説明

訪問者誘導システム

【課題】訪問先以外のエリアに誤って立ち入ることを防止することが可能な訪問者誘導システムを提供すること。
【解決手段】施設の入口エリアAに立ち入った訪問者を、当該訪問者に携帯させたID発信装置1を利用して、施設内の複数の管理エリアB,B,…のうちのいずれか一つへと誘導する訪問者誘導システムであって、ID発信装置1のID情報、訪問者の訪問先名称、経路情報を記憶するデータ記憶サーバ2と、入口用読取装置5と、進入阻止手段7と、制御用コンピュータ8とを備えており、制御用コンピュータ8は、入口用読取装置5から送信されたID情報に対応する訪問先名称をデータ記憶サーバ2から読み出すととともに、読み出した訪問先名称に対応する進入禁止エリア名をデータ記憶サーバ2から読み出し、進入禁止エリア名に対応する管理エリアBの進入阻止手段7に対し、進入禁止状態を選択させる制御を実行する手段とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、訪問者誘導システムに関する。
【背景技術】
【0002】
オフィス、研究所、工場、病院、美術館、博物館などの施設においては、機密管理上の理由や安全上の理由などにより、施設関係者以外の入場者(訪問者)の訪問先や行動可能範囲を制限する場合がある。
【0003】
特許文献1には、施設内の機密セクションの入口に入場ゲートを設けるとともに、機密セクションの外側に受付用端末を設け、受付用端末に入力した情報が事前登録された予約情報と一致している場合に、訪問者の入場ゲート内への立ち入りを許可する、という来客受付システムが開示されている。この来客受付システムによれば、機密セクション内への立ち入りが許可された訪問者のみを、機密セクション内に入場させることができる。
【0004】
また、特許文献2には、病室への訪問者を管理する病室訪問者管理システムであって、病室に至る経路においても訪問者を把握して病室まで案内し、訪問者に関係のない病室や侵入禁止箇所への侵入があったならば訪問者に対して警告を発する、という病室訪問者管理システムが開示されている。なお、特許文献2のシステムでは、病室に至る廊下等の経路に案内装置を設け、訪問者が進むべき方向を案内装置に表示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−259712号公報
【特許文献2】特開2009−110294号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のシステムでは、入場ゲート内に立ち入った後の行動範囲を制限し難いという問題がある。
【0007】
特許文献2のシステムでは、訪問者の進むべき方向が案内装置に表示されるものの、各病室にゲート等を設けている訳ではないので、訪問先以外の病室に誤って立ち入ることを完全に防ぐことはできない。
【0008】
このような観点から、本発明は、施設への訪問者を訪問先に誘導する訪問者誘導システムであって、訪問先以外のエリアに誤って立ち入ることを防止することが可能な訪問者誘導システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決する請求項1に係る発明は、施設の入口エリアに立ち入った訪問者を、当該訪問者に携帯させたID発信装置を利用して、前記施設内の複数の管理エリアのうちのいずれか一つへと誘導する訪問者誘導システムであって、ID発信装置のID情報と訪問者の訪問先名称とを関連づけて記憶する訪問先記憶手段と、訪問先名称に対応する経路情報を記憶する経路記憶手段と、前記入口エリアに設けられた入口用読取装置と、前記管理エリアに設けられた進入阻止手段と、前記進入阻止手段を制御する制御装置とを備えており、前記進入阻止手段は、行き来可能な他の前記管理エリア又は前記入口エリアからの進入を許可する進入許可状態および進入を禁止する進入禁止状態を選択可能に構成されており、前記経路情報には、進入禁止エリア名(訪問者に立ち入らせたくない管理エリアの名称)が含まれており、前記入口用読取装置は、前記ID発信装置から発信されたID情報を受信する手段と、受信したID情報を前記制御装置に送信する手段とを有し、前記制御装置は、前記入口用読取装置から送信されたID情報に対応する訪問先名称を前記訪問者記憶手段の中から読み出す手段と、読み出した訪問先名称に対応する経路情報を前記経路記憶手段の中から読み出す手段と、読み出した経路情報に含まれている進入禁止エリア名に対応する管理エリアの前記進入阻止手段に対し、進入禁止状態を選択させるための進入禁止信号を送信する手段とを有する、ことを特徴とする。
【0010】
前記課題を解決する請求項2に係る発明は、ID発信装置に「訪問先名称」が記憶される場合の訪問者誘導システムである。
すなわち、請求項2に係る発明は、施設の入口エリアに立ち入った訪問者を、当該訪問者に携帯させたID発信装置を利用して、前記施設内の複数の管理エリアのうちのいずれか一つへと誘導する訪問者誘導システムであって、訪問先名称に対応する経路情報を記憶する経路記憶手段と、前記入口エリアに設けられた入口用読取装置と、前記管理エリアに設けられた進入阻止手段と、前記進入阻止手段を制御する制御装置とを備えており、前記進入阻止手段は、行き来可能な他の前記管理エリア又は前記入口エリアからの進入を許可する進入許可状態および進入を禁止する進入禁止状態を選択可能に構成されており、前記ID発信装置には、これを携帯する訪問者の訪問先名称が記憶されており、前記経路情報には、進入禁止エリア名(訪問者に立ち入らせたくない管理エリアの名称)が含まれており、前記入口用読取装置は、ID発信装置から発信された訪問先名称を受信する手段と、受信した訪問先名称を前記制御装置に送信する手段とを有し、前記制御装置は、前記入口用読取装置から送信された訪問先名称に対応する経路情報を前記経路記憶手段の中から読み出す手段と、読み出した経路情報に含まれている進入禁止エリア名に対応する管理エリアの前記進入阻止手段に対し、進入禁止状態を選択させるための進入禁止信号を送信する手段とを有する、ことを特徴とする。
【0011】
前記課題を解決する請求項3に係る発明は、ID発信装置に「進入禁止エリア名」が記憶される場合の訪問者誘導システムである。
すなわち、請求項3に係る発明は、施設の入口エリアに立ち入った訪問者を、当該訪問者に携帯させたID発信装置を利用して、前記施設内の複数の管理エリアのうちのいずれか一つへと誘導する訪問者誘導システムであって、訪問先名称に対応する経路情報を記憶する経路記憶手段と、前記入口エリアに設けられた入口用読取装置と、前記管理エリアに設けられた進入阻止手段と、前記進入阻止手段を制御する制御装置とを備えており、前記進入阻止手段は、行き来可能な他の前記管理エリア又は前記入口エリアからの進入を許可する進入許可状態および進入を禁止する進入禁止状態を選択可能に構成されており、前記ID発信装置には、進入禁止エリア名(訪問者に立ち入らせたくない管理エリアの名称)が記憶されており、前記入口用読取装置は、ID発信装置から発信された進入禁止エリア名を前記制御装置に送信する手段を有し、前記制御装置は、前記入口用読取装置から送信された進入禁止エリア名に対応する管理エリアの前記進入阻止手段に対し、進入禁止状態を選択させるための進入禁止信号を送信する手段とを有する、ことを特徴とする。
【0012】
請求項1乃至請求項3に係る発明によれば、訪問者ごとに進入禁止エリアが設定されるようになる。つまり、本発明によれば、施設を訪れた訪問者は、進入禁止エリア名に対応する管理エリア以外の管理エリアを通行するようになるので、訪問者を特定の管理エリア(訪問先)に誘導しつつ、行動範囲を制限することが可能となる。
【0013】
前記課題を解決する請求項4に係る発明は、経路情報に進入許可エリア名(訪問者の進入が許可されている管理エリアの名称)が含まれている場合の訪問者誘導システムである。
すなわち、請求項4に係る発明は、施設の入口エリアに立ち入った訪問者を、当該訪問者に携帯させたID発信装置を利用して、前記施設内の複数の管理エリアのうちのいずれか一つへと誘導する訪問者誘導システムであって、ID発信装置のID情報と前記訪問者の訪問先名称とを関連づけて記憶する訪問先記憶手段と、訪問先名称に対応する経路情報を記憶する経路記憶手段と、前記入口エリアに設けられた入口用読取装置と、前記管理エリアに設けられた進入阻止手段と、前記進入阻止手段を制御する制御装置とを備えており、前記進入阻止手段は、行き来可能な他の前記管理エリア又は前記入口エリアからの進入を許可する進入許可状態および進入を禁止する進入禁止状態を選択可能に構成されており、前記経路情報には、進入許可エリア名が含まれており、前記入口用読取装置は、前記ID発信装置から発信されたID情報を受信する手段と、受信したID情報を前記制御装置に送信する手段とを有し、前記制御装置は、前記入口用読取装置から送信されたID情報に対応する訪問先名称を前記訪問者記憶手段の中から読み出す手段と、読み出した訪問先名称に対応する経路情報を前記経路記憶手段の中から読み出す手段と、読み出した経路情報に含まれている進入許可エリア名に対応する管理エリアの前記進入阻止手段に対し、進入許可状態を選択させるための進入許可信号を送信するとともに、進入許可エリア名に対応する管理エリア以外の管理エリアの前記進入阻止手段に対し、進入禁止状態を選択させるための進入禁止信号を送信する手段とを有する、ことを特徴とする。
【0014】
請求項4に係る発明によれば、訪問者ごとに進入許可エリアが設定されるようになり、進入許可エリア以外の管理エリアへの進入が禁止された状態となる。つまり、本発明によれば、施設を訪れた訪問者は、進入許可エリア名に対応する管理エリアを通行するようになるので、訪問者を特定の管理エリア(訪問先)に誘導しつつ、行動範囲を制限することが可能となる。
【0015】
なお、本発明を適用可能な施設に制限はなく、例えば、オフィス、研究所、工場、病院、美術館、博物館等に適用することができる。
「管理エリア」は、訪問者の立ち入りを管理したい領域であり、「入口エリア」は、玄関ホール、ロビー、エレベータホール、守衛所、受付など、訪問者が通行あるいは立ち寄らざるを得ない領域である。
「訪問先名称」とは、訪問先を特定するための情報である。「訪問先名称」には、「第1会議室」や「打合せコーナー」といった具体的な名称だけでなく、訪問先と関連付けられたID番号や記号も含まれる。
「進入禁止エリア名」とは、訪問者に立ち入らせたくない管理エリアの名称(管理エリアを特定するための情報)であり、「進入許可エリア名」とは、訪問者の進入が許可されている管理エリアの名称(管理エリアを特定するための情報)である。「進入禁止エリア名」および「進入許可エリア名」には、「廊下」や「研究室」といった具体的な名称だけでなく、管理エリアと関連付けられたID番号や記号も含まれる。
【0016】
「進入阻止手段」は、訪問者を管理エリアに立ち入らせないようにするための手段である。「進入阻止手段」には、訪問者の進入を物理的に阻止し得る手段(例えば、管理エリアの入口等に設けられた開き戸、引き戸、柵、障害物など)のほか、訪問者の進入を物理的に阻止し得ないまでも、管理エリアを覆い隠すか、あるいは、管理エリアの存在を認識させ難くすることにより、訪問者の進入を心理的に阻止し得る手段(例えば、カーテン、ロールスクリーン、幕、照明機器、ウォータースクリーン、レーザプロジェクタなど)も含まれる。
「進入許可状態」とは、訪問者の進入を妨げない状態(例えば、開き戸や引き戸を開扉あるいは解錠した状態、柵や障害物を収容した状態、カーテンやロールスクリーンを開けた状態、幕を上げた状態、照明機器を点灯させた状態)を意味する。
「進入禁止状態」は、訪問者の進入を妨げ得る状態(例えば、開き戸や引き戸を閉扉あるいは施錠した状態、柵や障害物を出現させた状態、カーテンやロールスクリーンを閉じた状態、幕を下げた状態、照明機器を消灯させた状態)を意味する。
【0017】
複数の前記管理エリアおよび前記入口エリアの少なくとも一つに所在確認用読取装置(前記ID発信装置から発信されたID情報を受信する手段と、受信したID情報を前記制御装置に送信する手段とを有するもの)を設けてもよい。このようにすると、訪問者の所在を把握することが可能となる。
【0018】
所在確認用読取装置を設けた場合には、前記入口用読取装置にて前記ID情報が受信されてから前記所在確認用読取装置にて前記ID情報が受信されるまでの時間差に基づいて、前記訪問者の移動速度を算出する手段と、算出した移動速度に基づいて、前記所在確認用読取装置よりも前方の管理エリアに到達する時刻を算出する手段とを前記制御装置に具備させ、前記訪問者が前記所在確認用読取装置よりも前方の管理エリアに到達するまでに、当該管理エリアの前記進入阻止手段に対して進入禁止信号を送信するとよい。このようにすると、訪問者が進入禁止エリアに到達する前に進入阻止手段を「進入禁止状態」に切り替えることができるので、訪問者の行動範囲を的確に制限することができる。
【0019】
なお、進入阻止手段の動作状況(特に、進入許可状態から進入禁止状態に移行する動作)を訪問者が目にすると、「監視されている」という不快な印象を受ける虞があるので、前記進入阻止手段は、前記入口用読取装置の近傍の訪問者から視認できない位置に設けることが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、訪問者の行動範囲を制限しつつ、訪問者を特定のエリア(訪問先)に誘導することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態に係る訪問者誘導システムを適用する施設の見取図である。
【図2】本発明の実施形態に係る訪問者誘導システムの概要構成図である。
【図3】本発明の実施形態に係る訪問者誘導システムの機能ブロック図である。
【図4】(a)は入退場管理ファイルの内容を示す図、(b)は経路設定ファイルの内容を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施形態に係る訪問者誘導システムは、図1に示すように、複数の管理エリアB1,B2,…に区分された施設への訪問者Vを、入口エリアAから特定の管理エリア(訪問先)Bに誘導するものである。なお、管理エリアB1,B2,…を区別しない場合には、符号に付した添え字を省略する。
【0023】
本実施形態において、入口エリアAは、建物のエントランスホール、洗面所およびエントランスホールから始まる廊下である。管理エリアB1〜B3の名称は、「会議室C1〜C3」とし、管理エリアB4〜B7の名称は、「廊下C4〜C7」とする。また、本実施形態では、施設への入退場手続を行う受付コーナーDが入口エリアAに設けられている場合を例示するが、複数棟の建物からなる施設や多層階建ての建物からなる施設などにおいては、入口エリアAの外側に受付コーナーDを設けてもよい。
【0024】
本実施形態に係る訪問者誘導システムは、図2に示すように、ID発信装置1と、データ記憶サーバ2と、受付用読取装置3と、受付用コンピュータ4と、入口用読取装置5と、所在確認用読取装置6,6,…と、進入阻止手段71,72,…と、制御用コンピュータ(制御装置)8と、を備えている。なお、進入阻止手段71,72,…を区別しない場合には、符号に付した添え字を省略する。
【0025】
データ記憶サーバ2、受付用コンピュータ4、入口用読取装置5、所在確認用読取装置6、進入阻止手段7および制御用コンピュータ8は、データを互いに送受信できるよう、有線または無線のネットワーク回線(インターネット回線やLAN回線など)Nに接続されている。受付用読取装置3は、受付用コンピュータ4に接続されている。また、ネットワーク回線Nには、訪問を受ける担当者用のコンピュータ9も接続されており、コンピュータ9を介して、データの閲覧や書き込みができるようになっている。
【0026】
ID発信装置1は、いわゆるRFタグ(ICタグ)であり、ID情報を記憶する記憶手段、当該記憶手段に記憶されたデータ(ID情報等)を読み出して発信(送信)する手段などを備えている。ID発信装置1は、受付コーナーDにおいて訪問者Vに手渡し、訪問者Vが退場するまで訪問者Vに携帯させる。なお、RFタグの種類に制限はなく、パッシブタグ、アクティブタグ、セミアクティブタグのいずれを使用してもよい。
【0027】
データ記憶サーバ2は、訪問者識別情報(訪問者の氏名、所属会社名など)、訪問先名称、経路情報、訪問者Vに携帯させたID発信装置1のID情報、入退場の時刻など、訪問者の行動を管理するために必要なデータを記憶するものであって、ID発信装置1のID情報と訪問者Vの訪問先名称とを関連づけて記憶する訪問先記憶手段および訪問先名称に対応する経路情報を記憶する経路記憶手段として機能する。本実施形態のデータ記憶サーバ2は、ネットワーク回線Nに接続されたファイルサーバであり、ネットワーク回線Nに接続されたコンピュータ等を利用してデータの読み込み若しくは書き込みを行うことができる。なお、本実施形態では、データ記憶サーバ2を訪問先記憶手段および経路記憶手段として機能させる場合を例示するが、受付用コンピュータ4や制御用コンピュータ8の記憶装置を訪問先記憶手段および経路記憶手段として機能させても勿論差し支えない。
【0028】
訪問者識別情報および訪問先名称は、ネットワーク回線Nに接続されたコンピュータ9などを利用して事前にデータ記憶サーバ2に書き込んでおくか、あるいは、訪問者Vが受付コーナーDを訪れた際に、受付用コンピュータ4を利用してデータ記憶サーバ2の「入退場管理ファイル」に書き込めばよい。訪問者識別情報および訪問先名称は、互いに関連づけられた状態で「入退場管理ファイル」に格納される(図4の(a)参照)。なお、入力操作は、訪問を受ける担当者(図示略)、受付コーナーDの係員または訪問者V自身が行う。
【0029】
経路情報には、入口エリアAから訪問先に至るまでに立ち入る必要がある管理エリアBの名称(進入許可エリア名)と、訪問者に立ち入らせたくない管理エリアBの名称(進入禁止エリア名)と、入口用読取装置5から各所在管理用読取装置6までの距離と、各所在管理用読取装置6から各管理エリアBまでの距離とが含まれている。経路情報は、訪問先ごとに予め作成しておき、データ記憶サーバ2の「経路設定ファイル」に書き込んでおく。なお、複数の管理エリアB1,B2,…の総てについて経路情報を作成してもよいが、図4の(b)に示すように、少なくとも、訪問先となり得る会議室C1〜C3(管理エリアB1〜B3)について、経路情報を作成すればよい。
【0030】
より詳細に説明すると、例えば、訪問先を「会議室C1」とする場合、入口エリアAから会議室C1に至るまでに立ち入る必要があるのは、入口エリアAを除いては管理エリアB1(=会議室C1)のみであるから(図1参照)、訪問先が「会議室C1」である場合の「進入許可エリア名」として、「会議室C1」を経路設定ファイルに書き込んでおけばよい。訪問者Vに立ち入らせたくない管理エリアBは適宜設定すればよいが、「管理エリアB4〜B6(=廊下C4〜C6)には立ち入らせたくない」ということであれば、訪問先が「会議室C1」である場合の「進入禁止エリア名」として、「廊下C4」、「廊下C5」および「廊下C6」を経路設定ファイルに書き込んでおけばよい。なお、廊下C7(管理エリアB7)を進入禁止エリア名に含めてもよいが、廊下C7の手前に位置する「廊下C6」を進入禁止エリアに設定しているので、廊下C7は進入禁止エリアに指定していない。
また、例えば、訪問先を「会議室C2」とする場合、入口エリアAから会議室C2に至るまでに立ち入る必要があるのは、入口エリアAを除いては管理エリアB6(廊下C6)と管理エリアB2(=会議室C2)であるから(図1参照)、訪問先が「会議室C2」である場合の「進入許可エリア名」は、「廊下C6」および「会議室C2」となり、「管理エリアB1,B4,B5,B7には立ち入らせたくない」ということであれば、訪問先が「会議室C2」である場合の「進入禁止エリア名」は、「会議室C1」、「廊下C4」、「廊下C5」および「廊下C7」となる。
【0031】
ID情報は、ID発信装置1を識別するための情報(例えば、番号、文字、記号など)であり、ID発信装置1に予め記憶されている。
【0032】
受付用読取装置3は、電波や電磁界を利用してID発信装置1と無線通信を行い、ID発信装置1から発信されたデータ(ID情報等)を受信するものであり、受付コーナーDに設置されている。受信したデータは、受付用コンピュータ4に出力される。
【0033】
受付用コンピュータ4は、入力装置(キーボードやポインティングデバイスなど)、表示装置(ディスプレイ)などのほか、図示は省略するが、記憶装置、演算処理装置、ネットワークアダプタなどを備えていて、これらが連携することで、データ記憶サーバ2の中から入退場管理ファイルを読み出す手段、読み出した入退場管理ファイルの内容を表示装置に表示する手段として機能する。さらに、受付用コンピュータ4は、訪問者識別情報とID発信装置1のID情報とを関連付ける処理を行う。例えば、受付コーナーDの係員または訪問者V自身の操作により、受付コーナーDを訪れた訪問者Vの訪問者識別情報を表示装置の画面上で選択あるいは表示し、訪問者Vに携帯させるべきID発信装置1のID情報を受付用読取装置3で読み取らせると、当該ID情報が受付用コンピュータ4の記憶装置に一旦書き込まれ、その後、受付用コンピュータ4の演算処理装置によって、記憶装置に書き込まれたID情報(訪問者に携帯させるべきID発信装置1のID情報)と画面上において選択されている特定の訪問者識別情報とを関連付けるための処理が実行され、入退場管理ファイルが更新される。受付コンピュータ4での受付時の処理が完了すると、訪問者識別情報、訪問先名称およびID情報が互いに関連付けられた状態で入退場管理ファイル(データ記憶サーバ2)に格納される。
【0034】
なお、受付時において、ID発信装置1のID情報が受付用コンピュータ4に入力された時刻は、訪問者Vの「入場時刻」として、訪問者識別情報と関連付けられた状態で入退場管理ファイルに格納され、退場時において、ID発信装置1のID情報が受付用コンピュータ4に入力された時刻は、訪問者Vの「退場時刻」として、訪問者識別情報と関連付けられた状態で入退場管理ファイルに格納される(図4の(a)参照)。
【0035】
入口用読取装置5は、図2および図3に示すように、電波や電磁界を利用してID発信装置1と無線通信を行い、ID発信装置1から発信されたデータ(本実施形態ではID情報)を受信し、受信したデータを入口用読取装置5の装置識別情報とともに制御用コンピュータ8に送信するものである。すなわち、入口用読取装置5は、ID発信装置1から発信されたデータを受信する手段と、受信したデータ、当該データの受信時刻および入口用読取装置5の装置識別情報を制御用コンピュータ8に送信する手段とを備えている。なお、入口用読取装置5の装置識別情報とは、入口用読取装置5を識別(特定)するための情報(例えば、番号、文字、記号、IPアドレスなど)である。
【0036】
入口用読取装置5は、図1に示すように、入口エリアAに設けられている。受付を済ませた訪問者Vが最初の管理エリアBに至るまでにID発信装置1(図示略)のID情報を読み取ることができるよう、本実施形態では、入口エリアAのうち、受付コーナーDと管理エリアB4との間に設けられている。入口用読取装置5の取付位置に制限はなく、ID発信装置1との通信可能距離や入口エリアAの内装等を考慮しつつ、天井、床下、壁面などの適宜な場所に取り付ければよい。また、入口エリアAに入場ゲートを設け、この入場ゲートに入口用読取装置5を設けてもよい。なお、図示は省略するが、入口用読取装置5を複数設けてもよい。
【0037】
所在確認用読取装置6は、図2および図3に示すように、電波や電磁界を利用してID発信装置1と無線通信を行い、ID発信装置1から発信されたデータ(ID情報等)を受信し、受信したデータを所在確認用読取装置6の装置識別情報とともに制御用コンピュータ8に送信するものである。すなわち、所在確認用読取装置6は、ID発信装置1から発信されたデータを受信する手段と、受信したデータ、当該データの受信時刻および所在確認用読取装置6の装置識別情報を制御用コンピュータ8に送信する手段とを備えている。なお、所在確認用読取装置6の装置識別情報とは、所在確認用読取装置6を識別(特定)するための情報(例えば、文字列、IPアドレスなど)である。
【0038】
所在確認用読取装置6の個数や設置場所に制限はない。図1に示すように、本実施形態では、複数の所在確認用読取装置6,6,…のうちの二つを入口エリアAに設け、残りを管理エリアB〜Bに設けている。なお、入口エリアAの所在確認用読取装置6は、入口用読取装置5よりも奥に設けられている。
【0039】
進入阻止手段7は、管理エリアBに訪問者を立ち入らせないようにするための手段であり、一の管理エリアBにつき一つずつ設けられている。
【0040】
管理エリアB1〜B3の進入阻止手段71〜73は、引き戸であり、いずれも入口用読取装置5の近傍に立つ訪問者Vからは視認できない位置に設けられている。進入阻止手段71〜73においては、開扉した状態が「進入許可状態」であり、閉扉した状態が「進入禁止状態」である。なお、図示は省略するが、進入阻止手段71〜73は、それぞれ、制御用コンピュータ8からの信号を受信する手段、引き戸を開閉させるための動力源(モータなど)、動力源に供給する電力量を制御する手段などを備えている。
【0041】
管理エリアB1の進入阻止手段71は、管理エリアB1の出入口(行き来可能な入口エリアAとの境界)に設けられていて、制御用コンピュータ8(図2,3参照)から進入許可信号(訪問者の進入を許可する旨の信号)を受信したときには進入許可状態(入口エリアAからの進入を許可する状態)を選択し、制御用コンピュータ8から進入禁止信号(訪問者の進入を禁止する旨の信号)を受信したときには進入禁止状態(入口エリアAからの進入を禁止する状態)を選択する。すなわち、進入阻止手段71は、制御用コンピュータ8から進入許可信号を受信したときに閉扉していれば、開扉させるべく動力源を駆動させ、制御用コンピュータ8から進入禁止信号を受信したときに開扉していれば、閉扉させるべく動力源を駆動させる。なお、進入阻止手段71は、訪問者Vの進入を物理的に阻止し得る手段である。
【0042】
管理エリアB2の進入阻止手段72は、管理エリアB2の出入口(行き来可能な他の管理エリアB6との境界)に設けられていて、制御用コンピュータ8から進入許可信号を受信したときには進入許可状態(管理エリアB6からの進入を許可する状態)を選択し、制御用コンピュータ8から進入禁止信号を受信したときには進入禁止状態(管理エリアB6からの進入を禁止する状態)を選択する。
【0043】
管理エリアB3の進入阻止手段73は、管理エリアB3の出入口(行き来可能な他の管理エリアB7との境界)に設けられていて、制御用コンピュータ8から進入許可信号を受信したときには進入許可状態(管理エリアB7からの進入を許可する状態)を選択し、制御用コンピュータ8から進入禁止信号を受信したときには進入禁止状態(管理エリアB7からの進入を禁止する状態)を選択する。
【0044】
管理エリアB4の進入阻止手段74は、管理エリアB4を照らす照明機器であり、入口用読取装置5の近傍に立つ訪問者Vからは視認できない位置(行き来可能な入口エリアAとの境界よりも奥まった位置の天井)に設けられている。なお、図示は省略するが、進入阻止手段74は、制御用コンピュータ8からの信号を受信する手段、受信した信号に基づいて照明機器のオン・オフを切り替える手段などを備えている。
【0045】
而して、進入阻止手段74は、制御用コンピュータ8(図2,3参照)から進入許可信号を受信したときには進入許可状態(入口エリアAからの進入を許可する状態)を選択し、制御用コンピュータ8から進入禁止信号を受信したときには進入禁止状態(入口エリアAからの進入を禁止する状態)を選択する。なお、進入阻止手段74においては、照明が点灯した状態が「進入許可状態」であり、消灯した状態が「進入禁止状態」である。すなわち、進入阻止手段74は、制御用コンピュータ8から進入許可信号を受信したときに消灯していれば、進入許可状態を選択すべく照明機器をオン(点灯)に切り替え、制御用コンピュータ8から進入禁止信号を受信したときに点灯していれば、進入禁止状態を選択すべく照明機器をオフ(消灯)に切り替える。
【0046】
なお、進入阻止手段74は、訪問者Vの進入を心理的に阻止し得る手段である。すなわち、照明機器を消灯させて、管理エリアB4を暗がりにすると、管理エリアB4の存在が認識され難くなり、あるいは、進入し難い雰囲気が醸成されるようになるので、訪問者Vは、管理エリアB4の前を通過するようになる(管理エリアB4に立ち入らないように誘導される)。なお、訪問者Vの居ないとき、あるいは、訪問者Vの進入が許可されているときには照明機器を点灯させ、管理エリアB4の照明として機能させる。
【0047】
管理エリアB5,B6の進入阻止手段75,76は、ロールスクリーンであり、いずれも、入口用読取装置5の近傍に立つ訪問者Vからは視認できない位置に設けられている。進入阻止手段75,76においては、スクリーンを巻き上げた状態が「進入許可状態」であり、スクリーンを巻き出した状態が「進入禁止状態」である。なお、図示は省略するが、進入阻止手段75,76は、それぞれ、制御用コンピュータ8からの信号を受信する手段、ロールスクリーンを上下(巻取り、巻出し)させるための動力源(モータなど)、動力源に供給する電力量を制御する手段などを備えている。
【0048】
而して、進入阻止手段75,76は、管理エリアB5,B6の出入口(行き来可能な入口エリアAとの境界)に設けられていて、制御用コンピュータ8から進入許可信号を受信したときには進入許可状態(入口エリアAからの進入を許可する状態)を選択し、制御用コンピュータ8から進入禁止信号を受信したときには進入禁止状態(入口エリアAからの進入を禁止する状態)を選択する。すなわち、進入阻止手段75,76は、制御用コンピュータ8から進入許可信号を受信したときにスクリーンが巻き出されていれば、スクリーンを巻き取るべく動力源を駆動させ、制御用コンピュータ8から禁止信号を受信したときにスクリーンが巻き取られていれば、スクリーンを巻き出させるべく動力源を駆動させる。
【0049】
なお、進入阻止手段75,76は、訪問者Vの進入を心理的に阻止し得る手段である。すなわち、スクリーンを巻き出して、管理エリアB5,B6を覆い隠すと、進入し難い雰囲気が醸成されるようになるので、訪問者Vは、管理エリアB5,B6の手前で引き返すか、あるいは、管理エリアB1への進入が許可されていれば、管理エリアB1に進入するようになる(管理エリアB5,B6に立ち入らないように誘導される)。
【0050】
管理エリアB7の進入阻止手段77は、照明機器とレーザプロジェクタとを組み合わせたものであり、入口用読取装置5の近傍に立つ訪問者Vからは視認できない位置に設けられている。なお、図示は省略するが、進入阻止手段77は、制御用コンピュータ8からの信号を受信する手段、受信した信号に基づいて照明機器およびレーザプロジェクタのオン・オフを切り替える手段などを備えている。なお、レーザプロジェクタとは、レーザエフェクトを作り出す際に使用される機器であって、レーザ光源を内蔵している。
【0051】
而して、進入阻止手段77は、制御用コンピュータ8から進入許可信号を受信したときには進入許可状態(管理エリアB6からの進入を許可する状態)を選択し、制御用コンピュータ8から進入禁止信号を受信したときには進入禁止状態(管理エリアB6からの進入を禁止する状態)となる。
【0052】
なお、進入阻止手段77は、訪問者Vの進入を心理的に阻止し得る手段である。すなわち、照明機器を消灯させつつレーザプロジェクタを起動させて、管理エリアB7への出入口にレーザエフェクトを表示すると、管理エリアB7の存在が認識され難くなり、あるいは、進入し難い雰囲気が醸成されるようになるので、訪問者Vは、管理エリアB7の手前で引き返すか、あるいは、管理エリアB2への進入が許可されていれば、管理エリアB2に進入するようになる(管理エリアB7に立ち入らないように誘導される)。なお、訪問者Vの居ないとき、あるいは、訪問者Vの進入が許可されているときには照明機器を点灯させ、かつ、レーザプロジェクタを停止させる。
【0053】
図2に示す制御用コンピュータ8は、進入阻止手段7を制御するものであり、記憶装置、演算処理装置、ネットワークアダプタなどを備えている。
【0054】
制御用コンピュータ8は、図3に示すように、送信元特定手段81と、訪問先検索手段82と、経路検索手段83と、移動速度算出手段84と、到達時刻算出手段85と、信号送信手段86として機能する。
【0055】
送信元特定手段81は、入口用読取装置5または所在確認用読取装置6から送信されたデータ(ID情報、受信時刻、装置識別情報など)を受信するとともに、受信したデータの送信元を特定(識別)する。すなわち、制御用コンピュータ8の記憶装置には、入口用読取装置5および所在確認用読取装置6,6,…の「装置識別情報」が予め記憶されており、送信元特定手段81は、受信した「装置識別情報」と記憶装置の「装置識別情報」とを対比することにより、データの送信元を特定する。また、送信元特定手段81は、「ID情報」を検索キーとしてデータ記憶サーバ2の入退場管理ファイルを検索し、「ID情報」を含むデータ列に入口用読取装置5または所在確認用読取装置6での「受信時刻」を書き加える。なお、入口用読取装置5が複数設けられている場合において、二以上の入口用読取装置5からデータを受信した場合には、最初に受信したデータに含まれる「受信時刻」を入退場管理ファイルに書き加え、二番目以降に受信したデータを上書きしないように設定してもよいし、順次上書きをするように設定してもよい。
【0056】
訪問先検索手段82は、入口用読取装置5または所在確認用読取装置6から送信されたデータ(ID情報、受信時刻、装置識別情報)の中から「ID情報」を抽出するとともに、データ記憶サーバ2の入退場管理ファイル(訪問者記憶手段)の中から、抽出した「ID情報」に対応する「訪問先名称」を抽出する。本実施形態の訪問先検索手段82は、送信元特定手段81で特定された送信元が「入口用読取装置5」である場合には、「ID情報」を検索キーとして入退場管理ファイルを検索し、「ID情報」に対応する「訪問先名称」を入退場管理ファイルの中から読み出す。なお、訪問先検索手段82は、送信元特定手段81で特定された送信元が「訪問先名称」に対応する管理エリアBの所在確認用読取装置6であるか否かを判定し、肯定判定が得られた場合には、訪問者Vが訪問先に到達した旨の情報をデータ記憶サーバ2や受付用コンピュータ4などに送信する。
【0057】
経路検索手段83は、データ記憶サーバ2の経路設定ファイル(経路記憶手段)の中から、「訪問先名称(訪問先検索手段82により抽出されたもの)」に対応する「経路情報」を抽出する。すなわち、経路検索手段83は、訪問先検索手段82により抽出された「訪問先名称」を検索キーとして経路設定ファイルを検索し、経路設定ファイルの中から、「訪問先名称」に対応する「経路情報」を読み出す。
【0058】
移動速度算出手段84は、入口用読取装置5にてID情報が受信されてから所在確認用読取装置6にてID情報が受信されるまでの時間差に基づいて、訪問者の移動速度を算出する。本実施形態の移動速度算出手段84は、送信元特定手段81で特定された送信元が訪問先以外に設けられた所在確認用読取装置6である場合に動作し、「ID情報(所在確認用読取装置6から送信されたもの)」を検索キーとして入退場管理ファイルを検索し、ID情報と関連付けられたデータ列の中から、入口用読取装置5での「受信時刻」を抽出し、その後、所在確認用読取装置6での受信時刻から入口用読取装置5での受信時刻を差し引くことで「時間差(所要時間)」を算出し、入口用読取装置5から所在確認用読取装置6までの距離(経路設定ファイルに予め記憶させておく)を「時間差」で除することで、訪問者の「移動速度」を算出する。なお、施設内に点在する所在確認用読取装置6からのID情報を受信する度に、「移動速度」を算出し、「移動速度」を随時更新してもよいし、特定の所在確認用読取装置6(例えば、入口用読取装置5の隣りに位置する所在確認用読取装置6)からのID情報を受信したときだけ、「移動速度」を算出してもよい。
【0059】
到達時刻算出手段85は、移動速度算出手段84で算出した「移動速度」に基づいて、所在確認用読取装置6よりも前方の管理エリアBに到達する「時刻」を算出する。すなわち、到達時刻算出手段85は、経路検索手段83で抽出された「経路情報」の中から、移動速度の算出に使用された所在確認用読取装置6から特定の管理エリアBまでの「距離」を抽出し、抽出した「距離」を「移動速度」で除し、所在確認用読取装置6での受信時刻に加えることで、前記「時刻」を算出する。
【0060】
信号送信手段86は、経路検索手段83で抽出した経路情報に含まれている「進入禁止エリア名」に対応する管理エリアBの進入阻止手段7に対し、進入禁止状態を選択させるための進入禁止信号を送信する。すなわち、信号送信手段86は、経路情報の中から「進入禁止エリア名」を抽出し、この「進入禁止エリア名」に対応する管理エリアBの進入阻止手段7に対し、進入禁止信号を送信する。なお、本実施形態の信号送信手段86は、到達時刻算出手段85で算出した「時刻」に基づき、訪問者Vが進入禁止に係る管理エリアBに到達するまでに、当該管理エリアBの進入阻止手段7に対して進入禁止信号を送信する。また、本実施形態の信号送信手段86は、経路情報の中から「進入許可エリア名」を抽出し、進入許可エリア名に係る管理エリアBに訪問者Vが到達するよりも前に、当該管理エリアBの進入阻止手段7に対し、進入許可状態を選択させるための進入許可信号を送信する。
【0061】
また、信号送信手段86は、制御用コンピュータ8に入力された「装置識別情報」が訪問先に設けられた所在確認用読取装置6のものである場合には、進入阻止手段7の進入禁止状態を解除すべく、「進入禁止エリア名」に対応する管理エリアBの進入阻止手段7に対し、進入許可信号を送信する。
【0062】
本実施形態に係る訪問者誘導システムは、以上のように構成されており、ID発信装置1を携帯する訪問者Vが入口エリアAに立ち入り、ID発信装置1から発信されたID情報が入口用読取装置5で受信されると、データ記憶サーバ2に記憶されている経路情報に基づき、当該訪問者に対応する「進入禁止エリア」が設定されるようになる。つまり、本実施形態に係る訪問者誘導システムによれば、施設を訪れた訪問者Vは、進入禁止エリア名に対応する管理エリアB以外の管理エリアB(進入許可エリア名に対応する管理エリアB)を通行するようになるので、訪問者Vを特定の管理エリアB(訪問先)に誘導しつつ、行動範囲を制限することが可能となる。
【0063】
しかも、進入阻止手段7は、入口用読取装置6の近傍の訪問者Vから視認できない位置に設けられているので、「監視されている」という不快な印象を訪問者Vに与えることなく、訪問者の行動範囲を管理・制限することが可能となる。
【0064】
また、本実施形態では、訪問者Vの移動速度を算出し、適宜なタイミングで進入阻止手段7に対して進入禁止信号を送信するようにしたので、訪問者Vが進入禁止エリアに到達する前に進入阻止手段7を「進入禁止状態」に切り替えることができる。つまり、本実施形態に係る訪問者誘導システムによれば、訪問者Vの行動範囲を的確に制限することができる。
【0065】
なお、本実施形態では、訪問者Vの移動速度および各管理エリアBへの到達時刻を算出し、適宜なタイミングで進入禁止信号を送信する場合を例示したが、ID情報に対応する訪問先および経路情報が抽出された時点で、進入禁止エリア名に対応する管理エリアBの進入阻止手段7に対して進入禁止信号を一斉送信するように構成してもよい。この場合、移動速度算出手段84および到達時刻算出手段85は不要となる。
【0066】
また、制御用コンピュータ8に所在確認用読取装置6の「装置識別情報」が入力される度に、所在確認用読取装置6よりも手前(入口エリアA側)に「進入禁止エリア名」に対応する管理エリアBが存在するか否かを判定し、肯定判定が得られた場合に、当該管理エリアBの進入阻止手段7に対し、進入許可信号を送信するように構成してもよい。このようにすると、例えば、管理エリアB4が「進入禁止エリア名」に指定されている場合において、管理エリアB4の入口を超えたところに位置する所在確認用読取装置6の「装置識別情報」が入力された場合には、管理エリアB4の進入阻止手段74に対して、進入許可信号が送信され、進入阻止手段74の「進入禁止状態」が速やかに解除されるようになる。
【0067】
また、本実施形態では、経路情報に「進入禁止エリア名」が含まれており、「進入禁止エリア名」に対応する管理エリアBの進入阻止手段7に対し、進入禁止信号を送信する場合を例示したが、経路情報に「進入許可エリア名」だけが含まれている場合には、信号送信手段86の機能を変更すればよい。この場合、信号送信手段86は、進入許可状態を選択させるための進入許可信号を送信するとともに、進入許可エリア名に対応する管理エリアB以外の管理エリアBの進入阻止手段7に対し、進入禁止状態を選択させるための進入禁止信号を送信する。
【0068】
データを書き込み可能なID発信装置1を使用するとともに、受付用読取装置3に代えて、読取・書込装置(以下、「リーダライタ装置」という。)を受付用コンピュータ4に接続しておき、例えば、「訪問先名称」をID発信装置1に書き込んでもよい。この場合、ID発信装置1は、自身の記憶手段に記憶された「ID情報」および「訪問先名称」を読み出して各読取装置に発信(送信)する。また、受付用コンピュータ4は、受付コーナーDを訪れた訪問者の「訪問先名称」と訪問者Vに携帯させるべきID発信装置1の「ID情報」と関連付ける処理を行うとともに、リーダライタ装置を介して、「訪問先名称」をID発信装置1の記憶手段に書き込む処理を行う。また、入口用読取装置5および所在確認用読取装置6は、それぞれ、ID発信装置1から発信されたデータ(ID情報、訪問先名称)を受信するとともに、当該データ、受信時刻および自身の装置識別情報を制御用コンピュータ8に送信する。
【0069】
「訪問先名称」をID発信装置1に書き込んだ場合には、入口用読取装置5または所在確認用読取装置6から送信されるデータに「訪問先名称」が含まれることになるので、制御用コンピュータ8の訪問先検索手段82は不要となる。ちなみに、経路検索手段83は、制御用コンピュータ8に入力された訪問先名称(入口用読取装置5または所在確認用読取装置6から送信されたもの)を検索キーとして経路設定ファイルを検索し、当該訪問先名称に対応する経路情報を経路設定ファイルの中から抽出するように構成すればよい。
【0070】
「訪問先名称」をID発信装置1に書き込んだ場合においても、施設を訪れた訪問者Vは、進入禁止エリア名に対応する管理エリアB以外の管理エリアB(進入許可エリア名に対応する管理エリアB)を通行するようになるので、訪問者Vを特定の管理エリアB(訪問先)に誘導しつつ、行動範囲を制限することが可能となる。
【0071】
「経路情報」をID発信装置1に書き込んでもよい。この場合、ID発信装置1は、自身の記憶手段に記憶された「ID情報」および「経路情報」を読み出して各読取装置に発信(送信)する。また、受付用コンピュータ4は、訪問先名称(入退場管理ファイルに事前登録されたもの、または入力装置を介して入力されたもの)に対応する経路情報を経データ記憶サーバ2の経路設定ファイル(路記憶手段)の中から読み出す処理を行うとともに、リーダライタ装置を介して、「経路情報」をID発信装置1の記憶手段に書き込む処理を行う。また、入口用読取装置5および所在確認用読取装置6は、それぞれ、ID発信装置1から発信されたデータ(ID情報、経路情報)を受信するとともに、当該データ、受信時刻および自身の装置識別情報を制御用コンピュータ8に送信する。
【0072】
「経路情報」をID発信装置1に書き込んだ場合には、入口用読取装置5または所在確認用読取装置6から送信されるデータに「経路情報」が含まれることになるので、制御用コンピュータ8の訪問先検索手段82および経路検索手段83は不要となる。ちなみに、信号送信手段86は、制御用コンピュータ8に入力された経路情報(入口用読取装置5または所在確認用読取装置6から送信されたもの)に含まれている「進入禁止エリア名」に対応する管理エリアBの進入阻止手段7に対し、進入禁止状態を選択させるための進入禁止信号を送信するように構成すればよい。
【0073】
「経路情報」をID発信装置1に書き込んだ場合においても、施設を訪れた訪問者Vは、進入禁止エリア名に対応する管理エリアB以外の管理エリアB(進入許可エリア名に対応する管理エリアB)を通行するようになるので、訪問者Vを特定の管理エリアB(訪問先)に誘導しつつ、行動範囲を制限することが可能となる。
【符号の説明】
【0074】
A 入口エリア
B(B1〜B7) 管理エリア
1 ID発信装置
2 データ記憶サーバ(訪問先記憶手段、経路記憶手段)
3 受付用読取装置
4 受付用コンピュータ
5 入口用読取装置
6 所在確認用読取装置
7(71〜77) 進入阻止手段
8 制御用コンピュータ(制御装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
施設の入口エリアに立ち入った訪問者を、当該訪問者に携帯させたID発信装置を利用して、前記施設内の複数の管理エリアのうちのいずれか一つへと誘導する訪問者誘導システムであって、
ID発信装置のID情報と訪問者の訪問先名称とを関連づけて記憶する訪問先記憶手段と、
訪問先名称に対応する経路情報を記憶する経路記憶手段と、
前記入口エリアに設けられた入口用読取装置と、
前記管理エリアに設けられた進入阻止手段と、
前記進入阻止手段を制御する制御装置と、を備えており、
前記進入阻止手段は、行き来可能な他の前記管理エリア又は前記入口エリアからの進入を許可する進入許可状態および進入を禁止する進入禁止状態を選択可能に構成されており、
前記経路情報には、進入禁止エリア名が含まれており、
前記入口用読取装置は、前記ID発信装置から発信されたID情報を受信する手段と、受信したID情報を前記制御装置に送信する手段とを有し、
前記制御装置は、前記入口用読取装置から送信されたID情報に対応する訪問先名称を前記訪問者記憶手段の中から読み出す手段と、読み出した訪問先名称に対応する経路情報を前記経路記憶手段の中から読み出す手段と、読み出した経路情報に含まれている進入禁止エリア名に対応する管理エリアの前記進入阻止手段に対し、進入禁止状態を選択させるための進入禁止信号を送信する手段とを有する、ことを特徴とする訪問者誘導システム。
【請求項2】
施設の入口エリアに立ち入った訪問者を、当該訪問者に携帯させたID発信装置を利用して、前記施設内の複数の管理エリアのうちのいずれか一つへと誘導する訪問者誘導システムであって、
訪問先名称に対応する経路情報を記憶する経路記憶手段と、
前記入口エリアに設けられた入口用読取装置と、
前記管理エリアに設けられた進入阻止手段と、
前記進入阻止手段を制御する制御装置と、を備えており、
前記進入阻止手段は、行き来可能な他の前記管理エリア又は前記入口エリアからの進入を許可する進入許可状態および進入を禁止する進入禁止状態を選択可能に構成されており、
前記ID発信装置には、これを携帯する訪問者の訪問先名称が記憶されており、
前記経路情報には、進入禁止エリア名が含まれており、
前記入口用読取装置は、ID発信装置から発信された訪問先名称を受信する手段と、受信した訪問先名称を前記制御装置に送信する手段とを有し、
前記制御装置は、前記入口用読取装置から送信された訪問先名称に対応する経路情報を前記経路記憶手段の中から読み出す手段と、読み出した経路情報に含まれている進入禁止エリア名に対応する管理エリアの前記進入阻止手段に対し、進入禁止状態を選択させるための進入禁止信号を送信する手段とを有する、ことを特徴とする訪問者誘導システム。
【請求項3】
施設の入口エリアに立ち入った訪問者を、当該訪問者に携帯させたID発信装置を利用して、前記施設内の複数の管理エリアのうちのいずれか一つへと誘導する訪問者誘導システムであって、
訪問先名称に対応する経路情報を記憶する経路記憶手段と、
前記入口エリアに設けられた入口用読取装置と、
前記管理エリアに設けられた進入阻止手段と、
前記進入阻止手段を制御する制御装置と、を備えており、
前記進入阻止手段は、行き来可能な他の前記管理エリア又は前記入口エリアからの進入を許可する進入許可状態および進入を禁止する進入禁止状態を選択可能に構成されており、
前記ID発信装置には、進入禁止エリア名が記憶されており、
前記入口用読取装置は、ID発信装置から発信された進入禁止エリア名を前記制御装置に送信する手段を有し、
前記制御装置は、前記入口用読取装置から送信された進入禁止エリア名に対応する管理エリアの前記進入阻止手段に対し、進入禁止状態を選択させるための進入禁止信号を送信する手段とを有する、ことを特徴とする訪問者誘導システム。
【請求項4】
施設の入口エリアに立ち入った訪問者を、当該訪問者に携帯させたID発信装置を利用して、前記施設内の複数の管理エリアのうちのいずれか一つへと誘導する訪問者誘導システムであって、
ID発信装置のID情報と前記訪問者の訪問先名称とを関連づけて記憶する訪問先記憶手段と、
訪問先名称に対応する経路情報を記憶する経路記憶手段と、
前記入口エリアに設けられた入口用読取装置と、
前記管理エリアに設けられた進入阻止手段と、
前記進入阻止手段を制御する制御装置と、を備えており、
前記進入阻止手段は、行き来可能な他の前記管理エリア又は前記入口エリアからの進入を許可する進入許可状態および進入を禁止する進入禁止状態を選択可能に構成されており、
前記経路情報には、進入許可エリア名が含まれており、
前記入口用読取装置は、前記ID発信装置から発信されたID情報を受信する手段と、受信したID情報を前記制御装置に送信する手段とを有し、
前記制御装置は、前記入口用読取装置から送信されたID情報に対応する訪問先名称を前記訪問者記憶手段の中から読み出す手段と、読み出した訪問先名称に対応する経路情報を前記経路記憶手段の中から読み出す手段と、読み出した経路情報に含まれている進入許可エリア名に対応する管理エリアの前記進入阻止手段に対し、進入許可状態を選択させるための進入許可信号を送信するとともに、進入許可エリア名に対応する管理エリア以外の管理エリアの前記進入阻止手段に対し、進入禁止状態を選択させるための進入禁止信号を送信する手段とを有する、ことを特徴とする訪問者誘導システム。
【請求項5】
複数の前記管理エリアおよび前記入口エリアの少なくとも一つに所在確認用読取装置が設けられており、
前記所在確認用読取装置は、前記ID発信装置から発信されたID情報を受信する手段と、受信したID情報を前記制御装置に送信する手段とを有し、
前記制御装置は、前記入口用読取装置にて前記ID情報が受信されてから前記所在確認用読取装置にて前記ID情報が受信されるまでの時間差に基づいて、前記訪問者の移動速度を算出する手段と、算出した移動速度に基づいて、前記所在確認用読取装置よりも前方の管理エリアに到達する時刻を算出する手段とを有し、前記訪問者が前記所在確認用読取装置よりも前方の管理エリアに到達するまでに、当該管理エリアの前記進入阻止手段に対して進入禁止信号を送信する、ことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の訪問者誘導システム。
【請求項6】
前記進入阻止手段は、前記入口用読取装置の近傍の訪問者から視認できない位置に設けられている、ことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の訪問者誘導システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−43108(P2012−43108A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−182574(P2010−182574)
【出願日】平成22年8月17日(2010.8.17)
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)
【Fターム(参考)】