対して所定角度で傾斜した直線上に配列された複数組のノズル群60Aが、副走査方向に隣接するノズル60の副走査方向に対する間隔が略同一となり、且つ各ノズル群60Aに属するノズル60の副走査方向に対する位置が略同一となるように、副走査方向に配置されており、補正用ノズル60γが、副走査方向に隣接するノズル群60A間の隣接するノズル60の間の主走査方向の略中央で、且つ他のノズル60の主走査方向に対して重なることなく設けられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のノズルを有する記録ヘッド、当該記録ヘッドを往復移動させつつ、ノズルから液滴を吐出させる液滴吐出装置、及び当該記録ヘッドを用いた液滴吐出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、各々液滴を吐出することで画像を構成するドットを記録媒体に形成する記録ヘッドを、主走査方向に往復移動させつつ、液滴を吐出させると共に、記録ヘッド及び記録媒体の少なくとも一方を主走査方向に直交する副走査方向に相対的に移動させて画像を形成する液滴吐出装置が普及している。
【0003】
一方、記録ヘッドについては、限られたノズル面域内に高密度で多数のノズルを配列するために複数のノズルを2次元状に配置させた記録ヘッド(マトリックス型記録ヘッド)がよく知られており、マトリックス型記録ヘッドを用いた画像形成においては、高密度配列のノズルによる液滴吐出が可能になる為、高速高画質化が実現出来る。例えば、図17のような高密度多ノズルのマトリックス型記録ヘッドを用いる画像形成の場合、1回の主走査で副走査方向に高密度で多点の液滴吐出が可能になる為、高速高画質化が可能になる。
【0004】
しかし一方、マトリックス型記録ヘッドを用いた液滴吐出装置では、形成した画像に、副走査方向に対する濃度ムラが発生し易くなる、という問題があった。
【0005】
この問題を解決するために、特許文献1には、径の大きいドットと径の小さいドットを混在させ、且つ一定の間隔でこれらのドットを形成することで、副走査方向に対する濃度ムラの空間周波数を高くし、濃度ムラの視認性を低下させる技術が開示されている。
【0006】
また、特許文献2には、記録ヘッドが、主走査方向に対して角度φをなすノズル列、及び主走査方向に対して角度−φをなし上記ノズル列と交差するノズル列で構成されるノズル群を有し、当該ノズル群を主走査方向に並ぶように投影した場合に、隣り合うノズルが異なるノズル列に属するように各ノズルをX字状に配列することで、形成される画像に発生する濃度ムラの視認性を低下させる技術が開示されている。
【0007】
さらに、特許文献3には、副走査方向に沿って千鳥状に配列された複数個のノズルを有する記録ヘッドにおいて、主走査方向の往路及び復路で、記録媒体に同じノズルにより形成された隣接する2本のラスタを1単位として画像を記録することで、副走査方向に発生する縞模様を防止する技術が開示されている。
【特許文献1】特開2004−90504号公報
【特許文献2】特開2007−29786号公報
【特許文献3】特開2002−103579号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示されている技術では、複数のノズルが移動方向に対して所定角度で傾斜した直線上に配列された複数組のノズル群が、副走査方向に隣接するノズルの副走査方向に対する間隔が略同一となり、且つ各ノズル群に属するノズルの副走査方向に対する位置が略同一となるように、副走査方向に配置されている記録ヘッドにおいて、当該記録ヘッドが主走査方向への移動に伴う慣性力により傾斜することによって、副走査方向に隣接するノズル群間の隣接するノズルにより形成されるドットの密度と、各ノズル群に属するノズルにより形成されるドットの密度が異なるものとなることで発生する、副走査方向に対する濃度ムラを抑制することはできない、という問題点があった。また、特許文献2に開示されている技術では、ノズルの配列が複雑になり、ノズルにインク液を供給するための流路の設計等の制約が多くなる、という問題点があった。さらに、特許文献3に開示されている技術では、ノズルの配列の密度が高い記録ヘッドには適用できない場合がある、という問題点があった。
【0009】
また、マトリックス型記録ヘッドを用いた画像形成には、ヘッド姿勢のずれにより副走査方向の濃度ムラが発生し易くなるという問題がある。例えば、図17のとおり、マトリックス型記録ヘッドが主走査方向に対して所定の角度で正確に取り付けられていれば、副走査方向の隣接ドット間隔は全て等間隔に配置されるが、ヘッド姿勢にわずかでも角度誤差を生じる場合はノズル配列中の副走査方向隣接ドット間隔aとノズル配列の折返し部分の副走査方向隣接ドット間隔bに違いが生じ、ノズル列の折返しピッチPの間隔で濃度の濃い部分や薄い部分が現れて、副走査方向の濃度ムラが視認されることになる。
【0010】
特許文献1〜3では、このようなノズル列の折返し位置に発生する濃度ムラについて、効果的に低減する方法は示されていない。
【0011】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、複数のノズルが2次元状に配列されたマトリックス型記録ヘッドを用いる場合、構成を複雑化することなく、マトリックス型記録ヘッドが主走査方向に移動する際にヘッド姿勢が傾斜することによって生じる形成画像の副走査方向の濃度ムラの発生を抑制することのできる記録ヘッド、液滴吐出装置及び液滴吐出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、各々液滴を吐出することで画像を構成するドットを記録媒体に形成する複数のノズルが主走査方向に対して所定角度で傾斜した直線上に配列された複数組のノズル群が、副走査方向に隣接するノズルの副走査方向に対する間隔が略同一となり、且つ各ノズル群に属するノズルの副走査方向に対する位置が略同一となるように副走査方向に配置された記録ヘッドであって、副走査方向に隣接するノズル群間の隣接するノズルの間の主走査方向の略中央で、且つ他のノズルと主走査方向に対して重なることなく第2のノズルが設けられた、記録ヘッドである。
【0013】
請求項1に記載の記録ヘッドによれば、各々液滴を吐出することで画像を構成するドットを記録媒体に形成する複数のノズルが主走査方向に対して所定角度で傾斜した直線上に配列された複数組のノズル群が、副走査方向に隣接するノズルの副走査方向に対する間隔が略同一となり、且つ各ノズル群に属するノズルの副走査方向に対する位置が略同一となるように副走査方向に配置されており、第2のノズルが、副走査方向に隣接するノズル群間の隣接するノズルの間の主走査方向の略中央で、且つ他のノズルと主走査方向に対して重なることなく第2のノズルが設けられている。
【0014】
なお、ここで言う「略同一」或いは「略中央」とは、設計上は同一或いは中央だが、製造誤差によるずれを許容して同一或いは中央、ということを意味する。
【0015】
本発明では、記録ヘッドが主走査方向に移動する際ヘッド姿勢を傾斜しつつ移動することで、副走査方向に隣接するノズル群間の隣接するノズルにより形成されるドットの副走査方向の密度と、各ノズル群に属するノズルにより形成されるドットの副走査方向の密度が異なるものとなり、副走査方向のドットの密度に差がノズル群ピッチの間隔で生じても、隣接するノズル群の両端の2つのノズルの略中央に設けられた第2のノズルにより形成されるドットによって副走査方向のドット密度の差によって生じる濃淡を補正することが可能になり、構成を複雑化することなく、マトリックス型記録ヘッドが主走査方向に移動する際にヘッド姿勢が傾斜することによって生じる形成画像の副走査方向の濃度ムラの発生を抑制することができる。
【0016】
なお、本発明は、請求項2に記載の発明のように、前記第2のノズルが、副走査方向上流側及び副走査方向下流側に隣接するノズルとの副走査方向に対する間隔が各ノズル群に属するノズルの副走査方向に対する間隔と略同一となる位置に設けられているものとしてもよい。これにより、形成される画像の副走査方向の濃度ムラの発生を、より抑制することができる。
【0017】
一方、上記目的を達成するために、請求項3に記載の液滴吐出装置は、請求項1又は請求項2記載の記録ヘッドと、前記記録ヘッドを主走査方向に往復移動させる移動手段と、前記記録ヘッド及び前記記録媒体の少なくとも一方を副走査方向に相対的に搬送する搬送手段と、前記第2のノズルより吐出される液滴の量の補正量を決定する決定手段と、前記記録媒体に画像を形成する際に、前記第2のノズルより吐出される液滴の量を、前記決定手段によって決定された前記補正量に基づいて補正しつつ、前記記録ヘッドによる液滴の吐出を制御する制御手段と、を備えている。
【0018】
請求項3に記載の液滴吐出装置によれば、請求項1又は請求項2記載の記録ヘッドを備えており、移動手段によって、上記記録ヘッドが主走査方向に往復移動されつつ、ドットを記録媒体に形成するための液滴がノズルから吐出され、搬送手段によって、記録ヘッド及び記録媒体の少なくとも一方が副走査方向に相対的に搬送されることで、記録媒体に画像が形成される。
【0019】
ここで、本発明では、決定手段により、記録媒体に形成される画像の副走査方向の濃度ムラを抑制するように、第2のノズルより吐出される液滴の量の補正量が決定され、制御手段により、記録媒体に画像を形成する際に、第2のノズルより吐出される液滴の量を、決定手段によって決定された補正量に基づいて補正しつつ、記録ヘッドによる液滴の吐出が制御される。
【0020】
すなわち、本発明では、記録ヘッドが主走査方向に対してヘッド姿勢を所定の角度から傾斜しつつ移動することで、副走査方向に隣接するノズル群間の隣接するノズル、及び第2のノズルにより形成されるドットの副走査方向の密度と、各ノズル群に属するノズルにより形成されるドットの副走査方向の密度が異なるものとなり、形成画像に副走査方向の濃度ムラが発生する場合でも、記録媒体に形成される画像の副走査方向の濃度ムラを抑制するように、第2のノズルより吐出される液滴の量の補正量を決定しており、決定した補正量に基づいて、第2のノズルより吐出される液滴の量を補正しつつ、記録ヘッドによる液滴の吐出を制御するので、構成を複雑化することなく、マトリックス型記録ヘッドが主走査方向に移動する際にヘッド姿勢が傾斜することによって生じる形成画像の副走査方向の濃度ムラの発生を抑制することができる。具体的には、副走査方向に隣接するノズル群間の隣接するノズル、及び第2のノズルにより形成されるドットの副走査方向の密度が、各ノズル群に属するノズルにより形成されるドットの副走査方向の密度よりも密になった場合は、第2のノズルの吐出液滴量を減じることにより、ノズル群間の隣接するノズル、及び第2のノズル部の濃度が各ノズル群の濃度よりも濃くなることを抑制する。また、副走査方向に隣接するノズル群間の隣接するノズル、及び第2のノズルにより形成されるドットの副走査方向の密度が、各ノズル群に属するノズルにより形成されるドットの副走査方向の密度よりも疎になった場合は、第2のノズルの吐出液滴量を増やすことにより、ノズル群間の隣接するノズル、及び第2のノズル部の濃度が各ノズル群の濃度よりも薄くなることを抑制する。
【0021】
また、請求項3に記載の発明は、請求項4に記載の発明のように、前記決定手段が、前記移動手段によって前記記録ヘッドが主走査方向に往路移動される際と復路移動される際の各々に応じて前記補正量を決定するものとしてもよい。これにより、往路移動と復路移動において前記記録ヘッドの傾斜角度が異なっても各々に適正な補正がなされ、形成される画像の副走査方向の濃度ムラの発生を、より抑制することができる。
【0022】
また、請求項3又は請求項4に記載の発明は、請求項5に記載の発明のように、前記決定手段が、前記第2のノズルに副走査方向下流側及び副走査方向上流側に近い順に所定数のノズルより吐出される液滴の量の補正量を更に決定し、前記制御手段が、前記記録媒体に画像を形成する際に、前記第2のノズル及び前記所定数のノズルより吐出される液滴の量を、前記決定手段によって決定された前記補正量に基づいて補正しつつ、前記記録ヘッドによる液滴の吐出を制御するものとしてもよい。これにより、形成される画像の副走査方向の濃度ムラの発生を、より抑制することができる。
【0023】
また、請求項3〜請求項5に記載の発明は、請求項6に記載の発明のように、前記第2のノズルより吐出される液滴の量が各々異なり、他のノズルから吐出される液滴の量が同一とされた状態で前記記録ヘッドにより形成された複数の画像を含むテストパターンの副走査方向の濃度分布を読み取る読取手段を更に備え、前記決定手段は、前記読取手段によって読み取られた前記テストパターンの副走査方向の濃度分布読取結果に基づいて前記補正量を決定するものとしてもよい。これにより、画像を形成する場合のより適正な補正量を決定することができる。
【0024】
また、請求項6に記載の発明は、請求項7に記載の発明のように、前記複数の画像が各色毎の画像であり、前記読取手段は、当該複数の画像を各色毎に読み取り、前記決定手段は、前記読取手段の読取結果に基づいて、前記補正量を各色毎に決定してもよい。これにより、各色毎の記録ヘッドのヘッド姿勢の傾斜が微妙に異なっていても、各々の色毎に適正な補正量を決定することができる。
【0025】
また、請求項6に記載の発明は、請求項8に記載の発明のように、前記複数の画像が異なる濃度領域毎の画像であり、前記読取手段は、当該複数の画像を各濃度領域毎に読み取り、前記決定手段は、前記読取手段の読取結果に基づいて、前記補正量を各濃度領域毎に決定してもよい。これにより、単位面積当りの総液滴吐出量が異なる各濃度領域においても、各々の面積当りの総液滴吐出量に対して適正な補正量を決定することができる。
【0026】
一方、上記目的を達成するために、請求項9に記載の液滴吐出方法は、請求項1又は請求項2記載の記録ヘッドと、前記記録ヘッドを主走査方向に往復移動させる移動手段と、前記記録ヘッド及び前記記録媒体の少なくとも一方を副走査方向に相対的に搬送する搬送手段とを備えた液滴吐出装置における液滴吐出方法であって、前記記録媒体に形成される画像の副走査方向の濃度ムラを抑制するように、前記第2のノズルより吐出される液滴の量の補正量を決定し、前記記録媒体に画像を形成する際に、前記第2のノズルより吐出される液滴の量を、前記補正量に基づいて補正しつつ、前記記録ヘッドによる液滴の吐出を制御する。
【0027】
従って、請求項9に記載の液滴吐出方法によれば、請求項3に記載の発明と同様に作用するので、請求項3に記載の発明と同様に、構成を複雑化することなく、マトリックス型記録ヘッドが主走査方向に移動する際にヘッド姿勢が傾斜することによって生じる形成画像の副走査方向の濃度ムラの発生を抑制することができる。
【発明の効果】
【0028】
以上説明した如く、本発明によれば構成を複雑化することなく、マトリックス型記録ヘッドが主走査方向に移動する際にヘッド姿勢が傾斜することによって生じる形成画像の副走査方向の濃度ムラの発生を抑制することができる、という優れた効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、ここでは、本発明をインクジェット記録装置に適用した場合について説明する。
【0030】
図1には、本実施の形態に係るインクジェット記録装置10の全体構成が示されている。
【0031】
同図に示すように、インクジェット記録装置10は、各々インク液滴を吐出することで画像を構成するドットを記録紙14に形成する複数のノズルを備えた記録ヘッドを備えた画像形成部12と、記録紙14を供給する給紙部16と、記録紙14のカールを除去するデカール処理部18と、上記画像形成部12に備えられた上記記録ヘッドからインク液滴が吐出される面(以下、「インク吐出面」という。)に対向して配置され、記録紙14の平面性を保持しながら記録紙14を搬送するベルト搬送部20と、記録紙14に形成された画像を読み取る画像読取部44と、画像が形成された記録紙14を排紙する排紙部22と、を備えている。
【0032】
なお、本実施の形態に係るインクジェット記録装置10は、給紙部16として、ロール紙(連続紙)のマガジンを適用しているが、これに限らず、紙幅や紙質等が異なる複数のマガジンを適用してもよい。また、ロール紙のマガジンに代えて、又はこれと併用して、カット紙が積層装填されたカセットを適用してもよい。
【0033】
なお、複数種類の記録紙14を利用可能な構成にした場合、記録紙14の種類情報を記録したバーコード或いは無線タグなどの情報記録体をマガジンに取り付け、その情報記録体の情報を所定の読取装置によって読み取ることで、使用される記録紙14の種類を自動的に判別し、当該種類に応じて適切なインク吐出を実現するようにインク吐出制御を行うことが好ましい。
【0034】
給紙部16から送り出される記録紙14はマガジンに装填されていたことによる巻きクセが残り、カールする。このカールを除去するために、デカール処理部18においてマガジンの巻きクセ方向と逆方向に加熱ドラム24で記録紙14に熱を与える。このとき、記録紙14において画像が形成される面(以下、「画像形成面」という。)が外側に弱いカールとなるように加熱温度を制御するとより好ましい。
【0035】
ロール紙を使用する装置構成の場合、図1のように、裁断用のカッター26が設けられており、該カッター26によってロール紙は所望のサイズにカットされる。なお、カット紙を使用する場合には、カッター26は不要である。
【0036】
デカール処理後、カッター26によってカットされた記録紙14は、ベルト搬送部20へと送られる。
【0037】
ベルト搬送部20は、ローラ28,30間に無端状のベルト32が巻き掛けられた構造を有するように構成されている。ベルト32が巻かれているローラ28,30の少なくとも一方に図示しないモータの動力が伝達されることにより、ベルト32は図1上の時計回り方向に駆動され、ベルト32上に保持された記録紙14は図1の左から右へと搬送される。
【0038】
なお、ベルト32は、記録紙14の幅よりも広い幅寸法を有しており、ベルト面には多数の吸引穴(不図示)が形成されている。同図に示されるように、ローラ28,30間に掛け渡されたベルト32の内側において、上記インク吐出面に対向する位置には吸着チャンバ34が設けられており、この吸着チャンバ34内の空気をファン36で吸引して負圧にすることによって記録紙14がベルト32上に吸着し、保持される。なお、本実施の形態に係るインクジェット記録装置10は、記録紙14をベルト32に保持させる方式として、吸着チャンバ34を用いた吸引吸着方式を適用しているが、これに限らず、記録紙14をベルト32に静電的に吸着させる静電吸着方式を適用してもよい。
【0039】
また、ベルト搬送部20による記録紙14の搬送方向の画像形成部12よりも上流側には、加熱ファン38が設けられている。加熱ファン38は、画像形成前の記録紙14に加熱空気を吹き付け、記録紙14を加熱する。画像形成の直前に記録紙14を加熱しておくことにより、インク液滴が記録紙14に着弾した後乾き易くなる。
【0040】
画像形成部12の後段には熱風を吹き付ける加熱ファンを備えた後乾燥部40が設けられており、後乾燥部40によって、画像が形成された記録紙14の画像形成面が乾燥され、その後、画像が形成された記録紙14は排紙部22から排紙される。
【0041】
また、ベルト32上にも画像形成部12から吐出されたインク液滴が付着する場合があるので、ベルト32における記録紙14を搬送する領域外にベルト清掃部42が設けられている。なお、本実施の形態に係るインクジェット記録装置10は、ベルト清掃部42としてブラシ・ロールを適用しているが、これに限らず、吸水ロール、清浄エアーを吹き掛けるエアーブロー、或いはこれらの組合せ等を適用してもよい。
【0042】
一方、画像読取部44は固体撮像素子を有しており、後乾燥部40と排紙部22との間の記録紙14の搬送領域に対し、記録紙14の画像形成面に固体撮像素子の撮像面が対向するように設けられている。画像読取部44では、搬送されてくる記録紙14に形成された画像を固体撮像素子によって読み取り、読み取った画像を示すデータ(以下、「読取画像データ」という。)を生成する。
【0043】
なお、本実施の形態に係るインクジェット記録装置10は、上記固体撮像素子として、CCD(Charge Coupled Device)ラインセンサを適用しているが、これに限らず、CCDエリアセンサ、或いはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサ等、他の固体撮像素子を適用してもよい。
【0044】
さらに、本実施の形態に係るインクジェット記録装置10は、上記固体撮像素子の配設位置を固定し、搬送されてくる記録紙14に形成された画像を読み取る方法を適用しているが、これに限らず、記録紙14が画像読取部44の配設位置に搬送されたときに、一旦記録紙14の搬送を停止し、上記固体撮像素子を記録紙14の搬送方向に移動させることで、記録紙14に形成された画像を読み取る方法を適用してもよい。
【0045】
一方、図2に、本実施の形態に係るインクジェット記録装置10に備えられている画像形成部12及びその周辺の上面図を示す。
【0046】
同図に示すように、画像形成部12は、イエロー(Y)のインク液を用いて記録紙14に画像を形成する記録ヘッド50Y、マゼンタ(M)のインク液を用いて記録紙14に画像を形成する記録ヘッド50M、シアン(C)のインク液を用いて記録紙14に画像を形成する記録ヘッド50C、及びブラック(K)のインク液を用いて記録紙14に画像を形成する記録ヘッド50Kを備えており、記録ヘッド50Y,50M,50C,50Kはキャリッジ51に搭載されている。また、記録ヘッド50Y,50M,50C,50Kは各々対応する色のインク液が充填されているインクタンクを備えている。なお、以下の説明において、対応する色を区別する場合は、符号の末尾に対応するY,M,C,Kのいずれかを付して説明し、対応する色を区別しない場合は、Y,M,C,Kを省略する。
【0047】
上記キャリッジ51は、図2上端部近傍に挿通孔を備えており、当該挿通孔に、主走査方向に対して平行に配置されているガイドレール52が挿通されている。これにより、キャリッジ51は、ガイドレール52に沿ってスライド可能とされている。なお、上記挿通孔には、内径をガイドレール52の外径に比較して若干大きくすることで、所謂アソビが設けられている。
【0048】
さらに、キャリッジ51は、図2上端部(本実施の形態では、ガイドレール52が挿通されている側の端面の図2右端部)にベルト接続部53を備えており、当該ベルト接続部53で、主走査方向に対して平行に配置されているキャリッジベルト54と接続されている。そして、キャリッジ51は、キャリッジベルト54が回動することにより、回動の方向に応じて力が加えられ、ガイドレール52に沿って主走査方向に往復移動する。
【0049】
また、キャリッジベルト54は、主動プーリ55Aと従動プーリ55Bに巻き掛けられている。上記主動プーリ55Aは、キャリッジモータ56の回転軸に機械的に連接されており、キャリッジモータ56の回転軸の正回転(図2に示される矢印A方向)及び逆回転(図2に示される矢印B方向)に合わせて正回転及び逆回転する。このため、キャリッジモータ56の回転軸の正回転及び逆回転に合わせてキャリッジベルト54が回動し、これにより、キャリッジ51がガイドレール52に沿って、主走査方向に往復移動する。
【0050】
なお、本実施の形態に係るインクジェット記録装置10は、キャリッジモータ56の回転軸を正回転させることで、キャリッジ51を主走査方向に往路移動させ、キャリッジモータ56の回転軸を逆回転させることで、キャリッジ51を主走査方向に復路移動させる。
【0051】
次に、記録ヘッド50の構造について説明する。
【0052】
図3に、記録ヘッド50の構造例を示す平面透視図を示す。また、図4に、記録ヘッド50のノズル部分の拡大図を示す。
【0053】
記録紙14上に形成される画像を構成するドットのピッチを高密度化するためには、記録ヘッド50に備えられている複数のノズルのピッチを高密度化する必要がある。そのため、記録ヘッド50は、図3に示すように、ノズル60と、各ノズル60に対応する圧力室61等からなる複数のインク室ユニット62を2次元状(マトリックス型)に配置させた構造を有している。
【0054】
なお、本実施の形態に係るインクジェット記録装置10に備えられている記録ヘッド50は、複数(本実施の形態では、6つ)のノズル60が主走査方向に対して所定角度で傾斜した直線上に配列された複数組(本実施の形態では、3組)のノズル群60Aが、副走査方向に隣接するノズル60の副走査方向に対する間隔が略同一となり、且つ各ノズル群60Aに属するノズル60の副走査方向に対する位置が略同一となるように、副走査方向に配置されており、さらに、各ノズル群60Aにおいて副走査方向に隣接するノズル群60Aの間の隣接するノズルの間であって、当該ノズル間の主走査方向の略中央で、且つ他のノズルの主走査方向に対して重なることなく補正用ノズル60γが設けられている。なお、本実施の形態に係る補正用ノズル60γは、副走査方向上流側及び副走査方向下流側に隣接するノズル60との副走査方向に対する間隔が各ノズル群60Aに属するノズル60の副走査方向に対する間隔と略同一となる位置に設けられている。
【0055】
これにより、副走査方向に沿って並ぶように投影される実質的なノズル間隔(以下、「投影ノズルピッチ」という。)の高密度化を達成することによって、ドットのピッチを高密度化している。なお、以下では、1組のノズル群60A及び補正用ノズル60γによるドット形成領域の副走査方向に対する幅を折返しピッチPと称する。
【0056】
また、各ノズル60に対応して設けられている圧力室61は、その平面形状が正方形とされており(図3及び図4参照)、対角線(図4中のA−A線)上の両隅部の一方にノズル60が設けられ、他方に供給インクの流入口(以下、「供給口」という。)63が設けられている。
【0057】
なお、本実施の形態に係るインクジェット記録装置10は、圧力室61の平面形状として正方形を適用しているが、これに限らず、菱形、長方形等の他の四角形、五角形、六角形その他の多角形、円形、楕円形等、他の平面形状を適用してもよい。
【0058】
図5に、インク室ユニット62の図4中のA−A線に沿う破断側面図を示す。
【0059】
同図に示すように、各圧力室61は供給口63を介して共通流路64と連通されている。共通流路64は各記録ヘッド50に備えられているインクタンクと連通しており、インクタンクから供給されるインクは共通流路64を介して各圧力室61に分配供給される。
【0060】
圧力室61の一部の面(図5において天面)を構成している加圧板(共通電極と兼用される振動板)65には個別電極66を備えたアクチュエータ67が接合されている。個別電極66と共通電極間に駆動電圧を印加することによってアクチュエータ67が変形して圧力室61の容積が変化し、これに伴う圧力変化によりノズル60からインク液滴が吐出される。そして、インク液滴の吐出後、アクチュエータ67の変位が元に戻る際に、共通流路64から供給口63を通って新しいインクが圧力室61に再充填される。なお、本実施の形態に係るインクジェット記録装置10は、アクチュエータ67として、チタン酸ジルコン酸鉛やチタン酸バリウム等の圧電体を用いた圧電素子を適用する。
【0061】
一方、図6は、インクジェット記録装置10の電気的構成を示すブロック図である。同図に示すように、インクジェット記録装置10は、システムコントローラ80、プリント制御部81、通信インタフェース82、画像メモリ84、ROM(Read Only Memory)85、モータドライバ86、ヒータドライバ88、モータドライバ92、及び記録ヘッドドライバ93を備えている。
【0062】
システムコントローラ80は、CPU(Central Processing Unit)及びその周辺回路等から構成され、所定のプログラムに従ってインクジェット記録装置10の全体を制御する制御装置として機能するとともに、各種演算を行う演算装置として機能する。すなわち、システムコントローラ80は、プリント制御部81、通信インタフェース82、画像メモリ84、ROM85、モータドライバ86、ヒータドライバ88、及び画像読取部44の各部を制御し、ホスト装置89との間の通信制御、画像メモリ84及びROM85の読み書き制御等を行うとともに、搬送系のモータ90、ヒータ91を制御する制御信号を生成する。なお、プリント制御部81に対しては、記録紙14に画像を形成させる制御をする際に、画像メモリ84に記憶された画像データ等の各種データを送信する。また、画像読取部44からは、画像読取部44で生成された読取画像データを受信する。
【0063】
通信インタフェース82は、ユーザが当該インクジェット記録装置10に対して画像形成の指示等を行うため等に用いられるホスト装置89とのインタフェース部であり、通信を高速化するためのバッファメモリを搭載している。なお、本実施の形態に係るインクジェット記録装置10は、通信インタフェース82として、USB(Universal Serial Bus)を適用しているが、これに限らず、IEEE(Institute of Electrical and electronics Engineers)1394、イーサネット(登録商標)、無線ネットワーク等のシリアルインタフェースや、セントロニクス等のパラレルインタフェースを適用してもよい。
【0064】
画像メモリ84は、通信インタフェース82を介してホスト装置89から送信された画像データ、画像読取部44から送信された読取画像データ等を記憶する記憶手段であり、システムコントローラ80を通じて各種データの読み書きが行われる。また、画像メモリ84は、各種データの一時記憶領域として利用されるとともに、プログラムの展開領域及びCPUの演算作業領域としても利用される。なお、本実施の形態に係るインクジェット記録装置10は、画像メモリ84として、半導体素子からなるメモリを適用しているが、これに限らず、ハードディスク等の磁気媒体を適用してもよい。
【0065】
また、ROM85には、システムコントローラ80のCPUが実行するプログラム及び制御に必要な各種データなどが格納されている。なお、本実施の形態に係るインクジェット記録装置10は、ROM85として、書換不能な記憶手段を適用しているが、これに限らず、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)のような書換可能な記憶手段を適用してもよい。
【0066】
モータドライバ86は、システムコントローラ80からの指示に従って搬送系のモータ90を駆動させる駆動回路であり、ヒータドライバ88は、システムコントローラ80からの指示に従って後乾燥部40等のヒータ91を駆動させるドライバである。
【0067】
プリント制御部81は、システムコントローラ80の制御に従い、システムコントローラ80から送信された画像データからインク吐出制御用のデータ(以下、「インク吐出データ」という。)を生成するための各種加工、補正などの処理を行う信号処理手段として機能するとともに、記録ヘッドドライバ93を介した記録ヘッド50の制御、及びキャリッジモータ56を駆動させる駆動回路であるモータドライバ92を介したキャリッジモータ56の制御を行う。
【0068】
記録ヘッドドライバ93は、プリント制御部81からの指示に従って記録ヘッド50を駆動させるための駆動回路であり、プリント制御部81から送信されるインク吐出データに基づき、ノズル60からインク液滴を吐出させるための駆動電圧を生成し、記録ヘッド50へ出力する。
【0069】
ここで、図7を参照して、従来のインクジェット記録装置によって形成されるドットの副走査方向の密度分布について説明する。なお、従来のインクジェット記録装置に備えられている図7に示す記録ヘッド50’は、補正用ノズル60γが設けられておらず、1組のノズル群60’Aを構成するノズル60’の数を、一例として7つとし、ノズル群60’Aの数を一例として3組として説明する。
【0070】
図7(A)に示すように、キャリッジに備えられている記録ヘッド50’は、主走査方向に往路移動する際に、副走査方向下流側に比較して副走査方向上流側の方が遅れるように傾斜しつつ移動する場合がある。これは、キャリッジをガイドレールに沿って主走査方向にスムーズに往復移動させるように、挿通孔にアソビが設けられているためである。
【0071】
記録ヘッド50’が角度θ’1で傾斜しつつ往路移動する場合、ノズル群60’Aを構成する複数のノズル60’のうち、副走査方向に隣接するノズル群60’A間の隣接するノズル(以下、「隣接ノズル」という。)60’α,60’βの副走査方向に対する投影ノズルピッチ(以下、「投影隣接ノズルピッチ」という。)が、記録ヘッド50’が傾斜していない場合に比較して短くなる一方、隣接ノズル60’α,60’β以外のノズル(以下、「中間部ノズル」という。)の副走査方向に対する投影ノズルピッチ(以下、「投影中間部ノズルピッチ」という。)が、記録ヘッド50’が傾斜していない場合に比較して長くなる。これにより、隣接ノズル60’α,60’βにより形成されるドットの副走査方向の密度が密になる一方、中間部ノズルにより形成されるドットの副走査方向の密度が疎になる。
【0072】
一方、図7(B)に示すように、キャリッジに備えられている記録ヘッド50’は、主走査方向に復路移動する際に、主走査方向に往路移動する際と同じ理由により、副走査方向上流側に比較して副走査方向下流側の方が遅れるように傾斜しつつ移動してしまう場合がある。
【0073】
記録ヘッド50’が角度θ’2で傾斜しつつ復路移動する場合、投影隣接ノズルピッチが、記録ヘッド50’が傾斜していない場合に比較して長くなる一方、投影中間部ノズルピッチが、記録ヘッド50’が傾斜していない場合に比較して短くなる。これにより、隣接ノズル60’α,60’βにより形成されるドットの副走査方向の密度が疎になる一方、中間部ノズルにより形成されるドットの副走査方向の密度が密になる。
【0074】
なお、上述したように、キャリッジの移動方向と逆方向にキャリッジが傾斜するばかりでなく、キャリッジの移動方向と同方向にキャリッジが傾斜する場合もある。また、角度θ’1及び角度θ’2は、異なる場合もあり、同一の角度である場合もある。さらに、各記録ヘッド50’は、キャリッジに個別に取り付けられているため、各記録ヘッド50’毎に、角度θ’1及び角度θ’2が異なる場合もある。
【0075】
このように、キャリッジが傾斜しつつ、主走査方向に往復移動すると、記録ヘッド50’によって形成される画像の副走査方向に対して濃度ムラが発生する。
【0076】
一方、図8を参照して、本実施の形態に係るインクジェット記録装置10によって形成されるドットの密度分布について説明する。
【0077】
図8に示すように、キャリッジ51に備えられている記録ヘッド50は、キャリッジ51の挿通孔にアソビが設けられているため、従来の記録ヘッド50’と同様に、主走査方向に往復移動する際に、ヘッド姿勢が傾斜しつつ移動する場合がある。
【0078】
ここで、本実施の形態に係る記録ヘッド50のように補正用ノズル60γを設けた記録ヘッドの傾斜角度と、従来の記録ヘッド50’(図7参照。)のように補正用ノズル60γを設けていない記録ヘッドの傾斜角度とが同じ場合、本実施の形態に係る記録ヘッド50の投影隣接ノズルピッチと投影中間部ノズルピッチとの差が、従来の記録ヘッド50’に比較して小さくなる。そのため、本実施の形態に係る記録ヘッド50の隣接ノズル60α,60β及び補正用ノズル60γにより形成されるドットの密度と、中間部ノズルにより形成されるドットの密度との差が、従来の記録ヘッド50’に比較して小さくなるので、本実施の形態に係るインクジェット記録装置10は、従来のインクジェット記録装置と比較して、形成画像の副走査方向の濃度ムラの発生を抑制することができる。
【0079】
しかし、本実施の形態に係る記録ヘッド50においても、形成画像の副走査方向の濃度ムラの発生を必ずしも十分に抑制できるとは限らない。
【0080】
そのため、本実施の形態に係るインクジェット記録装置10は、当該濃度ムラを抑制するべく、補正用ノズル60γより吐出されるインク液滴の量を補正する。
【0081】
本実施の形態に係るインクジェット記録装置10では、一例として図9に模式的に示すように、キャリッジ51の主走査方向に対する往路移動と復路移動の各々毎に、テストパターンを形成する。なお、本実施の形態に係るインクジェット記録装置10では、テストパターンを形成することのできる画像データ(以下、「テストパターンデータ」という。)を画像メモリ84の記憶領域に予め記憶している。
【0082】
同図に示されるように、本実施の形態に係るテストパターンは、Y,M,C,Kの各色毎で、補正用ノズル60γより吐出されるインク液滴の予め定められた複数段階の量の各々毎に、かつ他のノズルから吐出されるインク液滴の量が予め定められた基準吐出量とされた状態の、ベタ画像が形成されたものとされている。なお、本実施の形態に係るインクジェット記録装置10では、インク液滴の上記複数段階の量として、予め定められた基準吐出量と、当該基準吐出量を中心として±5%及び±10%とされた4段階のインク吐出量の合計5段階のインク吐出量を適用しているが、これに限らないことは言うまでもない。
【0083】
なお、記録ヘッド50の主走査方向に対する往復移動の際の傾斜角度が大きくなるほど、上記投影隣接ノズルピッチと、上記投影中間部ノズルピッチとのずれ量が大きくなるため、同図に模式的に示されるように、投影隣接ノズルピッチの方が投影中間部ノズルピッチに比較して狭い場合には、隣接ノズル60α,60β及び補正用ノズル60γに対応する画像領域が他の領域に比較して濃くなり、投影隣接ノズルピッチの方が投影中間部ノズルピッチに比較して広い場合には、隣接ノズル60α,60β及び補正用ノズル60γに対応する画像領域が他の領域に比較して薄くなる。
【0084】
従って、以上のようなテストパターンを参照することにより、各記録ヘッド50の主走査方向の往路移動及び復路移動毎に、副走査方向の濃度ムラが最も抑制された画像の基準吐出量からの増減量を、各記録ヘッド毎の補正用ノズル60γより吐出されるインク液滴の量の補正量として特定することができる。
【0085】
そして、本実施の形態に係るインクジェット記録装置10では、各記録ヘッド50毎で、且つ主走査方向の往路移動及び復路移動毎に、上記特定した補正量を示すデータ(以下、「補正量データ」という。)を画像メモリ84の記憶領域に記憶し、記録紙14に画像を形成する際に、形成する画像に対応したインク吐出データを上記補正量データで補正することで、補正用ノズル60γより吐出されるインク液滴の量を補正しつつ、記録ヘッド50によるインク液滴の吐出を制御する。
【0086】
なお、本実施の形態に係るインクジェット記録装置10では、図10に示すように、駆動電圧αと駆動電圧αに対して逆極性である駆動電圧βとを、個別電極66に印加することで、アクチュエータ67を変形させてノズル60からインク液滴を吐出させる(図5も参照)。なお、個別電極66に駆動電圧αが印加されると、アクチュエータ67が圧力室61の体積が膨張するように変形し、ノズル60のインク液面がノズル60の内部に引き込まれる。そして、その後に駆動電圧βが印加されると、アクチュエータ67が駆動電圧αが印加された場合とは逆方向に変形して圧力室61の体積が収縮し、ノズル60からインク液滴が吐出される。
【0087】
そして、駆動電圧αが電圧Aの場合は、ノズル60よりインク液が基準吐出量で吐出され、駆動電圧αが電圧Aに比較して高い電圧Bの場合は、ノズル60よりインク液が基準吐出量に比較して多い量で吐出され、駆動電圧αが電圧Aに比較して低い電圧Cの場合は、ノズル60よりインク液が基準吐出量に比較して少ない量で吐出される。
【0088】
すなわち、本実施の形態に係るプリント制御部81は、補正用ノズル60γに対応するアクチュエータ67を変形させる駆動電圧αの大きさを、上記補正量データに基づいて補正することで、補正用ノズル60γより吐出されるインク液滴の量を補正する。
【0089】
次に、図11を参照して、本実施の形態に係るインクジェット記録装置10の作用を説明する。なお、同図は、例えば、ホスト装置89を介して補正量を導出する指示を受け付けた際にシステムコントローラ80のCPUによって実行される補正量導出プログラムの処理の流れを示すフローチャートであり、当該プログラムはROM85の記憶領域に予め記憶されている。
【0090】
まず、同図のステップ100では、画像メモリ84からテストパターンデータを読み出す。
【0091】
次のステップ102では、記録紙14の搬送を開始する。なお、記録紙14は、デカール処理部18によって、記録紙14のカールが除去され、カッター26によって所望のサイズにカットされる。
【0092】
次のステップ104では、記録紙14が画像形成位置に達するまで待ち状態となる。
【0093】
次のステップ106では、記録紙14にテストパターンを形成するように、プリント制御部81を制御する。これにより、プリント制御部81は、テストパターンデータに対応するインク吐出データに基づいて記録ヘッドドライバ93でノズル60毎に上記駆動電圧を生成させ、記録ヘッド50からインク液滴を吐出させることで、記録紙14にテストパターンを形成する。
【0094】
次のステップ108では、記録紙14に形成されたテストパターンを画像読取部44が読み取り、画像読取部44によって生成されるテストパターンを示す読取画像データを取得するまで待ち状態となる。
【0095】
次のステップ110では、取得したテストパターンを示す読取画像データに基づいて、補正用ノズル60γより吐出されるインク液滴の量の補正量を決定する。
【0096】
次のステップ112では、決定した補正量を示す補正量データを画像メモリ84の記憶領域に記憶させる。
【0097】
次のステップ114では、テストパターンを形成した記録紙14を排紙部22まで搬送し、記録紙14の搬送を停止し、本プログラムを終了する。
【0098】
次に、図12を参照して、本実施の形態に係るインクジェット記録装置10による画像形成処理について説明する。なお、同図は、画像データにより示される画像を形成する際にシステムコントローラ80のCPUによって実行される画像形成プログラムの処理の流れを示すフローチャートであり、当該プログラムはROM85の記憶領域に予め記憶されている。
【0099】
まず、同図のステップ200では、画像メモリ84の記憶領域に記憶されている補正量データを読み出す。
【0100】
次のステップ202では、記録紙14の搬送を開始する。なお、記録紙14は、デカール処理部18によって、記録紙14のカールが除去され、カッター26によって所望のサイズにカットされる。
【0101】
次のステップ204では、画像データにより示される画像を形成するためのノズル60から吐出させるインク液滴の量を、プリント制御部81に導出させる。これにより、プリント制御部81は、上記画像データに対応するインク吐出データを生成する。
【0102】
次のステップ206では、インク液滴の吐出量を、プリント制御部81に補正させる。これにより、プリント制御部81は、上記生成したインク吐出データにより示される補正用ノズル60γより吐出されるインク液滴の量を、上記読み出した補正量データに基づいて補正する。
【0103】
次のステップ208では、上記補正したインク吐出データをプリント制御部81に送信し、画像データにより示される画像を形成させる。これにより、プリント制御部81は、記録ヘッドドライバ93に、上記補正したインク吐出データに基づいて、各ノズル毎のアクチュエータ67を駆動させるための駆動電圧を生成させる。そして、記録紙14が画像形成位置に達すると、生成させた駆動電圧を個別電極66に印加させ、アクチュエータ67を駆動させることで、補正用ノズル60γより吐出されるインク液滴の量を補正しつつ、記録ヘッド50によるインク液滴の吐出を制御し、記録紙14に画像を形成する。
【0104】
次のステップ210では、記録紙14の1枚分の画像の形成が終了したか否かを判定し、否定判定となった場合はステップ204へ戻る一方、肯定判定となった場合は、ステップ212へ移行する。
【0105】
ステップ212では、画像を形成すべき全ての画像データについて、画像の形成が終了したか否かを判定し、否定判定となった場合はステップ204へ戻る一方、肯定判定となった場合は、ステップ214へ移行する。
【0106】
次のステップ214では、画像を形成した記録紙14を排紙部22まで搬送し、記録紙14の搬送を停止し、本プログラムを終了する。
【0107】
以上詳細に説明したように、本実施の形態では、各々液滴を吐出することで画像を構成するドットを記録媒体に形成する複数のノズルが主走査方向に対して所定角度で傾斜した直線上に配列された複数組のノズル群が、副走査方向に隣接するノズルの副走査方向に対する間隔が略同一となり、且つ各ノズル群に属するノズルの副走査方向に対する位置が略同一となるように副走査方向に配置されており、第2のノズルが、各ノズル群において副走査方向に隣接するノズル群間の隣接するノズルの間であって、当該ノズル間の主走査方向の略中央で、且つ中心が他のノズルの主走査方向に対して重なることなく設けられているので、構成を複雑化することなく、マトリックス型記録ヘッドが主走査方向に移動する際にヘッド姿勢が傾斜することによって生じる形成画像の副走査方向の濃度ムラの発生を抑制することができる。
【0108】
また、本実施の形態では、第2のノズルが、副走査方向上流側及び副走査方向下流側に隣接するノズルとの副走査方向に対する間隔が各ノズル群に属するノズルの副走査方向に対する間隔と略同一となる位置に設けられているので、形成される画像の副走査方向の濃度ムラの発生を、より抑制することができる。
【0109】
また、本実施の形態では、上記記録ヘッドを主走査方向に往復移動させる移動手段と、記録ヘッド及び記録媒体の少なくとも一方を副走査方向に相対的に搬送する搬送手段とを備えており、決定手段によって、記録媒体に形成される画像の副走査方向の濃度ムラを抑制するように、記録ヘッドに設けられた第2のノズルより吐出される液滴の量の補正量を決定し、制御手段によって、記録媒体に画像を形成する際に、上記第2のノズルより吐出される液滴の量を、決定手段によって決定された補正量に基づいて補正しつつ、記録ヘッドによる液滴の吐出を制御するので、構成を複雑化することなく、マトリックス型記録ヘッドが主走査方向に移動する際にヘッド姿勢が傾斜することによって生じる形成画像の副走査方向の濃度ムラの発生を抑制することができる。
【0110】
また、本実施の形態では、決定手段が、移動手段によって記録ヘッドが主走査方向に往路移動される際と復路移動される際の各々の記録ヘッドの傾斜角度が異なる場合も、往路移動と復路移動の各々に応じて補正量を決定するので、形成される画像の副走査方向の濃度ムラの発生を、より抑制することができる。
【0111】
また、本実施の形態では、第2のノズルより吐出される液滴の量が各々異なり、他のノズルから吐出される液滴の量が同一とされた状態で記録ヘッドにより形成された複数の画像を含むテストパターンの副走査方向の濃度分布を読み取る読取手段を更に備え、決定手段が、読取手段によって読み取られたテストパターンの副走査方向の濃度分布読取結果に基づいて補正量を決定するので、画像を形成する場合のより適正な補正量を決定することができる。
【0112】
また、本実施の形態では、複数の画像が各色毎の画像であり、読取手段が、当該複数の画像を各色毎に読み取り、決定手段が、読取手段の読取結果に基づいて、補正量を各色毎に決定するので、各色毎の記録ヘッドのヘッド姿勢の傾斜が微妙に異なっていても、各々の色毎に適正な補正量を決定することができる。
【0113】
以上、本発明を上記実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。発明の要旨を逸脱しない範囲で上記実施の形態に多様な変更または改良を加えることができ、当該変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0114】
また、上記実施の形態は、クレーム(請求項)にかかる発明を限定するものではなく、また実施の形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。前述した実施の形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における組み合わせにより種々の発明を抽出できる。上記実施の形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、効果が得られる限りにおいて、この幾つかの構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【0115】
例えば、上記実施の形態では、記録ヘッド50で吐出されるインク液をY,M,C,Kの4色とする場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、色や色数の組合せを変更した形態や、淡インク液、濃インク液や、例えば、ライトシアン液、ライトマゼンタ液などのライト系インク液等の特別色インク液を追加した形態としてもよい。この場合も、上記実施の形態と同様の効果を奏することができる。
【0116】
また、上記実施の形態では、記録ヘッド50からインク液滴を吐出させる方法として、圧電素子を用いてインク液滴を吐出させる場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、ヒータ等の発熱体によってインク液を加熱して気泡を発生させ、その圧力でインク液滴を飛ばすサーマルジェット方法等、他の方法を用いた形態としてもよい。この場合も、上記実施の形態と同様の効果を奏することができる。
【0117】
また、上記実施の形態では、記録紙14のみを副走査方向に移動させることで、キャリッジ51と記録紙14とを相対的に移動させる場合を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、記録紙14を固定し、キャリッジ51を副走査方向に移動させることで、キャリッジ51と記録紙14とを相対的に移動させる形態、又は記録紙14と共にキャリッジ51を副走査方向に移動させる形態としてもよい。この場合も、上記実施の形態と同様の効果を奏することができる。
【0118】
また、上記実施の形態では、記録ヘッド50が、複数のノズル60が副走査方向下流側から副走査方向上流側へ傾斜した直線上に配列された複数組のノズル群60Aを備えている場合を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、記録ヘッド50が、複数のノズル60が副走査方向上流側から副走査方向下流側へ傾斜した直線上に配列された複数組のノズル群60Aを備えている形態、等としてもよい。この場合も、上記実施の形態と同様の効果を奏することができる。
【0119】
また、上記実施の形態では、キャリッジ51に1本のガイドレール52を挿通させる場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、キャリッジ51に2本のガイドレール52を挿通させる形態としてもよい。
【0120】
また、上記実施の形態では、図9に示すテストパターンを形成する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、図13に示すようにY,M,C,Kの各色別に複数段階の濃度の各々毎にベタ画像を含むテストパターン(図13に示すテストパターンは、Kに対応)を形成し、Y,M,C,Kの各色の濃度毎に補正用ノズル60γより吐出されるインク液滴の量の補正量を決定する形態としてもよい。
【0121】
この形態の場合、テストパターンに形成される複数の画像を、異なる濃度領域毎の画像とし、画像読取部44によって、当該複数の画像を各濃度領域毎に読み取り、画像読取部44の読取結果に基づいて、上記補正量を各濃度領域毎に決定するので、単位面積当りの総液滴吐出量が異なる各濃度領域においても、各々の面積当りの総液滴吐出量に対して適正な補正量を決定することができる。
【0122】
また、補正用ノズル60γより吐出されるインク液滴の量を補正することによって、記録紙14に形成される画像に、補正用ノズル60γと吐出されるインク液滴の量が補正されていないノズルとの境界において、副走査方向の濃度ムラが発生する場合がある。そのため、記録紙14に形成されるベタ画像の副走査方向に対する濃度分布が均一となるように、補正用ノズル60γに副走査方向下流側及び副走査方向上流側に近い順に所定数(一例として、副走査方向下流側及び副走査方向上流側に1つずつ、すなわち、隣接ノズル60α,60β)のノズルより吐出されるインク液滴の量の補正量を更に決定し、記録紙14に画像を形成する際に、補正用ノズル60γより吐出されるインク液滴の量、及び上記所定数のノズルより吐出されるインク液滴の量を、決定された各々の補正量に基づいて補正しつつ、記録ヘッド50によるインク液滴の吐出を制御する形態としてもよい。これにより、形成される画像の副走査方向に対する濃度ムラの発生を、より抑制することができる。
【0123】
上記形態では、補正用ノズル60γに副走査方向下流側及び副走査方向上流側に近い順に所定数のノズルより吐出されるインク液滴の量の補正量を決定する方法として、一例として、以下の方法を適用する。まず、補正用ノズル60γより吐出するインク液滴の量の補正量を先に決定する。その後、先に決定した補正量で補正用ノズル60γより吐出するインク液滴の量が補正され、且つ上記所定数のノズルより吐出されるインク液滴の量が各々異なり、他のノズルから吐出されるインク液滴の量が同一とされた状態で記録ヘッド50により形成された複数のベタ画像を含むテストパターンを形成する。そして、上記テストパターンに基づいて、副走査方向の濃度ムラが抑制された画像を形成した上記所定数のノズルより吐出されるインク液滴の量に基づいて、上記所定数のノズルに対応した補正量を決定する。
【0124】
また、上記実施の形態では、図10に示す駆動電圧αの大きさを補正することで、ノズル60より吐出されるインク液滴の量を補正しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、図10に示される駆動電圧βの大きさを補正することで、ノズル60より吐出されるインク液滴の量を補正する形態や、駆動電圧α又は駆動電圧βを印加する時間を補正することで、ノズル60より吐出されるインク液滴の量を補正する形態としてもよい。この場合も、上記実施の形態と同様の効果を奏することができる。
【0125】
また、上記実施の形態では、画像形成処理とは別に補正量を予め決定し、画像形成処理を実行する毎に上記予め決定した補正量に基づいて、補正用ノズル60γより吐出されるインク液滴の量を補正する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、画像形成処理を実行する毎に、新たな補正量を決定する形態としてもよい。この場合も、上記実施の形態と同様の効果を奏することができる。
【0126】
また、上記実施の形態では、記録紙14に形成されたテストパターンを画像読取部44で読み取ることで生成したテストパターンの読取画像データに基づいて、隣接ノズルの補正量を決定したが、本発明はこれに限定されるものではなく、記録紙14に形成されたテストパターンをユーザが目視で確認し、各記録ヘッド50毎の補正用ノズル60γの補正量をインクジェット記録装置10に備えられた操作パネル、又はホスト装置89を介してインクジェット記録装置10に入力することで、補正用ノズル60γより吐出されるインク液滴の量の補正量を決定する形態としてもよい。
【0127】
更に、上記実施の形態では、記録ヘッド50に設けられている補正用ノズル60γを1つとしたが、本発明はこれに限定されるものではなく、一例として、図14に示すように、記録ヘッド50に設けられている補正用ノズル60γの数を複数とする形態としてもよい。
【0128】
また、図17に示す各ノズル群60A’の中央部のノズル60’を、副走査方向に隣接するノズル群60A’間の隣接するノズル60’の間の主走査方向の略中央で、且つ他のノズル60’と主走査方向に対して重なることなくずらすように配置することで、ノズル群60Aと補正用ノズル60γの位置関係を、図15に示す位置関係とする形態としてもよい。また、各ノズル群60A’の中央部に位置する2つのノズル60’のうち、1つを副走査方向上流側にずらし、1つを副走査方向下流側にずらすように配置することで、図16に示すように補正用ノズル60γの数を複数とする形態としてもよい。
【0129】
その他、上記実施の形態で説明したインクジェット記録装置10の構成(図1〜図6参照。)は一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において不要な部分を削除したり、新たな部分を追加したりすることができることは言うまでもない。
【0130】
また、上記実施の形態で説明した画像形成プログラムの処理の流れ(図11及び図12参照。)も一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において不要なステップを削除したり、新たなステップを追加したり、処理順序を入れ替えたりすることができることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0131】
【図1】実施の形態に係るインクジェット記録装置の構成を示す破断側面図である。
【図2】実施の形態に係る画像形成部及びその周辺の上面図である。
【図3】実施の形態に係る記録ヘッドの構造を示す平面透視図である。
【図4】実施の形態に係る記録ヘッドのノズル部分の平面透視図の拡大図である。
【図5】実施の形態に係る記録ヘッドのインク室ユニットの破断側面図である。
【図6】実施の形態に係るインクジェット記録装置の電気系の要部構成を示すブロック図である。
【図7】従来の形態に係るインクジェット記録装置に備えられた記録ヘッドの傾きの状態と、形成されるドットの密度分布の説明に供する図である。
【図8】本実施の形態に係る記録ヘッドの傾きの状態と、形成されるドットの密度分布の説明に供する図である。
【図9】実施の形態に係るインクジェット記録装置で形成されるテストパターンの一例を示す模式図である。
【図10】実施の形態に係る記録ヘッドからインク液滴を吐出する際にアクチュエータを変形させるための駆動電圧の説明に供する図である。
【図11】実施の形態に係る補正量導出プログラムの処理の流れを示すフローチャートである。
【図12】実施の形態に係る画像形成プログラムの処理の流れを示すフローチャートである。
【図13】実施の形態の他の形態に係るインクジェット記録装置で形成されるテストパターンの一例を示す模式図である。
【図14】実施の形態の他の形態に係る記録ヘッドのノズルの配置位置を示す図である。
【図15】実施の形態の他の形態に係る記録ヘッドのノズルの配置位置を示す図である。
【図16】実施の形態の他の形態に係る記録ヘッドのノズルの配置位置を示す図である。
【図17】従来の形態に係る記録ヘッドのノズルの配置位置を示す図である。
【符号の説明】
【0132】
10 インクジェット記録装置
14 記録紙(記録媒体)
32 ベルト(搬送手段)
44 画像読取部(読取手段)
50 記録ヘッド
54 キャリッジベルト(移動手段)
60 ノズル
60A ノズル群
60γ 補正用ノズル(第2のノズル)
80 システムコントローラ(決定手段)
81 プリント制御部(制御手段)
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のノズルを有する記録ヘッド、当該記録ヘッドを往復移動させつつ、ノズルから液滴を吐出させる液滴吐出装置、及び当該記録ヘッドを用いた液滴吐出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、各々液滴を吐出することで画像を構成するドットを記録媒体に形成する記録ヘッドを、主走査方向に往復移動させつつ、液滴を吐出させると共に、記録ヘッド及び記録媒体の少なくとも一方を主走査方向に直交する副走査方向に相対的に移動させて画像を形成する液滴吐出装置が普及している。
【0003】
一方、記録ヘッドについては、限られたノズル面域内に高密度で多数のノズルを配列するために複数のノズルを2次元状に配置させた記録ヘッド(マトリックス型記録ヘッド)がよく知られており、マトリックス型記録ヘッドを用いた画像形成においては、高密度配列のノズルによる液滴吐出が可能になる為、高速高画質化が実現出来る。例えば、図17のような高密度多ノズルのマトリックス型記録ヘッドを用いる画像形成の場合、1回の主走査で副走査方向に高密度で多点の液滴吐出が可能になる為、高速高画質化が可能になる。
【0004】
しかし一方、マトリックス型記録ヘッドを用いた液滴吐出装置では、形成した画像に、副走査方向に対する濃度ムラが発生し易くなる、という問題があった。
【0005】
この問題を解決するために、特許文献1には、径の大きいドットと径の小さいドットを混在させ、且つ一定の間隔でこれらのドットを形成することで、副走査方向に対する濃度ムラの空間周波数を高くし、濃度ムラの視認性を低下させる技術が開示されている。
【0006】
また、特許文献2には、記録ヘッドが、主走査方向に対して角度φをなすノズル列、及び主走査方向に対して角度−φをなし上記ノズル列と交差するノズル列で構成されるノズル群を有し、当該ノズル群を主走査方向に並ぶように投影した場合に、隣り合うノズルが異なるノズル列に属するように各ノズルをX字状に配列することで、形成される画像に発生する濃度ムラの視認性を低下させる技術が開示されている。
【0007】
さらに、特許文献3には、副走査方向に沿って千鳥状に配列された複数個のノズルを有する記録ヘッドにおいて、主走査方向の往路及び復路で、記録媒体に同じノズルにより形成された隣接する2本のラスタを1単位として画像を記録することで、副走査方向に発生する縞模様を防止する技術が開示されている。
【特許文献1】特開2004−90504号公報
【特許文献2】特開2007−29786号公報
【特許文献3】特開2002−103579号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示されている技術では、複数のノズルが移動方向に対して所定角度で傾斜した直線上に配列された複数組のノズル群が、副走査方向に隣接するノズルの副走査方向に対する間隔が略同一となり、且つ各ノズル群に属するノズルの副走査方向に対する位置が略同一となるように、副走査方向に配置されている記録ヘッドにおいて、当該記録ヘッドが主走査方向への移動に伴う慣性力により傾斜することによって、副走査方向に隣接するノズル群間の隣接するノズルにより形成されるドットの密度と、各ノズル群に属するノズルにより形成されるドットの密度が異なるものとなることで発生する、副走査方向に対する濃度ムラを抑制することはできない、という問題点があった。また、特許文献2に開示されている技術では、ノズルの配列が複雑になり、ノズルにインク液を供給するための流路の設計等の制約が多くなる、という問題点があった。さらに、特許文献3に開示されている技術では、ノズルの配列の密度が高い記録ヘッドには適用できない場合がある、という問題点があった。
【0009】
また、マトリックス型記録ヘッドを用いた画像形成には、ヘッド姿勢のずれにより副走査方向の濃度ムラが発生し易くなるという問題がある。例えば、図17のとおり、マトリックス型記録ヘッドが主走査方向に対して所定の角度で正確に取り付けられていれば、副走査方向の隣接ドット間隔は全て等間隔に配置されるが、ヘッド姿勢にわずかでも角度誤差を生じる場合はノズル配列中の副走査方向隣接ドット間隔aとノズル配列の折返し部分の副走査方向隣接ドット間隔bに違いが生じ、ノズル列の折返しピッチPの間隔で濃度の濃い部分や薄い部分が現れて、副走査方向の濃度ムラが視認されることになる。
【0010】
特許文献1〜3では、このようなノズル列の折返し位置に発生する濃度ムラについて、効果的に低減する方法は示されていない。
【0011】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、複数のノズルが2次元状に配列されたマトリックス型記録ヘッドを用いる場合、構成を複雑化することなく、マトリックス型記録ヘッドが主走査方向に移動する際にヘッド姿勢が傾斜することによって生じる形成画像の副走査方向の濃度ムラの発生を抑制することのできる記録ヘッド、液滴吐出装置及び液滴吐出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、各々液滴を吐出することで画像を構成するドットを記録媒体に形成する複数のノズルが主走査方向に対して所定角度で傾斜した直線上に配列された複数組のノズル群が、副走査方向に隣接するノズルの副走査方向に対する間隔が略同一となり、且つ各ノズル群に属するノズルの副走査方向に対する位置が略同一となるように副走査方向に配置された記録ヘッドであって、副走査方向に隣接するノズル群間の隣接するノズルの間の主走査方向の略中央で、且つ他のノズルと主走査方向に対して重なることなく第2のノズルが設けられた、記録ヘッドである。
【0013】
請求項1に記載の記録ヘッドによれば、各々液滴を吐出することで画像を構成するドットを記録媒体に形成する複数のノズルが主走査方向に対して所定角度で傾斜した直線上に配列された複数組のノズル群が、副走査方向に隣接するノズルの副走査方向に対する間隔が略同一となり、且つ各ノズル群に属するノズルの副走査方向に対する位置が略同一となるように副走査方向に配置されており、第2のノズルが、副走査方向に隣接するノズル群間の隣接するノズルの間の主走査方向の略中央で、且つ他のノズルと主走査方向に対して重なることなく第2のノズルが設けられている。
【0014】
なお、ここで言う「略同一」或いは「略中央」とは、設計上は同一或いは中央だが、製造誤差によるずれを許容して同一或いは中央、ということを意味する。
【0015】
本発明では、記録ヘッドが主走査方向に移動する際ヘッド姿勢を傾斜しつつ移動することで、副走査方向に隣接するノズル群間の隣接するノズルにより形成されるドットの副走査方向の密度と、各ノズル群に属するノズルにより形成されるドットの副走査方向の密度が異なるものとなり、副走査方向のドットの密度に差がノズル群ピッチの間隔で生じても、隣接するノズル群の両端の2つのノズルの略中央に設けられた第2のノズルにより形成されるドットによって副走査方向のドット密度の差によって生じる濃淡を補正することが可能になり、構成を複雑化することなく、マトリックス型記録ヘッドが主走査方向に移動する際にヘッド姿勢が傾斜することによって生じる形成画像の副走査方向の濃度ムラの発生を抑制することができる。
【0016】
なお、本発明は、請求項2に記載の発明のように、前記第2のノズルが、副走査方向上流側及び副走査方向下流側に隣接するノズルとの副走査方向に対する間隔が各ノズル群に属するノズルの副走査方向に対する間隔と略同一となる位置に設けられているものとしてもよい。これにより、形成される画像の副走査方向の濃度ムラの発生を、より抑制することができる。
【0017】
一方、上記目的を達成するために、請求項3に記載の液滴吐出装置は、請求項1又は請求項2記載の記録ヘッドと、前記記録ヘッドを主走査方向に往復移動させる移動手段と、前記記録ヘッド及び前記記録媒体の少なくとも一方を副走査方向に相対的に搬送する搬送手段と、前記第2のノズルより吐出される液滴の量の補正量を決定する決定手段と、前記記録媒体に画像を形成する際に、前記第2のノズルより吐出される液滴の量を、前記決定手段によって決定された前記補正量に基づいて補正しつつ、前記記録ヘッドによる液滴の吐出を制御する制御手段と、を備えている。
【0018】
請求項3に記載の液滴吐出装置によれば、請求項1又は請求項2記載の記録ヘッドを備えており、移動手段によって、上記記録ヘッドが主走査方向に往復移動されつつ、ドットを記録媒体に形成するための液滴がノズルから吐出され、搬送手段によって、記録ヘッド及び記録媒体の少なくとも一方が副走査方向に相対的に搬送されることで、記録媒体に画像が形成される。
【0019】
ここで、本発明では、決定手段により、記録媒体に形成される画像の副走査方向の濃度ムラを抑制するように、第2のノズルより吐出される液滴の量の補正量が決定され、制御手段により、記録媒体に画像を形成する際に、第2のノズルより吐出される液滴の量を、決定手段によって決定された補正量に基づいて補正しつつ、記録ヘッドによる液滴の吐出が制御される。
【0020】
すなわち、本発明では、記録ヘッドが主走査方向に対してヘッド姿勢を所定の角度から傾斜しつつ移動することで、副走査方向に隣接するノズル群間の隣接するノズル、及び第2のノズルにより形成されるドットの副走査方向の密度と、各ノズル群に属するノズルにより形成されるドットの副走査方向の密度が異なるものとなり、形成画像に副走査方向の濃度ムラが発生する場合でも、記録媒体に形成される画像の副走査方向の濃度ムラを抑制するように、第2のノズルより吐出される液滴の量の補正量を決定しており、決定した補正量に基づいて、第2のノズルより吐出される液滴の量を補正しつつ、記録ヘッドによる液滴の吐出を制御するので、構成を複雑化することなく、マトリックス型記録ヘッドが主走査方向に移動する際にヘッド姿勢が傾斜することによって生じる形成画像の副走査方向の濃度ムラの発生を抑制することができる。具体的には、副走査方向に隣接するノズル群間の隣接するノズル、及び第2のノズルにより形成されるドットの副走査方向の密度が、各ノズル群に属するノズルにより形成されるドットの副走査方向の密度よりも密になった場合は、第2のノズルの吐出液滴量を減じることにより、ノズル群間の隣接するノズル、及び第2のノズル部の濃度が各ノズル群の濃度よりも濃くなることを抑制する。また、副走査方向に隣接するノズル群間の隣接するノズル、及び第2のノズルにより形成されるドットの副走査方向の密度が、各ノズル群に属するノズルにより形成されるドットの副走査方向の密度よりも疎になった場合は、第2のノズルの吐出液滴量を増やすことにより、ノズル群間の隣接するノズル、及び第2のノズル部の濃度が各ノズル群の濃度よりも薄くなることを抑制する。
【0021】
また、請求項3に記載の発明は、請求項4に記載の発明のように、前記決定手段が、前記移動手段によって前記記録ヘッドが主走査方向に往路移動される際と復路移動される際の各々に応じて前記補正量を決定するものとしてもよい。これにより、往路移動と復路移動において前記記録ヘッドの傾斜角度が異なっても各々に適正な補正がなされ、形成される画像の副走査方向の濃度ムラの発生を、より抑制することができる。
【0022】
また、請求項3又は請求項4に記載の発明は、請求項5に記載の発明のように、前記決定手段が、前記第2のノズルに副走査方向下流側及び副走査方向上流側に近い順に所定数のノズルより吐出される液滴の量の補正量を更に決定し、前記制御手段が、前記記録媒体に画像を形成する際に、前記第2のノズル及び前記所定数のノズルより吐出される液滴の量を、前記決定手段によって決定された前記補正量に基づいて補正しつつ、前記記録ヘッドによる液滴の吐出を制御するものとしてもよい。これにより、形成される画像の副走査方向の濃度ムラの発生を、より抑制することができる。
【0023】
また、請求項3〜請求項5に記載の発明は、請求項6に記載の発明のように、前記第2のノズルより吐出される液滴の量が各々異なり、他のノズルから吐出される液滴の量が同一とされた状態で前記記録ヘッドにより形成された複数の画像を含むテストパターンの副走査方向の濃度分布を読み取る読取手段を更に備え、前記決定手段は、前記読取手段によって読み取られた前記テストパターンの副走査方向の濃度分布読取結果に基づいて前記補正量を決定するものとしてもよい。これにより、画像を形成する場合のより適正な補正量を決定することができる。
【0024】
また、請求項6に記載の発明は、請求項7に記載の発明のように、前記複数の画像が各色毎の画像であり、前記読取手段は、当該複数の画像を各色毎に読み取り、前記決定手段は、前記読取手段の読取結果に基づいて、前記補正量を各色毎に決定してもよい。これにより、各色毎の記録ヘッドのヘッド姿勢の傾斜が微妙に異なっていても、各々の色毎に適正な補正量を決定することができる。
【0025】
また、請求項6に記載の発明は、請求項8に記載の発明のように、前記複数の画像が異なる濃度領域毎の画像であり、前記読取手段は、当該複数の画像を各濃度領域毎に読み取り、前記決定手段は、前記読取手段の読取結果に基づいて、前記補正量を各濃度領域毎に決定してもよい。これにより、単位面積当りの総液滴吐出量が異なる各濃度領域においても、各々の面積当りの総液滴吐出量に対して適正な補正量を決定することができる。
【0026】
一方、上記目的を達成するために、請求項9に記載の液滴吐出方法は、請求項1又は請求項2記載の記録ヘッドと、前記記録ヘッドを主走査方向に往復移動させる移動手段と、前記記録ヘッド及び前記記録媒体の少なくとも一方を副走査方向に相対的に搬送する搬送手段とを備えた液滴吐出装置における液滴吐出方法であって、前記記録媒体に形成される画像の副走査方向の濃度ムラを抑制するように、前記第2のノズルより吐出される液滴の量の補正量を決定し、前記記録媒体に画像を形成する際に、前記第2のノズルより吐出される液滴の量を、前記補正量に基づいて補正しつつ、前記記録ヘッドによる液滴の吐出を制御する。
【0027】
従って、請求項9に記載の液滴吐出方法によれば、請求項3に記載の発明と同様に作用するので、請求項3に記載の発明と同様に、構成を複雑化することなく、マトリックス型記録ヘッドが主走査方向に移動する際にヘッド姿勢が傾斜することによって生じる形成画像の副走査方向の濃度ムラの発生を抑制することができる。
【発明の効果】
【0028】
以上説明した如く、本発明によれば構成を複雑化することなく、マトリックス型記録ヘッドが主走査方向に移動する際にヘッド姿勢が傾斜することによって生じる形成画像の副走査方向の濃度ムラの発生を抑制することができる、という優れた効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、ここでは、本発明をインクジェット記録装置に適用した場合について説明する。
【0030】
図1には、本実施の形態に係るインクジェット記録装置10の全体構成が示されている。
【0031】
同図に示すように、インクジェット記録装置10は、各々インク液滴を吐出することで画像を構成するドットを記録紙14に形成する複数のノズルを備えた記録ヘッドを備えた画像形成部12と、記録紙14を供給する給紙部16と、記録紙14のカールを除去するデカール処理部18と、上記画像形成部12に備えられた上記記録ヘッドからインク液滴が吐出される面(以下、「インク吐出面」という。)に対向して配置され、記録紙14の平面性を保持しながら記録紙14を搬送するベルト搬送部20と、記録紙14に形成された画像を読み取る画像読取部44と、画像が形成された記録紙14を排紙する排紙部22と、を備えている。
【0032】
なお、本実施の形態に係るインクジェット記録装置10は、給紙部16として、ロール紙(連続紙)のマガジンを適用しているが、これに限らず、紙幅や紙質等が異なる複数のマガジンを適用してもよい。また、ロール紙のマガジンに代えて、又はこれと併用して、カット紙が積層装填されたカセットを適用してもよい。
【0033】
なお、複数種類の記録紙14を利用可能な構成にした場合、記録紙14の種類情報を記録したバーコード或いは無線タグなどの情報記録体をマガジンに取り付け、その情報記録体の情報を所定の読取装置によって読み取ることで、使用される記録紙14の種類を自動的に判別し、当該種類に応じて適切なインク吐出を実現するようにインク吐出制御を行うことが好ましい。
【0034】
給紙部16から送り出される記録紙14はマガジンに装填されていたことによる巻きクセが残り、カールする。このカールを除去するために、デカール処理部18においてマガジンの巻きクセ方向と逆方向に加熱ドラム24で記録紙14に熱を与える。このとき、記録紙14において画像が形成される面(以下、「画像形成面」という。)が外側に弱いカールとなるように加熱温度を制御するとより好ましい。
【0035】
ロール紙を使用する装置構成の場合、図1のように、裁断用のカッター26が設けられており、該カッター26によってロール紙は所望のサイズにカットされる。なお、カット紙を使用する場合には、カッター26は不要である。
【0036】
デカール処理後、カッター26によってカットされた記録紙14は、ベルト搬送部20へと送られる。
【0037】
ベルト搬送部20は、ローラ28,30間に無端状のベルト32が巻き掛けられた構造を有するように構成されている。ベルト32が巻かれているローラ28,30の少なくとも一方に図示しないモータの動力が伝達されることにより、ベルト32は図1上の時計回り方向に駆動され、ベルト32上に保持された記録紙14は図1の左から右へと搬送される。
【0038】
なお、ベルト32は、記録紙14の幅よりも広い幅寸法を有しており、ベルト面には多数の吸引穴(不図示)が形成されている。同図に示されるように、ローラ28,30間に掛け渡されたベルト32の内側において、上記インク吐出面に対向する位置には吸着チャンバ34が設けられており、この吸着チャンバ34内の空気をファン36で吸引して負圧にすることによって記録紙14がベルト32上に吸着し、保持される。なお、本実施の形態に係るインクジェット記録装置10は、記録紙14をベルト32に保持させる方式として、吸着チャンバ34を用いた吸引吸着方式を適用しているが、これに限らず、記録紙14をベルト32に静電的に吸着させる静電吸着方式を適用してもよい。
【0039】
また、ベルト搬送部20による記録紙14の搬送方向の画像形成部12よりも上流側には、加熱ファン38が設けられている。加熱ファン38は、画像形成前の記録紙14に加熱空気を吹き付け、記録紙14を加熱する。画像形成の直前に記録紙14を加熱しておくことにより、インク液滴が記録紙14に着弾した後乾き易くなる。
【0040】
画像形成部12の後段には熱風を吹き付ける加熱ファンを備えた後乾燥部40が設けられており、後乾燥部40によって、画像が形成された記録紙14の画像形成面が乾燥され、その後、画像が形成された記録紙14は排紙部22から排紙される。
【0041】
また、ベルト32上にも画像形成部12から吐出されたインク液滴が付着する場合があるので、ベルト32における記録紙14を搬送する領域外にベルト清掃部42が設けられている。なお、本実施の形態に係るインクジェット記録装置10は、ベルト清掃部42としてブラシ・ロールを適用しているが、これに限らず、吸水ロール、清浄エアーを吹き掛けるエアーブロー、或いはこれらの組合せ等を適用してもよい。
【0042】
一方、画像読取部44は固体撮像素子を有しており、後乾燥部40と排紙部22との間の記録紙14の搬送領域に対し、記録紙14の画像形成面に固体撮像素子の撮像面が対向するように設けられている。画像読取部44では、搬送されてくる記録紙14に形成された画像を固体撮像素子によって読み取り、読み取った画像を示すデータ(以下、「読取画像データ」という。)を生成する。
【0043】
なお、本実施の形態に係るインクジェット記録装置10は、上記固体撮像素子として、CCD(Charge Coupled Device)ラインセンサを適用しているが、これに限らず、CCDエリアセンサ、或いはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサ等、他の固体撮像素子を適用してもよい。
【0044】
さらに、本実施の形態に係るインクジェット記録装置10は、上記固体撮像素子の配設位置を固定し、搬送されてくる記録紙14に形成された画像を読み取る方法を適用しているが、これに限らず、記録紙14が画像読取部44の配設位置に搬送されたときに、一旦記録紙14の搬送を停止し、上記固体撮像素子を記録紙14の搬送方向に移動させることで、記録紙14に形成された画像を読み取る方法を適用してもよい。
【0045】
一方、図2に、本実施の形態に係るインクジェット記録装置10に備えられている画像形成部12及びその周辺の上面図を示す。
【0046】
同図に示すように、画像形成部12は、イエロー(Y)のインク液を用いて記録紙14に画像を形成する記録ヘッド50Y、マゼンタ(M)のインク液を用いて記録紙14に画像を形成する記録ヘッド50M、シアン(C)のインク液を用いて記録紙14に画像を形成する記録ヘッド50C、及びブラック(K)のインク液を用いて記録紙14に画像を形成する記録ヘッド50Kを備えており、記録ヘッド50Y,50M,50C,50Kはキャリッジ51に搭載されている。また、記録ヘッド50Y,50M,50C,50Kは各々対応する色のインク液が充填されているインクタンクを備えている。なお、以下の説明において、対応する色を区別する場合は、符号の末尾に対応するY,M,C,Kのいずれかを付して説明し、対応する色を区別しない場合は、Y,M,C,Kを省略する。
【0047】
上記キャリッジ51は、図2上端部近傍に挿通孔を備えており、当該挿通孔に、主走査方向に対して平行に配置されているガイドレール52が挿通されている。これにより、キャリッジ51は、ガイドレール52に沿ってスライド可能とされている。なお、上記挿通孔には、内径をガイドレール52の外径に比較して若干大きくすることで、所謂アソビが設けられている。
【0048】
さらに、キャリッジ51は、図2上端部(本実施の形態では、ガイドレール52が挿通されている側の端面の図2右端部)にベルト接続部53を備えており、当該ベルト接続部53で、主走査方向に対して平行に配置されているキャリッジベルト54と接続されている。そして、キャリッジ51は、キャリッジベルト54が回動することにより、回動の方向に応じて力が加えられ、ガイドレール52に沿って主走査方向に往復移動する。
【0049】
また、キャリッジベルト54は、主動プーリ55Aと従動プーリ55Bに巻き掛けられている。上記主動プーリ55Aは、キャリッジモータ56の回転軸に機械的に連接されており、キャリッジモータ56の回転軸の正回転(図2に示される矢印A方向)及び逆回転(図2に示される矢印B方向)に合わせて正回転及び逆回転する。このため、キャリッジモータ56の回転軸の正回転及び逆回転に合わせてキャリッジベルト54が回動し、これにより、キャリッジ51がガイドレール52に沿って、主走査方向に往復移動する。
【0050】
なお、本実施の形態に係るインクジェット記録装置10は、キャリッジモータ56の回転軸を正回転させることで、キャリッジ51を主走査方向に往路移動させ、キャリッジモータ56の回転軸を逆回転させることで、キャリッジ51を主走査方向に復路移動させる。
【0051】
次に、記録ヘッド50の構造について説明する。
【0052】
図3に、記録ヘッド50の構造例を示す平面透視図を示す。また、図4に、記録ヘッド50のノズル部分の拡大図を示す。
【0053】
記録紙14上に形成される画像を構成するドットのピッチを高密度化するためには、記録ヘッド50に備えられている複数のノズルのピッチを高密度化する必要がある。そのため、記録ヘッド50は、図3に示すように、ノズル60と、各ノズル60に対応する圧力室61等からなる複数のインク室ユニット62を2次元状(マトリックス型)に配置させた構造を有している。
【0054】
なお、本実施の形態に係るインクジェット記録装置10に備えられている記録ヘッド50は、複数(本実施の形態では、6つ)のノズル60が主走査方向に対して所定角度で傾斜した直線上に配列された複数組(本実施の形態では、3組)のノズル群60Aが、副走査方向に隣接するノズル60の副走査方向に対する間隔が略同一となり、且つ各ノズル群60Aに属するノズル60の副走査方向に対する位置が略同一となるように、副走査方向に配置されており、さらに、各ノズル群60Aにおいて副走査方向に隣接するノズル群60Aの間の隣接するノズルの間であって、当該ノズル間の主走査方向の略中央で、且つ他のノズルの主走査方向に対して重なることなく補正用ノズル60γが設けられている。なお、本実施の形態に係る補正用ノズル60γは、副走査方向上流側及び副走査方向下流側に隣接するノズル60との副走査方向に対する間隔が各ノズル群60Aに属するノズル60の副走査方向に対する間隔と略同一となる位置に設けられている。
【0055】
これにより、副走査方向に沿って並ぶように投影される実質的なノズル間隔(以下、「投影ノズルピッチ」という。)の高密度化を達成することによって、ドットのピッチを高密度化している。なお、以下では、1組のノズル群60A及び補正用ノズル60γによるドット形成領域の副走査方向に対する幅を折返しピッチPと称する。
【0056】
また、各ノズル60に対応して設けられている圧力室61は、その平面形状が正方形とされており(図3及び図4参照)、対角線(図4中のA−A線)上の両隅部の一方にノズル60が設けられ、他方に供給インクの流入口(以下、「供給口」という。)63が設けられている。
【0057】
なお、本実施の形態に係るインクジェット記録装置10は、圧力室61の平面形状として正方形を適用しているが、これに限らず、菱形、長方形等の他の四角形、五角形、六角形その他の多角形、円形、楕円形等、他の平面形状を適用してもよい。
【0058】
図5に、インク室ユニット62の図4中のA−A線に沿う破断側面図を示す。
【0059】
同図に示すように、各圧力室61は供給口63を介して共通流路64と連通されている。共通流路64は各記録ヘッド50に備えられているインクタンクと連通しており、インクタンクから供給されるインクは共通流路64を介して各圧力室61に分配供給される。
【0060】
圧力室61の一部の面(図5において天面)を構成している加圧板(共通電極と兼用される振動板)65には個別電極66を備えたアクチュエータ67が接合されている。個別電極66と共通電極間に駆動電圧を印加することによってアクチュエータ67が変形して圧力室61の容積が変化し、これに伴う圧力変化によりノズル60からインク液滴が吐出される。そして、インク液滴の吐出後、アクチュエータ67の変位が元に戻る際に、共通流路64から供給口63を通って新しいインクが圧力室61に再充填される。なお、本実施の形態に係るインクジェット記録装置10は、アクチュエータ67として、チタン酸ジルコン酸鉛やチタン酸バリウム等の圧電体を用いた圧電素子を適用する。
【0061】
一方、図6は、インクジェット記録装置10の電気的構成を示すブロック図である。同図に示すように、インクジェット記録装置10は、システムコントローラ80、プリント制御部81、通信インタフェース82、画像メモリ84、ROM(Read Only Memory)85、モータドライバ86、ヒータドライバ88、モータドライバ92、及び記録ヘッドドライバ93を備えている。
【0062】
システムコントローラ80は、CPU(Central Processing Unit)及びその周辺回路等から構成され、所定のプログラムに従ってインクジェット記録装置10の全体を制御する制御装置として機能するとともに、各種演算を行う演算装置として機能する。すなわち、システムコントローラ80は、プリント制御部81、通信インタフェース82、画像メモリ84、ROM85、モータドライバ86、ヒータドライバ88、及び画像読取部44の各部を制御し、ホスト装置89との間の通信制御、画像メモリ84及びROM85の読み書き制御等を行うとともに、搬送系のモータ90、ヒータ91を制御する制御信号を生成する。なお、プリント制御部81に対しては、記録紙14に画像を形成させる制御をする際に、画像メモリ84に記憶された画像データ等の各種データを送信する。また、画像読取部44からは、画像読取部44で生成された読取画像データを受信する。
【0063】
通信インタフェース82は、ユーザが当該インクジェット記録装置10に対して画像形成の指示等を行うため等に用いられるホスト装置89とのインタフェース部であり、通信を高速化するためのバッファメモリを搭載している。なお、本実施の形態に係るインクジェット記録装置10は、通信インタフェース82として、USB(Universal Serial Bus)を適用しているが、これに限らず、IEEE(Institute of Electrical and electronics Engineers)1394、イーサネット(登録商標)、無線ネットワーク等のシリアルインタフェースや、セントロニクス等のパラレルインタフェースを適用してもよい。
【0064】
画像メモリ84は、通信インタフェース82を介してホスト装置89から送信された画像データ、画像読取部44から送信された読取画像データ等を記憶する記憶手段であり、システムコントローラ80を通じて各種データの読み書きが行われる。また、画像メモリ84は、各種データの一時記憶領域として利用されるとともに、プログラムの展開領域及びCPUの演算作業領域としても利用される。なお、本実施の形態に係るインクジェット記録装置10は、画像メモリ84として、半導体素子からなるメモリを適用しているが、これに限らず、ハードディスク等の磁気媒体を適用してもよい。
【0065】
また、ROM85には、システムコントローラ80のCPUが実行するプログラム及び制御に必要な各種データなどが格納されている。なお、本実施の形態に係るインクジェット記録装置10は、ROM85として、書換不能な記憶手段を適用しているが、これに限らず、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)のような書換可能な記憶手段を適用してもよい。
【0066】
モータドライバ86は、システムコントローラ80からの指示に従って搬送系のモータ90を駆動させる駆動回路であり、ヒータドライバ88は、システムコントローラ80からの指示に従って後乾燥部40等のヒータ91を駆動させるドライバである。
【0067】
プリント制御部81は、システムコントローラ80の制御に従い、システムコントローラ80から送信された画像データからインク吐出制御用のデータ(以下、「インク吐出データ」という。)を生成するための各種加工、補正などの処理を行う信号処理手段として機能するとともに、記録ヘッドドライバ93を介した記録ヘッド50の制御、及びキャリッジモータ56を駆動させる駆動回路であるモータドライバ92を介したキャリッジモータ56の制御を行う。
【0068】
記録ヘッドドライバ93は、プリント制御部81からの指示に従って記録ヘッド50を駆動させるための駆動回路であり、プリント制御部81から送信されるインク吐出データに基づき、ノズル60からインク液滴を吐出させるための駆動電圧を生成し、記録ヘッド50へ出力する。
【0069】
ここで、図7を参照して、従来のインクジェット記録装置によって形成されるドットの副走査方向の密度分布について説明する。なお、従来のインクジェット記録装置に備えられている図7に示す記録ヘッド50’は、補正用ノズル60γが設けられておらず、1組のノズル群60’Aを構成するノズル60’の数を、一例として7つとし、ノズル群60’Aの数を一例として3組として説明する。
【0070】
図7(A)に示すように、キャリッジに備えられている記録ヘッド50’は、主走査方向に往路移動する際に、副走査方向下流側に比較して副走査方向上流側の方が遅れるように傾斜しつつ移動する場合がある。これは、キャリッジをガイドレールに沿って主走査方向にスムーズに往復移動させるように、挿通孔にアソビが設けられているためである。
【0071】
記録ヘッド50’が角度θ’1で傾斜しつつ往路移動する場合、ノズル群60’Aを構成する複数のノズル60’のうち、副走査方向に隣接するノズル群60’A間の隣接するノズル(以下、「隣接ノズル」という。)60’α,60’βの副走査方向に対する投影ノズルピッチ(以下、「投影隣接ノズルピッチ」という。)が、記録ヘッド50’が傾斜していない場合に比較して短くなる一方、隣接ノズル60’α,60’β以外のノズル(以下、「中間部ノズル」という。)の副走査方向に対する投影ノズルピッチ(以下、「投影中間部ノズルピッチ」という。)が、記録ヘッド50’が傾斜していない場合に比較して長くなる。これにより、隣接ノズル60’α,60’βにより形成されるドットの副走査方向の密度が密になる一方、中間部ノズルにより形成されるドットの副走査方向の密度が疎になる。
【0072】
一方、図7(B)に示すように、キャリッジに備えられている記録ヘッド50’は、主走査方向に復路移動する際に、主走査方向に往路移動する際と同じ理由により、副走査方向上流側に比較して副走査方向下流側の方が遅れるように傾斜しつつ移動してしまう場合がある。
【0073】
記録ヘッド50’が角度θ’2で傾斜しつつ復路移動する場合、投影隣接ノズルピッチが、記録ヘッド50’が傾斜していない場合に比較して長くなる一方、投影中間部ノズルピッチが、記録ヘッド50’が傾斜していない場合に比較して短くなる。これにより、隣接ノズル60’α,60’βにより形成されるドットの副走査方向の密度が疎になる一方、中間部ノズルにより形成されるドットの副走査方向の密度が密になる。
【0074】
なお、上述したように、キャリッジの移動方向と逆方向にキャリッジが傾斜するばかりでなく、キャリッジの移動方向と同方向にキャリッジが傾斜する場合もある。また、角度θ’1及び角度θ’2は、異なる場合もあり、同一の角度である場合もある。さらに、各記録ヘッド50’は、キャリッジに個別に取り付けられているため、各記録ヘッド50’毎に、角度θ’1及び角度θ’2が異なる場合もある。
【0075】
このように、キャリッジが傾斜しつつ、主走査方向に往復移動すると、記録ヘッド50’によって形成される画像の副走査方向に対して濃度ムラが発生する。
【0076】
一方、図8を参照して、本実施の形態に係るインクジェット記録装置10によって形成されるドットの密度分布について説明する。
【0077】
図8に示すように、キャリッジ51に備えられている記録ヘッド50は、キャリッジ51の挿通孔にアソビが設けられているため、従来の記録ヘッド50’と同様に、主走査方向に往復移動する際に、ヘッド姿勢が傾斜しつつ移動する場合がある。
【0078】
ここで、本実施の形態に係る記録ヘッド50のように補正用ノズル60γを設けた記録ヘッドの傾斜角度と、従来の記録ヘッド50’(図7参照。)のように補正用ノズル60γを設けていない記録ヘッドの傾斜角度とが同じ場合、本実施の形態に係る記録ヘッド50の投影隣接ノズルピッチと投影中間部ノズルピッチとの差が、従来の記録ヘッド50’に比較して小さくなる。そのため、本実施の形態に係る記録ヘッド50の隣接ノズル60α,60β及び補正用ノズル60γにより形成されるドットの密度と、中間部ノズルにより形成されるドットの密度との差が、従来の記録ヘッド50’に比較して小さくなるので、本実施の形態に係るインクジェット記録装置10は、従来のインクジェット記録装置と比較して、形成画像の副走査方向の濃度ムラの発生を抑制することができる。
【0079】
しかし、本実施の形態に係る記録ヘッド50においても、形成画像の副走査方向の濃度ムラの発生を必ずしも十分に抑制できるとは限らない。
【0080】
そのため、本実施の形態に係るインクジェット記録装置10は、当該濃度ムラを抑制するべく、補正用ノズル60γより吐出されるインク液滴の量を補正する。
【0081】
本実施の形態に係るインクジェット記録装置10では、一例として図9に模式的に示すように、キャリッジ51の主走査方向に対する往路移動と復路移動の各々毎に、テストパターンを形成する。なお、本実施の形態に係るインクジェット記録装置10では、テストパターンを形成することのできる画像データ(以下、「テストパターンデータ」という。)を画像メモリ84の記憶領域に予め記憶している。
【0082】
同図に示されるように、本実施の形態に係るテストパターンは、Y,M,C,Kの各色毎で、補正用ノズル60γより吐出されるインク液滴の予め定められた複数段階の量の各々毎に、かつ他のノズルから吐出されるインク液滴の量が予め定められた基準吐出量とされた状態の、ベタ画像が形成されたものとされている。なお、本実施の形態に係るインクジェット記録装置10では、インク液滴の上記複数段階の量として、予め定められた基準吐出量と、当該基準吐出量を中心として±5%及び±10%とされた4段階のインク吐出量の合計5段階のインク吐出量を適用しているが、これに限らないことは言うまでもない。
【0083】
なお、記録ヘッド50の主走査方向に対する往復移動の際の傾斜角度が大きくなるほど、上記投影隣接ノズルピッチと、上記投影中間部ノズルピッチとのずれ量が大きくなるため、同図に模式的に示されるように、投影隣接ノズルピッチの方が投影中間部ノズルピッチに比較して狭い場合には、隣接ノズル60α,60β及び補正用ノズル60γに対応する画像領域が他の領域に比較して濃くなり、投影隣接ノズルピッチの方が投影中間部ノズルピッチに比較して広い場合には、隣接ノズル60α,60β及び補正用ノズル60γに対応する画像領域が他の領域に比較して薄くなる。
【0084】
従って、以上のようなテストパターンを参照することにより、各記録ヘッド50の主走査方向の往路移動及び復路移動毎に、副走査方向の濃度ムラが最も抑制された画像の基準吐出量からの増減量を、各記録ヘッド毎の補正用ノズル60γより吐出されるインク液滴の量の補正量として特定することができる。
【0085】
そして、本実施の形態に係るインクジェット記録装置10では、各記録ヘッド50毎で、且つ主走査方向の往路移動及び復路移動毎に、上記特定した補正量を示すデータ(以下、「補正量データ」という。)を画像メモリ84の記憶領域に記憶し、記録紙14に画像を形成する際に、形成する画像に対応したインク吐出データを上記補正量データで補正することで、補正用ノズル60γより吐出されるインク液滴の量を補正しつつ、記録ヘッド50によるインク液滴の吐出を制御する。
【0086】
なお、本実施の形態に係るインクジェット記録装置10では、図10に示すように、駆動電圧αと駆動電圧αに対して逆極性である駆動電圧βとを、個別電極66に印加することで、アクチュエータ67を変形させてノズル60からインク液滴を吐出させる(図5も参照)。なお、個別電極66に駆動電圧αが印加されると、アクチュエータ67が圧力室61の体積が膨張するように変形し、ノズル60のインク液面がノズル60の内部に引き込まれる。そして、その後に駆動電圧βが印加されると、アクチュエータ67が駆動電圧αが印加された場合とは逆方向に変形して圧力室61の体積が収縮し、ノズル60からインク液滴が吐出される。
【0087】
そして、駆動電圧αが電圧Aの場合は、ノズル60よりインク液が基準吐出量で吐出され、駆動電圧αが電圧Aに比較して高い電圧Bの場合は、ノズル60よりインク液が基準吐出量に比較して多い量で吐出され、駆動電圧αが電圧Aに比較して低い電圧Cの場合は、ノズル60よりインク液が基準吐出量に比較して少ない量で吐出される。
【0088】
すなわち、本実施の形態に係るプリント制御部81は、補正用ノズル60γに対応するアクチュエータ67を変形させる駆動電圧αの大きさを、上記補正量データに基づいて補正することで、補正用ノズル60γより吐出されるインク液滴の量を補正する。
【0089】
次に、図11を参照して、本実施の形態に係るインクジェット記録装置10の作用を説明する。なお、同図は、例えば、ホスト装置89を介して補正量を導出する指示を受け付けた際にシステムコントローラ80のCPUによって実行される補正量導出プログラムの処理の流れを示すフローチャートであり、当該プログラムはROM85の記憶領域に予め記憶されている。
【0090】
まず、同図のステップ100では、画像メモリ84からテストパターンデータを読み出す。
【0091】
次のステップ102では、記録紙14の搬送を開始する。なお、記録紙14は、デカール処理部18によって、記録紙14のカールが除去され、カッター26によって所望のサイズにカットされる。
【0092】
次のステップ104では、記録紙14が画像形成位置に達するまで待ち状態となる。
【0093】
次のステップ106では、記録紙14にテストパターンを形成するように、プリント制御部81を制御する。これにより、プリント制御部81は、テストパターンデータに対応するインク吐出データに基づいて記録ヘッドドライバ93でノズル60毎に上記駆動電圧を生成させ、記録ヘッド50からインク液滴を吐出させることで、記録紙14にテストパターンを形成する。
【0094】
次のステップ108では、記録紙14に形成されたテストパターンを画像読取部44が読み取り、画像読取部44によって生成されるテストパターンを示す読取画像データを取得するまで待ち状態となる。
【0095】
次のステップ110では、取得したテストパターンを示す読取画像データに基づいて、補正用ノズル60γより吐出されるインク液滴の量の補正量を決定する。
【0096】
次のステップ112では、決定した補正量を示す補正量データを画像メモリ84の記憶領域に記憶させる。
【0097】
次のステップ114では、テストパターンを形成した記録紙14を排紙部22まで搬送し、記録紙14の搬送を停止し、本プログラムを終了する。
【0098】
次に、図12を参照して、本実施の形態に係るインクジェット記録装置10による画像形成処理について説明する。なお、同図は、画像データにより示される画像を形成する際にシステムコントローラ80のCPUによって実行される画像形成プログラムの処理の流れを示すフローチャートであり、当該プログラムはROM85の記憶領域に予め記憶されている。
【0099】
まず、同図のステップ200では、画像メモリ84の記憶領域に記憶されている補正量データを読み出す。
【0100】
次のステップ202では、記録紙14の搬送を開始する。なお、記録紙14は、デカール処理部18によって、記録紙14のカールが除去され、カッター26によって所望のサイズにカットされる。
【0101】
次のステップ204では、画像データにより示される画像を形成するためのノズル60から吐出させるインク液滴の量を、プリント制御部81に導出させる。これにより、プリント制御部81は、上記画像データに対応するインク吐出データを生成する。
【0102】
次のステップ206では、インク液滴の吐出量を、プリント制御部81に補正させる。これにより、プリント制御部81は、上記生成したインク吐出データにより示される補正用ノズル60γより吐出されるインク液滴の量を、上記読み出した補正量データに基づいて補正する。
【0103】
次のステップ208では、上記補正したインク吐出データをプリント制御部81に送信し、画像データにより示される画像を形成させる。これにより、プリント制御部81は、記録ヘッドドライバ93に、上記補正したインク吐出データに基づいて、各ノズル毎のアクチュエータ67を駆動させるための駆動電圧を生成させる。そして、記録紙14が画像形成位置に達すると、生成させた駆動電圧を個別電極66に印加させ、アクチュエータ67を駆動させることで、補正用ノズル60γより吐出されるインク液滴の量を補正しつつ、記録ヘッド50によるインク液滴の吐出を制御し、記録紙14に画像を形成する。
【0104】
次のステップ210では、記録紙14の1枚分の画像の形成が終了したか否かを判定し、否定判定となった場合はステップ204へ戻る一方、肯定判定となった場合は、ステップ212へ移行する。
【0105】
ステップ212では、画像を形成すべき全ての画像データについて、画像の形成が終了したか否かを判定し、否定判定となった場合はステップ204へ戻る一方、肯定判定となった場合は、ステップ214へ移行する。
【0106】
次のステップ214では、画像を形成した記録紙14を排紙部22まで搬送し、記録紙14の搬送を停止し、本プログラムを終了する。
【0107】
以上詳細に説明したように、本実施の形態では、各々液滴を吐出することで画像を構成するドットを記録媒体に形成する複数のノズルが主走査方向に対して所定角度で傾斜した直線上に配列された複数組のノズル群が、副走査方向に隣接するノズルの副走査方向に対する間隔が略同一となり、且つ各ノズル群に属するノズルの副走査方向に対する位置が略同一となるように副走査方向に配置されており、第2のノズルが、各ノズル群において副走査方向に隣接するノズル群間の隣接するノズルの間であって、当該ノズル間の主走査方向の略中央で、且つ中心が他のノズルの主走査方向に対して重なることなく設けられているので、構成を複雑化することなく、マトリックス型記録ヘッドが主走査方向に移動する際にヘッド姿勢が傾斜することによって生じる形成画像の副走査方向の濃度ムラの発生を抑制することができる。
【0108】
また、本実施の形態では、第2のノズルが、副走査方向上流側及び副走査方向下流側に隣接するノズルとの副走査方向に対する間隔が各ノズル群に属するノズルの副走査方向に対する間隔と略同一となる位置に設けられているので、形成される画像の副走査方向の濃度ムラの発生を、より抑制することができる。
【0109】
また、本実施の形態では、上記記録ヘッドを主走査方向に往復移動させる移動手段と、記録ヘッド及び記録媒体の少なくとも一方を副走査方向に相対的に搬送する搬送手段とを備えており、決定手段によって、記録媒体に形成される画像の副走査方向の濃度ムラを抑制するように、記録ヘッドに設けられた第2のノズルより吐出される液滴の量の補正量を決定し、制御手段によって、記録媒体に画像を形成する際に、上記第2のノズルより吐出される液滴の量を、決定手段によって決定された補正量に基づいて補正しつつ、記録ヘッドによる液滴の吐出を制御するので、構成を複雑化することなく、マトリックス型記録ヘッドが主走査方向に移動する際にヘッド姿勢が傾斜することによって生じる形成画像の副走査方向の濃度ムラの発生を抑制することができる。
【0110】
また、本実施の形態では、決定手段が、移動手段によって記録ヘッドが主走査方向に往路移動される際と復路移動される際の各々の記録ヘッドの傾斜角度が異なる場合も、往路移動と復路移動の各々に応じて補正量を決定するので、形成される画像の副走査方向の濃度ムラの発生を、より抑制することができる。
【0111】
また、本実施の形態では、第2のノズルより吐出される液滴の量が各々異なり、他のノズルから吐出される液滴の量が同一とされた状態で記録ヘッドにより形成された複数の画像を含むテストパターンの副走査方向の濃度分布を読み取る読取手段を更に備え、決定手段が、読取手段によって読み取られたテストパターンの副走査方向の濃度分布読取結果に基づいて補正量を決定するので、画像を形成する場合のより適正な補正量を決定することができる。
【0112】
また、本実施の形態では、複数の画像が各色毎の画像であり、読取手段が、当該複数の画像を各色毎に読み取り、決定手段が、読取手段の読取結果に基づいて、補正量を各色毎に決定するので、各色毎の記録ヘッドのヘッド姿勢の傾斜が微妙に異なっていても、各々の色毎に適正な補正量を決定することができる。
【0113】
以上、本発明を上記実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。発明の要旨を逸脱しない範囲で上記実施の形態に多様な変更または改良を加えることができ、当該変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0114】
また、上記実施の形態は、クレーム(請求項)にかかる発明を限定するものではなく、また実施の形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。前述した実施の形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における組み合わせにより種々の発明を抽出できる。上記実施の形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、効果が得られる限りにおいて、この幾つかの構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【0115】
例えば、上記実施の形態では、記録ヘッド50で吐出されるインク液をY,M,C,Kの4色とする場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、色や色数の組合せを変更した形態や、淡インク液、濃インク液や、例えば、ライトシアン液、ライトマゼンタ液などのライト系インク液等の特別色インク液を追加した形態としてもよい。この場合も、上記実施の形態と同様の効果を奏することができる。
【0116】
また、上記実施の形態では、記録ヘッド50からインク液滴を吐出させる方法として、圧電素子を用いてインク液滴を吐出させる場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、ヒータ等の発熱体によってインク液を加熱して気泡を発生させ、その圧力でインク液滴を飛ばすサーマルジェット方法等、他の方法を用いた形態としてもよい。この場合も、上記実施の形態と同様の効果を奏することができる。
【0117】
また、上記実施の形態では、記録紙14のみを副走査方向に移動させることで、キャリッジ51と記録紙14とを相対的に移動させる場合を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、記録紙14を固定し、キャリッジ51を副走査方向に移動させることで、キャリッジ51と記録紙14とを相対的に移動させる形態、又は記録紙14と共にキャリッジ51を副走査方向に移動させる形態としてもよい。この場合も、上記実施の形態と同様の効果を奏することができる。
【0118】
また、上記実施の形態では、記録ヘッド50が、複数のノズル60が副走査方向下流側から副走査方向上流側へ傾斜した直線上に配列された複数組のノズル群60Aを備えている場合を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、記録ヘッド50が、複数のノズル60が副走査方向上流側から副走査方向下流側へ傾斜した直線上に配列された複数組のノズル群60Aを備えている形態、等としてもよい。この場合も、上記実施の形態と同様の効果を奏することができる。
【0119】
また、上記実施の形態では、キャリッジ51に1本のガイドレール52を挿通させる場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、キャリッジ51に2本のガイドレール52を挿通させる形態としてもよい。
【0120】
また、上記実施の形態では、図9に示すテストパターンを形成する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、図13に示すようにY,M,C,Kの各色別に複数段階の濃度の各々毎にベタ画像を含むテストパターン(図13に示すテストパターンは、Kに対応)を形成し、Y,M,C,Kの各色の濃度毎に補正用ノズル60γより吐出されるインク液滴の量の補正量を決定する形態としてもよい。
【0121】
この形態の場合、テストパターンに形成される複数の画像を、異なる濃度領域毎の画像とし、画像読取部44によって、当該複数の画像を各濃度領域毎に読み取り、画像読取部44の読取結果に基づいて、上記補正量を各濃度領域毎に決定するので、単位面積当りの総液滴吐出量が異なる各濃度領域においても、各々の面積当りの総液滴吐出量に対して適正な補正量を決定することができる。
【0122】
また、補正用ノズル60γより吐出されるインク液滴の量を補正することによって、記録紙14に形成される画像に、補正用ノズル60γと吐出されるインク液滴の量が補正されていないノズルとの境界において、副走査方向の濃度ムラが発生する場合がある。そのため、記録紙14に形成されるベタ画像の副走査方向に対する濃度分布が均一となるように、補正用ノズル60γに副走査方向下流側及び副走査方向上流側に近い順に所定数(一例として、副走査方向下流側及び副走査方向上流側に1つずつ、すなわち、隣接ノズル60α,60β)のノズルより吐出されるインク液滴の量の補正量を更に決定し、記録紙14に画像を形成する際に、補正用ノズル60γより吐出されるインク液滴の量、及び上記所定数のノズルより吐出されるインク液滴の量を、決定された各々の補正量に基づいて補正しつつ、記録ヘッド50によるインク液滴の吐出を制御する形態としてもよい。これにより、形成される画像の副走査方向に対する濃度ムラの発生を、より抑制することができる。
【0123】
上記形態では、補正用ノズル60γに副走査方向下流側及び副走査方向上流側に近い順に所定数のノズルより吐出されるインク液滴の量の補正量を決定する方法として、一例として、以下の方法を適用する。まず、補正用ノズル60γより吐出するインク液滴の量の補正量を先に決定する。その後、先に決定した補正量で補正用ノズル60γより吐出するインク液滴の量が補正され、且つ上記所定数のノズルより吐出されるインク液滴の量が各々異なり、他のノズルから吐出されるインク液滴の量が同一とされた状態で記録ヘッド50により形成された複数のベタ画像を含むテストパターンを形成する。そして、上記テストパターンに基づいて、副走査方向の濃度ムラが抑制された画像を形成した上記所定数のノズルより吐出されるインク液滴の量に基づいて、上記所定数のノズルに対応した補正量を決定する。
【0124】
また、上記実施の形態では、図10に示す駆動電圧αの大きさを補正することで、ノズル60より吐出されるインク液滴の量を補正しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、図10に示される駆動電圧βの大きさを補正することで、ノズル60より吐出されるインク液滴の量を補正する形態や、駆動電圧α又は駆動電圧βを印加する時間を補正することで、ノズル60より吐出されるインク液滴の量を補正する形態としてもよい。この場合も、上記実施の形態と同様の効果を奏することができる。
【0125】
また、上記実施の形態では、画像形成処理とは別に補正量を予め決定し、画像形成処理を実行する毎に上記予め決定した補正量に基づいて、補正用ノズル60γより吐出されるインク液滴の量を補正する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、画像形成処理を実行する毎に、新たな補正量を決定する形態としてもよい。この場合も、上記実施の形態と同様の効果を奏することができる。
【0126】
また、上記実施の形態では、記録紙14に形成されたテストパターンを画像読取部44で読み取ることで生成したテストパターンの読取画像データに基づいて、隣接ノズルの補正量を決定したが、本発明はこれに限定されるものではなく、記録紙14に形成されたテストパターンをユーザが目視で確認し、各記録ヘッド50毎の補正用ノズル60γの補正量をインクジェット記録装置10に備えられた操作パネル、又はホスト装置89を介してインクジェット記録装置10に入力することで、補正用ノズル60γより吐出されるインク液滴の量の補正量を決定する形態としてもよい。
【0127】
更に、上記実施の形態では、記録ヘッド50に設けられている補正用ノズル60γを1つとしたが、本発明はこれに限定されるものではなく、一例として、図14に示すように、記録ヘッド50に設けられている補正用ノズル60γの数を複数とする形態としてもよい。
【0128】
また、図17に示す各ノズル群60A’の中央部のノズル60’を、副走査方向に隣接するノズル群60A’間の隣接するノズル60’の間の主走査方向の略中央で、且つ他のノズル60’と主走査方向に対して重なることなくずらすように配置することで、ノズル群60Aと補正用ノズル60γの位置関係を、図15に示す位置関係とする形態としてもよい。また、各ノズル群60A’の中央部に位置する2つのノズル60’のうち、1つを副走査方向上流側にずらし、1つを副走査方向下流側にずらすように配置することで、図16に示すように補正用ノズル60γの数を複数とする形態としてもよい。
【0129】
その他、上記実施の形態で説明したインクジェット記録装置10の構成(図1〜図6参照。)は一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において不要な部分を削除したり、新たな部分を追加したりすることができることは言うまでもない。
【0130】
また、上記実施の形態で説明した画像形成プログラムの処理の流れ(図11及び図12参照。)も一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において不要なステップを削除したり、新たなステップを追加したり、処理順序を入れ替えたりすることができることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0131】
【図1】実施の形態に係るインクジェット記録装置の構成を示す破断側面図である。
【図2】実施の形態に係る画像形成部及びその周辺の上面図である。
【図3】実施の形態に係る記録ヘッドの構造を示す平面透視図である。
【図4】実施の形態に係る記録ヘッドのノズル部分の平面透視図の拡大図である。
【図5】実施の形態に係る記録ヘッドのインク室ユニットの破断側面図である。
【図6】実施の形態に係るインクジェット記録装置の電気系の要部構成を示すブロック図である。
【図7】従来の形態に係るインクジェット記録装置に備えられた記録ヘッドの傾きの状態と、形成されるドットの密度分布の説明に供する図である。
【図8】本実施の形態に係る記録ヘッドの傾きの状態と、形成されるドットの密度分布の説明に供する図である。
【図9】実施の形態に係るインクジェット記録装置で形成されるテストパターンの一例を示す模式図である。
【図10】実施の形態に係る記録ヘッドからインク液滴を吐出する際にアクチュエータを変形させるための駆動電圧の説明に供する図である。
【図11】実施の形態に係る補正量導出プログラムの処理の流れを示すフローチャートである。
【図12】実施の形態に係る画像形成プログラムの処理の流れを示すフローチャートである。
【図13】実施の形態の他の形態に係るインクジェット記録装置で形成されるテストパターンの一例を示す模式図である。
【図14】実施の形態の他の形態に係る記録ヘッドのノズルの配置位置を示す図である。
【図15】実施の形態の他の形態に係る記録ヘッドのノズルの配置位置を示す図である。
【図16】実施の形態の他の形態に係る記録ヘッドのノズルの配置位置を示す図である。
【図17】従来の形態に係る記録ヘッドのノズルの配置位置を示す図である。
【符号の説明】
【0132】
10 インクジェット記録装置
14 記録紙(記録媒体)
32 ベルト(搬送手段)
44 画像読取部(読取手段)
50 記録ヘッド
54 キャリッジベルト(移動手段)
60 ノズル
60A ノズル群
60γ 補正用ノズル(第2のノズル)
80 システムコントローラ(決定手段)
81 プリント制御部(制御手段)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々液滴を吐出することで画像を構成するドットを記録媒体に形成する複数のノズルが主走査方向に対して所定角度で傾斜した直線上に配列された複数組のノズル群が、副走査方向に隣接するノズルの副走査方向に対する間隔が略同一となり、且つ各ノズル群に属するノズルの副走査方向に対する位置が略同一となるように副走査方向に配置された記録ヘッドであって、
副走査方向に隣接するノズル群間の隣接するノズルの間の主走査方向の略中央で、且つ他のノズルと主走査方向に対して重なることなく第2のノズルが設けられた、
記録ヘッド。
【請求項2】
前記第2のノズルは、副走査方向上流側及び副走査方向下流側に隣接するノズルとの副走査方向に対する間隔が各ノズル群に属するノズルの副走査方向に対する間隔と略同一となる位置に設けられている請求項1記載の記録ヘッド。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の記録ヘッドと、
前記記録ヘッドを主走査方向に往復移動させる移動手段と、
前記記録ヘッド及び前記記録媒体の少なくとも一方を副走査方向に相対的に搬送する搬送手段と、
前記第2のノズルより吐出される液滴の量の補正量を決定する決定手段と、
前記記録媒体に画像を形成する際に、前記第2のノズルより吐出される液滴の量を、前記決定手段によって決定された前記補正量に基づいて補正しつつ、前記記録ヘッドによる液滴の吐出を制御する制御手段と、
を備えた液滴吐出装置。
【請求項4】
前記決定手段は、前記移動手段によって前記記録ヘッドが主走査方向に往路移動される際と復路移動される際の各々に応じて前記補正量を決定する請求項3記載の液滴吐出装置。
【請求項5】
前記決定手段は、前記第2のノズルに副走査方向下流側及び副走査方向上流側に近い順に所定数のノズルより吐出される液滴の量の補正量を更に決定し、
前記制御手段は、前記記録媒体に画像を形成する際に、前記第2のノズル及び前記所定数のノズルより吐出される液滴の量を、前記決定手段によって決定された前記補正量に基づいて補正しつつ、前記記録ヘッドによる液滴の吐出を制御する請求項3又は請求項4記載の液滴吐出装置。
【請求項6】
前記第2のノズルより吐出される液滴の量が各々異なり、他のノズルから吐出される液滴の量が同一とされた状態で前記記録ヘッドにより形成された複数の画像を含むテストパターンの副走査方向の濃度分布を読み取る読取手段を更に備え、
前記決定手段は、前記読取手段によって読み取られた前記テストパターンの副走査方向の濃度分布読取結果に基づいて前記補正量を決定する請求項3〜請求項5の何れか1項記載の液滴吐出装置。
【請求項7】
前記複数の画像が各色毎の画像であり、
前記読取手段は、当該複数の画像を各色毎に読み取り、
前記決定手段は、前記読取手段の読取結果に基づいて、前記補正量を各色毎に決定する請求項6記載の液滴吐出装置。
【請求項8】
前記複数の画像が異なる濃度領域毎の画像であり、
前記読取手段は、当該複数の画像を各濃度領域毎に読み取り、
前記決定手段は、前記読取手段の読取結果に基づいて、前記補正量を各濃度領域毎に決定する請求項6記載の液滴吐出装置。
【請求項9】
請求項1又は請求項2記載の記録ヘッドと、前記記録ヘッドを主走査方向に往復移動させる移動手段と、前記記録ヘッド及び前記記録媒体の少なくとも一方を副走査方向に相対的に搬送する搬送手段とを備えた液滴吐出装置における液滴吐出方法であって、
前記記録媒体に形成される画像の副走査方向の濃度ムラを抑制するように、前記第2のノズルより吐出される液滴の量の補正量を決定し、
前記記録媒体に画像を形成する際に、前記第2のノズルより吐出される液滴の量を、前記補正量に基づいて補正しつつ、前記記録ヘッドによる液滴の吐出を制御する、
液滴吐出方法。
【請求項1】
各々液滴を吐出することで画像を構成するドットを記録媒体に形成する複数のノズルが主走査方向に対して所定角度で傾斜した直線上に配列された複数組のノズル群が、副走査方向に隣接するノズルの副走査方向に対する間隔が略同一となり、且つ各ノズル群に属するノズルの副走査方向に対する位置が略同一となるように副走査方向に配置された記録ヘッドであって、
副走査方向に隣接するノズル群間の隣接するノズルの間の主走査方向の略中央で、且つ他のノズルと主走査方向に対して重なることなく第2のノズルが設けられた、
記録ヘッド。
【請求項2】
前記第2のノズルは、副走査方向上流側及び副走査方向下流側に隣接するノズルとの副走査方向に対する間隔が各ノズル群に属するノズルの副走査方向に対する間隔と略同一となる位置に設けられている請求項1記載の記録ヘッド。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の記録ヘッドと、
前記記録ヘッドを主走査方向に往復移動させる移動手段と、
前記記録ヘッド及び前記記録媒体の少なくとも一方を副走査方向に相対的に搬送する搬送手段と、
前記第2のノズルより吐出される液滴の量の補正量を決定する決定手段と、
前記記録媒体に画像を形成する際に、前記第2のノズルより吐出される液滴の量を、前記決定手段によって決定された前記補正量に基づいて補正しつつ、前記記録ヘッドによる液滴の吐出を制御する制御手段と、
を備えた液滴吐出装置。
【請求項4】
前記決定手段は、前記移動手段によって前記記録ヘッドが主走査方向に往路移動される際と復路移動される際の各々に応じて前記補正量を決定する請求項3記載の液滴吐出装置。
【請求項5】
前記決定手段は、前記第2のノズルに副走査方向下流側及び副走査方向上流側に近い順に所定数のノズルより吐出される液滴の量の補正量を更に決定し、
前記制御手段は、前記記録媒体に画像を形成する際に、前記第2のノズル及び前記所定数のノズルより吐出される液滴の量を、前記決定手段によって決定された前記補正量に基づいて補正しつつ、前記記録ヘッドによる液滴の吐出を制御する請求項3又は請求項4記載の液滴吐出装置。
【請求項6】
前記第2のノズルより吐出される液滴の量が各々異なり、他のノズルから吐出される液滴の量が同一とされた状態で前記記録ヘッドにより形成された複数の画像を含むテストパターンの副走査方向の濃度分布を読み取る読取手段を更に備え、
前記決定手段は、前記読取手段によって読み取られた前記テストパターンの副走査方向の濃度分布読取結果に基づいて前記補正量を決定する請求項3〜請求項5の何れか1項記載の液滴吐出装置。
【請求項7】
前記複数の画像が各色毎の画像であり、
前記読取手段は、当該複数の画像を各色毎に読み取り、
前記決定手段は、前記読取手段の読取結果に基づいて、前記補正量を各色毎に決定する請求項6記載の液滴吐出装置。
【請求項8】
前記複数の画像が異なる濃度領域毎の画像であり、
前記読取手段は、当該複数の画像を各濃度領域毎に読み取り、
前記決定手段は、前記読取手段の読取結果に基づいて、前記補正量を各濃度領域毎に決定する請求項6記載の液滴吐出装置。
【請求項9】
請求項1又は請求項2記載の記録ヘッドと、前記記録ヘッドを主走査方向に往復移動させる移動手段と、前記記録ヘッド及び前記記録媒体の少なくとも一方を副走査方向に相対的に搬送する搬送手段とを備えた液滴吐出装置における液滴吐出方法であって、
前記記録媒体に形成される画像の副走査方向の濃度ムラを抑制するように、前記第2のノズルより吐出される液滴の量の補正量を決定し、
前記記録媒体に画像を形成する際に、前記第2のノズルより吐出される液滴の量を、前記補正量に基づいて補正しつつ、前記記録ヘッドによる液滴の吐出を制御する、
液滴吐出方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図10】
【図11】
【図12】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図9】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図10】
【図11】
【図12】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図9】
【図13】
【公開番号】特開2009−241442(P2009−241442A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−91430(P2008−91430)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
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