説明

記録装置、成形物の製造方法

【課題】成形時にスジの顕在化を抑制することができる記録装置、成形物の製造方法を提供する。
【解決手段】主走査方向に記録ヘッドを移動させ、前記主走査方向と交差する副走査方向に記録媒体を移動させながら、描画データに基づいて、前記記録媒体に向けて前記記録ヘッドから機能液を液滴として吐出し、前記記録媒体上に画像を形成する記録装置であって、前記画像が形成された前記記録媒体が成形された成形物の第1方向及び第2方向における伸び率に基づいて、前記第1方向及び前記第2方向のうち、前記伸び率が高い方向と前記主走査方向とが合致するように、前記記録媒体に対する前記画像の配置を決定する配置決定手段と、決定された前記画像の配置に基づいて、前記描画データを生成する描画データ生成手段と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録装置、成形物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクジェット方式の記録ヘッドから記録媒体に向けて機能液を液滴として吐出して、記録媒体上に機能液を塗布して画像を形成し、当該画像が形成された記録媒体を成形して成形物を形成する成形物の製造方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−74036号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、記録ヘッドと記録媒体とを相対的に移動させながら画像を形成する過程において、記録媒体の送り誤差等に起因して生じる描画ばらつきにより、成形時に記録媒体が伸ばされた際、スジむらが認識可能になってしまうという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することができる。
【0006】
[適用例1]本適用例にかかる記録装置は、主走査方向に記録ヘッドを移動させ、前記主走査方向と交差する副走査方向に記録媒体を移動させながら、描画データに基づいて、前記記録媒体に向けて前記記録ヘッドから機能液を液滴として吐出し、前記記録媒体上に画像を形成する記録装置であって、前記画像が形成された前記記録媒体が成形された成形物の第1方向及び第2方向における伸び率に基づいて、前記第1方向及び前記第2方向のうち、前記伸び率が高い方向と前記主走査方向とが合致するように、前記記録媒体に対する前記画像の配置を決定する配置決定手段と、決定された前記画像の配置に基づいて、前記描画データを生成する描画データ生成手段と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、成形物の伸び率が高い方向と記録ヘッドの走査方向とが合致した画像の配置が決定され、成形物の伸び率が低い方向と記録媒体の搬送方向とが合致した画像の配置が決定される。そして、当該画像の配置に基づいて描画データが生成され、そして、描画データに基づいて描画される。このようにして画像が描画された記録媒体を成形する場合、走査方向への伸び率が高くなっていても、走査方向では描画品質が一定であり、成形した際の画像にスジむらが表れにくい。また、副走査方向では、記録媒体の搬送方向につき、搬送誤差等に起因して、白スジや色スジが発生しやすく、成形した際スジむらが表れやすいが、副走査方向には伸び率が低い方向に一致させているため、成形してもスジむらが表れにくい。従って、成形時においてスジむらを認識しにくい画像を形成することができる。
【0008】
[適用例2]上記の適用例にかかる記録装置では、前記成形物の前記第1方向及び前記第2方向の前記伸び率を算出する算出手段と、算出された前記伸び率に基づいて、前記第1方向の第1伸び率と前記第2方向の第2伸び率とを比較する比較手段と、を備え、前記配置決定手段では、比較した前記第1伸び率と前記第2伸び率のうち、前記伸び率が高い方向と前記主走査方向とが合致するように、前記記録媒体に対する前記画像の配置を決定することを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、成形物の第1方向の伸び率と第2方向の伸び率が算出され、第1伸び率と第2伸び率とが比較されて、画像の配置が決定される。このため、作業の迅速化が図れるとともに、人為的ミスを低減することができる。
【0010】
[適用例3]上記の適用例にかかる記録装置の前記比較手段では、前記第1伸び率の最大値と前記第2伸び率の最大値とを比較し、前記配置決定手段では、比較した前記第1伸び率の最大値と前記第2伸び率の最大値のうち、前記伸び率が高い方向と前記主走査方向とが合致するように、前記記録媒体に対する前記画像の配置を決定することを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、伸び率の最大値に基づいて適した描画の配置を決定することができる。
【0012】
[適用例4]上記の適用例にかかる記録装置の前記比較手段では、前記第1伸び率の平均値と前記第2伸び率の平均値とを比較し、前記配置決定手段では、比較した前記第1伸び率の平均値と前記第2伸び率の平均値うち、前記伸び率が高い方向と前記主走査方向とが合致するように、前記記録媒体に対する前記画像の配置を決定することを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、伸び率の平均値に基づいて適した描画の配置を決定することができる。
【0014】
[適用例5]本適用例にかかる成形物の製造方法は、主走査方向に記録ヘッドを移動させ、前記主走査方向と交差する副走査方向に記録媒体を移動させながら、描画データに基づいて、前記記録媒体に向けて機能液を液滴として塗布して画像を形成する画像形成工程と、前記画像が形成された前記記録媒体を成形する成形工程と、前記画像形成工程の前に、前記画像が形成された前記記録媒体が成形された成形物の前記第1方向及び前記第2方向における伸び率に基づいて、前記第1方向及び前記第2方向のうち、前記伸び率が高い方向を前記主走査方向に合わせ、前記記録媒体に対して描画する画像の配置を決定する配置決定工程と、決定された前記画像の配置に基づいて、前記描画データを生成する描画データ生成工程と、を含むことを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、成形物の伸び率が高い方向と記録ヘッドの走査方向とが合致した画像の配置が決定され、成形物の伸び率が低い方向と記録媒体の搬送方向とが合致した画像の配置が決定される。そして、当該画像の配置に基づいて描画データが生成され、そして、描画データに基づいて描画される。このようにして画像が描画された記録媒体を成形する場合、走査方向への伸び率が高くなっていても、走査方向では描画品質が一定であり、成形した際の画像にスジむらが表れにくい。また、副走査方向では、記録媒体の搬送方向につき、搬送誤差等に起因して、白スジや色スジが発生しやすく、成形した際スジむらが表れやすいが、副走査方向には伸び率が低い方向に一致させているため、成形してもスジむらが表れにくい。従って、成形時においてスジむらを認識しにくい成形物を形成することができる。
【0016】
[適用例6]上記適用例にかかる成形物の製造方法において、前記配置決定工程の前に、前記成形物の前記第1方向及び前記第2方向の前記伸び率を算出する算出工程と、算出された前記伸び率に基づいて、前記第1方向の第1伸び率と前記第2方向の第2伸び率とを比較する比較工程と、を含み、前記配置決定工程では、比較した前記第1伸び率と前記第2伸び率のうち、前記伸び率が高い方向と前記主走査方向とが合致するように、前記記録媒体に対する前記画像の配置を決定することを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、成形物の第1方向の伸び率と第2方向の伸び率が算出され、第1伸び率と第2伸び率とが比較されて、画像の配置が決定される。このため、作業の迅速化が図れるとともに、人為的ミスを低減することができる。
【0018】
[適用例7]上記適用例にかかる成形物の製造方法において、前記比較工程では、前記第1伸び率の最大値と前記第2伸び率の最大値とを比較し、前記配置決定工程では、比較した前記第1伸び率の最大値と前記第2伸び率の最大値のうち、前記伸び率が高い方向と前記主走査方向とが合致するように、前記記録媒体に対する前記画像の配置を決定することを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、伸び率の最大値に基づいて適した描画の配置を決定することができる。
【0020】
[適用例8]上記適用例にかかる成形物の製造方法において、前記比較工程では、前記第1伸び率の平均値と前記第2伸び率の平均値とを比較し、前記配置決定工程では、比較した前記第1伸び率の平均値と前記第2伸び率の平均値うち、前記伸び率が高い方向と前記主走査方向とが合致するように、前記記録媒体に対する前記画像の配置を決定することを特徴とする。
【0021】
この構成によれば、伸び率の平均値に基づいて適した描画の配置を決定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】記録装置の構成を示し、(a)は平面図、(b)は側面図。
【図2】記録ヘッドの構成を示し、(a)は平面図、(b)は斜視図。
【図3】画像状態と成形状態との関係を示す説明図。
【図4】成形物の例を示す斜視図。
【図5】画像の配置方法を示す説明図。
【図6】成形物の製造方法を示すフローチャート。
【図7】成形工程を示す工程図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の各図においては、各部材を認識可能な程度の大きさにするため、各部材の尺度を実際とは異ならせている。
【0024】
まず、記録装置の構成について説明する。図1は、記録装置の構成を示し、同図(a)は、平面図であり、同図(b)は、側面図である。記録装置1は、Y軸方向を主走査方向として記録ヘッド51(図2参照)を移動させ、Y軸方向(主走査方向)と交差するX軸方向を副走査方向として記録媒体としての薄いフィルム状の枚葉のワークWを移動させながら、描画データに基づいて、ワークWに向けて記録ヘッド51から機能液を液滴として吐出し、ワークW上に画像を形成するものである。本実施形態の機能液は、例えば、紫外線硬化型のインク(UVインク)である。なお、以下の説明では、X軸方向およびY軸方向に直交する方向をZ軸方向と規定し、さらにワークWと平行な平面内における回転方向をθ方向と規定する。
【0025】
図1に示すように、記録装置1は、基台10上に配設され、副走査方向となるX軸方向に延在して、ワークWをX軸方向に移動させるX軸テーブル2と、X軸テーブル2を跨ぐように架け渡され、主走査方向となるY軸方向に延在するY軸テーブル3と、複数の記録ヘッド51等を搭載したキャリッジユニット4と、各記録ヘッド51にインクを供給するインク供給ユニット(図示省略)と、記録装置1全体を統括制御する制御装置6等を備えている。この記録装置1では、X軸テーブル2およびY軸テーブル3が交わる部分において、X軸テーブル2とY軸テーブル3とを同期駆動して、インク供給ユニットから供給された複数色のインクを各記録ヘッド51から吐出させ、ワークWに所定の画像(描画パターン)を描画する。また、各記録ヘッド51は、吸引やワイピング等を実施する保守装置(図示省略)により、その機能維持や機能回復等を図るように構成されている。
【0026】
X軸テーブル2は、ワークWを吸着セットすると共に、θ軸方向に補正可能な機構を有するセットテーブル21と、X軸方向に延在する一対のX軸ガイドレール22と、セットテーブル21をX軸ガイドレール22に沿ってスライド自在に支持するモーター駆動のX軸スライダー(図示省略)と、を有している。X軸テーブル2は、キャリッジユニット4の往動(または復動)時には停止し、次の復動(または往動)までに、ワークWを、X軸方向における上流側から下流側へと所定の描画幅分だけ間欠送り(改行送り)する。なお、その駆動系は、リニアモーターや、モーターおよびボールネジ機構等で構成することが好ましい。
【0027】
Y軸テーブル3は、X軸テーブル2をY軸方向に跨ぐように架け渡された一対のY軸ガイドレール31と、キャリッジユニット4を吊設したブリッジプレート32と、ブリッジプレート32をY軸方向にスライド自在に支持するモーター駆動のY軸スライダー(図示省略)と、を有している。Y軸テーブル3は、キャリッジユニット4を介して描画時に各記録ヘッド51をY軸方向に往復動させるほか、記録ヘッド51を保守装置に臨ませる。なお、その駆動系は、リニアモーター、モーターおよびボールネジ機構や、ベルトおよびプーリーによる機構等で構成することが好ましい。
【0028】
キャリッジユニット4は、ブリッジプレート32に垂設したキャリッジ本体41と、キャリッジ本体41に垂設されたヘッドユニット42と、を備えている。また、ヘッドユニット42は、回転昇降調整機構43を介して、θ回転自在に、かつ、Z軸方向に調整移動可能に、キャリッジ本体41に設けられている。
【0029】
図2(a)に示すように、ヘッドユニット42には、ヘッドプレート50に複数の記録ヘッド51が組み付けられている。本実施形態のヘッドユニット42では、ヘッドプレート50に記録ヘッド51がX軸方向に3個ずつ2分して組み付けられている。Y軸方向に並んだ3個の記録ヘッド51は、それぞれ階段状に位置ずれして配設されている。すなわち、Y軸方向に記録ヘッド51同士が重ならないように配設されている。これにより、ヘッドユニット42をY軸方向に移動させながら各記録ヘッド51からワークW上に吐出されたインク滴は、X軸方向に等間隔で一直線上に着弾することとなる。なお、ヘッドユニット42に搭載される記録ヘッド51の数は任意である。
【0030】
また、ヘッドプレート50のY軸方向両端部には、紫外線照射装置45がそれぞれ搭載されている。各紫外線照射装置45は、ワークW上に吐出されX軸方向に一直線上に着弾した全てのインク滴に対して紫外線を照射可能な長さを有している。
【0031】
図2(b)に示すように、記録ヘッド51は、吐出ノズルからインク滴を吐出させるものである。本実施形態の記録ヘッド51は、いわゆる2連のものであり、2つの接続針55を有するインク導入部52と、インク導入部52の側方に連なる2連のヘッド基板53と、ヘッド基板53の下方に連なる2連のポンプ部54と、ポンプ部54に連なるノズルプレート58と、を備えている。各接続針55には、インク供給ユニットに連通する供給チューブ(図示省略)が接続されており、この供給チューブを介して記録ヘッド51にインクが供給される。ノズルプレート58のノズル面NFには、複数の吐出ノズル56が等間隔で並んで構成された2本のノズル列NLが、相互に半ノズルピッチずれた状態で、かつ、平行に列設されている。ポンプ部54には、各吐出ノズル56毎に対応するピエゾ圧電素子が構成され、ヘッド基板53に接続された制御ケーブルを介して、ピエゾ圧電素子に電圧が印加されると吐出ノズル56からインク滴が吐出される。
【0032】
本実施形態で使用するインクは、例えば、紫外線硬化型のインクであり、ヘッドユニット42に搭載した一対の紫外線照射装置45が点灯し、ワークWに着弾した紫外線硬化型のインクを硬化・定着させる。なお、インクは、紫外線硬化型のものに限られず、赤外線硬化型や可視光硬化型等のインクでもよい。この場合、硬化に適した光源をヘッドユニット42に搭載する。
【0033】
ところで、上述したように、記録装置1において、ワークWを、X軸方向における上流側から下流側へと所定の描画幅分だけ間欠送り(改行送り)させながら、画像を描画する際、ワークWの搬送誤差が生じる場合がある。例えば、図3(a)に示すように、記録ヘッド51(ヘッドユニット42)をY軸方向(主走査方向)に第1走査させて第1画像F1を描画させた後、X軸方向(副走査方向)にワークWを搬送させ、記録ヘッド51(ヘッドユニット42)をY軸方向(主走査方向)に第2走査させて第2画像F2を描画させる場合において、X軸方向にワークWを間欠送りする際、所定の送り量よりも大きく搬送された場合は、図3(a)に示すように、第1画像F1と第2画像F2との間にスジ(隙間)NG1が発生する。換言すれば、記録ヘッド51の主走査方向となるY軸方向にスジNG1が発生する。
【0034】
また、X軸方向にワークWを間欠送りする際、所定の送り量よりも小さく搬送された場合は、図3(b)に示すように、第1画像F1と第2画像F2とが重なりあったスジ(色スジ)NG2が発生する。スジNG2も記録ヘッド51が走査されるY軸方向に発生する。
【0035】
次に、上記のようにスジNG1,NG2が発生した状態のワークWを成形する場合を考える。まず、ワークWがX軸方向に引き伸ばされた場合には、スジNG1,NG2の領域がX軸方向に広がる方向に伸ばされるため、スジNG1,NG2の領域がさらに広がり、成形後の成形物にスジむらが目立つ結果となる。
【0036】
一方、ワークWがY軸方向(主走査方向)に伸ばした場合には、スジNG1,NG2の領域がY軸方向に広がるが、スジNG1,NG2の領域は広がらず、成形後の成形物にスジむらが目立たない、或いはスジむらとして認識されない結果となる。
【0037】
従って、ワークWを成形する場合、成形時におけるワークWの伸び具合を考慮して、予めワークWに描画する画像の配置を決定する必要がある。
【0038】
そこで、例えば、図4に示す成形物Aを形成する場合における記録装置の制御方法について説明する。成形物Aは、図4に示すように、平面視において、長方形の第1面Aaと、側面視において、半円形状の第2面Abを有するものである。
【0039】
本実施形態の記録装置1では、画像が形成されたワークWが形成された成形物Aの第1方向及び第2方向における伸び率に基づいて、伸び率が高い方向とY軸方向(主走査方向)とが合致するように、ワークWに対する画像の配置を決定する配置決定手段と、決定された画像の配置に基づいて、描画データを生成する描画データ生成手段と、を備えている。なお、本実施形態の配置決定手段及び描画データ生成手段は、制御装置6に含まれている。
【0040】
さらに、制御装置6は、成形物Aの第1方向及び第2方向の伸び率を算出する算出手段と、算出された伸び率に基づいて、第1方向の第1伸び率と第2方向の第2伸び率とを比較する比較手段と、を備え、配置決定手段では、比較した第1伸び率と第2伸び率のうち、伸び率が高い方向とY軸方向(主走査方向)とが合致するように、ワークWに対する画像の配置を決定する。この場合、比較手段では、第1伸び率の最大値と第2伸び率の最大値とを比較し、配置決定手段では、比較した第1伸び率の最大値と第2伸び率の最大値のうち、伸び率が高い方向とY軸方向(主走査方向)とが合致するように、ワークWに対する画像の配置を決定する。
【0041】
具体的には、まず、3次元計測装置等によって成形物Aの3次元データを特定させ、当該3次元データを参照できる状態とする。すなわち、図4に示す3次元データが特定される。そして、3次元データに対して、第1方向と第1方向に交差する第2方向が規定される。本実施形態では、図4に示すように、平面視において、成形物Aの短辺方向を第1方向とし、長辺方向を第2方向として規定した。3次元データの特定の方法は、オペレーターなどにより、ハードディスクなどの副記憶装置に格納されている特定のファイルを指示したり、ネットワークに接続されたサーバーやクライアントコンピューターなどの特定のファイルを指定することで実現することができる。また、成形物の製造工程管理ファイルを別途設けることで、工程処理中にオペレーターの入力を要求して印刷が中断することを防ぐこともできる。この場合、製造工程管理ファイルを参照し、3次元データを特定して参照可能な状態にする。
【0042】
次いで、特定された3次元データに基づいて、3次元データにおける第1方向の第1伸び率と第2方向の第2伸び率を算出する。算出方法としては、例えば、伸び率は場所によって変化するため、画像を細かいマトリクス状に分割し、各マトリクスのX方向およびY方向の一辺全てを対象とする。なお、3D形状データのフォーマットはDXF、3DS、OBJなどがあるが、使用するフォーマットに合わせた解釈系を備える。
【0043】
次いで、第1伸び率と第2伸び率とを比較する。比較方法は、例えば、第1方向における伸び率が最大値となる第1伸び率と第2方向における伸び率が最大値となる第2伸び率とを比較する。本実施形態では、図4に示すように、成形物Aの第1面Aaよりも第2面Abの方が伸び率が高い。すなわち、第2方向における第2伸び率よりも第1方向における第1伸び率の方が高い。
【0044】
次いで、成形物Aの基となる画像のワークWにおける配置を決定する。本実施形態では、比較した第1伸び率と第2伸び率のうち、伸び率が高い方向である第1方向とY軸方向(主走査方向)とが合致するように、ワークWに対する画像Fの配置を決定する。すなわち、図5(a)に示すように、記録ヘッド51が走査するY軸方向(主走査方向)と第1方向に対応する画像Fの短辺方向とを合致させる。なお、図示していないが、指示するための手段は、マウス、キーボード、トラックボール、タッチパネルなどを用いることができる。また、指示が省略される場合は、デフォルトでテーブル2のX軸方向と画像データのX軸方向を揃え、配置を終了とさせてもよい。
【0045】
なお、図5(b)には、伸び率が高い方向である第1方向とX軸方向(副走査方向)とが合致するように、ワークWに対する画像Fを配置した例が示されている。この場合、伸び率が高い方向が主走査方向と交差する方向に配置されるので、成形した際に、スジNG1,NG2が広がりスジむらが目立ってしまう。
【0046】
次いで、画像Fの配置に基づいて、描画データを生成する。具体的には、インクに対応した色の分割をし、各記録ヘッド51および各吐出ノズル56へのデータ割り当て等を行い、描画データを生成させる。
【0047】
次いで、描画データに基づいて、ワークW上に画像Fを描画させる。具体的には、まず、X軸テーブル2を駆動し、セットテーブル21を移動させ、ワークWを描画可能位置に移動させる。その後、制御装置6は、予め入力され記憶された画像データに基づき、キャリッジユニット4をY軸方向に往動(画像形成走査)させながら、各記録ヘッド51からインクを吐出させ、ワークW上にインク滴を着弾させる。この際、移動方向に対し下流側の紫外線照射装置45を点灯させた状態でキャリッジユニット4を往動させる。これにより、ワークW上には、着弾した各インク滴に紫外線が照射され、各インク滴が硬化した状態の1ライン目の画像F’が形成される。次いで、X軸テーブル2を駆動してセットテーブル21を、下流へと移動(改行送り)させる。そして、キャリッジユニット4をY軸方向に復動させながら、2ライン目の画像F’の描画を行う。以降、セットテーブル21の改行送りと、キャリッジユニット4の往復移動と、を繰り返し、セットテーブル21上に吸着保持されたワークWの描画可能領域(セットテーブル21上に吸着された範囲)に対し、画像データに基づいた描画(印刷処理)を行う。これにより、図5(a)に示すように、ワークW上に画像Fが形成される。
【0048】
次に、成形物の製造方法について説明する。図6は、成形物の製造方法を示すフローチャートである。本実施形態の成形物の製造方法では、Y軸方向(主走査方向)に記録ヘッド51を移動させ、Y軸方向と交差するX軸方向(副走査方向)に記録媒体としてのワークWを移動させながら、描画データに基づいて、ワークWに向けて機能液を液滴として塗布して画像を形成する画像形成工程と、画像が形成されたワークWを成形する成形工程と、画像形成工程の前に、記録媒体からなる成形物の第1方向及び第2方向における伸び率に基づいて、伸び率が高い方向をY軸方向(主走査方向)に合わせ、ワークWに対して描画する画像の配置を決定する配置決定工程と、決定された画像の配置に基づいて、描画データを生成する描画データ生成工程と、を含むものである。
【0049】
さらに、配置決定工程の前に、成形物の第1方向及び第2方向の伸び率を算出する算出工程と、算出された伸び率に基づいて、第1方向の第1伸び率と第2方向の第2伸び率とを比較する比較工程と、を含み、配置決定工程では、比較した第1伸び率と第2伸び率のうち、伸び率が高い方向とY軸方向(主走査方向)とが合致するように、ワークWに対する画像の配置を決定するものである。この場合、比較工程では、第1伸び率の最大値と第2伸び率の最大値とを比較し、配置決定工程では、比較した第1伸び率の最大値と第2伸び率の最大値のうち、伸び率が高い方向とY軸方向(主走査方向)とが合致するように、ワークWに対する画像の配置を決定する。なお、本実施形態では、例えば、図4に示す成形物Aを製造する製造方法について説明する。成形物Aは、図4に示すように、平面視において、長方形の第1面Aaと、側面視において、半円形状の第2面Abを有するものである。以下、具体的に説明する。
【0050】
まず、図6に示すように、算出工程S1では、成形物Aの3次元データにおける第1方向の第1伸び率と第2方向の第2伸び率を算出する。具体的には、まず、3次元計測装置等によって成形物Aの3次元データを特定させ、当該3次元データを参照できる状態とする。すなわち、図4に示す3次元データが特定される。そして、3次元データに対して、第1方向と第1方向に交差する第2方向が規定される。本実施形態では、図4に示すように、平面視において、成形物Aの短辺方向を第1方向とし、長辺方向を第2方向として規定した。3次元データの特定の方法は、オペレーターなどにより、ハードディスクなどの副記憶装置に格納されている特定のファイルを指示したり、ネットワークに接続されたサーバーやクライアントコンピューターなどの特定のファイルを指定することで実現することができる。また、成形物の製造工程管理ファイルを別途設けることで、工程処理中にオペレーターの入力を要求して印刷が中断することを防ぐこともできる。この場合、製造工程管理ファイルを参照し、3次元データを特定して参照可能な状態にする。そして、特定された3次元データに基づいて、3次元データにおける第1方向の第1伸び率と第2方向の第2伸び率を算出する。算出方法としては、例えば、伸び率は場所によって変化するため、画像を細かいマトリクス状に分割し、各マトリクスのX方向およびY方向の一辺全てを対象とする。なお、3D形状データのフォーマットはDXF、3DS、OBJなどがあるが、使用するフォーマットに合わせた解釈系を備える。
【0051】
次いで、伸び率比較工程S2では、第1方向の第1伸び率と第2方向の第2伸び率とを比較する。比較方法は、例えば、第1方向における伸び率が最大値となる第1伸び率と第2方向における伸び率が最大値となる第2伸び率とを比較する。本実施形態では、図4に示すように、成形物Aの第1面Aaよりも第2面Abの方が伸び率が高い。すなわち、Y方向における第1伸び率よりもX方向における第2伸び率の方が高い。
【0052】
次いで、配置決定工程S3では、成形物Aの基となる画像のワークWにおける配置を決定する。本実施形態では、比較した第1伸び率と第2伸び率のうち、伸び率が高い方向である第1方向とY軸方向(主走査方向)とが合致するように、ワークWに対する画像Fの配置を決定する。すなわち、図5(a)に示すように、記録ヘッド51が走査するY軸方向(主走査方向)と第1方向に対応する画像Fの短辺方向とを合致させる。なお、図示していないが、指示するための手段は、マウス、キーボード、トラックボール、タッチパネルなどを用いることができる。また、指示が省略される場合は、デフォルトでテーブル2のX軸方向と画像データのX軸方向を揃え、配置を終了とさせてもよい。
【0053】
次いで、描画データ生成工程S4では、画像Fの配置に基づいて、描画データを生成する。具体的には、インクに対応した色の分割をし、各記録ヘッド51および各吐出ノズル56へのデータ割り当て等を行い、描画データを生成させる。
【0054】
次いで、画像形成(描画)工程S5では、描画データに基づいて、ワークW上に画像を描画する。具体的には、まず、X軸テーブル2を駆動し、セットテーブル21を移動させ、ワークWを描画可能位置に移動させる。その後、制御装置6は、予め入力され記憶された画像データに基づき、キャリッジユニット4をY軸方向に往動(画像形成走査)させながら、各記録ヘッド51からインクを吐出させ、ワークW上にインク滴を着弾させる。この際、移動方向に対し下流側の紫外線照射装置45を点灯させた状態でキャリッジユニット4を往動させる。これにより、ワークW上には、着弾した各インク滴に紫外線が照射され、各インク滴が硬化した状態の1ライン目の画像F’が形成される。次いで、X軸テーブル2を駆動してセットテーブル21を、下流へと移動(改行送り)させる。そして、キャリッジユニット4をY軸方向に復動させながら、2ライン目の画像F’の描画を行う。以降、セットテーブル21の改行送りと、キャリッジユニット4の往復移動と、を繰り返し、セットテーブル21上に吸着保持されたワークWの描画可能領域(セットテーブル21上に吸着された範囲)に対し、画像データに基づいた描画(印刷処理)を行う。これにより、図5(a)に示すように、ワークW上に画像Fが形成される。
【0055】
次いで、成形工程S6では、ワークWを形成する。具体的には、元は平板状であったワークWを、図4に示した形状、すなわち厚みのある円盤を円弧状に分断した一片が平面からZ軸方向へ突き出たような形状、に成形する。成形工程S6では、図7に示すように、まず、画像Fが描画されたワークWを加熱室(図示せず)に移動させ、加熱手段であるヒーターHにより加熱する(図7(a)参照)。加熱温度はワークWの材質によるが、ポリカーボネイトの場合は200〜250℃である。その後、ワークWが変形可能な温度まで達したところで、予め設置された成形型Mの上方に移動する(図7(b)参照)。次いで、成形型MでワークWを押し付ける。これにより、押し付けられたワークWは、成形型Mの表面に沿って形作られる(図7(c)参照)。この際、ワークWと成形型Mの密着性を向上させるために、予め成形型Mに穴を開けておき、ワークWと成形型Mの密着によりできた空間から空気を吸い出す、いわゆる真空成形方式としてもよい。
【0056】
次に、ワークWを低温気体または水等で冷却した後に、成形型Mから剥離する(図7(d)参照)。真空成形方式では強制冷却を行わずに、成形型Mに開けられた穴に空気を送り込んで剥離させることもある。なお、成形型Mの材質は成形に適しているものであれば特に限定されるものではないが、一般的には、木型や金属型、特にアルミニウム製の型がよく使用されている。
【0057】
次いで、ワークWを、切断機Cにより所定の面積や形状に切り取る(図7(e)参照)。以上の工程を経ることにより、成形物Aが形成される(図7(f)参照)。
【0058】
以上、上記実施形態によれば、以下に示す効果がある。
【0059】
(1)成形物Aにおける第1方向と第2方向のそれぞれの伸び率を取得し、伸び率が高い方向と記録ヘッド51が走査する主走査方向とが合致するように、伸び率が高い方向に対応する画像Fの方向を主走査方向に合わせて配置した。そして、描画データを生成し、描画データに基づいて画像Fを形成した。これにより、ワークWを成形した際に、伸び率が高い方向では、ワークWが引き伸ばされても、ワークWの搬送誤差等によるスジNG1,NG2等が表れにくいため、スジむら等が目立たない、或いはスジむらとして認識されない描画を行うことができる。また、スジむら等が目立たない、或いはスジむらとして認識されない成形物Aを形成することができる。
【0060】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されず、上述した実施形態に種々の変更や改良などを加えることが可能である。変形例を以下に述べる。
【0061】
(変形例1)上記実施形態では、第1伸び率と第2伸び率との比較において、第1方向における伸び率が最大値となる第1伸び率と第2方向における伸び率が最大値となる第2伸び率とを比較したが、これに限定されない。例えば、第1伸び率の平均値と第2伸び率の平均値とを比較してもよい。このようにすれば、伸び率の平均値に基づいて適した描画の配置を決定することができる。
【符号の説明】
【0062】
1…記録装置、6…制御装置、51…記録ヘッド、W…記録媒体としてのワーク、F…画像。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主走査方向に記録ヘッドを移動させ、前記主走査方向と交差する副走査方向に記録媒体を移動させながら、描画データに基づいて、前記記録媒体に向けて前記記録ヘッドから機能液を液滴として吐出し、前記記録媒体上に画像を形成する記録装置であって、
前記画像が形成された前記記録媒体が成形された成形物の第1方向及び第2方向における伸び率に基づいて、前記第1方向及び前記第2方向のうち、前記伸び率が高い方向と前記主走査方向とが合致するように、前記記録媒体に対する前記画像の配置を決定する配置決定手段と、
決定された前記画像の配置に基づいて、前記描画データを生成する描画データ生成手段と、を備えたことを特徴とする記録装置。
【請求項2】
請求項1に記載の記録装置において、
前記成形物の前記第1方向及び前記第2方向の前記伸び率を算出する算出手段と、
算出された前記伸び率に基づいて、前記第1方向の第1伸び率と前記第2方向の第2伸び率とを比較する比較手段と、を備え、
前記配置決定手段では、
比較した前記第1伸び率と前記第2伸び率のうち、前記伸び率が高い方向と前記主走査方向とが合致するように、前記記録媒体に対する前記画像の配置を決定することを特徴とする記録装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の記録装置において、
前記比較手段では、
前記第1伸び率の最大値と前記第2伸び率の最大値とを比較し、
前記配置決定手段では、
比較した前記第1伸び率の最大値と前記第2伸び率の最大値のうち、前記伸び率が高い方向と前記主走査方向とが合致するように、前記記録媒体に対する前記画像の配置を決定することを特徴とする記録装置。
【請求項4】
請求項1または2に記載の記録装置において、
前記比較手段では、
前記第1伸び率の平均値と前記第2伸び率の平均値とを比較し、
前記配置決定手段では、
比較した前記第1伸び率の平均値と前記第2伸び率の平均値うち、前記伸び率が高い方向と前記主走査方向とが合致するように、前記記録媒体に対する前記画像の配置を決定することを特徴とする記録装置。
【請求項5】
主走査方向に記録ヘッドを移動させ、前記主走査方向と交差する副走査方向に記録媒体を移動させながら、描画データに基づいて、前記記録媒体に向けて機能液を液滴として塗布して画像を形成する画像形成工程と、
前記画像が形成された前記記録媒体を成形する成形工程と、
前記画像形成工程の前に、
前記画像が形成された前記記録媒体が成形された成形物の前記第1方向及び前記第2方向における伸び率に基づいて、前記第1方向及び前記第2方向のうち、前記伸び率が高い方向を前記主走査方向に合わせ、前記記録媒体に対して描画する画像の配置を決定する配置決定工程と、
決定された前記画像の配置に基づいて、前記描画データを生成する描画データ生成工程と、を含むことを特徴とする成形物の製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載の成形物の製造方法において、
前記配置決定工程の前に、
前記成形物の前記第1方向及び前記第2方向の前記伸び率を算出する算出工程と、
算出された前記伸び率に基づいて、前記第1方向の第1伸び率と前記第2方向の第2伸び率とを比較する比較工程と、を含み、
前記配置決定工程では、
比較した前記第1伸び率と前記第2伸び率のうち、前記伸び率が高い方向と前記主走査方向とが合致するように、前記記録媒体に対する前記画像の配置を決定することを特徴とする成形物の製造方法。
【請求項7】
請求項5または6に記載の成形物の製造方法において、
前記比較工程では、
前記第1伸び率の最大値と前記第2伸び率の最大値とを比較し、
前記配置決定工程では、
比較した前記第1伸び率の最大値と前記第2伸び率の最大値のうち、前記伸び率が高い方向と前記主走査方向とが合致するように、前記記録媒体に対する前記画像の配置を決定することを特徴とする成形物の製造方法。
【請求項8】
請求項5または6に記載の成形物の製造方法において、
前記比較工程では、
前記第1伸び率の平均値と前記第2伸び率の平均値とを比較し、
前記配置決定工程では、
比較した前記第1伸び率の平均値と前記第2伸び率の平均値うち、前記伸び率が高い方向と前記主走査方向とが合致するように、前記記録媒体に対する前記画像の配置を決定することを特徴とする成形物の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−130829(P2012−130829A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−282749(P2010−282749)
【出願日】平成22年12月20日(2010.12.20)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】