説明

認知能力の正常応答の低下予防、改善又は向上作用を有する組成物

【課題】 認知能力の正常応答の低下を予防、改善又は向上させることができる、医薬、さらには食品への適応に優れた副作用の少ない化合物を得ること。
【解決手段】 アラキドン酸及び/又はアラキドン酸を構成脂肪酸とする化合物を用いること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アラキドン酸及び/又はアラキドン酸を構成脂肪酸とする化合物を有効成分とする、認知能力の正常応答の低下予防、改善又は向上作用を有する飲食品及びその製造方法を提供しようとするものである。より詳細には、アラキドン酸、アラキドン酸のアルコールエステル並びに構成脂肪酸の一部又は全部がアラキドン酸であるトリグリセリド、リン脂質及び糖脂質の群から選ばれた少なくとも1種を有効成分とする認知能力、意識レベル及び/又は聴覚刺激、視覚刺激、嗅覚刺激、味覚刺激、痛覚刺激からなる群から選ばれる事象の分別能力の正常応答の低下予防、改善又は向上作用を有する飲食品及びその製造方法を提供しようとするものである。
【背景技術】
【0002】
認知とは、外界から情報を抽出し、それが何なのかをはっきりさせることで、具体的には、視覚、聴覚、臭覚、味覚、痛覚などの外界刺激を、感覚器官を介して脳へ伝達して、複数の脳部位の協調的な働きにより処理され精細化することを意味する。そして、認知能力とは、情報処理速度(外界刺激の伝達速度)と情報処理資源量(外界刺激に対する集中力)の二つの要因から成り立っており、本発明である認知能力の正常応答の低下予防、改善又は向上作用というのは、結果として、注意、記憶、知覚、言語、計算などの正常機能の低下予防、改善又は向上作用を意味することであり、機能低下の改善とは独立していると考える。
【0003】
認知機能低下に対しては、種々の治療薬が研究・開発されている。しかしながら、認知能力の正常応答の低下予防、改善又は向上させる化合物については、残念ながら有効な化合物が見出されていないのが現状である。つまり、認知機能障害を判定し、改善効果を評価する方法は既知であるが(例えば、非特許文献1参照)などを挙げることができるが、これらの方法では、正常応答の低下予防、改善又は向上を評価することは出来ない。そこで、客観的に認知能力の正常応答の低下予防、改善又は向上を目的に薬剤を開発・研究するためには、認知能力の正常応答を客観的に評価する有効手段が必要であった。
【0004】
最近、認知能力を客観的に反映する生理学的指標として事象関連電位に注目が集まっている。ヒトの頭皮上につけられた電極からは、脳細胞が示すさまざまな電気活動が記録できる。一般に知られているのが脳波で、覚醒レベルによって変化するような持続的な電気活動を示す。これとは別に、何らかの(特定可能な)事項(事象)に関連して変化する一過性の微小な活動電位が存在する。現在、このような電位変化は「事象関連電位」と呼ばれ、感覚刺激に誘発される電位と理解されている。この事象関連電位は0.1μV〜数10μV程度の微小な電位変化であり、一連の陽性波と陰性波で構成される。この一連の電位変化の中で、刺激事象に対して300 msec付近に現れる陽性波が認知機能と関連してP300と呼ばれている。刺激事象に対してP300が出現するまでの時間を潜時と呼び、情報処理速度(外界刺激の伝達速度)を表し、ベースラインからのピークの高さを、振幅と呼び、情報処理資源量(外界刺激に対する集中力)を表すとされている(例えば、非特許文献2参照)。したがって、事象関連電位を測定することでヒトの認知応答を客観的に測定することができるようになった。
【0005】
外界刺激は、感覚器官を介して脳へ伝達されるが、脳は脂質の塊のような組織であって、例えば、白質においては1/3が、灰白質においては1/4がリン脂質に占められている。脳の各種細胞膜を構成しているリン脂質中の高度不飽和脂肪酸は、アラキドン酸とドコサヘキサエン酸が主であることからこれらの高度不飽和脂肪酸が学習記憶能力の向上、老人性痴呆症の予防回復に何らかの役割を果たしているの可能性がある。しかし、これらアラキドン酸とドコサヘキサエン酸は動物体内ではde novo合成できず、直接あるいは間接的(アラキドン酸の前駆体となるリノール酸、ドコサヘキサエン酸の前駆体となるα-リノレン酸)に食事から摂取する必要がある。そこで、アラキドン酸及びドコサヘキサエン酸を外部から与えることによる学習記憶能力の向上、老人性痴呆症の予防回復効果に注目が集っている。ドコサヘキサエン酸については、魚油という豊富な供給源が存在することから、脳機能改善に関する種々の研究がなされ、学習能力増強剤、記憶力増強剤、痴呆予防剤、痴呆治療剤、抗痴呆薬または脳機能改善効果を有する機能性食品等の発明が公開されている(例えば、特許文献1、2、3参照)。そして、アラキドン酸及び/又はアラキドン酸を構成脂肪酸とする化合物については、最近、本発明者は、特許出願「脳機能の低下に起因する症状あるいは疾患の予防又は改善作用を有する組成物」(特願2001-235519号、特開2003-048831)において、加齢動物をモリス型水迷路試験に供して、アラキドン酸及び/又はアラキドン酸を構成脂肪酸とする化合物を投与することにより、加齢に伴う学習能の低下が改善されることを明らかにした。しかし、この発明では脳機能の低下が必要条件であって、認知能力の正常応答に及ぼす影響については何ら示されていない。
【0006】
現在、いくつかの化合物で認知応答の改善効果を、事象関連電位を使って明らかにする試みがさなれている。宮永和夫は脳機能に及ぼすDHAの薬理作用について、正常者26名を対象に、2400mgのDHAを含有するカプセルを経口的に服用させ、服用前と服用2時間後に事象関連電位を測定して、P300の潜時が有意に短縮し、振幅も有意に高くなることを見出している(非特許文献3参照)。しかし、擬似サンプルとの比較結果ではなく、血中DHA濃度とP300の結果に相関が認められていない。さらに、正常老人97名を対象に、900mgのDHAを含有するカプセルを6ヶ月間、毎日服用させた長期投与試験では、P300に何ら変化がなく、DHAの有効性を示すには全く不十分な内容であった。
【0007】
このように、ドコサヘキサエン酸が学習能力改善効果を示すとされながら、認知能力の指標である事象関連電位で有効な結果を示さなかったことからも、アラキドン酸及び/又はアラキドン酸を構成脂肪酸とする化合物が認知能力の正常応答の低下予防、改善又は向上に有効かどうかは全く明らかではなかった。
【0008】
【非特許文献1】西村恒彦、武田雅俊編「アルツハイマー型痴呆の画像診断」p.27-36、株式会社メジカルビュー社(2001年2月10)
【非特許文献2】三田村茂編「カレントセラピー(Current Therapy)」Vol.18 No.4 p.618-621 株式会社ライフメデイコム(2000)
【非特許文献3】宮永和夫著「食の科学」p.84-96、株式会社光琳(1999)
【特許文献1】特開平7-82146号公報
【特許文献2】特開平5-117147号公報
【特許文献3】特開平2-49723号公報
【非特許文献4】「アラキドン酸の増大:カンジダ・シリンドラセア リパーゼを用いるモルテォエレラ属の単細胞油の選択的加水分解(Enhancement of Archidonic: Selective Hydrolysis of a Single-Cell Oil from Mortierella with Candida cylindracea Lipase)」、ジャーナル オブ アメリカン オイル ケミカル ソサイティー(J. Am. Oil Chem. Soc.)、72、p.1323-1327, AOCS Press (1998)
【非特許文献5】日本脂質栄養学会編集委員会編「脂質栄養学」4、p.73-82(1995)ISSN 1343-4594 CODEN:SHEIFG
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、認知能力を示す情報処理速度(外界刺激の伝達速度)と情報処理資源量(外界刺激に対する集中力)の二つの要因の、正常応答の低下を予防、改善又は向上させ、医薬、さらには食品への適応に優れた副作用の少ない化合物の開発が強く望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
従って本発明は、アラキドン酸及び/又はアラキドン酸を構成脂肪酸とする化合物を有効成分とする、認知能力の正常応答の低下予防、改善又は向上作用を有する飲食品及びその製造方法を提供するものである。より詳細には、アラキドン酸、アラキドン酸のアルコールエステル並びに構成脂肪酸の一部又は全部がアラキドン酸であるトリグリセリド、リン脂質及び糖脂質の群から選ばれた少なくとも1種を有効成分とする認知能力、意識レベル及び/又は事象(聴覚刺激、視覚刺激、嗅覚刺激、味覚刺激、痛覚刺激)の分別能力の正常応答の低下予防、改善又は向上作用を有する飲食品及びその製造方法を提供する。
【0011】
本発明者等は、アラキドン酸及び/又はアラキドン酸を構成脂肪酸とする化合物の、認知能力の正常応答の低下予防、改善又は向上作用を明らかにする目的で鋭意研究した結果、驚くべきことに、事象関連電位を指標に評価することで、アラキドン酸及び/又はアラキドン酸を構成脂肪酸とする化合物の効果をヒトで明らかにした。
【0012】
さらに、本発明等は、アラキドン酸を10重量%以上含有するトリグリセリドの微生物による工業生産に成功し、本発明の効果試験に供することが可能となり、該トリグリセリドの効果を明らかにした。
さらに、本発明者等は、酵素法により1,3-位に中鎖脂肪酸が、2-位にアラキドン酸が結合したトリグリセリドを含む油脂を製造することに成功し、本発明の効果試験に供することが可能となり、該トリグリセリドの効果を明らかにした。
【0013】
従って本発明は、アラキドン酸及び/又はアラキドン酸を構成脂肪酸とする化合物を有効成分とする、認知能力の正常応答の低下予防、改善又は向上、並びに認知能力の正常応答の低下予防、改善又は向上作用を有する飲食品及びその製造法を提供する。より詳細には、アラキドン酸、アラキドン酸のアルコールエステル並びに構成脂肪酸の一部又は全部がアラキドン酸であるトリグリセリド、リン脂質及び糖脂質の群から選ばれた少なくとも1種を有効成分とする認知能力、意識レベル及び/又は事象(聴覚刺激、視覚刺激、嗅覚刺激、味覚刺激、痛覚刺激)の分別能力の正常応答の低下予防、改善又は向上作用を有する飲食品及びその製造方法を提供する。
【0014】
本発明により、アラキドン酸及び/又はアラキドン酸を構成脂肪酸とする化合物を有効成分とする、認知能力の正常応答の低下予防、改善又は向上、並びに認知能力の正常応答の低下予防、改善又は向上作用を有する飲食品及びその製造方法を提供することができ、現代社会の人類において特に有用である。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、認知能力を示す情報処理速度(外界刺激の伝達速度)と情報処理資源量(外界刺激に対する集中力)の二つの要因の、正常応答の低下を予防、改善又は向上させることができる、医薬、さらには食品への適応に優れた副作用の少ない化合物を得ることができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明は、アラキドン酸及び/又はアラキドン酸を構成脂肪酸とする化合物を有効成分とする、認知能力の正常応答の低下予防、改善又は向上、並びに認知能力の正常応答の低下予防、改善又は向上作用を有する飲食品及びその製造方法に関するものである。
【0017】
本発明の組成物は、認知能力の正常応答の低下予防、改善又は向上作用を有し、別の表現として、意識レベルの正常応答の低下予防、改善又は向上作用を有し、事象(聴覚刺激、視覚刺激、嗅覚刺激、味覚刺激、痛覚刺激)の分別能力の正常応答の低下予防、改善又は向上作用を有し、飲食品、医薬品、医薬部外品などとして有効となる。また、認知能力の正常応答の低下予防、改善又は向上作用は、注意、記憶、知覚、言語、計算などの正常機能の低下予防、改善又は向上作用を目的とした飲食品、医薬品、医薬部外品、さらには、集中力の維持・向上、注意力の維持、頭をすっきりさせること、頭が冴えわたること、若返りなどを目的とした飲食品、健康食品、機能性食品、特定保健用食品、乳幼児用食品、老人用食品などとして有効である。
【0018】
本発明の有効成分としては遊離のアラキドン酸の他に、アラキドン酸を構成脂肪酸とするすべての化合物も利用することができる。アラキドン酸を構成脂肪酸とする化合物には、アラキドン酸塩、例えばカルシウム塩、ナトリウム塩などを挙げることができる、また、アラキドン酸のアルコールエステル、例えばアラキドン酸メチルエステル、アラキドン酸エチルエステルなどを挙げることができる。また、構成脂肪酸の一部又は全部がアラキドン酸であるトリグリセリド、ジグリセリド、モノグリセリド、リン脂質、さらには糖脂質などを利用することができる。
【0019】
食品への適応を考えた場合には、アラキドン酸はトリグリセリドやリン脂質の形態、特にトリグリセリドの形態にすることが望ましい。アラキドン酸を含有するトリグリセリド(構成脂肪酸の一部又は全部がアラキドン酸であるトリグリセリドを含有するトリグリセリドと同義)の天然界の給源はほとんど存在していなかったが、本発明者等によりアラキドン酸を構成脂肪酸として含有するトリグリセリドを工業的に利用することが可能となり、ヒトに長期摂取してもらい、認知能力を客観的に評価することができる事象関連電位を解析することにより、本発明の有効成分の効果をヒトで初めて明らかにし、認知能力の正常応答の低下予防、改善又は向上作用を有することを明確にした。
【0020】
従って本発明においては、本発明の有効成分である構成脂肪酸の一部又は全部がアラキドン酸であるトリグリセリドを含有するトリグリセリド(アラキドン酸を含有するトリグリセリド)を使用することができる。アラキドン酸を含有するトリグリセリドとしては、トリグリセリドを構成する全脂肪酸のうちアラキドン酸の割合が20重量(W/W)%以上、好ましくは30重量%以上、より好ましくは40重量%以上である油脂(トリグリセリド)が食品に適用する場合には望ましい形態となる。したがって、本発明において、アラキドン酸を含有する油脂(トリグリセリド)を生産する能力を有する微生物を培養して得られたものであればすべて使用することができる。
【0021】
アラキドン酸を含有する油脂(トリグリセリド)の生産能を有する微生物としては、モルティエレラ(Mortierella)属、コニディオボラス(Conidiobolus)属、フィチウム(Pythium)属、フィトフトラ(Phytophthora)属、ペニシリューム(Penicillium)属、クロドスポリューム(Cladosporium)属、ムコール(Mucor)属、フザリューム(Fusarium)属、アスペルギルス(Aspergillus)属、ロードトルラ(Rhodotorula)属、エントモフトラ(Entomophthora)属、エキノスポランジウム(Echinosporangium)属、サプロレグニア(Saprolegnia)属に属する微生物を挙げることができる。モルティエレラ(Mortierella)属モルティエレラ(Mortierella)亜属に属する微生物では、例えばモルティエレラ・エロンガタ(Mortierella elongata)、モルティエレラ・エキシグア(Mortierella exigua)、モルティエレラ・フィグロフィラ(Mortierella hygrophila)、モルティエレラ・アルピナ(Mortierella alpina)等を挙げることができる。具体的にはモルティエレラ・エロンガタ(Mortierella elongata)IFO8570、モルティエレラ・エキシグア(Mortierella exigua)IFO8571、モルティエレラ・フィグロフィラ(Mortierella hygrophila)IFO5941、モルティエレラ・アルピナ(Mortierella alpina)IFO8568、ATCC16266、ATCC32221、ATCC42430、CBS219.35、CBS224.37、CBS250.53、CBS343.66、CBS527.72、CBS529.72、CBS608.70、CBS754.68等の菌株を挙げることができる。
【0022】
これらの菌株はいずれも、大阪市の財団法人醗酵研究所(IFO)、及び米国のアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection, ATCC)及び、Centrralbureau voor Schimmelcultures(CBS)からなんら制限なく入手することができる。また本発明の研究グループが土壌から分離した菌株モルティエレラ・エロンガタSAM0219(微工研菌寄第8703号)(微工研条寄第1239号)を使用することもできる。
【0023】
本発明に使用される菌株を培養する為には、その菌株の胞子、菌糸、又は予め培養して得られた前培養液を、液体培地又は固体培地に接種し培養する。液体培地の場合に、炭素源としてはグルコース、フラクトース、キシロース、サッカロース、マルトース、可溶性デンプン、糖蜜、グリセロール、マンニトール等の一般的に使用されているものが、いずれも使用できるが、これらに限られるものではない。窒素源としてはペプトン、酵母エキス、麦芽エキス、肉エキス、カザミノ酸、コーンスティープリカー、大豆タンパク、脱脂ダイズ、綿実カス等の天然窒素源の他に、尿素等の有機窒素源、ならびに硝酸ナトリウム、硝酸アンモニウム、硫酸アンモニウム等の無機窒素源を用いることができる。この他必要に応じリン酸塩、硫酸マグネシウム、硫酸鉄、硫酸銅等の無機塩及びビタミン等も微量栄養源として使用できる。これらの培地成分は微生物の生育を害しない濃度であれば特に制限はない。実用上一般に、炭素源は0.1〜40重量(W/V)%、好ましくは1〜25重量(W/V)%の濃度するのが良い。初発の窒素源添加量は0.1〜10重量(W/V)%、好ましくは0.1〜6重量(W/V)%として、培養途中に窒素源を流加しても構わない。
【0024】
さらに、培地炭素源濃度を制御することでアラキドン酸を45重量(W/W)%以上含有する油脂(トリグリセリド)を本発明の有効成分とすることもできる。培養は、培養2〜4日目までが菌体増殖期、培養2〜4日目以降が油脂蓄積期となる。初発の炭素源濃度は1〜8重量%、好ましくは1〜4重量%の濃度とし、菌体増殖期および油脂蓄積期の初期の間のみ炭素源を逐次添加し、逐次添加した炭素源の総和は2〜20重量%、好ましくは5〜15重量%とする。なお、菌体増殖期および油脂蓄積期初期の間での炭素源の逐次添加量は、初発の窒素源濃度に応じて添加し、培養7日目以降、好ましくは培養6日目以降、より好ましくは培養4日目以降の培地中の炭素源濃度を0となるようにすることで、アラキドン酸を45重量%以上含有する油脂(トリグリセリド)を得ることができ本発明の有効成分とすることができる。
【0025】
アラキドン酸生産菌の培養温度は使用する微生物によりことなるが、5〜40℃、好ましくは20〜30℃とし、また20〜30℃にて培養して菌体を増殖せしめた後5〜20℃にて培養を続けて不飽和脂肪酸を生産せしめることもできる。このような温度管理によっても、生成脂肪酸中の高度不飽和脂肪酸の割合を上昇せしめることができる。培地のpHは4〜10、好ましくは5〜9として通気攪拌培養、振盪培養、又は静置培養を行う。培養は通常2〜30日間、好ましくは5〜20日間、より好ましくは5〜15日間行う。
【0026】
さらに、アラキドン酸を含有する油脂(トリグリセリド)中のアラキドン酸の割合を高める手だてとして、培地炭素源濃度を制御する以外に、アラキドン酸含有油脂に選択的加水分解を行ってアラキドン酸高含有油脂を得ることもできる。この選択的加水分解に用いられるリパーゼはトリグリセリドの位置特異性はなく、加水分解活性は二重結合の数に比例して低下するため、高度不飽和脂肪酸以外の脂肪酸のエステル結合が加水分解される。そして、生じたPUFA部分グリセリド間でエステル交換反応が起こるなどして、高度不飽和脂肪酸が高められたトリグリセリドとなる(例えば、非特許文献4参照)。このように、アラキドン酸含有油脂に選択的加水分解を行って得たアラキドン酸を高含有する油脂(トリグリセリド)を本発明の有効成分とすることができる。本発明のアラキドン酸を含有する油脂(トリグリセリド)の全脂肪酸に対するアラキドン酸の割合は、他の脂肪酸の影響を排除する目的で高いほうが望ましいが、高い割合に限定しているわけでなく、実際には、食品に適応する場合にはアラキドン酸の絶対量が問題になる場合もあり、10重量%以上のアラキドン酸を含有する油脂(トリグリセリド)であっても実質的には使用することができる。
【0027】
さらに、本発明では構成脂肪酸の一部又は全部がアラキドン酸であるトリグリセリドとして、1,3-位に中鎖脂肪酸が、2-位にアラキドン酸が結合したトリグリセリドを使用することができる。また、1,3-位に中鎖脂肪酸が、2-位にアラキドン酸が結合したトリグリセリドを5モル%以上、好ましくは10モル%以上、さらに好ましくは20モル%以上、最も好ましくは30モル%以上含む油脂(トリグリセリド)を使用することができる。上記トリグリセリドの1,3-位に結合する中鎖脂肪酸は、炭素数6〜12個を有する脂肪酸から選ばれたものを利用できる。炭素数6〜12個を有する脂肪酸として、例えば、カプリル酸又はカプリン酸等を挙げられ、特に1,3-カプリロイル-2-アラキドノイル-グリセロール(以後「8A8」とも称す)が好ましい。
【0028】
これら、1,3-位に中鎖脂肪酸が、2-位にアラキドン酸が結合したトリグリセリドは、乳幼児及び高齢者を対象にした場合には、最適な油脂(トリグリセリド)となる。一般に油脂(トリグリセリド)を摂取し、小腸の中に入ると膵リパーゼで加水分解されるが、この膵リパーゼが1,3-位特異的であり、トリグリセリドの1,3-位が切れて2分子の遊離脂肪酸ができ、同時に1分子の2-モノアシルグリセロール(MG)が生成する。この2-MGは非常に胆汁酸溶解性が高く吸収性が良いため、一般に2-位脂肪酸の方が、吸収性が良いと言われる。また、2-MGは胆汁酸に溶けると界面活性剤的な働きをして、遊離脂肪酸の吸収性を高める働きをする。次に遊離脂肪酸と2-MGはコレステロールやリン脂質等と一緒に胆汁酸複合ミセルを形成して小腸上皮細胞に取り込まれ、トリアシルグリセロールの再合成が起こり、最終的にはカイロミクロンとしてリンパに放出されていく。ところが、この膵リパーゼの脂肪酸特性は飽和脂肪酸に高く、アラキドン酸は切れにくい特徴を持っている。さらに問題なのは、膵リパーゼ活性が乳幼児及び高齢者は低いことから、1,3-位に中鎖脂肪酸が、2-位にアラキドン酸が結合したトリグリセリドは最適な油脂(トリグリセリド)となる。
【0029】
1,3-位に中鎖脂肪酸が、2-位にアラキドン酸が結合したトリグリセリド具体的な製造法のひとつとして、アラキドン酸を含有する油脂(トリグリセリド)及び中鎖脂肪酸の存在下で、トリグリセリドの1,3-位のエステル結合にのみ作用するリパーゼを作用させることで製造することができる。
原料となる油脂(トリグリセリド)はアラキドン酸を構成脂肪酸とするトリグリセリドであり、トリグリセリドを構成する全脂肪酸に対するアラキドン酸の割合が高い場合には、未反応油脂(原料トリグリセリド並びに1,3-位の脂肪酸のうち一方のみが中鎖脂肪酸となったトリグリセリド)の増加による反応収率の低下を防ぐため、通常の酵素反応温度20〜30℃より、高く30〜50℃、好ましくは40〜50℃とする。
【0030】
トリグリセリドの1,3-位のエステル結合に特異的に作用するリパーゼとして、例えば、リゾプス(Rhizopus)属、リゾムコール(Rhizomucor)属、アスペルギルス(Aspergillus)属などの微生物が産生するもの、ブタ膵臓リパーゼなどを挙げることができる。かかるリパーゼについは、市販のものを用いることができる。例えば、リゾプス・デレマー(Rhizopus delemar)のリパーゼ(田辺製薬(株)製、タリパーゼ)、リゾムコール・ミーハイ(Rhizomucor miehei)のリパーゼ(ノボ・ノルディスク(株)社製、リボザイムIM)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)のリパーゼ(天野製薬(株)、リパーゼA)等が挙げられるが、これら酵素に限定しているわけではなく、1,3-位特異的リパーゼであればすべて使用することができる。
【0031】
上記リパーゼの使用形態は、反応効率を高める目的で反応温度を30℃以上、好ましくは40℃以上とするため、酵素の耐熱性を付加する目的で固定化担体に固定化したリパーゼを使用することが望ましい。固定化担体として多孔室(ハイポーラス)樹脂であって、約100オングストローム以上の孔径を有するイオン交換樹脂担体、例えばDowex MARATHON WBA(商標、ダウケミカル)等が挙げられる。
【0032】
固定化担体1に対して、1,3-位特異的リパーゼの水溶液0.5〜20倍重量に懸濁し、懸濁液に対して2〜5倍量の冷アセトン(例えば-80℃)を攪拌しながら徐々に加えて沈殿を形成させる。この沈殿物を減圧下で乾燥させて固定化酵素を調製することができる。さらに簡便な方法では、固定化担体1に対して、0.05〜0.4倍量の1,3-位特異的リパーゼを最小限の水に溶解し、撹拌しながら固定化担体を混ぜ合わせ、減圧下で乾燥させて固定化酵素を調製することができる。この操作により約90%のリパーゼが担体に固定化されるが、このままではエステル交換活性は全く示さず、水1〜10重量(W/V)%を加えた基質(原料油脂と中鎖脂肪酸)中で、好ましくは水1〜3重量%を加えた基質中で前処理することで固定化酵素は最も効率よく活性化することができ製造に供することができる。
【0033】
酵素の種類によっては、本反応系に加える水分量は極めて重要で、水を含まない場合はエステル交換が進行しにくくなり、また、水分量が多い場合には加水分解が起こり、グリセリドの回収率が低下する(加水分解が起こればジグリセリド、モノグリセリドが生成される)。しかし、この場合、前処理により活性した固定化酵素を使用することで、本反応系に加える水分量は重要ではなくなり、全く水を含まない系でも効率よくエステル交換反応を起こすことができる。さらに酵素剤の種類を選択することで前処理を省略することも可能である。
【0034】
このように、耐熱性を有する固定化酵素を使用し、酵素反応温度を上げることで、1,3-位特異的リパーゼに反応性の低いアラキドン酸を含有する油脂(トリグリセリド)においても、反応効率を低下させることなく、1,3-位に中鎖脂肪酸が、2-位にアラキドン酸が結合したトリグリセリドを効率的に製造することができる。
【0035】
認知能力の正常応答の低下予防、改善又は向上作用を有する飲食品の製造法であって、アラキドン酸及び/又はアラキドン酸を構成脂肪酸とする化合物を単独で、あるいはアラキドン酸を実質的に含有しない、あるいは含有していても僅かな飲食品原料とともに配合することができる。ここで、僅かな量とは、飲食品原料にアラキドン酸が含まれていたとしても、それを配合した食品組成物を人が摂取しても、後述する本発明の1日当たりのアラキドン酸の摂取量に達していない量を意味する。
【0036】
特に構成脂肪酸の一部又は全部がアラキドン酸であるトリグリセリドの場合には、油脂(トリグリセリド)の用途に関しては無限の可能性があり、食品、飲料、医薬品、医薬部外品の原料並びに添加物として使用することがでる。そして、その使用目的、使用量に関して何ら制限を受けるものではない。
例えば、食品組成物としては、一般食品の他、機能性食品、栄養補助食品、未熟児用調製乳、乳児用調製乳、乳児用食品、妊産婦食品又は老人用食品等を挙げることができる。油脂を含む食品例として、肉、魚、またはナッツ等の本来油脂を含む天然食品、スープ等の調理時に油脂を加える食品、ドーナッツ等の熱媒体として油脂を用いる食品、バター等の油脂食品、クッキー等の加工時に油脂を加える加工食品、あるいはハードビスケット等の加工仕上げ時に油脂を噴霧または塗布する食品等が挙げられる。さらに、油脂を含まない、農産食品、醗酵食品、畜産食品、水産食品、または飲料に添加することができる。さらに、機能性食品、医薬品、医薬部外品の形態であっても構わなく、例えば、経腸栄養剤、粉末、顆粒、トローチ、内服液、懸濁液、乳濁液、シロップ等の加工形態であってもよい。
【0037】
また本発明の組成物は、本発明の有効成分以外に、一般に飲食品、医薬品または医薬部外品に用いられる各種担体や添加物を含んでいてよい。特に本発明の有効成分の酸化防止を防ぐ目的で抗酸化剤を含むことが望ましい。抗酸化剤として、例えば、トコフェロール類、フラボン誘導体、フィロズルシン類、コウジ酸、没食子酸誘導体、カテキン類、フキ酸、ゴシポール、ピラジン誘導体、セサモール、グァヤオール、グァヤク酸、p-クマリン酸、ノールジヒドログァヤテッチク酸、ステロール類、テルペン類、核酸塩基類、カロチノイド類、リグナン類などのような天然抗酸化剤およびアスコルビン酸パルミチン酸エステル、アスコルビン酸ステアリン酸エステル、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、モノ-t-ブチルヒドロキノン(TBHQ)、4-ヒドロキシメイル-2,6-ジ-t-ブチルフェノール(HMBP)に代表されるような合成抗酸化剤を挙げることができる。トコフェロール類では、α-トコフェロール、β-トコフェロール、γ-トコフェロール、δ-トコフェロール、ε-トコフェロール、ξ-トコフェロール、η-トコフェロールおよびトコフェロールエステル(酢酸トコフェロール等)等を挙げることができる。さらに、カロチノイド類では、例えば、β-カロチン、カンタキサンチン、アスタキサンチン等を挙げることができる。
【0038】
本発明の組成物は、本発明の有効成分以外に、担体として、各種キャリアー担体、イクステンダー剤、希釈剤、増量剤、分散剤、賦形剤、結合剤溶媒(例、水、エタノール、植物油)、溶解補助剤、緩衝剤、溶解促進剤、ゲル化剤、懸濁化剤、小麦粉、米粉、でん粉、コーンスターチ、ポリサッカライド、ミルクタンパク質、コラーゲン、米油、レシチンなどが挙げられる、添加剤としては、例えば、ビタミン類、甘味料、有機酸、着色剤、香料、湿化防止剤、ファイバー、電解質、ミネラル、栄養素、抗酸化剤、保存剤、芳香剤、湿潤剤、天然の食物抽出物、野菜抽出物などを挙げることができるが、これらに限定しているわけではない。
【0039】
アラキドン酸およびアラキドン酸を構成脂肪酸とする化合物の主薬効成分はアラキドン酸にある。アラキドン酸の一日あたり食事からの摂取量は関東地区で0.14g、関西地区で0.19〜0.20gとの報告があり(非特許文献5参照)、相当量、さらにはそれ以上、アラキドン酸を摂取する必要がある。したがって、本発明のアラキドン酸およびアラキドン酸を構成脂肪酸とする化合物の成人(例えば、体重60kgとして)一日当たりの摂取量は、アラキドン酸量換算として、0.001g〜20g、好ましくは0.01g〜10g、より好ましくは0.05〜5g、最も好ましくは0.1g〜2gとする。
【0040】
本発明の有効成分を実際に飲食品に適用する場合には、食品に配合するアラキドン酸の絶対量も重要となる。ただし、飲食品に配合する絶対量も、配合する飲食品の摂取量によって変化することから、構成脂肪酸の一部又は全部がアラキドン酸であるトリグリセリドを含有するトリグリセリドを食品に配合する場合には、アラキドン酸として0.0003重量%以上、好ましくは0.003重量%以上、より好ましくは0.03重量%以上となるように配合する。さらに、1,3-位に中鎖脂肪酸が、2-位にアラキドン酸が結合したトリグリセリドを飲食品に配合する場合には、1,3-位に中鎖脂肪酸が、2-位にアラキドン酸が結合したトリグリセイドとして、0.001重量%以上、好ましくは0.01重量%以上、より好ましくは0.1重量%以上とする。
【0041】
本発明の組成物を医薬品として使用する場合、製剤技術分野において慣用の方法、例えば、日本薬局方に記載の方法あるいはそれに準じる方法に従って製造することができる。
本発明の組成物を医薬品として使用する場合、組成物中の有効成分の配分量は、本発明の目的が達成される限り特に限定されず、適宜適当な配合割合で使用が可能である。
【0042】
本発明の組成物を医薬品として使用する場合、投与単位形態で投与するのが望ましく、特に、経口投与が好ましい。本発明の組成物の投与量は、年令、体重、症状、投与回数などにより異なるが、例えば、成人(約60kgとして)一日当たり本発明のアラキドン酸及び/又はアラキドン酸を構成脂肪酸とする化合物を、アラキドン酸量換算として、通常約0.001g〜20g、好ましくは約0.01g〜10g、より好ましくは約0.05〜5g、最も好ましくは約0.1g〜2gを一日1回〜3回に分割して投与するのがよい。
【0043】
脳のリン脂質膜の主要な脂肪酸はアラキドン酸並びにドコサヘキサエン酸であり、バランスを考えた場合、本発明の組成物は、アラキドン酸にドコサヘキサエン酸との組み合わせが望ましい。一般にアラキドン酸(n-6系 不飽和脂肪酸)とドコサヘキサエン酸(n-3系 不飽和脂肪酸)は、それぞれリノール酸とα-リノレン酸から同一の酵素により生合成される。したがって、アラキドン酸を単独で投与した場合には、ドコサヘキサエン酸の生合成を抑制する。また、逆にドコサヘキサエン酸を単独で投与した場合には、アラキドン酸の生合成を抑制する。このような弊害を防ぐためにも、アラキドン酸とドコサヘキサエン酸を組み合わせて摂取することが望ましい。また、脳のリン脂質膜にはエイコサペンタエン酸の割合が非常に低いことから、ほとんどエイコサペンタエン酸を含まないことが望ましい。したがって、エイコサペンタエン酸を含まないか、含んでも1%までであることが望ましい。また、エイコサペンタエン酸をほとんど含まず、しかもアラキドン酸とドコサヘキサエン酸を含有する組成物がより望ましい。そして、アラキドン酸とドコサヘキサエン酸の組み合わせにおいて、アラキドン酸/ドコサヘキサエン酸比(重量)が0.1〜15の範囲、好ましくは0.25〜10の範囲にあることが望ましい。また、アラキドン酸の5分の1(重量比)を超えない量のエイコサペンタエン酸の配合した飲食物が最も望ましい。
【0044】
なお、飲食品、健康食品、機能性食品、特定保険用食品、乳幼児用食品、老人用食品などの本発明の食品組成物には、該食品組成物及び/又は該食品組成物中の成分が、認知能力の低下予防、改善又は向上作用を有し、別の表現として、意識レベルの正常応答の低下予防、改善又は向上作用を有し、事象(聴覚刺激、視覚刺激、嗅覚刺激、味覚刺激、痛覚刺激)の分別能力の正常応答の低下予防、改善又は向上作用を有し、さらに、注意、記憶、知覚、言語、計算などの正常機能の低下予防、改善又は向上作用を有し、さらには、集中力の維持・向上、注意力の維持、頭をすっきりさせること、頭が冴えわたること、若返りなどの作用を有することを該食品組成物の包装用容器及び/又は該食品組成物の販売を促進するためのツール(例えばパンフレット等)に記載又は表示するなどして販売するものも含まれる。
【実施例】
【0045】
次に、実施例により、本発明をさらに具体的に説明する。しかし、本発明は、下記の実施例に限定されない。
実施例1
(アラキドン酸を構成脂肪酸とするトリグリセリドの製造方法)
アラキドン酸生産菌としてモルティエレラ・アルピナ(Mortierella alpina)を用いた。グルコース1.8%、脱脂大豆粉3.1%、大豆油0.1%、KH2PO4 0.3%、Na2SO4 0.1%、CaCl2・2H2O 0.05%及びMgCl2・6H2O 0.05%を含む培地6kLを、10kL培養槽に調製し、初発pHを6.0に調整した。前培養液30Lを接種し、温度26℃、通気量 360m3/h、槽内圧200kPaの条件で8日間の通気撹拌培養を行った。なお、攪拌数は溶存酸素濃度を10〜15ppmを維持するように調整した。さらに、グルコース濃度を4日目までは流加法によって培地中のグルコース濃度が1〜2.5%の範囲内となるように、それ以降は0.5〜1%を維持した(上記の%は、重量(W/V)%を意味する)。培養終了後、ろ過、乾燥によりアラキドン酸を構成脂肪酸とするトリグリセリドを含有する菌体を回収し、得られた菌体からヘキサン抽出により油脂を抽出し、食用油脂の精製工程(脱ガム、脱酸、脱臭、脱色)を経て、アラキドン酸含有トリグリセリド(アラキドン酸はトリグリセリドの任意な位置に結合)150kgを得た。得られた油脂(トリグリセリド)をメチルエステル化し、得られた脂肪酸メチルエステルをガスクロマトグラフィーで分析したところ、全脂肪酸に占めるアラキドン酸の割合は40.84%であった。なお、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、γ-リノレン酸、ジホモ-γ-リノレン酸などが、それぞれ11.63%、7.45%、7.73%、9.14%、2.23%、3.27%であった。さらに、上記アラキドン酸含有油脂(トリグリセリド)をエチルエステル化し、アラキドン酸エチルエステルを40%含む脂肪酸エチルエステル混合物から、常法の高速液体クロマトグラフィーによって、99%アラキドン酸エチルエステルを分離・精製した。
【0046】
実施例2
(1,3-位に中鎖脂肪酸が、2-位にアラキドン酸が結合したトリグリセリド(8A8)を5モル%以上含むトリグリセリドの製造)
イオン交換樹脂担体(Dowex MARATHON WBA:ダウケミカル、商標)100gを、Rhizopus delemarリパーゼ12.5%水溶液(タリパーゼ現末:田辺製薬(株))80mlに懸濁し、減圧下で乾燥させて固定化リパーゼを得た。
【0047】
次に、実施例1で得たアラキドン酸を40重量%含有するトリグリセリド(TGA40S)80g、カプリル酸160g、上記固定化リパーゼ12g、水4.8 mlを30℃で48時間、撹拌(130rpm)しながら反応させた。反応終了後、反応液を取り除き、活性化された固定化リパーゼを得た。
次に、固定化リパーゼ(Rhizopus delemarリパーゼ、担体:Dowex MARATHON WBA、商標)10gをジャケット付きガラスカラム(1.8 x 12.5cm、容量31.8ml)に充填し、実施例1で得たTGA40Sとカプリル酸を1:2に混合した混合油脂を一定の流速(4ml/h)でカラムに流し、連続反応を実施することで、反応油脂を400gを得た。なお、カラム温度は40-41℃とした。得られた反応油脂から未反応のカプリル酸及び遊離の脂肪酸を分子蒸留により取り除き、食用油脂の精製工程(脱ガム、脱酸、脱臭、脱色)を経て、8A8を含有する油脂(トリグリセリド)を得た。そして、ガスクロマトグラフィー及び高速液体クロマトグラフィーにより、得られた8A8含有油脂(トリグリセリド)中の8A8の割合を調べたところ、31.6モル%であった(なお、8P8、808、8L8、8G8、8D8の割合はそれぞれ0.6、7.9、15.1、5.2、4.8モル%であった。トリグリセリドの2-位結合する脂肪酸P、O、L、G、Dはそれぞれパルミチン酸、オレイン酸、リノール酸、γ-リノレン酸、ジホモ-γ-リノレン酸を表し、8P8は1,3-カプリロイル-2-パルミトレイル-グリセロール、8O8は1,3-カプリロイル-2-オレオイル-グリセロール、8L8は1,3-カプリロイル-2-リノレオイル-グリセロール、8G8は1,3-カプリロイル-2-γ-リノレノイル-グリセロール、8D8は1,3-カプリロイル-2-ジホモ-γ-リノレノリル-グリセロールをいう)。なお、得られた8A8含有油脂(トリグリセリド)から定法の高速液体クロマトグラフィーによって、96モル% 8A8を分離・精製した。
【0048】
実施例3
(試験カプセルの製造)
ゼラチン100質量部及び食添グリセリン35質量部に水を加え50〜60℃で溶解し、粘度2000cpのゼラチン被膜を調製した。次に実施例1で得たアラキドン酸含有油脂(トリグリセリド)にビタミンE油0.05重量%を混合し、内容物1を調製した。実施例2で得た8A8を32モル%含有する油脂(トリグリセリド)にビタミンE油0.05重量%を配合し、内容物2を調製した。内容物1を用いて、常法によりカプセル成形及び乾燥を行い、一粒200mgの内容物を含有するソフトカプセル(アラキドン酸含有食用油脂カプセル)及び内容物2を用いて、常法によりカプセル形成及び乾燥を行い、一粒200mgの内容物を含有するソフトカプセル(8A8含有食用油脂カプセル)を製造した。人試験用の擬似カプセルとして、内容物をオリーブ油としたソフトカプセルを同時に製造した。
【0049】
実施例4
(健常者の認知応答に及ぼすアラキドン酸含有食用油脂カプセル摂取試験)
事象関連電位(ERP: Event related potential)の測定は、日本脳波筋電図学会誘発電位検査法委員会の定めた誘発電位測定指針に従い、聴覚オドボール(もしくは音弁別)課題を用いて行った。すなわち、ヘッドホーンを通して周波数1000Hzと2000Hzの2種の純音を呈示確率1:4、呈示順はランダムに被験者の両耳に呈示し、2000Hzの目標音が聞こえた時に手元のボタンを押し、呈示数を数えるよう教示した。なお、音の強度は90dB、持続時間100msec、呈示間隔は1000〜3000msecのランダムとした。実際の試験のおおよその刺激回数は200回/人で所要時間は約10分であった。これを2ブロック実施して事象関連電位を測定した。Ag-AgCl電極を用いて脳波を記録した。電極は、抵抗値が5kΩ以下となるように、頭皮の中心線に沿って3箇所(国際10-20置換に従ってFz、Cz及びPz)に貼り付け、そして基準電極は両耳朶に取り付けた。
認知すべき低頻度の音刺激(今回の試験では2000Hzの音)開始から250〜600msecの間の極大陽性電位を選択的注意や認知応答を反映して変動する内因性成分P300と同定し、刺激開始から時間を潜時(刺激の伝達速度)、ベースラインからの電位の高さを振幅(刺激に対する集中力)とした。
【0050】
なお、本発明のヒト試験は、ヘルシンキ宣言の精神に則り十分な配慮の下に実施した。
試験参加同意の説明を行い、同意を得られた健常者12名(薬の服用が無く、血液検査で異常がなく、頭部CT撮影を実施して梗塞が認められない人)をAとBの2群に分け(A:n=7、B:n=5)、A群には一日アラキドン酸240mgを摂取できるように、実施例3で調製したアラキドン酸含有食用油脂カプセル(アラキドン酸として80mg/粒)3粒を1ヶ月間服用させ、B群には擬似カプセル3粒を服用させた。カプセルの摂取前後で事象関連電位を測定してP300の潜時及び振幅を測定した。A群、B群の被検者には、その後、1ヶ月間、カプセルの摂取を止めてウォッシュアウト期間とした。ウォッシュアウト後、A群には擬似カプセルを、B群にはアラキドン酸含有食用油脂カプセルを1ヶ月間服用させ、カプセルの摂取前後で同様に事象関連電位を測定した(二重盲検、クロスオーバー試験)。
【0051】
事象関連電位の測定の際、採血を行い、各被検者の血清からFolch法にて全脂質を抽出した。そして、薄層クロマトグラフィーで脂質を分画し、リン脂質画分をかきとって、エタノールとの共沸で水を除去した後、10%塩酸-メタノールで脂肪酸メチルエステルとして、ガスクロマトグラフィーで分析することで、血清リン脂質中のアラキドン酸量を求めた。
【0052】
図1にはカプセル摂取前後の血清リン脂質のアラキドン酸量の変化を示す。アラキドン酸含有食用油脂カプセルを摂取した被験者の血清リン脂質中のアラキドン酸量はアラキドン酸含有食用油脂カプセルを摂取後有意に増加したが、擬似カプセルを摂取した被験者の血清リン脂質中のアラキドン酸量は擬似カプセルの摂取前と摂取後では変化はなかった。
【0053】
カプセル摂取前後の潜時並びに振幅の変化を図2及び図3に示す。擬似カプセルと比較して、アラキドン酸含有食用油脂カプセルを摂取することで、潜時が有意に12.3msec短縮し、振幅が有意に1.9μV増大することが明らかとなった。潜時は1.8msec/年、振幅は0.2μV/年、それぞれ短縮、減少することが知られており(Goodin DS et al. 1978)、今回の試験結果は、平均で被検者の認知応答が潜時で6.8年、振幅で9.5年若返ったことを意味する。
【0054】
次に、12対象それぞれにつき4回の測定により得た合計48データを用いて、P300(潜時と振幅)と血清アラキドン酸量(リン脂質)との相関を最小二乗法に基づく一次近似曲線で求めた(図4)。潜時の場合、アラキドン酸量との間に有意な相関(相関係数R=-0.27)が認められ、アラキドン酸量の増加により潜時が短縮することが明らかとなった。また、振幅の場合も、アラキドン酸量との間に有意な相関(相関係数R=-0.49)が認められ、アラキドン酸量の増加により振幅が大きくなることが明らかとなった。このように、アラキドン酸含有食用油脂を服用することで認知応答が改善することを初めて明らかにし、その効果はアラキドン酸によることが初めて証明された。
【0055】
実施例5
(健常者の認知応答に及ぼす8A8含有食用油脂カプセル摂取試験)
実施例4と同様に、試験参加同意の説明を行い、同意を得られた健常者16名(薬の服用が無く、血液検査で異常値がなく、頭部CT撮影を実施して梗塞が認められない人)をAとBの2群に分け(各n=8)、A群には実施例3で調製した8A8含有食用油脂カプセル(アラキドン酸として72mg/粒)3粒を1ヶ月間服用させ、B群には擬似カプセル3粒を服用させ、カプセルの摂取前後で事象関連電位を測定してP300の潜時及び振幅を測定した(二重盲検)ところ、8A8含有食用油脂カプセルを摂取することにより、潜時が有意に16.3msec短縮し、振幅が有意に2.4μV増大することが明らかとなった。この結果は、平均で被検者の認知応答が潜時で9.1年、振幅で12.0年若返ったことを意味する。
【0056】
実施例6
(アラキドン酸を構成脂肪酸とする油脂(トリグリセリド)配合カプセルの調製例)
ゼラチン100質量部及び食添グリセリン35質量部に水を加え50〜60℃で溶解し、粘度2000cpのゼラチン被膜を調製した。次に実施例1で得たアラキドン酸含有油脂(トリグリセリド)50重量%と魚油(ツナ油:全脂肪酸に占めるエイコサペンタエン酸およびドコサヘキサエン酸の割合は、それぞれ5.1%および26.5%)50重量%で混合し、ビタミンE油0.05重量%を混合して内容物3を調製した。アラキドン酸含有油脂(トリグリセリド)80重量%と魚油(ツナ油:全脂肪酸に占めるエイコサペンタエン酸およびドコサヘキサエン酸の割合は、それぞれ5.1%および26.5%)20重量%で混合し、ビタミンE油0.05重量%を混合して内容物4を調製した。実施例1で得た99%アラキドン酸エチルエステルに、ビタミンE油0.05重量%を混合し内容物5を調製した。これら内容物3〜5を用いて、常法によりカプセル成形及び乾燥を行い、一粒200mgの内容物を含有するソフトカプセルを製造した。
【0057】
実施例7
(脂肪輸液剤への使用)
実施例2で得た8A8を96モル%含有する油脂(トリグリセリド)400g、精製卵黄レシチン48g、オレイン酸20g、グリセリン100g及び0.1N 苛性ソーダ40mlを加え、ホモジナイザーで分散させたのち、注射用蒸留水を加えて4リットルとする。これを高圧噴霧式乳化機にて乳化し、脂質乳液を調製した。該脂質乳液を200mlずつプラスチック製バッグに分注したのち、121℃、20分間、高圧蒸気滅菌処理して脂肪輸液剤とする。
【0058】
実施例8
(ジュースへの使用)
β-シクロデキストリン2gを20%エタノール水溶液20mlに添加し、ここにスターラーで撹拌しながら、実施例1で得たアラキドン酸含有トリグリセリド(ビタミンEを0.05%配合)100mgを加え、50℃で2時間インキュベートした。室温冷却(約1時間)後、さらに撹拌を続けながら4℃で10時間インキュベートした。生成した沈殿を、遠心分離により回収し、n-ヘキサンで洗浄後、凍結乾燥を行い、アラキドン酸含有トリグリセリドを含有するシクロデキストリン包接化合物1.8gを得た。この粉末1gをジュース10Lに均一に混ぜ合わせ、アラキドン酸含有トリグリセリドを含有するジュースを調製した。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】図1はアラキドン酸含有食用油脂カプセル及びオリーブ油含有カプセル(擬似カプセル)摂取前後の血清リン脂質のアラキドン酸量の変化を示す。
【図2】図2はアラキドン酸含有食用油脂カプセル及びオリーブ油含有カプセル(擬似カプセル)摂取前後の潜時の変化を示す。
【図3】図3はアラキドン酸含有食用油脂カプセル及びオリーブ油含有カプセル(擬似カプセル)摂取前後の振幅の変化を示す。
【図4】図4はP300(潜時と振幅)と血清リン脂質のアラキドン酸量との相関を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アラキドン酸及び/又はアラキドン酸を構成脂肪酸とする化合物を含んで成る、認知能力の正常応答の低下予防、改善又は向上作用を有する組成物。
【請求項2】
アラキドン酸を構成脂肪酸とする化合物が、アラキドン酸のアルコールエステル又は構成脂肪酸の一部もしくは全部がアラキドン酸である、トリグリセリド、リン脂質もしくは糖脂質である請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
構成脂肪酸の一部又は全部がアラキドン酸であるトリグリセリドが、1,3-位に中鎖脂肪酸が、2-位にアラキドン酸が結合したトリグリセリドである請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
中鎖脂肪酸が、炭素数6〜12個を有する脂肪酸から選ばれたものである請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
中鎖脂肪酸が、炭素数8個を有する脂肪酸から選ばれたものである請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
構成脂肪酸の一部又は全部がアラキドン酸であるトリグリセリドを含有するトリグリセリドを含んで成る、認知能力の正常応答の低下予防、改善又向上作用を有する組成物。
【請求項7】
構成脂肪酸の一部又は全部がアラキドン酸であるトリグリセリドを含有するトリグリセリドの、アラキドン酸の割合が、トリグリセリドを構成する全脂肪酸に対して10重量%以上であることを特徴とする、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
構成脂肪酸の一部又は全部がアラキドン酸であるトリグリセリドを含有するトリグリセリドが、モルティエレラ(Mortierella)属に属する微生物から抽出したものである請求項6又は7に記載の組成物。
【請求項9】
構成脂肪酸の一部又は全部がアラキドン酸であるトリグリセリドを含有するトリグリセリドが、エイコサペンタエン酸を含まない、又は1%以下のエイコサペンタエン酸を含むトリグリセリドである請求項6〜8のいずれかに記載の組成物。
【請求項10】
1,3-位に中鎖脂肪酸が、2-位にアラキドン酸が結合したトリグリセリドを5モル%以上含有するトリグリセリドを含んで成る、認知能力の正常応答の低下予防、改善又は向上作用を有する組成物。
【請求項11】
中鎖脂肪酸が、炭素数6〜12個を有する脂肪酸から選ばれたものである請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
中鎖脂肪酸が、炭素数8個を有する脂肪酸から選ばれたものである請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
認知能力として、聴覚刺激、視覚刺激、嗅覚刺激、味覚刺激及び痛覚刺激からなる群から選ばれる事象に対する処理速度又は応答速度の正常応答の低下予防、改善又は向上作用を有する請求項1〜12のいずれかに記載の組成物。
【請求項14】
認知能力として、聴覚刺激、視覚刺激、嗅覚刺激、味覚応答及び痛覚刺激からなる群から選ばれる事象に対する集中力の正常応答の低下予防、改善又は向上作用を有する請求項1〜12のいずれかに記載の組成物。
【請求項15】
認知能力として、意識レベルの正常応答の低下予防、改善又は向上作用を有する請求項1〜12のいずれかに記載の組成物。
【請求項16】
認知能力として、聴覚刺激、視覚刺激、嗅覚刺激、味覚刺激及び痛覚刺激からなる群から選ばれる事象の弁別能力の正常応答の低下予防、改善又は向上作用を有する請求項1〜12のいずれかに記載の組成物。
【請求項17】
認知能力の応答指標として、事象関連電位(P300)の潜時の短縮作用を有する請求項1〜12のいずれかに記載の組成物。
【請求項18】
認知能力の応答指標として、事象関連電位(P300)の振幅の拡張作用を有する請求項1〜12のいずれかに記載の組成物。
【請求項19】
組成物が、食品組成物又は医薬組成物である請求項1〜18のいずれかに記載の組成物。
【請求項20】
成人1日当たりの摂取量がアラキドン酸量に換算して0.001〜20gとなるように、アラキドン酸及び/又はアラキドン酸を構成脂肪酸とする化合物を含んで成る食品組成物。
【請求項21】
アラキドン酸を構成脂肪酸とする化合物が、アラキドン酸のアルコールエステル又は構成脂肪酸の一部もしくは全部がアラキドン酸である、トリグリセリド、リン脂質もしくは糖脂質である請求項20に記載の食品組成物。
【請求項22】
構成脂肪酸の一部又は全部がアラキドン酸であるトリグリセリドが、1,3-位に中鎖脂肪酸が、2-位にアラキドン酸が結合したトリグリセリドである請求項21に記載の食品組成物。
【請求項23】
中鎖脂肪酸が、炭素数6〜12個を有する脂肪酸から選ばれたものである請求項22に記載の食品組成物。
【請求項24】
中鎖脂肪酸が、炭素数8個を有する脂肪酸から選ばれたものである請求項23に記載の食品組成物。
【請求項25】
組成物が1,3-位に中鎖脂肪酸が、2-位にアラキドン酸が結合したトリグリセリドを0.001重量%以上含有することを特徴とする食品組成物。
【請求項26】
中鎖脂肪酸が、炭素数6〜12個を有する脂肪酸から選ばれたものである請求項25に記載の食品組成物。
【請求項27】
中鎖脂肪酸が、炭素数8個を有する脂肪酸から選ばれたものである請求項26に記載の食品組成物。
【請求項28】
食品組成物が、機能性食品、栄養補助食品、特定保健用食品又は老人用食品であることを特徴とする請求項20〜27のいずれかに記載の組成物。
【請求項29】
さらにドコサヘキサエン酸及び/又はドコサヘキサエン酸を構成脂肪酸とする化合物を含んで成る、請求項1〜28のいずれかに記載の組成物。
【請求項30】
ドコサヘキサエン酸を構成脂肪酸とする化合物が、ドコサヘキサエン酸のアルコールエステル又は構成脂肪酸の一部もしくは全部がドコサヘキサエン酸である、トリグリセリド、リン脂質もしくは糖脂質である請求項29記載の組成物。
【請求項31】
上記アラキドン酸とドコサヘキサエン酸の組み合わせにおいて、アラキドン酸/ドコサヘキサエン酸比(重量)が0.1〜15の範囲にあることを特徴とする請求項29又は30に記載の組成物。
【請求項32】
さらに、組成物中のアラキドン酸に対して、組成物中のエイコサペンタエン酸が、5分の1を超えない量であることを特徴とする請求項1〜31のいずれかに記載の組成物。
【請求項33】
認知能力の正常応答の低下予防、改善又は向上作用を有する組成物の製造方法であって、アラキドン酸及び/又はアラキドン酸を構成脂肪酸とする化合物を単独で、あるいはアラキドン酸を実質的に含有しない、あるいは含有していても僅かな量である食品原料とともに配合することを特徴とする食品組成物の製造方法。
【請求項34】
アラキドン酸及び/又はアラキドン酸を構成脂肪酸とする化合物を含んで成る認知能力の正常応答の低下予防、改善又は向上作用を有する組成物の販売方法であって、該組成物及び/又は該組成物中の成分が認知能力の正常応答の低下予防、改善又は向上作用を有することを表示した包装用容器及び/又は販売促進用ツールを用いて販売することを特徴とする認知能力の正常応答の低下予防、改善又は向上作用を有する組成物の販売方法。
【請求項35】
アラキドン酸及び/又はアラキドン酸を構成脂肪酸とする化合物を含んで成る組成物であって、該組成物及び/又は該組成物中の成分が認知能力の正常応答の低下予防、改善又は向上作用を有することを表示した、該組成物の包装用容器及び/又は販売促進用ツールを用いて販売することを特徴とする認知能力の正常応答の低下予防、改善又は向上作用を有する組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2006−502196(P2006−502196A)
【公表日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−539481(P2004−539481)
【出願日】平成15年9月22日(2003.9.22)
【国際出願番号】PCT/JP2003/012107
【国際公開番号】WO2004/028529
【国際公開日】平成16年4月8日(2004.4.8)
【出願人】(000001904)サントリー株式会社 (319)
【Fターム(参考)】