試験用堤防における計測方法および計測装置
【課題】実験用河川での破堤試験において計測装置を使用する際、破堤時のデータを探す作業が能率的でありデータ解析を容易なものとする。また更なる低消費電力化とメモリ使用量を節減する。
【解決手段】河川に設けた堤防を人工的に破堤させその破堤過程を記録するための試験用堤防における計測方法であって、3次元の加速度を計測し記録する防水型の計測装置を多数個用意し、この計測装置を堤防内に3次元的に配列して埋設し、この堤防を人工的に破堤させ、各計測装置の埋設点における土砂の移動状況データを記録し、流出した計測装置を回収し、これらデータを並列的に解析して堤防の破堤過程を計測し、前記計測装置は、3次元の加速度データを一時保管メモリに蓄積する工程と、この一時保管メモリのデータを日単位で記録用メモリに転送する工程とを含む。
【解決手段】河川に設けた堤防を人工的に破堤させその破堤過程を記録するための試験用堤防における計測方法であって、3次元の加速度を計測し記録する防水型の計測装置を多数個用意し、この計測装置を堤防内に3次元的に配列して埋設し、この堤防を人工的に破堤させ、各計測装置の埋設点における土砂の移動状況データを記録し、流出した計測装置を回収し、これらデータを並列的に解析して堤防の破堤過程を計測し、前記計測装置は、3次元の加速度データを一時保管メモリに蓄積する工程と、この一時保管メモリのデータを日単位で記録用メモリに転送する工程とを含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は現実の河川のスケールで堤防の破堤試験を行う際に利用できる試験用堤防における破堤メカニズムの計測方法と、この計測に使用する計測装置とに関する。
【背景技術】
【0002】
河川の破堤メカニズムを探求するためには実河川スケールでの水文観測に関する広範で多岐にわたる観測が必要である。
とりわけ洪水流の越水破堤の3次元メカニズムを解明する調査研究が重要で、堤防内部の土砂の移動を相応の解像度で3次元計測できることが理想である。
しかし、従来は適当な技術がなく本出願人らは非特許文献に示す下記の手法により研究を行った。
【0003】
実際の破堤試験を実施するに際しては十勝川千代田実験水路を用いた。この実験水路は本流から実験用河川を分岐し、この実験用河川の分岐部分に堰を設けたものである。したがってこの堰を開閉することで実験用河川に任意の水量を与えることができ、予め築堤した堤防を越水させ破壊することでデータを取得するものである。
この堤防内部に、目立つ色で色分けした防水型の加速度センサ(計測装置)を立体格子状に多数埋設し、その後越水破堤させてその過程を複数台のビデオカメラ映像で撮影するとともに、加速度センサのデータを用いて時系列で把握する。
【0004】
特に、加速度センサは破堤にともなってバラバラに流出するが、この実験から破堤箇所を3次元的に把握できるとともに、事後に回収した加速度センサのデータを解析することでその値が水面下の不可視部分の現象を的確に表し貴重なデータと成果を得た。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
島田友典他3名、「河川堤防の越水破堤機構に関する研究」、[online]、寒地技術推進室、[平成22年1月24日検索]、インターネット〈URL:www.pwri.go.jp/jpn/seika/project/2008/pdf/2008−sen−36.pdf〉
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、本実験に使用した加速度センサは汎用品のため、加速度データを日時データとともに連続的に記憶するものであり、記憶容量と電池容量の制限があった。
このため設置から実験までの期間が7日程度以内に限定され、築堤工事から現実の破堤時期を対象とする観測をするためには期間が短過ぎるという難点があった。
【0007】
つまり、実験用河川とはいえ任意の日時に破堤させることは困難であり、ある程度長期の計画で実験せざるを得ない。その場合、動作日数に制限のある加速度センサでは実際の破堤まで動作が続かないケースがあった。
したがって、実スケール実験を満たす観測を行うには、設置から観測まで期間的に余裕のある機器を開発する必要が生じた。
【0008】
さらなる問題として、加速度センサは加速度を日時データとともに連続的に記憶するものであったため、回収後の加速度センサからデータを回収する場合、すべてのデータをダウンロードした上で破堤時のデータを探す必要があった。
これではダウンロードに時間がかかるとともにデータのほとんどが静止データであることから、相対的に短い時間である破堤時のデータを探す作業は非能率的でありデータ解析にも手間がかかる原因となっていた。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記の課題を解決するため、以下のような発明の特定事項を備えている。
すなわち、河川に設けた堤防を人工的に破堤させその破堤過程を記録するための試験用堤防における計測方法として、
3次元の加速度を計測し記録する防水型の計測装置を多数個用意し、この計測装置を堤防内に3次元的に配列して埋設する。
そして、この堤防を人工的に破堤させ、各計測装置の埋設点における土砂の移動状況データを記録し、流出した計測装置を回収する。
【0010】
これら移動状況データ(3次元データ)を並列的に解析して堤防の破堤過程を計測し、前記計測装置は、3次元の加速度データを一時保管メモリに蓄積する工程と、この一時保管メモリのデータを日単位で記録用メモリに転送する工程とを含むものとする。
次に、河川に設けた堤防を人工的に破堤させその破堤過程を記録するための試験用堤防における計測装置として、
堤防内に三次元的に配列して埋設されるべき防水型の筐体内に、3次元の加速度を検知する加速度センサと、この加速度センサからの信号を記録する一時保管メモリと、この一時保管メモリ内のデータを収容する記録用メモリと、これら諸動作を統括する中央処理部とを備えたものである。
【0011】
そして、この中央処理部に、加速度センサからの信号を一定時間毎に一時保管メモリへ記録する処理ステップと、一時保管メモリ内のデータを日単位で集計して記録用メモリに書き込む処理ステップとを備えて計測装置とした。
さらに、中央処理部において一時保管メモリへ記録するにあたり、一日における記録時間を日中の8時間ないし12時間としてその時間内には記録を続行し、その他の時間には記録しないこととする。
これは破堤実験が昼間しか行われないため、夜間など記録する必要がない時間帯のデータを排除するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、3次元の加速度を計測し記録する防水型の計測装置を多数個用意し、この計測装置を堤防内に3次元的に配列して埋設し、この堤防を人工的に破堤させ、各計測装置の埋設点における土砂の移動状況データを記録し、流出した計測装置を回収し、これらデータを並列的に解析して堤防の破堤過程を計測し、前記計測装置は、3次元の加速度データを一時保管メモリに蓄積する工程と、この一時保管メモリのデータを日単位で記録用メモリに転送する工程とを含む方法としたので、この多数の記録用メモリのデータを解析することで堤防の決壊状況を三次元的に把握することができる。
【0013】
その際、一時保管メモリ内のデータを日単位で集計して記録用メモリに書き込むので、記録用メモリを常時動作させる必要がなく低い消費電力と、計測後のデータ検索が容易となる。
次に、加速度センサからの信号を記録する一時保管メモリと、この一時保管メモリ内のデータを収容する記録用メモリと、これら諸動作を統括する中央処理部とを備え、この中央処理部に、加速度センサからの信号を一定時間毎に一時保管メモリへ記録する処理ステップと、一時保管メモリ内のデータを日単位で集計して記録用メモリに書き込む処理ステップとを備えたので、事後にデータを解析する場合には決壊した日のデータをすぐに見ることができ解析作業を能率的におこなうことができる。
【0014】
さらに、中央処理部において記録用メモリへ記録するにあたり、一日における記録時間を日中の8時間ないし12時間としてその時間内には記録を続行し、その他の時間には記録しない構成を採れば、消費電力とメモリ使用量を少なくとも半減することができ長期の計測が可能となる。
このため、試験の日程に余裕ができ理想的な試験を実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る試験用堤防における計測装置のブロック図である。
【図2】本発明に係る試験用堤防における計測装置の外観を示す斜視図ある。
【図3】本発明に係る試験用堤防における計測装置のフローチャート図である。
【図4】本発明に係る試験用堤防における計測装置のメモリ動作を示す説明図である。
【図5】本発明に係る試験用堤防における計測装置のメモリ動作を説明するための比較図である。
【図6】本発明に係る試験用堤防における計測装置の作動間隔を示す図である。
【図7】本発明に係る試験用堤防における破堤計測方法を示す堤防の断面図である。
【図8】本発明に係る試験用堤防における破堤計測方法を説明するための河川の断面図である。
【図9】本発明に係る試験用堤防における破堤計測方法を説明するための河川の断面図である。
【図10】本発明に係る試験用堤防における計測装置から得られた3次元データグラフ図である
【図11】本発明に係る試験用堤防における破堤計測方法を説明するための河川の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明をより詳細に記述するために、添付の図面に示す実施例について説明する。
【実施例1】
【0017】
図1及び図2は本発明に係る試験用堤防における計測装置を示す。
計測装置1の外観は図2に示すように、塩化ビニール製の有底筒1aに蓋1bが着脱自在に取り付けられる構造になっている。本装置は堤防内に埋設されて土砂とともに流されるものであるため堅牢であり防水性にも優れている。
計測装置1の内部には電子基盤2が設けられている。電子基盤2には図1に示すように加速度センサ3がインターフェイス4を介して中央制御部5に接続され、中央制御部5には一時保管メモリ6と記録用メモリ7がそれぞれ接続されている。また、電源8が取り付けられている。
【0018】
加速度センサ3はXYZ軸の3次元の加速度を検出するものであり、そのデータはインターフェイス4でデジタル化されて一時保管メモリ6に収容される。この一時保管メモリ6は中央制御部5の内部メモリであってもよいし外付け型であってもよい。また、記録用メモリ7としては小型で着脱可能なフラッシュメモリ例えばマイクロSDカードなどが適する。電源8はリチウム電池など温度特性が良好で容積当たりの容量が大きいものが適する。
【0019】
この計測装置1の基本動作を図3ないし図6により説明する。
なお、次の動作は中央制御部5のハードウエアとソフトウエアによって実現されている。まず、スタート100から加速度センサ3からの信号を一時保管メモリ6に取り込むステップ101に移行する。続いて日単位で予め設定された時刻になったか否かを判断するステップ102に移行する。このステップ102は毎日決まった時間に一時保管メモリ6の一日分のデータを記録用メモリ7に書き込むタイミングを決定するものである。したがって、ステップ102の否定枝Nはステップ101へのループを形成してデータの一時保管メモリ6への収集を継続させる。
【0020】
ステップ102において設定時刻になると一時保管メモリ6の一日分のデータを記録用メモリ7に書き込むステップ103に移行する。このように記録用メモリ7には一日単位で集計されたデータが蓄積され、電源8が続く限りこの動作が行われる。実験では電源8にカメラ用電池CR123Aを2本使用した装置で2ヶ月程度の動作が可能だった。
なお、電池の寿命を温存するため計測の期間を予め決めておくことができる。この場合はステップ104により所定日数が経過したか否かの判断を行い否定枝Nはデータ収集の続行、肯定枝はステップ105に移行して計測動作を終了させることができる。
【0021】
このように記録用メモリ7には第4図に示すような1日単位に集計されたデータが蓄積されることになる。これを図5に示すように、計測データに日時データを付加して収容する方式に比較して考察する。破堤時のデータが16日目に得られたとすると、本発明の装置では図4の16日目に収容されたデータを参照することで迅速に破堤時のデータを探すことができる。
【0022】
一方、図5に示すものでは最初から連続的にデータが蓄積されるため、特定の日にちの検索が困難である。
なお、本発明では計測当日のデータは一時保管メモリ6に存在するため1日未満の実験でも一時保管メモリ6のデータを読み出すことで実験結果を得ることができる。また、記録用メモリ7へのデータ転送は日に1回だけであるため消費電力を節約できるとともに、記録用メモリ7の寿命を延ばす効果もある。
【実施例2】
【0023】
実施例2は1日のうちで本装置が作動する時間を制限して電力消費とメモリ使用量を更に節減したものである。
これを図6に基づいて説明すると、中央処理部5において一時保管メモリ6へ記録する時間を短縮するものである。すなわち、一日における記録時間を日中の8時間ないし12時間としてその時間内には記録を続行し、その他の時間には記録しないよう動作させる。
【0024】
日中の8時間とは例えば8時から16時の間であり、図6に示すように各日においてその時間帯だけ記録し、その他の時間を停止(スリープ)させる。また計測時もデータ収集間隔を1秒に設定しこの間隔で一時保管メモリ6へ記録する。そして、当日のデータ収集最終時(測定停止時刻)に一時保管メモリ6のデータを記録用メモリ7へ転送する。
このような構成とすることで電源とメモリの消費量を飛躍的に向上させることができた。
【0025】
以上のように構成された本装置はXYZ軸の3次元の加速度を検知してこれを記録することができる。したがって本装置をゆっくりゆらすと正弦波のような波形が、また衝撃を与えると鋭い波形が記録されることとなる。
図10は計測された加速度の波形であり、上がX軸とY軸のデータ、下がZ軸のデータをそれぞれ示している。なお、表示方法については任意であり3つのデータを同一軸上に表示してもよいのは勿論である。
【実施例3】
【0026】
次に本装置を利用した試験用堤防における破堤計測方法について図7ないし図11に基づいて説明する。
本方法は図11に示す北海道十勝川千代田実験水路22において試験したもので、この実験水路は本流から実験用河川21を分岐し、この実験用河川21の分岐部分に堰23を設けたものである。したがってこの堰23を開閉することで実験用河川21に任意の水量を与えることができ、予め築堤した堤防20を越水させ破壊することでデータを取得するものである。
堰23を閉じた後、図7の堤防20の断面で示すように、堤防20内部に記号(A1〜A6,B1〜B8,C1〜C10)などとともに色分けした計測装置1を立体格子状に多数埋設する。
【0027】
その後堰23を開放すると(図8)所定の日数経過後堤防20は図9に示すように越水破堤される。この過程は複数台のビデオカメラで撮影されており、流された計測装置1の軌跡も記録される。
そのデータは図10に示すように破堤の際の個々の計測装置1の加速度を示している。このデータをコンピュータで解析する際には、回収した多数の計測装置1を仮想立体空間上で元の配列(A1〜A6,B1〜B8,C1〜C10)に並べることで現実の破堤を3次元動画として表示させることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
【符号の説明】
【0029】
1 計測装置
2 電子基盤
3 加速度センサ
4 インターフェイス
5 中央制御部
6 一時保管メモリ
8 記録用メモリ
9 電源
20 堤防
21 実験用河川
23 堰
【技術分野】
【0001】
本発明は現実の河川のスケールで堤防の破堤試験を行う際に利用できる試験用堤防における破堤メカニズムの計測方法と、この計測に使用する計測装置とに関する。
【背景技術】
【0002】
河川の破堤メカニズムを探求するためには実河川スケールでの水文観測に関する広範で多岐にわたる観測が必要である。
とりわけ洪水流の越水破堤の3次元メカニズムを解明する調査研究が重要で、堤防内部の土砂の移動を相応の解像度で3次元計測できることが理想である。
しかし、従来は適当な技術がなく本出願人らは非特許文献に示す下記の手法により研究を行った。
【0003】
実際の破堤試験を実施するに際しては十勝川千代田実験水路を用いた。この実験水路は本流から実験用河川を分岐し、この実験用河川の分岐部分に堰を設けたものである。したがってこの堰を開閉することで実験用河川に任意の水量を与えることができ、予め築堤した堤防を越水させ破壊することでデータを取得するものである。
この堤防内部に、目立つ色で色分けした防水型の加速度センサ(計測装置)を立体格子状に多数埋設し、その後越水破堤させてその過程を複数台のビデオカメラ映像で撮影するとともに、加速度センサのデータを用いて時系列で把握する。
【0004】
特に、加速度センサは破堤にともなってバラバラに流出するが、この実験から破堤箇所を3次元的に把握できるとともに、事後に回収した加速度センサのデータを解析することでその値が水面下の不可視部分の現象を的確に表し貴重なデータと成果を得た。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
島田友典他3名、「河川堤防の越水破堤機構に関する研究」、[online]、寒地技術推進室、[平成22年1月24日検索]、インターネット〈URL:www.pwri.go.jp/jpn/seika/project/2008/pdf/2008−sen−36.pdf〉
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、本実験に使用した加速度センサは汎用品のため、加速度データを日時データとともに連続的に記憶するものであり、記憶容量と電池容量の制限があった。
このため設置から実験までの期間が7日程度以内に限定され、築堤工事から現実の破堤時期を対象とする観測をするためには期間が短過ぎるという難点があった。
【0007】
つまり、実験用河川とはいえ任意の日時に破堤させることは困難であり、ある程度長期の計画で実験せざるを得ない。その場合、動作日数に制限のある加速度センサでは実際の破堤まで動作が続かないケースがあった。
したがって、実スケール実験を満たす観測を行うには、設置から観測まで期間的に余裕のある機器を開発する必要が生じた。
【0008】
さらなる問題として、加速度センサは加速度を日時データとともに連続的に記憶するものであったため、回収後の加速度センサからデータを回収する場合、すべてのデータをダウンロードした上で破堤時のデータを探す必要があった。
これではダウンロードに時間がかかるとともにデータのほとんどが静止データであることから、相対的に短い時間である破堤時のデータを探す作業は非能率的でありデータ解析にも手間がかかる原因となっていた。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記の課題を解決するため、以下のような発明の特定事項を備えている。
すなわち、河川に設けた堤防を人工的に破堤させその破堤過程を記録するための試験用堤防における計測方法として、
3次元の加速度を計測し記録する防水型の計測装置を多数個用意し、この計測装置を堤防内に3次元的に配列して埋設する。
そして、この堤防を人工的に破堤させ、各計測装置の埋設点における土砂の移動状況データを記録し、流出した計測装置を回収する。
【0010】
これら移動状況データ(3次元データ)を並列的に解析して堤防の破堤過程を計測し、前記計測装置は、3次元の加速度データを一時保管メモリに蓄積する工程と、この一時保管メモリのデータを日単位で記録用メモリに転送する工程とを含むものとする。
次に、河川に設けた堤防を人工的に破堤させその破堤過程を記録するための試験用堤防における計測装置として、
堤防内に三次元的に配列して埋設されるべき防水型の筐体内に、3次元の加速度を検知する加速度センサと、この加速度センサからの信号を記録する一時保管メモリと、この一時保管メモリ内のデータを収容する記録用メモリと、これら諸動作を統括する中央処理部とを備えたものである。
【0011】
そして、この中央処理部に、加速度センサからの信号を一定時間毎に一時保管メモリへ記録する処理ステップと、一時保管メモリ内のデータを日単位で集計して記録用メモリに書き込む処理ステップとを備えて計測装置とした。
さらに、中央処理部において一時保管メモリへ記録するにあたり、一日における記録時間を日中の8時間ないし12時間としてその時間内には記録を続行し、その他の時間には記録しないこととする。
これは破堤実験が昼間しか行われないため、夜間など記録する必要がない時間帯のデータを排除するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、3次元の加速度を計測し記録する防水型の計測装置を多数個用意し、この計測装置を堤防内に3次元的に配列して埋設し、この堤防を人工的に破堤させ、各計測装置の埋設点における土砂の移動状況データを記録し、流出した計測装置を回収し、これらデータを並列的に解析して堤防の破堤過程を計測し、前記計測装置は、3次元の加速度データを一時保管メモリに蓄積する工程と、この一時保管メモリのデータを日単位で記録用メモリに転送する工程とを含む方法としたので、この多数の記録用メモリのデータを解析することで堤防の決壊状況を三次元的に把握することができる。
【0013】
その際、一時保管メモリ内のデータを日単位で集計して記録用メモリに書き込むので、記録用メモリを常時動作させる必要がなく低い消費電力と、計測後のデータ検索が容易となる。
次に、加速度センサからの信号を記録する一時保管メモリと、この一時保管メモリ内のデータを収容する記録用メモリと、これら諸動作を統括する中央処理部とを備え、この中央処理部に、加速度センサからの信号を一定時間毎に一時保管メモリへ記録する処理ステップと、一時保管メモリ内のデータを日単位で集計して記録用メモリに書き込む処理ステップとを備えたので、事後にデータを解析する場合には決壊した日のデータをすぐに見ることができ解析作業を能率的におこなうことができる。
【0014】
さらに、中央処理部において記録用メモリへ記録するにあたり、一日における記録時間を日中の8時間ないし12時間としてその時間内には記録を続行し、その他の時間には記録しない構成を採れば、消費電力とメモリ使用量を少なくとも半減することができ長期の計測が可能となる。
このため、試験の日程に余裕ができ理想的な試験を実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る試験用堤防における計測装置のブロック図である。
【図2】本発明に係る試験用堤防における計測装置の外観を示す斜視図ある。
【図3】本発明に係る試験用堤防における計測装置のフローチャート図である。
【図4】本発明に係る試験用堤防における計測装置のメモリ動作を示す説明図である。
【図5】本発明に係る試験用堤防における計測装置のメモリ動作を説明するための比較図である。
【図6】本発明に係る試験用堤防における計測装置の作動間隔を示す図である。
【図7】本発明に係る試験用堤防における破堤計測方法を示す堤防の断面図である。
【図8】本発明に係る試験用堤防における破堤計測方法を説明するための河川の断面図である。
【図9】本発明に係る試験用堤防における破堤計測方法を説明するための河川の断面図である。
【図10】本発明に係る試験用堤防における計測装置から得られた3次元データグラフ図である
【図11】本発明に係る試験用堤防における破堤計測方法を説明するための河川の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明をより詳細に記述するために、添付の図面に示す実施例について説明する。
【実施例1】
【0017】
図1及び図2は本発明に係る試験用堤防における計測装置を示す。
計測装置1の外観は図2に示すように、塩化ビニール製の有底筒1aに蓋1bが着脱自在に取り付けられる構造になっている。本装置は堤防内に埋設されて土砂とともに流されるものであるため堅牢であり防水性にも優れている。
計測装置1の内部には電子基盤2が設けられている。電子基盤2には図1に示すように加速度センサ3がインターフェイス4を介して中央制御部5に接続され、中央制御部5には一時保管メモリ6と記録用メモリ7がそれぞれ接続されている。また、電源8が取り付けられている。
【0018】
加速度センサ3はXYZ軸の3次元の加速度を検出するものであり、そのデータはインターフェイス4でデジタル化されて一時保管メモリ6に収容される。この一時保管メモリ6は中央制御部5の内部メモリであってもよいし外付け型であってもよい。また、記録用メモリ7としては小型で着脱可能なフラッシュメモリ例えばマイクロSDカードなどが適する。電源8はリチウム電池など温度特性が良好で容積当たりの容量が大きいものが適する。
【0019】
この計測装置1の基本動作を図3ないし図6により説明する。
なお、次の動作は中央制御部5のハードウエアとソフトウエアによって実現されている。まず、スタート100から加速度センサ3からの信号を一時保管メモリ6に取り込むステップ101に移行する。続いて日単位で予め設定された時刻になったか否かを判断するステップ102に移行する。このステップ102は毎日決まった時間に一時保管メモリ6の一日分のデータを記録用メモリ7に書き込むタイミングを決定するものである。したがって、ステップ102の否定枝Nはステップ101へのループを形成してデータの一時保管メモリ6への収集を継続させる。
【0020】
ステップ102において設定時刻になると一時保管メモリ6の一日分のデータを記録用メモリ7に書き込むステップ103に移行する。このように記録用メモリ7には一日単位で集計されたデータが蓄積され、電源8が続く限りこの動作が行われる。実験では電源8にカメラ用電池CR123Aを2本使用した装置で2ヶ月程度の動作が可能だった。
なお、電池の寿命を温存するため計測の期間を予め決めておくことができる。この場合はステップ104により所定日数が経過したか否かの判断を行い否定枝Nはデータ収集の続行、肯定枝はステップ105に移行して計測動作を終了させることができる。
【0021】
このように記録用メモリ7には第4図に示すような1日単位に集計されたデータが蓄積されることになる。これを図5に示すように、計測データに日時データを付加して収容する方式に比較して考察する。破堤時のデータが16日目に得られたとすると、本発明の装置では図4の16日目に収容されたデータを参照することで迅速に破堤時のデータを探すことができる。
【0022】
一方、図5に示すものでは最初から連続的にデータが蓄積されるため、特定の日にちの検索が困難である。
なお、本発明では計測当日のデータは一時保管メモリ6に存在するため1日未満の実験でも一時保管メモリ6のデータを読み出すことで実験結果を得ることができる。また、記録用メモリ7へのデータ転送は日に1回だけであるため消費電力を節約できるとともに、記録用メモリ7の寿命を延ばす効果もある。
【実施例2】
【0023】
実施例2は1日のうちで本装置が作動する時間を制限して電力消費とメモリ使用量を更に節減したものである。
これを図6に基づいて説明すると、中央処理部5において一時保管メモリ6へ記録する時間を短縮するものである。すなわち、一日における記録時間を日中の8時間ないし12時間としてその時間内には記録を続行し、その他の時間には記録しないよう動作させる。
【0024】
日中の8時間とは例えば8時から16時の間であり、図6に示すように各日においてその時間帯だけ記録し、その他の時間を停止(スリープ)させる。また計測時もデータ収集間隔を1秒に設定しこの間隔で一時保管メモリ6へ記録する。そして、当日のデータ収集最終時(測定停止時刻)に一時保管メモリ6のデータを記録用メモリ7へ転送する。
このような構成とすることで電源とメモリの消費量を飛躍的に向上させることができた。
【0025】
以上のように構成された本装置はXYZ軸の3次元の加速度を検知してこれを記録することができる。したがって本装置をゆっくりゆらすと正弦波のような波形が、また衝撃を与えると鋭い波形が記録されることとなる。
図10は計測された加速度の波形であり、上がX軸とY軸のデータ、下がZ軸のデータをそれぞれ示している。なお、表示方法については任意であり3つのデータを同一軸上に表示してもよいのは勿論である。
【実施例3】
【0026】
次に本装置を利用した試験用堤防における破堤計測方法について図7ないし図11に基づいて説明する。
本方法は図11に示す北海道十勝川千代田実験水路22において試験したもので、この実験水路は本流から実験用河川21を分岐し、この実験用河川21の分岐部分に堰23を設けたものである。したがってこの堰23を開閉することで実験用河川21に任意の水量を与えることができ、予め築堤した堤防20を越水させ破壊することでデータを取得するものである。
堰23を閉じた後、図7の堤防20の断面で示すように、堤防20内部に記号(A1〜A6,B1〜B8,C1〜C10)などとともに色分けした計測装置1を立体格子状に多数埋設する。
【0027】
その後堰23を開放すると(図8)所定の日数経過後堤防20は図9に示すように越水破堤される。この過程は複数台のビデオカメラで撮影されており、流された計測装置1の軌跡も記録される。
そのデータは図10に示すように破堤の際の個々の計測装置1の加速度を示している。このデータをコンピュータで解析する際には、回収した多数の計測装置1を仮想立体空間上で元の配列(A1〜A6,B1〜B8,C1〜C10)に並べることで現実の破堤を3次元動画として表示させることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
【符号の説明】
【0029】
1 計測装置
2 電子基盤
3 加速度センサ
4 インターフェイス
5 中央制御部
6 一時保管メモリ
8 記録用メモリ
9 電源
20 堤防
21 実験用河川
23 堰
【特許請求の範囲】
【請求項1】
河川に設けた堤防を人工的に破堤させその破堤過程を記録するための試験用堤防における計測方法であって、3次元の加速度を計測し記録する防水型の計測装置を多数個用意し、この計測装置を堤防内に3次元的に配列して埋設し、この堤防を人工的に破堤させ、各計測装置の埋設点における土砂の移動状況データを記録し、流出した計測装置を回収し、これらデータを並列的に解析して堤防の破堤過程を計測し、前記計測装置は、3次元の加速度データを一時保管メモリに蓄積する工程と、この一時保管メモリのデータを日単位で記録用メモリに転送する工程とを含むことを特徴とする試験用堤防における破堤計測方法
【請求項2】
河川に設けた堤防を人工的に破堤させその破堤過程を記録するための試験用堤防における計測装置であって、堤防内に三次元的に配列して埋設すべき防水型の筐体内に、3次元の加速度を検知する加速度センサと、この加速度センサからの信号を記録する一時保管メモリと、この一時保管メモリ内のデータを収容する記録用メモリと、これら諸動作を統括する中央処理部とを備え、この中央処理部に、加速度センサからの信号を一定時間毎に一時保管メモリへ記録する処理ステップと、一時保管メモリ内のデータを日単位で集計して記録用メモリに書き込む処理ステップとを備えたことを特徴とする試験用堤防における計測装置
【請求項3】
中央処理部において一時保管メモリへ記録するにあたり、一日における記録時間を日中の8時間ないし12時間としてその時間内には記録を続行し、その他の時間には記録しない処理を含むことを特徴とする請求項2に記載の試験用堤防における計測装置
【請求項1】
河川に設けた堤防を人工的に破堤させその破堤過程を記録するための試験用堤防における計測方法であって、3次元の加速度を計測し記録する防水型の計測装置を多数個用意し、この計測装置を堤防内に3次元的に配列して埋設し、この堤防を人工的に破堤させ、各計測装置の埋設点における土砂の移動状況データを記録し、流出した計測装置を回収し、これらデータを並列的に解析して堤防の破堤過程を計測し、前記計測装置は、3次元の加速度データを一時保管メモリに蓄積する工程と、この一時保管メモリのデータを日単位で記録用メモリに転送する工程とを含むことを特徴とする試験用堤防における破堤計測方法
【請求項2】
河川に設けた堤防を人工的に破堤させその破堤過程を記録するための試験用堤防における計測装置であって、堤防内に三次元的に配列して埋設すべき防水型の筐体内に、3次元の加速度を検知する加速度センサと、この加速度センサからの信号を記録する一時保管メモリと、この一時保管メモリ内のデータを収容する記録用メモリと、これら諸動作を統括する中央処理部とを備え、この中央処理部に、加速度センサからの信号を一定時間毎に一時保管メモリへ記録する処理ステップと、一時保管メモリ内のデータを日単位で集計して記録用メモリに書き込む処理ステップとを備えたことを特徴とする試験用堤防における計測装置
【請求項3】
中央処理部において一時保管メモリへ記録するにあたり、一日における記録時間を日中の8時間ないし12時間としてその時間内には記録を続行し、その他の時間には記録しない処理を含むことを特徴とする請求項2に記載の試験用堤防における計測装置
【図1】
【図3】
【図2】
【図4】
【図5】
【図7】
【図8】
【図9】
【図6】
【図10】
【図11】
【図3】
【図2】
【図4】
【図5】
【図7】
【図8】
【図9】
【図6】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−227031(P2011−227031A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−111509(P2010−111509)
【出願日】平成22年4月21日(2010.4.21)
【出願人】(510128797)株式会社環器 (1)
【出願人】(510133229)北海道フィールドサポート株式会社 (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月21日(2010.4.21)
【出願人】(510128797)株式会社環器 (1)
【出願人】(510133229)北海道フィールドサポート株式会社 (1)
【Fターム(参考)】
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