試料測定装置及び試料測定方法
【課題】試料種(動物種)に応じて適切な測定原理によって測定を行う。
【解決手段】血液試料を測定する試料測定装置であって、血液試料中の赤血球と血小板を測定可能な電気式測定部D1及び光学式測定部D2と、血液試料の動物種に応じて電気式測定部D1及び光学式測定部D2の少なくともいずれか一方を選択して測定を行うよう前記測定部を制御する制御部と、を備えている。
【解決手段】血液試料を測定する試料測定装置であって、血液試料中の赤血球と血小板を測定可能な電気式測定部D1及び光学式測定部D2と、血液試料の動物種に応じて電気式測定部D1及び光学式測定部D2の少なくともいずれか一方を選択して測定を行うよう前記測定部を制御する制御部と、を備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料測定装置及び試料測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ペットブームに伴い、動物医療の高度化や多くの動物種に対応できるように、動物の検査装置も進歩してきた。特に、動物の血液中の血球を測定する血球分析装置では、血球の計数に加えて、血球の分類が可能な装置や、動物種に対応して測定感度を自動的に変更可能な装置が開発され、多くの動物病院や動物実験施設で使用されている。
【0003】
このような血球分析装置として、異なる動物種の生体試料を分析する試料測定装置であって、動物種入力手段によって入力された動物種に対して、動物種に適合するように測定感度を変更するよう構成されたものがある(特許文献1)。
【特許文献1】特開2000−310642号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、測定感度変更だけでは、動物種によって正確な測定結果が得られない場合があった。
【0005】
本発明は、動物種などの試料の種類(試料種)に応じて、従来に比べて正確に生体試料を測定できる試料測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、生体試料中の成分を測定する試料測定装置において、前記生体試料の試料種を入力する入力部と、前記生体試料と試薬とを混和して測定試料を調製する試料調製部と、第1測定部と、前記第1測定部とは異なる第2測定部と、前記試料調製部で調製された測定試料を、前記第1測定部および前記第2測定部のすくなくとも一方に供給する試料供給部と、前記試料供給部によって前記測定試料を前記第1測定部および第2測定部の少なくとも一方に供給するのを制御するとともに、入力された前記試料種に基づいて前記測定試料の供給先となる測定部を決定する制御部と、を備えている。
【0007】
本発明によれば、試料種に基づいて測定部が決定されるため、試料種に応じて適切な測定を行える。
【0008】
前記制御部は、入力された前記試料種に基づいて、前記測定試料を前記第1測定部に供給するか、前記測定試料を前記第1測定部と前記第2測定部の両方に供給するかを決定するのが好ましい。
【0009】
前記試料種は、動物種であるのが好ましい。前記第1測定部は、前記測定試料を電気的に測定する電気式測定部であるのが好ましい。前記第2測定部は、前記測定試料を光学的に測定する光学式測定部であるのが好ましい。前記生体試料は、血液試料であるのが好ましい。前記試薬は、希釈液であるのが好ましい。
【0010】
本発明は、生体試料中の複数成分の測定が可能であり、複数の測定部を備えた試料測定装置であって、前記生体試料の試料種を入力する入力部と、第1測定部と、前記第1測定部とは異なる第2測定部と、を備え、入力された前記試料種に基づいて、第1測定部および第2測定部の少なくとも一方の測定部を用いて前記生体試料中の第1成分を測定する。
上記本発明によれば、本発明によれば、試料種に基づいて用いられる測定部が決まるため、試料種に応じて適切な測定を行える。
【0011】
入力された前記試料種に基づいて、前記第1測定部を用いて前記生体試料中の第1成分および第2成分を測定するか、あるいは第1測定部を用いて第2成分を測定し、第2測定部を用いて第1成分および第2成分を測定するのが好ましい。
【0012】
前記生体試料中の第3成分を、入力された前記試料種にかかわらず前記第2測定部で測定するのが好ましい。
前記第1測定部が電気式測定部であり、前記第2測定部が光学式測定部であるのが好ましい。
電気式測定部と光学式測定部がひとつの測定ユニットとして一体的に構成された複合測定ユニットを備え、当該複合測定ユニットが前記第1測定部としての前記電気式測定部および前記第2測定部としての前記光学式測定部のすくなくとも一方として用いられるのが好ましい。
【0013】
前記試料種は、動物種であるのが好ましい。
記第1成分および前記第2成分が粒子成分であるのが好ましい。
前記第1成分、前記第2成分および第3成分が粒子成分であるのが好ましい。
前記第1成分が血小板であり、前記第2成分が赤血球であるのが好ましい。
前記第1成分が血小板であり、前記第2成分が赤血球であり、前記第3成分が白血球であるのが好ましい。
【0014】
本発明は、生体試料中の成分を測定する方法であって、生体試料中の試料種を入力する工程と、前記生体試料と試薬とを混和して測定試料を調製する工程と、調製された測定試料を、第1測定部および前記第1測定部とは異なる第2測定部のすくなくとも一方に供給する工程と、入力された前記試料種に基づいて、前記測定試料を前記第1測定部と前記第2測定部のいずれの測定部に供給するかを決定する工程と、を含む試料測定方法である。
【0015】
また、本発明は、生体試料中の複数成分の測定が可能であり、複数の測定部を備えた試料測定装置によって、生体試料中の成分を測定する方法であって、生体試料中の試料種を入力する工程と、入力された前記試料種に基づいて、第1測定部および前記第1測定部とは異なる第2測定部の少なくとも一方の測定部を用いて前記生体試料中の第1成分を測定する工程と、を含む試料測定方法である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、試料種に応じた適切な測定を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
実施形態に係る試料測定装置は、試料測定装置本体S及び処理装置PCによって構成されている。
【0018】
[試料測定装置本体の全体構成]
図1は試料測定装置本体Sの全体斜視図であり、図2は、この試料測定装置本体Sの、ケーシング1を除去した状態の斜視図であり、図3は、同じくケーシングを除去した状態の正面説明図である。
この試料測定装置本体Sは、ディスプレイ、入力装置、CPU、メモリなどを有する処理装置PC(典型的には、必要なコンピュータプログラムがインストールされたパーソナルコンピュータ)と通信可能に接続されている(図4参照)。
処理装置PCは、試料測定装置本体Sの操作、分析に関する各種設定、分析結果の表示などを行うための試料測定装置用ソフトウェアがインストールされており、試料測定装置本体Sとの間での通信により、試料測定装置本体Sに対して指令を与えたり、試料測定装置本体Sから測定データを受信することができる。
また、処理装置PCは、試料測定装置本体Sの制御に関する処理を行うこともあり、この場合、処理装置PCも、試料測定装置の制御部として機能することになる。
【0019】
試料測定装置は、採血管3内に収容されている血液(生体試料)の分析(測定・解析)を行う装置(血液分析装置)であり、装置機構部2と、この装置機構部2を収納するケーシング1とで主に構成されている。
ケーシング1は合成樹脂や防錆処理が施された鋼板等で作製されており、ボルト等の固着手段を用いて装置機構部2に固定されている。ケーシング1の一面(図1において左側の側面)の右下部分には開口部5が形成されており、この開口部5を介して採血管3を装置機構部2内に挿入できるようになっている。すなわち、装置機構部2の下部一端側には、その端部付近に前記採血管3を載置するための載置台6が設けられたスライダー7が、前記開口部5から出退自在に配設されている。また、前記スライダー7の先端には前記開口部5を閉じるカバー8が回動自在に設けられており、このカバー8は、図示しないバネによって所定角度だけ外側に傾斜するように付勢されている(図1参照)。装置が非稼動の状態(この状態は、前記ケーシング1の一面に設けられたボタン15内のランプを非点灯にすることで外部に表示することができる)で、このボタン15を押すと、前記スライダー7が装置機構部2外方に進出する。その際、装置が非稼動の状態では前記開口部5はカバー8により閉止されているが、スライダー7が装置機構部2外方に進出することで、当該カバー8の突出部8aと前記開口部5の周辺に形成された凹所9との係合が解除されて、カバー8が開放される。また、前記突出部8aと凹所9との係合が解除されることで、前記カバー8はバネの付勢力によって所定角度だけ外側に傾斜する。
【0020】
載置台6の上面には採血管3の下部を挿入することができる凹部(図示せず)が形成されており、この凹部に採血管3の下部を挿入し、前記ボタン15を押すと、前記スライダー7が装置機構部2内に後退し、前記採血管3を所定の位置にセットする。ついで、バネの付勢力に抗して前記カバー8を起立させて、開口部5をカバー8で閉止する。その際、前記突出部8aと凹所9とが係合するので、カバー8が開放するのが防止される。そして、開口部5がカバー8により確実に閉止されたことを、マイクロスイッチ等の検出手段で検出することで、以後の試料吸引工程等が可能となるように設定されている。
なお、ケーシング1の側面の一部(図1において右側の側面)は、装置機構部2内の点検やメンテナンス等を容易に行えるように、ボルト10で装置機構部2に固定されている。また、図1において、16は主として装置機構部2内で発生した熱をファン(図示省略)で外部に放出するための排気口である。
【0021】
装置機構部2は、前記採血管3を装置内の所定の位置にセットするための試料セット部4と、採血管3内の血液を定量、希釈等して分析用の試料を調製するための試料調製部と、希釈等された血液の測定を行う測定部D1,D2,D3を備えている。
【0022】
[試料セット部]
試料セット部4は、内部に試料(血液)が密封状態で収容されている採血管3を装置機構部2内の所定の位置にセットするための部位であり、前述した載置台6、スライダー7及びこのスライダー7を駆動させるステッピングモータ等の駆動源(図示せず)とで構成されている。
【0023】
[試料調製部]
前記試料調製部は、採血管3内から所定量の血液を吸引して第1混合チャンバ(第1収容容器;HGB/RBCチャンバ)MC1、又は第2混合チャンバ(第2収容容器)MC2内で試薬と混合することにより各種分析用の試料を調製する部位であり、採血管3内を密封する栓体3aを穿刺して、当該採血管3内の試料を吸引する吸引管13と、この吸引管13を水平に移動させる水平駆動部と、前記吸引管13を垂直に移動させる垂直駆動部などを備えている。なお、水平駆動部は駆動源としてステッピングモータ28を備え、垂直駆動部は駆動源としてステッピングモータ68を備えている(図4参照)。
前記吸引管13は、内部に長手方向に延びる流路を有するとともに、試料又は空気を吸引する吸引口が先端付近に形成されたものであれば、本発明において特に限定されることなく用いることができる。
【0024】
[試薬容器]
図5及び図6の流体回路図に示すように、装置機構部2には、試薬を収容するための試薬容器を設置することが可能であり、流体回路に試薬容器を接続することができるようになっている。具体的には、本実施形態で用いられる試薬容器は、希釈液(洗浄液)EPKを収容するための希釈液容器EPK−V、ヘモグロビン溶血剤SLSを収容するためのヘモグロビン溶血剤容器SLS−V、赤血球を溶解させる白血球分類用溶血剤FFDを収容するための白血球分類用溶血剤容器FFD−V、及び、白血球分類用染色液FFSを収容するための白血球分類用染色液容器FFS−Vである。
【0025】
[試料供給部]
採血管3から、第1混合チャンバMC1及び/又は第2混合チャンバMC2に試料を供給するための試料供給部として、前記吸引管13と全血吸引シリンジポンプSP1が設けられている。吸引管13は、全血吸引シリンジポンプSP1によって採血管3から所定量の全血試料を吸引し、第1混合チャンバMC1と第2混合チャンバMC2の位置へ移動し、全血吸引シリンジポンプSP1によって、それぞれのチャンバMC1,MC2へ所定量の全血試料を分配供給する。
【0026】
[試薬供給部]
希釈液容器EPK−V及び溶血剤容器SLS−Vは、第1混合チャンバMC1に試薬を供給可能に接続されている。すなわち、希釈液容器EPK−Vから第1混合チャンバMC1へは、希釈液供給用(EPK用)ダイヤフラムポンプDP1によって、希釈液を供給可能となっており、このEPK用ダイヤフラムポンプDP1が希釈液用の試薬供給部を構成している。
また、溶血剤容器SLS−Vから第1混合チャンバMC1へは、溶血剤供給用(SLS用)ダイヤフラムポンプDP3によって、溶血剤を供給可能となっており、このSLS用ダイヤフラムポンプDP3が溶血剤用の試薬供給部を構成している。
溶血剤容器FFD−V及び染色液容器FFS−Vは、第2混合チャンバMC2に試薬を供給可能に接続されている。すなわち、溶血剤容器FFD−Vから第2混合チャンバMC2へは、溶血剤用(FFD用)ダイヤフラムポンプDP4によって溶血剤を供給可能となっており、このFFD用ダイヤフラムポンプDP4が共通試薬である溶血剤用の試薬供給部(共通試薬供給部)を構成している。
また、染色液容器FFS−Vから第2混合チャンバMC2へは、染色液用(FFS用)ダイヤフラムポンプDP5によって染色液を供給可能となっており、このFFS用ダイヤフラポンプDP5が染色液用の試薬供給部(専用試薬供給部)を構成している。
【0027】
[試薬供給路]
希釈液容器EPK−Vから第1混合チャンバMC1へ至る試薬供給路と、溶血剤容器SLS−Vから第1混合チャンバMC1へ至る試薬供給路は、途中の合流点CR1で合流しており、両試薬に共通した試薬供給路T1が第1混合チャンバMC1に接続されている(図5参照)。
【0028】
[測定項目]
本実施形態の試料測定装置では、血液中の赤血球、血小板、白血球、及びヘモグロビンという複数の測定対象粒子成分について測定・分析が可能である。より具体的には、本実施形態の試料測定装置では、赤血球数、MCV(平均赤血球容積)、血小板数、白血球数、白血球分類、ヘモグロビン濃度といった多項目の測定・分析が可能である。
【0029】
[測定部]
前記測定部D1,D2,D3には、第1測定部として血球を電気的に測定する電気式測定部(インピーダンス検出法による測定部)D1、第2測定部として血球を光学的に測定する光学式測定部D2、第3測定部としてSLSヘモグロビン法によってヘモグロビンに関する測定を行うヘモグロビン測定部D3が備わっている。
第1測定部D1は、測定対象粒子成分が赤血球及び血小板とされている。また、第2測定部は、主に測定対象粒子成分が白血球とされているが、赤血球及び赤血球を測定対象成分とすることもできる。
【0030】
前記第1混合チャンバMC1は、赤血球、血小板及びヘモグロビンに関する分析をするための試料を調製する部位であり、第1混合チャンバMC1で調製された試料が、第1測定部D1及び第3測定部D3での測定に用いられ、必要に応じて第2測定部2での測定にも用いられる。
前記第2混合チャンバMC2は、白血球に関する分析をするための試料を調製する部位であり、第2混合チャンバMC2で調製された試料が第2測定部D2での測定に用いられる。
【0031】
[第1測定部;電気式測定部;RBC/PLT測定部]
前記第1測定部(電気式測定部)D1は、赤血球及び血小板という2つの対象成分について、赤血球数の測定及び血小板数測定という2つの測定項目についての測定を行うRBC/PLT測定部として構成されている。このRBC/PLT検出部D1はシースフローDC検出法により電気的にRBC及びPLTの測定を行うことができる。
なお、血球の電気式測定(インピーダンス検出)には、電気抵抗方式(Direct Current:DC方式)と静電容量方式があり、いずれも電気式測定部として採用できる。前者は、血球が細孔を通過する際の抵抗変化を検出することにより血球を計数するものであり、後者は血球が細孔を通過する際の静電容量変化を検出することにより血球を計数するものである。
すなわち、両者ともインピーダンスの変化を検出するものである。インピーダンス検出方式では、前記インピーダンスの変化をパルスとして検出する。パルスの総数は、細孔を通過した血球の総数であり、パルスの大きさがそれぞれの血球の大きさとして検出される。
【0032】
[第2測定部;光学式測定部;WBC/RBC/PLT測定部]
前記第2測定部(光学式測定部)D2は、白血球という対象成分について、白血球計数及び白血球分類という多測定項目についての測定を行うことができる光学検出部として構成されている。この光学検出部D3は、半導体レーザを使用したフローサイトメトリー法により、白血球計数及び白血球分類を行うことができる。
なお、血球の光学式測定には、フローサイトメトリー法以外に、比濁法、血球固定法などがあり、いずれも光学式測定部D2として採用できる。
また、第2測定部D2は、第1測定部D1と同様に、RBC測定(赤血球数の測定)及びPLT測定(血小板数測定)を行うRBC/PLT測定部としても使用される。すなわち、第2測定部D2は、WBC/RBC/PLT測定部である。
なお、第2測定部D2の構成については、後に詳しく説明する。
【0033】
[第3測定部;HGB測定部]
前記第3測定部D3は、HGB測定(血液中の血色素量の測定)を行うHGB測定部として構成されている。このHGB検出部D3は、SLS−ヘモグロビン法によりHGB測定を行うことができる。
【0034】
[制御部]
図4に示すように、装置機構部2は、前記試料調製部及び測定部D1,D2,D3を制御する制御部100を備えている。また、装置機構部2は、試料調製部などを構成する流体回路中の電磁弁SV1〜SV33,SV40,SV41や各種ポンプ・モータ28,68,SP1,SP2,P,V,DP1,DP2,DP3,DP4,DP5などを駆動するための駆動回路部110も備えており、制御部100は、駆動回路部100を介して電磁弁などを駆動する。
制御部100は、図示しない通信インターフェースを介して、処理装置PCと通信可能であり、各種信号やデータなどを処理装置PCとの間でやり取りすることができる。
【0035】
[動物種に応じた測定モード]
試料測定装置本体Sは、赤血球及び血小板の測定に関し、第1測定モード及び第2測定モードの2つの測定モードを有している。
第1測定モードは、赤血球及び血小板測定用の混合試料を電気式測定部である第1測定部D1だけで測定するものである。第1測定モードは、生体試料がイヌ等の電気式測定部D1でも赤血球と血小板の弁別が可能な血液試料である場合に用いられる。
第2測定モードは、赤血球及び血小板測定用の混合試料を電気式測定部である第1測定部及び光学式測定部である第2測定部の双方で測定するものである。第2測定モードは、生体試料がネコ等の電気式測定部D1では赤血球と血小板の弁別ができない血液試料である場合に用いられる。
前記制御部100は、測定部D1,D2,D3において測定モードに応じた測定が行われるように測定部D1,D2,D3を制御する。
【0036】
[動物種(試料種)の入力部]
試料測定装置のユーザは、処理装置PCを用いて、生体試料の動物種を入力することができる。処理装置PCは、動物種の入力のための機能として、画面上で動物種(例えば、イヌ、ネコ、ウマ等)をユーザが選択するための画面表示機能と、動物種を選択するための入力をマウス・キーボード等から受け付ける機能とを有しており、これらの機能が動物種入力部を構成している。
【0037】
[動物種に基づく測定モード選択]
図9に示すように、動物種入力(ステップS11)で、ユーザが動物種を入力すると、処理装置PCは、図10に示す動物種データベースを参照して、入力された動物種に対応した測定モード(第1測定モード又は第2測定モード)を選択する。なお、動物種データベースには、動物種毎に、実行される測定モードが登録されている。
例えば、動物種としてイヌが入力された場合、第1測定モードが選択され、処理装置PCは、処理装置PCは第1測定モードでの測定を行う指令を試料測定装置本体Sへ送信する(ステップS13)。そうすると試料測定装置本体Sは、第1測定モードでの測定を行うように動作し、その測定データを処理装置PCへ送信する。
処理装置PCは、試料測定装置本体Sから第1測定モードでの測定データを受信すると(ステップS14)、当該測定データをデータ処理し(ステップS15)、処理結果を所定の表示形式で画面上に表示又はファイルに保存する。
【0038】
また、動物種として例えばネコが入力された場合、測定モード選択(ステップS12)では、第2測定モードが選択され(図10参照)、処理装置PCは、第2測定モードでの測定を行う指令を試料測定装置本体Sへ送信する(ステップS16)。第2測定モード指令信号を受信した試料測定装置本体Sは、第2測定モードでの測定を行うように動作し、その測定データを処理装置PCへ送信する。処理装置PCは、試料測定装置本体Sから第2測定モードの測定データを受信すると(ステップS17)、当該測定データをデータ処理し(ステップS18)、処理結果を所定の表示形式で画面上に表示又はファイルに保存する。
【0039】
[各測定モードで使用される測定部]
図11は第1測定モードで使用される測定部を示し、図12は第2測定モードで使用される測定部を示している。
本実施形態の試料測定装置では、前述のとおり、血球中の複数成分につき、赤血球数、MCV(平均赤血球容積)、血小板数、白血球数、白血球分類、ヘモグロビン濃度といった複数項目について測定可能であるが、これらの項目のうち、白血球数、白血球分類、ヘモグロビン濃度は、両測定モードにおいて同じように測定される。
一方、赤血球数、MCV(平均赤血球容積)、血小板数については、両測定モードにおいて測定部又は算出方法が異なる。
以下では、まず、赤血球及び血小板の測定とは別に並行的に行われる白血球の測定(計数及び分類)について説明し、その後、赤血球及び血小板の測定並びにヘモグロビンの測定について説明する。
【0040】
[WBC測定]
試料測定装置本体Sは、白血球に関する測定のために、全血試料(11μL)と溶血剤(1mL)を混合して白血球用測定試料を作成し、この測定試料を第2測定部である光学式測定部D2にてフローサイトメトリー法により、白血球数の測定と、白血球5分類の測定とが行われる。
図13は、白血球測定のための試料測定装置本体Sの動作手順を示している。以下では、図5〜図8の流体回路図も参照しつつ、当該動作手順を説明する。まず、溶血剤FFD(0.5mL)が溶血剤容器FFD−Vから第2混合チャンバMC2に供給される(ステップS21)。
ステップS21は、具体的には、バルブSV19を開いてバルブSV20を閉じるとともに、バルブSV22を開いてバルブS21を閉じることで、FFD用ダイヤフラムポンプD4が陰圧駆動され、溶血剤FFDが溶血剤容器FFD−VからFFD用ダイヤフラムポンプD4へ0.5mL補給される。
そして、バルブSV19を閉じてバルブSV20を開くとともに、バルブS21を開いてバルブS22を閉じることで、FFD用ダイヤフラムポンプD4が陽圧駆動され、ダイヤフラムポンプD4によって0.5mLの溶血剤FFDが第2混合チャンバMC2に供給される。
さらに、バルブS19を開いてバルブS20を閉じるとともに、バルブS21を閉じてバルブS22を開くことで、FFDダイヤフラムポンプD4が陰圧駆動され、再度、溶血剤FFDが溶血剤容器FFD−VからFFD用ダイヤフラムポンプD4へ0.5mL補給される。
【0041】
次に、採血管3の全血試料が吸引管(ピアサ)13によって定量吸引される(ステップS22)。ステップS22は、具体的には、吸引管13が採血管3の中に挿入され、全血吸引シリンジポンプSP1の駆動によって、全血試料が定量(20μL)吸引される。
そして、吸引管13が採血管3から引き抜かれ、吸引管13が第2混合チャンバMC2に降下される(ステップS33)。この状態で全血吸引シリンジポンプが駆動されることにより、吸引管13の吸引穴より11μLの全血試料(ステップS22において吸引した試料の一部)が第2混合チャンバMC2に吐出される(ステップS24)。
【0042】
吐出完了後、染色液(専用試薬)FFSを第2混合チャンバMC2へ入れる(ステップS25)。ステップS25は、具体的には、染色液補給用バルブSV40を開き、染色液供給用バルブSV41を閉じた状態で、バルブSV22を開くとともにバルブSV21を閉じることで、染色液供給用ダイヤフラムポンプ(FFS用ダイヤフラムポンプ)DP5を陰圧駆動し、FFS用ダイヤフラムポンプDP5に染色液FFSを20μL補給する。
さらに、バルブSV40を閉じ、バルブSV41を開くとともに、バルブSV21を開き、バルブSV22を閉じて、FFS用ダイヤフラムポンプDP5を陽圧駆動することで、20μLの染色液FFSを第2混合チャンバMC2へ入れる。なお、専用試薬として、他の試薬、例えば、希釈液や緩衝液を含んでもよいし、希釈液や緩衝液だけが専用試薬であってもよい。続いて、溶血剤(共通試薬)FFDを第2混合チャンバMC2へ入れる(ステップS26)。つまり、バルブSV22、バルブSV19を閉じて、バルブSV21、バルブSV20を開き、FFD用ダイヤフラムポンプDP4を用いて、0.5mLの溶血剤FFDを第2混合チャンバMC2へ入れ、全血試料を流入攪拌して調製することにより、第2混合チャンバMC内に赤血球が溶解され白血球が染色された白血球測定試料が作成される(ステップS27)。
【0043】
そして、第2混合チャンバMC2の白血球測定試料が光学式測定部(WBC/RBC/PLT測定部)D2に送られ、光学式測定部D2にて白血球の測定が行われる(ステップS28)。ステップS28は、具体的には、バルブSV4、バルブSV29、バルブSV22を開き、バルブSV21を閉じることで、チャージング用ダイヤフラムポンプDP2が駆動され、白血球測定試料が正確に1.0mLチャージングされる。そして、バルブSV4、バルブSV29、バルブSV22が閉じられ、光学式測定部D2へのチャージングが完了する。
その後、バルブSV9とバルブSV31を開くことで、EPK収容容器EPK−Cからシース液(希釈液)EPKが光学式測定部D2へ供給される。続いて、バルブSV1が閉じた状態でバルブSV3を開くとともに、試料供給シリンジポンプSP2を駆動し、光学式測定部D2において測定を行う。
【0044】
[光学式測定部(WBC/RBC/PLT測定部)]
図14は、第2測定部である光学式測定部D2の概要構成を示している。この光学式測定部D2は、フローセル101に測定試料を送り込み、フローセル101中に液流を発生させ、フローセル101内を通過する液流に含まれる血球に半導体レーザ光を照射して測定するものであり、シースフロー系100、ビームスポット形成系110、前方散乱光受光系120、側方散乱光受光系130、側方蛍光受光系140を有している。
シースフロー系100は、フローセル101内を試料がシース液に包まれた状態で血球が一列に並んだ状態で流れ、血球計数の正確度と再現性を向上させるものとなっている。ビームスポット系110は、半導体レーザ111から照射された光が、コリメータレンズ112とコンデンサレンズ113を通って、フローセル101に照射されるよう構成されている。また、ビームスポット系110は、ビームストッパ114も備えている。
【0045】
前方散乱光受光系120は、前方への散乱光を前方集光レンズ121によって集光し、ピンホール122を通った光をフォトダイオード(前方散乱光受光部)123で受光するように構成されている。
側方散乱光受光系130は、側方への散乱光を側方集光レンズ131にて集光するとともに、一部の光をダイクロイックミラー132で反射させ、フォトダイオード(側方散乱光受光部)133で受光するよう構成されている。
光散乱は、血球のような粒子が光の進行方向に障害物として存在し、光がその進行方向を変えることによって生じる現象である。この散乱光を検出することによって、粒子の大きさや材質に関する情報を得ることができる。特に、前方散乱光からは、粒子(血球)の大きさに関する情報を得ることができる。また、側方散乱光からは、粒子内部の情報を得ることができる。血球粒子にレーザ光が照射された場合、側方散乱光強度は細胞内部の複雑さ(核の形状、大きさ、密度や顆粒の量)に依存する。したがって、側方散乱光強度のこの特性を利用することで、血球を分類(弁別)した上で、血球の数を測定することができる。
【0046】
側方蛍光受光系140は、ダイクロイックミラー132を透過した光をさらに分光フィルタ141に通し、フォトマルチプライヤ(蛍光受光部)142で受光するよう構成されている。
染色された血球のような蛍光物質に光を照射すると、照射した光の波長より長い波長の光を発する。蛍光の強度はよく染色されていれば強くなり、この蛍光強度を測定することによって血球の染色度合いに関する情報を得ることができる。したがって、(側方)蛍光強度の差によって、白血球の分類の測定その他の測定を行うことができる。
【0047】
各受光部123、133、142で光を受光すると、各受光部123,133,142は、電気パルス信号を出力する。この電気パルス信号から測定データが作成される。測定データは、試料測定装置本体Sから処理装置PCへ送信され(ステップS14,ステップS17)、処理装置PCにおいて、処理・分析が行われる。
【0048】
処理装置PCは、光学式測定部D2から白血球の測定データを受信すると、散乱光受光部での散乱光受光と蛍光受光部での蛍光受光(側方蛍光受光)に基づいて、白血球測定試料に含まれる白血球数の算出と、白血球の分類(リンパ球、好中球、好酸球、好塩球、及び単球の5項目での分類)を行う。
図15は、処理装置PCにおいて表示される白血球分類のスキャッタグラムを示している。このスキャッタグラムは、X軸を側方散乱光強度、Y軸を蛍光強度にとったものであり、白血球が、リンパ球、好中球、好酸球、好塩球、及び単球の5つの集合に別れている。このスキャッタグラムから分かるように、処理装置PCでは、白血球をこれら5つの血球群に分けて検出している。処理装置PCでは、さらに各分類に含まれる血球の数、分類間での数の比率などの算出といった各種処理が行われる。
【0049】
[RBC/PLT/HGB測定]
第1及び第2の両測定モードにおいて、吸引管13で吸引された全血試料のうち、白血球に関する分析用に使用されなかった残りの全血試料は、第1混合チャンバMC1で赤血球、血小板及びヘモグロビン測定用の試料として用いられ、当該試料は第1測定部D1及び第3測定部D3において測定され、第2測定モードの場合にはさらに第2測定部D2においても測定される。
【0050】
[第1測定モードでのRBC/PLT/HGB測定]
RBC/PLT測定とHGB測定を行う場合、RBC/PLT測定用の混合試料と、HGB測定用の混合試料とが必要とされる。RBC/PLT測定用の混合試料を作成するための試薬と、HGB測定用の混合試料を作成するための試薬とは異なるため、別々に調製する必要があり、これらの混合試料を作成するためには、通常、二つの混合チャンバを必要とする。
これに対し、本実施形態では、一つの混合チャンバ(第1混合チャンバ;HGB/RBC/PLTチャンバ)MC1によって二つの混合試料が調製される。以下、この調製手順を含む測定手順を図16及び図17に基づき、図5〜図8の流体回路図も参照しつつ、詳細に説明する。
【0051】
[第1測定モードでのRBC/PLT測定試料の調製・測定]
まず、ステップS22(図13参照)で、採血管3の全血試料を吸引管(ピアサ)13によって定量吸引(20μL)する。具体的には、吸引管13が採血管3の中に挿入され、全血吸引シリンジポンプSP1の駆動によって、全血試料が定量吸引される。
その後、第1試薬である希釈液EPKが1mLほど第1混合チャンバMC1へ供給される(ステップS31)。ステップS31では、具体的には、第1混合チャンバMC1内部の液の排出をするため、バルブSV23を約1.0sec間開く。そして、バルブSV21及びバルブSV24を開き、予め希釈液EPKが補充されている希釈液用(EPK用)ダイヤフラムポンプD1を用いて、1.0mLの希釈液EPKを第1混合チャンバMC1へ供給する。その後、バルブSV21及びバルブSV24を閉じて、バルブSV22及びバルブSV32を開き、EPK用ダイヤフラムポンプDP1に希釈液EPKを補充する。
【0052】
次に、吸引管13が第1混合チャンバMC1へ降下され(ステップS32),吸引管13の吸引穴より4μLの全血試料が第1混合チャンバMC1へ吐出される(ステップS33)。なお、ステップS32およびS33は、ステップS24(図13参照)が実行された直後に実行される。
吐出完了後、第1試薬である希釈液EPKが1mLほど第1混合チャンバMC1へ再度供給され(ステップS34)。ステップS34は、具体的には、吐出完了後、EPK用ダイヤフラムポンプDP1を用いて1.0mLの希釈液EPKを第1混合チャンバMC1へ再度供給するため、バルブSV22及びバルブSV32を閉じて、バルブSV21及びバルブSV24を開く。これにより、第1混合チャンバMC1内で全血試料(4μL)と希釈液EPK(2mL)が攪拌され赤血球及び血小板測定試料(RBC/PLT測定試料)が調製される(ステップS35)。
なお、RBC/PLT測定試料調製後に、EPK用ダイヤフラムポンプに希釈液EPKを補給するため、バルブSV21及びバルブSV24が閉じられて、バルブSV22及びバルブSV32が開かれる。
【0053】
続いて、RBC/PLT測定試料の一部(1.0mL)をRBC/PLT測定部(電気式測定部;第1測定部)D1へ供給する(ステップS36)。ステップS36では、具体的には、バルブSV2とバルブSV25を開いて、チャージング用ダイヤフラムポンプDP2により、RBC/PLT測定試料を第1混合チャンバMC1と電気式測定部D1との間の流路上に正確に1.0mL(第1混合チャンバMC1内のRBC/PLT測定試料の一部)をチャージングする。そして、バルブSV2、バルブSV25、バルブSV22、バルブSV32を閉じ、チャージングを完了させる。さらに、バルブSV8、バルブSV9を開き、電気式測定部D1へ測定のためのシース液を供給する。チャージングされたRBC/PLT測定試料は電気式測定部D1に供給され、DC方式によって試料中の赤血球数及び血小板数の測定が行なわれる(ステップS37)。
【0054】
動物種がイヌの場合、電気式測定部D1による赤血球数及び血小板数の測定結果は、図24に示すヒストグラムのようになる。すなわち、血球の数が、血球の大きさ毎に計測される。また、しきい値a1よりも左側が血小板の数であり、しきい値よりも右側が赤血球の数であり、しきい値a1を適切に設定することにより、血小板と赤血球を弁別することができる。
また、電気式測定部D1では、各血球の正確な大きさが得られるため、電気式測定部D1での測定結果である赤血球の数と各赤血球の大きさとから、MCV(平均赤血球容積)を算出することができる。なお、この算出は、処理装置PCにおいて行われる。
このように、第1測定モードでは、電気式測定部D1の測定結果に基づき、血小板数、赤血球数、MCVの各項目についての測定結果が得られる。
【0055】
[第1測定モードでのHGB測定試料の調製・測定]
RBC/PLT測定が完了しても、第1混合チャンバMC1には、1mLの試料が残試料として存在している。HGB測定試料を調製するため、残試料がある第1混合チャンバMC1へは、さらに、溶血剤SLSが供給される(ステップ38)。ステップS38では、具体的には、バルブSV21及びバルブSV18を開いて、予め溶血剤SLSが補給されたヘモグロビン溶血剤用(SLS用)ダイヤフラムポンプDP3により、溶血剤SLSを第1混合チャンバMC1へ供給する。これにより、溶血剤SLSと前記残試料とが攪拌され、前記残試料(1.0mL)に溶血剤SLS(0.5mL)を混合したHGB測定試料が調製される(ステップS38)。
そして、HGB測定用混合試料の反応を待つ(ステップS39)。この反応を待つ間の任意の時間に、バルブSV21及びバルブSV27を開き、チャージング用ダイヤフラムポンプDP2の排出を行い、次チャージングの準備を行う。続いて、バルブSV22及びバルブSV28を開いてHGB測定用混合試料をHGB検出部D2にチャージングするのを開始し、バルブSV22及びバルブSV28を閉じることでチャージングが完了する(ステップ40)。その後、HGB測定が行われる(ステップS41)。
【0056】
[第2測定モードでのRBC/PLT/HGB測定]
次に、第2測定モードでの、試料の調製手順を含む測定手順を図18及び図19に基づき、図5〜図8の流体回路図も参照しつつ、詳細に説明する。
【0057】
[第2測定モードでのRBC/PLT測定試料の調製]
まず、ステップS22(図13参照)で、採血管3の全血試料を吸引管(ピアサ)13によって定量吸引(20μL)する。具体的には、吸引管13が採血管3の中に挿入され、全血吸引シリンジポンプSP1の駆動によって、全血試料が定量吸引される。
その後、第1試薬である希釈液EPKが2.0mLほど第1混合チャンバMC1へ供給される(ステップS51)。ステップS51では、具体的には、第1混合チャンバMC1内部の液の排出をするため、バルブSV23を約1.0sec間開く。そして、バルブSV21及びバルブSV24を開き、予め希釈液EPKが補充されている希釈液用(EPK用)ダイヤフラムポンプD1を用いて、2.0mLの希釈液EPKを第1混合チャンバMC1へ供給する。その後、バルブSV21及びバルブSV24を閉じて、バルブSV22及びバルブSV32を開き、EPK用ダイヤフラムポンプDP1に希釈液EPKを補充する。そして、EPK用ダイヤフラムポンプDP1を用いて1.0mLの希釈液EPKを第1混合チャンバMC1へ再度供給するため、バルブSV22及びバルブSV32を閉じて、バルブSV21及びバルブSV24を開く。その後、バルブSV21及びバルブSV24を閉じて、バルブSV22及びバルブSV32を開き、EPK用ダイヤフラムポンプDP1に希釈液EPKを補充する。
【0058】
次に、吸引管13が第1混合チャンバMC1へ降下され(ステップS52),吸引管13の吸引穴より6μLの全血試料が第1混合チャンバMC1へ吐出される(ステップS53)。なお、ステップS52およびS53は、ステップS24(図13参照)が実行された直後に実行される。
吐出完了後、第1試薬である希釈液EPKが1.0mLほど第1混合チャンバMC1へ再度供給され(ステップS54)。ステップS54は,具体的には、吐出完了後、EPK用ダイヤフラムポンプDP1を用いて1.0mLの希釈液EPKを第1混合チャンバMC1へ供給するため、バルブSV22及びバルブSV32を閉じて、バルブSV21及びバルブSV24を開く。これにより、第1混合チャンバMC1内で全血試料(6μL)と希釈液EPK(3.0mL)が攪拌され赤血球及び血小板測定試料(RBC/PLT測定試料)が調製される(ステップS55)。
なお、RBC/PLT測定試料調製後に、EPK用ダイヤフラムポンプに希釈液EPKを補給するため、バルブSV21及びバルブSV24が閉じられて、バルブSV22及びバルブSV32が開かれる。
【0059】
第2測定モードでは、RBC/PLT測定に用いられる全血試料と希釈液の量が第1測定モードよりも多くなっている。これは、第2測定モードでは、赤血球及び血小板の測定に関し、第1測定部D1だけでなく、第2測定部D2も使用するために、より多くの測定試料が必要とされるためである。
上記の処理のため、制御部100は、第2測定モードでは、第1測定モードのときよりも、多くの全血試料及び/又は試薬(希釈液)が第1混合チャンバMC1に供給されるように制御を行う。換言すると、制御部100は、動物種(試料種)に応じて、生体試料の量を変化させる機能を有しているのである。また、制御部100は、動物種(試料種)に応じて、試薬の量を変化させる機能を有しているのである。さらにまた、制御部100は、動物種(測定モード)に応じて、試料に混合される試薬の種類を変更させる機能を有していても良い。
【0060】
[第2測定モードにおける電気式測定部での測定]
続いて、RBC/PLT測定試料の一部(1.0mL)をRBC/PLT測定部(電気式測定部;第1測定部)D1へ供給する(ステップS56)。ステップS56では、具体的には、バルブSV2とバルブSV25を開いて、チャージング用ダイヤフラムポンプDP2により、RBC/PLT測定試料を第1混合チャンバMC1と電気式測定部D1との間の流路上に正確に1.0mL(第1混合チャンバMC1内のRBC/PLT測定試料の一部)をチャージングする。そして、バルブSV2、バルブSV25、バルブSV22、バルブSV32を閉じ、チャージングを完了させる。さらに、バルブSV8、バルブSV9を開き、電気式測定部D1へ測定のためのシース液を供給する。チャージングされたRBC/PLT測定試料は電気式測定部D1に供給され、DC方式によって試料中の赤血球数及び血小板数の測定が行なわれる(ステップS57)。第2測定モードにおいては、赤血球数及び血小板数の測定は、後述のように第2測定部で行われ、第1測定部D1での測定結果は、主にMCV(平均赤血球容積)算出のために用いられる。
【0061】
動物種がネコの場合、電気式測定部D1による赤血球数及び血小板数の測定結果は、図25に示すヒストグラムのようになる。すなわち、血球の数が、血球の大きさ毎に計測される。ただし、ネコ等の動物種の場合、血液中に赤血球とほぼ同じ大きさの血小板が存在するため電気式測定部D1の測定では、血球の数を血球の大きさごとに計測することはできるものの、血小板と赤血球の弁別はできない。すなわち、しきい値a2よりも左側には血小板だけでなく赤血球も含まれ、しきい値a2よりも右側には赤血球だけでなく血小板も含まれる。
ただし、電気式測定部D1の測定結果は、血球の正確な大きさを示しているため、光学式測定部(第2測定部)D2の測定結果と併せて、MCVを算出するために用いられる(詳細は後述)。
【0062】
[第2測定モードにおける光学式測定部での測定]
第1混合チャンバMC1中のRBC/PLT測定試料の他の一部(1.0mL)は、光学式測定部(第2測定部)D2へ供給される(ステップS58)。ステップS58は、具体的には、バルブSV2、バルブSV1、バルブSV3、バルブSV29、バルブSV22を開き、バルブSV21を閉じることで、チャージング用ダイヤフラムポンプDP2が駆動され、RBC/PLT測定試料の他の一部が正確に1.0mLチャージングされる。そして、バルブSV2、バルブSV1、バルブSV3、バルブSV29、バルブSV22が閉じられ、光学式測定部D2へのチャージングが完了する。
その後、バルブSV9とバルブSV31を開くことで、EPK収容容器EPK−Cからシース液(希釈液)EPKが光学式測定部D2へ供給される。続いて、バルブSV1が閉じた状態でバルブSV3を開くとともに、試料供給シリンジポンプSP2を駆動し、光学式測定部D2において測定を行う(ステップS59)。光学式測定部D2では、フローサイトメトリー法により、赤血球と血小板の測定を行う。
光学式測定部D2の各受光部123、133、142から出力された測定データは、試料測定装置本体Sから処理装置PCへ送信され、処理装置PCにおいて、処理・分析が行われる。
【0063】
処理装置PCは、光学式測定部D2から赤血球及び血小板の測定データを受信すると、前方散乱光受光部123での前方散乱光と散乱光受光部133での側方散乱光に基づいて、RBC/PLT測定試料に含まれる赤血球及び血小板の弁別と、赤血球数及び血小板数の算出を行う。
図20は、処理装置PCにおいて表示される赤血球及び血小板のスキャッタグラムを示している。このスキャッタグラムは、X軸を側方散乱光強度、Y軸を前方散乱光強度にとったものであり、赤血球の集合と血小板の集合に分かれている(赤血球と血小板では血球内部情報が異なるので血球の大きさが同じでも区別することができる)。このスキャッタグラムに基づき、処理装置PCでは、赤血球と血小板を弁別し、さらに、赤血球数及び血小板の数、赤血球数及び血小板数の比率などの算出といった各種処理が行われる。
なお、光学式測定部D2の測定結果のみから、赤血球数及び血小板数を算出する必要はなく、光学式測定部D2の測定結果から得られた赤血球数及び血小板数の比率に基づき、電気式測定部D1の測定結果である総血球数を各血球に配分することで、赤血球数及び血小板数を算出してもよい。
【0064】
光学式測定部D2では、赤血球と血小板の弁別が行えるものの、各血球の正確な大きさが得られない。つまり、光学式測定部D2では、(前方)散乱光の強度毎の血球数は得られるが、当該散乱光強度がどの程度の大きさを示しているのかは分からない。
そこで、処理装置PCは、MCVを算出するため、血球の正確な大きさとその大きさでの血球数を示す第1測定部D1の測定結果と、赤血球と血小板それぞれの数が得られる第2測定部D2の測定結果を用いる。
【0065】
すなわち、大きさ毎の赤血球の数は、ほぼ正規分布となるため、処理装置PCは、両測定部D1,D2の血球数分布から、第1測定部D1の測定結果における血球の大きさと、第2測定部D2の測定結果における血球の大きさを対応付けることができる。この対応付けの結果、赤血球の正確な大きさ毎の赤血球数が求められ、MCVが算出される。
【0066】
[第2測定モードでのHGB測定試料の調製・測定]
HGB試料の調製・測定については、第1測定モードと同様であるので説明を省略する。
本実施形態では、第2測定モードにおいて、RBC/PLT試料を電気式測定部と光学式測定部の両方に供給されるように構成されていたが、RBC/PLT試料を光学式測定部のみに供給する構成にしても良い。
【0067】
[測定部D1,D2,D3の変形例1]
図21及び図22は、測定部D1,D2,D3の変形例を示している。変形例に係る第2測定部は、電気式・光学式複合測定ユニットとして構成されている。なお、ここで特に明示して説明しない限り、変形例に係る試料測定装置は、図1〜20までに説明したものと同様である。
【0068】
この電気式・光学式複合測定ユニットD2は、例えば、特開平7−128217号公報に開示されているものである。すなわち、この複合測定ユニットD2は、図4に示す電気式測定部D1及び光学式測定部D2の双方の機能を一体的に備えたものであり、単一の測定ユニットによって、異なる測定原理による測定が行える。図21及び図22の複合測定ユニットD2の出力としては、電気式測定機能による電気式測定出力と、光学式測定機能による光学式測定出力とがある。
【0069】
第1測定モードが選択された場合、図21に示すように、赤血球及び血小板は電気式測定部D1だけで測定される。そして、複合測定ユニットD2では、白血球の測定だけを行う。すなわち、複合測定ユニットD2の両出力は、白血球の計数・分類のために用いられる。
【0070】
一方、第2測定モードが選択された場合、図22に示すように、赤血球及び血小板は電気式測定部D1だけでなく、複合測定ユニットD2においても測定される。つまり、複合測定ユニットの光学式測定機能による光学式測定出力が赤血球数及び血小板数の計数に用いられる。
そして、電気式測定部D1の測定結果及び複合測定ユニットの光学式測定出力に基づき、処理装置PCにて、MCVが算出される。
なお、第2測定モードにおいても、複合測定ユニットD2の両出力は白血球の計数・分類のために用いられる。
【0071】
[測定部D1,D2,D3の変形例2]
図23は、測定部D1,D2,D3の変形例を示している。変形例に係る第1測定部D1は、電気式・光学式複合測定ユニットとして構成されている。なお、ここで特に明示して説明しない限り、変形例に係る試料測定装置は、図1〜20までに説明したものと同様である。
【0072】
この電気式・光学式複合測定ユニットD1も、例えば、特開平7−128217号公報に開示されているものである。すなわち、この複合測定ユニットD1も、図4に示す電気式測定部D1及び光学式測定部D2の双方の機能を一体的に備えたものであり、単一の測定ユニットによって、異なる測定原理による測定が行える。図23の複合測定ユニットD1の出力としては、電気式測定機能による電気式測定出力と、光学式測定機能による光学式測定出力とがある。
【0073】
第1測定モードが選択された場合、赤血球数及び血小板数は、複合測定ユニットD1の電気式測定機能によって測定され、光学式測定機能は使用されない。
一方、第2測定モードが選択された場合、赤血球数及び血小板数は、複合測定ユニットD1の光学式測定機能によって測定される。なお、第2測定モードにおいて、MCVも算出する必要があれば、複合測定ユニットD1の光学式測定機能だけでなく、電気式測定機能も用いればよい。
【0074】
変形例2に係る複合測定ユニットD1のように、単一の測定ユニットD1が複数の測定原理によって測定できるものであれば、試料の供給先を変えることなく、両測定モードに対応できるため、測定の制御が容易になる。
【0075】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、各測定部の測定原理は、電気式や光学式に限られるものではなく、各種測定原理を採用できる。また、測定部選択の基準となる試料の種類としは、動物種に限られるものではなく、例えば、ヒトの成人とヒトの幼児を区別した場合の試料種であってもよい。
さらに、試料の種類も血液に限られるものではなく、測定したい対象に応じて適宜変更可能である。
また、上記実施形態では、試料測定装置は、試料測定装置本体Sとこれとは別体の処理装置PCとによって構成されているが、単一の装置に試料測定装置本体Sと処理装置PCの両方の機能を搭載してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の一実施の形態に係る試料測定装置本体の全体斜視図である。
【図2】図1に示される試料測定装置本体の、ケーシングを除去した状態の斜視図である。
【図3】図1に示される試料測定装置本体の、ケーシングを除去した状態の正面説明図である。
【図4】試料測定装置の制御ブロック図である。
【図5】図1に示される試料測定装置の流体回路図の前半部分である。
【図6】図1に示される試料測定装置の流体回路図の後半部分である。
【図7】排液チャンバ回りの流体回路図である。
【図8】ダイヤフラムポンプ回りの流体回路図である。
【図9】測定モード選択に関するフローチャートである。
【図10】動物種データベースを示す図である。
【図11】第1測定モードで使用される測定部を示すブロック図である。
【図12】第2測定モードで使用される測定部を示すブロック図である。
【図13】白血球測定フローチャートである。
【図14】光学式測定部の概略構成図である。
【図15】白血球5分類を示すスキャッタグラムである。
【図16】第1測定モードでのRBC/PLT測定及びHGB測定の測定手順を示すフローチャートである。
【図17】第1測定モードでの測定試料の作成工程概略図である。
【図18】第2測定モードでのRBC/PLT測定及びHGB測定の測定手順を示すフローチャートである。
【図19】第2測定モードでの測定試料の作成工程概略図である。
【図20】側方散乱光と前方散乱光で赤血球と血小板を弁別したスキャッタグラムである。
【図21】変形例1に係る測定部を示すブロック図(第1測定モード)である。
【図22】変形例1に係る測定部を示すブロック図(第2測定モード)である。
【図23】変形例2に係る測定部を示すブロック図である。
【図24】イヌの血液を電気式測定部によって測定したときの血球数を示すヒストグラムである。
【図25】ネコの血液を電気式測定部によって測定したときの血球数を示すヒストグラムである。
【符号の説明】
【0077】
D1 第1測定部(電気式測定部)
D2 第2測定部(光学式測定部)
100 制御部
PC 処理装置(制御部)
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料測定装置及び試料測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ペットブームに伴い、動物医療の高度化や多くの動物種に対応できるように、動物の検査装置も進歩してきた。特に、動物の血液中の血球を測定する血球分析装置では、血球の計数に加えて、血球の分類が可能な装置や、動物種に対応して測定感度を自動的に変更可能な装置が開発され、多くの動物病院や動物実験施設で使用されている。
【0003】
このような血球分析装置として、異なる動物種の生体試料を分析する試料測定装置であって、動物種入力手段によって入力された動物種に対して、動物種に適合するように測定感度を変更するよう構成されたものがある(特許文献1)。
【特許文献1】特開2000−310642号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、測定感度変更だけでは、動物種によって正確な測定結果が得られない場合があった。
【0005】
本発明は、動物種などの試料の種類(試料種)に応じて、従来に比べて正確に生体試料を測定できる試料測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、生体試料中の成分を測定する試料測定装置において、前記生体試料の試料種を入力する入力部と、前記生体試料と試薬とを混和して測定試料を調製する試料調製部と、第1測定部と、前記第1測定部とは異なる第2測定部と、前記試料調製部で調製された測定試料を、前記第1測定部および前記第2測定部のすくなくとも一方に供給する試料供給部と、前記試料供給部によって前記測定試料を前記第1測定部および第2測定部の少なくとも一方に供給するのを制御するとともに、入力された前記試料種に基づいて前記測定試料の供給先となる測定部を決定する制御部と、を備えている。
【0007】
本発明によれば、試料種に基づいて測定部が決定されるため、試料種に応じて適切な測定を行える。
【0008】
前記制御部は、入力された前記試料種に基づいて、前記測定試料を前記第1測定部に供給するか、前記測定試料を前記第1測定部と前記第2測定部の両方に供給するかを決定するのが好ましい。
【0009】
前記試料種は、動物種であるのが好ましい。前記第1測定部は、前記測定試料を電気的に測定する電気式測定部であるのが好ましい。前記第2測定部は、前記測定試料を光学的に測定する光学式測定部であるのが好ましい。前記生体試料は、血液試料であるのが好ましい。前記試薬は、希釈液であるのが好ましい。
【0010】
本発明は、生体試料中の複数成分の測定が可能であり、複数の測定部を備えた試料測定装置であって、前記生体試料の試料種を入力する入力部と、第1測定部と、前記第1測定部とは異なる第2測定部と、を備え、入力された前記試料種に基づいて、第1測定部および第2測定部の少なくとも一方の測定部を用いて前記生体試料中の第1成分を測定する。
上記本発明によれば、本発明によれば、試料種に基づいて用いられる測定部が決まるため、試料種に応じて適切な測定を行える。
【0011】
入力された前記試料種に基づいて、前記第1測定部を用いて前記生体試料中の第1成分および第2成分を測定するか、あるいは第1測定部を用いて第2成分を測定し、第2測定部を用いて第1成分および第2成分を測定するのが好ましい。
【0012】
前記生体試料中の第3成分を、入力された前記試料種にかかわらず前記第2測定部で測定するのが好ましい。
前記第1測定部が電気式測定部であり、前記第2測定部が光学式測定部であるのが好ましい。
電気式測定部と光学式測定部がひとつの測定ユニットとして一体的に構成された複合測定ユニットを備え、当該複合測定ユニットが前記第1測定部としての前記電気式測定部および前記第2測定部としての前記光学式測定部のすくなくとも一方として用いられるのが好ましい。
【0013】
前記試料種は、動物種であるのが好ましい。
記第1成分および前記第2成分が粒子成分であるのが好ましい。
前記第1成分、前記第2成分および第3成分が粒子成分であるのが好ましい。
前記第1成分が血小板であり、前記第2成分が赤血球であるのが好ましい。
前記第1成分が血小板であり、前記第2成分が赤血球であり、前記第3成分が白血球であるのが好ましい。
【0014】
本発明は、生体試料中の成分を測定する方法であって、生体試料中の試料種を入力する工程と、前記生体試料と試薬とを混和して測定試料を調製する工程と、調製された測定試料を、第1測定部および前記第1測定部とは異なる第2測定部のすくなくとも一方に供給する工程と、入力された前記試料種に基づいて、前記測定試料を前記第1測定部と前記第2測定部のいずれの測定部に供給するかを決定する工程と、を含む試料測定方法である。
【0015】
また、本発明は、生体試料中の複数成分の測定が可能であり、複数の測定部を備えた試料測定装置によって、生体試料中の成分を測定する方法であって、生体試料中の試料種を入力する工程と、入力された前記試料種に基づいて、第1測定部および前記第1測定部とは異なる第2測定部の少なくとも一方の測定部を用いて前記生体試料中の第1成分を測定する工程と、を含む試料測定方法である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、試料種に応じた適切な測定を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
実施形態に係る試料測定装置は、試料測定装置本体S及び処理装置PCによって構成されている。
【0018】
[試料測定装置本体の全体構成]
図1は試料測定装置本体Sの全体斜視図であり、図2は、この試料測定装置本体Sの、ケーシング1を除去した状態の斜視図であり、図3は、同じくケーシングを除去した状態の正面説明図である。
この試料測定装置本体Sは、ディスプレイ、入力装置、CPU、メモリなどを有する処理装置PC(典型的には、必要なコンピュータプログラムがインストールされたパーソナルコンピュータ)と通信可能に接続されている(図4参照)。
処理装置PCは、試料測定装置本体Sの操作、分析に関する各種設定、分析結果の表示などを行うための試料測定装置用ソフトウェアがインストールされており、試料測定装置本体Sとの間での通信により、試料測定装置本体Sに対して指令を与えたり、試料測定装置本体Sから測定データを受信することができる。
また、処理装置PCは、試料測定装置本体Sの制御に関する処理を行うこともあり、この場合、処理装置PCも、試料測定装置の制御部として機能することになる。
【0019】
試料測定装置は、採血管3内に収容されている血液(生体試料)の分析(測定・解析)を行う装置(血液分析装置)であり、装置機構部2と、この装置機構部2を収納するケーシング1とで主に構成されている。
ケーシング1は合成樹脂や防錆処理が施された鋼板等で作製されており、ボルト等の固着手段を用いて装置機構部2に固定されている。ケーシング1の一面(図1において左側の側面)の右下部分には開口部5が形成されており、この開口部5を介して採血管3を装置機構部2内に挿入できるようになっている。すなわち、装置機構部2の下部一端側には、その端部付近に前記採血管3を載置するための載置台6が設けられたスライダー7が、前記開口部5から出退自在に配設されている。また、前記スライダー7の先端には前記開口部5を閉じるカバー8が回動自在に設けられており、このカバー8は、図示しないバネによって所定角度だけ外側に傾斜するように付勢されている(図1参照)。装置が非稼動の状態(この状態は、前記ケーシング1の一面に設けられたボタン15内のランプを非点灯にすることで外部に表示することができる)で、このボタン15を押すと、前記スライダー7が装置機構部2外方に進出する。その際、装置が非稼動の状態では前記開口部5はカバー8により閉止されているが、スライダー7が装置機構部2外方に進出することで、当該カバー8の突出部8aと前記開口部5の周辺に形成された凹所9との係合が解除されて、カバー8が開放される。また、前記突出部8aと凹所9との係合が解除されることで、前記カバー8はバネの付勢力によって所定角度だけ外側に傾斜する。
【0020】
載置台6の上面には採血管3の下部を挿入することができる凹部(図示せず)が形成されており、この凹部に採血管3の下部を挿入し、前記ボタン15を押すと、前記スライダー7が装置機構部2内に後退し、前記採血管3を所定の位置にセットする。ついで、バネの付勢力に抗して前記カバー8を起立させて、開口部5をカバー8で閉止する。その際、前記突出部8aと凹所9とが係合するので、カバー8が開放するのが防止される。そして、開口部5がカバー8により確実に閉止されたことを、マイクロスイッチ等の検出手段で検出することで、以後の試料吸引工程等が可能となるように設定されている。
なお、ケーシング1の側面の一部(図1において右側の側面)は、装置機構部2内の点検やメンテナンス等を容易に行えるように、ボルト10で装置機構部2に固定されている。また、図1において、16は主として装置機構部2内で発生した熱をファン(図示省略)で外部に放出するための排気口である。
【0021】
装置機構部2は、前記採血管3を装置内の所定の位置にセットするための試料セット部4と、採血管3内の血液を定量、希釈等して分析用の試料を調製するための試料調製部と、希釈等された血液の測定を行う測定部D1,D2,D3を備えている。
【0022】
[試料セット部]
試料セット部4は、内部に試料(血液)が密封状態で収容されている採血管3を装置機構部2内の所定の位置にセットするための部位であり、前述した載置台6、スライダー7及びこのスライダー7を駆動させるステッピングモータ等の駆動源(図示せず)とで構成されている。
【0023】
[試料調製部]
前記試料調製部は、採血管3内から所定量の血液を吸引して第1混合チャンバ(第1収容容器;HGB/RBCチャンバ)MC1、又は第2混合チャンバ(第2収容容器)MC2内で試薬と混合することにより各種分析用の試料を調製する部位であり、採血管3内を密封する栓体3aを穿刺して、当該採血管3内の試料を吸引する吸引管13と、この吸引管13を水平に移動させる水平駆動部と、前記吸引管13を垂直に移動させる垂直駆動部などを備えている。なお、水平駆動部は駆動源としてステッピングモータ28を備え、垂直駆動部は駆動源としてステッピングモータ68を備えている(図4参照)。
前記吸引管13は、内部に長手方向に延びる流路を有するとともに、試料又は空気を吸引する吸引口が先端付近に形成されたものであれば、本発明において特に限定されることなく用いることができる。
【0024】
[試薬容器]
図5及び図6の流体回路図に示すように、装置機構部2には、試薬を収容するための試薬容器を設置することが可能であり、流体回路に試薬容器を接続することができるようになっている。具体的には、本実施形態で用いられる試薬容器は、希釈液(洗浄液)EPKを収容するための希釈液容器EPK−V、ヘモグロビン溶血剤SLSを収容するためのヘモグロビン溶血剤容器SLS−V、赤血球を溶解させる白血球分類用溶血剤FFDを収容するための白血球分類用溶血剤容器FFD−V、及び、白血球分類用染色液FFSを収容するための白血球分類用染色液容器FFS−Vである。
【0025】
[試料供給部]
採血管3から、第1混合チャンバMC1及び/又は第2混合チャンバMC2に試料を供給するための試料供給部として、前記吸引管13と全血吸引シリンジポンプSP1が設けられている。吸引管13は、全血吸引シリンジポンプSP1によって採血管3から所定量の全血試料を吸引し、第1混合チャンバMC1と第2混合チャンバMC2の位置へ移動し、全血吸引シリンジポンプSP1によって、それぞれのチャンバMC1,MC2へ所定量の全血試料を分配供給する。
【0026】
[試薬供給部]
希釈液容器EPK−V及び溶血剤容器SLS−Vは、第1混合チャンバMC1に試薬を供給可能に接続されている。すなわち、希釈液容器EPK−Vから第1混合チャンバMC1へは、希釈液供給用(EPK用)ダイヤフラムポンプDP1によって、希釈液を供給可能となっており、このEPK用ダイヤフラムポンプDP1が希釈液用の試薬供給部を構成している。
また、溶血剤容器SLS−Vから第1混合チャンバMC1へは、溶血剤供給用(SLS用)ダイヤフラムポンプDP3によって、溶血剤を供給可能となっており、このSLS用ダイヤフラムポンプDP3が溶血剤用の試薬供給部を構成している。
溶血剤容器FFD−V及び染色液容器FFS−Vは、第2混合チャンバMC2に試薬を供給可能に接続されている。すなわち、溶血剤容器FFD−Vから第2混合チャンバMC2へは、溶血剤用(FFD用)ダイヤフラムポンプDP4によって溶血剤を供給可能となっており、このFFD用ダイヤフラムポンプDP4が共通試薬である溶血剤用の試薬供給部(共通試薬供給部)を構成している。
また、染色液容器FFS−Vから第2混合チャンバMC2へは、染色液用(FFS用)ダイヤフラムポンプDP5によって染色液を供給可能となっており、このFFS用ダイヤフラポンプDP5が染色液用の試薬供給部(専用試薬供給部)を構成している。
【0027】
[試薬供給路]
希釈液容器EPK−Vから第1混合チャンバMC1へ至る試薬供給路と、溶血剤容器SLS−Vから第1混合チャンバMC1へ至る試薬供給路は、途中の合流点CR1で合流しており、両試薬に共通した試薬供給路T1が第1混合チャンバMC1に接続されている(図5参照)。
【0028】
[測定項目]
本実施形態の試料測定装置では、血液中の赤血球、血小板、白血球、及びヘモグロビンという複数の測定対象粒子成分について測定・分析が可能である。より具体的には、本実施形態の試料測定装置では、赤血球数、MCV(平均赤血球容積)、血小板数、白血球数、白血球分類、ヘモグロビン濃度といった多項目の測定・分析が可能である。
【0029】
[測定部]
前記測定部D1,D2,D3には、第1測定部として血球を電気的に測定する電気式測定部(インピーダンス検出法による測定部)D1、第2測定部として血球を光学的に測定する光学式測定部D2、第3測定部としてSLSヘモグロビン法によってヘモグロビンに関する測定を行うヘモグロビン測定部D3が備わっている。
第1測定部D1は、測定対象粒子成分が赤血球及び血小板とされている。また、第2測定部は、主に測定対象粒子成分が白血球とされているが、赤血球及び赤血球を測定対象成分とすることもできる。
【0030】
前記第1混合チャンバMC1は、赤血球、血小板及びヘモグロビンに関する分析をするための試料を調製する部位であり、第1混合チャンバMC1で調製された試料が、第1測定部D1及び第3測定部D3での測定に用いられ、必要に応じて第2測定部2での測定にも用いられる。
前記第2混合チャンバMC2は、白血球に関する分析をするための試料を調製する部位であり、第2混合チャンバMC2で調製された試料が第2測定部D2での測定に用いられる。
【0031】
[第1測定部;電気式測定部;RBC/PLT測定部]
前記第1測定部(電気式測定部)D1は、赤血球及び血小板という2つの対象成分について、赤血球数の測定及び血小板数測定という2つの測定項目についての測定を行うRBC/PLT測定部として構成されている。このRBC/PLT検出部D1はシースフローDC検出法により電気的にRBC及びPLTの測定を行うことができる。
なお、血球の電気式測定(インピーダンス検出)には、電気抵抗方式(Direct Current:DC方式)と静電容量方式があり、いずれも電気式測定部として採用できる。前者は、血球が細孔を通過する際の抵抗変化を検出することにより血球を計数するものであり、後者は血球が細孔を通過する際の静電容量変化を検出することにより血球を計数するものである。
すなわち、両者ともインピーダンスの変化を検出するものである。インピーダンス検出方式では、前記インピーダンスの変化をパルスとして検出する。パルスの総数は、細孔を通過した血球の総数であり、パルスの大きさがそれぞれの血球の大きさとして検出される。
【0032】
[第2測定部;光学式測定部;WBC/RBC/PLT測定部]
前記第2測定部(光学式測定部)D2は、白血球という対象成分について、白血球計数及び白血球分類という多測定項目についての測定を行うことができる光学検出部として構成されている。この光学検出部D3は、半導体レーザを使用したフローサイトメトリー法により、白血球計数及び白血球分類を行うことができる。
なお、血球の光学式測定には、フローサイトメトリー法以外に、比濁法、血球固定法などがあり、いずれも光学式測定部D2として採用できる。
また、第2測定部D2は、第1測定部D1と同様に、RBC測定(赤血球数の測定)及びPLT測定(血小板数測定)を行うRBC/PLT測定部としても使用される。すなわち、第2測定部D2は、WBC/RBC/PLT測定部である。
なお、第2測定部D2の構成については、後に詳しく説明する。
【0033】
[第3測定部;HGB測定部]
前記第3測定部D3は、HGB測定(血液中の血色素量の測定)を行うHGB測定部として構成されている。このHGB検出部D3は、SLS−ヘモグロビン法によりHGB測定を行うことができる。
【0034】
[制御部]
図4に示すように、装置機構部2は、前記試料調製部及び測定部D1,D2,D3を制御する制御部100を備えている。また、装置機構部2は、試料調製部などを構成する流体回路中の電磁弁SV1〜SV33,SV40,SV41や各種ポンプ・モータ28,68,SP1,SP2,P,V,DP1,DP2,DP3,DP4,DP5などを駆動するための駆動回路部110も備えており、制御部100は、駆動回路部100を介して電磁弁などを駆動する。
制御部100は、図示しない通信インターフェースを介して、処理装置PCと通信可能であり、各種信号やデータなどを処理装置PCとの間でやり取りすることができる。
【0035】
[動物種に応じた測定モード]
試料測定装置本体Sは、赤血球及び血小板の測定に関し、第1測定モード及び第2測定モードの2つの測定モードを有している。
第1測定モードは、赤血球及び血小板測定用の混合試料を電気式測定部である第1測定部D1だけで測定するものである。第1測定モードは、生体試料がイヌ等の電気式測定部D1でも赤血球と血小板の弁別が可能な血液試料である場合に用いられる。
第2測定モードは、赤血球及び血小板測定用の混合試料を電気式測定部である第1測定部及び光学式測定部である第2測定部の双方で測定するものである。第2測定モードは、生体試料がネコ等の電気式測定部D1では赤血球と血小板の弁別ができない血液試料である場合に用いられる。
前記制御部100は、測定部D1,D2,D3において測定モードに応じた測定が行われるように測定部D1,D2,D3を制御する。
【0036】
[動物種(試料種)の入力部]
試料測定装置のユーザは、処理装置PCを用いて、生体試料の動物種を入力することができる。処理装置PCは、動物種の入力のための機能として、画面上で動物種(例えば、イヌ、ネコ、ウマ等)をユーザが選択するための画面表示機能と、動物種を選択するための入力をマウス・キーボード等から受け付ける機能とを有しており、これらの機能が動物種入力部を構成している。
【0037】
[動物種に基づく測定モード選択]
図9に示すように、動物種入力(ステップS11)で、ユーザが動物種を入力すると、処理装置PCは、図10に示す動物種データベースを参照して、入力された動物種に対応した測定モード(第1測定モード又は第2測定モード)を選択する。なお、動物種データベースには、動物種毎に、実行される測定モードが登録されている。
例えば、動物種としてイヌが入力された場合、第1測定モードが選択され、処理装置PCは、処理装置PCは第1測定モードでの測定を行う指令を試料測定装置本体Sへ送信する(ステップS13)。そうすると試料測定装置本体Sは、第1測定モードでの測定を行うように動作し、その測定データを処理装置PCへ送信する。
処理装置PCは、試料測定装置本体Sから第1測定モードでの測定データを受信すると(ステップS14)、当該測定データをデータ処理し(ステップS15)、処理結果を所定の表示形式で画面上に表示又はファイルに保存する。
【0038】
また、動物種として例えばネコが入力された場合、測定モード選択(ステップS12)では、第2測定モードが選択され(図10参照)、処理装置PCは、第2測定モードでの測定を行う指令を試料測定装置本体Sへ送信する(ステップS16)。第2測定モード指令信号を受信した試料測定装置本体Sは、第2測定モードでの測定を行うように動作し、その測定データを処理装置PCへ送信する。処理装置PCは、試料測定装置本体Sから第2測定モードの測定データを受信すると(ステップS17)、当該測定データをデータ処理し(ステップS18)、処理結果を所定の表示形式で画面上に表示又はファイルに保存する。
【0039】
[各測定モードで使用される測定部]
図11は第1測定モードで使用される測定部を示し、図12は第2測定モードで使用される測定部を示している。
本実施形態の試料測定装置では、前述のとおり、血球中の複数成分につき、赤血球数、MCV(平均赤血球容積)、血小板数、白血球数、白血球分類、ヘモグロビン濃度といった複数項目について測定可能であるが、これらの項目のうち、白血球数、白血球分類、ヘモグロビン濃度は、両測定モードにおいて同じように測定される。
一方、赤血球数、MCV(平均赤血球容積)、血小板数については、両測定モードにおいて測定部又は算出方法が異なる。
以下では、まず、赤血球及び血小板の測定とは別に並行的に行われる白血球の測定(計数及び分類)について説明し、その後、赤血球及び血小板の測定並びにヘモグロビンの測定について説明する。
【0040】
[WBC測定]
試料測定装置本体Sは、白血球に関する測定のために、全血試料(11μL)と溶血剤(1mL)を混合して白血球用測定試料を作成し、この測定試料を第2測定部である光学式測定部D2にてフローサイトメトリー法により、白血球数の測定と、白血球5分類の測定とが行われる。
図13は、白血球測定のための試料測定装置本体Sの動作手順を示している。以下では、図5〜図8の流体回路図も参照しつつ、当該動作手順を説明する。まず、溶血剤FFD(0.5mL)が溶血剤容器FFD−Vから第2混合チャンバMC2に供給される(ステップS21)。
ステップS21は、具体的には、バルブSV19を開いてバルブSV20を閉じるとともに、バルブSV22を開いてバルブS21を閉じることで、FFD用ダイヤフラムポンプD4が陰圧駆動され、溶血剤FFDが溶血剤容器FFD−VからFFD用ダイヤフラムポンプD4へ0.5mL補給される。
そして、バルブSV19を閉じてバルブSV20を開くとともに、バルブS21を開いてバルブS22を閉じることで、FFD用ダイヤフラムポンプD4が陽圧駆動され、ダイヤフラムポンプD4によって0.5mLの溶血剤FFDが第2混合チャンバMC2に供給される。
さらに、バルブS19を開いてバルブS20を閉じるとともに、バルブS21を閉じてバルブS22を開くことで、FFDダイヤフラムポンプD4が陰圧駆動され、再度、溶血剤FFDが溶血剤容器FFD−VからFFD用ダイヤフラムポンプD4へ0.5mL補給される。
【0041】
次に、採血管3の全血試料が吸引管(ピアサ)13によって定量吸引される(ステップS22)。ステップS22は、具体的には、吸引管13が採血管3の中に挿入され、全血吸引シリンジポンプSP1の駆動によって、全血試料が定量(20μL)吸引される。
そして、吸引管13が採血管3から引き抜かれ、吸引管13が第2混合チャンバMC2に降下される(ステップS33)。この状態で全血吸引シリンジポンプが駆動されることにより、吸引管13の吸引穴より11μLの全血試料(ステップS22において吸引した試料の一部)が第2混合チャンバMC2に吐出される(ステップS24)。
【0042】
吐出完了後、染色液(専用試薬)FFSを第2混合チャンバMC2へ入れる(ステップS25)。ステップS25は、具体的には、染色液補給用バルブSV40を開き、染色液供給用バルブSV41を閉じた状態で、バルブSV22を開くとともにバルブSV21を閉じることで、染色液供給用ダイヤフラムポンプ(FFS用ダイヤフラムポンプ)DP5を陰圧駆動し、FFS用ダイヤフラムポンプDP5に染色液FFSを20μL補給する。
さらに、バルブSV40を閉じ、バルブSV41を開くとともに、バルブSV21を開き、バルブSV22を閉じて、FFS用ダイヤフラムポンプDP5を陽圧駆動することで、20μLの染色液FFSを第2混合チャンバMC2へ入れる。なお、専用試薬として、他の試薬、例えば、希釈液や緩衝液を含んでもよいし、希釈液や緩衝液だけが専用試薬であってもよい。続いて、溶血剤(共通試薬)FFDを第2混合チャンバMC2へ入れる(ステップS26)。つまり、バルブSV22、バルブSV19を閉じて、バルブSV21、バルブSV20を開き、FFD用ダイヤフラムポンプDP4を用いて、0.5mLの溶血剤FFDを第2混合チャンバMC2へ入れ、全血試料を流入攪拌して調製することにより、第2混合チャンバMC内に赤血球が溶解され白血球が染色された白血球測定試料が作成される(ステップS27)。
【0043】
そして、第2混合チャンバMC2の白血球測定試料が光学式測定部(WBC/RBC/PLT測定部)D2に送られ、光学式測定部D2にて白血球の測定が行われる(ステップS28)。ステップS28は、具体的には、バルブSV4、バルブSV29、バルブSV22を開き、バルブSV21を閉じることで、チャージング用ダイヤフラムポンプDP2が駆動され、白血球測定試料が正確に1.0mLチャージングされる。そして、バルブSV4、バルブSV29、バルブSV22が閉じられ、光学式測定部D2へのチャージングが完了する。
その後、バルブSV9とバルブSV31を開くことで、EPK収容容器EPK−Cからシース液(希釈液)EPKが光学式測定部D2へ供給される。続いて、バルブSV1が閉じた状態でバルブSV3を開くとともに、試料供給シリンジポンプSP2を駆動し、光学式測定部D2において測定を行う。
【0044】
[光学式測定部(WBC/RBC/PLT測定部)]
図14は、第2測定部である光学式測定部D2の概要構成を示している。この光学式測定部D2は、フローセル101に測定試料を送り込み、フローセル101中に液流を発生させ、フローセル101内を通過する液流に含まれる血球に半導体レーザ光を照射して測定するものであり、シースフロー系100、ビームスポット形成系110、前方散乱光受光系120、側方散乱光受光系130、側方蛍光受光系140を有している。
シースフロー系100は、フローセル101内を試料がシース液に包まれた状態で血球が一列に並んだ状態で流れ、血球計数の正確度と再現性を向上させるものとなっている。ビームスポット系110は、半導体レーザ111から照射された光が、コリメータレンズ112とコンデンサレンズ113を通って、フローセル101に照射されるよう構成されている。また、ビームスポット系110は、ビームストッパ114も備えている。
【0045】
前方散乱光受光系120は、前方への散乱光を前方集光レンズ121によって集光し、ピンホール122を通った光をフォトダイオード(前方散乱光受光部)123で受光するように構成されている。
側方散乱光受光系130は、側方への散乱光を側方集光レンズ131にて集光するとともに、一部の光をダイクロイックミラー132で反射させ、フォトダイオード(側方散乱光受光部)133で受光するよう構成されている。
光散乱は、血球のような粒子が光の進行方向に障害物として存在し、光がその進行方向を変えることによって生じる現象である。この散乱光を検出することによって、粒子の大きさや材質に関する情報を得ることができる。特に、前方散乱光からは、粒子(血球)の大きさに関する情報を得ることができる。また、側方散乱光からは、粒子内部の情報を得ることができる。血球粒子にレーザ光が照射された場合、側方散乱光強度は細胞内部の複雑さ(核の形状、大きさ、密度や顆粒の量)に依存する。したがって、側方散乱光強度のこの特性を利用することで、血球を分類(弁別)した上で、血球の数を測定することができる。
【0046】
側方蛍光受光系140は、ダイクロイックミラー132を透過した光をさらに分光フィルタ141に通し、フォトマルチプライヤ(蛍光受光部)142で受光するよう構成されている。
染色された血球のような蛍光物質に光を照射すると、照射した光の波長より長い波長の光を発する。蛍光の強度はよく染色されていれば強くなり、この蛍光強度を測定することによって血球の染色度合いに関する情報を得ることができる。したがって、(側方)蛍光強度の差によって、白血球の分類の測定その他の測定を行うことができる。
【0047】
各受光部123、133、142で光を受光すると、各受光部123,133,142は、電気パルス信号を出力する。この電気パルス信号から測定データが作成される。測定データは、試料測定装置本体Sから処理装置PCへ送信され(ステップS14,ステップS17)、処理装置PCにおいて、処理・分析が行われる。
【0048】
処理装置PCは、光学式測定部D2から白血球の測定データを受信すると、散乱光受光部での散乱光受光と蛍光受光部での蛍光受光(側方蛍光受光)に基づいて、白血球測定試料に含まれる白血球数の算出と、白血球の分類(リンパ球、好中球、好酸球、好塩球、及び単球の5項目での分類)を行う。
図15は、処理装置PCにおいて表示される白血球分類のスキャッタグラムを示している。このスキャッタグラムは、X軸を側方散乱光強度、Y軸を蛍光強度にとったものであり、白血球が、リンパ球、好中球、好酸球、好塩球、及び単球の5つの集合に別れている。このスキャッタグラムから分かるように、処理装置PCでは、白血球をこれら5つの血球群に分けて検出している。処理装置PCでは、さらに各分類に含まれる血球の数、分類間での数の比率などの算出といった各種処理が行われる。
【0049】
[RBC/PLT/HGB測定]
第1及び第2の両測定モードにおいて、吸引管13で吸引された全血試料のうち、白血球に関する分析用に使用されなかった残りの全血試料は、第1混合チャンバMC1で赤血球、血小板及びヘモグロビン測定用の試料として用いられ、当該試料は第1測定部D1及び第3測定部D3において測定され、第2測定モードの場合にはさらに第2測定部D2においても測定される。
【0050】
[第1測定モードでのRBC/PLT/HGB測定]
RBC/PLT測定とHGB測定を行う場合、RBC/PLT測定用の混合試料と、HGB測定用の混合試料とが必要とされる。RBC/PLT測定用の混合試料を作成するための試薬と、HGB測定用の混合試料を作成するための試薬とは異なるため、別々に調製する必要があり、これらの混合試料を作成するためには、通常、二つの混合チャンバを必要とする。
これに対し、本実施形態では、一つの混合チャンバ(第1混合チャンバ;HGB/RBC/PLTチャンバ)MC1によって二つの混合試料が調製される。以下、この調製手順を含む測定手順を図16及び図17に基づき、図5〜図8の流体回路図も参照しつつ、詳細に説明する。
【0051】
[第1測定モードでのRBC/PLT測定試料の調製・測定]
まず、ステップS22(図13参照)で、採血管3の全血試料を吸引管(ピアサ)13によって定量吸引(20μL)する。具体的には、吸引管13が採血管3の中に挿入され、全血吸引シリンジポンプSP1の駆動によって、全血試料が定量吸引される。
その後、第1試薬である希釈液EPKが1mLほど第1混合チャンバMC1へ供給される(ステップS31)。ステップS31では、具体的には、第1混合チャンバMC1内部の液の排出をするため、バルブSV23を約1.0sec間開く。そして、バルブSV21及びバルブSV24を開き、予め希釈液EPKが補充されている希釈液用(EPK用)ダイヤフラムポンプD1を用いて、1.0mLの希釈液EPKを第1混合チャンバMC1へ供給する。その後、バルブSV21及びバルブSV24を閉じて、バルブSV22及びバルブSV32を開き、EPK用ダイヤフラムポンプDP1に希釈液EPKを補充する。
【0052】
次に、吸引管13が第1混合チャンバMC1へ降下され(ステップS32),吸引管13の吸引穴より4μLの全血試料が第1混合チャンバMC1へ吐出される(ステップS33)。なお、ステップS32およびS33は、ステップS24(図13参照)が実行された直後に実行される。
吐出完了後、第1試薬である希釈液EPKが1mLほど第1混合チャンバMC1へ再度供給され(ステップS34)。ステップS34は、具体的には、吐出完了後、EPK用ダイヤフラムポンプDP1を用いて1.0mLの希釈液EPKを第1混合チャンバMC1へ再度供給するため、バルブSV22及びバルブSV32を閉じて、バルブSV21及びバルブSV24を開く。これにより、第1混合チャンバMC1内で全血試料(4μL)と希釈液EPK(2mL)が攪拌され赤血球及び血小板測定試料(RBC/PLT測定試料)が調製される(ステップS35)。
なお、RBC/PLT測定試料調製後に、EPK用ダイヤフラムポンプに希釈液EPKを補給するため、バルブSV21及びバルブSV24が閉じられて、バルブSV22及びバルブSV32が開かれる。
【0053】
続いて、RBC/PLT測定試料の一部(1.0mL)をRBC/PLT測定部(電気式測定部;第1測定部)D1へ供給する(ステップS36)。ステップS36では、具体的には、バルブSV2とバルブSV25を開いて、チャージング用ダイヤフラムポンプDP2により、RBC/PLT測定試料を第1混合チャンバMC1と電気式測定部D1との間の流路上に正確に1.0mL(第1混合チャンバMC1内のRBC/PLT測定試料の一部)をチャージングする。そして、バルブSV2、バルブSV25、バルブSV22、バルブSV32を閉じ、チャージングを完了させる。さらに、バルブSV8、バルブSV9を開き、電気式測定部D1へ測定のためのシース液を供給する。チャージングされたRBC/PLT測定試料は電気式測定部D1に供給され、DC方式によって試料中の赤血球数及び血小板数の測定が行なわれる(ステップS37)。
【0054】
動物種がイヌの場合、電気式測定部D1による赤血球数及び血小板数の測定結果は、図24に示すヒストグラムのようになる。すなわち、血球の数が、血球の大きさ毎に計測される。また、しきい値a1よりも左側が血小板の数であり、しきい値よりも右側が赤血球の数であり、しきい値a1を適切に設定することにより、血小板と赤血球を弁別することができる。
また、電気式測定部D1では、各血球の正確な大きさが得られるため、電気式測定部D1での測定結果である赤血球の数と各赤血球の大きさとから、MCV(平均赤血球容積)を算出することができる。なお、この算出は、処理装置PCにおいて行われる。
このように、第1測定モードでは、電気式測定部D1の測定結果に基づき、血小板数、赤血球数、MCVの各項目についての測定結果が得られる。
【0055】
[第1測定モードでのHGB測定試料の調製・測定]
RBC/PLT測定が完了しても、第1混合チャンバMC1には、1mLの試料が残試料として存在している。HGB測定試料を調製するため、残試料がある第1混合チャンバMC1へは、さらに、溶血剤SLSが供給される(ステップ38)。ステップS38では、具体的には、バルブSV21及びバルブSV18を開いて、予め溶血剤SLSが補給されたヘモグロビン溶血剤用(SLS用)ダイヤフラムポンプDP3により、溶血剤SLSを第1混合チャンバMC1へ供給する。これにより、溶血剤SLSと前記残試料とが攪拌され、前記残試料(1.0mL)に溶血剤SLS(0.5mL)を混合したHGB測定試料が調製される(ステップS38)。
そして、HGB測定用混合試料の反応を待つ(ステップS39)。この反応を待つ間の任意の時間に、バルブSV21及びバルブSV27を開き、チャージング用ダイヤフラムポンプDP2の排出を行い、次チャージングの準備を行う。続いて、バルブSV22及びバルブSV28を開いてHGB測定用混合試料をHGB検出部D2にチャージングするのを開始し、バルブSV22及びバルブSV28を閉じることでチャージングが完了する(ステップ40)。その後、HGB測定が行われる(ステップS41)。
【0056】
[第2測定モードでのRBC/PLT/HGB測定]
次に、第2測定モードでの、試料の調製手順を含む測定手順を図18及び図19に基づき、図5〜図8の流体回路図も参照しつつ、詳細に説明する。
【0057】
[第2測定モードでのRBC/PLT測定試料の調製]
まず、ステップS22(図13参照)で、採血管3の全血試料を吸引管(ピアサ)13によって定量吸引(20μL)する。具体的には、吸引管13が採血管3の中に挿入され、全血吸引シリンジポンプSP1の駆動によって、全血試料が定量吸引される。
その後、第1試薬である希釈液EPKが2.0mLほど第1混合チャンバMC1へ供給される(ステップS51)。ステップS51では、具体的には、第1混合チャンバMC1内部の液の排出をするため、バルブSV23を約1.0sec間開く。そして、バルブSV21及びバルブSV24を開き、予め希釈液EPKが補充されている希釈液用(EPK用)ダイヤフラムポンプD1を用いて、2.0mLの希釈液EPKを第1混合チャンバMC1へ供給する。その後、バルブSV21及びバルブSV24を閉じて、バルブSV22及びバルブSV32を開き、EPK用ダイヤフラムポンプDP1に希釈液EPKを補充する。そして、EPK用ダイヤフラムポンプDP1を用いて1.0mLの希釈液EPKを第1混合チャンバMC1へ再度供給するため、バルブSV22及びバルブSV32を閉じて、バルブSV21及びバルブSV24を開く。その後、バルブSV21及びバルブSV24を閉じて、バルブSV22及びバルブSV32を開き、EPK用ダイヤフラムポンプDP1に希釈液EPKを補充する。
【0058】
次に、吸引管13が第1混合チャンバMC1へ降下され(ステップS52),吸引管13の吸引穴より6μLの全血試料が第1混合チャンバMC1へ吐出される(ステップS53)。なお、ステップS52およびS53は、ステップS24(図13参照)が実行された直後に実行される。
吐出完了後、第1試薬である希釈液EPKが1.0mLほど第1混合チャンバMC1へ再度供給され(ステップS54)。ステップS54は,具体的には、吐出完了後、EPK用ダイヤフラムポンプDP1を用いて1.0mLの希釈液EPKを第1混合チャンバMC1へ供給するため、バルブSV22及びバルブSV32を閉じて、バルブSV21及びバルブSV24を開く。これにより、第1混合チャンバMC1内で全血試料(6μL)と希釈液EPK(3.0mL)が攪拌され赤血球及び血小板測定試料(RBC/PLT測定試料)が調製される(ステップS55)。
なお、RBC/PLT測定試料調製後に、EPK用ダイヤフラムポンプに希釈液EPKを補給するため、バルブSV21及びバルブSV24が閉じられて、バルブSV22及びバルブSV32が開かれる。
【0059】
第2測定モードでは、RBC/PLT測定に用いられる全血試料と希釈液の量が第1測定モードよりも多くなっている。これは、第2測定モードでは、赤血球及び血小板の測定に関し、第1測定部D1だけでなく、第2測定部D2も使用するために、より多くの測定試料が必要とされるためである。
上記の処理のため、制御部100は、第2測定モードでは、第1測定モードのときよりも、多くの全血試料及び/又は試薬(希釈液)が第1混合チャンバMC1に供給されるように制御を行う。換言すると、制御部100は、動物種(試料種)に応じて、生体試料の量を変化させる機能を有しているのである。また、制御部100は、動物種(試料種)に応じて、試薬の量を変化させる機能を有しているのである。さらにまた、制御部100は、動物種(測定モード)に応じて、試料に混合される試薬の種類を変更させる機能を有していても良い。
【0060】
[第2測定モードにおける電気式測定部での測定]
続いて、RBC/PLT測定試料の一部(1.0mL)をRBC/PLT測定部(電気式測定部;第1測定部)D1へ供給する(ステップS56)。ステップS56では、具体的には、バルブSV2とバルブSV25を開いて、チャージング用ダイヤフラムポンプDP2により、RBC/PLT測定試料を第1混合チャンバMC1と電気式測定部D1との間の流路上に正確に1.0mL(第1混合チャンバMC1内のRBC/PLT測定試料の一部)をチャージングする。そして、バルブSV2、バルブSV25、バルブSV22、バルブSV32を閉じ、チャージングを完了させる。さらに、バルブSV8、バルブSV9を開き、電気式測定部D1へ測定のためのシース液を供給する。チャージングされたRBC/PLT測定試料は電気式測定部D1に供給され、DC方式によって試料中の赤血球数及び血小板数の測定が行なわれる(ステップS57)。第2測定モードにおいては、赤血球数及び血小板数の測定は、後述のように第2測定部で行われ、第1測定部D1での測定結果は、主にMCV(平均赤血球容積)算出のために用いられる。
【0061】
動物種がネコの場合、電気式測定部D1による赤血球数及び血小板数の測定結果は、図25に示すヒストグラムのようになる。すなわち、血球の数が、血球の大きさ毎に計測される。ただし、ネコ等の動物種の場合、血液中に赤血球とほぼ同じ大きさの血小板が存在するため電気式測定部D1の測定では、血球の数を血球の大きさごとに計測することはできるものの、血小板と赤血球の弁別はできない。すなわち、しきい値a2よりも左側には血小板だけでなく赤血球も含まれ、しきい値a2よりも右側には赤血球だけでなく血小板も含まれる。
ただし、電気式測定部D1の測定結果は、血球の正確な大きさを示しているため、光学式測定部(第2測定部)D2の測定結果と併せて、MCVを算出するために用いられる(詳細は後述)。
【0062】
[第2測定モードにおける光学式測定部での測定]
第1混合チャンバMC1中のRBC/PLT測定試料の他の一部(1.0mL)は、光学式測定部(第2測定部)D2へ供給される(ステップS58)。ステップS58は、具体的には、バルブSV2、バルブSV1、バルブSV3、バルブSV29、バルブSV22を開き、バルブSV21を閉じることで、チャージング用ダイヤフラムポンプDP2が駆動され、RBC/PLT測定試料の他の一部が正確に1.0mLチャージングされる。そして、バルブSV2、バルブSV1、バルブSV3、バルブSV29、バルブSV22が閉じられ、光学式測定部D2へのチャージングが完了する。
その後、バルブSV9とバルブSV31を開くことで、EPK収容容器EPK−Cからシース液(希釈液)EPKが光学式測定部D2へ供給される。続いて、バルブSV1が閉じた状態でバルブSV3を開くとともに、試料供給シリンジポンプSP2を駆動し、光学式測定部D2において測定を行う(ステップS59)。光学式測定部D2では、フローサイトメトリー法により、赤血球と血小板の測定を行う。
光学式測定部D2の各受光部123、133、142から出力された測定データは、試料測定装置本体Sから処理装置PCへ送信され、処理装置PCにおいて、処理・分析が行われる。
【0063】
処理装置PCは、光学式測定部D2から赤血球及び血小板の測定データを受信すると、前方散乱光受光部123での前方散乱光と散乱光受光部133での側方散乱光に基づいて、RBC/PLT測定試料に含まれる赤血球及び血小板の弁別と、赤血球数及び血小板数の算出を行う。
図20は、処理装置PCにおいて表示される赤血球及び血小板のスキャッタグラムを示している。このスキャッタグラムは、X軸を側方散乱光強度、Y軸を前方散乱光強度にとったものであり、赤血球の集合と血小板の集合に分かれている(赤血球と血小板では血球内部情報が異なるので血球の大きさが同じでも区別することができる)。このスキャッタグラムに基づき、処理装置PCでは、赤血球と血小板を弁別し、さらに、赤血球数及び血小板の数、赤血球数及び血小板数の比率などの算出といった各種処理が行われる。
なお、光学式測定部D2の測定結果のみから、赤血球数及び血小板数を算出する必要はなく、光学式測定部D2の測定結果から得られた赤血球数及び血小板数の比率に基づき、電気式測定部D1の測定結果である総血球数を各血球に配分することで、赤血球数及び血小板数を算出してもよい。
【0064】
光学式測定部D2では、赤血球と血小板の弁別が行えるものの、各血球の正確な大きさが得られない。つまり、光学式測定部D2では、(前方)散乱光の強度毎の血球数は得られるが、当該散乱光強度がどの程度の大きさを示しているのかは分からない。
そこで、処理装置PCは、MCVを算出するため、血球の正確な大きさとその大きさでの血球数を示す第1測定部D1の測定結果と、赤血球と血小板それぞれの数が得られる第2測定部D2の測定結果を用いる。
【0065】
すなわち、大きさ毎の赤血球の数は、ほぼ正規分布となるため、処理装置PCは、両測定部D1,D2の血球数分布から、第1測定部D1の測定結果における血球の大きさと、第2測定部D2の測定結果における血球の大きさを対応付けることができる。この対応付けの結果、赤血球の正確な大きさ毎の赤血球数が求められ、MCVが算出される。
【0066】
[第2測定モードでのHGB測定試料の調製・測定]
HGB試料の調製・測定については、第1測定モードと同様であるので説明を省略する。
本実施形態では、第2測定モードにおいて、RBC/PLT試料を電気式測定部と光学式測定部の両方に供給されるように構成されていたが、RBC/PLT試料を光学式測定部のみに供給する構成にしても良い。
【0067】
[測定部D1,D2,D3の変形例1]
図21及び図22は、測定部D1,D2,D3の変形例を示している。変形例に係る第2測定部は、電気式・光学式複合測定ユニットとして構成されている。なお、ここで特に明示して説明しない限り、変形例に係る試料測定装置は、図1〜20までに説明したものと同様である。
【0068】
この電気式・光学式複合測定ユニットD2は、例えば、特開平7−128217号公報に開示されているものである。すなわち、この複合測定ユニットD2は、図4に示す電気式測定部D1及び光学式測定部D2の双方の機能を一体的に備えたものであり、単一の測定ユニットによって、異なる測定原理による測定が行える。図21及び図22の複合測定ユニットD2の出力としては、電気式測定機能による電気式測定出力と、光学式測定機能による光学式測定出力とがある。
【0069】
第1測定モードが選択された場合、図21に示すように、赤血球及び血小板は電気式測定部D1だけで測定される。そして、複合測定ユニットD2では、白血球の測定だけを行う。すなわち、複合測定ユニットD2の両出力は、白血球の計数・分類のために用いられる。
【0070】
一方、第2測定モードが選択された場合、図22に示すように、赤血球及び血小板は電気式測定部D1だけでなく、複合測定ユニットD2においても測定される。つまり、複合測定ユニットの光学式測定機能による光学式測定出力が赤血球数及び血小板数の計数に用いられる。
そして、電気式測定部D1の測定結果及び複合測定ユニットの光学式測定出力に基づき、処理装置PCにて、MCVが算出される。
なお、第2測定モードにおいても、複合測定ユニットD2の両出力は白血球の計数・分類のために用いられる。
【0071】
[測定部D1,D2,D3の変形例2]
図23は、測定部D1,D2,D3の変形例を示している。変形例に係る第1測定部D1は、電気式・光学式複合測定ユニットとして構成されている。なお、ここで特に明示して説明しない限り、変形例に係る試料測定装置は、図1〜20までに説明したものと同様である。
【0072】
この電気式・光学式複合測定ユニットD1も、例えば、特開平7−128217号公報に開示されているものである。すなわち、この複合測定ユニットD1も、図4に示す電気式測定部D1及び光学式測定部D2の双方の機能を一体的に備えたものであり、単一の測定ユニットによって、異なる測定原理による測定が行える。図23の複合測定ユニットD1の出力としては、電気式測定機能による電気式測定出力と、光学式測定機能による光学式測定出力とがある。
【0073】
第1測定モードが選択された場合、赤血球数及び血小板数は、複合測定ユニットD1の電気式測定機能によって測定され、光学式測定機能は使用されない。
一方、第2測定モードが選択された場合、赤血球数及び血小板数は、複合測定ユニットD1の光学式測定機能によって測定される。なお、第2測定モードにおいて、MCVも算出する必要があれば、複合測定ユニットD1の光学式測定機能だけでなく、電気式測定機能も用いればよい。
【0074】
変形例2に係る複合測定ユニットD1のように、単一の測定ユニットD1が複数の測定原理によって測定できるものであれば、試料の供給先を変えることなく、両測定モードに対応できるため、測定の制御が容易になる。
【0075】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、各測定部の測定原理は、電気式や光学式に限られるものではなく、各種測定原理を採用できる。また、測定部選択の基準となる試料の種類としは、動物種に限られるものではなく、例えば、ヒトの成人とヒトの幼児を区別した場合の試料種であってもよい。
さらに、試料の種類も血液に限られるものではなく、測定したい対象に応じて適宜変更可能である。
また、上記実施形態では、試料測定装置は、試料測定装置本体Sとこれとは別体の処理装置PCとによって構成されているが、単一の装置に試料測定装置本体Sと処理装置PCの両方の機能を搭載してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の一実施の形態に係る試料測定装置本体の全体斜視図である。
【図2】図1に示される試料測定装置本体の、ケーシングを除去した状態の斜視図である。
【図3】図1に示される試料測定装置本体の、ケーシングを除去した状態の正面説明図である。
【図4】試料測定装置の制御ブロック図である。
【図5】図1に示される試料測定装置の流体回路図の前半部分である。
【図6】図1に示される試料測定装置の流体回路図の後半部分である。
【図7】排液チャンバ回りの流体回路図である。
【図8】ダイヤフラムポンプ回りの流体回路図である。
【図9】測定モード選択に関するフローチャートである。
【図10】動物種データベースを示す図である。
【図11】第1測定モードで使用される測定部を示すブロック図である。
【図12】第2測定モードで使用される測定部を示すブロック図である。
【図13】白血球測定フローチャートである。
【図14】光学式測定部の概略構成図である。
【図15】白血球5分類を示すスキャッタグラムである。
【図16】第1測定モードでのRBC/PLT測定及びHGB測定の測定手順を示すフローチャートである。
【図17】第1測定モードでの測定試料の作成工程概略図である。
【図18】第2測定モードでのRBC/PLT測定及びHGB測定の測定手順を示すフローチャートである。
【図19】第2測定モードでの測定試料の作成工程概略図である。
【図20】側方散乱光と前方散乱光で赤血球と血小板を弁別したスキャッタグラムである。
【図21】変形例1に係る測定部を示すブロック図(第1測定モード)である。
【図22】変形例1に係る測定部を示すブロック図(第2測定モード)である。
【図23】変形例2に係る測定部を示すブロック図である。
【図24】イヌの血液を電気式測定部によって測定したときの血球数を示すヒストグラムである。
【図25】ネコの血液を電気式測定部によって測定したときの血球数を示すヒストグラムである。
【符号の説明】
【0077】
D1 第1測定部(電気式測定部)
D2 第2測定部(光学式測定部)
100 制御部
PC 処理装置(制御部)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体試料中の成分を測定する試料測定装置において、
前記生体試料の試料種を入力する入力部と、
前記生体試料と試薬とを混和して測定試料を調製する試料調製部と、
第1測定部と、
前記第1測定部とは異なる第2測定部と、
前記試料調製部で調製された測定試料を、前記第1測定部および前記第2測定部のすくなくとも一方に供給する試料供給部と、
前記試料供給部によって前記測定試料を前記第1測定部および第2測定部の少なくとも一方に供給するのを制御するとともに、入力された前記試料種に基づいて前記測定試料の供給先となる測定部を決定する制御部と、を備えている試料測定装置。
【請求項2】
前記制御部は、入力された前記試料種に基づいて、前記測定試料を前記第1測定部に供給するか、前記測定試料を前記第1測定部と前記第2測定部の両方に供給するかを決定する請求項1記載の試料測定装置。
【請求項3】
前記試料種は、動物種である請求項1または2に記載の試料測定装置。
【請求項4】
前記第1測定部は、前記測定試料を電気的に測定する電気式測定部であり、
前記第2測定部は、前記測定試料を光学的に測定する光学式測定部である請求項1〜3のいずれかに記載の試料測定装置。
【請求項5】
前記生体試料が血液試料である請求項1〜4のいずれかに記載の試料測定装置。
【請求項6】
前記試薬が希釈液である請求項1〜5のいずれかに記載の試料測定装置。
【請求項7】
生体試料中の複数成分の測定が可能であり、複数の測定部を備えた試料測定装置であって、
前記生体試料の試料種を入力する入力部と、
第1測定部と、
前記第1測定部とは異なる第2測定部と、を備え
入力された前記試料種に基づいて、第1測定部および第2測定部の少なくとも一方の測定部を用いて前記生体試料中の第1成分を測定する試料測定装置。
【請求項8】
入力された前記試料種に基づいて、前記第1測定部を用いて前記生体試料中の第1成分および第2成分を測定するか、あるいは第1測定部を用いて第2成分を測定し、第2測定部を用いて第1成分および第2成分を測定する請求項7記載の試料測定装置。
【請求項9】
前記生体試料中の第3成分を、入力された前記試料種にかかわらず前記第2測定部で測定する請求項8記載の試料測定装置。
【請求項10】
前記第1測定部が電気式測定部であり、前記第2測定部が光学式測定部である請求項7〜9のいずれかに記載の試料測定装置。
【請求項11】
電気式測定部と光学式測定部がひとつの測定ユニットとして一体的に構成された複合測定ユニットを備え、
当該複合測定ユニットが前記第1測定部としての前記電気式測定部および前記第2測定部としての前記光学式測定部のすくなくとも一方として用いられる請求項10に記載の試料測定装置。
【請求項12】
前記試料種は、動物種である請求項7〜11のいずれかに記載の試料測定装置。
【請求項13】
前記第1成分および前記第2成分が粒子成分である請求項7〜12のいずれかに記載の試料測定装置。
【請求項14】
前記第1成分、前記第2成分および第3成分が粒子成分である請求項9に記載の試料測定装置。
【請求項15】
前記第1成分が血小板であり、前記第2成分が赤血球である請求項7〜14のいずれかに記載の試料測定装置。
【請求項16】
前記第1成分が血小板であり、前記第2成分が赤血球であり、前記第3成分が白血球である請求項9または14に記載の試料測定装置。
【請求項17】
生体試料中の成分を測定する方法であって、
生体試料中の試料種を入力する工程と、
前記生体試料と試薬とを混和して測定試料を調製する工程と、
調製された測定試料を、第1測定部および前記第1測定部とは異なる第2測定部のすくなくとも一方に供給する工程と、
入力された前記試料種に基づいて、前記測定試料を前記第1測定部と前記第2測定部のいずれの測定部に供給するかを決定する工程と、
を含む試料測定方法。
【請求項18】
生体試料中の複数成分の測定が可能であり、複数の測定部を備えた試料測定装置によって、生体試料中の成分を測定する方法であって、
生体試料中の試料種を入力する工程と、
入力された前記試料種に基づいて、第1測定部および前記第1測定部とは異なる第2測定部の少なくとも一方の測定部を用いて前記生体試料中の第1成分を測定する工程と、
を含む試料測定方法。
【請求項1】
生体試料中の成分を測定する試料測定装置において、
前記生体試料の試料種を入力する入力部と、
前記生体試料と試薬とを混和して測定試料を調製する試料調製部と、
第1測定部と、
前記第1測定部とは異なる第2測定部と、
前記試料調製部で調製された測定試料を、前記第1測定部および前記第2測定部のすくなくとも一方に供給する試料供給部と、
前記試料供給部によって前記測定試料を前記第1測定部および第2測定部の少なくとも一方に供給するのを制御するとともに、入力された前記試料種に基づいて前記測定試料の供給先となる測定部を決定する制御部と、を備えている試料測定装置。
【請求項2】
前記制御部は、入力された前記試料種に基づいて、前記測定試料を前記第1測定部に供給するか、前記測定試料を前記第1測定部と前記第2測定部の両方に供給するかを決定する請求項1記載の試料測定装置。
【請求項3】
前記試料種は、動物種である請求項1または2に記載の試料測定装置。
【請求項4】
前記第1測定部は、前記測定試料を電気的に測定する電気式測定部であり、
前記第2測定部は、前記測定試料を光学的に測定する光学式測定部である請求項1〜3のいずれかに記載の試料測定装置。
【請求項5】
前記生体試料が血液試料である請求項1〜4のいずれかに記載の試料測定装置。
【請求項6】
前記試薬が希釈液である請求項1〜5のいずれかに記載の試料測定装置。
【請求項7】
生体試料中の複数成分の測定が可能であり、複数の測定部を備えた試料測定装置であって、
前記生体試料の試料種を入力する入力部と、
第1測定部と、
前記第1測定部とは異なる第2測定部と、を備え
入力された前記試料種に基づいて、第1測定部および第2測定部の少なくとも一方の測定部を用いて前記生体試料中の第1成分を測定する試料測定装置。
【請求項8】
入力された前記試料種に基づいて、前記第1測定部を用いて前記生体試料中の第1成分および第2成分を測定するか、あるいは第1測定部を用いて第2成分を測定し、第2測定部を用いて第1成分および第2成分を測定する請求項7記載の試料測定装置。
【請求項9】
前記生体試料中の第3成分を、入力された前記試料種にかかわらず前記第2測定部で測定する請求項8記載の試料測定装置。
【請求項10】
前記第1測定部が電気式測定部であり、前記第2測定部が光学式測定部である請求項7〜9のいずれかに記載の試料測定装置。
【請求項11】
電気式測定部と光学式測定部がひとつの測定ユニットとして一体的に構成された複合測定ユニットを備え、
当該複合測定ユニットが前記第1測定部としての前記電気式測定部および前記第2測定部としての前記光学式測定部のすくなくとも一方として用いられる請求項10に記載の試料測定装置。
【請求項12】
前記試料種は、動物種である請求項7〜11のいずれかに記載の試料測定装置。
【請求項13】
前記第1成分および前記第2成分が粒子成分である請求項7〜12のいずれかに記載の試料測定装置。
【請求項14】
前記第1成分、前記第2成分および第3成分が粒子成分である請求項9に記載の試料測定装置。
【請求項15】
前記第1成分が血小板であり、前記第2成分が赤血球である請求項7〜14のいずれかに記載の試料測定装置。
【請求項16】
前記第1成分が血小板であり、前記第2成分が赤血球であり、前記第3成分が白血球である請求項9または14に記載の試料測定装置。
【請求項17】
生体試料中の成分を測定する方法であって、
生体試料中の試料種を入力する工程と、
前記生体試料と試薬とを混和して測定試料を調製する工程と、
調製された測定試料を、第1測定部および前記第1測定部とは異なる第2測定部のすくなくとも一方に供給する工程と、
入力された前記試料種に基づいて、前記測定試料を前記第1測定部と前記第2測定部のいずれの測定部に供給するかを決定する工程と、
を含む試料測定方法。
【請求項18】
生体試料中の複数成分の測定が可能であり、複数の測定部を備えた試料測定装置によって、生体試料中の成分を測定する方法であって、
生体試料中の試料種を入力する工程と、
入力された前記試料種に基づいて、第1測定部および前記第1測定部とは異なる第2測定部の少なくとも一方の測定部を用いて前記生体試料中の第1成分を測定する工程と、
を含む試料測定方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図2】
【図3】
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【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【公開番号】特開2007−271348(P2007−271348A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−94947(P2006−94947)
【出願日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(390014960)シスメックス株式会社 (810)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(390014960)シスメックス株式会社 (810)
【Fターム(参考)】
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