説明

記録読み取り装置

【課題】
本発明の目的は、記憶容量が大きく、また記録が書き込まれた記録媒体を記録読み取り装置から分離することができる可換性のある記録読み取り装置を実現することである。
【解決手段】
X線源とX線検出器アレイの間に円盤状媒体を配置し、媒体を回転することによってX線投影像のスキャンをおこない、媒体のX線吸収率の3次元分布を測定する事により、データ読み取りをおこなう記録再生装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線コンピュータ・トモグラフィーを利用したデジタル情報の記録再生技術に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、各種の固体メモリが知られているが、例えば、大容量のROM(Read Only Memory)として使われているCD(Compact Disk)、DVD(Digital Versatile Disk)など、光による単一ビットの再生をおこなう記録の読み出し方式を用いるものにおいては、片面につき最大1〜2層程度の多層の記録しか実現出来ない。これは、光の領域においては、散乱成分が大きいために、より大きな規模の多層化が困難であるためである。
【0003】
また、別の方式の固体メモリとして、ホログラフィック・メモリが知られている。ホログラフィック・メモリは、媒体に3次元的に情報を書き込めるため、情報の高密度化が可能で記憶容量が増大が見込める。しかし、ホログラフィック・メモリにおいては、参照光と情報光を異なる光軸で構成するため光学系が複雑であること、記録媒体を光学系から分離して記録媒体を交換することが難しいこと、記録媒体に光の波長低度の平坦性が要求されること、などの多くの欠点を持っている。
【0004】
一方、医療診断や工業用非破壊検査においてX線コンピュータ・トモグラフィ(CT)が利用されている。X線CT技術を用いることによって、人体または物体3次元の内部形状を知る事が出来る。しかし、従来におこなわれていたX線CT技術は、X線による人体や物体の観察を目的としたものである。例えば、特開平06−28454号には、X線コーンビームと2次元検出器を備え、逆ラドン変換で物体の3D映像を再構成する装置が開示されている。しかしながら、情報の記録を目的として作製された物体の読み出し装置としてX線CT装置が用いられることは知られていなかった。
【特許文献1】特開平06−28454号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、記憶容量が大きく、記録が書き込まれた記録媒体を記録読み取り装置から分離することができる可換性のある記録読み取り装置を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した従来の問題点を解決するために、本発明は、X線発生装置と、X線検出器アレイとを具備し、前記X線発生装置とX線検出器アレイの間にデータが記録された媒体を配置し、前記X線発生装置及びX線検出器アレイに対して相対的に移動しながら、前記媒体に前記X線発生装置からX線を照射することにより、前記媒体に記録されたデータをX線投影データとして前記X線検出アレイで検出し、この検出された投影データから前記媒体に記録されたデータを算出し、データの読み取り行うことを特徴とする記録読み取り装置を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、記憶容量が大きく、記録が書き込まれた記録媒体を記録読み取り装置から分離することができる可換性のある記録読み取り装置を実現することである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の一実施例について、以下、詳細に説明する。
【0009】
図1は、本発明の一実施形態に係る記録読み取り装置の全体構成の例を模式的に示す図である。ここで、図1(a)に示すように、X線源1から角錐状のX線ビーム(コーンビーム)が放射される。また、X線検出器アレイ3はX線源1に相対して配置され、その間の空間に記録媒体2が配置される。X線検出器アレイ3は、ここでは2次元のアレイで説明するが、1次元のアレイを用いることも可能である。
【0010】
情報(データ)を記録している媒体2は、図1(b)に示すように円盤状である。この媒体2は、相対的に原子番号の小さい元素を主成分とする部分と、相対的に原子番号の大きい元素を主成分とする部分とがX線源の実効焦点の大きさを基本単位とする間隔で並び、かつ、X線吸収率が異なる物質がパターン化され、電子密度分布によって符号化された情報として記録されている。また、円盤面内ばかりでなく、円盤の厚み方向にも重ねて原子番号の大きな元素と小さな元素の位置によって記録がおこなわれる。
【0011】
このような媒体として、例えば、ポリイミド膜上にAl、Cu等の金属薄膜を所望パターンにパターニングしこれを積層したものを用いたり、カーボン系のポリマー膜上に所望パターンで形成されたシリコン系のポリマー膜を積層したものを用いることができる。後者の場合、プレス加工等によってより簡便に作成することができる。
【0012】
図1(a)の媒体2には、その記録状態の一例として電子密度の分布が白黒で模式的に表されている。
【0013】
記録の再生は、図1(c)に示すように、円盤状の媒体2を円盤の中心軸4の周りに回転させ、回転に対応して媒体2の内部のX線吸収率分布をスキャンし、X線投影データとしてX線検出器アレイ3で検出する。このような円盤の回転とX線検出器3の検出出力の投影データを逆ラドン変換によって元の円盤に書き込まれた原子番号の大小によってパターン化されたデータを読み取り、再生する。
【0014】
尚、この実施例では媒体2を円盤状としたが、円筒状とすることも可能である。その場合、円筒軸に垂直な軸に対してX線ビームの中心軸とほぼ平行になるようにするのが望ましい。
【0015】
X線源1は、平面型の検出器アレイ3の中心を通る垂線上に配置されていることが好ましい。また、媒体2の円盤の中心軸4は、平面型の検出器アレイ3の中心を通る垂線と平行であることが好ましい。角錐型のX線ビームの広がりかたは、媒体2の円周方向に大きく広がっているのが良く、望ましくは180度に近い方が良い。その一方、媒体2の同軸方向へのX線ビームの広がりかたは、通常20度以下である。これは、媒体を回転することによってスキャンをおこないX線データを収集して再構成する場合、動径方向に大きく広がったX線の投影像からフェルドカンプ法によって再構成をおこなう場合に、歪みが大きくなるからである。
【0016】
ここで、本発明の実施例における円盤状の媒体2の記録の読み出しと、X線CTのスキャン方法および記録の再構成の方法との関係について図2の説明図を用いて説明する。X線CTの原理は、図2(a)のように平行なX線ビームをわずかにずらして、さまざま角度(360度)での投影データ(X線検出器のX線出力の強度の対数)を得て、これらの投影データから逆ラドン変換をおこなうことにより、被検体内部の電子密度分布を求める。
【0017】
ここで、円盤のような形状の被検体に対してX線CTをおこなうには、図2(b)のように、扇型に広がったビームを被検体を中心に移動することで、スキャンをおこなうことが出来る。
【0018】
本発明の実施例では、図3に示すように、扇形に広がったビームの投影像をX線検出器アレイ3で逐次強度を得ながらスキャンをおこなうと、扇形の広がり角度以内の様々な角度から平行X線ビームを照射して得た投影像のセットと等価なデータセットを得る事ができるから、図2(a)のようなスキャン方法と同様なスキャンをおこなったことになる。また、ここで示したように角錐状にX線ビームが広がっている場合は、3次元逆ラドン変換の一つである、フェルドカンプ再構成法によりX線吸収率分布を算出することが好ましい。
【0019】
可視光や紫外光の場合、媒体による光の散乱が大きいため、光源から発した光が媒体と透過した場合、その投影像から元の媒体の透過率の情報を知ることは難しい。しかし、X線の場合には散乱が少ないため、媒体の表面から反射する光ではなく、さまざまな角度からの投影データを用いることによって媒体内部のX線吸収率分布を知ることが可能である。すなわち、本発明の実施例による記録再生方式では、媒体の3次元的な電子密度情報を得るため、高密度に記録した情報を再生することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態に係る記録読み取り装置を模式的に示した図。
【図2】X線CTの方式を説明するための説明図。
【図3】本発明の実施形態に係る記録読み取り装置を説明するための図。
【符号の説明】
【0021】
1・・・X線源
2・・・媒体
3・・・X線検出器のアレイ
4・・・媒体の回転軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線発生装置と、X線検出器アレイとを具備し、前記X線発生装置とX線検出器アレイの間にデータが記録された媒体を配置し、前記X線発生装置及びX線検出器アレイに対して相対的に移動しながら、前記媒体に前記X線発生装置からX線を照射することにより、前記媒体に記録されたデータをX線投影データとして前記X線検出アレイで検出し、この検出された投影データから前記媒体に記録されたデータを算出し、データの読み取り行うことを特徴とする記録読み取り装置。
【請求項2】
前記X線発生装置から放射されるX線ビームは、コーンビームであり、かつX線検出器アレイは2次元検出器であることを特徴とする請求項1に記載の記録読み取り装置。
【請求項3】
前記媒体に記憶されたデータは、X線吸収率が異なる物質がパターン化されたものであり、この媒体のX線投影データを逆ラドン変換を用いた電子密度分布の再構成によってデータを算出し、読み取りを行うことを特徴とする請求項1に記載の記録読み取り装置。
【請求項4】
前記媒体は、前記X線発生装置およびX線検出器の1次元または2次元のアレイに対して、固定軸を中心とする回転運動することを特徴とする請求項1に記載の記録読み取り装置。
【請求項5】
前記回転運動する媒体は円盤状であり、X線ビームの中心軸が、円盤面にほぼ垂直であることを特徴とする請求項4に記載の記録読み取り装置。
【請求項6】
前記回転運動する媒体は、円筒状であり、X線ビームの中心軸が、円筒軸に垂直な軸にほぼ平行であることを特徴とする請求項4に記載の記録読み取り装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−102878(P2007−102878A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−289059(P2005−289059)
【出願日】平成17年9月30日(2005.9.30)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】