説明

記録装置および該装置の初期設定の判断方法

【課題】電源供給の中断の時間に応じて適切な初期設定を実行することにより、インクや時間を無駄に消費することなく、安定した吐出動作の維持が可能な記録装置および当該記録装置の初期設定の判断方法を提供する。
【解決手段】電源ON時において、装置内の機構の位置または姿勢の継続時間を、不揮発メモリ207およびバッテリータイマ208から取得し、得られた継続時間を予め用意された閾値と比較することによって、当該機構に対する初期設定の要否を判断する。これにより、インクや時間を無駄に消費することなく、電源ON時の初期設定を済ませることが出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録ヘッドの電源ON時の初期化処理に関する。詳しくは、停電時のような電源供給の中断から復活した際の、効率的な初期設定に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置では、安定した吐出動作を維持するため、記録ヘッドに対し周期的に或いは必要に応じてメンテナンス処理を行うのが一般である。上記メンテナンス処理には、ノズルから強制的にインクを吸引する吸引回復処理、記録とは無関係な吐出を行う予備吐出、ノズルの吐出口面を払拭するワイピング、不使用時の記録ヘッドからインクが蒸発するのを防ぐキャッピング、等が含まれる。
【0003】
通常、記録動作が終了した記録装置では、記録ヘッドの吐出口面をキャッピングしてから待機状態に入り、不使用時にはキャッピングが行われた状態で電源オフとなる。しかし、停電時や誤って電源コードが引き抜かれた場合には、キャッピングを施すことなく動作が中断されるので、その後電源が復活するまでの間、記録ヘッドからインクが蒸発するのを防ぐことが出来ない。この場合、正常な吐出動作を維持するためには、次の電源ON時において、吸引するインクの量や予備吐出回数を増やすなど、通常よりも大掛かりなメンテナンス処理が必要となる。但し、このような大掛かりなメンテナンス処理では、より多くのインクや時間が消費されてしまう。
【0004】
特許文献1には、停電等により動作中の記録装置が停止してしまった場合の、電源復活時のメンテナンス処理方法が開示されている。ここでは、記録装置の電源投入時に記録ヘッドがキャッピングされているか否かを検知し、検知結果に応じてメンテナンス処理でのインクの吸引量や予備吐出回数などを異ならせている。
【0005】
また、停電等が起きて記録装置の動作が中断した場合には、再び電源が投入された時点で人為的あるいは衝撃等によって装置内の各種機構の位置や姿勢が変更されている恐れがある。よって、このような場合に備えて、従来では電源ON時においてこれら機構の初期設定を行う必要が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平05−309834号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の方法では、電源投入時のキャッピングの有無だけに基づいてメンテナンス処理の規模を判断していたので、動作中断の時間がほんの僅かであっても、大掛かりなメンテナンス処理が行われてしまっていた。この場合、正常な吐出動作に影響を与えないほどの短時間な中断であっても、多量のインクが吸引されたり必要以上の予備吐出が行われたりして、多くのインクや時間が無駄に消費されてしまう。
【0008】
また、停電中に人為的あるいは衝撃等によって装置内の各種機構の位置や姿勢が変更される恐れがあるとしても、中断が短時間であれば、このような位置や姿勢の変更は極めて起こり難い。しかし、従来は短時間の中断であっても、不必要な初期設定のために多くの時間が費やされてしまっていた。
【0009】
本実施形態は上記問題点を解決するためになされたものである。よってその目的とするところは、電源供給の中断の時間に応じて適切な初期設定を実行することにより、インクや時間を無駄に消費することなく、安定した吐出動作の維持が可能な記録装置および初期設定の判断方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そのために本発明は、電源ON時と電源OFF時で位置または姿勢が異なる機構を備えた記録装置であって、前記機構の位置または姿勢、および前記位置または姿勢を変更した時刻を記憶する不揮発メモリと、バッテリーによって電力供給を受けるタイマ制御回路と、電源ON時において、前記不揮発メモリおよび前記タイマ制御回路から、前記不揮発メモリに格納された前記位置または姿勢の継続時間を取得し、該継続時間を前記位置または姿勢に応じて用意された所定の閾値と比較することによって、前記機構の初期設定の要否を判断する手段と、前記判断に応じて前記初期設定を実行する手段とを備えることを特徴とする。
【0011】
また、電源ON時と電源OFF時で位置または姿勢が異なる機構を備えた記録装置の前記機構に対する初期設定の判断方法であって、前記機構の位置または姿勢、および前記位置または姿勢を変更した時刻を不揮発メモリに記憶する工程と、バッテリーによって電力供給を受けるタイマ制御回路によって現在の時刻を取得する工程と、電源ON時において、前記不揮発メモリおよび前記タイマ制御回路から、前記不揮発メモリに格納された前記位置または姿勢の継続時間を取得し、該継続時間を前記位置または姿勢に応じて用意された所定の閾値と比較することによって、前記機構の初期設定の要否を判断する工程と、前記判断に応じて前記初期設定を実行する工程とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、インクや時間を無駄に消費することなく、電源ON時の各機構の初期設定を適切に実行することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】インクジェット記録装置の概略構成を説明するための斜視図である。
【図2】インクジェット記録装置の制御の構成を説明するためのブロック図である。
【図3】記録動作時にコントローラが実行する工程を説明するフローチャートである。
【図4】電源投入時のメンテナンス処理の工程を説明するフローチャートである。
【図5】電源OFF時の工程を説明するフローチャートである。
【図6】電源投入時のインク供給弁の初期化工程を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[実施例1]
図1は、本実施例で使用可能なインクジェット記録装置の概略構成を説明するための斜視図である。記録ヘッド1は、2本のガイドレール8に案内支持されて主走査方向に移動するキャリッジ2に搭載されており、記録媒体Sに向けてインクを吐出するタイミングはキャリッジ2の移動に同期して制御されている。記録ヘッド1による1回の記録走査が終了すると、給送ローラ3が回転し、記録ヘッド1の記録幅に応じた分だけ記録媒体Sが副走査方向に搬送される。このような記録ヘッド1による記録走査と、記録媒体の搬送動作とを交互に行うことによって、記録媒体に段階的に画像が形成されていく。
【0015】
本実施例のインクジェット記録装置は、シアン、マゼンタ、イエローおよびブラックのインクによって画像を記録するカラープリンタであり、記録ヘッド1には上記4色のインクを輸送するインクチューブ6が連結されている。インクチューブ6は、キャリッジ2の移動に追従可能な可撓性チューブであり、4色夫々に用意されているインクタンク4から記録ヘッド1にインクを供給している。インクタンク4は装置内に固定されたインク供給ユニット5に装着され、インクの消費に応じてインク色ごとに交換可能になっている。図1には示していないが、インク供給ユニット5には、インクタンク4からインクチューブ6へのインクの流出を制御するためインク供給弁318が取り付けられており、インク供給弁の開閉はセンサによって検知されている。
【0016】
回復ユニット7は、記録ヘッド1のメンテナンス処理を行うための機構であり、記録ヘッド1の移動範囲内で且つ記録媒体Sの通過範囲外の領域に配置されている。回復ユニット7には、記録ヘッド1の吐出口面をキャッピングするためのキャップ、キャッピングした状態でノズルからインクを吸引するための吸引ポンプ、吐出口面を払拭するワイピング動作を行うためのワイパブレード、などが配備されている。
【0017】
図2は、本実施例のインクジェット記録装置の制御の構成を説明するためのブロック図である。本実施例の記録装置は、主にインターフェイス部100、コントローラ200、センサ・駆動部300、およびこれらに電力を供給する電源回路400から構成されている。インターフェイス部100には、外部に接続されたホスト装置より画像データを受信する画像入力部101や、ユーザからの指示を受信するための操作部102が配備されている。
【0018】
コントローラ200は記録装置全体を司る機構であり、CPU201はROM206に格納されているプログラムに従い、RAM205をワークエリアとしながら各種機構を制御する。例えば、CPU201は、画像処理回路202を用いて、画像入力部101より受信した画像データに記録装置の画像処理を施し、記録ヘッド1で記録可能な2値データを生成する。
【0019】
センサ・駆動部300には、記録ヘッド1を制御するためのセンサ・駆動機構315、キャリッジ2移動を制御するためのセンサ・駆動機構316、記録媒体の搬送を制御するためのセンサ・駆動機構317が配備されている。また、本発明の実施例で説明する特徴的なメンテナンス処理を実行する回復ユニット7を制御するためのセンサ・制御機構311や、インク供給弁318を制御するためのセンサ制御機構318も配備されている。コントローラ200は、センサ・駆動部300に配備されている各種センサの検出値をセンサ処理回路203で処理し、ROM206に格納されているプログラムやパラメータに従って、モータ制御回路204を用いて各種駆動部(ドライバ)を制御する。
【0020】
電源回路400は、例えば家庭用の電源から電力供給を受け、インターフェイス部100、コントローラ200、センサ・駆動部300にこれを供給する。但し、本実施例の記録装置において、タイマ制御回路208は電源回路400ではなく、ボタン電池などのバッテリーによって電力供給を受けている。よって、タイマ制御回路208には、電源回路400に電力供給されていない期間、すなわち停電時や本体プラグがコンセントに接続していない状態でも電力が供給され、タイマ機能を果たすことが出来る。また、フラッシュメモリ207は不揮発メモリであり、電源回路400から電力が供給されなくてもその情報を保存しておくことが出来る。
【0021】
図3は、通常の記録動作を行う際にコントローラ200が実行する工程を説明するためのフローチャートである。画像入力部101が画像データを受信すると、コントローラ200は、ステップS101においてキャップ313を記録ヘッド1から退避させ、キャップ開放状態とする。そして、現在キャップ313が開放状態である旨、およびキャップ313を開放した時刻を、フラッシュメモリ207に記憶する。その後、ステップS102で記録前の予備吐出動作などを行い、ステップS103にて画像データに従った記録動作を実行する。記録動作が終了すると、ステップS104にて、再びキャップ313を記録ヘッド1に押し当ててキャッピングする。そして、現在キャップ313が閉状態である旨、およびキャッピングした時刻を、フラッシュメモリ207に記憶する。以上で本処理を終了する。このように、本実施例の記録装置では、キャップ313を開いたり閉じたりするたびに、その現状および時刻をフラッシュメモリ207に記憶する。
【0022】
図4は、記録装置の電源投入時において、コントローラ200がメンテナンス処理のために実行する工程を説明するためのフローチャートである。電源の投入が確認されると、コントローラ200は、まずステップS201にて、フラッシュメモリ207を確認しキャップ313の開閉の状態を確認する。キャップ313が開放状態であると確認した場合はステップS202に進み、密閉状態であると確認した場合はステップS204へジャンプする。
【0023】
ステップS202では、フラッシュメモリ207に記憶されている最後にキャップを開放した時刻を取得し、タイマ制御回路208から得られる現時刻との差、すなわちキャップが開放状態になっていた継続時間T1を求める。その後、ステップS203にて、予めROM206に格納されている閾値D1とステップS202で取得した開放継続時間T1を比較し、T1≧D1であればメンテナンス処理が必要と判断され、ステップS206へジャンプする。一方、ステップS203でT1<D1と判断された場合は、ステップS204へ進む。
【0024】
ステップS204では、フラッシュメモリ207に記憶されている最後にキャップを密閉した時刻を取得し、タイマ制御回路208から得られる現時刻との差すなわちキャップが密閉状態になっていた継続時間T2を求める。その後、ステップS205において、予めROM206に格納されている閾値D2とステップS204で取得した継続時間T2を比較し、T2<D2であればステップS207へジャンプし、待機状態となる。一方、T2≧D2であればステップS206へ進む。
【0025】
ステップS206では、吸引回復処理や記録とは無関係な予備吐出など、インクの蒸発や気泡の発生に伴う不具合を取り除くのに必要な所定のメンテナンス処理を実行する。その後、ステップS207へ進んで待機状態に入る。以上で本処理が終了する。
【0026】
本実施例において、閾値D1は、キャップが開放状態であっても記録ヘッドの正常な吐出動作が保障される時間であり、ここでは10秒としている。また、閾値D2は、キャップが密閉されたまま回復等を行わずに放置された状態において、記録ヘッドの正常な吐出動作が保障される時間であり、ここでは30分としている。なお、図4で説明したフローチャートでは、キャップが開放されたまま10秒以上経過した場合も、キャップが閉じられたまま30分以上経過した場合も、ステップS206にて同じメンテナンス処理を行っているが、これらは異ならせることも出来る。例えば、キャップが閉じられたまま30分以上経過した場合の方がより大掛かりなメンテナンス処理を行うようにしてもよい。
【0027】
以上説明した本実施例によれば、記録ヘッドからキャップが開放されたまま放置された時間が吐出動作に影響を与えるほど長時間(10秒以上)である場合には、正常な吐出に回復するためのメンテナンス処理が実行される。また、記録ヘッドがキャッピングされた状態であっても、長時間(30分以上)の放置が確認された場合には、所定のメンテナンス処理が実行される。しかし、記録ヘッドからキャップが外さて放置された時間や、キャッピングが施された状態で維持された時間が、正常な吐出動作に影響を与えないほどの短時間(10秒未満或いは30分以内)である場合には、不必要なメンテナンス処理を実行しない。このように、キャップの状態およびその継続時間に応じてメンテナンス処理の要否が適切に判断されるので、インクや時間を無駄に消費することなく、安定した吐出動作の維持が可能となる。
【0028】
[実施例2]
本実施例も図1および図2で説明したインクジェット記録装置を用いる。本実施例では、電源投入時におけるインクタンク4に備えられたインク供給弁318の初期化について説明する。
【0029】
インク供給弁318は、インクタンク4からインクチューブ6へのインク流出の可否を定めるものであり、滞りないインク供給を行うため、電源投入時には開放され、電源OFF時にはインクの供給を停止するために閉じられる。しかし、停電等のように記録装置の動作が突然中断されると、インク供給弁318が開放されたまま放置される場合がある。電源がOFFされている間に、人為的な作業等が行われインク供給弁318の姿勢が変更されてしまうと、その後の記録ヘッド1に対するインク供給に不具合が生じてしまう。よって、電源ON時には、インク供給弁の開閉動作を行うためのカムの原点を再確認する。
【0030】
図5は、ユーザがソフトパワーOFFした際にコントローラ200が実行する工程を説明するためのフローチャートである。ソフトパワーがOFFされると、コントローラ200は、まずステップS301にてインク供給弁318を閉じ、現在インク供給弁318が閉状態である旨およびインク供給弁318を閉じた時刻を、フラッシュメモリ207に記憶する。続くステップS302ではキャップ313を記録ヘッド1の吐出口面に密着させ、現在キャップ313が密閉状態である旨およびキャップ313を閉じた時刻を、やはりフラッシュメモリ207に記憶する。その後、記録装置本体の電源をOFFする(ステップS303)。このように本実施例では、キャップ313および供給弁318の開閉状態をそれぞれ独立に管理する。
【0031】
図6は、記録装置の電源投入時において、コントローラ200が実行するインク供給弁の初期化工程を説明するためのフローチャートである。電源の投入が確認されると、コントローラ200は、まずステップS401にて、フラッシュメモリ207を確認しインク供給弁318の開閉の状態を確認する。インク供給弁318が開状態であると確認した場合はステップS402に進み、閉状態であると確認した場合はステップS404へジャンプする。
【0032】
ステップS402では、フラッシュメモリ207に記憶されている最後にインク供給弁318を開放した時刻を取得し、タイマ制御回路208から得られる現時刻との差、すなわちインク供給弁318が開状態になっていた継続時間T3を求める。その後、ステップS403において、予めROM206に格納されている閾値D3とステップS402で取得した継続時間T3を比較し、T3≧D3であれば初期設定が必要と判断しステップS406へジャンプする。一方、ステップS403でT3<D3と判断された場合は、ステップS404へ進む。
【0033】
ステップS404では、フラッシュメモリ207に記憶されている最後にインク供給弁318を閉じた時刻を取得し、タイマ制御回路208から得られる現時刻との差すなわちインク供給弁318が閉状態になっていた継続時間T4を求める。その後、ステップS405において、予めROM206に格納されている閾値D4とステップS404で取得した継続時間T4を比較する。そして、T4≧D4であればステップS406へ進み、インク機供給弁318の開閉を制御するカムの原点確認を行う。その後、ステップS407へ進んで待機状態に入る。一方、ステップS405で、T4<D4であればそのままステップS407へ進み待機状態に入る。以上で本処理が終了する。
【0034】
本実施例において、閾値D3は、インク供給弁318の人為的な姿勢変更が可能な時間であり、ここでは30秒としている。また、閾値D4は、インク供給弁318が閉じられた状態であっても、原点確認を行った方がよいと思われる時間であり、ここでは30分としている。
【0035】
以上説明した本実施例によれば、インク供給弁318が開かれたまま放置された時間が、姿勢変更が懸念されるほど長時間(30秒以上)である場合には、ステップS406において正常な姿勢を維持するための原点確認を実行する。また、インク供給弁318が閉じられた状態であっても、長時間(30分以上)の放置が確認された場合には、インク供給弁318の原点確認を実行する。しかし、インク供給弁318が開いたまま放置された時間や、インク供給弁が閉じたまま維持された時間が、インク供給弁の姿勢に影響を与えないほどの短時間(30秒未満或いは30分以内)である場合には、不必要な原点確認を実行しない。これにより、初期設定のために時間を無駄に消費することなく、安定した記録動作を維持することが可能となる。
【0036】
上記実施例1では記録ヘッドのメンテナンス処理、実施例2ではインク供給弁の原点確認を例に説明したが、本発明は上記以外にも、例えば各種センサのキャリブレーション、ワイパの位置など、様々な初期設定について応用することが出来る。また、記録ヘッドのメンテナンス処理とインク供給弁の原点確認を同時に行うなど、複数の機構の初期設定を同時に進行させることも無論可能である。いずれの場合であっても、電源ON時とOFF時で姿勢が異なる機構について、現状の姿勢及びその維持時間を把握可能な構成を備え、電源ON時において記憶した現状姿勢と維持時間から初期設定の有無を設定可能な構成であれば、本発明の範疇に含まれる。
【0037】
無論、本発明はカラーのインクジェット記録装置に限定されるものでもなく、モノクロのインクジェット記録装置であってもよい。また、図1で説明したように固定されたインクタンクからチューブを介して記録ヘッドにインクを供給する構成でなくてもよく、記録ヘッドとインクタンクとが一体化したカートリッジ形態のインクジェット記録装置であってもよい。更に、シリアル型のインクジェット記録装置だけでなく、固定された記録ヘッドが搬送される記録媒体に対してインクを吐出することにより画像を記録するフルライン型のインクジェット記録装置であっても、本発明の効果を発揮することは出来る。
【符号の説明】
【0038】
1 記録ヘッド
7 回復ユニット
200 コントローラ
207 不揮発メモリ
208 タイマ制御回路
313 キャップ
318 インク供給弁
300 センサ・駆動部
400 電源回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源ON時と電源OFF時で位置または姿勢が異なる機構を備えた記録装置であって、
前記機構の位置または姿勢、および前記位置または姿勢を変更した時刻を記憶する不揮発メモリと、
バッテリーによって電力供給を受けるタイマ制御回路と、
電源ON時において、前記不揮発メモリおよび前記タイマ制御回路から、前記不揮発メモリに格納された前記位置または姿勢の継続時間を取得し、該継続時間を前記位置または姿勢に応じて用意された所定の閾値と比較することによって、前記機構の初期設定の要否を判断する手段と、
前記判断に応じて前記初期設定を実行する手段と
を備えることを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記機構は、インクを吐出する記録ヘッドの吐出口面を記録動作の中は開放し電源OFF時には密閉するためのキャップであり、
前記不揮発メモリは、前記キャップが前記吐出口面に対し開放状態にあるか密閉状態にあるか、および前記開放状態および前記密閉状態を変更した時刻を記憶し、
前記キャップが開放状態にある場合の前記所定の閾値は、前記キャップが密閉状態にある場合の前記所定の閾値よりも小さく、
前記初期設定は、前記記録ヘッドからインクを吸引する吸引回復処理、記録とは無関係な吐出を行う予備吐出動作、前記吐出口面を払拭するワイピング、および前記吐出口面を密閉するキャッピングのいずれかを含むことを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記キャップが開放状態にある場合の前記所定の閾値は、前記キャップが開放状態であっても前記記録ヘッドの正常な吐出動作が保障される時間であることを特徴とする請求項2に記載の記録装置。
【請求項4】
前記機構は、電源ON時にはインクタンクから記録ヘッドにインクを供給するために開放され、電源OFF時には前記供給を停止するために閉じられるインク供給弁であり、
前記不揮発メモリは、前記インク供給弁が開状態にあるか閉状態にあるか、および前記開状態および前記閉状態を変更した時刻を記憶し、
前記インク供給弁が開状態にある場合の前記所定の閾値は、前記インク供給弁が閉状態にある場合の前記所定の閾値よりも小さく、
前記初期設定は、前記インク供給弁の開閉を制御するカムの原点確認であることを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項5】
前記インク供給弁が開状態にある場合の前記所定の閾値は、前記インク供給弁に対する人為的な位置または姿勢の変更が可能な時間であることを特徴とする請求項4に記載の記録装置。
【請求項6】
電源ON時と電源OFF時で位置または姿勢が異なる機構を備えた記録装置の前記機構に対する初期設定の判断方法であって、
前記機構の位置または姿勢、および前記位置または姿勢を変更した時刻を不揮発メモリに記憶する工程と、
バッテリーによって電力供給を受けるタイマ制御回路によって現在の時刻を取得する工程と、
電源ON時において、前記不揮発メモリおよび前記タイマ制御回路から、前記不揮発メモリに格納された前記位置または姿勢の継続時間を取得し、該継続時間を前記位置または姿勢に応じて用意された所定の閾値と比較することによって、前記機構の初期設定の要否を判断する工程と、
前記判断に応じて前記初期設定を実行する工程と
を有することを特徴とする初期設定の判断方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−177969(P2011−177969A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−42706(P2010−42706)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】