説明

記録装置、記録制御装置、記録制御方法、プログラム

【課題】複数の記録チャンネル(記録部)を用いた複数の記録層への同時記録に関して、記録すべきデータが光記録媒体に対してその連続性を保って記録されるようにする。
【解決手段】記録すべきとされた一連のデータ全体を、光記録媒体の記録層数又は記録層の容量に基づき分割し、それら分割したデータを再生層順序に従って記録層ごとに振り分ける。これにより、上記一連のデータの連続性が損なわれないようにして記録層ごとにデータの振り分けを行うことができる。具体的には、例えば上記再生層順序が第1記録層から昇順に規定されている場合であれば、第1記録層に対しては上記一連のデータ中の最初の範囲のデータを振り分け、第2記録層にはその続きの範囲のデータを振り分け、第3記録層にはさらにその続きの範囲のデータを振り分ける・・・、といったように、記録すべき一連のデータをその連続性が損なわれないように記録層ごとに振り分けることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光記録媒体に対する記録を行う記録装置、記録制御装置、記録制御方法、及びプログラムに関するものであり、特に、記録層を複数有する光記録媒体における異なる記録層に対しそれぞれ独立して光照射を行って複数の記録層にデータを記録する複数の記録部を有する場合に適用して好適なものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0002】
【特許文献1】特開2000−187879号公報
【背景技術】
【0003】
例えば上記特許文献1では、記録層を複数有する光記録媒体について、複数の光学ヘッドを持つ記録装置を用いて複数の記録層に同時にデータを記録する手法が提案されている。
【0004】
複数の光学ヘッドにより複数の記録層に同時にデータを記録することができれば、その分、記録レートが向上し記録に要する時間を短縮化できる。例えば、或るコピー元としての記録媒体に記録されたデータを読み出して光記録媒体に対しコピーするといった場合において、上記コピー元の記録媒体からのデータ読出レートが個々の光学ヘッドによるデータ記録レートよりも高いものとなっているときは、上記の同時記録を行うことによって記録時間を短縮化できる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、上記特許文献1ではその詳細について触れられていないが、複数ヘッドを用いた同時記録を行うとしたときは、記録すべきデータをそれぞれの光学ヘッドに振り分けるということが行われる。具体的に、その手法としては、例えば以下のようなものが順当に考えられる。
すなわち、上記コピー元の記録媒体から読み出されるデータを順次バッファリングし、当該バッファリングしたデータからそれぞれの光学ヘッドに供給されるべきデータを順次振り分けていくというものである。
より具体的には、複数ヘッドを備えたドライブ装置が、ホスト側から転送されてくるデータをバッファリングし、そこから順次それぞれの光学ヘッドに供給すべきデータを振り分けて、各光学ヘッドにそれぞれの記録層に対する同時記録を実行させるというものである。
【0006】
しかしながら、このようにホスト側から転送されてくる記録データを或る程度の容量ごとに順次複数の光学ヘッドに振り分けていくという手法を採った場合には、図8に示されるようにして、各記録層において記録データの連続性を保つことができなくなってしまう。
このような事態は、特に記録すべきデータがビデオデータなどの時系列データであるときには、大きな問題となる。
【0007】
ここで、仮に、図8に示される形態で各記録層(図中では記録層A,B)に記録されたデータについて、記録時と同様に複数のヘッド(図中ではヘッドA及びヘッドB)を用いてそれらを同時に再生するものとすれば、それらのヘッドで読み出されたデータを繋ぎ合わせることによってデータの連続性を再現するということはできる。
しかしながら、再生装置としては、通常の1ヘッドのみの再生装置も存在する。このような通常の1ヘッド再生装置により図8のように記録されたデータをその連続性を保つようにして再生するとしたときは、頻繁に他層への層間ジャンプ動作が必要となり、非常に非効率な再生動作となってしまう。つまりこの結果として、例えば再生レートの向上が図られない等といった問題が生じることとなる。
【0008】
本発明はかかる問題点に鑑み為されたもので、複数の記録チャンネル(記録部)を用いた複数層への同時記録に関して、記録すべきデータが光記録媒体に対してその連続性を保って記録されるようにすることをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このために本発明では、記録装置として以下のように構成することとした。
すなわち、記録層を複数有する光記録媒体における異なる記録層に対しそれぞれ独立して光照射を行って複数の記録層にデータを記録する複数の記録部を備える。
また、上記光記録媒体に対して記録すべきとされた一連のデータ全体を、上記光記録媒体が有する記録層の数又は記録層の記録容量に基づき分割し、分割した各データを、上記光記録媒体について予め定められた再生層順序に従って記録層ごとに振り分けると共に、記録対象層として選択した複数の記録層のそれぞれに対して、上記振り分けたデータのうち該当するデータが上記複数の記録部によって同時に記録されるように制御を行う記録制御部を備えるようにした。
【0010】
また、本発明では記録制御装置として以下のように構成することとした。
つまり、本発明の記録制御装置は、記録層を複数有する光記録媒体における異なる記録層に対しそれぞれ独立して光照射を行って複数の記録層にデータを記録する複数の記録部を有する光記録媒体駆動装置に対して記録のための制御を行う記録制御装置であって、上記光記録媒体に対して記録すべきとされた一連のデータ全体を、上記光記録媒体が有する記録層の数又は記録層の記録容量に基づき分割し、分割した各データを、上記光記録媒体について予め定められた再生層順序に従って記録層ごとに振り分けると共に、記録対象層として選択した複数の記録層のそれぞれに対して、上記振り分けたデータのうち該当するデータが上記複数の記録部によって同時に記録されるように制御を行う記録制御部を備えるものである。
【0011】
また、本発明では、記録制御方法として以下のような方法を提案する。
すなわち、本発明の記録制御方法は、記録層を複数有する光記録媒体における異なる記録層に対しそれぞれ独立して光照射を行って複数の記録層にデータを記録する複数の記録部による記録動作についての制御を行う記録制御方法であって、上記光記録媒体に対して記録すべきとされた一連のデータ全体を、上記光記録媒体が有する記録層の数又は記録層の記録容量に基づき分割し、分割した各データを、上記光記録媒体について予め定められた再生層順序に従って記録層ごとに振り分けると共に、記録対象層として選択した複数の記録層のそれぞれに対して、上記振り分けたデータのうち該当するデータが上記複数の記録部によって同時に記録されるように制御を行うものである。
【0012】
また本発明では、記録層を複数有する光記録媒体における異なる記録層に対しそれぞれ独立して光照射を行って複数の記録層にデータを記録する複数の記録部による記録動作についての制御を行う情報処理装置において実行されるべきプログラムとして、以下のようなプログラムを提案する。
つまり、上記光記録媒体に対して記録すべきとされた一連のデータ全体を、上記光記録媒体が有する記録層の数又は記録層の記録容量に基づき分割し、分割した各データを、上記光記録媒体について予め定められた再生層順序に従って記録層ごとに振り分けると共に、記録対象層として選択した複数の記録層のそれぞれに対して、上記振り分けたデータのうち該当するデータが上記複数の記録部によって同時に記録されるように制御を行う記録制御処理
を上記情報処理装置に実行させるものである。
【0013】
上記のように本発明では、記録すべきとされた一連のデータ全体を、上記光記録媒体の記録層数又は記録層の容量に基づき分割し、それら分割したデータを再生層順序に従って記録層ごとに振り分けるものとしている。
これにより、上記一連のデータの連続性が損なわれないようにして、記録層ごとにデータの振り分けを行うことができる。具体的には、例えば上記再生層順序が第1記録層から昇順に規定されている場合であれば、第1記録層に対しては上記一連のデータ中の最初の範囲のデータを振り分け、第2記録層にはその続きの範囲のデータを振り分け、第3記録層にはさらにその続きの範囲のデータを振り分ける・・・、といったように、記録すべき一連のデータをその連続性が損なわれないように記録層ごとに振り分けることができる。
そして本発明では、このような振り分けを行った上で、記録対象層として選択した複数の記録層のそれぞれに対して、上記振り分けたデータのうち該当するデータが上記複数の記録部によって同時に記録されるようにしている。
この結果、本発明によれば、複数の記録部を用いた複数層に対する同時記録により記録時間短縮を図る場合において、記録データの連続性が損なわれないようにできる。
【発明の効果】
【0014】
上記のようにして本発明によれば、複数の記録部を用いた複数層に対する同時記録を行うことで記録時間の短縮化を図る場合において、データの連続性が損なわれない記録を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施の形態の記録装置の内部構成について説明するための図である。
【図2】実施の形態の記録装置が記録対象とする光記録媒体の断面構造を示した図である。
【図3】実施の形態としての同時記録手法について説明するための図である。
【図4】スキッピングによる交替処理について説明するための図である。
【図5】実施の形態の同時記録手法を実現するために実行されるべき具体的な処理の手順を示したフローチャートである。
【図6】記録すべき一連のデータの振り分け処理の具体的な処理内容を示したフローチャートである。
【図7】変形例としての記録装置の内部構成について説明するための図である。
【図8】従来の複数ヘッドを用いた同時記録手法の問題点について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、発明を実施するための形態(以下実施の形態とする)について説明していく。
なお、説明は以下の順序で行うものとする。

<1.記録装置及び光記録媒体について>
<2.実施の形態としての同時記録手法>
<3.処理手順>
<4.変形例>
【0017】
<1.記録装置及び光記録媒体について>

図1は、実施の形態としての記録装置の内部構成について説明するための図である。
実施の形態の記録装置は、光ディスクドライブ1、ホストコンピュータ100、及びストレージ部101を備える。
図1においては、実施の形態の記録装置が記録対象とする光ディスクDも併せて示している。
【0018】
ここで、先ずは図1に示される光ディスクDに関して、図2の断面図を参照して説明しておく。
光ディスクDは、例えばCD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、BD(Blu-ray Disc:登録商標)などの光ディスク記録媒体とされる。なお、光ディスク記録媒体とは、光の照射により情報の記録/再生が行われる光記録媒体のうち、円盤状のものを言う。
本例において、光ディスクDはBDの規格に準拠したものであり、レーザ光の波長λ=405nm程度、対物レンズの開口数NA=0.85程度の条件により情報の記録再生が行われる。
【0019】
図2に示されるように、光ディスクDは、記録層Lを複数有する。具体的に本例の光ディスクDは、第1記録層L0、第2記録層L1、第3記録層L2、第4記録層L3の計4つの記録層Lを有している。
光ディスクDには、記録装置側からのレーザ光が照射される面を下面としたとき、最下層となる位置にカバー層CVが形成されている。当該カバー層CVから上層側にかけて、図のようにそれぞれ所定間隔を空けて第1記録層L0、第2記録層L1、第3記録層L2、第4記録層L3が同順で形成されている。
【0020】
光ディスクDについては、予め各記録層Lについての再生順序が定められている。具体的にこの場合の光ディスクDの再生は、下層側から上層側にかけて順に(つまりL0→L1→L2→L3の順で)行われるべきものとして定められている。
ここで、以下の説明において、このように予め定められた再生を行うべき記録層の順序のことを「再生層順序」と称する。
【0021】
また本例の場合、光ディスクDについては、隣接する記録層L間でそれぞれ異なる記録再生方向が設定されているとする(いわゆるオポジットトラックパス)。
具体的に、第1記録層L0及び第3記録層L2では内周→外周、第2記録層L1及び第4記録層L3では外周→内周の記録再生方向が設定されているとする。
【0022】
図1に戻る。
図1において、光ディスクDは、光ディスクドライブ1に装填されると、図示は省略したターンテーブル上にセットされ、図中のスピンドルモータ(SPM)2によって回転駆動される。
本実施の形態において、光ディスクDの回転駆動方式としては、例えばCLV(線速度一定)方式が採用される。
【0023】
光ディスクドライブ1には、このように回転駆動される光ディスクDに対して記録を行うためのレーザ光を照射するための構成として、光学ピックアップ3が設けられている。本実施の形態の場合、この光学ピックアップ3は、図中の対物レンズOL−Aを介してレーザ光を照射する光学系と、図中の対物レンズOL−Bを介してレーザ光を照射する光学系との2つの光学系が独立して設けられている。
これらの光学系は、個々が備える対物レンズOL−A,OL−Bが図示するように光ディスクDの周方向(ディスク面内において上記半径方向と直交する方向)にずれた位置に配置されるようにして光学ピックアップ3内に形成される。
【0024】
光学ピックアップ3において、上記対物レンズOL−Aを有する光学系には、レーザ光の光源となるレーザダイオードや、光ディスクDからの反射光を受光するためのフォトディテクタが備えられると共に、上記レーザダイオードから出射したレーザ光を対物レンズOL−Aに導き且つ光ディスクDからの反射光を対物レンズOL−Aを介して上記フォトディテクタに対して導くための各種のレンズや光学素子が形成されている。また、対物レンズOL−Aをトラッキング方向(光ディスクDの半径方向)及びフォーカス方向(光ディスクDに接離する方向)に移動可能に保持する2軸アクチュエータも備えられる。
同様に、対物レンズOL−Bを有する光学系には、レーザ光の光源となるレーザダイオード、光ディスクDからの反射光を受光するフォトディテクタ、上記レーザダイオードから出射したレーザ光を対物レンズOL−Bに導き且つ光ディスクDからの反射光を対物レンズOL−Bを介して上記フォトディテクタに対して導くための各種のレンズや光学素子、及び対物レンズOL−Bをトラッキング方向及びフォーカス方向に移動可能に保持する2軸アクチュエータが備えられている。
【0025】
ここで、以下において、光ディスクDに対するレーザ光照射により記録再生を行う系(記録再生系)を、チャンネル(記録再生チャンネル)と称する。
具体的に、上記構成による光学ピックアップ3においては、対物レンズOL−Aを介してレーザ光照射を行うチャンネルと、対物レンズOL−Bを介してレーザ光照射を行うチャンネルとを有しているので、記録再生チャンネルとしては2チャンネルを有していることになる。以下、対物レンズOL−Aを介してレーザ光照射を行うチャンネルは「Ach」と、また対物レンズOL−Bを介してレーザ光照射を行うチャンネルは「Bch」と称する。なお、「ch」は「チャンネル」の略称である。
このとき、図1に示す光ディスクドライブ1のように、1つの光学ピックアップ3に2つのチャンネルを有する構成は、「1ピック2ch」とも呼ぶ。
【0026】
光学ピックアップ3は、図示するようにスライド移送部5によりスライド移送可能に保持されている。
スライド移送部5には、光学ピックアップ3を光ディスクDの半径方向にスライド移送可能に保持するメカ機構部と、当該メカ機構部を駆動するスライドモータとが備えられており、後述するAchドライブ制御部4−Aより出力される制御信号(スライドドライブ信号)に基づき上記スライドモータが駆動制御されることで、光学ピックアップ3が上記半径方向にスライド移送される。
【0027】
また、光ディスクドライブ1には、Ach、Bchの各chが独立して記録再生を行うことができるようにすべく、Achドライブ制御部4−A、Bchドライブ制御部4−Bとが設けられている。
これらドライブ制御部4は、それぞれ、対応するchの光学系に設けられたフォトディテクタからの受光信号に基づくサーボ制御系や再生信号処理系、記録データの変調処理等を行う記録信号処理系やレーザダイオードの発光駆動系、及びそれらに対する制御を行う例えばマイクロコンピュータ等による制御部など、各chごとに独立して記録再生を行うための構成を包括的に示したものである。
ここで本例の場合、これらドライブ制御部4−A、4−Bのそれぞれには、ディスク上のディフェクト(欠陥)を検出するディフェクト検出回路が設けられているとする。
【0028】
また本例の場合、2つのドライブ制御部4のうち、一方のAchドライブ制御部4−A側に対して、先に説明したスライド移送部5とスピンドルモータ2とを制御するための構成(スライドサーボ制御部とスピンドルサーボ制御部)が設けられている。
具体的に、上記スライドサーボ制御部は、Ach側で生成された(対物レンズOL−Aを介して得られた反射光に基づき生成された)トラッキングエラー信号の低域成分として得られるスライドエラー信号に基づくスライドドライブ信号(スライドサーボ信号)を生成し、該スライドドライブ信号に基づきスライド移送部5を制御することで、光学ピックアップ3のスライドサーボ制御を行う。
また上記スピンドルサーボ回路は、Ach側で生成された再生クロックを現在のスピンドルモータ2の回転速度情報として用いてスピンドルモータ2を制御することで、スピンドルモータ2を線速度一定により回転させる。
【0029】
また、光ディスクドライブ1には、Achドライブ制御部4−A、Bchドライブ制御部4−Bを統括的に制御するブリッジ制御部6が設けられる。
このブリッジ制御部6は、例えばROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、CPU(Central Processing Unit)を備えたマイクロコンピュータで構成され、例えば上記ROMに格納されたプログラムに従った処理を実行することで、光ディスクドライブ1外部に設けられたホストコンピュータ100から指示されたデータの再生、及びホストコンピュータ100側から転送されてくるデータの記録が行われるように、Achドライブ制御部4−A、Bchドライブ制御部4−Bに対する制御を行うようにされる。
なお、本実施の形態においてブリッジ制御部6が行う具体的な処理の内容については後に改めて説明する。
【0030】
ホストコンピュータ100は、ROM、RAM、CPUを備えて構成され、例えば上記ROMに格納されたプログラムに従った処理を実行することで記録装置の全体制御を行うようにされる。
図示するようにホストコンピュータ100に対しては、ストレージ部101が接続される。ストレージ部101は、例えばHDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)などの比較的大容量の記憶装置で構成され、ホストコンピュータ100の指示に基づき各種データの書込/読出を実行する。
なお本実施の形態の場合、ホストコンピュータ100は、後述するようにAch、Bchによる同時記録を行う場合において各chごとの記録すべきデータの分割や振り分けのための処理を実行するが、これについては改めて説明する。
【0031】
<2.実施の形態としての同時記録手法>

本実施の形態としても、図1で説明したようなAchとしての記録系とBchとしての記録系の双方を用いて、光ディスクDの異なる記録層Lに同時にデータを記録することで、高速な記録動作の実現を図る。
ここで、先に述べたように、このように複数ch(複数ヘッド)を用いて複数の記録層に同時記録を行うとしたときは、記録すべきデータをそれぞれのchに振り分けるということを行う必要があるが、従来において、そのための具体的な手法については特に提案されていなかった。
例えば、順当に考えられる手法としては、先の図8に示したようにドライブ側にてホスト側から転送されてくる記録データをバッファリングし、そこから順次それぞれのヘッド(ch)に供給されるべきデータを振り分けていくといった手法を挙げることができるが、このような手法によると、各記録層において記録データの連続性を保つことができなくなってしまうという問題が生じる。
【0032】
そこで本実施の形態では、複数chを用いた複数記録層への同時記録に関して、このようにデータの連続性が損なわれてしまうといった問題の解決を図るべく、以下のような手法を提案する。
【0033】
図3は、実施の形態としての同時記録手法について説明するための図である。
図3において、図3(a)は、光ディスクDの記録容量を、また図3(b)はL0〜L3の各記録層Lの記録容量をそれぞれ模式的に示している。
なお、ここで言う記録容量とは、ユーザデータ領域の記録容量であるとする。
【0034】
また図3(c)は、光ディスクDに記録すべきとされた一連のデータの容量を模式的に示している。
図3(a)(b)と比較して分かるように、この場合の記録すべきデータの容量は、光ディスクDの記録容量よりも小とされている。具体的に、この場合の記録すべきデータの容量は、記録層Lの容量換算でおよそ3.5程度の容量とされている。
【0035】
ここで、本実施の形態の場合、光ディスクDに対して記録すべきデータは、図1に示したストレージ部101に予め格納されているものとする。
例えばこの記録すべきデータとしては、ビデオデータ等の時系列データとされ、図1に示した記録装置は、このようにストレージ部101に格納された時系列データを、光ディスクDに対してアーカイブ用に記録(コピー)するものとする。
このとき、ストレージ部101に記録されるデータのうちからの光ディスクDに記録すべきデータの選択及びその記録指示は、例えばユーザ操作に基づき行われるとする。
【0036】
本実施の形態の場合、当該記録すべきデータについて複数chを用いた複数記録層への同時記録を行うとしたときは、図3(d)に示されるように、先ずは当該記録すべきデータを、光ディスクDが有する記録層Lの数に基づき分割する。具体的には、記録層Lの数だけ分割するものとし、従ってこの場合、図3(c)の記録すべきデータは、4つに分割されることになる。
【0037】
そして、このように記録すべきデータを分割した後、分割後のデータを、再生層順序に従って、それぞれの記録層Lに記録すべきデータとして振り分ける(割り振る)。
前述した通り、この場合の再生層順序は記録層L0→L1→L2→L3の順であるので、4分割したデータのそれぞれを、先頭側から順にそれぞれ記録層L0、記録層L1、記録層L2、記録層L3に振り分ける。
【0038】
このように記録すべきデータを分割し、分割後のデータを再生層順序に従って各記録層Lごとに振り分けた上で、複数chを用いた複数記録層への同時記録を行う。
本例の場合、光ディスクDはオポジットトラックパスが採用されるので、同時記録は、記録方向が同方向となる記録層Lの組(換言すれば、1つの記録層Lを隔てて隣接する記録層Lの組)ごとにそれぞれ実行する。具体的には、記録層L0・L2の組に対する同時記録と、記録層L1・L3の組に対する同時記録とをそれぞれ実行することになる(図3(e)、図3(f))。
【0039】
本例の場合、図3(e)に示す記録層L0・L2の組に対する同時記録は、例えば図3(d)で記録層L0に記録すべきデータとして振り分けたデータをAch側に供給し、記録層L2に記録すべきデータとして振り分けたデータをBch側に供給して行う。
具体的には、Achドライブ制御部4−AにおいてAch側で照射されるレーザ光が記録層L0に合焦するように対物レンズOL−Aについてのフォーカスサーボ制御を実行させた状態にて、上記記録層L0に記録すべきとして振り分けたデータをAchドライブ制御部4−Aに供給して記録させる。またこれと同時に、Bchドライブ制御部4−BにおいてBch側で照射されるレーザ光が記録層L2に合焦するように対物レンズOL−Bについてのフォーカスサーボ制御を実行させた状態にて、上記記録層L2に記録すべきとして振り分けたデータをBchドライブ制御部4−Bに供給して記録させる。
これにより、記録層L0に記録すべきとして振り分けたデータについては記録層L0に、記録層L2に記録すべきとして振り分けたデータについては記録層L2に、それぞれ同時に記録されるものとなる。
【0040】
また、図3(f)に示す記録層L1・L3の組に対する同時記録は、例えば図3(d)で記録層L1に記録すべきデータとして振り分けたデータをAch側に供給し、記録層L3に記録すべきデータとして振り分けたデータをBch側に供給して行うものとする。
具体的には、Achドライブ制御部4−AにおいてAch側で照射されるレーザ光が記録層L1に合焦するように対物レンズOL−Aについてのフォーカスサーボ制御を実行させた状態にて、上記記録層L1に記録すべきとして振り分けたデータをAchドライブ制御部4−Aに供給して記録させる。またこれと同時に、Bchドライブ制御部4−BにおいてBch側で照射されるレーザ光が記録層L3に合焦するように対物レンズOL−Bについてのフォーカスサーボ制御を実行させた状態にて、上記記録層L3に記録すべきとして振り分けたデータをBchドライブ制御部4−Bに供給して記録させる。
これにより、記録層L1に記録すべきとして振り分けたデータについては記録層L1に、記録層L3に記録すべきとして振り分けたデータについては記録層L3にそれぞれ同時に記録されるものとなる。
【0041】
上記により説明したような同時記録の手法とすることで、図3(c)に示す記録すべき一連のデータを、その連続性を保って光ディスクDに記録することができる。
【0042】
ここで、上記による説明では、記録すべき一連のデータについての分割に関しては、単に記録層Lの数に応じて分割することのみを言及したが、本例の場合、分割を行うにあたっては、次のような点も考慮するものとしている。
先ず1点目は、本例では記録中の交替処理としてスキッピング交替処理を行うものとする関係から、各記録層Lに記録すべきデータの容量は、記録層Lの記録容量よりも小となるようにするという点である。
換言すれば、この場合の分割は、各記録層Lにおいて図中に示すようなスキッピング交替を可能とするための空き容量が得られるようにして行う。
【0043】
なお確認のため、図4を参照して、ここで言うスキッピング交替処理について説明しておく。
図4を参照して分かるように、ここで言うスキッピング交替処理とは、記録中にディフェクトが検出された場合に、そのディフェクト区間についての記録を停止し、当該ディフェクト区間の通過後に、記録停止前までの記録データの続きのデータを記録するというものである。つまり端的に言えば、ディフェクト区間をスキッピングすることによる交替処理を指すものとなる。
具体的にこの場合のスキッピング交替処理は、ディフェクトが検出された場合に、当該ディフェクトが検出された欠陥クラスタ(クラスタ=記録最小単位)についての記録を停止し、当該欠陥クラスタに記録すべきであったデータ以降のデータの記録を、当該欠陥クラスタの通過後から再開するということで行う。
【0044】
この場合における分割は、このようなスキッピング交替処理を可能とするための空き容量(以下、スキッピング用空き容量と称する)が、各記録層Lにて確保できるようにして行う。具体的には、分割後の各データの容量が、少なくとも記録層Lの容量よりも小となるようにして分割を行う。より具体的には、この場合の分割は、分割後の各データの容量が「記録層Lの容量」−「スキッピング用空き容量」で表される容量以下となるようにして行えばよい。
【0045】
また、本例の場合、分割は、分割後の各データの容量が均等となるようにして行う。
【0046】
ここで、記録すべき一連のデータについて、これを単に記録層Lの数で均等に分割したのでは、上述のように分割後の各データの容量を「記録層Lの容量」−「スキッピング用空き容量」で表される容量以下となるように抑えることができない場合もあり得る。
具体的には、光ディスクDの記録容量をDtl、記録すべき一連のデータの容量をRtl、各記録層Lのスキッピング用空き容量の合計をSsumとしたときに、

Rtl>Dtl−Ssum ・・・[式1]

の条件が成立してしまう場合には、各記録層Lにスキッピング用空き容量を確保することができなくなってしまう。
【0047】
そこで本実施の形態では、上記[式1]の条件が成立するか否かについての判別を行い、該条件が成立してしまう場合には、エラー処理として、光ディスクDに対するデータ記録を実行しないようにする。
このことで、各記録層Lへのデータの均等分割と、各記録層Lのスキッピング用空き容量の確保とが常に両立されるようにできる。
【0048】
なお勿論、[式1]の条件が成立しないことが常に保証される場合には、上記の判別処理は不要である。
【0049】
ここで、仮に、各記録層Lへの振り分けデータの容量が不均等であると、その分、同時記録の完了までに要する時間が長くなってしまう。例えば、同時記録される各記録層Lに振り分けられるデータの容量の比率が「7:3」であるとすると、同時記録の完了までに要する時間は「7」となる。
これに対し、本例のように記録層Lごとに振り分けるデータ容量を均等にすれば、振り分けられるデータの容量の比率は「5:5」であり、従って同時記録の完了までに要する時間は「5」とできる。つまりこのことからも理解されるように、均等分割を行う本例によれば、同時記録に要する時間は最短とすることができる。
【0050】
<3.処理手順>

続いて、図5及び図6のフローチャートにより、上記により説明した実施の形態としての同時記録手法を実現するために実行されるべき具体的な処理の手順について説明する。
なお、図5において、「ホスト」として示す一連の処理は、図1に示したホストコンピュータ100が例えば自らが備えるROM等のメモリに格納されたプログラムに従って実行するものである。
また、「ドライブ」として示す一連の処理は、図1に示したブリッジ制御部6が同様に自らが備えるROM等のメモリに格納されたプログラムに従って実行するものである。
【0051】
ここで、図5に示す一連の処理が開始される時点においては、既に光ディスクドライブ1に光ディスクDが装填された状態にあるとする。また、ブリッジ制御部6は、ドライブ制御部4−A、4−Bの何れかにより、光ディスクDに記録されたディスク情報(ディスクの種類やディスクの容量、記録層Lの数など光ディスクDに予め記録されたディスク物理情報)を読み出させ、これを自らが備えるRAM等のメモリに保持している状態にあるとする。
【0052】
図5において、先ずホスト側(ホストコンピュータ100)は、図中のステップS101の処理により、記録開始指示が為されるまで待機する。
具体的に、当該ステップS101の処理は、先に述べたように例えばユーザ操作などによりストレージ部101に記録されたデータのうちから光ディスクDに対して記録すべきデータが選択されて、その記録が指示されるまで待機する処理となる。
【0053】
ステップS101において、記録開始指示があったとした場合は、ステップS102に進み、ドライブ側(ブリッジ制御部6)に対しディスク情報の要求を行う。
【0054】
ドライブ側では、図中のステップS201において、このようなホスト側からのディスク情報の要求があるまで待機するようにされる。
そして、ディスク情報の要求があった場合は、ステップS202に進み、ホスト側にディスク情報を送信する。
ディスク情報を送信した後は、図示するようにステップS203に進む。
【0055】
ホスト側では、ステップS103において、ドライブ側からのディスク情報の送信があるまで待機するようにされる。
そして、ディスク情報の送信があったとした場合には、ステップS104に進み、変数iの上限値iMAXを設定する。
ここで、変数iは、AchとBchとによる同時記録を行う記録層Lの組の別を識別するための変数であり、その上限値iMAXとは、光ディスクDが有する記録層Lの数(上記ディスク情報から求まる)と同時記録を行うch数とで定まる数となる。具体的には、記録層Lの数を、同時記録ch数で除算したものとなる。
本例の場合、記録層Lの数は4、同時記録ch数は2であることから、上限値iMAXは2を設定することになる。
【0056】
ステップS104において上限値iMAXを設定したら、ステップS105において、各層に記録すべきデータの振り分け処理を実行する。
ここで、当該振り分け処理としては、具体的には図6に示されるステップS1〜S6の処理を実行する。
【0057】
図6において、先ずステップS1では、スキッピング用空き容量の合計容量(Ssum)を計算する。各記録層Lにおけるスキッピング用空き容量は、予め所定の容量が設定されており、従って合計容量Ssumとしては当該所定の容量にディスク情報から特定される光ディスクDの記録層Lの数を乗算することで求める。
【0058】
ステップS1でスキッピング用空き容量の合計容量Ssumを計算した後は、ステップS2において、ディスクの容量(Dtl)と合計容量Ssumとに基づき、ディスクの有効総容量(Dav)を計算する。すなわち、ディスクの有効総容量Davとして、

Dav=Dtl−Ssum

を計算する。
【0059】
続くステップS3では、記録すべき一連のデータの容量(Rtl)を計算する。すなわち、ストレージ部101に記録されたデータのうちステップS101にて記録すべきとして指示された一連のデータについてのデータ容量を容量Rtlとして計算する。
【0060】
ステップS3で記録すべき一連のデータの容量Rtlを計算したら、ステップS4において、ディスクの有効総容量Davが記録すべき一連のデータの容量Rtl未満(Dav<Rtl)であるか否かを判別する。これは、先の[式1]の条件が成立するか否かを判別することに相当する。
ステップS4において、Dav<Rtlであるとして肯定結果が得られた場合は、図示するようにエラー処理を実行する。つまり、Dav<Rtlとなる場合には、光ディスクDに対するデータ記録を実行しないようにするものである。
先に述べたように、このようなエラー処理を設けることで、各記録層Lへのデータの均等分割と各記録層Lのスキッピング用空き容量の確保とが常に両立されるように図られる。
【0061】
一方、ステップS4において、Dav<Rtlでないとして否定結果が得られた場合は、ステップS5において、記録すべき一連のデータを層数に基づき均等分割する。具体的に本例の場合であれば、記録数Lの数=4であることより、上記一連のデータを4等分することになる。
【0062】
そして、続くステップS6において、分割した各データを再生層順序に従って各層に振り分ける。つまり本例の場合は、ステップS5の分割で得られた各データを、先頭側から順に記録層L0、記録層L1、記録層L2、記録層L3に振り分けることになる。
【0063】
説明を図5に戻す。
ステップS105の振り分け処理として、図6にて説明した各処理を実行した後は、ステップS106において、変数iを1に設定する(i←1)。
その上で、次のステップS107において、ドライブ側に対し、グループiの各層の記録データの転送を開始してそれらの同時記録を指示する。
ここで、前述したように変数i=1は同時記録を行う記録層Lの組の別を識別するための変数である。本例の場合、光ディスクDがオポジットトラックパスであることに対応して、変数i=1は記録層L0・L2の組、変数i=2は記録層L1・L3の組を表すものとなる。
ステップS107では、ドライブ側に対し、このように変数iにより特定される各記録層Lに関して、それらに記録すべきデータの転送を開始すると共に、それら記録すべきデータのそれら記録層Lに対する記録指示を行う。
【0064】
ドライブ側では、当該ステップS107によるホスト側からの記録指示(及びデータ転送)を、ステップS203において待機するようにされている。
そして、当該記録指示があった場合は、ステップS204において、指示された各層へのデータ記録を開始するための処理を実行する。
ここで、先の説明からも理解されるように、本例の場合、同時記録は、Ach側が同時記録対象の記録層Lのうち下層側の記録層L(以下L-lと表記)についての記録の担当し、Bch側が記録対象の記録層Lのうち上層側の記録層L(以下L-uと表記)の記録を担当するように定められている。
この点からステップS204においては、Achドライブ制御部4−AにてAch側で照射されるレーザ光が記録層L-l側に合焦するように対物レンズOL−Aについてのフォーカスサーボ制御を実行させた状態にて、当該記録層L-lに記録すべきとして転送されてくるデータの記録が、Ach側により開始されるようにAchドライブ制御部4−Aを制御する。またこれと共に、Bchドライブ制御部4−BにてBch側で照射されるレーザ光が記録層L-uに合焦するように対物レンズOL−Bについてのフォーカスサーボ制御を実行させた状態にて、当該記録層L-uに記録すべきとして転送されてくるデータの記録が、Bch側により開始されるようにBchドライブ制御部4−Bを制御する。
これにより、同時記録対象とされる各記録層L(グループiの各層)に対し、それぞれその記録層Lに記録すべきとされたデータが同時に記録されるものとなる。
【0065】
ステップS204によるデータ記録開始処理を実行した後は、ステップS205において、各層のデータ記録が終了したか否かを判別する。すなわち、Ach側による記録層L-lに対するデータ記録、Bch側による記録層L-uに対するデータ記録としての各層のデータ記録が終了したか否かを判別する。
ステップS205において、各層のデータ記録が終了していないとの否定結果が得られた場合は、ステップS206において、ディフェクトが発生したか否かの判別を行う。つまり、Achドライブ制御部4−A側、Bchドライブ制御部4−B側の何れかによりディフェクトが検出されたか否かを判別するものである。
当該ステップS206において、ディフェクトが発生していないとの否定結果が得られた場合は、ステップS205に戻るようにされる。
ここで、上記により説明したステップS205及びS206によっては、各層のデータ記録終了とディフェクトの発生とのうち、何れかを待機するループが形成されることになる。
【0066】
当該ループを形成するステップS205・S206の処理のうち、ステップS206においてディフェクトが発生したとして肯定結果が得られた場合は、ステップS207に進み、ホスト側に対してディフェクト発生通知を行う。当該ディフェクト発生通知を行った後は、ステップS208においてディフェクト発生側chの記録停止を指示した後、ステップS209に進む。
【0067】
一方、ステップS205において、各層のデータ記録が終了したとして肯定結果が得られた場合は、ステップS211に進みホスト側に対して記録終了通知を行った後、ステップS212に進む。
【0068】
ホスト側においては、ドライブ側からの上記記録終了通知(S211)、又は上記ディフェクト発生通知(S207)の何れか一方を、図中のステップS108・S109によるループ処理において待機するようにされている。
具体的にステップS108においては、ドライブ側からの記録終了通知の有無を判別するようにされ、当該終了通知がないとして否定結果が得られた場合はステップS109に進み、ディフェクト発生通知の有無を判別する。そして当該ステップS109においてディフェクト発生通知がないとして否定結果が得られた場合は、ステップS108に戻る。
【0069】
これらステップS108・S109のうち、ステップS109においてディフェクト発生通知があったとして肯定結果が得られた場合は、ステップS110に進み、ドライブ側に対して再開アドレス(クラスタ)の指定を行い、ステップS108に戻る。
なお、ステップS108において記録終了通知があったとして肯定結果が得られた場合については後述する。
【0070】
ドライブ側では、ステップS110による再開アドレスの指定をステップS209において待機するようにされている。そして当該ステップS209において再開アドレスの指定があった場合には、ステップS210において、指定アドレスからの記録を再開するための処理を実行する。すなわち、ステップS208にて記録を停止させたch側のデータ記録を、指定されたアドレスから再開させるものである。
ステップS208による記録再開処理を実行した後は、先のステップS205に戻る。
【0071】
上記により説明したドライブ側のステップS207〜S210の処理、及びホスト側のステップS110による再開アドレスの指定処理によって、複数層への同時記録動作中において、先に説明したスキッピング交替処理が実現されることになる。
【0072】
ホスト側において、先のステップS108にてドライブ側からの記録終了通知があったとして肯定結果が得られた場合は、ステップS111に進んで、変数iが上限値iMAXに達した(i=iMAX)か否かを判別する。
ステップS111において、i=iMAXではないとして否定結果が得られた場合は、ステップS112に進んで変数iをインクリメント(i←i+1)した後、ステップS107に戻る。これにより、同時記録対象の記録層Lの組のすべてについて記録が行われるようになっている。
【0073】
一方ステップS111において、i=iMAXであるとして肯定結果が得られた場合は、ステップS113においてドライブ側に処理完了通知を行った後、ステップS114に進む。
【0074】
ドライブ側では、上記ステップS111によるホスト側からの処理完了通知を、ステップS212において待機する。
そして当該ステップS212において、ホスト側からの処理完了通知がないとして否定結果が得られた場合は、ステップS203に戻る。すなわち、先のステップS211でホスト側に行った記録終了通知がグループi≠iMAXの各記録層Lについての記録終了通知であった場合には、新たなグループiの各記録層Lについての同時記録が行われるべく、ステップS203に戻るものである。
【0075】
そして、ステップS212においてホスト側からの処理完了通知があったとして肯定結果が得られた場合は、ステップS213において、ファイルシステム情報の記録処理を実行する。
ここで、ホスト側では、先のステップS113による処理完了通知を行った後のステップS114において、ファイルシステム情報の作成・記録指示を行う。つまり、ファイルシステム情報として、光ディスクD上のどの記録層Lのどのアドレスにデータが記録されているかを表す記録データ管理情報を作成し、その記録をドライブ側に指示するものである。
ドライブ側におけるステップS213の記録処理は、このようにホスト側にて生成されその記録を指示されたファイルシステム情報を、光ディスクDに対して記録させるための処理となる。なお、当該ファイルシステム情報の光ディスクDへの記録は、Ach側/Bch側の何れにより実行させてもよい。
【0076】
ドライブ側においては、当該ステップS213の記録処理の実行を以て図5に示す一連の処理が終了となる。
またホスト側においては、ステップS114の情報作成・記録指示処理の実行を以てこの図に示す一連の処理が終了となる。
【0077】
<4.変形例>

以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明としてはこれまでで説明した具体例に限定されるべきものではない。
例えばこれまでの説明では、同時記録を行うための構成として、いわゆる1ピック2chの構成のみを例示したが、例えば図7に示されるように、通常の1chによる光学ピックアップ3を2つ有する2ピック2chの構成とすることもできる。
具体的に、この場合の光ディスクドライブ10には、対物レンズOL−Aを有する光学系を備えた第1光学ピックアップ3−1と、対物レンズOL−Bを有する光学系を備える第2光学ピックアップ3−2とが設けられる。これら第1光学ピックアップ3−1と第2光学ピックアップ3−2は、装填された光ディスクDの中心を挟んでそれぞれが対向する位置関係となるようにして配置される。またこの場合は、スライド移送部5として、第1光学ピックアップ3−1をスライド移送するための第1スライド移送部5−1と、第2光学ピックアップ3−2をスライド移送するための第2スライド移送部5−2とが設けられる。
また光ディスクドライブ10には、ドライブ制御部4として、第1光学ピックアップ3−1(Ach側)を用いた記録再生を行うためのAchドライブ制御部4−A’と、第2光学ピックアップ3−2(Bch側)を用いた記録再生を行うためのBchドライブ制御部4−B’とが設けられる。この場合、Achドライブ制御部4−A’には第1スライド移送部5−1についての制御系が備えられ、Bchドライブ制御部4−B’には第2スライド移送部5−2についての制御系が備えられる。また、スピンドルモータ2についての制御系は、この場合はAchドライブ制御部4−A’に備えられているとする。
また光ディスクドライブ10には、ブリッジ制御部6’が設けられる。このブリッジ制御部6’は、Achドライブ制御部4−A’、Bchドライブ制御部4−B’を対象とした制御を行う点以外は、図1に示したブリッジ制御部6と同様となる。
【0078】
このように各chを別々の光学ピックアップ3に搭載する構成とした場合にも、複数の記録層Lに対する同時記録を行うことができ、従って本発明の同時記録手法を好適に適用することができる。
【0079】
また、これまでの説明では、記録すべき一連のデータを光ディスクDが有する記録層Lの数に基づき分割するにあたり、均等分割を行う場合を例示したが、分割を均等に行うことは必須ではない。
また、スキッピング用空き容量が確保されるようにするために、分割後の各データが各記録層Lの容量よりも小となるようにすることも要件としたが、これについても必須ではない。
本発明において、記録すべき一連のデータの分割は、当該記録すべき一連のデータ全体を、記録層の数(又は記録層Lの記録容量:この点については後述する)に基づき分割するものであればよい。
【0080】
また、これまでの説明では、記録装置が備えるch数が2つとされる場合を例示したが、ch数は3以上とすることもできる。
【0081】
またこれまでの説明では、記録装置が備える全てのchを使用して同時記録を行う場合のみを例示したが、このように全てのchを使用して同時記録を行うことは必須ではない。例えば記録層Lの数が6で同時記録可能なch数が4であるなど、記録層Lの数が記録装置の有するch数の倍数でない場合には、複数回の記録時における少なくとも何れかの記録時において、何れかのchを不使用とすることになる。
【0082】
また、これまでの説明では、光ディスクDとして4層ディスクを例示したが、複数記録層Lへの同時記録により記録時間の短縮化を図るにあたっては、例えば本例のようにオポジットトラックパスが採用される場合にあっては、少なくとも3層以上の記録層Lを有する光記録媒体が用いられればよい。オポジットトラックパスの場合、記録層Lが3層以上あれば、記録方向が同方向となる(つまり複数chを用いた同時記録ができる)記録層Lの組み合わせができるためである。
【0083】
或いは、オポジットトラックパスでなくパラレルトラックパス(各層で同じ記録再生方向が設定されるもの)が採用される場合には、隣接する2つの層に同時記録ができるので、少なくとも2層以上であればよい。
【0084】
ここで、パラレルトラックパスを採用する場合で記録層Lの数が3層以上である場合には、実施の形態で例示したようにデータを単純に記録層Lの数だけ分割してそれらを各記録層Lに振り分けるという手法を採るものとはせず、以下のような手法を採ることで、記録時間の短縮化が図られる場合がある。
すなわち、先ず、記録すべき一連のデータ全体の容量(Rtl)が、記録装置が有するch数(これをnとおく)と同数の記録層Lの総容量(Ltl×n)より小であるか否かを判別する。そしてこの判別の結果、Rtl<Ltl×2であるとの肯定結果が得られた場合は、その記録すべき一連のデータは1回の同時記録動作で完了できることになるので、上記一連のデータ全体を記録層Lの数に分割するのではなくn個に分割し、それらを再生層順序に従ってn個の記録層Lの個々に記録すべきデータとしてそれぞれ振り分け、1回の同時記録により上記一連のデータについての記録を完了するというものである。
ここで、オポジットトラックパスの場合は、上記のようにデータがn層分で収まるということを以て1回の同時記録でその記録を完了させようとしてしまうと、間に未記録の記録層Lが残されてしまうと共に、再生時には、1つ目の記録層Lを一旦再生した後に、内周側に戻って次の既記録の記録層Lの再生を開始しなければならなくなり、オポジットトラックパスの利点自体が損なわれてしまう。
これに対しパラレルトラックパスの場合は、各記録層Lで記録再生方向が同一であるので、上記のようにデータがn層分で収まる場合には1回の同時記録で記録を完了させるという手法を採用しても、そのような問題が生じることはない。
つまりパラレルトラックパスの場合、単純に記録層Lの数だけ分割しそれらを各記録層Lに振り分けるとする手法をそのまま適用したのでは、1度の同時記録が終了した後に新たな記録動作に移るための無駄な時間が生じてしまうところ、上記手法を採用すれば、当該無駄な時間を省略でき、その点で記録時間の短縮化が図られるものである。
なお確認のため述べておくと、ここで説明した分割手法は、記録すべき一連のデータ全体を、記録層Lの記録容量に基づいて分割する手法に該当するものである。具体的には、記録層Lの記録容量と記録装置が有するch数(記録部の数)とに基づき、記録すべき一連のデータ全体を分割するというものである。
【符号の説明】
【0085】
1,10 光ディスクドライブ、2 スピンドルモータ、3 光学ピックアップ、3−1 第1光学ビックアップ、3−2 第2光学ピックアップ、4−A,4−A’ Achドライブ制御部、4−B,4−B’ Bchドライブ制御部、5 スライド移送部、5−1 第1スライド移送部、5−2 第2スライド移送部、6,6’ ブリッジ制御部、100 ホストコンピュータ、101 ストレージ部、OL−A,OL−B 対物レンズ、D 光ディスク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録層を複数有する光記録媒体における異なる記録層に対しそれぞれ独立して光照射を行って複数の記録層にデータを記録する複数の記録部と、
上記光記録媒体に対して記録すべきとされた一連のデータ全体を、上記光記録媒体が有する記録層の数又は記録層の記録容量に基づき分割し、分割した各データを、上記光記録媒体について予め定められた再生層順序に従って記録層ごとに振り分けると共に、記録対象層として選択した複数の記録層のそれぞれに対して、上記振り分けたデータのうち該当するデータが上記複数の記録部によって同時に記録されるように制御を行う記録制御部と
を備える記録装置。
【請求項2】
上記記録制御部は、
上記分割後の各データの容量が個々の記録層の記録容量よりも小となるようにして上記一連のデータについての分割を行う
請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
上記記録制御部は、
上記分割後の各データの容量が均等となるように上記一連のデータについての分割を行う
請求項1に記載の記録装置。
【請求項4】
上記光記録媒体は、オポジットトラックパスが採用された光記録媒体とされ、且つ3層以上の記録層を有しており、
上記記録制御部は、
1つの記録層を隔てて隣接する各記録層を記録対象層として選択し、それらの各記録層に対して上記振り分けたデータのうち該当するデータが上記複数の記録部によって同時に記録されるように制御を行う
請求項1に記載の記録装置。
【請求項5】
上記光記録媒体は上記複数の記録層として4つの記録層を有し、
上記記録部として、2つの記録部を備えると共に、
上記記録制御部は、
上記光記録媒体に形成される4つの記録層を上記記録部からの光が入射する側から順に第1記録層、第2記録層、第3記録層、第4記録層としたとき、上記第1記録層と上記第3記録層とに対するデータの同時記録と、上記第2記録層と上記第4記録層とに対するデータの同時記録とがそれぞれ実行されるように制御を行う
請求項4に記載の記録装置。
【請求項6】
上記記録制御部は、
上記記録部によりデータを記録中の記録層においてディフェクトが検出された場合は、該当する記録部によるデータ記録を停止させ、そのディフェクト区間を通過した後に続きのデータが記録されるように制御を行う
請求項2に記載の記録装置。
【請求項7】
記録層を複数有する光記録媒体における異なる記録層に対しそれぞれ独立して光照射を行って複数の記録層にデータを記録する複数の記録部を有する光記録媒体駆動装置に対して記録のための制御を行う記録制御装置であって、
上記光記録媒体に対して記録すべきとされた一連のデータ全体を、上記光記録媒体が有する記録層の数又は記録層の記録容量に基づき分割し、分割した各データを、上記光記録媒体について予め定められた再生層順序に従って記録層ごとに振り分けると共に、記録対象層として選択した複数の記録層のそれぞれに対して、上記振り分けたデータのうち該当するデータが上記複数の記録部によって同時に記録されるように制御を行う記録制御部を備える
記録制御装置。
【請求項8】
記録層を複数有する光記録媒体における異なる記録層に対しそれぞれ独立して光照射を行って複数の記録層にデータを記録する複数の記録部による記録動作についての制御を行う記録制御方法であって、
上記光記録媒体に対して記録すべきとされた一連のデータ全体を、上記光記録媒体が有する記録層の数又は記録層の記録容量に基づき分割し、分割した各データを、上記光記録媒体について予め定められた再生層順序に従って記録層ごとに振り分けると共に、記録対象層として選択した複数の記録層のそれぞれに対して、上記振り分けたデータのうち該当するデータが上記複数の記録部によって同時に記録されるように制御を行う
記録制御方法。
【請求項9】
記録層を複数有する光記録媒体における異なる記録層に対しそれぞれ独立して光照射を行って複数の記録層にデータを記録する複数の記録部による記録動作についての制御を行う情報処理装置において実行されるべきプログラムであって、
上記光記録媒体に対して記録すべきとされた一連のデータ全体を、上記光記録媒体が有する記録層の数又は記録層の記録容量に基づき分割し、分割した各データを、上記光記録媒体について予め定められた再生層順序に従って記録層ごとに振り分けると共に、記録対象層として選択した複数の記録層のそれぞれに対して、上記振り分けたデータのうち該当するデータが上記複数の記録部によって同時に記録されるように制御を行う記録制御処理
を上記情報処理装置に実行させるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−18738(P2012−18738A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−156479(P2010−156479)
【出願日】平成22年7月9日(2010.7.9)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】