説明

記録装置

【課題】記録ユニットを複数基備えた記録装置において、記録実行後の被記録材を速やかに排出して、次の記録の実行に移行でき、ページ順を維持して速やかにタイミング良く共通排出経路に被記録材を搬送できるようにする。
【解決手段】被記録材Pを個別に搬送して各記録ユニット3に導く複数の個別搬送経路13と、各個別搬送経路13から排出された記録実行後の被記録材Pを収容ユニット17に向けて搬送する単一の共通排出経路15とを備え、前記各個別搬送経路13には、被記録材Pの被記録面に記録を実行する記録ユニット3と、前記記録ユニット3の下流位置に設けられ、記録後の被記録材Pを一時的に待機させて共通排出経路15への被記録材Pの排出タイミングを調整する下流側待機領域部51とが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の記録ユニットが並列に配設され、前記複数の記録ユニットによって記録が行われた各被記録材を、単一の共通排出経路を通って収容ユニットに向けて排出する構成の記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
記録実行時間の短縮を図るために、すなわち記録実行速度の高速化を実現するために、単一の記録装置において、その動作速度自体を速くすることが行われる。具体的には、個々の記録装置における記録ヘッドの動作周波数を高めたり、記録ヘッドの大型化を図り、一度の稼動による記録幅を増大させることが行われている。
【0003】
しかし、前記記録ヘッドの動作周波数を高めたり、記録ヘッドを大型化することによって個々の記録装置の動作速度自体を速くするという構成を採用すると、記録ヘッドが複雑になり、記録ヘッドが大型化するという問題が発生する。また、用紙の搬送速度やキャリッジ等の稼動速度の高速化を図ることも可能であるが、モーター等の駆動装置の性能向上が不可欠である。
【0004】
そこで、個々の記録装置の動作速度を高速化することなく、既存の記録装置をそのまま使用して記録実行速度の高速化を達成する観点から、下記の特許文献1(特開2002−103749号公報)に記載されているように、単一の筺体内に複数の記録ユニットを設置面に垂直な縦方向に多段状に配設した、インクジェット式記録装置等の記録装置が提供されている。そして、このような記録装置の場合には、複数の記録ユニットを同時並行して動作させることによって複数ページに渡る記録を短時間で実行できるようになっている。
【0005】
特許文献1に開示されている記録装置は、各記録ユニットで記録が実行されて排出された用紙は、直ちに一つの共通排出経路に排出され、この一つの共通排出経路を通って用紙の収容ユニットに収容されるという構造である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、一つの記録ユニットによる記録が終了しても、その時点で共通排出経路中を他の記録ユニットからの記録後の用紙が搬送されていると、直ちに当該記録ユニットから用紙を排出することができず、無駄な待ち時間を発生させる問題がある。
【0007】
また、ページ毎の記録データにボリューム差があると、各記録ユニットの記録の開始の順番と記録の終了の順番が必ずしも一致しない場合が生じる。従って、用紙をページ毎に順列化して収容ユニットに収容したい場合には、更に余分な待ち時間が発生してしまう問題がある。
【0008】
そこで、本発明に係る幾つかの態様は、共通排出経路に排出中の被記録材が存在している状態であっても各記録ユニットから記録が実行された被記録材を排出して次の記録の実行に移行でき、被記録材のページ順に順列化して排出先の収容ユニットに向けて排出することができる記録装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明の第1の態様に係る記録装置は、被記録材への記録の実行が可能で、並列に配設されている複数の記録ユニットと、複数の前記各記録ユニットに被記録材を個別に搬送する複数の個別搬送経路と、複数の前記各個別搬送経路における前記各記録ユニットの下流側に、複数の個別排出経路によって接続され、該個別排出経路を介して送られる被記録材を受け入れ且つ収容ユニットに向けて排出する単一の共通排出経路と、前記各記録ユニットと前記単一の共通排出経路との間の搬送経路上に設けられ、被記録材を搬送可能に且つ個別に待機させておける複数の下流側待機領域部と、を備えていることを特徴とするものである。
【0010】
本態様によれば、下流側待機領域部が前記各記録ユニットと前記単一の共通排出経路との間の搬送経路上に設けられているので、該下流側待機領域部に被記録材を搬送可能に且つ個別に待機させておける。従って、各記録ユニットは、前記共通排出経路中に搬送中の被記録材が存在するか否かに関係なく、記録実行後の被記録材を直ちに下流側待機領域部に向けて排出し、次の被記録材の記録の実行に移行することが可能になる。
また、ページ毎の記録データにボリューム差があって、各記録ユニットの記録の開始の順番と記録の終了の順番が必ずしも一致しない場合が生じても、余分な待ち時間を発生させることなく、用紙をページ毎に順列化して収容ユニットに向けて排出することができる。
【0011】
本発明の第2の態様は、前記第1の態様の記録装置において、前記複数の個別搬送経路に複数の個別搬入経路によって接続され、供給元から送られる被記録材を搬送し且つ前記各個別搬入経路を介して前記各個別搬送経路に供給する単一の共通供給経路と、前記各個別搬入経路と前記共通供給経路との接続部位に設けられ、被記録材の搬送方向を当該個別搬入経路側と、前記共通供給経路の下流側とに切り替える分岐フラッパーと、前記各個別搬入経路の最上流位置と前記記録ユニットとの間の搬送経路上に設けられ、被記録材を搬送可能に待機させておける上流側待機領域部と、を備えていることを特徴とするものである。
【0012】
本態様によれば、前記各個別搬入経路の最上流位置と前記記録ユニットとの間の搬送経路上に設けられ、被記録材を搬送可能に待機させておける上流側待機領域部を備えているので、各上流側待機領域部に被記録材を待機させておくことにより、並列に配設されている複数の各記録ユニットに被記録材が到達するまでの搬送経路の長さの違いの影響を受けることなく、各記録ユニットへ被記録材を迅速に供給することができる。
【0013】
また、前記共通供給経路中を被記録材を搬送する搬送速度は、スループット向上の観点から通常高速に設定される。しかし、記録ユニットによって被記録材に記録を実行中の搬送速度は、画質劣化防止の観点からむやみに高速化することはできない。そのため、前記両者の搬送速度には大きな差が生じる。本態様の当該上流側待機領域部は、前記両者の搬送速度の差を吸収して各記録ユニットに適切に被記録材を供給することを可能にする。
【0014】
更に、各記録ユニットにおける記録データの軽重の違いにより、各記録ユニットにおける記録終了の順番に前後が生じてずれることがあるが、当該上流側待機領域部に被記録材を待機させておくことによって前記ずれを吸収して各記録ユニットに適切に被記録材を供給することを可能にする。
【0015】
本発明の第3の態様は、前記第1の態様又は第2の態様の記録装置において、前記下流側待機領域部には、当該下流側待機領域部に送られた記録実行後の被記録材を支持する待機トレイと、当該被記録材をニップした状態で保持し、所定のタイミングで下流の共通排出経路に向けて搬送する複数組の搬送用ローラーと、を備えていることを特徴とするものである。
【0016】
本態様によれば、記録実行後の被記録材は、待機トレイによって支持され、複数組の搬送用ローラーによってニップされた状態で姿勢が保持されているから、待機中は例えばインクで漏れた被記録材のカールの発生を防止することができる。そして、排出時は速やかに搬送用ローラーを回転させて共通排出経路に当該被記録材を送り出すことが可能になる。
【0017】
本発明の第4の態様は、前記第3の態様の記録装置において、複数組の前記搬送用ローラーは、記録実行中に被記録材を搬送する際の低速度と、前記下流側待機領域部から共通排出経路へ搬送する際の高速度とに搬送速度を切り替える変速駆動伝達機構を介して駆動が伝達されるように構成されていることを特徴とするものである。
【0018】
本態様によれば、記録実行後の被記録材を下流側待機領域部に受け入れる場合には、記録ユニットでの搬送ローラーないし排出ローラーと同程度の低速度で搬送用ローラーを回転させることで、搬送中に被記録材に与えるダメージを極力小さくすることができる。
また、共通排出経路に向けて排出する際は、搬送用ローラーを高速度で回転させて迅速な被記録材の排出を実現することが可能になる。
【0019】
本発明の第5の態様は、前記第4の態様の記録装置でおいて、前記変速駆動伝達機構は、単一の駆動モーターと、前記駆動モーターの出力軸の回転が伝達される電磁クラッチを備えた切替え軸と、前記電磁クラッチの接続状態を第1の側に切り替えることによって接続される第2低速搬送用ローラーと第2ワンウェイクラッチとを備えた第2低速ローラー軸と、前記第2低速ローラー軸から動力が伝達され、第1低速搬送用ローラーと第1ワンウェイクラッチとを備えた第1低速ローラー軸と、前記電磁クラッチの接続状態を第2の側に切り替えることによって接続される高速搬送用ローラーを備えた高速ローラー軸と、前記駆動モーターの出力軸と前記各ローラー軸との間に配設されている複数のプーリー及びベルトと、を具備することによって構成されていることを特徴とするものである。
【0020】
本態様によれば、単一の駆動モーターと電磁クラッチを使用することによって、第2低速ローラー軸と高速ローラー軸の異なる2軸に低速度と高速度の回転速度の違う2種類の回転を伝達することが可能になる。また、第1低速ローラー軸と第2低速ローラー軸には、それぞれ第1ワンウェイクラッチと第2ワンウェイクラッチが設けられているので、被記録材の排出時に高速搬送用ローラーが高速度で回転しても被記録材は、第1低速搬送用ローラーと第2低速搬送ローラーとからダメージを受けることなく円滑に排出される。
【0021】
本発明の第6の態様は、前記第1の態様から第5の態様のいずれか1つの態様の記録装置において、前記複数の記録ユニットによって、ページ順のある複数枚の被記録材に対して記録を実行する場合には、前記下流側待機領域部において、前記各記録ユニットでの記録終了タイミングにおける順番のずれを把握して当該被記録材をページ順に前記共通排出経路に送り出す制御部を備えていることを特徴とするものである。
【0022】
本態様によれば、ページ毎のデータにボリューム差等があって、各記録ユニットの記録の開始の順番と記録の終了の順番が異なるような場合でも、下流側待機領域部での待機時間の調整によって被記録材をページ順に収容ユニットに搬送して収容することが可能になる。
【0023】
本発明の第7の態様は、前記第6の態様の記録装置において、前記制御部は、前記下流側待機領域部と前記共通排出経路に対して設けられている位置センサーによって被記録材の搬送位置を検出し、前記位置センサーからの位置情報に基づいて前記複数組の搬送用ローラーの駆動の切り替えを実行するように構成されていることを特徴とするものである。
【0024】
本態様によれば、下流側待機領域部に対して設けた位置センサーによって該下流側待機領域部での被記録材の有無と現在の位置が把握できる。また、共通排出経路に対して設けた位置センサーによって共通排出経路での被記録材の有無と現在の位置を把握できる。従って、これらの位置情報を記録ユニットから下流側待機領域部への被記録材の排出のタイミングと、下流側待機領域部から共通排出経路への被記録材の搬送のタイミングの設定に使用することで、迅速で効率的な被記録材の搬送が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施例に係るインクジェット式記録装置の内部構造の概略を示す側断面図。
【図2】本発明の実施例に係る最下層の個別搬送経路を示す側断面図。
【図3】本発明の実施例に係る上流側待機領域部を示す側断面図。
【図4】本発明の実施例に係る上流側待機領域部を示す斜視図。
【図5】本発明の実施例に係る上流側待機領域部のカム軸周辺を拡大して示す斜視図。
【図6】本発明の実施例に係るカム軸の動作を示す説明図であって、ピックローラーがレリース位置、分岐フラッパーが開放位置にある時のカムとカムフラグの位置関係を示す側断面図であり、(a)はピックローラー動作カムの位置を示す側断面図、(b)は分岐フラッパー動作カムの位置を示す側断面図、(c)はピックカムフラグの位置を示す側断面図、(d)はフラップカムフラグの位置を示す側断面図。
【図7】本発明の実施例に係るカム軸の動作を示す説明図であって、ピックローラーがニップ位置、分岐フラッパーが閉鎖位置にある時のカムとカムフラグの位置関係を示す側断面図であり、(a)はピックローラー動作カムの位置を示す側断面図、(b)は分岐フラッパー動作カムの位置を示す側断面図、(c)はピックカムフラグの位置を示す側断面図、(d)はフラップカムフラグの位置を示す側断面図。
【図8】本発明の実施例に係るカム軸の動作を示す説明図であって、ピックローラーがレリース位置、分岐フラッパーが閉鎖位置にある時のカムとカムフラグの位置関係を示す側断面図であり、(a)はピックローラー動作カムの位置を示す側断面図、(b)は分岐フラッパー動作カムの位置を示す側断面図、(c)はピックカムフラグの位置を示す側断面図、(d)はフラップカムフラグの位置を示す側断面図。
【図9】本発明の実施例に係るカム軸の動作を示すカム動作図。
【図10】本発明の実施例に係る一つの記録ユニットに対応するピックローラーと分岐フラッパーのカムタイミングチャート。
【図11】本発明の実施例に係る下流側待機領域部を示す斜視図。
【図12】本発明の実施例に係る下流側待機領域部の搬送用ローラーの変速駆動伝達機構を示す斜視図。
【図13】本発明の実施例に係る下流側待機領域部を示す側断面図。
【図14】本発明の実施例に係る記録装置の用紙の搬送タイミングを示すダイヤグラム。
【図15】従来の記録装置の用紙の搬送タイミングを示すダイヤグラム。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に係る記録装置の実施の形態について詳細に説明する。最初に本発明の記録装置を実施するための形態としてインクジェット式記録装置を採り上げて、該インクジェット式記録装置の概略構成を図1に基づいて説明する。
図示のインクジェット式記録装置1は、被記録材(以下、用紙とも言う)Pの表裏両面への記録の実行が可能な記録ユニット3を一例として5基備えており、高速且つ大量印刷が可能である。尚、前記5基の記録ユニット3を総称したものを本明細書において記録ユニット群300と称する。更に、被記録材Pには、用紙の他、ポリエステル等のフィルム材が含まれる。
【0027】
このインクジェット式記録装置1は、筺体5の内部に用紙Pを搬送経路7に向けて供給する単一の供給ユニット9と、該供給ユニット9によって供給された用紙Pを搬送する一つの共通供給経路11と五つの個別搬送経路13(五つを区別するときは13A、13B、13C、13D、13Eと記す)と一つの共通排出経路15とを備える前記搬送経路7とを備えている。更に、前記五つの個別搬送経路13A、13B、13C、13D、13Eに対して個別に設けられる5基の記録ユニット3(五つを区別するときは3A、3B、3C、3D、3Eと記す)と、同じく5基設けられる個別反転ユニット31(五つを区別するときは31A、31B、31C、31D、31Eと記す)と、前記共通排出経路15の終端部に設けられ排出された用紙Pを収容する単一の収容ユニット17と、を備えている。
【0028】
このうち、供給ユニット9は、設置面GLに近い筺体5の下部に一例として設けられており、複数枚の用紙Pを積畳状態でセットし得る給送カセット19と、給送カセット19内にセットされた用紙Pを最上位の用紙Pから順番に1枚ずつ前記搬送経路7に向けて給送する図示しない給送ローラーを含む給送機構とを備えている。
共通供給経路11は、前記供給ユニット9が設けられている筺体5の図1における左方下部から設置面GLと離れる方向すなわち筺体5の上部に向けて、一例として設置面GLと垂直な縦方向Zに延びている。そして、該共通供給経路11の途中には、供給された用紙Pに搬送力を付与する一対のニップローラーによって構成されている、記録ユニット3での搬送速度よりも高速の送りローラー21が適宜の数、設けられている。
【0029】
個別搬送経路13は、図示のように横方向Yに沿って図1中、一例として左から右に向けて延びている。そして、設置面GLに近い最下層の個別搬送経路13Aから所定の間隔を隔てて設置面GLと離れる縦方向Zに向けて、個別搬送経路13B、13C、13D、13Eの順で合計五つの個別搬送経路13A、13B、13C、13D、13Eが設けられている。
尚、個別搬送経路13の具体的構成と、個別搬送経路13に対して配設されている記録ユニット3等の諸部材の構成と配置については後述する。
【0030】
共通排出経路15は、前記共通供給経路11と反対側の筺体5の図1中、右方下部から設置面GLと離れる方向すなわち筺体5の上部に向けて、一例として設置面GLと垂直な縦方向Zに沿って延びている。そして、該共通排出経路15の途中には、排出された用紙Pに搬送力を付与する一対のニップローラーによって構成されている、記録ユニット3での搬送速度よりも高速の送りローラー39が適宜の数、設けられている。
【0031】
また、共通排出経路15の終端部には、図1中、一例として右斜め上方に向けて傾斜している案内スロープ41が設けられている。該案内スロープ41の終端部に臨む案内スロープ41の下方には、排出された用紙Pを順番にスタックするための排出スタッカー43によって一例として構成される収容ユニット17が配設されている。
この他、筺体5内には、前記各記録ユニット3A、3B、3C、3D、3Eに各色のインクを供給する公知の単一のインク供給ユニット89と、前記各記録ユニット3A、3B、3C、3D、3Eから吐出され、記録の実行に使用されなかったインクを回収する公知の廃インクタンク91と、が設けられている。
【0032】
そして、このように構成されるインクジェット式記録装置1によって供給ユニット9にセットされた用紙Pは、5基の記録ユニット3A、3B、3C、3D、3Eに順番に供給され、並行的に記録が実行されて順番に単一の収容ユニット17に収容されて行く。
従って、記録ユニット3自体の性能を向上させた新規の記録ユニットを開発することなく現存の技術を用いて、用紙Pの記録実行速度の高速化を図ることが可能になっている。
【0033】
[実施例]
次に、図1、図2に基づいて本発明の特徴的構成である上流側待機領域45が設けられている個別搬送経路13の構成と、該個別搬送経路13に対して設けられる諸部材の概略の構成と配置について具体的に説明する。
尚、図2では一例として最下層の個別搬送経路13Aを図示しているが、他の個別搬送経路13B、13C、13D、13Eについても概略において構成は同じである。従って、最下層の個別搬送経路13Aを例にとって説明し、他の個別搬送経路13B、13C、13D、13Eの構成については、当該最下層の個別搬送経路13Aと相違する点について以下の説明の中でその都度言及することとする。
【0034】
個別搬送経路13には、用紙Pの被記録面にインクを吐出して記録を実行する記録ユニット3と、該記録ユニット3の上流位置に配置され、記録前の用紙Pを一時的に待機させて当該記録ユニット3の記録実行領域47への用紙Pの供給タイミングを調整する上流側待機領域部45(五つを区別するときは45A、45B、45C、45D、45Eと記す)と、が設けられている。
【0035】
また、本実施例にあっては、前記記録ユニット3の上流側の近傍位置に用紙Pの表裏面のいずれか一面に記録が実行された後、当該用紙Pを表裏反転させて再び当該記録ユニット3の記録実行領域47に導く個別反転ユニット31が設けられている。この個別反転ユニット31による反転のための領域を前記記録実行領域47に対して反転領域49と称す。
【0036】
更に、本実施例にあっては、前記記録ユニット3の下流位置に設けられ、記録実行後の用紙Pを一時的に待機させて前記共通排出経路15に対する用紙Pの排出タイミングを調整する下流側待機領域部51(五つを区別するときは51A、51B、51C、51D、51Eと記す)が設けられている。この下流側待機領域部51は、用紙Pの被記録面に吐出されたインクの乾燥を促すための領域としての利用ができるようになっている。
【0037】
記録ユニット3は、各色のインクを用紙Pの被記録面に吐出して記録を実行する記録ヘッド53と、該記録ヘッド53を搭載して一例として用紙Pの幅方向に往復移動するキャリッジ55と、前記記録ヘッド53のインク吐出面と対向する位置にギャップPGを隔てて配設される用紙Pの支え部57とを備えている。
【0038】
また、記録実行領域47には、前記記録ヘッド53と支え部57との間のギャップPGに向けて用紙Pを給送するための一対のニップローラーによって構成されている給送ローラー59と、用紙Pの搬送を案内する案内部材61と、該案内部材61の終端位置に設けられ、用紙Pに搬送力を付与する一対のニップローラーによって構成されている搬送ローラー63と、該記録実行領域47の下流側の端部に設けられ、記録が実行された用紙Pを前記下流側待機領域部51に導くための一対のニップローラーによって構成されている排出ローラー65とが設けられている。
【0039】
反転領域49は、本実施例では図2、図3に示すように、前記記録実行領域47の上流側の近傍位置に設けられている。該反転領域49には、一例として上流側斜め上方に向けて突出した形状の個別反転ユニット31が配設されている。
個別反転ユニット31は、内部にループ状の用紙Pの反転経路69が形成されているハウジング71と、前記反転経路69と個別搬送経路13との合流部に設けられる分岐フラッパー73と、反転経路69内に供給された用紙Pを表裏反転させるための搬送力を付与する反転ローラー75とを備えている。
【0040】
上流側待機領域部45には、上流側に前記共通供給経路11を通って送られてきた用紙Pを上述した5つの個別搬送経路13A、13B、13C、13D、13Eに各別に導くための湾曲した5つの個別搬入経路23(五つを区別するときは23A、23B、23C、23D、23Eと記す)が設けられている。また、前記個別搬入経路23の下流位置に上流側待機領域部45に供給された用紙Pを支持する一例として板状の給紙台96によって構成される支持部材95と、当該用紙Pを所定のタイミングで下流の記録ユニット3に向けて供給する送り機構97と、が設けられている。
【0041】
ここで、個別搬入経路23は、前記共通供給経路11の途中4個所と終端部1個所の計5個所に設けられており、このうち共通供給経路11の終端部に位置する最上部の個別搬入経路23Eを除いた4個所の個別搬入経路23A、23B、23C、23Dと共通供給経路11との接続部には、一例として回動式の分岐フラッパー25(五つを区別するときは25A、25B、25C、25Dと記す)が設けられている。
また、前記5つの個別搬入経路23A、23B、23C、23D、23Eにも上述した共通供給経路11に対して設けられている送りローラー21と同様、記録ユニット3での搬送速度よりも高速の送りローラー27が設けられている。
【0042】
前記分岐フラッパー25は、後述するカム機構99によって所定の角度の範囲で回動し得るように駆動される回動式のフラッパーである。
そして、分岐フラッパー25を共通供給経路11側に回動させた第1の位置では、被記録材の搬送方向を個別搬入経路23(個別搬送経路13)側となるように経路を開放する。一方、分岐フラッパー25を個別搬入経路23側に回動させた第2の位置では、個別搬入経路23側を閉鎖し、且つ共通供給経路11側を下流に向かって送れるように開放した状態に切り替わるように設定されている。
【0043】
図2乃至図5に示したように、前記送り機構97は、本実施例では揺動アーム101の自由端において支持されているピックローラー103を有することによって構成されている。前記揺動アーム101は、付勢バネ107によって自由端が前記支持部材95側に偏倚するように付勢されており、前記揺動アーム101の基端部には後述するピックローラー動作カム109に当接するカムフォロワー111が揺動アーム101と一体に接続されている。
【0044】
そして、前記ピックローラー103は、前記付勢バネ107の付勢力に抗して揺動する揺動アーム101の揺動位置によって、上流側待機領域部45に供給されて待機中の用紙Pに当接するニップ位置と、当該用紙Pから離れたレリース位置とを切り替えることができるようになっている。
また、前記ピックローラー103は、少なくとも下流の記録ユニット3での記録が開始され、用紙Pの搬送方向の後端が前記ピックローラー103を通過するまでの間は、レリース位置に位置するように設定されており、記録の実行に悪影響を及ぼす不要な負荷を用紙Pにかけないように構成されている。
【0045】
また、図4に示したように、前記ピックローラー103には、駆動モーター113の逆転方向(第2の方向)CCWの回転が複数のプーリーとベルトあるいはギアー輪列を介して分配軸115、ローラー駆動軸117、第1中継軸119、第2中継軸121と伝達され、最終的にピックローラー103を支持しているピックローラー軸123に伝達されることによって下流の記録ユニット3に用紙Pを供給する所望の回転力が得られるようになっている。
また、前記駆動モーター113の逆転方向(第2の方向)CCWの回転は、上述したようにローラー駆動軸117に伝達されており、該ローラー駆動軸117に対して設けられている前記一対の送りローラー27における駆動ローラーにも前記回転力が伝達されるようになっている。
【0046】
そして、前記ピックローラー103の回転と、ピックローラー103のニップ位置とレリース位置の切り替えと、前記分岐フラッパー25による用紙Pの搬送方向の切り替えは、正逆転可能な単一の上述した駆動モーター113を駆動源とするカム機構99を使用して実行されている。
図4、図5に示したように、カム機構99は、前記ピックローラー103のニップ位置とレリース位置とを切り替えるピックローラー動作カム109と、該ピックローラー動作カム109に当接するカムフォロワー111と、前記分岐フラッパー25を回動させて用紙Pの供給経路を切り替える分岐フラッパー動作カム125と、該分岐フラッパー動作カム125に当接するカムフォロワー127と、前記ピックローラー動作カム109と前記分岐フラッパー動作カム125を一体に備えるカム軸129と、前記駆動モーター113の動力を前記カム軸129に伝達する接続状態と、前記カム軸129に伝達しない非接続状態とを切り替えるワンウェイクラッチ131と、を具備している。
【0047】
また、図5に示したように、本実施例にあっては、前記カム軸129には前記ピックローラー動作カム109の回転位置を検出するためのピックカムタイミングフラグ133と、前記分岐フラッパー動作カム125の回転位置を検出するためのフラップカムタイミングフラグ135が設けられている。そして、前記2枚のタイミングフラグ133、135の近傍には、これらのタイミングフラグ133、135の位置を電気信号として出力するための2つのタイミングフラグセンサー137、139がそれぞれ設けられている。
【0048】
そして、前記カム軸129には、上述した駆動モーター113の回転が複数のプーリー及びベルトと上述したワンウェイクラッチ131を介して上述した分配軸115を中継して伝達されている。
具体的には、前記駆動モーター113を正転方向(第1の方向)CWに回転させると、駆動モーター113の回転は、分配軸115とワンウェイクラッチ131を介してカム軸129に伝達され、カム軸129を所定の方向(本実施例では駆動モーター113の回転方向と同じ正転方向)に回転させる。
【0049】
一方、前記駆動モーター113を逆転方向(第2の方向)CCWに回転させると、前記ワンウェイクラッチ131が非接続状態になるため、駆動モーター113の回転はカム軸129に伝達されないようになっている。
また、前記駆動モーター113を停止させた時は、当然、前記ピックローラー103の回転と、前記ピックローラー103のニップ位置とレリース位置の切り替えと、分岐フラッパー25の回動による用紙Pの搬送方向の切り替えの3つの動作はすべて停止される。
【0050】
これに伴ない、ピックローラー動作カム109、分岐フラッパー動作カム125、ピックカムタイミングフラグ133及びフラップカムタイミングフラグ135のそれぞれの位置は、ピックローラー103がレリース位置、分岐フラッパー25が開放位置(上述した第1の位置)にある時には、図6に示す位置になる。
同様に、前記2枚のカム109、125と前記2枚のタイミングフラグ133、135のそれぞれの位置は、ピックローラー103がニップ位置、分岐フラッパー25が閉鎖位置(上述した第2の位置)にある時には、図7の位置になる。
ピックローラー103がレリース位置、分岐フラッパー25が閉鎖位置(上述した第2の位置)にある時には、図8の位置になる。
【0051】
また、図2に示すように、供給ユニット9と接続される共通供給経路11の始端部には、供給ユニット9から供給される用紙Pを順番にカウントするピックセンサー141が設けられており、給紙台96の上流端には、上流側待機領域部45での用紙Pの位置を検出するための第1給紙台センサー143が設けられ、給紙台96の下流端には同じく上流側待機領域部45での用紙Pの位置を検出するための第2給紙台センサー145が設けられている。
【0052】
そして、これらの3種類のセンサー141、143、145によって検出された情報と、図示しないPFセンサーによって検出された記録ユニット3での用紙の位置情報とが図示しない制御部に送られる。そして、最適なタイミングで迅速に共通供給経路11から上流側待機領域部45への用紙Pの供給と、上流側待機領域部45から記録ユニット3側へ向けての用紙Pの供給がそれぞれ実行されるように構成されている。
【0053】
図11〜図13に示すように、下流側待機領域部51は、前記記録実行領域47の排出ローラー65の下流位置に設けられている。そして、排出ローラー65によって記録実行領域47から排出された用紙Pを支持する待機トレイ79と、前記待機トレイ79の下流位置から前記共通排出経路15との接続部にかけて設けられている滑らかに湾曲している搬出経路33(五つを区別するときは33A、33B、33C、33Dと記す)と、前記待機トレイ79の下流位置1個所と、前記搬出経路33の始端部2個所に設けられている複数の搬送用ローラー81、83、35とを備えている。
【0054】
また、下流側待機領域部51に供給された用紙Pは、下流側待機領域部51の中間部において前記待機トレイ79によって支持されると共に、搬送方向の前端部において前記複数の搬送用ローラー81、83、35によってニップされた状態で保持されるようになっている。
そして、用紙Pが待機トレイ79上で一時待機中、前記複数の搬送用ローラー81、83、35によって用紙Pの姿勢が保持されるので、インクで濡れた用紙Pのカールの発生が防止される。
【0055】
前記搬送用ローラー81は、待機トレイ79の下流位置に設けられる前記記録ユニット3における排出ローラー65と同様、従動ローラーが周面に多数の突起部が形成されたスターローラーによって構成されている同様の構造、搬送速度を有する低速のローラー(この搬送用ローラーを第1低速搬送用ローラー81という)である。
また、前記搬送用ローラー83は、搬出経路33の始端部のうち上流側に設けられ、従動ローラーがゴムローラーによって構成されている上記記録ユニット3での搬送速度と同程度の速度の低速のローラー(この搬送用ローラーを第2低速搬送用ローラー83という)である。
【0056】
また、前記搬送用ローラー35は、搬出経路33の始端部のうち下流側に設けられ、従動ローラーがゴムローラーによって構成されている上記共通排出経路15の送りローラー39と同様、上記記録ユニット3での搬送速度よりも高速のローラー(この搬送用ローラーを高速搬送用ローラー35という)である。
【0057】
そして、これらの3種類の搬送用ローラー81、83、35には、次に説明する複数のプーリー及びベルトと、1つの電磁クラッチ149と、2個のワンウェイクラッチ163、167とを備える変速駆動伝達機構155を介して上述した低速ないし高速の2種類の回転が伝達される。
図12に示すように、変速駆動伝達機構155は、駆動モーター157と、該駆動モーター157の出力軸の回転が最初に伝達される切替え軸159と、該切替え軸159に対して設けられている電磁クラッチ149と、該電磁クラッチ149の接続状態を第1の側(低速ローラー側)に切り替えることによって接続される第2低速ローラー軸161と、該第2低速ローラー軸161に対して設けられている第2ワンウェイクラッチ163と、前記第2低速ローラー軸161から動力が伝達される第1低速ローラー軸165と、該第1低速ローラー軸165に対して設けられている第1ワンウェイクラッチ167と、前記電磁クラッチ149の接続状態を第2の側(高速ローラー側)に切り替えることによって接続される高速ローラー軸169と、これらの各ローラー軸161、165、169と前記駆動モーター157の出力軸との間に配設されている複数のプーリー及びベルトと、を具備することによって構成されている。
【0058】
また、図2に示すように、搬出経路33における前記第2低速搬送用ローラー83の上流位置と、高速搬送用ローラー35の下流位置と、前記共通排出経路15の2対ずつ設けられている送りローラー39、39の中間位置には、下流側待機領域部51から排出される用紙Pの搬送位置を検出する3種類の位置センサー171、173、175が5組ずつ設けられている。
そして、これら3種類の位置センサー171、173、175によって検出された用紙Pの位置情報が図示しない制御部に送られることによって、用紙Pの各ページの記録データボリューム等に差があった場合でも、収容ユニット17には常にページ順に用紙Pが排出されるように下流側待機領域部51での待機時間の調整が図られている。
【0059】
尚、前記五つある個別搬送経路13A、13B、13C、13D、13Eに設けられている五つの上流側待機領域部45A、45B、45C、45D、45Eを総称したものを本明細書において記録前待機エリア400として称し、同じく五つの下流側待機領域部51A、51B、51C、51D、51Eを総称したものを本明細書において記録後待機エリア500と称す。
【0060】
次に、このようにして構成される本実施例に係る記録装置1の各個別搬送経路13での作動態様を、(1)記録前待機時と、(2)記録実行時と、(3)記録後待機時とに分けて説明する。
(1)記録前待機時
供給ユニット9から一例として608mm/s程度の低速で送られた用紙Pが共通供給経路11に供給されると、共通供給経路1に配設されている送りローラー21によって加速されて一例として1300mm/s程度の高速で縦方向Zの上方に向けて搬送されるようになる。
【0061】
そして、図6に示すように、上流側待機領域部45に用紙Pが存在していない個別搬送経路13では、ピックローラー103はレリース位置、分岐フラッパー25は開放し、用紙Pの供給を受け入れる第1の位置になっている。従って、用紙Pは、共通供給経路11から当該個別搬送経路13に進入し、個別搬入経路23の送りローラー27からの送り力を得て上流側待機領域部45の給紙台96によって支持された位置に送られて待機状態に移行する。
【0062】
次に、図9、図10に示すように、駆動モーター113が正転方向(第1の方向)CWに回転を始めると、ピックローラー103はニップ方向に徐々に移動を開始し、分岐フラッパー25は個別搬送経路3を閉鎖する方向に徐々に回動するようになる。
そして、カム軸129が図9中、110°付近の位置まで回転すると、図7及び図9に示すように、ピックローラー103はニップ位置、分岐フラッパー25は個別搬送経路13を閉鎖する第2の位置に移行する。
【0063】
続いて、記録ユニット3の図示しないPFセンサーによって記録の実行に伴なう用紙Pの搬送が確認されていなければ、駆動モーター113が、図10に示すように、逆転方向(第2の方向)CCWに回転し、ワンウェイクラッチ131が非接続状態になってカム軸129への動力伝達を遮断するため、前記ピックローラー103と分岐フラッパー25の位置はそのままで、ピックローラー103が搬送方向に回転を始めるようになる。
これに伴ない、上流側待機領域部45で一時待機していた用紙Pは、前記ピックローラー103と給紙台96との挟圧送り作用によって下流の記録ユニット3に向けて供給されるようになる。
【0064】
図10に示すように、用紙Pの後端が第1給紙台センサー143から外れ、用紙Pの前端が記録ユニット3の図示しないPFセンサーに掛かった後のタイミングで、駆動モーター113は再び正転方向(第1の方向)CWに回転するようになる。そして、図9に示すように、ピックローラー103はレリース方向に徐々に移動を開始するが、分岐フラッパー25は依然、個別搬送経路13を閉鎖する第2の位置に留まっている。
【0065】
尚、図10において、ピックセンサーのタイミングチャートから理解できるように、最初の山は最下段の記録ユニット3Aで記録が行われる用紙Pの通過を示しており、2番目の山はその一段上に位置する記録ユニット3B用の用紙の通過を示している。以下、3番目、4番目、5番目の各山は、記録ユニット3C,3D,3Eの用紙の通過を示している。そして、6番目の山は再び記録ユニット3A用の用紙の通過を示している。以下、同様の繰り返しである。
【0066】
そして、カム軸129が、図9中、240°付近の位置まで回転すると、図8及び図9に示すように、ピックローラー103はレリース位置となり、用紙Pの搬送に負荷を与えない状態になり、分岐フラッパー25は引き続き個別搬送経路13を閉鎖する第2の位置に留まっている。
また、ここで駆動モーター113の回転は、図10に示すように、一旦停止され、ピックローラー3の回転と、カム軸129の回転は停止される。
【0067】
(2)記録実行時
記録実行領域47に受け渡された用紙Pは、記録ユニット3の給送ローラー59の挟圧送り作用と、案内部材61による案内作用とによって記録ヘッド53と支え部57との間のギャップPGに向けて給送される。
そして、用紙Pの被記録面の始端が記録ヘッド53下方のインク吐出位置に至ると、支え部57によって記録ヘッド53との間の所定のギャップPGが維持された状態でキャリッジ55によって往復移動される記録ヘッド53のインク吐出面からインクが吐出され、用紙Pの被記録面への記録が実行される。
【0068】
尚、記録実行領域47での用紙Pの搬送は、搬送ローラー63と排出ローラー65によって行われ、排出ローラー65によって記録実行領域47から排出された用紙Pは、下流側待機領域部51に送られる。
また、用紙Pの表裏両面に記録を実行する場合には、前記下流側待機領域部51から再び記録実行領域47に用紙Pを戻し、反転領域49で用紙Pを反転させた後、前記と同様の手順で残りの一面の記録を実行する。
【0069】
一方、駆動モーター113は、所定時間停止後、図10に示すように、正転方向(第1の方向)CWに回転するようになり、カム軸129を回転させる。これに伴ない、図9に示すように、ピックローラー103は依然としてレリース位置を維持しているが、分岐フラッパー25が個別搬送経路13を閉鎖していた第2の位置から個別搬送経路13を開放する方向に回転するようになる。そして、図9中、360°付近の位置でピックローラー103がレリース位置、分岐フラッパー25が個別搬送経路13を開放する第1の位置に存する図6の当初の状態に戻る。
【0070】
(3)記録後待機時
記録実行領域47から排出された用紙Pは、下流側待機領域部51に送られ、待機トレイ79と3種類の搬送用ローラー81、83、35によって保持された状態で待機状態に置かれる。
【0071】
尚、記録実行領域47からの用紙Pの受け入れ時は、電磁クラッチ149がON状態になっており、第1低速搬送用ローラー81及び第2低速搬送用ローラー83の搬送速度は、記録ユニット3の排出ローラー65の搬送速度と同期した低速で運転されている。
【0072】
また、用紙Pが下流側待機領域部51に到達すると、前記第1低速搬送用ローラー81と第2低速搬送用ローラー83は、それぞれのローラー軸165、161に取り付けられている第1ワンウェイクラッチ167と第2ワンウェイクラッチ163の作用で、記録実行品質に悪影響を及ぼす用紙Pのダメージを防止する。
その後、電磁クラッチ149がOFF状態となり、用紙Pは下流側待機領域部51で共通排出経路15への排出の順番を待つこととなる。
【0073】
位置センサー171、173、175によって検出された位置情報から制御部が排出の命令を出すと、前記電磁クラッチ149は再びON状態となり、高速搬送用ローラー35を一例として1400mm/s程度の高速で回転させ、共通排出経路15に受け渡す。
そして、前記下流側待機領域部51を設けた本実施例の記録装置1にあっては、各ページの記録データボリュームに差がある場合でも、各個別搬送経路13での記録後待機時間を調整することで最適なタイミングで用紙Pを共通排出経路15に供給できるため、収容ユニット17上の用紙Pはページ順に排出された状態になる。
【0074】
このように本実施例の記録装置1によれば、各記録ユニット3A、3B、3C、3D、3Eへの効率良く迅速な用紙Pの供給が、単一の駆動モーター113とカム機構99等を使用した簡単な構造で実現でき、更に記録実行後の用紙Pの排出も、単一の駆動モーター157と電磁クラッチ149等を使用した簡単な構造でページ順を乱すことなく迅速に実現できるようになる。
【0075】
そして、前記上流側待機領域部45と前記下流側待機領域部を設けたことによって、2順目(6枚目〜10枚目)以降の用紙Pの搬送開始タイミングが、図15に示す従来の場合に比べて、図14に示す本実施例の場合には2秒程度速くなり、多数枚の用紙Pに記録を実行する場合の記録実行速度が大幅に高速化される。
【0076】
〔他の実施例〕
本発明に係る記録装置は、以上述べたような構成を基本とするものであるが、本願発明の要旨を逸脱しない範囲内の部分的構成の変更や省略等を行うことも勿論可能である。
例えば、記録ユニット3の基数は、5基に限らず、2基、3基、4基でもよいし、6基以上設けることも可能である。これに伴なって、個別搬送経路13、上流側待機領域部45、下流側待機領域部51の個数や個別反転ユニット31の基数も適宜、増減することが可能である。
【0077】
また、両面印刷非対応の記録ユニット3を採用することも可能であり、その場合には前記実施例において設けた反転領域49を省略することが可能である。
また、上流側待機領域部45において設けた支持部材95は、前記実施例において設けた給紙台96に代えて用紙Pの下面(被搬送面)を支持する図示しない支持ローラーによって構成することが可能である。そして、この場合には、一部の支持ローラーをピックローラー103とニップする位置に設けてピックローラー103と当該支持ローラーとの挟持送り作用で記録実行領域47に向けて用紙Pを供給できるように構成する。
この他、送り機構97の構成部材であるピックローラー103に代えて、側面視形状がD字形(ローラー周面の一部がカットされた形状)のローラーによって構成することも可能である。また、記録装置1は、インクジェット式記録装置に限らず、レーザープリンターやファクシミリ、複写機等であってもよい。
【符号の説明】
【0078】
1 インクジェット式記録装置(記録装置) 3 記録ユニット
5 筺体 7 搬送経路
9 供給ユニット 11 共通供給経路
13 個別搬送経路 15 共通排出経路
17 収容ユニット 19 給送カセット
21 送りローラー 23 個別搬入経路
25 分岐フラッパー 27 送りローラー
31 個別反転ユニット 33 搬出経路
35 高速搬送用ローラー 39 送りローラー
41 案内スロープ 43 排出スタッカー
45 上流側待機領域部 47 記録実行領域
49 反転ゾーン 51 下流側待機領域部
53 記録ヘッド 55 キャリッジ
57 プラテン 59 給送ローラー
61 案内部材 63 搬送ローラー
65 排出ローラー 69 反転経路
71 ハウジング 73 分岐フラッパー
75 反転ローラー 79 待機トレイ
81 第1低速搬送用ローラー 83 第2低速搬送用ローラー
89 インク供給ユニット 91 廃インクタンク
95 支持部材 96 給紙台
97 送り機構 99 カム機構
101 揺動アーム 103 ピックローラー
107 付勢バネ 109 ピックローラー動作カム
111 カムフォロワー 113 駆動モーター
115 分配軸 117 ローラー駆動軸
119 第1中継軸 121 第2中継軸
123 ピックローラー軸 125 分岐フラッパー動作カム
127 カムフォロワー 129 カム軸
131 ワンウェイクラッチ 133 ピックカムタイミングフラグ
135 フラップカムタイミングフラグ 137 タイミングフラグセンサー
139 タイミングフラグセンサー 141 ピックセンサー
143 第1給紙台センサー 145 第2給紙台センサー
149 電磁クラッチ 155 変速駆動伝達機構
157 駆動モーター 159 切替え軸
161 第2低速ローラー軸 163 第2ワンウェイクラッチ
165 第1低速ローラー軸 167 第1ワンウェイクラッチ
169 高速ローラー軸 171 位置センサー
173 位置センサー 175 位置センサー
300 記録ユニット群 400 記録前待機エリア
500 記録後待機エリア P 用紙(被記録材)
GL 設置面 Z 縦方向
Y 横方向 PG ギャップ
CW 正転方向(第1方向) CCW 逆転方向(第2の方向)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0079】
【特許文献1】特開2002−103749号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被記録材への記録の実行が可能で、並列に配設されている複数の記録ユニットと、
複数の前記各記録ユニットに被記録材を個別に搬送する複数の個別搬送経路と、
複数の前記各個別搬送経路における前記各記録ユニットの下流側に、複数の個別排出経路によって接続され、該個別排出経路を介して送られる被記録材を受け入れ且つ収容ユニットに向けて排出する単一の共通排出経路と、
前記各記録ユニットと前記単一の共通排出経路との間の搬送経路上に設けられ、被記録材を搬送可能に且つ個別に待機させておける複数の下流側待機領域部と、を備えていることを特徴とする記録装置。
【請求項2】
請求項1に記載の記録装置において、
前記複数の個別搬送経路に複数の個別搬入経路によって接続され、供給元から送られる被記録材を搬送し且つ前記各個別搬入経路を介して前記各個別搬送経路に供給する単一の共通供給経路と、
前記各個別搬入経路と前記共通供給経路との接続部位に設けられ、被記録材の搬送方向を当該個別搬入経路側と、前記共通供給経路の下流側とに切り替える分岐フラッパーと、
前記各個別搬入経路の最上流位置と前記記録ユニットとの間の搬送経路上に設けられ、被記録材を搬送可能に待機させておける上流側待機領域部と、を備えていることを特徴とする記録装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の記録装置において、
前記下流側待機領域部には、当該下流側待機領域部に送られた記録実行後の被記録材を支持する待機トレイと、
当該被記録材をニップした状態で保持し、所定のタイミングで下流の共通排出経路に向けて搬送する複数組の搬送用ローラーと、を備えていることを特徴とする記録装置。
【請求項4】
請求項3に記載の記録装置において、
複数組の前記搬送用ローラーは、記録実行中に被記録材を搬送する際の低速度と、前記下流側待機領域部から共通排出経路へ搬送する際の高速度とに搬送速度を切り替える変速駆動伝達機構を介して駆動が伝達されるように構成されていることを特徴とする記録装置。
【請求項5】
請求項4に記載の記録装置において、前記変速駆動伝達機構は、
単一の駆動モーターと、
前記駆動モーターの出力軸の回転が伝達される電磁クラッチを備えた切替え軸と、
前記電磁クラッチの接続状態を第1の側に切り替えることによって接続される第2低速搬送用ローラーと第2ワンウェイクラッチとを備えた第2低速ローラー軸と、
前記第2低速ローラー軸から動力が伝達され、第1低速搬送用ローラーと第1ワンウェイクラッチとを備えた第1低速ローラー軸と、
前記電磁クラッチの接続状態を第2の側に切り替えることによって接続される高速搬送用ローラーを備えた高速ローラー軸と、
前記駆動モーターの出力軸と前記各ローラー軸との間に配設されている複数のプーリー及びベルトと、を具備することによって構成されていることを特徴とする記録装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の記録装置において、
前記複数の記録ユニットによって、ページ順のある複数枚の被記録材に対して記録を実行する場合には、前記下流側待機領域部において、前記各記録ユニットでの記録終了タイミングにおける順番のずれを把握して当該被記録材をページ順に前記共通排出経路に送り出す制御部を備えていることを特徴とする記録装置。
【請求項7】
請求項6に記載の記録装置において、
前記制御部は、前記下流側待機領域部と前記共通排出経路に対して設けられている位置センサーによって被記録材の搬送位置を検出し、前記位置センサーからの位置情報に基づいて前記複数組の搬送用ローラーの駆動の切り替えを実行するように構成されていることを特徴とする記録装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−32066(P2011−32066A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−181275(P2009−181275)
【出願日】平成21年8月4日(2009.8.4)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】