説明

記録媒体用コネクタ

【課題】インサート成形時のシール性に悪影響を及ぼすことがない歩留まりの高い安価な記録媒体用コネクタを提供する。
【解決手段】本発明の記録媒体用コネクタ1は、互いの接触により記録媒体に関連する所定の検出を行なう固定接点端子部21bと可動接点端子部21aとから成るスイッチ端子21とを有する端子基材40を、絶縁ハウジング2Aにインサート成形されてなる。可動接点端子部21aは、絶縁ハウジング2Aの側壁部13に沿うように端子基材40から引き出された端子片により形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばカード状の記録媒体と電気的に接続して該記録媒体に対する情報の書き込みまたは記録媒体からの情報の読み取りを可能にする記録媒体用コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
カード状の記録媒体と電気的に接続して該記録媒体に対する情報の書き込みまたは記録媒体からの情報の読み取りを可能にする記録媒体用コネクタは、一般に、記録媒体と接触するための接点端子が形成されて成る端子基材を絶縁ハウジングにインサート成形することにより構成される。
【0003】
また、絶縁ハウジングにインサート成形される端子基材は、所定の接点端子が一体的に連設されて成るように導電性の金属板を打ち抜いて成形される。そして、そのような端子基材の接点端子は、折り曲げ加工されることにより絶縁ハウジングに対するその所定の組み込み位置に位置決めされるようになっている。
【0004】
ところで、端子基材における接点端子部の形成形態としては、従来から様々な形態が存在するが、例えば、特許文献1では、スイッチ端子を構成する接点端子部が、絶縁ハウジングの側壁から略垂直に延びる連結片の先端に設けられている。この端子基材では、連結片の途中部分を折り返すことにより、接点端子部を絶縁ハウジングの所定位置に組み込まれ、絶縁ハウジングの所定位置に配置された他の接点端子部と共にスイッチ端子を構成するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−324043号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示されるように、絶縁ハウジングの側壁から略垂直に延びる連結片の先端に接点端子部が設けられていると、端子基材の寸法が大きくなって端子基材の材料歩留まりが悪くなり、製造コストが増大してしまう。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、歩留まりの良い安価な記録媒体用コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の記録媒体用コネクタは、記録媒体と接触するための接触端子と、互いの接触により記録媒体に関連する所定の検出を行なう固定接点端子部と可動接点端子部とから成るスイッチ端子とを有する端子基材を、ハウジングにインサート成形されてなる記録媒体用コネクタであって、前記可動接点端子部は、前記ハウジングの一側部に沿うように前記端子基材から引き出された端子片により形成されたことを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、可動接点端子部がハウジングの一側部に沿うように前記端子基材から引き出された端子片により形成されているため、インサート成形前の展開状態では端子基材の幅方向の寸法を小さくすることが可能となる。したがって、端子基材の材料歩留まりが良くなり、製造コストを低減することができる。
【0010】
なお、上記構成において、「記録媒体に関連する所定の検出」としては、例えば、記録媒体に対する情報の書き込み禁止状態の検出や、記録媒体用コネクタに対する記録媒体の挿入検出などが挙げられる。
【0011】
また、本発明は、上記構成の記録媒体用コネクタにおいて、前記ハウジングの一側部には、前記固定接点端子部に向かう前記可動接点端子部の移動を案内するためのガイド構造が設けられることを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、ガイド構造により、固定接点端子部に向かう可動接点端子部の安定した移動を確保することができる。
【0013】
また、本発明は、上記構成の記録媒体用コネクタにおいて、前記可動接点端子部は、前記固定接点端子部から離間する方向にプリテンションがかけられるように折り曲げられて形成されることを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、可動接点端子部に付与されるプリテンションにより、振動時などの不測の状況下においても誤って可動接点端子部が固定接点端子部と接触する電気的な誤作動を確実に防止できる。
【0015】
また、本発明は、上記構成の記録媒体用コネクタにおいて、前記ハウジングに取り付けられ、記録媒体が挿入される挿入空間を前記ハウジングとともに形成するカバーを更に備え、該カバーは、前記可動接点端子部をそのプリテンションに抗して前記ガイド構造側に押し込むとともに前記挿入空間に対する記録媒体の挿入を案内する押圧・ガイド部を有することを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、押圧・ガイド部を有するカバーをハウジングに取り付けるだけで、可動接点端子部がガイド構造による案内経路から外れないように可動接点端子部の高さ位置を規定することができる(可動接点端子部をガイド構造側に自動的に位置決めできる)とともに、コネクタの挿入空間内に対する記録媒体の安定した挿入を確保できる。
【0017】
また、本発明は、上記構成の記録媒体用コネクタにおいて、前記可動接点端子部は、前記記録媒体と当接する樹脂製の当接部を有することを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、記録媒体の装着時に可動接点端子部と記録媒体とが樹脂製の当接部を介して当接するので、記録媒体の表面を傷つけることがない。
【0019】
また、本発明は、上記構成の記録媒体用コネクタにおいて、前記樹脂製の当接部は前記可動接点端子部と固定接点端子部の接点部同士の接触に先立って前記固定接点端子部と当接して該固定接点端子部をそのプリテンションに抗して押し広げる突出部を有することを特徴とする。
【0020】
この構成によれば、固定接点端子部のプリテンションによって、接点部同士の接触圧を高めつつ、接点部同士を衝突により損傷しないようにスムーズに接触させることができ、良好なスイッチングが得られる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、歩留まりの良い安価な記録媒体用コネクタを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る記録媒体用コネクタの実施の形態を示す図であり、記録媒体用コネクタの斜視図である。
【図2】本発明に係る記録媒体用コネクタの実施の形態を示す図であり、カバーを外した記録媒体用コネクタの斜視図である。
【図3】(a)は記録媒体用コネクタを構成する端子基材の単体の平面図、(b)は(a)の端子基材を絶縁ハウジングにインサート成形する成形状態位置の平面図である。
【図4】端子基材を折り曲げ加工して絶縁ハウジングにインサート成形する製造工程を段階的に示す部分斜視図である。
【図5】(a)は絶縁ハウジングにカバーを取り付ける前の組み込み位置にある可動接点端子部の状態を示す要部斜視図、(b)は絶縁ハウジングにカバーを取り付けた状態を示す要部斜視図である。
【図6】(a)は絶縁ハウジングにカバーを取り付ける前の組み込み位置にある可動接点端子部の状態を示す要部側面図、(b)は絶縁ハウジングにカバーを取り付けた後の可動接点端子部の状態を示す要部側面図、(c)はコネクタの挿入空間内に記録媒体が挿入された際の可動接点端子部の状態を示す要部側面図である。
【図7】本発明の実施の形態に係る記録媒体の平面図であり、(a)が上面図、(b)が背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して詳細に説明する。なお、以下においては、記録媒体としてSD(Secure Digital)カードが装着される記録媒体用コネクタ(以下、単にカード用コネクタと称する)に適用する場合について説明する。しかしながら、本実施形態に係るカード用コネクタの適用対象については、これに限定されるものではなく適宜変更が可能である。
【0024】
まず、本実施形態に係るカード用コネクタについて説明する前に装着対象となるカード(記録媒体)について説明する。図7は、本発明の実施形態に係るカードの平面図であり、(a)が上面図、(b)が背面図をそれぞれ示している。
【0025】
図7(a)、(b)に示されるように、カード51は、いわゆるSDカードであり、上面視略矩形状に形成されている。カード51の一の角部には、切り欠かれて約45度に傾斜した傾斜面52が形成されている。傾斜面52は、カード51の挿入方向を識別するのに用いられ、この傾斜面52が形成されている側が挿入方向における前端側とされ、逆側が挿入方向における後端側とされる。
【0026】
カード51の前端側の背面には、挿入方向に延在する複数の仕切りによって溝部53が形成されている。溝部53には、カード用コネクタ1の複数のコンタクト端子(接触端子)18に接触する複数のパッド54が設けられている。カード51の一の側面には、後述するスライド部材の係止バネに係止される凹部55が形成されている。また、カード51の他の側面には、カード内のメモリに対する書き込み禁止用の操作部56が設けられている。
【0027】
次に、図1および図2を参照して、カード用コネクタの全体構成について説明する。図1は、本発明の実施形態に係るカード用コネクタの斜視図である。図2は、本発明の実施形態に係るカバーを外したカード用コネクタの斜視図である。なお、本実施の形態に係るカード用コネクタは、プッシュプッシュ式のカード用コネクタであるが、説明の便宜上、図2の排出バネおよびスライド部材を省略している。
【0028】
図1および図2に示されるように、本実施形態に係るカード用コネクタ1は、上面および前面が開口されたコネクタ本体2と、コネクタ本体2の上面の開口に装着されてカード51の挿入空間(装着空間)Sを形成するカバー3とを備え、コネクタ本体2およびカバー3が組み合わされて挿入口4を有する箱状体をなしている。コネクタ本体2の底壁部11の中央部分には、複数のコンタクト端子18が設けられている。底壁部11に設けられた各コンタクト端子18は、底壁部11の中央部分から奥壁部12側に向かって延在している。
【0029】
コネクタ本体2の一の側壁部13には、カード51の書き込み禁止状態を検出するスイッチ端子(スイッチ部)21が設けられている。スイッチ端子21は、上下に弾発的に揺動可能な可動接点端子部21aと、可動接点端子部21aと対向して配置される固定接点端子部21b(図5および図6参照)とから成り、可動接点端子部21aは、下方に設けられた固定接点端子部21bに離接可能に支持されて、固定接点端子部21bに対して離間方向に付勢されている(後述するようにプリテンションがかけられている)。また、可動接点端子部21aの先端には、カード51に当接される樹脂製の当接部90が設けられている。この当接部90は、カード51の操作部56の設定位置に応じてカード51に当接される。そして、可動接点端子部21aは、前記付勢力(プリテンション)に抗して押し込まれると、固定接点端子部21bに接触され、カード51の書き込み禁止状態を検出する。
【0030】
コネクタ本体2の一の側壁部13に対向する他の側壁部14は、前端側のストッパ16を残して切り欠かれている。コネクタ本体2には、この切欠き部分に沿って挿入方向及び排出方向にスライド可能なスライド部材(図示せず)と、該スライド部材のスライドに伴って伸縮するコイル状の排出バネ(図示せず)とが配置されている。前記排出バネは、一端が奥壁部12に当接され、他端がスライド前記部材に当接されており、スライド部材を排出方向に付勢している。そして、前記スライド部材は、前記排出バネに付勢された状態で挿入方向及び排出方向にスライド可能に構成されている。
【0031】
なお、前記スライド部材には、スライド方向に延在する金属性の係止バネが設けられている。この係止バネは、板バネであり、前記スライド部材の後側部分に片持ちで保持されている。前記係止バネの自由端側には、カード51の凹部55を係止する係止突起が形成されている。この係止突起とカード51の凹部55との係止により、前記スライド部材とカード51とが一体に移動される。
【0032】
図3は、導電性の金属板を打ち抜いて形成される端子基材(フープ材)40の要部を示す平面図であり、図示部分から1個のカード用コネクタ1に用いられる各端子が形成される。端子基材40は、図示する左右に所定形状に打ち抜かれた端子部が連続し、多数のカード用コネクタ1に用いられる各端子が連続して折り曲げ加工される。そして、端子基材40を絶縁ハウジング2Aにインサート成形することによりコネクタ本体2が形成される。
【0033】
特に本実施形態において、端子基材40は、図3に示されるように、カード51と接触するための前述したコンタクト端子(接触端子)18と、互いに接触することによりカード51に関連する所定の検出、すなわち、カード51の書き込み禁止状態の検出を行なうようになっている固定接点端子部21bと可動接点端子部21aとから成るスイッチ端子21とを有する。この場合、可動接点端子部21aは、折り曲げ加工によって絶縁ハウジング2Aの一側である側壁部13の所定の組み込み位置(図5の(a)に示される位置)に位置決めされるように、折り曲げ加工前の状態では、絶縁ハウジング2Aに対する端子基材40の成形位置(図3の(b)の位置)において、端子基材40から絶縁ハウジング2Aの側壁部13にほぼ沿って斜めに片持ち梁状に延在している。すなわち、可動接点端子部21aは、絶縁ハウジング2Aの側壁部13に沿うように端子基材40から引き出された端子片により形成されている。
【0034】
また、本実施形態において、絶縁ハウジング2Aの側壁部13には、固定接点端子部21bへと向かう可動接点端子部21aの移動を案内するためのガイド構造が設けられている。このガイド構造は、本実施形態の場合、互いに対向する突起状の一対のガイド部50a,50bと、ガイド部50a,50bと挿入方向において離間したガイド部50cとから成る。ガイド部50a,50bは、可動接点端子部21aのガイド片92をガイド可能な隙間を空けて対向配置されており、ガイド部50cは、当接部90に形成された凹部94(図4(d)参照)に収まるように形成されている。このように、ガイド部材50a,50b,50cで可動接点端子部21aの移動を案内するようになっている。そして、本実施形態では、可動接点端子部21aが、固定接点端子部21bから離間する方向にプリテンションがかけられるようにガイド部50a,50b,50cの上方の組み込み位置(固定接点端子部21bと対向する図5の(a)の位置)へと折り曲げられるべく所定の屈曲形状に形成されている。
【0035】
図4には、端子基材40の各接点端子部を折り曲げ加工して絶縁ハウジング2Aにインサート成形する製造工程が段階的に示されている。この製造工程では、最初に、図4の(a)に示されるように前述した構造形態の端子基材40が用意され、可動接点端子部21aおよび固定接点端子部21bに対して第1段階の折り曲げ加工が施される。具体的には、可動接点端子部21aおよび固定接点端子部21bの先端部(接触端部)が下方に曲げ起こされる(図4の(b)参照)。無論、他の接点端子部の曲げ加工も施されるが、以下では、スイッチ端子21についてのみ説明する。
【0036】
続いて、図4の(c)に示されるように、端子基材40を絶縁ハウジング2Aとのインサート成形位置に配置した状態で(これは、例えば、絶縁ハウジング2Aを成型する金型内に端子基材40を収容することにより行なわれる)、固定接点端子部21b全体が略90°曲げ起こされる第2段階の折り曲げ加工が施される。このとき、インサート成形により端子基材40が絶縁ハウジング2Aにインサートされ、可動接点端子部21aの先端部にカード51に当接する当接部90が横向きに形成される。
【0037】
次に、図4の(d)に示されるように、折り曲げ位置Aから先端部にかけて可動接点端子部21aが略90°曲げ倒される第3段階の曲げ加工が施される。このとき、横向きの当接部90が上下逆向きの縦向き姿勢となる。次に、図4の(e)に示されるように、折り曲げ位置Bから先端部にかけて可動接点端子部21aが僅かに下方に折り曲げられる第4段階の折り曲げ加工が施される。このとき、可動接点端子部21aにプリテンション用の傾斜が形成される。
【0038】
次に、図4の(f)に示されるように、折り曲げ位置C,Dにおいて可動接点端子部21aが2段階に折り曲げられる第5段階の折り曲げ加工が施される。このように、可動接点端子部21aがガイド部50a,50b,50cの上方の組み込み位置へと反転されつつ折り返されることにより固定接点端子部21bから離間する方向にプリテンションがかけられる。その後、各接点端子部を端子基材40から切断し、絶縁ハウジング2Aに各接点端子部が一体に取り付けられた図4の(g)の完成品(コネクタ本体2)が得られる。
【0039】
その後、プリテンションがかけられた組み込み位置(図5の(a)参照)にある可動接点端子部21aの上側からカバー3をコネクタ本体2に対して取り付けることにより、図1に示されるカード用コネクタ1が得られるが、この場合に、本実施形態の更なる特徴的構成が効果的に作用する。すなわち、本実施形態において、カバー3は、前記組み込み位置にある可動接点端子部21aをそのプリテンションに抗してガイド部50a,50b,50c側に押し込むとともに挿入空間Sに対するカード51の挿入を案内する押圧およびガイド部(以下、押圧・ガイド部)を有する。
【0040】
本実施形態において、この押圧・ガイド部は、図5の(b)に明確に示されるように、収容空間S側にカバー3の一部を切り起こして成る切片30として形成される。この切片30は、側壁部13から内側に引き込まれて位置されることで、下端面により可動接点端子部21aを押圧するとともに、内面により挿入空間Sに対するカード51の挿入を案内するようになっている。また、本実施形態では、ガイド部50aにカバー3のフック3aと係合する係合部58が設けられており、その係合により、コネクタ本体2に対するカバー3の取り付け状態が保持され切片30の高さが所定の高さに維持されるようになっている。
【0041】
このように、スイッチ端子21の可動接点端子部21aは、折り曲げ加工により図6の(a)に示されるようなプリテンションを伴う組み込み位置に位置決めされる。その後、コネクタ本体2に対してカバー3が取り付けられることにより、図6の(b)に示されるように切片30の下端面によって当接部90から一体に突出形成された押圧部が下方に押し込まれる。このとき、可動接点端子部21aのガイド片92の下端が対向するガイド部50a,50bの隙間に侵入する。また、可動接点端子部21aの当接部90が、ガイド部50cの上方に位置される。このように、可動接点端子部21aは、切片30により当接部90がカードの収容空間S内に突出した初期位置に規制されかつ、ガイド部50a,50b,50cで構成された案内経路から外れない高さ位置に規制される。
【0042】
また、この状態では、可動接点端子部21aに作用するプリテンションにより、可動接点端子部21aが依然として固定接点端子部21bと接触しないようになっている。このプリテンションは、カード用コネクタ1の振動等により可動接点端子部21aと固定接点端子部21bとの接触を回避できる程度に設定されている。このため、カード用コネクタ1に振動等が加えられても、カード51の誤検出が回避される。
【0043】
このように組み立てられたカード用コネクタ1の収容空間S内へ操作部56がAの位置に設定されたカード51が挿入されると、図6の(c)に示されるように、カード51の操作部56の下面により可動接点端子部21aの当接部90が押し込まれ初期位置から固定接点端子部21bに近づく方向に移動する。このとき、可動接点端子部21aのガイド片92がガイド部50a,50b間の隙間に侵入し、当接部90に形成された凹部94にガイド部50cが収容される。このように、可動接点端子部21aは、ガイド部50a,50b,50cにガイドされつつ、下動され、接点部が固定接点端子部21bに接触することでスイッチの切替が行われ、カード51の操作部56がAの位置に設定されていることが検出される。
【0044】
なお、このスイッチ端子21の接点部の接触動作について更に詳しく説明すると、当接部90には可動接点部よりも固定接点端子部21b側に近づく方向に突出した突出部93が形成されており、接点部同士の接触に先立って、この下方突出部93が固定接点端子部21bの接点部に当接するように構成されている。これにより、固定接点端子部21bのプリテンションに抗してその接点部を下方突出部93が若干外側に押し広げた状態で、可動接点端子部21aの接点部が当接する。このように、固定接点端子部21bのプリテンションによって、接点部同士の接触圧が高めつつ、接点部同士を衝突により損傷しないようにスムーズに接触させることができ、良好なスイッチングが得られる。
【0045】
また、操作部56がAの位置から離れたカード挿入口4側のBの位置に設定されたカードが挿入された場合は、カード51の収容空間Sへの装着が完了した状態では、操作部56による当接部90の押し込みが行われない。そのため、可動接点端子部21aと固定接点端子部21bとが接触することがなく、スイッチの切替は行われない。
【0046】
以上説明したように、本実施形態によれば、可動接点端子部21aが絶縁ハウジング2Aの側壁部13に沿うように端子基材40から引き出された端子片により形成されているため、インサート成形前の展開状態では端子基材40の寸法を小さくすることが可能になる。したがって、端子基材40の材料歩留まりが良くなり、製造コストを低減することができる。また、端子基材40の寸法の減少に伴って余分な空間を最小限に抑えることが可能となるため、インサート成形時のシール性にも有益である。
【0047】
また、本実施形態によれば、絶縁ハウジング2Aの側壁部13に、固定接点端子部21bに向かう可動接点端子部21aの移動を案内するためのガイド部(ガイド構造)50a,50b,50cが設けられているため、固定接点端子部21bに向かう可動接点端子部21aの安定した移動を確保することができる。
【0048】
また、本実施形態によれば、可動接点端子部21aが上方へのプリテンションがかけられたままガイド部50a,50b間の上方の組み込み位置へと折り曲げられるようになっているため、可動接点端子部21aをガイド部50a,50b,50cと干渉させることなく折り曲げて組み込むことができる。また、可動接点端子部21aは、固定接点端子部21bから離間する方向にプリテンションがかけられるようにガイド部50a,50b間の上方の組み込み位置へと折り曲げられるべく形成されているため、振動時などの不測の状況下においても誤って可動接点端子部21aが固定接点端子部21bと接触する電気的な誤作動を確実に防止できる。
【0049】
更に、本実施形態において、カバー3には、組み込み位置にある可動接点端子部21aをそのプリテンションに抗してガイド部50a,50b,50c側に押し込むとともに挿入空間Sに対するカード51の挿入を案内する押圧・ガイド部30が設けられている。このため、カバー3を絶縁ハウジング2Aに取り付けるだけで、可動接点端子部21aがガイド部50a,50b,50cの案内経路から外れないように可動接点端子部21aの高さ位置を規定することができる(可動接点端子部21aをガイド部50a,50b,50c側に自動的に位置決めできる)とともに、カード用コネクタ1の挿入空間S内に対するカード51の安定した挿入を確保できる。
【0050】
なお、本発明は、前述した実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できることは言うまでもない。例えば、上記した実施形態においては、本発明をSDカードに対応したカード用コネクタに適用する構成としたが、この構成に限定されるものではない。SDカード以外のカードに対応可能なカード用コネクタに適用するようにしてもよい。また、前述した実施形態では、スイッチ端子21がカード51に対する情報の書き込み禁止状態の検出を行なっているが、スイッチ端子21は、カード用コネクタ1に対するカード(記録媒体)51の挿入検出などを行なってもよい。また、前述したスイッチ端子21は初期状態で可動接点と固定接点とが離れているノーマルオープンタイプのスイッチで構成したが、これに限らない。初期状態において可動接点と固定接点が導通しており、カードの挿入によって接点が離れるノーマルクローズタイプのスイッチで構成してもよい。
【0051】
また、前述した実施形態では、絶縁ハウジング2Aに一体に設けられたガイド部により可動接点端子部21aがガイドされる構成としたが、ガイド部は、絶縁ハウジング2Aに別体に設けられていてもよい。また、ガイド部の形状や個数は限定されない。
【0052】
また、前述した実施形態では、可動接点端子部21aを形成する端子片が絶縁ハウジング2Aの側壁部13に沿うように斜めに延在する構成としたが、この構成に限定されない。可動接点端子部21aを形成する端子片は、絶縁ハウジング2Aの側壁部13に沿うように延在すればよく、例えば、側壁部13に沿うようにL字状に延在していてもよい。
【0053】
また、前述した実施形態では、押圧・ガイド部がカバー3の切片30により構成されたが、カバー3に可動接点端子部21aを押圧する部分と、カード51の挿入をガイドする部分とを個別に設ける構成としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0054】
以上説明したように、本発明は、歩留まりの高い安価な製造を実現できるという効果を有し、特に、薄型カードに対応したカード用コネクタに有用である。
【符号の説明】
【0055】
1 カード用コネクタ(記録媒体用コネクタ)
2 コネクタ本体
2A 絶縁ハウジング(ハウジング)
3 カバー
18 コンタクト端子(接触端子)
21 スイッチ端子
21a 可動接点端子部(端子片)
21b 固定接点端子部
30 切片(押圧・ガイド部)
50 ガイド部(ガイド構造)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体と接触するための接触端子と、互いの接触により記録媒体に関連する所定の検出を行なう固定接点端子部と可動接点端子部とから成るスイッチ端子とを有する端子基材を、ハウジングにインサート成形されてなる記録媒体用コネクタであって、
前記可動接点端子部は、前記ハウジングの一側部に沿うように前記端子基材から引き出された端子片により形成されたことを特徴とする記録媒体用コネクタ。
【請求項2】
前記ハウジングの一側部には、前記固定接点端子部に向かう前記可動接点端子部の移動を案内するためのガイド構造が設けられることを特徴とする請求項1に記載の記録媒体用コネクタ。
【請求項3】
前記可動接点端子部は、前記固定接点端子部から離間する方向にプリテンションがかけられるように折り曲げられて形成されることを特徴とする請求項2に記載の記録媒体用コネクタ。
【請求項4】
前記ハウジングに取り付けられ、記録媒体が挿入される挿入空間を前記ハウジングとともに形成するカバーを更に備え、該カバーは、前記可動接点端子部をそのプリテンションに抗して前記ガイド構造側に押し込むとともに前記挿入空間に対する記録媒体の挿入を案内する押圧・ガイド部を有することを特徴とする請求項3に記載の記録媒体用コネクタ。
【請求項5】
前記可動接点端子部は、前記記録媒体と当接する樹脂製の当接部を有することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の記録媒体用コネクタ。
【請求項6】
前記樹脂製の当接部は前記可動接点端子部と固定接点端子部の接点部同士の接触に先立って前記固定接点端子部と当接して該固定接点端子部をそのプリテンションに抗して押し広げる突出部を有することを特徴とする請求項5に記載の記録媒体用コネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−258524(P2011−258524A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−134321(P2010−134321)
【出願日】平成22年6月11日(2010.6.11)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】