説明

記録装置及びその記録制御方法

【課題】複数のノズル列に対応した多値データの展開処理の効率化を図り、システム全体のパフォーマンスを向上させる。
【解決手段】複数のノズル列に対応する記録データが一つのデータとして構成される多値データを格納する多値データ格納手段と、多値データ格納手段に格納された多値データを前記複数のノズル列各々に対応する所定のデータ単位分の2値データに同時に展開する展開手段と、2値データ格納手段の空き領域に応じて、2値データ格納手段か待避手段かのいずれかに展開手段により展開された2値データを格納する制御を行なう待避制御手段と、2値データ格納手段から2値データを取得して前記記録ヘッドの駆動を制御する駆動制御手段とを具備し、待避制御手段は、待避手段に2値データが格納されている場合に、2値データ格納手段の空き領域を検出した時には、待避手段に格納された2値データを前記2値データ格納手段に移して格納する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録装置及びその記録制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置では、高速化、高解像度化に伴い、記録ヘッドの多ノズル化・多色化が進み、処理すべきデータ量が膨大になっている。このため、特許文献1では、多値データ(Indexデータ)を用いることにより、ホスト装置などの外部機器の処理負荷を軽減させるとともに、ホスト装置側から記録装置側に伝送するデータ量を削減している。また、特許文献1においては、記録装置側では、多値データをホスト装置から受信すると、縦横変換(HV変換)を実施した後、多値データを2値データに展開せずにそのままバッファに格納する。この場合、多値データから2値データへの展開は、記録処理の開始タイミングで行なわれる。このようなタイミングで行なうことにより、記録処理のスループットや記録画質の向上を図れるとともに、バッファ容量の削減を図れる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−240370号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したような記録装置では、記録ヘッドを用いて記録媒体に対して記録を行なう。ここで、記録ヘッドは、同色について異なるサイズ(例えば、大ドット2列、中及び小ドット1列)のインク滴を用いて階調記録を行なう。
【0005】
図19は、記録ヘッドを主走査方向に走査させて記録を行なった時の紙面上の記録領域と、その記録とともに実施される記録制御処理(展開処理、記録処理)のタイミングとの一例を示す図である。
【0006】
記録ヘッドの各ノズル列には、主走査方向に物理的なずれ量が存在する。例えば、大ドットノズルのEven/Oddと、中小ドットノズルとを用いて同じ記録領域を記録する場合、この物理的なずれ量が問題となる。この問題を解決するため、記録装置においては、図19に示すように、例えば、中ドットノズルに対する展開処理及び記録処理と、小ドットノズルに対する展開処理及び記録処理とのタイミングを異ならせている。なお、展開処理と記録処理とが実施されるタイミングがずれているのは、展開後の2値データを一定量作り置きするためである。
【0007】
次に、図20を用いて、多値データをバッファ(記録データバッファ)から読み出すタイミングについて説明する。図20では、展開処理と併せて説明する。この説明に先立ってまず、記録データバッファには、色毎に圧縮された多値データ(つまり、大中小ドットノズル全ての記録データが1つとなったデータ)が格納されている。記録データバッファには、例えば、主走査方向への1回分の記録に用いられる多値データが保持される。記録データバッファでは、701、702、・・・707、708に示すように、展開処理に適したデータ量毎(一定量作り置きし易いデータ単位)に多値データをパッキングして格納している。展開処理が始まると、記録データバッファから多値データが読み出され、種々の処理が実施された後、多値データが2値データへと変換される。
【0008】
ここで、タイミング710時点での各ノズル列についての展開処理を考えてみる。図19で説明した通り、各ノズル列は、主走査方向に物理的なずれ量を有している。そのため、このタイミングでは、例えば、中ドットノズルはバッファ704、大ドットノズルのEvenはバッファ703、大ドットノズルのOddはバッファ702、小ドットノズルはバッファ701からそれぞれデータを読み出すことになる。すなわち、各ノズル列によってデータの読み出し位置を変更する必要がある。
【0009】
次に、図21を用いて、展開処理の概要について説明する。なお、ここでは、多値データが4bit−16階調の600ppiで構成される場合を例に挙げて説明する。
【0010】
4bit−16階調の大中小ドットノズルに対応した多値データ801は、1200dpi出力の大ドットノズルの2値データ802、中ドットノズルの2値データ803、小ドットノズルの2値データ804に展開される。この展開は、例えば、所定の展開テーブルを用いて行なわれる。
【0011】
ここで、大ドットノズルの2値データ802をEven列用805とOdd列用806とに分離する。記録ヘッドは、例えば、ドットサイズの異なる2列を交互に600dpiで駆動させる。そのため、この展開処理では、主走査方向に1200dpiで2ドット生成された2値データに対して間引き処理を実施し、いずれかのドットを間引く。なお、間引かれたデータは、マルチ・パス制御で次のパスに使用される。図21の場合、右側のドットが間引かれており、最終的な出力データとして、大ドットノズルEvenの2値データ807と、大ドットノズルOddの2値データ808と、中ドットノズルの2値データ809と、小ドットノズルの2値データ810とが得られる。
【0012】
しかし、記録ヘッドの各ノズル列には、上述した物理的なずれ量があるので、読み出して展開した4つのデータのうち、そのタイミングで必要なドットサイズのデータ以外は、読み捨てられる(厳密には、必要なデータ以外は生成しない)。4bit−16階調の多値データにおいては、4bit分のデータを読み出しているにも関わらず、1bit分しかデータが生成されない。また、このような構成では、ハードウェア資源を過剰に使用するため、システム全体のパフォーマンスが低下してしまう。
【0013】
上述した通り、従来の手法では、展開処理においては、読み捨てるデータが多く、入力データより出力データが少なくなる場合がある。また、記録処理においては、バッファからの読み出し位置をノズル列毎に変更する必要がある。
【0014】
今後一層、記録ヘッドの多ノズル化・多色化が進むと予測されるが、これに伴って、ハードウェアが改良されたとしても、その処理速度には限界がある。また、このような改良(例えば、周波数の高速化やバッファメモリの大容量化)を行なった場合、記録装置のコストアップが避けられない。
【0015】
そこで、本発明は、記録処理の開始に際して、複数のノズル列に対応した多値データを同一タイミングで2値データに展開するようにした場合に生じる問題点を解決する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するため、本発明の一態様は、複数のノズル列が配置される記録ヘッドを有し、該記録ヘッドを該ノズル列の配列方向と交差する方向に走査して記録を行なう記録装置であって、前記複数のノズル列に対応する記録データが一つのデータとして構成される多値データを格納する多値データ格納手段と、前記記録ヘッドによる記録の開始に際して、前記多値データ格納手段に格納された多値データを前記複数のノズル列各々に対応する所定のデータ単位分の2値データに同時に展開する展開手段と、2値データ格納手段の空き領域に応じて、前記2値データ格納手段か待避手段かのいずれかに前記展開手段により展開された2値データを格納する制御を行なう待避制御手段と、前記2値データ格納手段から2値データを取得し、該取得した2値データに基づいて前記記録ヘッドの駆動を制御する駆動制御手段とを具備し、前記待避制御手段は、前記待避手段に2値データが格納されている場合に、前記2値データ格納手段の空き領域を検出した時には、前記待避手段に格納された2値データを前記2値データ格納手段に移して格納するを具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、記録処理の開始に際して、複数のノズル列に対応した多値データを同一タイミングで2値データに展開するようにした場合に生じる問題点を解決することができる。これにより、例えば、コスト増を招かずに展開処理の効率化を図れるとともに、システム全体のパフォーマンスを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施の形態に係わるインクジェット記録装置1の外観構成の一例を示す斜視図。
【図2】図1に示す記録ヘッド3のノズル構成の一例を示す図。
【図3】図1及び図2に示す記録ヘッド3の駆動制御の概要を説明するための図。
【図4】図1に示す記録装置1の機能的な構成の一例を示す図。
【図5】図1に示す記録装置1における記録制御処理の概要を示す第1の図。
【図6】図4に示す待避制御部115の機能的な構成の一例を示す図。
【図7】図1に示す記録装置1における記録制御処理の概要を示す第2の図。
【図8】図7に示すタイミング1における記録制御処理の概要を示す図。
【図9】図7に示すタイミング2における記録制御処理の概要を示す図。
【図10】図7に示すタイミング3における記録制御処理の概要を示す図。
【図11】図7に示すタイミング4における記録制御処理の概要を示す図。
【図12】図7に示すタイミング5における記録制御処理の概要を示す図。
【図13】図7に示すタイミング6における記録制御処理の概要を示す図。
【図14】図7に示すタイミング7における記録制御処理の概要を示す図。
【図15】図7に示すタイミング8における記録制御処理の概要を示す図。
【図16】図7に示すタイミング9における記録制御処理の概要を示す図。
【図17】図7に示すタイミング10における記録制御処理の概要を示す図。
【図18】本実施形態に係わる記録制御処理時に各メモリにアクセスするデータ量の一例を示す図。
【図19】従来技術の一例を説明するための第1の図。
【図20】従来技術の一例を説明するための第2の図。
【図21】従来技術の一例を説明するための第3の図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。以下の説明においては、インクジェット記録方式を用いた記録装置を例に挙げて説明する。記録装置とは、例えば、記録機能のみを有するシングルファンクションプリンタであってもよいし、また、例えば、記録機能、FAX機能、スキャナ機能等の複数の機能を有するマルチファンクションプリンタであってもよい。また、例えば、カラーフィルタ、電子デバイス、光学デバイス、微小構造物等を所定の記録方式で製造するための製造装置であってもよい。
【0020】
なお、以下の説明において、「記録」とは、文字、図形等有意の情報を形成する場合のみならず、有意無意を問わない。更に人間が視覚で知覚し得るように顕在化したものであるか否かも問わず、広く記録媒体上に画像、模様、パターン、構造物等を形成する、又は媒体の加工を行なう場合も表す。
【0021】
また、「記録媒体」とは、一般的な記録装置で用いられる紙のみならず、布、プラスチック・フィルム、金属板、ガラス、セラミックス、樹脂、木材、皮革等、インクを受容可能なものも表す。
【0022】
更に、「インク」とは、上記「記録」の定義と同様広く解釈されるべきものである。従って、記録媒体上に付与されることによって、画像、模様、パターン等の形成又は記録媒体の加工、或いはインクの処理(例えば、記録媒体に付与されるインク中の色剤の凝固または不溶化)に供され得る液体を表す。また、「ノズル」とは、特に断らない限り吐出口、これに連通する液路及びインク吐出に利用されるエネルギーを発生する素子を総括して言う。
【0023】
図1は、本発明の一実施の形態に係わるインクジェット記録装置(以下、記録装置と呼ぶ)1の外観構成の一例を示す斜視図である。
【0024】
記録装置1は、インクジェット方式に従ってインクを吐出して記録を行なうインクジェット記録ヘッド(以下、記録ヘッドと呼ぶ)3をキャリッジ2に搭載し、キャリッジ2を矢印A方向(主走査方向)に往復移動させて記録を行なう。記録装置1は、記録紙などの記録媒体Pを給紙機構5を介して給紙し、記録位置まで搬送する。そして、その記録位置において記録ヘッド3から記録媒体Pにインクを吐出することで記録を行なう。
【0025】
記録装置1のキャリッジ2には、記録ヘッド3の他、例えば、インクカートリッジ6が搭載される。インクカートリッジ6は、記録ヘッド3に供給するインクを貯留する。なお、インクカートリッジ6は、キャリッジ2に対して着脱自在になっている。
【0026】
図1に示す記録装置1は、カラー記録が可能である。そのため、キャリッジ2には、マゼンタ(M)、シアン(C)、イエロ(Y)、ブラック(K)のインクをそれぞれ収容する4つのインクカートリッジが搭載されている。これら4つのインクカートリッジは、それぞれ独立して着脱できる。
【0027】
本実施形態に係わる記録ヘッド3は、熱エネルギを利用してインクを吐出するインクジェット方式を採用している。そのため、記録ヘッド3は、電気熱変換体を備えている。電気熱変換体は、各吐出口のそれぞれに対応して設けられ、記録信号に応じて対応する電気熱変換体にパルス電圧を印加する。これにより、対応する吐出口からインクが吐出される。なお、本実施形態においては、インクの吐出方式として、ヒータを用いてインクを吐出する場合について説明するが、これに限定されない。例えば、ピエゾ素子を用いた方式、静電素子を用いた方式、MEMS素子を用いた方式など、様々なインクジェット方式を採用してもよい。
【0028】
図2は、図1に示す記録ヘッド3のノズル構成の一例を示す図である。
【0029】
記録ヘッド3には、複数のノズル列が配置されており、このノズル列の配列方向と交差(直交)する方向(走査方向)に往復移動する。記録ヘッド3は、同色について異なるサイズ(例えば、大ドット2列、中及び小ドット1列)のインク滴を用いて階調記録を行なう。なお、同色について異なるサイズのインク滴を用いた階調記録は、例えば、特開2005−169754号公報に開示された技術を用いればよく、ここではその詳細な説明については省略する。
【0030】
ここで、カラー記録(例えば、CMYK(シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック))を行なう場合、記録ヘッド3は、4列×4色の16列のノズル列が配置される。大ドットのEven列とOdd列とは、例えば、副走査方向(主走査方向に直交する方向)に1200dpiずらして配置される。また、小ドットのノズル列は、例えば、大ドットのEven列と1200dpiずらして配置され、中ドットのノズル列は、例えば、大ドットのOdd列と1200dpiずらして配置されている。なお、図2では、異なるサイズのドットを吐出する記録ヘッドの一例を示しており、ドット配置やドットサイズの構成は、ここに示す構成に限られない。
【0031】
次に、図3を用いて、図1及び図2に示す記録ヘッド3の駆動制御について説明する。
【0032】
記録ヘッド3は、異なるドットサイズのノズル列をペアとし、それらを交互に駆動することにより記録を行なう。なお、この駆動制御については、例えば、特開2005−169754号公報に記載された技術を用いればよく、ここではその詳細な説明については省略する。例えば、大ドット及び小ドットのノズルを主走査方向に1200dpiで駆動する場合、大ドット及び小ドットノズルは、600dpi毎に交互に記録を行なう。なお、記録モードによっては、大ドットノズル列のみ(又は小ドットノズル列のみ)で駆動することもある。
【0033】
図4は、図1に示す記録装置1の機能的な構成の一例を示す図である。ここに図示される機能的な構成は、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)20により実現される。
【0034】
本実施形態に係わる記録装置1の説明を分かり易くするため、まず、PC(Personal Computer)10について説明する。PC10は、記録装置1の外部に設けられた外部端末である。PC10は、記録対象のデータを記録装置1に向けて送信する。記録ヘッド3の動作を制御するデータ、すなわち、記録データや吐出パルス信号などは、ASICの内部で生成される。
【0035】
ここで、CPU103は、記録装置1全体の動作を統括・管理する。メイン・メモリ104は、例えば、SDRAM(Synchronous DRAM)で実現される。なお、メイン・メモリは、必ずしもSDRAMである必要はなく、DRAM(Dynamic Random Access Memory)又はSRAM(Static Random Access Memory)であってもよい。RAMの定義の範疇に属するメモリであれば特に問わない。
【0036】
ASIC20におけるそれ以外の構成要素は、所謂、ランダム・ロジックと呼ばれる。ここで、このランダム・ロジックについて説明する。インターフェース部105は、有線又は無線で構成され、PC10からデータを受信する。インターフェース部105は、例えば、USB、IEEE1394等のインターフェースのプロトコルに合わせた信号を取り込み、ASIC20が扱いやすい形式(例えば、データを1byte単位の形に整形)のデータを生成する。インターフェース部105により生成されたデータは、SDRAM104に格納される。インターフェース部105によりデータが格納されるSDRAM104内の領域は、一般に、受信バッファ106などと呼ばれる。
【0037】
SDRAM104内に格納されたデータは、各記録制御タイミングに応じてデータ変換部107に読み込まれ、ラスタデータからノズル列データへ縦横変換(HV変換)される。変換後のデータは、記録データバッファ108に格納される。記録装置1においては、この記録データバッファ108への格納までは、色毎に圧縮された多値データ(つまり、大中小ドットノズル全ての記録データが一つとなったデータ)形式でデータを扱う。すなわち、記録データバッファ108は、多値データ格納手段として機能する。なお、記録データバッファ108に多値データを格納するようにした場合には、記録データバッファ108に展開後の2値データを格納する場合よりも、受信バッファ106及び記録データバッファ108の容量を削減できる。
【0038】
記録データバッファ108に格納された多値データは、データ展開部109により読み出される(取得される)。データ展開部109は、当該読み出した多値データに対して、多値データ展開、マルチパス・マスク制御などの処理を実施し、多値データを2値データに展開する。展開後のデータは、記録ヘッド3の大中小ドット全てに対応する2値データとなる。
【0039】
ここで、待避制御部115は、待避制御処理を実施する。例えば、2値データ格納手段として機能する展開データ格納メモリ110の空き領域に応じて、待避バッファ116、展開データ格納メモリ110のいずれかに2値データを格納する。展開データ格納メモリ110及び待避バッファ116では、各ノズル列に対応してその格納領域がそれぞれ割り当てられている。展開データ格納メモリ110に空き領域があれば、2値データは、展開データ格納メモリ110に格納される。展開データ格納メモリ110に格納された2値データは、ヘッド駆動制御部102により読み出される。
【0040】
一方、展開データ格納メモリ110に空き領域がなければ、2値データは、待避バッファ116に格納される。この場合、待避制御部115は、ヘッド駆動制御部102(具体的には、データ並替部111)による展開データ格納メモリ110への読出制御を監視する。監視の結果、待避制御部115は、展開データ格納メモリ110の空き領域を検出すると、待避バッファ116に待避した2値データを読み出し、その2値データを展開データ格納メモリ110に移す。待避バッファ116は、例えば、SDRAM104の一部として実現される。なお、待避バッファ116は、SRAMのような高速メモリの一部として実現されても構わない。
【0041】
ここで、ヘッド駆動制御部102により展開データ格納メモリ110から2値データが読み出されると、ヘッド駆動制御部102は、データ並替部111において、その読み出した2値データを並び替えた後、記録データ格納メモリ112に格納する。2値データの並び替えは、ヘッド駆動部113が2値データを効率的に読み出せるようにするために行なう。なお、記録データ格納メモリ112は、必須の構成要素ではなく省略してもよい。
【0042】
記録データ格納メモリ112に格納された2値データは、ヘッド駆動部113により読み出される。ヘッド駆動部113は、当該読み出した2値データに基づいて記録ヘッド3の駆動を制御する。具体的には、ヘッド駆動部113は、読み出した2値データに基づいて記録ヘッド3を記録媒体に対して相対的に走査させる。これにより、記録ヘッド3による記録が行なわれる。ヘッド駆動部113は、例えば、記録データ格納メモリ112から読み出した2値データを記録ヘッド3に転送したり、記録ヘッド3へ吐出パルス信号を送信したりする。
【0043】
記録タイミング生成部114は、エンコーダ信号に基づいて各種記録タイミングを生成する。具体的には、エンコーダ信号に基づいて記録ヘッド3の位置する軸信号(X座標)を適切な間隔で生成する。これにより、データ展開部109、データ並替部111、ヘッド駆動部113は、適切なタイミングでデータを生成できることになる。
【0044】
次に、図5を用いて、本実施形態に係わる記録制御処理の概要について説明する。図5は、記録ヘッド3を主走査方向に走査させて記録を行なった時の紙面上の記録領域と、その記録とともに実施される記録制御処理(展開処理、記録処理)のタイミングとの一例を示す図である。
【0045】
図5に示すように、本実施形態に係わる記録装置1(データ展開部109)では、各ノズル列に対応した展開処理を同じタイミングで行なう。この展開処理では、所定のデータ単位分(例えば、主走査方向への1回分)の記録に用いられる多値データが2値データに展開される。この展開により得られる2値データは、従来同様に、複数のノズル列各々に対応したデータとなっている。
【0046】
ここで、従来技術を説明した図19と比較してみると、従来の展開処理では、各ノズル列によって異なるタイミングで展開処理が実施されている。これに対して、本実施形態の展開処理では、複数のノズル列各々に対応したデータを同時に展開している。なお、展開後の2値データは、順次、待避制御部115に送られる。
【0047】
次に、図6を用いて、図4に示す待避制御部115の機能的な構成の一例について説明する。
【0048】
待避制御部115は、格納先判定部901と、空き領域管理部902と、メモリ書込制御部903と、待避領域書込制御部906と、待避領域設定部907と、待避領域読出制御部908と、待避領域管理部909とを具備して構成される。
【0049】
格納先判定部901は、データ展開部109から受け取った2値データの格納先を判定する。2値データの格納先は、待避バッファ116、展開データ格納メモリ110のいずれかとなる。この判定は、空き領域管理部902により管理された情報と、待避領域管理部909により管理された情報とに基づいて行なわれる。ここで、展開データ格納メモリ110に2値データを格納すると判定した場合、格納先判定部901は、2値データをメモリ書込制御部903へ受け渡す。また、待避バッファ116に2値データを格納すると判定した場合、格納先判定部901は、2値データを待避領域書込制御部906に受け渡す。
【0050】
メモリ書込制御部903は、2値データを展開データ格納メモリ110に書き込む(格納)する。上述した通り、展開データ格納メモリ110は、各ノズル列に対応して2値データの格納領域が分けられているため、メモリ書込制御部903では、対応する格納領域に2値データを格納することになる。
【0051】
待避領域書込制御部906は、2値データを待避バッファ116に書き込む(格納)する。上述した通り、待避バッファ116は、各ノズル列に対応して2値データの待避領域が分けられているため、待避領域書込制御部906では、対応する待避領域に2値データを格納することになる。なお、この待避領域は、待避領域設定部907により設定されたSDRAM104内の領域となる。
【0052】
空き領域管理部902は、展開データ格納メモリ110の容量を管理し、例えば、当該メモリに空き領域ができた場合にそれを検出する。待避領域読出制御部908は、空き領域管理部902により空き領域が検出されると、待避領域に待避された2値データを読み出し、その2値データをメモリ書込制御部903に受け渡す。このとき、メモリ書込制御部903は、展開データ格納メモリ110内の対応する領域へ受け取った2値データを格納する。
【0053】
待避領域管理部909は、待避領域に関する情報を管理する。待避領域管理部909では、例えば、待避領域書込制御部906及び待避領域読出制御部908による待避バッファ116に対するアクセスを監視し、各ノズル列の待避領域に2値データが残っているか否かを判断する。そして、その判断結果を格納先判定部901に通知する。これにより、2値データの格納順の整合性が保たれる。
【0054】
次に、図7〜図17を用いて、本実施形態に係わる記録制御処理について具体例を挙げて説明する。図7には、記録ヘッド3の紙面上の位置と記録データバッファ108に格納された多値データとの関係が示される。また、そのとき実施される記録制御処理(展開処理、記録処理)のタイミングの一例も示される。
【0055】
記録ヘッド3は、上述した通り、大ドットのEven/Odd及び中小ドットで一色を構成する。図3で説明した通り、例えば、大ドットノズルのEvenと小ドットノズルとが一つのペアを構成し、大ドットノズルのOddと中ドットノズルとが一つのペアを構成する。そして、これらのペアを交互に用いて記録を行なう。記録ヘッド3は、説明の便宜上、一色分のノズル列のみを示しているが、CMYK等、複数色で構成される記録ヘッドであってもよい。
【0056】
記録装置1は、記録ヘッド3を主走査方向に走査して記録を行なう場合、データ展開部109において、記録ヘッド3の紙面上の位置に応じた多値データを記録データバッファ108から読み出す。ここでは、記録データバッファ108内から、バッファ1、バッファ2、バッファ3、・・・バッファ5の順に多値データを読み出していくものとする。展開処理と記録処理とのタイミングがずれているのは、データ展開部109による展開処理では、展開した2値データを一定量作り置きするための時間が必要となるためである。また、各ノズル列の記録処理のタイミングがずれているのは、記録ヘッド3のノズル列の配列方向と直交する方向(走査方向)に沿ったノズル列間の配置位置が物理的にずれているためである。
【0057】
ここで、図8〜図17を用いて、図7に示すタイミング1〜10における記録制御処理(展開処理、記録処理)について説明する。まず、図8を用いて、図7に示すタイミング1における記録制御処理について説明する。
【0058】
ここで、展開データ格納メモリ110は、各ノズル列に対応してその格納領域がそれぞれ割り当てられており、この各格納領域は、書込用と読出用の2つのバンク(メモリ領域)からなる。なお、図8〜図17に示す展開データ格納メモリ110の構成は、あくまで一例であり、これに限られない。
【0059】
データ展開部109により1度に展開される量を1単位と考えた場合、大ドットOddは1単位、大ドットEvenは2単位、小ドットは3単位分のずれ量がある。待避バッファ116の容量は、これを考慮して確保すればよい。待避バッファ116は、最初にデータが生成(展開)されるノズル列(この場合、中ドットノズル)からの物理的なずれ量に伴って必要となる記憶領域を補うために設けられる。なお、中ドットノズルのデータ展開のタイミングは、従来と変わらないため、中ドットの2値データは、待避バッファ116を必要としない。
【0060】
タイミング1においては、展開処理が開始する(図7参照)。データ展開部109は、記録データバッファ108内のバッファ1にアクセスし、バッファ1に格納された多値データを読み出し展開を行なう。展開後のデータは、ノズル列毎に2値化されたデータとなる。待避制御部115は、大ドットEvenの2値データ1、大ドットOddの2値データ1、中ドットの2値データ1、小ドットの2値データ1を受け取る。この場合、展開データ格納メモリ110内の各ノズル列に対応した領域には空きがある。そのため、待避制御部115は、展開データ格納メモリ110に各ノズル列に対応した2値データを格納する。
【0061】
次に、図9を用いて、図7に示すタイミング2における記録制御処理について説明する。
【0062】
タイミング2においては、展開処理とともに、中ドットノズルによる記録処理が開始する(図7参照)。データ展開部109では、記録データバッファ108内のバッファ2にアクセスし、バッファ2に格納された多値データを読み出し展開を行なう。展開後のデータはノズル列毎に2値化されたデータとなる。待避制御部115は、大ドットEvenの2値データ2、大ドットOddの2値データ2、中ドットの2値データ2、小ドットの2値データ2を受け取る。この場合、展開データ格納メモリ110内の各ノズル列に対応した領域には空きがある。そのため、待避制御部115は、展開データ格納メモリ110内に各ノズル列に対応した2値データを格納する。
【0063】
また、タイミング2においては、中ドットノズルによる記録処理が開始する。そのため、102データ並替部111は、展開データ格納メモリ110から中ドットの2値データ1を読み出し、並び替えた後、記録データ格納メモリ112に2値データを格納する。
【0064】
次に、図10を用いて、図7に示すタイミング3における記録制御処理について説明する。
【0065】
タイミング3においては、展開処理とともに、中ドットノズルと大ドットノズルOddとによる記録処理が行なわれている(図7参照)。データ展開部109では、記録データバッファ108内のバッファ3にアクセスし、バッファ3に格納された多値データを読み出し展開を行なう。展開後のデータはノズル列毎に2値化されたデータとなる。待避制御部115は、大ドットEvenの2値データ3、大ドットOddの2値データ3、中ドットの2値データ3、小ドットの2値データ3を受け取る。この場合、データ並替部111により中ドットノズル列のデータが読み出されているため、展開データ格納メモリ110内の中ドットノズル列に対応した領域には空きがある。そのため、待避制御部115は、展開データ格納メモリ110内の中ドットノズル列に割り当てられた格納領域に中ドットの2値データ3を格納する。また、大ドットノズルのEven/Oddと小ドットノズルとに対応する2値データの格納領域(展開データ格納メモリ110)には空きがない。そのため、待避制御部115は、これらノズルに対応する2値データを待避バッファ116に一旦待避する。
【0066】
また、タイミング3においては、中ドットノズル及び大ドットノズルOddの記録処理が実施される。そのため、データ並替部111は、中ドットの2値データ2、大ドットOddの2値データ1を展開データ格納メモリ110から読み出す。そして、それら読み出したデータを並び替えた後、記録データ格納メモリ112に2値データを格納する。
【0067】
次に、図11を用いて、図7に示すタイミング4における記録制御処理について説明する。
【0068】
タイミング4においては、展開処理とともに、中ドットノズルと大ドットノズルEven/Oddとによる記録処理が行なわれている(図7参照)。データ展開部109では、記録データバッファ108内のバッファ4にアクセスし、バッファ4に格納された多値データを読み出し展開を行なう。展開後のデータはノズル列毎に2値化されたデータとなる。待避制御部115は、大ドットEvenの2値データ4、大ドットOddの2値データ4、中ドットの2値データ4、小ドットの2値データ4を受け取る。この場合、データ並替部111により中ドットノズル列のデータが読み出されているため、展開データ格納メモリ110内の中ドットノズル列に割り当てられた格納領域には空きがある。そのため、待避制御部115は、展開データ格納メモリ110内の中ドットノズル列に割り当てられた格納領域に中ドットの2値データ4を格納する。また、データ並替部111により大ドットノズルOddの2値データ2が展開データ格納メモリ110から読み出されると、待避制御部115は、これに伴って展開データ格納メモリ110内の空きを検出する。この検出とともに、待避制御部115は、待避バッファ116から大ドットOddの2値データ3を読み出し、展開データ格納メモリ110内の大ドットOddに割り当てられた領域に格納する。なお、ここでは、タイミング1〜10という単位で説明を行なっているため、分かり難いが、待避バッファ116から展開データ格納メモリ110への書き戻し制御は、展開データ格納メモリ110内に空きができると直ぐに実施される。
【0069】
また、タイミング4においては、大ドットノズルのEven/Oddと小ドットノズルとに対応する2値データの格納領域(展開データ格納メモリ110)には空きがない。そのため、待避制御部115は、これらノズルに対応する2値データを待避バッファ116に一旦待避する。
【0070】
また、タイミング4においては、中ドットノズル及び大ドットノズルEven/Oddの記録処理が実施される。そのため、データ並替部111は、中ドットの2値データ3、大ドットOddの2値データ2、大ドットEvenの2値データ1を展開データ格納メモリ110から読み出す。そして、それら読み出したデータを並び替えた後、記録データ格納メモリ112に2値データを格納する。
【0071】
次に、図12を用いて、図7に示すタイミング5における記録制御処理について説明する。
【0072】
タイミング5においては、展開処理とともに、全ノズル列の記録処理が行なわれている(図7参照)。データ展開部109では、記録データバッファ108内のバッファ5にアクセスし、バッファ5に格納された多値データを読み出し展開を行なう。展開後のデータは、ノズル列毎に2値化されたデータとなっており、待避制御部115は、大ドットEvenの2値データ5、大ドットOddの2値データ5、中ドットの2値データ5、小ドットの2値データ5を受け取る。この場合、データ並替部111により中ドットノズル列のデータが読み出されているため、展開データ格納メモリ110内の中ドットノズル列に割り当てられた格納領域には空きがある。そのため、待避制御部115は、展開データ格納メモリ110内の中ドットノズル列に割り当てられた格納領域に中ドットの2値データ5を格納する。また、データ並替部111により大ドットノズルEvenの2値データ1及び大ドットノズル列Oddの2値データ2が展開データ格納メモリ110から読み出されると、待避制御部115は、これに伴って展開データ格納メモリ110内の空きを検出する。この検出とともに、待避制御部115は、待避バッファ116から大ドットノズルEvenの2値データ3及び大ドットノズルOddの2値データ4を読み出し、展開データ格納メモリ110の大ドットノズルEven/Oddに割り当てられた領域に格納する。
【0073】
また、タイミング5においては、大ドットノズルのEven/Oddの2値データ5及び小ドットノズルの2値データ5の格納領域(展開データ格納メモリ110)には空きがない。そのため、待避制御部115は、これらノズルに対応する2値データを待避バッファ116に一旦待避する。
【0074】
また、タイミング5においては、全ノズル列の記録処理が実施される。そのため、データ並替部111は、中ドットの2値データ4、大ドットOddの2値データ3、大ドットEvenの2値データ2、小ドットの2値データ1を展開データ格納メモリ110から読み出す。そして、それら読み出したデータを並び替えた後、記録データ格納メモリ112に2値データを格納する。
【0075】
次に、図13を用いて、図7に示すタイミング6における記録制御処理について説明する。
【0076】
タイミング6においては、全ノズル列による記録処理は継続中であるが、展開処理は終了している(図7参照)。データ並替部111により大ドットノズルEven/Odd及び小ドットノズルの2値データが展開データ格納メモリ110から読み出されると、待避制御部115は、これに伴って展開データ格納メモリ110内の空きを検出する。この検出とともに、待避制御部115は、待避バッファ116から大ドットEvenの2値データ4及び大ドットノズルOddの2値データ5、小ドットノズルの2値データ3を読み出す。そして、展開データ格納メモリ110の大ドットノズルEven/Odd及び小ドットノズルに割り当てられた領域にその2値データを格納する。
【0077】
また、タイミング6においては、全ノズル列の記録処理が実施される。そのため、データ並替部111は、中ドットの2値データ5、大ドットOddの2値データ4、大ドットOddの2値データ3、小ドットの2値データ2を展開データ格納メモリ110から読み出す。そして、それら読み出したデータを並び替えた後、記録データ格納メモリ112に2値データを格納する。
【0078】
次に、図14を用いて、図7に示すタイミング7における記録制御処理について説明する。
【0079】
タイミング7においては、大ドットノズルEven/Odd及び小ドットノズルの記録処理は継続中であるが、中ドットノズルの記録処理は終了している(図7参照)。データ並替部111により大ドットノズルEven及び小ドットノズルの2値データが展開データ格納メモリ110から読み出されると、待避制御部115は、これに伴って展開データ格納メモリ110内の空きを検出する。この検出とともに、待避制御部115は、待避バッファ116から大ドットEvenの2値データ5及び小ドットノズルの2値データ4を読み出し、展開データ格納メモリ110の大ドットノズルEven及び小ドットノズルに割り当てられた領域にその格納する。
【0080】
また、タイミング7においては、大ドットノズルEven/Odd及び小ドットノズルの記録処理が実施される。そのため、データ並替部111は、大ドットOddの2値データ5、大ドットEvenの2値データ4、小ドットの2値データ3を展開データ格納メモリ110から読み出す。そして、それら読み出したデータを並び替えた後、記録データ格納メモリ112に2値データを格納する。
【0081】
次に、図15を用いて、図7に示すタイミング8における記録制御処理について説明する。
【0082】
タイミング8においては、大ドットノズルEven及び小ドットノズルの記録処理は継続中であるが、大ドットノズルOddの記録処理は終了している(図7参照)。データ並替部111により小ドットノズルの2値データが展開データ格納メモリ110から読み出されると、待避制御部115は、これに伴って展開データ格納メモリ110内の空きを検出する。この検出とともに、待避制御部115は、待避バッファ116から小ドットノズルの2値データ5を読み出し、小ドットノズルの割り当てられた領域にその2値データを格納する。
【0083】
また、タイミング8においては、大ドットノズルEven及び小ドットノズルの記録処理が実施される。そのため、データ並替部111は、大ドットEvenの2値データ5、小ドットの2値データ4を展開データ格納メモリ110から読み出す。そして、それら読み出したデータを並び替えた後、記録データ格納メモリ112に2値データを格納する。
【0084】
次に、図16を用いて、図7に示すタイミング9における記録制御処理について説明する。
【0085】
タイミング9においては、小ドットノズルの記録処理は継続中であるが、大ドットノズルEvenの記録処理は終了している(図7参照)。データ並替部111は、展開データ格納メモリ110内の小ドットノズルの格納領域から小ドットノズルの2値データ5を読み出し、その読み出したデータを並び替えた後、記録データ格納メモリ112に2値データを格納する。そして、最終的には、図17に示すタイミング10のように、全てのデータが展開及び記録され、この処理は終了する。
【0086】
ここで、各メモリへ書き込み/読み出しするデータ量について説明する。図18には、本実施形態に係わる各メモリへの書き込み/読み出しするデータ量と、従来技術における各メモリへの書き込み/読み出しするデータ量との比較結果が示される。図18を参照すれば分かるように、本実施形態の方式によれば、従来よりも展開処理時における展開データ格納メモリ110へのアクセス(書き込み及び読み出しデータ量)が減る。これにより、データ展開を効率的に行なえる。
【0087】
以上説明したように本実施形態によれば、記録ヘッド3の各ノズル列が主走査方向に物理的にずれていることを考慮して待避バッファ116を設け、その待避バッファ116を用いて展開処理を制御する。この構成により、記録処理の開始に際して、複数のノズル列に対応した多値データを同一タイミングで2値データに展開するようにした場合に生じる問題点を解決することができる。これにより、例えば、コスト増を招かずに展開処理の効率化を図れるとともに、システム全体のパフォーマンスを向上させることができる。
【0088】
以上が本発明の代表的な実施形態の一例であるが、本発明は、上記及び図面に示す実施形態に限定することなく、その要旨を変更しない範囲内で適宜変形して実施できるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のノズル列が配置される記録ヘッドを有し、該記録ヘッドを該ノズル列の配列方向と交差する方向に走査して記録を行なう記録装置であって、
前記複数のノズル列に対応する記録データが一つのデータとして構成される多値データを格納する多値データ格納手段と、
前記記録ヘッドによる記録の開始に際して、前記多値データ格納手段に格納された多値データを前記複数のノズル列各々に対応する所定のデータ単位分の2値データに同時に展開する展開手段と、
2値データ格納手段の空き領域に応じて、前記2値データ格納手段か待避手段かのいずれかに前記展開手段により展開された2値データを格納する制御を行なう待避制御手段と、
前記2値データ格納手段から2値データを取得し、該取得した2値データに基づいて前記記録ヘッドの駆動を制御する駆動制御手段と
を具備し、
前記待避制御手段は、
前記待避手段に2値データが格納されている場合に、前記2値データ格納手段の空き領域を検出した時には、前記待避手段に格納された2値データを前記2値データ格納手段に移して格納する
を具備することを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記記録ヘッドのノズル列の配列方向に合わせて多値データを縦横変換する縦横変換手段
を更に具備し、
前記多値データ格納手段は、
前記縦横変換手段により変換された多値データを格納する
ことを特徴とする請求項1記載の記録装置。
【請求項3】
前記待避手段の記憶領域は、
前記記録ヘッドの走査方向に沿ったノズル列間の配置位置の物理的ずれ量に基づいて決められる
ことを特徴とする請求項1記載の記録装置。
【請求項4】
前記記録ヘッドには、
前記走査方向に沿って異なるサイズのインク滴を吐出する複数のノズル列が配置され、
前記駆動制御手段は、
前記記録ヘッドによる異なるサイズのインク滴を用いた階調記録を制御する
ことを特徴とする請求項1記載の記録装置。
【請求項5】
前記2値データ格納手段は、
前記展開手段により展開された2値データを前記複数のノズル列毎に格納領域を分けて格納する
ことを特徴とする請求項1又は4記載の記録装置。
【請求項6】
複数のノズル列が配置される記録ヘッドを有し、該記録ヘッドを該ノズル列の配列方向と交差する方向に走査して記録を行なう記録装置の記録制御方法であって、
前記複数のノズル列に対応する記録データが一つのデータとして構成される多値データを多値データ格納手段に格納する格納工程と、
前記記録ヘッドによる記録の開始に際して、前記多値データ格納手段に格納された多値データを前記複数のノズル列各々に対応する所定のデータ単位分の2値データに同時に展開する展開工程と、
2値データ格納手段の空き領域に応じて、前記2値データ格納手段か待避手段かのいずれかに前記展開された2値データを格納する制御を行なう待避制御工程と、
前記2値データ格納手段から2値データを取得し、該取得した2値データに基づいて前記記録ヘッドの駆動を制御する駆動制御工程と
を含み、
前記待避制御工程では、
前記待避手段に2値データが格納されている場合に、前記2値データ格納手段の空き領域を検出した時には、前記待避手段に格納された2値データを前記2値データ格納手段に移して格納する
ことを特徴とする記録装置の記録制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2011−31585(P2011−31585A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−182886(P2009−182886)
【出願日】平成21年8月5日(2009.8.5)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】