説明

試料搬送機構

【課題】
本発明は、特にフォトマスクに代表される試料のダメージのリスクを最小化することを目的とする試料搬送機構の提供を目的とする。
【解決手段】
上記目的を達成するための一態様として、試料を吊り下げるように保持する試料保持機構を備えた試料搬送機構について、試料を吊り下げるためのフランジ等の突出部より、試料のパターン面に近い部分(突出部が設けられた吊り下げ部を保持するアーム部、或いはアーム部及び突出部よりパターン表面側に位置する吊り下げ部)を離間するように構成した。これにより、パターン面と搬送機構を構成する部材との間の接触リスクを抑制することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷電粒子線装置等に用いられる試料搬送機構に係り、特にフォトマスクを搬送するのに好適な試料搬送機構に関する。
【背景技術】
【0002】
走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)に代表される荷電粒子線装置の中でも半導体デバイスの測定や検査に用いられる装置では、複数の試料を保持するSMIFポッド等の試料カセットから搬出された試料を、ミニエンと呼ばれる空気清浄空間を形成するための装置を経由して、ロードロック室まで搬送するための搬送用ロボットが用いられていることが多い。ロードロック室は、大気雰囲気から、真空保持されているSEMの試料室に、試料を導入するために、予備排気を行うためのものである。
【0003】
搬送ロボットは、試料の下方から試料を支持するタイプのもの(特許文献1)、静電吸着等により、試料を吸着した状態で試料を搬送するタイプのもの(特許文献1)、及び試料の側方から試料を把持するような機構からなるもの(特許文献2)がある。
【0004】
【特許文献1】特開平10−233434号公報
【特許文献2】特開2005−183549号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に説明されている静電吸着による試料保持機構や、特許文献2に説明されている試料を把持する機構では、試料は、押圧や吸引による力学的な作用を受けるため、試料の変形や撓みの問題が懸念される。特に特許文献2に説明されている試料の側方から、試料を把持する機構の場合、当該機構の試料との接触部分が、試料表面に傷をつけてしまう可能性が懸念される。特に、半導体デバイスの中でもフォトマスクは、石英基板上に、回路設計パターンに相当するクロム膜からなる遮光パターンが形成されており、このようなパターンが試料を把持する機構と接すると、遮光パターンにダメージが及ぶ可能性がある。
【0006】
特に、何等かの外的影響等により、フォトマスクが傾斜した状態で配置されている(異常着座)状態において、試料を把持しようとすると、試料表面と把持機構と間の接触リスクが増大する。また、フォトマスク側部の内、上部或いは下部(角部)のみに、把持機構が接することにより、フォトマスクに対する単位面積当たりの押圧力が増大し、試料破損のリスクが増大する。
【0007】
以下に、特にフォトマスクに代表される試料のダメージのリスクを最小化することを目的とする試料搬送機構、及びそれを用いた荷電粒子線装置について説明する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための一態様として、試料を吊り下げるように保持する試料保持機構を備えた試料搬送機構について、試料を吊り下げるためのフランジ等の突出部より、試料のパターン面に近い部分(突出部が設けられた吊り下げ部を保持するアーム部、或いはアーム部及び突出部よりパターン表面側に位置する吊り下げ部)を離間するように構成した。吊り下げ構造とすることで、試料に力学的な負荷を与えることなく、また、異常着座状態であったとしても、試料搬送機構のパターン面に近い部分は、突出部に対し、試料から離間して形成されているため、パターン面と搬送機構を構成する部材との間の接触リスクを抑制することが可能となる。
【発明の効果】
【0009】
以上の構成によれば、試料が傾斜して配置されているような場合であっても、試料搬送の際の試料へのダメージのリスクを最小限とすることが可能な試料搬送機構の提供が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に、半導体測定,検査装置に用いられる試料搬送機構の概要について説明する。なお、以下の説明では、半導体測定装置の1つである測長用走査電子顕微鏡(Critical Dimension−SEM:CD−SEM)を例にとって説明するが、これに限られることなく、例えば欠陥の座標情報に基づいて、欠陥をレビューする欠陥レビュー用のSEM(Defect Review−SEM:DR−SEM)等への適用も可能である。なお、以下の説明では、CD−SEMの中でも、半導体用光学式露光装置に用いられるフォトマスクを測定対象とするCD−SEMを例にとって説明する。
【0011】
図1乃至図3は、CD−SEMの概要を説明する図である。CD−SEMは大きく分けて、ミニエンバイラメント方式試料搬送機構1,ロードロック室8,試料室9,電子顕微鏡鏡体50、及びロードポート4から構成されている。なお、図1の例では、2つあるロードポートの内、1つを、フォトマスク17を複数保管可能なストッカー6としており、当該ストッカー6から、必要に応じてフォトマスク17を取り出すことが可能な構成を説明している。マスク搬送用ロボット2は、ストッカー6や、ロードポート4上に配置されたSMIFポッド5から、フォトマスク17を取り出し、ロードロック室8に搬送する。ロードロック室8には、マスクホルダ52が設けられ、マスク搬送用ロボット2は、フォトマスク17を当該マスクホルダ52上に載置する。
【0012】
マスクホルダ52は図示しない移送機構によって、試料室9内に搬送され、試料ステージ51上に載置される。なお、本例ではマスクホルダ52を用いて、フォトマスク17の試料室9とロードロック室8との間の移送を行う例について説明するが、これに限られることはなく、例えばロボットハンド等の別の搬送機構を用いて、ホルダレスでフォトマスク17を搬送するようにしても良い。
【0013】
CD−SEMの装置稼動時においては、試料室9は常時、高真空が維持された状態にあり、フォトマスク17を試料室9内に導入する際には、ロードロック室8内を予備排気し、当該ロードロック室8内の真空雰囲気が、試料室9と同等となったときに、試料室9とロードロック室8間に設けられたゲートバルブを開放し、フォトマスク17を試料室9に導入する。なお、図1は、CD−SEMの上視図、図2は、CD−SEMをストッカー6及びロードポート4側から見た図、図3は、CD−SEMの側面図である。
【0014】
マスク搬送用ロボット2は、マスククランプ機構ユニット3を備えている。次にマスククランプ機構ユニット3の詳細を、図4乃至図7を用いて説明する。図4は、マスククランプ機構ユニット3の動作を説明するための図であり、マスククランプ機構3の上視図である。マスククランプ機構3には、一対のアーム12,13と、センターアーム11を夫々の矢印方向に駆動する駆動機構10が設けられている。1対のアーム12,13の下部には、フォトマスク17を吊り下げるように支持する吊り下げ部15が設けられている。
【0015】
吊り下げ部15は、図7に図示するように、最下部にフランジ701を備え、当該フランジ701と、フォトマスク17の下部(パターンのない面)が対面するように、フォトマスク17は吊り下げ部15に支持される。図7は、吊り下げ部15近傍の拡大側面図である。図7に図示するように、吊り下げ部15は、吊り下げ部15の他部分に対し、フォトマスク17方向に、相対的に突出しているフランジ701を備えている。更に、吊り下げ部15のフランジ701より上側の部分では、フォトマスク17の裏面側(下部)より、フォトマスク17の表面(パターン面)側に位置する部分が、フォトマスク17より離間するように形成されている。つまり、吊り下げ部15の下側に対し、相対的にその上側が細くなるように形成されている。
【0016】
また、アーム12,13、及びセンターアーム11は、吊り下げ部15より、相対的に更にフォトマスク17から離間するように、吊り下げ部15を支持している。
【0017】
以上のように、吊り下げ部15の上側、及びアームを、当該吊り下げ部15の下側に対し、相対的に、フォトマスク17から離間させるように構成することによって、フォトマスク17が何等かの事情で、マスクホルダ52上に傾斜して配置されているような場合であっても、吊り下げ部15等が、フォトマスク17に接触した場合におけるパターン面へのダメージを抑制することが可能となる。試料が傾斜して配置されている場合、フォトマスク17の側部に当接される吊下げ部15に、パターン面の縁部が衝突する可能性があるが、上述のような構成によれば、試料傾斜時の逃げ空間を確保することができるので、パターン面にダメージを与えるリスクを最小化することが可能となる。
【0018】
更に、フォトマスク17は、長方形、或いは正方形の矩形状の板状体であり、当該フォトマスク17を安定に支持するためには、長方形或いは正方形の全ての辺(4辺)を支持することが望ましい。図4等に図示する例では、5つの吊り下げ部15を用いて4辺を支持している。また、5つの吊り下げ部15は、センターアーム11、及びアーム12,13に支持されており、駆動機構10に内蔵された駆動装置によって、それぞれの矢印方向に直線的に動作する。このような構成によれば、試料傾斜時等におけるフランジ701の衝突による試料ダメージのリスク、或いはフォトマスク17裏面とフランジ701間の摩擦によって生じる試料ダメージのリスクを最小化することが可能となる。その理由は、以下の通りである。
【0019】
まず、アーム12,13は、2つの吊り下げ部15を、その下部に備えている。駆動機構によるアーム12,13の直線的移動(フォトマスク17が正常に配置されている場合におけるパターン面に平行な方向への移動)によって、アーム12,13のそれぞれに設けられた2つの吊り下げ部15が、フォトマスク17の異なる辺を支持するように、2つの吊り下げ部15が、フォトマスク17に当接される。当該アーム12,13の動作に併せて、センターアーム11に設けられた吊り下げ部15が、フォトマスク17に当接されるように、当該センターアーム11をフォトマスク17に向かって移動させる。この移動により、合計5個のフランジ701が、フォトマスク17の下方に位置することになる。
【0020】
異なる2辺を支持する吊り下げ部15を、1つのアーム(アーム12、或いは13)を用いて移動させる場合、第1にアーム12の長手方向に沿って当該アーム12を移動させる構成、第2にフォトマスク17のパターン面に平行な方向であって、アーム12の長手方向に垂直な方向に、当該アーム12を移動させる構成、或いは、第3に図4に図示するように、フォトマスク17を構成する辺に対し、斜めの方向からアーム12を移動させる構成が考えられる。
【0021】
上述の3つの構成例の内、第3の構成によれば、フランジ701がフォトマスク17の側部、或いは裏面に接した後の当該フランジ701の移動距離を最小化することが可能となる。第1の構成例や第2の構成例の場合、アーム12に設けられた2つのフランジ701の内、一方がフォトマスク17に接した後、その接した状態で移動する距離が長くなるという問題がある。即ち、アーム12によって支持されるフランジ701のいずれか一方が、その対向するフォトマスク17の辺に沿って移動することになるが、その際に、フォトマスク17が斜めに配置されているような場合、フランジ701とフォトマスク17が接した状態で、フランジ701が移動したり、フランジ701がフォトマスク17の側部を押圧し、その状態がその後のアーム12の移動時間に亘って継続する可能性がある。
【0022】
一方、上記第3の構成によれば、アーム12を一方向に駆動することで、2つの辺に対する2つの吊り下げ部15の位置づけが可能となり、更に、2つの吊り下げ部15が有する2つのフランジ701がフォトマスク17に接触した場合においても、その接触後の移動距離を小さくすることができる。特にアーム12の移動方向が、フォトマスク17の2つの辺に対し、45度の方向に移動するように、アーム12,13の移動方向を定めれば、フランジ701とフォトマスク17の接触後の移動距離を最小化できる。なお、本例では、アーム12,13に、それぞれ2つの吊り下げ部15(第2の吊り下げ部と第3の吊り下げ部、及び第4の吊り下げ部と第5の吊り下げ部)を備え、センターアーム11に1つの吊り下げ部(第1の吊り下げ部)を備えた例を説明するが、これに限られることはなく、6つ以上の吊り下げ部を設置することも可能である。
【0023】
以上のように、1つのアームの動作で、2辺を支持するような動作を行うよう、駆動装置を構成することによって、簡易な構成で、複数の辺を支持することが可能となる。上記第3の構成によれば、3つの直線的な移動を行う駆動装置によって、矩形状のフォトマスクの4辺全てを、吊り下げ部15にて支持することが可能となり、万が一の接触時にも、試料へダメージを与えるリスクを抑制することが可能となる。
【0024】
図5は、マスククランプ機構ユニット3によって、フォトマスク17を保持した状態の上視図、図6は、図5のA−A′における断面図である。
【0025】
図8は、吊り下げ部(2)16より、アーム23が、フォトマスク17側に突出した構造を有するマスククランプ機構を説明する図である。図8のマスククランプ機構は、吊り下げ部(2)16の側部が直線的に形成され、且つアーム23が、フォトマスク17側に突出するように形成されている。図8,図9に図示するようなマスククランプ機構では、フォトマスク17が傾斜して配置されたような場合、試料保持時に、フォトマスク17の表面端部(パターン面の縁部)が、アーム23の下面や、吊り下げ部(2)16の側面に接触する可能性がある。具体的には図10に示すように、試料の傾斜配置によって、フォトマスク17の縁部の一部が、他の部分に対し相対的に浮き上がって配置されるような場合、フォトマスク17のパターン面が他部材と接触する可能性がある。図4乃至図7に例示する構成によれば、図10に示すようなフォトマスク17の浮き上がり状態においても、パターン面と他部材間の接触リスクを抑制することが可能となる。
【0026】
また、図11乃至図14は、マスククランプ機構の他の実施例であり、図14に図示するように、吊り下げ部(2)16の側部は、フォトマスク17の側部に沿って、直線的に形成されているものの、アーム23が、フォトマスク17から見て、吊り下げ部(2)16に対し、相対的に離間している。吊り下げ部(2)16は、アーム14に固定されている。このような構成によっても、フォトマスク17のパターン面と他部材との間の接触リスクを抑制することが可能となる。
【0027】
図7のような構成とするか、図14のような構成とするかは、マスククランプ機構を構成する各構成要素の大きさや、フォトマスク17の厚さ等との関係に基づいて、決定されるべきものである。例えば、吊り下げ部15の内、フランジ701より上側の部分の上下方向の寸法が、フォトマスク17の厚さと比較して小さい場合、或いは試料傾斜時に、フォトマスク17のパターン面が吊り下げ部15の上面より上側に突出するような状態(図14に図示する状態)となる場合、フォトマスク17のパターン面端部と、吊り下げ部15の側部とが接触する可能性が極めて低いため、アーム13を選択的に、フォトマスク17から離間させるような構成とすることができる。
【0028】
一方、吊り下げ部15とフォトマスク17のパターン面端部間の接触リスクが見込まれるような場合は、図7に図示するように、吊り下げ部15に段差を形成して、当該吊り下げ部15の上部をフォトマスク17から離間させるようにするように構成することが望ましい。図11は、フォトマスク17を吊り下げた状態のマスククランプ機構の正面図、図12は、マスク置き台7に配置された状態のフォトマスク7を、マスククランプ機構にて保持した状態を示す図、図13は、マスク置き台7に、フォトマスク17が傾斜した状態(異常着座状態)で配置された状態を示す図、図14は、マスククランプ機構の吊り下げ部15近傍の拡大図であって、異常着座時にフォトマスクを保持しようとしたときの状態(実線で示すフォトマスク17は異常着座状態を示し、点線は正常着座状態を示している)を示す図である。
【0029】
マスク置き台7は、マスクホルダ52上、或いはフォトマスク17を配置すべき他の個所に設けられ、マスククランプ機構は、当該マスクホルダ52に配置されているフォトマスク17を搬送する。吊り下げ部15,センターアーム11,アーム12、及び13は、フォトマスク17を保持するときに、マスク置き台7等に接触しないように配置されている。マスククランプ機構は、センターアーム11を駆動機構10に向かって縮めた状態、アーム12,13を駆動機構10から伸ばした状態にて、フランジ701がマスク置き台7に配置されたフォトマスク17の下部に位置するように移動し、その移動後、3つのアームを全てフォトマスク17側に移動させることによって、フォトマスク17を保持する。
【0030】
フォトマスク17を保持するときに、フォトマスク17が傾斜して配置されていると、アーム12,13や吊り下げ部15等に接触する可能性があるが、図7や図14に図示するような構成によれば、その接触リスクを抑制することが可能となる。
【0031】
図15及び図16は、図7等に図示したマスククランプ機構の構成例に基づく技術効果をより具体的に説明する図である。フォトマスク17には、レジスト18が塗布されているものがある。レジスト18はフォトマスク17の上面だけではなく、側面の上半分まで塗布されている。特にフォトマスク17の上面縁部(角部)には、レジストの盛り上がりがある。
【0032】
このように、レジスト18がフォトマスク17に覆いかぶさっているような状態では、図15に図示する吊り下げ部(2)16によれば、フォトマスク17を保持するために、吊り下げ部(2)16をフォトマスク17に接触させた場合、吊り下げ部(2)16とレジスト18の盛り上がり部分が接触してしまい、レジストを飛散させてしまう場合がある。飛散したレジスト18は、異物としてフォトマスク17上面に付着する。付着した異物は欠陥として残り、フォトマスクの歩留まりを低下する原因となる可能性がある。このような接触の可能性をなくすべく、図7に図示するような吊り下げ部15を採用することによって、図16に図示するように、レジスト18と吊り下げ部15との間の接触をなくすことが可能になる。
【0033】
なお、フォトマスク17に塗布されるレジスト18が、フォトマスク17側面の上半分まで塗布される点に鑑み、フォトマスク17の下側角部が、フランジ701に接した状態において、フォトマスク17側面の下半分に選択的に、吊り下げ部15が接するように、吊り下げ部15に段差を形成した。吊り下げ部15のフォトマスク17との接触部の高さ方向の距離は、フランジ701の内側端部を起点として、フォトマスク17の厚さの2分の1以下となるように構成されている。
【0034】
以上のような構成によれば、レジストが塗布されている試料のレジストを剥離することなく、フォトマスク17の側方(フォトマスク17の表面方向)への移動の抑制が可能なマスククランプ機構を提供することが可能となる。
【0035】
次に、マスククランプ機構によるフォトマスク17の搬送時に、フォトマスク17に付着した帯電を除去する機構を備えた荷電粒子線装置について、図面を用いて説明する。昨今の半導体試料には、その製造工程において、帯電が付着した状態で、SEM等の測定・検査装置に搬送されてくるものがある。この様な帯電は、SEMにおける測定や検査の際に、電子ビームのフォーカスコンディション等に影響を与え、フォーカス調整を困難ならしめる要因となるため、米国特許公報USP 6,507,474には、試料の搬送時にイオナイザからなる除電機構を用いて、除電を行い、帯電を消去する技術が提案されている。
【0036】
しかしながら、USP 6,507,474には搬送機構をどのように構成するかについては何も言及されていない。例えば搬送機構を特許文献1に説明されているような、試料下方から支持する構成とした場合、試料とイオナイザとの間に、支持部材が介在することになり、当該イオナイザに遮蔽される個所の除電を十分に行えないという問題がある。特に、昨今散見される試料全域に亘る帯電を除電する場合、試料の位置によって除電の効果が変化するため、フォーカス調整がより困難なものとなる場合がある。
【0037】
図17に図示するようなマスククランプ機構によれば、フォトマスク17の搬送軌道外であって、当該搬送軌道の上下に配置されるイオナイザ35と、当該移動軌道との間を遮蔽する部材を最小化することが可能となるため、イオナイザによる除電効果を最大化することが可能となる。特に、フォトマスクの場合、クロムからなる遮光パターンが形成されている表面に対し、石英基板に覆われている裏面の方が、帯電の付着量が大きいことがある。イオナイザ35とフォトマスク17裏面との間に介在するのは、5つのフランジ701の一部だけであるため、フォトマスク17の裏面のほぼ全面を均一に除電することが可能となる。
【0038】
図18は、図5に図示するマスククランプ機構に、更に保護金具19を設けた例を説明する図である。保護金具19は、フランジ701より更にフォトマスク17側に向かって突出した構造となっており、フォトマスク17の脱落のリスクの更なる抑制を可能とする構造となっている。また、保護金具19のフォトマスク17側先端は、フランジ701より更に下部に位置する構造となっているため、フォトマスク17が傾斜して配置されていた場合においても、保護金具19とフォトマスク17の接触リスクを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】CD−SEMの概要を示す図(上視図)。
【図2】ロードポート側から見たCD−SEMの概要を示す図。
【図3】CD−SEMの概要を示す図(側視図)。
【図4】マスククランプ機構ユニットの動作を説明する図。
【図5】マスククランプ機構ユニットの上視図。
【図6】マスククランプ機構の断面図。
【図7】マスククランプ機構のフォトマスク吊り下げ部の概要を説明する図。
【図8】フォトマスクの一部を覆うように形成されたアームを有するマスククランプ機構ユニットの上視図。
【図9】フォトマスクの一部を覆うように形成されたアームを有するマスククランプ機構ユニットの正面図。
【図10】アームとフォトマスクの接触状態を説明する図。
【図11】フォトマスクを吊り下げた状態のマスククランプ機構の正面図。
【図12】マスク置き台に配置された状態のフォトマスクを、マスククランプ機構にて保持した状態を示す図。
【図13】マスク置き台に、フォトマスク17が傾斜した状態で配置された状態を示す図。
【図14】マスククランプ機構の吊り下げ部の拡大図。
【図15】吊り下げ部とフォトマスクに塗布されたレチクルが接触している状態を説明する図。
【図16】吊り下げ部の一部をフォトマスクから離間させ、レチクルとの非接触状態を可能とした吊り下げ部を説明する図。
【図17】イオナイザを用いてマスククランプ機構に保持されたフォトマスクを除電する例を説明する図。
【図18】保護金具を備えたマスククランプ機構を説明する図。
【符号の説明】
【0040】
1 ミニエンバイラメント方式試料搬送機構
2 マスク搬送用ロボット
3 マスククランプ機構ユニット
4 ロードポート
5 SMIFポッド
6 ストッカー
8 ロードロック室
9 試料室
10 駆動機構
11 センターアーム
12,13,22,23 アーム
15 吊り下げ部
16 吊り下げ部(2)
17 フォトマスク
18 レジスト
19 保護金具
21 センターアーム
24 クランプガイド
35 イオナイザ
50 電子顕微鏡鏡体
51 試料ステージ上
52 マスクホルダ
701 フランジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面にパターン面を有する試料を保持して搬送する試料搬送機構において、
前記試料を保持する試料保持機構を移送する移送機構を備え、
当該試料保持機構は、
前記試料を吊り下げる吊り下げ部をその下部に複数備えた一対のアームと、
当該一対のアームに備えられた吊り下げ部を、前記試料に近接、或いは離間させるように移動させる駆動部を備え、
前記吊り下げ部は、当該吊り下げ部を前記試料に近接させたときに、前記パターン面に垂直な方向から見て、前記試料の下部に位置するように形成される突出部を備え、前記アーム、或いは当該アーム及び前記パターン面側に位置する吊り下げ部は、当該突出部に対して、前記試料から離間して形成されることを特徴とする試料搬送機構。
【請求項2】
請求項1において、
前記試料保持機構は、前記一対のアームによって支持される前記試料の辺以外の辺を支持する吊り下げ部を備えたセンターアームを備えていることを特徴とする試料搬送機構。
【請求項3】
請求項2において、
前記センターアームによって支持される第1の吊り下げ部と、
前記一対のアームの一方に支持されると共に、前記第1の吊り下げ部に支持される辺の対辺と、当該対辺に隣接する辺とをそれぞれ支持する第2の吊り下げ部、及び第3の吊り下げ部と、
前記一対のアームの他方に支持されると共に、前記第1の吊り下げ部に支持される辺の対辺と、当該対辺に隣接する辺であって、前記第3の吊り下げ部に支持される辺の対辺とをそれぞれ支持する第4の吊り下げ部及び第5の吊り下げ部を備えたことを特徴とする試料搬送機構。
【請求項4】
請求項3において、
前記駆動部は、前記第2,第3の吊り下げ部、及び前記第4,第5の吊り下げ部を、前記パターン面と平行な方向であって、前記各辺に対し、斜めの方向に、移動させることを特徴とする試料搬送機構。
【請求項5】
請求項4において、
前記駆動部は、前記第2,第3,第4、及び第5の吊り下げ部を、前記各辺に対し、45度の方向に移動させることを特徴とする試料搬送機構。
【請求項6】
請求項1において、
前記吊り下げ部は、前記試料の下方に位置させるフランジを備えていることを特徴とする試料搬送機構。
【請求項7】
請求項1において、
前記吊り下げ部の前記試料側部との接触部の高さ方向の距離は、前記試料の厚さの2分の1以下となるように構成されていることを特徴とする試料搬送機構。
【請求項8】
表面にパターン面を有する矩形の板状体であるフォトマスクを保持して搬送するフォトマスク搬送機構において、前記フォトマスクを保持する保持機構を備え、
当該保持機構は、
前記フォトマスクを吊り下げる吊り下げ部を、その下部に2以上備えた一対のアームと、
当該アームを前記矩形の辺に対し、前記パターン面に平行な方向であって、前記矩形の各辺に対し斜めの方向に、前記アームを移動させる駆動部と、
当該駆動部によって移動されると共に、前記一対のアームに備えられた吊り下げ部によって支持される辺以外の辺を吊り下げる吊り下げ部を備えたセンターアームを備え、
前記一対のアームに取り付けられた2つの吊り下げ部は、それぞれ前記矩形の異なる辺を支持する位置に取り付けられ、前記一対のアームとセンターアームに取り付けられた前記吊り下げ部によって、前記矩形の4辺全てを支持することを特徴とする試料搬送機構。
【請求項9】
請求項8において、
前記駆動部は、前記一対のアームに備えられた吊り下げ部を、前記フォトマスクの前記各辺に対し、45度の方向に移動させることを特徴とする試料搬送機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2010−40804(P2010−40804A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−202602(P2008−202602)
【出願日】平成20年8月6日(2008.8.6)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】