説明

記録ヘッド及びそれの製造方法

【課題】平型柔軟基板とアクチュエータとの接合部が剥離するのを抑制しつつ平型柔軟基板が損傷するのを抑制する。
【解決手段】流路ユニットからインク滴を吐出させるアクチュエータユニット21の接合面21aにCOF50が接合されている。COF50に、アクチュエータユニット21の複数の個別バンプ136に接合される複数のランド58が配置されたランド領域50aと、複数のランド58から引き出された出力配線57aが配設された配線領域50bとが形成されている。ソルダレジスト61が配線領域50bを被覆している。カバーコート60がランド領域50a及びソルダレジスト61の一部を被覆している。カバーコート60におけるソルダレジスト61を被覆している領域の一部が接合面21aに固定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を吐出して記録媒体に記録を行う記録装置が有する記録ヘッド及びそれの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷用紙等の記録媒体にインク滴を吐出するインクジェットヘッドとしては、インク滴を吐出するノズルに連通した圧力室を含む多数の個別インク流路が形成された流路ユニットと、各圧力室の容積を変化させることにより圧力室にインク滴の吐出エネルギーを付加するアクチュエータとを有するものがある。このアクチュエータは、多数の圧力室に跨る圧電シートと、圧電シートの表面において各圧力室と対向するように配置された多数の個別電極と、圧電シートを介して多数の個別電極と対向するように配置された共通電極とを有するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。アクチュエータの表面には、個別電極や共通電極と電気的に接続された多数のバンプが配置されている。そして、この表面において、多数のバンプと、フラットケーブルの一方端部近傍に配置された多数のランドとが接合されている。フラットケーブルには、多数の端子から引き出されてドライバICに接続された配線パターンが形成されている。ドライバICから出力された駆動信号が、フラットケーブルの配線パターン及びランドを介してアクチュエータの各バンプに供給される。
【0003】
フラットケーブルの取り回しにより、当該フラットケーブルの他方端部が上方向に引っ張られると、バンプとランドとの接合部にこれらを剥離する方向の力が加わり、バンプからランドが剥離することがある。これを防止するため、フラットケーブルにおける多数の端子が配置された端子領域より配線パターンの引き出し方向に関する下流側の領域を、フラットケーブルの表面を被覆するカバーフィルムを介して、アクチュエータの表面に固定する技術が知られている(特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2002−036568号公報(図1)
【特許文献2】特開2007−268849号公報(図10)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した技術によると、フラットケーブルのカバーフィルムをアクチュエータの表面に固定するため、フラットケーブルが、アクチュータに向かって撓みアクチュエータ(圧電シート)の角部と接触することがある。フラットケーブルとアクチュエータの角部との接触が繰り返されると、アクチュエータの角部がカバーフィルムを貫通して配線パターンを損傷することがある。
【0006】
本発明の目的は、平型柔軟基板とアクチュエータとの接合部が剥離するのを抑制しつつ平型柔軟基板が損傷するのを抑制することができる記録ヘッド及びそれの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の記録ヘッドは、液体が吐出される流路ユニットと、前記流路ユニットに固定されており、前記流路ユニットから液体を吐出させるアクチュエータであって、前記流路ユニットに固定された固定面と駆動信号を供給する平型柔軟基板が接合された接合面とを有する圧電層、前記圧電層に配置された複数の個別電極、及び、前記接合面に配置され且つ前記複数の個別電極と電気的に接続された複数の個別バンプを有するアクチュエータと、前記平型柔軟基板とを備えている。前記平型柔軟基板は、前記アクチュエータに面した表面を有する基材、前記表面に配置され且つ前記複数の個別バンプに接合された複数のランド、前記表面に配設され且つ前記複数のランドから引き出された複数の配線パターン、前記複数のランドが配置されたランド領域を被覆する絶縁性のランド被覆層、及び、前記ランド領域に隣接して形成され且つ前記複数の配線パターンが配設された配線領域を被覆する絶縁性の配線被覆層を有しており、前記配線領域において、前記ランド被覆層が前記配線被覆層の少なくとも一部を被覆することによって、前記配線被覆層と前記ランド被覆層とが積層されている積層部が形成されており、前記圧電層と前記複数の配線パターンとの間に、前記積層部の少なくとも一部が挟持されており、前記積層部の前記ランド被覆層が前記圧電層に固定されている。
【0008】
本発明の記録ヘッドの製造方法は、液体が吐出される流路ユニットに固定されており、前記流路ユニットに固定された固定面と駆動信号を供給する平型柔軟基板が接合された接合面とを有する圧電層、前記圧電層に配置された複数の個別電極、及び、前記接合面に配置され且つ前記複数の個別電極と電気的に接続された複数の個別バンプを有すると共に、前記流路ユニットから液体を吐出させるアクチュエータに、前記アクチュエータに面する表面を有する基材、前記表面に配置され且つ前記複数の個別バンプに接合される複数のランド、及び、前記表面に配設され且つ前記複数のランドから引き出された複数の配線パターンを有する平型柔軟基板が接合された記録ヘッドの製造方法であって、前記表面における前記複数のランドが配置されたランド領域に隣接する領域であって前記複数の配線パターンが配置された配線領域を被覆する絶縁性の配線被覆層を形成する配線被覆層形成工程と、前記ランド領域を被覆する半硬化状態の熱硬化性樹脂からなる絶縁性のランド被覆層を、前記配線被覆層の少なくとも一部を被覆するように形成するランド被覆層形成工程と、前記複数の個別バンプが前記ランド被覆層を貫通しつつ前記複数のランドに接合されると共に、前記圧電層の前記接合面と前記複数の配線パターンとの間に、前記配線被覆層と前記ランド被覆層の前記配線被覆層を被覆している部分とが挟持されて、前記ランド被覆層が前記接合面に密着するように、前記平型柔軟基板を前記アクチュエータに接合する接合工程と、前記接合工程において加熱することによって、前記ランド被覆層を完全硬化させることによって、前記平型柔軟基板を前記接合面に固定するランド被覆層硬化工程とを備えている。
【0009】
これら本発明によると、平型柔軟基板の配線領域において配線被覆層を被覆するランド被覆層が、圧電層の接合面に固定されるため、平型柔軟基板からの応力が、個別バンプとランドとの接合部に加えられるのが抑制される。これにより、個別バンプからランドが剥離するのを防止することができる。また、圧電層の接合面と基材の配線領域との間に、ランド被覆層と配線被覆層とが配置されることによって、ランド被覆層と圧電層の接合面とが固定された領域において、基材と圧電層とのクリアランスが確保される。これにより、アクチュエータに接合された平型柔軟基板基材が圧電層に向かって湾曲するのが抑制され、平型柔軟基板が圧電層の角部に接触して損傷するのを防止することができる。
【0010】
本発明の記録ヘッドにおいては、前記基材と前記圧電層の前記接合面とが平行になっていることが好ましい。
【0011】
また、本発明の記録ヘッドの製造方法は、前記接合工程において、前記基材と前記接合面とが平行になるように、前記平型柔軟基板を前記アクチュエータに接合することが好ましい。これらによると、アクチュエータに接合された平型柔軟基板基材が圧電層に向かって湾曲するのを確実に防止することができる。
【0012】
本発明の記録ヘッドにおいては、前記接合面に配置された前記複数の個別バンプ及び前記表面に配置された前記複数のランドの少なくとも一方は、それらが配置された面から突出するように形成されており、前記配線被覆層は、互いに接合された前記複数の個別バンプ及び前記複数のランドを挟む前記接合面と前記表面との離隔距離に等しい厚さを有していてもよい。
【0013】
また、本発明の記録ヘッドの製造方法においては、前記配線被覆層形成工程に先立って、前記接合面に配置された前記複数の個別バンプ及び前記表面に配置された前記複数のランドの少なくとも一方を、それらが配置された面から突出するように形成する端子形成工程をさらに備えており、前記配線被覆層形成工程において、前記配線被覆層を、前記複数の個別バンプ及び前記複数のランドが互いに接合されたとき、当該接合部を挟む前記表面と前記接合面との離隔距離に等しい厚さで形成してもよい。これらによると、ランド被覆層の体積を小さくすることができるため、配線被覆層と圧電層との間からはみ出るランド被覆層の量を少なくすることができる。これにより、はみ出たランド被覆層が、圧電素子の変位を阻害するのを抑制することができる。
【0014】
本発明の記録ヘッドにおいては、前記ランド被覆層の厚みが、前記配線被覆層の厚みより小さいことが好ましい。これによると、配線被覆層と圧電層との間からはみ出るランド被覆層の量を確実に少なくすることができる。
【0015】
本発明の記録ヘッドでは、前記積層部において、前記ランド被覆層が、前記配線パターンが引き出される引き出し方向に関して、前記圧電層の端縁を超えた外側まで前記配線被覆層を被覆していてもよい。このとき、前記積層部が、前記引き出し方向と直交する方向に関して、全ての前記複数の配線パターンに跨って延在した帯状平面を有しており、前記圧電層の両方の端縁を超えた外側まで延びていることが好ましい。
【0016】
本発明の記録ヘッドの製造方法では、前記接合工程において、前記ランド被覆層が前記配線領域に対向した前記接合面の対向領域によって押し潰されるように、前記平型柔軟基板を前記アクチュエータに接合することが好ましい。
【0017】
また、本発明の記録ヘッドの製造方法では、前記ランド被覆層形成工程において、前記ランド被覆層を、少なくとも前記複数の配線パターンが引き出される引き出し方向に関して、前記圧電層の端縁を超えた外側まで前記配線被覆層を被覆するように形成することが好ましい。これらによると、ランド被覆層を、圧電層の上面及び側面に対して強固に固定することができる。
【0018】
さらに、本発明の記録ヘッドの製造方法では、前記ランド被覆層形成工程において、前記ランド被覆層が、熱硬化性エポキシ樹脂であることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によると、平型柔軟基板の配線領域において配線被覆層を被覆するランド被覆層が、圧電層の接合面に固定されるため、平型柔軟基板からの応力が、個別バンプとランドとの接合部に加えられるのが抑制される。これにより、個別バンプからランドが剥離するのを防止することができる。また、圧電層の接合面と基材の配線領域との間に、ランド被覆層と配線被覆層とが配置されることによって、ランド被覆層と圧電層の接合面とが固定された領域において、基材と圧電層とのクリアランスが確保される。これにより、アクチュエータに接合された平型柔軟基板基材が圧電層に向かって湾曲するのが抑制され、平型柔軟基板が圧電層の角部に接触して損傷するのを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0021】
図1は、本発明の好適な形態のインクジェットプリンタの内部構成を示す断面図である。インクジェットプリンタ101は、図1に示すように、直方体形状の筐体1aを有している。また、筐体1aの上部には、排紙部31が設けられている。さらに、筐体1a内は、上から順に3つの空間A、B、Cに区分されている。空間Aには、マゼンタ、シアン、イエロー、ブラックのインクをそれぞれ吐出する4つのインクジェットヘッド1、及び、搬送ユニット20が配置されている。空間B、Cはそれぞれ、筐体1aに対して着脱可能な給紙ユニット1b及びインクタンクユニット1cが配置される空間である。なお、本実施形態において、副走査方向とは搬送ユニット20で用紙Pを搬送するときの搬送方向と平行な方向であり、主走査方向とは副走査方向に直交する方向であって水平面に沿った方向である。
【0022】
インクジェットプリンタ101の内部には、給紙ユニット1bから排紙部31に向けて、用紙Pが搬送される用紙搬送経路が形成されている(図1中太矢印)。給紙ユニット1bは、複数枚の用紙Pを収納することが可能な給紙トレイ23と、給紙トレイ23に取り付けられた給紙ローラ25とを有している。給紙ローラ25は、給紙トレイ23に積層して収納された複数の用紙Pのうち、最も上方にある用紙Pを送り出す。給紙ローラ25によって送り出された用紙Pは、ガイド27a,27bによりガイドされ且つ送りローラ対26によって挟持されつつ搬送ユニット20へと送られる。
【0023】
搬送ユニット20は、図1に示すように、2つのベルトローラ6,7と、両ローラ6,7間に架け渡されるように巻回されたエンドレスの搬送ベルト8と、テンションローラ10とを有している。テンションローラ10は、搬送ベルト8の下側ループにおいて、その内周面に接触しつつ下方に付勢されることで搬送ベルト8にテンションを付加している。ベルトローラ7は、駆動ローラであって、その軸7xに搬送モータ(図示せず)から駆動力が与えられることで、図1中時計回り方向に回転する。ベルトローラ6は、従動ローラであって、ベルトローラ7の回転により搬送ベルト8が走行するのに伴って、図1中時計回り方向に回転する。
【0024】
搬送ベルト8の外周面8aにはシリコーン処理が施されており、粘着性を有している。用紙搬送経路上において搬送ベルト8を挟んでベルトローラ6と対向する位置には、ニップローラ4が配置されている。ニップローラ4は、給紙ユニット1bから送り出された用紙Pを搬送ベルト8の外周面8aに押さえ付ける。外周面8aに押さえ付けられた用紙Pは、その粘着力によって外周面8a上に保持されつつ、図1右方へと搬送される。
【0025】
また、用紙搬送経路上において搬送ベルト8を挟んでベルトローラ7と対向する位置には、剥離プレート5が設けられている。剥離プレート5は、搬送ベルト8の外周面8aに保持されている用紙Pを外周面8aから剥離する。剥離プレート5によって外周面8aから剥離された用紙Pは、ガイド29a,29bによりガイドされ且つ二組の送りローラ対28によって挟持されつつ搬送され、筐体1a上部に形成された開口30から排紙部31へと排出される。
【0026】
4つのインクジェットヘッド1は、それぞれ主走査方向に沿って延在し、副走査方向に並設されており、フレーム3を介して筐体1aに支持されている。すなわち、インクジェットプリンタ101は、主走査方向に延びた吐出領域が形成されたライン式のカラーインクジェットプリンタである。各インクジェットヘッド1の下面は、インク滴が吐出される吐出面2aとなっている。
【0027】
搬送ベルト8のループ内には、4つのインクジェットヘッド1と対向するように、プラテン19が配置されている。プラテン19の上面は、搬送ベルト8の上側ループの内周面と接触しており、搬送ベルト8の内周側からこれを支持している。これにより、搬送ベルト8の上側ループの外周面8aとインクジェットヘッド1の下面、即ち吐出面2aとが対向しつつ平行になり、且つ、吐出面2aと搬送ベルト8の外周面8aとの間に僅かな隙間が形成されている。当該隙間は、用紙搬送経路の一部を構成している。搬送ベルト8の外周面8a上に保持されつつ搬送されてきた用紙Pが4つのヘッド1のすぐ下方を通過する際に、各ヘッド1から用紙Pの上面に向けて各色のインクが順に吐出され、用紙P上に所望のカラー画像が形成される。
【0028】
インクジェットヘッド1はそれぞれ、空間Cに装着されたインクタンクユニット1c内のインクタンク49と接続されている。すなわち、4つのインクタンク49にはそれぞれ対応するインクジェットヘッド1が吐出するインクが貯留されている。そして、各インクタンク49からチューブ(図示せず)等を介してインクジェットヘッド1にインクが供給される。
【0029】
次に、図2を参照しつつインクジェットヘッド1について詳細に説明する。図2は、インクジェットヘッド1の短手方向である副操作方向に沿った断面図である。図2に示すように、インクジェットヘッド1は、流路ユニット9とアクチュエータユニット21とを含むヘッド本体2、ヘッド本体2の上面に配置されていると共にヘッド本体2にインクを供給するリザーバユニット71、一端がアクチュエータユニット21に接続され、ドライバIC52が実装されたCOF(Chip On Film:平型柔軟基板)50、COF50と電気的に接続された制御基板54、並びに、アクチュエータユニット21、リザーバユニット71、COF50及び制御基板54を覆い、外部からインクやインクミストが浸入するのを防ぐためのサイドカバー53及びヘッドカバー55を有している。
【0030】
リザーバユニット71は、プレート91〜94の4枚のプレートが互いに位置合わせされて積層されたものであり、その内部に、図示しないインク流入流路、インクリザーバ72、及び、10個のインク流出流路73が互いに連通するように形成されている。なお、図2においては、1つのインク流出流路73のみが表れている。インク流入流路はインクタンク49からのインクが流入するものである。インクリザーバ72はインク流入流路及びインク流出流路73と連通しており、インクを一時的に貯溜する。インク流出流路73は、流路ユニット9の上面に形成されたインク供給口105b(図3参照)を介して流路ユニット9と連通している。インクタンク49からのインクは、インク流入流路を介してインクリザーバ72に流れ込み、インク流出流路73を通過して、インク供給口105bから流路ユニット9に供給される。
【0031】
また、プレート94には、凹部94aが形成されている。プレート94の凹部94aが形成された部分では、流路ユニット9との間に空隙を形成しており、この空隙内に、アクチュエータユニット21が配置されている。一方、プレート94の凸状部分は、流路ユニット9の上面に接着されており、その内部にはインク流出流路73が形成されている。
【0032】
COF50は、その一方端部近傍がアクチュエータユニット21(圧電シート141)の上面である接合面21aに接着されている(図8参照)。さらに、COF50は、アクチュエータユニット21の接合面21aから水平方向に延在した後、上方に向かって略直角に湾曲するように折り曲げられ、さらに、サイドカバー53とリザーバユニット71との間を通過するように上方に引き出されている。そして、COF50の他方端部がコネクタ54aを介して制御基板54のコネクタ54aに接続されている。このため、COF50には、アクチュエータユニット21から剥離する方向の応力が発生することがある。
【0033】
また、COF50のドライバIC52が、リザーバユニット71の側面に貼り付けられたスポンジ82によってサイドカバー53に付勢されている。ドライバIC52は、放熱シート81を介してサイドカバー53の内側面と密着することによってサイドカバー53と熱的に結合されている。これにより、ドライバIC52からの熱がサイドカバー53を介して外部に放熱される。
【0034】
制御基板54は、COF50のドライバIC52を介してアクチュエータユニット21の駆動を制御するものである。ドライバIC52は、アクチュエータユニット21を駆動する駆動信号を生成する。
【0035】
次に、図3〜図6を参照しつつ、ヘッド本体2について説明する。図3は、ヘッド本体2の平面図である。図4は、図3の一点鎖線で囲まれた領域の拡大図である。なお、図4では説明の都合上、アクチュエータユニット21の下方にあって破線で描くべき圧力室110、アパーチャ112及びノズル108を実線で描いている。図5は、図4に示すV−V線に沿った部分断面図である。図6(a)はアクチュエータユニット21の拡大断面図であり、図6(b)は、図6(a)においてアクチュエータユニット21の表面に配置された個別電極を示す平面図である。
【0036】
ヘッド本体2は、図3に示すように、流路ユニット9、及び、流路ユニット9の上面9aに固定された4つのアクチュエータユニット21を含んでいる。図4に示すように、流路ユニット9は、圧力室110等を含むインク流路が内部に形成されている。アクチュエータユニット21は、各圧力室110に対応した複数のアクチュエータを含んでおり、圧力室110内のインクに選択的に吐出エネルギーを付与する機能を有する。
【0037】
流路ユニット9は、リザーバユニット71のプレート94とほぼ同じ平面形状を有する直方体形状となっている。流路ユニット9の上面9aには、リザーバユニット71のインク流出流路73(図2参照)に対応して、計10個のインク供給口105bが開口している。流路ユニット9の内部には、図3及び図4に示すように、インク供給口105bに連通するマニホールド流路105及びマニホールド流路105から分岐した副マニホールド流路105aが形成されている。流路ユニット9の下面には、図4及び図5に示すように、多数のノズル108がマトリクス状に配置された吐出面2aが形成されている。圧力室110も流路ユニット9におけるアクチュエータユニット21の固定面においてノズル108と同様マトリクス状に多数配列されている。
【0038】
本実施形態では、等間隔に流路ユニット9の長手方向に並ぶ圧力室110の列が、短手方向に互いに平行に16列配列されている。各圧力室列に含まれる圧力室110の数は、後述のアクチュエータユニット21の外形形状(台形形状)に対応して、その長辺側(下底側)から短辺側(上底側)に向かって次第に少なくなるように配置されている。ノズル108も、これと同様の配置がされている。
【0039】
流路ユニット9は、図5に示すように、9枚のステンレス鋼からなる金属製のプレート122〜130から構成されている。これらプレート122〜130を互いに位置合わせしつつ積層することによって、流路ユニット9内に、マニホールド流路105から副マニホールド流路105a、そして副マニホールド流路105aの出口から圧力室110を経てノズル108に至る多数の個別インク流路132が形成される。
【0040】
流路ユニット9におけるインクの流れについて説明する。図3〜図5に示すように、リザーバユニット71からインク供給口105bを介して流路ユニット9内に供給されたインクは、マニホールド流路105から副マニホールド流路105aに分岐される。副マニホールド流路105a内のインクは、各個別インク流路132に流れ込み、絞りとして機能するアパーチャ112及び圧力室110を介してノズル108に至る。
【0041】
次に、アクチュエータユニット21について説明する。図3に示すように、4つのアクチュエータユニット21は、それぞれ台形の平面形状を有しており、インク供給口105bを避けるよう千鳥状に配置されている。さらに、各アクチュエータユニット21の平行対向辺は流路ユニット9の長手方向に沿っており、隣接するアクチュエータユニット21の斜辺同士は流路ユニット9の幅方向(副走査方向)に関して互いにオーバーラップしている。
【0042】
図6(a)に示すように、アクチュエータユニット21は、強誘電性を有するチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)系のセラミックス材料からなる3枚の圧電シート141〜143から構成されている。最下層の圧電シート143の下面が流路ユニット9に固定される固定面となっている。また、最上層の圧電シート141の上面は、COF50が接合される接合面21aとなっている。この接合面21aにおける圧力室110に対向する位置には、個別電極135が形成されている。最上層の圧電シート141とその下側の圧電シート142との間にはシート全面に形成された共通電極134が介在している。個別電極135は、図6(b)に示すように、圧力室110と相似な略菱形の平面形状を有する。平面視で、個別電極135の大部分は、圧力室110の領域内にある。略菱形の個別電極135における鋭角部の一方は圧力室110の外に延出され、その先端には個別電極135と電気的に接続されつつ接合面21aから突出した個別バンプ136が設けられている。なお、接合面21aには、個別電極用の個別バンプ136とは別に、共通電極用の個別バンプ136も形成されており、共通電極134が電気的に接続されている。
【0043】
共通電極134は、すべての圧力室110に対応する領域において等しくグランド電位が付与されている。一方、個別電極135は、COF50を介してドライバIC52の各出力端子と電気的に接続されており、ドライバIC52からの駆動信号が選択的に供給されるようになっている。
【0044】
ここで、アクチュエータユニット21の駆動方法について述べる。圧電シート141はその厚み方向に分極されている。個別電極135を共通電極134と異なる電位にして圧電シート141に対してその分極方向に電界を印加すると、圧電シート141における電界印加部分が圧電効果により歪む活性部として働く。つまり、アクチュエータユニット21には、個別電極135と圧力室110とで挟まれた部分が、個別のアクチュエータとして働き、圧力室110の数に対応した複数のアクチュエータが作り込まれている。例えば、分極方向と電界の印加方向とが同じであれば、活性部は分極方向に直交する方向(平面方向)に縮む。つまり、アクチュエータユニット21は、圧力室110から離れた上側1枚の圧電シート141を活性部が含まれる層とし、且つ圧力室110に近い下側2枚の圧電シート142、143を非活性層とした、いわゆるユニモルフタイプのアクチュエータである。図6(a)に示すように、圧電シート141〜143は圧力室110を区画するプレート122の上面に固定されているため、圧電シート141における電界印加部分とその下方の圧電シート142、143との間で平面方向への歪みに差が生じると、圧電シート141〜143全体が圧力室110側へ凸になるように変形(ユニモルフ変形)する。これにより圧力室110内のインクに圧力(吐出エネルギー)が付与され、ノズル108からインク滴が吐出される。
【0045】
なお、本実施形態においては、予め個別電極135に所定の電位を付与しておき、吐出要求があるごとに一旦個別電極135をグランド電位にした後、所定のタイミングで再び個別電極135に所定の電位を付与するような駆動信号をドライバIC52から出力させる。この場合、個別電極135がグランド電位となるタイミングで圧電シート141〜143が元の状態に戻り、圧力室110の容積は初期状態(予め電圧が印加された状態)と比較して増加し、副マニホールド流路105aから個別インク流路132へとインクが吸い込まれる。その後、再び個別電極135に所定の電位が付与されたタイミングで圧電シート141〜143において活性領域と対向する部分が圧力室110側に凸となるように変形し、圧力室110の容積低下によりインクの圧力が上昇し、ノズル108からインクが吐出される。
【0046】
次に、図7及び図8を参照しつつ、COF50について詳細に説明する。図7は、COF50のドライバIC52の実装面を描いた平面図である。図8は、図7に示すVIII−VIII線に関する断面図である。なお、図7においては、COF50が接合されているアクチュエータユニット21の外形を破線で示している。また、COF50の長手方向の長さを短く描いている。図8に示すように、COF50は、アクチュエータユニット21の接合面21aに面した表面51aを有するフィルム状の基材51を有している。基材51の表面51aには、アクチュエータユニット21と実質的に同じ台形の平面外形を有するランド領域50a(図8における破線より左側の領域)と、ランド領域50aの長辺に隣接しつつランド領域50aから外側に向かって(図7中下方であって、出力配線57aが引き出される方向)延在している配線領域50b(図8における破線より右側の領域)とが形成されている。配線領域50bのランド領域50aとは反対側の端部には、制御基板54のコネクタ54aに接続されるターミナル50cが接続されている。なお、ランド領域50aと配線領域50bとの境界線は、配線領域50bに最も近いランド58と、積層部62のランド領域50aに最も近い端面との間にあればよい。
【0047】
基材51のランド領域50aには、アクチュエータユニット21の複数の個別バンプ136に接合される複数のランド58が配置されている。基材51の配線領域50bの途中部には、ドライバIC52が実装されている。また、配線領域50bには、複数のランド58から引き出されつつドライバIC52の図示しない出力端子に接続された出力配線57aと、ドライバIC52の図示しない制御端子とターミナル50cの各端子とを接続する制御配線57bとが形成されている。
【0048】
また、基材51の表面51aには、配線領域50b全域を被覆する熱硬化性エポキシ樹脂からなる絶縁性のソルダレジスト(配線被覆層)61が形成されている。さらに、表面51aには、ランド領域50a全域、及び、ソルダレジスト61に係る、配線領域50bにおけるランド領域50aの長辺に隣接する矩形領域と対向する部分を被覆する熱硬化性エポキシ樹脂からなる絶縁性のカバーコート(ランド被覆層)60が形成されている。このとき、ソルダレジスト61とカバーコート60とが互いに積層されている部分が積層部62となっている。そして、積層部62のアクチュエータユニット21の接合面21aと対向する部分が、接合面21aと出力配線57aとに挟持されている。積層部62のカバーコート60が接合面21aに固定されている。
【0049】
図8に示すように、アクチュエータユニット21の個別バンプ136は、接合面21aから突出するように形成されており、その先端がカバーコート60を貫通してランド58に接合されている。このように、各個別バンプ136がカバーコート60に囲まれているため、隣接する個別バンプ136間に導電性の異物が入り込んで短絡するのを防止することができる。
【0050】
個別バンプ136とランド58との接合部を含む接合面21aから基材51までの高さが約30μmとなっている。そして、出力配線57aの厚みが8μmであり、カバーコート60及びソルダレジスト61の厚みがそれぞれ10μmであるため、積層部62を含む接合面21aから基材51までの高さが28μmとなっている。これにより、基材51と接合面21aとがほぼ平行になっている。
【0051】
図7及び図8に示すように、積層部62において、カバーコート60が、出力配線57aの引き出し方向に関して、アクチュエータユニット21の端縁を超えた外側までソルダレジスト61を被覆している。そして、積層部62は、出力配線57aの引き出し方向と直交する方向に関して、全ての出力配線57aに跨って延在した帯状平面を有している。この帯状平面は、アクチュエータユニット21の帯状平面の延在方向に関する両方の端縁を超えた外側まで延びている。後述するように、アクチュエータユニット21にCOF50を接合する工程において、半硬化状態にあるカバーコート60をアクチュエータユニット21の接合面21aに密着させる。このとき、積層部62におけるカバーコート60が、接合面21aの対向領域によって押し潰されて、アクチュエータユニット21の接合面21aのみならず、出力配線57aの引き出し方向側の側面、及び、帯状平面の延在方向に関する両方の側面に回り込む。この状態でカバーコート60が完全硬化されることによって、カバーコート60がアクチュエータユニット21に強固に固定される。
【0052】
次に、インクジェットヘッド1の製造工程のうち、COF50を形成してアクチュエータユニット21に接合する工程について、図9及び図10を参照しつつ説明する。図9は、COF50をアクチュエータユニット21に接合する工程を説明するブロック図である。図10は、図9に示す各工程を説明するための図である。図9に示すように、まず、流路ユニット9に固定されたアクチュエータユニット21の接合面21aに、接合面21aから突出するように個別バンプ136を形成してヘッド本体2を製作する(ヘッド本体製作:端子形成工程)。
【0053】
次に、COF50を製作する。COF50の基材51となるシート材51’上に、複数のランド58と、出力配線57a及び制御配線57bを含む複数の配線パターンと、ドライバIC52が実装される実装ランドとを形成する(ランド及び配線パターン形成)。その後、実装ランドにドライバIC52を実装する。
【0054】
次に、図9及び図10(b)に示すように、出力配線57a及び制御配線57bを含む配線領域50bを被覆するように、熱硬化性エポキシ樹脂を塗布することによってソルダレジスト61を印刷する(ソルダレジスト印刷)。その後、ソルダレジスト61を完全硬化させる加熱処理を行う(ソルダレジスト硬化:以上、配線被覆層形成工程)。
【0055】
さらに、図9及び図10(c)に示すように、複数のランド58を含むランド領域50a全域及びランド領域50aの長辺に連続する配線領域50bの一部(積層部62)を被覆するように、熱硬化性エポキシ樹脂を塗布することによってカバーコート60を印刷する(カバーコート印刷)。このとき、配線領域50bにおいて、カバーコート60がソルダレジスト61の一部を被覆している積層部62が形成される。上述したように、積層部62においては、カバーコート60が、出力配線57aの引き出し方向に関して、アクチュエータユニット21の端縁を超えた外側まで、且つ、アクチュエータユニット21の引き出し方向に直交する方向に関する両方の端縁を超えた外側まで延びている。
【0056】
その後、カバーコート60の表面を乾燥させる乾燥処理を行う(カバーコート表面乾燥)。これにより、シート材51’をハンドリングしたときにカバーコート60の形状が崩れるのを防止することができる。この状態で、シート材51’から基材51を打ち抜く(基材打ち抜き)。さらに、カバーコート60を半硬化させる加熱処理を行う(カバーコート半硬化:以上、ランド被覆層形成工程)。これにより、COF50が完成する。なお、ランド被覆層形成工程は、基材打ち抜きの前に行ってもよい。
【0057】
そして、アクチュエータユニット21の接合面21aと、COF50のランド領域50aとを対面させ、さらに、個別バンプ136がカバーコート60を貫通しつつ対向するランド58に接触するように、加圧して両者を接近させる。このとき、接合面21aと出力配線57aとの間に、ソルダレジスト61とカバーコート60のソルダレジスト61を被覆している部分とが挟持される。これにより、カバーコート60が接合面21aに密着する(図8参照)。このとき、積層部62におけるカバーコート60が、接合面21aの対向領域によって押し潰されて、アクチュエータユニット21の接合面21aのみならず、出力配線57aの引き出し方向側のアクチュエータユニット21の側面、及び、帯状平面の延在方向に関する両方のアクチュエータユニット21の側面に回り込む(以上、接合工程)。
【0058】
この状態で、加熱加圧処理を施すことによって、互いに接触している個別バンプ136とランド58とが電気的に接続された状態でカバーコート60が硬化する。このとき、カバーコート60は個別バンプ136とランド58の接続部全周に亘って包囲すると共に接合面21aと基材51とを接続する。また、カバーコート60が完全硬化することによって、カバーコート60がアクチュエータユニット21に強固に固定される(加熱加圧接合:以上、ランド被覆層硬化工程)。このとき、個別バンプ136とランド58との接合部を含む接合面21aから基材51までの高さと、出力配線57a、カバーコート60及びソルダレジスト61の厚みの計がほぼ同じであるため、基材51と接合面21aとがほぼ平行になっている。
【0059】
以上のように、本実施形態によるインクジェットヘッド1によると、配線領域50bにおいてソルダレジスト61を被覆しているカバーコート60が、アクチュエータユニット21の接合面21aに固定されるため、COF50からの応力が、個別バンプ136とランド58との接合部に加えられるのを防止することができる。これにより、個別バンプ136からランド58が剥離するのを抑制することができる。また、接合面21aと配線領域50bとの間に、カバーコート60とソルダレジスト61とが配置されることによって、カバーコート60と接合面21aとが固定された領域において、基材51とアクチュエータユニット21とのクリアランスがソルダレジスト61の厚み以上に確保される。これにより、アクチュエータユニット21に接合されたCOF50がアクチュエータユニット21に向かって湾曲するのが抑制され、出力配線57aがアクチュエータユニット21の角部に接触して損傷するのを防止することができる。
【0060】
また、基材51と接合面21aとがほぼ平行になっているため、アクチュエータユニット21に接合されたCOF50がアクチュエータユニット21に向かって湾曲するのを確実に防止することができる。
【0061】
さらに、積層部62において、カバーコート60が、出力配線57aの引き出し方向に関して、アクチュエータユニット21の端縁を超えた外側までソルダレジスト61を被覆している。そして、積層部62は、出力配線57aの引き出し方向と直交する方向に関して、全ての出力配線57aに跨って延在した帯状平面を有している。これによると、アクチュエータユニット21にCOF50を接合する工程において、半硬化状態にあるカバーコート60をアクチュエータユニット21の接合面21aに密着させることによって、積層部62におけるカバーコート60が、接合面21aの対向領域によって押し潰されて、アクチュエータユニット21の接合面21aのみならず、出力配線57aの引き出し方向側の側面、及び、帯状平面の延在方向に関する両方のアクチュエータユニット21の側面に回り込む。このため、カバーコート60がアクチュエータユニット21に強固に固定される。
【0062】
<変形例>
次に、本実施形態の変形例について図11を参照しつつ説明する。図11は、変形例に係るアクチュエータユニット21に接合されたCOF151の部分断面図である。図11に示すように、アクチュエータユニット21の接合面21aから突出する個別バンプ236が15μmの高さを有している。また、基材51の表面から突出しているランド158が15μmの高さを有している。そして、個別バンプ236及びランド158がカバーコート160を貫通しつつ互いに接合されている。これにより、バンプ236とランド158との接合部を含む接合面21aから基材51までの高さが約30μmとなっている。
【0063】
一方、ソルダレジスト161の厚みが25μmとなっており、積層部162において、カバーコート160の厚みが、ソルダレジスト161の厚みより小さくなっている。これは、アクチュエータユニット21とCOF50との接合時において、接合面21aによってカバーコート160が押し潰されたことによる。これにより、ソルダレジスト161の厚みが、互いに接合された個別バンプ236及びランド158を挟む接合面21aと基材51との離隔距離とほぼ等しくなっている。
【0064】
このため、カバーコート160を形成するときに、熱硬化性エポキシ樹脂の塗布量を予め少なくすることができる。これにより、カバーコート160がソルダレジスト161と接合面21aとの間からはみ出る量を少なくすることができる。また、これにより、はみ出たカバーコート160が、アクチュエータユニット21の変位を阻害するのを抑制することができる。
【0065】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能なものである。上述の実施形態では、個別バンプ136とランド58との接合部を含む接合面21aから基材51までの高さと、積層部62を含む接合面21aから基材51までの高さとをほぼ同じにすることによって、基材51と接合面21aとを平行にする構成であるが、積層部62を含む接合面21aから基材51までの高さを、個別バンプ136とランド58との接合部を含む接合面21aから基材51までの高さより高くしてもよい。これによると、基材51をアクチュエータユニット21から離隔する方向に湾曲させることができる。
【0066】
上述した実施形態においては、アクチュエータユニット21がユニモルフタイプのアクチュエータであるが、アクチュエータユニットがバイモルフタイプのアクチュエータであってもよい。
【0067】
さらに、上述した実施形態においては、積層部62が帯状平面を有する構成であるが、基材の形状に応じて任意の平面形状を有していてもよい。例えば、楕円状平面を有していてもよいし複数の矩形平面を有していてもよい。
【0068】
本発明による記録ヘッドは、ライン式に限定されず、ヘッドが往復移動するシリアル式にも適用可能である。また、プリンタに限定されず、ファクシミリやコピー機などにも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の一実施形態によるインクジェットプリンタの断面図である。
【図2】図1に示すインクジェットヘッドの短手方向に沿った断面図である。
【図3】図2に示すヘッド本体の平面図である。
【図4】図3に示す一点鎖線で囲まれた領域の拡大図である。
【図5】図4に示すV−V線断面図である。
【図6】図4に示すアクチュエータユニットを説明するための図である。
【図7】図2に示すCOFのドライバICの実装面を描いた平面図である。
【図8】図7に示すVIII−VIII線に関する断面図である。
【図9】図2に示すCOFをアクチュエータユニットに接合する工程を説明するブロック図である。
【図10】図9に示す各工程を説明するための図である。
【図11】変形例を説明するための図である。
【符号の説明】
【0070】
1 インクジェットヘッド
1a 筐体
1b 給紙ユニット
1c インクタンクユニット
2 ヘッド本体
9 流路ユニット
21 アクチュエータユニット
21a 接合面
50 COF
50a ランド領域
50b 配線領域
50c ターミナル
51 基材
51a 表面
57a 出力配線
57b 制御配線
58 ランド
60 カバーコート
61 ソルダレジスト
62 積層部
101 インクジェットプリンタ
135 個別電極
136 個別バンプ
141〜143 圧電シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体が吐出される流路ユニットと、
前記流路ユニットに固定されており、前記流路ユニットから液体を吐出させるアクチュエータであって、前記流路ユニットに固定された固定面と駆動信号を供給する平型柔軟基板が接合された接合面とを有する圧電層、前記圧電層に配置された複数の個別電極、及び、前記接合面に配置され且つ前記複数の個別電極と電気的に接続された複数の個別バンプを有するアクチュエータと、
前記平型柔軟基板とを備えており、
前記平型柔軟基板は、
前記アクチュエータに面した表面を有する基材、前記表面に配置され且つ前記複数の個別バンプに接合された複数のランド、前記表面に配設され且つ前記複数のランドから引き出された複数の配線パターン、前記複数のランドが配置されたランド領域を被覆する絶縁性のランド被覆層、及び、前記ランド領域に隣接して形成され且つ前記複数の配線パターンが配設された配線領域を被覆する絶縁性の配線被覆層を有しており、
前記配線領域において、前記ランド被覆層が前記配線被覆層の少なくとも一部を被覆することによって、前記配線被覆層と前記ランド被覆層とが積層されている積層部が形成されており、
前記圧電層と前記複数の配線パターンとの間に、前記積層部の少なくとも一部が挟持されており、前記積層部の前記ランド被覆層が前記圧電層に固定されていることを特徴とする記録ヘッド。
【請求項2】
前記基材と前記圧電層の前記接合面とが平行になっていることを特徴とする請求項1に記載の記録ヘッド。
【請求項3】
前記接合面に配置された前記複数の個別バンプ及び前記表面に配置された前記複数のランドの少なくとも一方は、それらが配置された面から突出するように形成されており、
前記配線被覆層は、互いに接合された前記複数の個別バンプ及び前記複数のランドを挟む前記接合面と前記表面との離隔距離に等しい厚さを有していることを特徴とする請求項2に記載の記録ヘッド。
【請求項4】
前記ランド被覆層の厚みが、前記配線被覆層の厚みより小さいことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の記録ヘッド。
【請求項5】
前記積層部において、前記ランド被覆層は、前記配線パターンが引き出される引き出し方向に関して、前記圧電層の端縁を超えた外側まで前記配線被覆層を被覆していることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の記録ヘッド。
【請求項6】
前記積層部は、前記引き出し方向と直交する方向に関して、全ての前記複数の配線パターンに跨って延在した帯状平面を有しており、前記圧電層の両方の端縁を超えた外側まで延びていることを特徴とする請求項5に記載の記録ヘッド。
【請求項7】
液体が吐出される流路ユニットに固定されており、前記流路ユニットに固定された固定面と駆動信号を供給する平型柔軟基板が接合された接合面とを有する圧電層、前記圧電層に配置された複数の個別電極、及び、前記接合面に配置され且つ前記複数の個別電極と電気的に接続された複数の個別バンプを有すると共に、前記流路ユニットから液体を吐出させるアクチュエータに、前記アクチュエータに面する表面を有する基材、前記表面に配置され且つ前記複数の個別バンプに接合される複数のランド、及び、前記表面に配設され且つ前記複数のランドから引き出された複数の配線パターンを有する平型柔軟基板が接合された記録ヘッドの製造方法であって、
前記表面における前記複数のランドが配置されたランド領域に隣接する領域であって前記複数の配線パターンが配置された配線領域を被覆する絶縁性の配線被覆層を形成する配線被覆層形成工程と、
前記ランド領域を被覆する半硬化状態の熱硬化性樹脂からなる絶縁性のランド被覆層を、前記配線被覆層の少なくとも一部を被覆するように形成するランド被覆層形成工程と、
前記複数の個別バンプが前記ランド被覆層を貫通しつつ前記複数のランドに接合されると共に、前記圧電層の前記接合面と前記複数の配線パターンとの間に、前記配線被覆層と前記ランド被覆層の前記配線被覆層を被覆している部分とが挟持されて、前記ランド被覆層が前記接合面に密着するように、前記平型柔軟基板を前記アクチュエータに接合する接合工程と、
前記接合工程において加熱することによって、前記ランド被覆層を完全硬化させることによって、前記平型柔軟基板を前記接合面に固定するランド被覆層硬化工程とを備えていることを特徴とする記録ヘッドの製造方法。
【請求項8】
前記接合工程において、前記ランド被覆層が前記配線領域に対向した前記接合面の対向領域によって押し潰されるように、前記平型柔軟基板を前記アクチュエータに接合することを特徴とする請求項7に記載の記録ヘッドの製造方法。
【請求項9】
前記接合工程において、前記基材と前記接合面とが平行になるように、前記平型柔軟基板を前記アクチュエータに接合することを特徴とする請求項7又は8に記載の記録ヘッドの製造方法。
【請求項10】
前記配線被覆層形成工程に先立って、前記接合面に配置された前記複数の個別バンプ及び前記表面に配置された前記複数のランドの少なくとも一方を、それらが配置された面から突出するように形成する端子形成工程をさらに備えており、
前記配線被覆層形成工程において、前記配線被覆層を、前記複数の個別バンプ及び前記複数のランドが互いに接合されたとき、当該接合部を挟む前記表面と前記接合面との離隔距離に等しい厚さで形成することを特徴とする請求項9に記載の記録ヘッドの製造方法。
【請求項11】
前記ランド被覆層形成工程において、前記ランド被覆層を、少なくとも前記複数の配線パターンが引き出される引き出し方向に関して、前記圧電層の端縁を超えた外側まで前記配線被覆層を被覆するように形成することを特徴とする請求項7〜10のいずれか1項に記載の記録ヘッドの製造方法。
【請求項12】
前記ランド被覆層が、熱硬化性エポキシ樹脂であることを特徴とする請求項7〜11のいずれか1項に記載の記録ヘッドの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−69753(P2010−69753A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−240396(P2008−240396)
【出願日】平成20年9月19日(2008.9.19)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】