説明

試料注入装置及び液体クロマトグラフィー装置

【課題】本発明は、キャリーオーバーの発生を抑制すると共に、理論段数を向上させることが可能な試料注入装置及び液体クロマトグラフィー装置を提供することを目的とする。
【解決手段】試料注入装置は、試料を吐出する先端部がテーパー状である試料用ニードル21Aと、試料用ニードル21Aから吐出された試料が送出される配管15を有し、配管15は、試料用ニードル21Aを装着することが可能であると共に、試料用ニードル21Aから吐出された試料が注入されるすり鉢状の試料注入部15aと、試料注入部15aから注入された試料が送出される配管部15bを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料注入装置及び液体クロマトグラフィー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体クロマトグラフィー装置は、概略すると、移動相(溶出溶媒)を貯蔵する貯槽、移動相を脱気する脱気装置、移動相を貯槽から供給するポンプ、試料を移動相と共にカラムに向う配管に注入する試料注入装置、試料中の成分を分離するための充填剤が充填されているカラム、カラムを略一定の温度に保つ恒温槽及び分離された試料中の成分を検出する検出器等を有する。この内、試料注入装置は、例えば、特許文献1〜3に開示されているように、試料を吸引した試料注入用ニードルを試料注入ポートに装着して、試料を移動相と共に配管に注入する。
【0003】
ところで、近年、液体クロマトグラフィー装置の検出感度が向上しており、これに伴い、キャリーオーバーと呼ばれる現象が問題になっている。キャリーオーバーとは、時系列的に前に測定した試料が液体クロマトグラフィー装置内に残留し、あたかも現在測定している試料中にその物質が存在するかのような検出結果を示す現象であり、分析結果の信頼性を低下させるものである。キャリーオーバーは、試料を移動相と共に配管に注入する際に、試料注入装置内の金属及び/又は樹脂に試料が付着して残留し、次の試料を注入する際に残留した試料が混入することによって生じる。
【0004】
一方、液体クロマトグラフィー/質量分析法(LC/MS)等では、短時間での測定が可能となることから、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)が用いられているが、理論段数の更なる向上が求められている。
【0005】
図13に、従来の試料注入装置の一部を示す。なお、図13(a)は、斜視図であり、図13(b)は、断面図である。図13に示す試料注入装置は、試料注入ポート61及びニードルシール62がホルダー63で固定された状態で、オシネジ64を用いて配管65と接続されているため、ニードル66から試料を注入する際に試料が付着しやすく、うずまき流が発生しやすい。その結果、キャリーオーバーが発生しやすく、理論段数が低下しやすい。
【特許文献1】特開平10−10103号公報
【特許文献2】WO再表2004/102182号公報
【特許文献3】特開2006−201121号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の従来技術が有する問題に鑑み、キャリーオーバーの発生を抑制すると共に、理論段数を向上させることが可能な試料注入装置及び液体クロマトグラフィー装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、試料注入装置において、試料を吐出する先端部がテーパー状である第一のニードルと、該第一のニードルから吐出された試料が送出される配管を有し、該配管は、該第一のニードルを装着することが可能であると共に、該第一のニードルから吐出された試料が注入されるすり鉢状の試料注入部と、該試料注入部から注入された試料が送出される配管部を有することを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の試料注入装置において、前記第一のニードルの先端部の傾斜角は、前記試料注入部の傾斜角と略同一であることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の試料注入装置において、前記第一のニードルの内径は、前記配管部の内径以上であることを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の試料注入装置において、前記第一のニードルを前記試料注入部に圧着させる圧着部材をさらに有し、前記第一のニードルは、該圧着部材により押圧される被押圧部を有することを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の試料注入装置において、前記試料注入部に装着することが可能である第二のニードルと、前記第一のニードルと接続することが可能であり、前記第一のニードルと接続された状態で前記第一のニードルに試料を吸引する試料吸引手段と、前記第一のニードルが該試料吸引手段に接続されていると共に、該第二のニードルが移動相を供給する移動相供給手段に接続されている状態及び前記第一のニードルが該移動相供給手段に接続されている状態を切り換えることが可能な切り換え弁をさらに有することを特徴とする。
【0012】
請求項6に記載の発明は、液体クロマトグラフィー装置において、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の試料注入装置を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、キャリーオーバーの発生を抑制すると共に、理論段数を向上させることが可能な試料注入装置及び液体クロマトグラフィー装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に、本発明を実施するための最良の形態を図面と共に説明する。
【0015】
図1に、本発明の液体クロマトグラフィー装置の一例を示す。液体クロマトグラフィー装置の構成について説明する。図1に示す液体クロマトグラフィー装置は、移動相(溶出溶媒)を貯蔵する貯槽11と、移動相を脱気する脱気装置12と、移動相を貯槽11から供給するポンプ13と、試料を移動相と共にカラム16に向かう配管15に注入する試料注入装置14と、試料中の成分を分離するための充填剤が充填されているカラム16と、カラム16を一定の温度に保つ恒温槽17と、分離された試料中の成分を検出する検出器18から構成されている。なお、測定を安定させるために、移動相は、常に貯槽11からポンプ13により試料注入装置14を介してカラム16に供給されていることが望ましい。
【0016】
図2に、本発明の試料注入装置の一例を示す。図2に示す試料注入装置は、配管15、試料用ニードル21A、移動相用ニードル21B、シリンジ22、洗浄液用ポンプ23、バルブ24、試料用容器25、インジェクションバルブ26、洗浄液用容器27、洗浄装置28及びニードル移動手段(不図示)を有する。
【0017】
試料用ニードル21Aは、インジェクションバルブ26及びバルブ24を介して、シリンジ22に接続することが可能である。また、インジェクションバルブ26を介して、ポンプ13とも接続することが可能である。
【0018】
試料用ニードル21Aから移動相と共に吐出された試料が送出される配管15は、図3に示すように、試料が注入されるすり鉢状の試料注入部15aと、試料注入部15aから注入された試料が送出される配管部15bを有し、試料注入部15aは、固定部材31で固定されている。また、配管15は、カラム16に直結されていることが好ましい。なお、配管15の材料としては、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、ステンレス、チタン等の金属が挙げられる。
【0019】
試料用ニードル21Aは、先端部がテーパー状であるが、その傾斜角は、10〜45°であることが好ましく、10〜30°がさらに好ましい。このとき、試料用ニードル21Aの先端部の傾斜角と試料注入部15aの傾斜角を略同一とすることが好ましい。これにより、試料用ニードル21Aと試料注入部15aの接合面積を大きくすることができ、試料及び移動相の漏れを抑制することができる。
【0020】
また、試料用ニードル21Aの内径は、0.1〜0.8mmであることが好ましく、0.1〜0.3mmがさらに好ましい。このとき、試料用ニードル21Aの内径を配管部15bの内径以上とすることが好ましく、配管部15bの内径と略同一とすることがさらに好ましい。これにより、試料注入部15aから試料及び移動相が注入される際に、うずまき流の発生を抑制することができる。なお、配管部15bの内径は、0.05〜0.3mmであることが好ましく、0.065〜0.25mmがさらに好ましい。
【0021】
さらに、試料用ニードル21Aは、図4に示すように、両側、好ましくは、先端部の近傍の両側に、被押圧部41を有してもよい。このとき、圧着部材42を用いて、試料用ニードル21Aを挟むように被押圧部41を押圧することにより、試料用ニードル21Aから試料注入部15aに試料及び移動相を注入する際に、試料用ニードル21Aの変形を抑制することができる。
【0022】
また、移動相用ニードル21Bは、インジェクションバルブ26を介して、ポンプ13と接続することが可能である。なお、移動相用ニードル21Bは、特に限定されないが、試料用ニードル21Aと同一のものを用いることが好ましい。
【0023】
次に、図5から図10を参照して、本発明の試料注入装置について説明する。なお、図5〜図10に、本発明の試料注入装置の各構成要素の接続状態を示し、それぞれ待機時、試料採取時、試料用ニードルの予備洗浄時、試料用ニードルの超音波洗浄時、試料分析時(その1)及び試料分析時(その2)の状態を示す。
【0024】
試料用ニードル21Aは、バルブ24及びインジェクションバルブ26の切り換えにより、シリンジ22に接続されると、シリンジ22を押し引きすることによって、試料用ニードル21Aに対して、試料の吸入及び吐出を行うことができる。また、試料用ニードル21Aは、インジェクションバルブ26の切り換えにより、ポンプ13に接続されると、ポンプ13より移動相が試料用ニードル21Aに供給される。
【0025】
また、インジェクションバルブ26の切り換えにより、移動相用ニードル21Bがポンプ13に接続されると、ポンプ13より移動相が移動相用ニードル21Bに供給される。
【0026】
移動相用ニードル21Bとインジェクションバルブ26を接続する配管には、液だれを防止するために、三方電磁弁29が設けられている。三方電磁弁29は、移動相用ニードル21Bが移動中等の試料注入部15aに装着されていない状態でインジェクションバルブ26が図中Bで示す接続状態となった時に閉弁し、移動相用ニードル21Bから移動相が流出することを防止することができる。
【0027】
また、洗浄液用容器27は、内部に洗浄液(通常、移動相に用いられている溶媒)が貯蔵されており、洗浄液用ポンプ23に接続されている。このとき、洗浄液は、洗浄液用ポンプ23により吸入されてバルブ24に圧送される。
【0028】
バルブ24は、洗浄液用ポンプ23により圧送された洗浄液を、洗浄装置28又は試料用ニードル21Aに選択的に供給することができる。具体的には、バルブ24は、3個のポートP1〜P3を有しており、この内の2つのポートを選択的に接続することが可能である。なお、バルブ24は、各ポートP1〜P3のいずれも接続しないことも可能である。
【0029】
また、シリンジ22及びインジェクションバルブ26は、いずれもバルブ24のポートP3に接続されている。すなわち、常時シリンジ22とインジェクションバルブ26が接続されている。
【0030】
洗浄装置28は、洗浄部28a及び28b、超音波振動子28c、廃液ポート28d、廃液配管28eを有する。洗浄装置28は、バルブ24の切り換えにより、洗浄液用ポンプ23と接続されると、洗浄液用容器27から洗浄液が供給される。また、一定量以上の余剰の洗浄液は、廃液ポート28dに流入し、廃液ポート28dと接続された廃液配管28eから廃液として外部に排出される。後述するように、洗浄装置28に試料用ニードル21Aを挿入することにより、試料が付着した試料用ニードル21Aが洗浄される。これにより、キャリーオーバーの発生を抑制することができる。また、洗浄装置28には、超音波振動子28cが設けられており、試料用ニードル21Aを超音波洗浄することができる。これにより、試料用ニードル21Aの洗浄効果を高めることができ、より確実にキャリーオーバーの発生を抑制することができる。
【0031】
配管15は、カラム16に接続されている。すなわち、配管15は、インジェクションバルブ26と接続されておらず、インジェクションバルブ26から分離独立している。後述するように、試料を吸引した試料用ニードル21Aが配管15の試料注入部15aに装着され、試料及び移動相を試料注入部15aに吐出することにより、試料は、配管部15bを移動相と共に流れ、カラム16に送出される。
【0032】
インジェクションバルブ26は、6つのポートを有しており、5つのポートに、ポンプ13、試料用ニードル21A、移動相用ニードル21B、バルブ24及び洗浄装置28が接続されている。インジェクションバルブ26は、図中実線Aで示す接続状態(以下、接続状態Aという)と、図中破線Bで示す接続状態(以下、接続状態Bという)を切り換えることができる。
【0033】
インジェクションバルブ26が接続状態Aの場合、試料用ニードル21Aは、インジェクションバルブ26を介して、ポンプ13と接続し、バルブ24は、インジェクションバルブ26を介して洗浄装置28の洗浄部28aに接続される。この際、移動相用ニードル21Bは、いずれにも接続されない。また、インジェクションバルブ26が接続状態Bの場合、試料用ニードル21Aは、インジェクションバルブ26を介して、バルブ24と接続され、移動相用ニードル21Bは、インジェクションバルブ26を介して、ポンプ13に接続される。
【0034】
次に、本発明の試料注入装置を用いた試料注入方法について説明する。
【0035】
図5に示すように、試料を採取する前の待機状態において、インジェクションバルブ26は、接続状態Aとなっており、バルブ24は、ポートP1〜P3のいずれも接続しない。さらに、ニードル移動手段(不図示)により、試料用ニードル21Aは、配管15の試料注入部15aに装着されている。また、移動相用ニードル21Bは、ニードル移動手段(不図示)により、試料注入部15aの近傍に待機しており、非接続状態となっている。さらに、三方電磁弁29は、移動相用ニードル21Bとインジェクションバルブ26を接続する配管を閉塞している。したがって、待機時において、ポンプ13から供給される移動相は、試料用ニードル21A及び試料注入部15aを介して、カラム16に供給される。
【0036】
図6に示すように、試料用ニードル21Aに試料を採取する際に、試料用ニードル21Aは、ニードル移動手段(不図示)により、試料用容器25内に挿入されると共に、移動相用ニードル21Bが試料注入部15aに装着される。また、インジェクションバルブ26は、接続状態Bに切り換えられる。さらに、三方電磁弁29も開弁され、移動相用ニードル21Bは、インジェクションバルブ26と連通される。したがって、試料採取時において、ポンプ13から供給される移動相は、移動相用ニードル21B及び試料注入部15aを介して、カラム16に供給される。このため、移動相は、カラム16に常に供給され、測定を安定させることができる。また、試料用ニードル21Aは、インジェクションバルブ26及びバルブ24を介して、シリンジ22に接続される。このため、シリンジ22を用いて吸引することにより、試料用容器25内の試料が試料用ニードル21Aに吸引される。この際、試料の吸引量は、吸引した試料がインジェクションバルブ26に入り込まないように設定されている。これにより、試料がインジェクションバルブ26内に付着することを防止でき、キャリーオーバーの発生を抑制することができる。なお、試料の吸引量を多くするために、試料用ニードル21Aにサンプルループを設けてもよい。
【0037】
試料採取が終了すると、試料用ニードル21Aの外壁に試料が付着するため、試料が付着した試料用ニードル21Aを洗浄する。具体的には、試料用ニードル21Aの予備洗浄及び超音波洗浄を行う。
【0038】
図7に示すように、試料用ニードル21Aを予備洗浄する際には、インジェクションバルブ26を接続状態Bに維持しつつ、ニードル移動手段(不図示)により、試料用ニードル21Aを洗浄装置28の洗浄部28bに挿入する。また、ポートP1及びP2が接続されるようにバルブ24を切り換え、洗浄液用ポンプ23を介して、洗浄液用容器27内の洗浄液を洗浄部28bに供給する。したがって、洗浄部28b内に洗浄液が噴出し、試料用ニードル21Aの外壁が予備洗浄される。なお、洗浄部28bから溢れた洗浄液は、廃液ポート28d及び廃液配管28eを介して排出される。
【0039】
図8に示すように、試料用ニードル21Aを超音波洗浄する際には、インジェクションバルブ26を接続状態Bに維持しつつ、ニードル移動手段(不図示)により、試料用ニードル21Aを洗浄装置28の洗浄部28aに挿入する。また、バルブ24は、再びポートP1〜P3のいずれも接続されない状態に切り換えられる。この状態で、超音波振動子28cを駆動して超音波を発生させることにより、洗浄部28aに装填されている洗浄液が超音波振動し、試料用ニードル21Aの外壁が超音波洗浄される。
【0040】
なお、予備洗浄時及び超音波洗浄時においても、移動相は、ポンプ13からインジェクションバルブ26、移動相用ニードル21B及び試料注入部15aを介して、カラム16に供給される。
【0041】
超音波洗浄が終了すると、試料用ニードル21Aに採取した試料をカラム16に供給して試料を分析する。
【0042】
図9に示すように、試料を分析する際に、インジェクションバルブ26は、接続状態Bから接続状態Aに再び切り換わり、ニードル移動手段(不図示)により、試料用ニードル21Aは、試料注入部15aに装着される。さらに、移動相用ニードル21Bも、ニードル移動手段(不図示)により、試料注入部15aの近傍の待機位置に移動される。移動相用ニードル21Bが移動を開始すると、三方電磁弁29は、移動相用ニードル21Bとインジェクションバルブ26を接続する配管を閉塞する。また、試料を分析する際には、試料を吸引した試料用ニードル21Aが試料注入部15aに装着されると共に、インジェクションバルブ26により、試料用ニードル21Aがポンプ13に接続される。これにより、試料用ニードル21A内の試料は、インジェクションバルブ26を通過することなく、カラム16に供給される。また、カラム16に供給された試料は、カラム16で所定の分離が行われた後、検出器18に送られて分析される。したがって、インジェクションバルブ26内に試料が残存することを防止することができ、キャリーオーバーの発生を抑制することができる。また、試料注入装置内のキャリーオーバーの発生が抑制されることにより、理論段数を向上させることができる。
【0043】
なお、試料分析時に、洗浄装置28の洗浄部28aの洗浄液を交換してもよい。この場合、図10に示すように、ポートP2及びP3が接続されるようにバルブ24を切り換え、洗浄液用容器27内の洗浄液を洗浄液用ポンプ23、バルブ24及びインジェクションバルブ26を介して、洗浄部28aに供給する。これにより、試料用ニードル21Aを洗浄して汚染された洗浄液は、廃液ポート28d及び廃液配管28eを介して排出され、洗浄部28aには、汚染されていない洗浄液が供給される。したがって、次回の超音波洗浄時において、試料用ニードル21Aの外壁をより確実に洗浄することができる。
【0044】
なお、本発明の試料注入装置としては、上記の構成に限定されず、図3又は図4に示す配管15及び試料用ニードル21Aを従来の試料注入装置に適用したものも挙げられる。
【0045】
図11に、このような試料注入装置の一例を示す。なお、図11において、図1〜10と同一の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。図11に示す試料注入装置は、配管15、試料用ニードル21A、シリンジ22、バルブ24、試料用容器25、インジェクションバルブ26、洗浄装置51及びニードル移動手段(不図示)を有する。
【0046】
インジェクションバルブ26は、6つのポートを有しており、各ポートに、ポンプ13、配管15、カラム16、試料用ニードル21A、バルブ24及び洗浄装置51が接続されている。インジェクションバルブ26は、図中実線Aで示す接続状態(以下、接続状態Aという)と、図中破線Bで示す接続状態(以下、接続状態Bという)を切り換えることができる。
【0047】
試料を採取する前の待機状態において、インジェクションバルブ26は、接続状態Aとなっており、試料用ニードル21Aは、配管15の試料注入部15aに装着されている。このとき、試料用ニードル21Aは、インジェクションバルブ26を介して、ポンプ13に接続されており、配管15は、インジェクションバルブ26を介して、カラム16と接続されている。したがって、ポンプ13から供給される移動相は、試料用ニードル21A、配管15及びインジェクションバルブ26を介して、カラム16に供給される。
【0048】
一方、試料を採取する際には、インジェクションバルブ26を接続状態Bに切り換えると共に、試料用ニードル21Aを試料用容器25に挿入する。このとき、試料用ニードル21Aは、インジェクションバルブ26及びバルブ24を介して、シリンジ22に接続されている。このため、シリンジ22を操作することにより、試料用容器25内の試料が試料用ニードル21A内に吸引される。また、ポンプ13は、インジェクションバルブ26を介して、カラム16に接続されているため、試料用ニードル21Aにより、試料採取時もカラム16に移動相が供給される。
【0049】
試料採取が終了すると、試料用ニードル21Aの外壁に試料が付着するため、試料が付着した試料用ニードル21Aを洗浄する。具体的には、試料用ニードル21Aを洗浄装置51の洗浄部51b内に挿入した後、洗浄部51a内に挿入して、試料用ニードル21Aの外壁を洗浄する。洗浄装置51の洗浄部51a及び51bは、バルブ24を所定のタイミングで洗浄液用ポンプ23に接続することにより、常に新しい洗浄剤が供給される。なお、余剰となった洗浄液は、廃液ポート51c及び廃液配管51dから排出される。
【0050】
洗浄が終了すると、試料用ニードル21Aに採取した試料をカラム16に供給して試料を分析する。具体的には、試料用ニードル21Aを試料注入部15aに装着すると共に、再びインジェクションバルブ26を接続状態Aとする。これにより、ポンプ13から試料用ニードル21Aに供給される移動相により、試料は、試料用ニードル21Aから試料注入部15aに送出された後、移動相の流れに乗って配管部15b及びインジェクションバルブ26を介して、カラム16に供給される。また、カラム16に供給された試料は、カラム16で所定の分離が行われた後、検出器18に送られて分析される。
【実施例】
【0051】
図1に示す液体クロマトグラフィー装置を用いて、標準試料(レセルピン10ng/ml)を2μl注入して、理論段数の評価を行った。なお、実施例1では、図2に示す試料注入装置において、図4に示す構成としたものを用い、比較例1では、図11に示す試料注入装置において、図13に示す構成としたものを用いた。
【0052】
液体クロマトグラフィーの条件を以下に示す。カラム16としては、平均粒径が3μmのオクタデシルシリルシリカゲルが充填された長さが5cm、内径が2mmのカラムを用い、恒温槽17でカラム16の温度を40℃に保った。また、移動相として、0.1重量%の酢酸水溶液/アセトニトリルの混合溶媒(体積比50:50)を用い、移動相の流速は、200μl/分であった。なお、洗浄液としては、水を用いた。また、検出器18としては、エレクトロスプレーイオン化法を用いた質量分析計を使用し、親イオンを609(m/z)とし、195(m/z)の陽イオンを検出した。
【0053】
図12に、理論段数の評価結果を示す。図12より、比較例1の理論段数は、1400段であり、実施例1の理論段数は、5600段であった。このことから、実施例1は、比較例1に対して、理論段数が4200段高くなっている。さらに、実施例1は、比較例1と比較してピークがシャープに現れていることから、ピークの分離がきれいに行われていることがわかり、実施例1の液体クロマトグラフィー装置の分析精度が比較例1より高いことがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の液体クロマトグラフィー装置の一例を示すブロック図である。
【図2】本発明の試料注入装置の一例を示す斜視図である。
【図3】本発明で用いられる配管の一例を示す図である。
【図4】本発明で用いられるニードルの一例を示す図である。
【図5】本発明の試料注入装置の待機時の状態を示す図である。
【図6】本発明の試料注入装置の試料採取時の状態を示す図である。
【図7】本発明の試料注入装置の試料用ニードルの予備洗浄時の状態を示す図である。
【図8】本発明の試料注入装置の試料用ニードルの超音波洗浄時の状態を示す図である。
【図9】本発明の試料注入装置の試料分析時(その1)の状態を示す図である。
【図10】本発明の試料注入装置の試料分析時(その2)の状態を示す図である。
【図11】本発明の試料注入装置の他の例を示す図である。
【図12】実施例1及び比較例1の評価結果を示す図である。
【図13】従来の試料注入装置の一部を示す図である。
【符号の説明】
【0055】
11 貯槽
12 脱気装置
13 ポンプ
14 試料注入装置
15 配管
15a 試料注入部
15b 配管部
16 カラム
17 恒温槽
18 検出器
21A 試料用ニードル
21B 移動相用ニードル
22 シリンジ
23 洗浄液用ポンプ
24 バルブ
25 試料用容器
26 インジェクションバルブ
27 洗浄液用容器
28 洗浄装置
28a、28b 洗浄部
28c 超音波振動子
28d 廃液ポート
28e 廃液配管
29 三方電磁弁
31 固定部材
41 被押圧部
42 圧着部材
51 洗浄装置
51a、51b 洗浄部
51c 廃液ポート
51d 廃液配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を吐出する先端部がテーパー状である第一のニードルと、
該第一のニードルから吐出された試料が送出される配管を有し、
該配管は、該第一のニードルを装着することが可能であると共に、該第一のニードルから吐出された試料が注入されるすり鉢状の試料注入部と、該試料注入部から注入された試料が送出される配管部を有することを特徴とする試料注入装置。
【請求項2】
前記第一のニードルの先端部の傾斜角は、前記試料注入部の傾斜角と略同一であることを特徴とする請求項1に記載の試料注入装置。
【請求項3】
前記第一のニードルの内径は、前記配管部の内径以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の試料注入装置。
【請求項4】
前記第一のニードルを前記試料注入部に圧着させる圧着部材をさらに有し、
前記第一のニードルは、該圧着部材により押圧される被押圧部を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の試料注入装置。
【請求項5】
前記試料注入部に装着することが可能である第二のニードルと、
前記第一のニードルと接続することが可能であり、前記第一のニードルと接続された状態で前記第一のニードルに試料を吸引する試料吸引手段と、
前記第一のニードルが該試料吸引手段に接続されていると共に、該第二のニードルが移動相を供給する移動相供給手段に接続されている状態及び前記第一のニードルが該移動相供給手段に接続されている状態を切り換えることが可能な切り換え弁をさらに有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の試料注入装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の試料注入装置を有することを特徴とする液体クロマトグラフィー装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−164498(P2008−164498A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−355934(P2006−355934)
【出願日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(000001959)株式会社資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】