説明

誘導加熱調理器

【課題】本発明は、赤外線センサ周辺の熱外乱を排除して鍋の温度を精度良く検出できる誘導加熱調理器を提供することにある。
【解決手段】加熱コイルの下方に設けられた赤外線センサモジュールと、該赤外線センサモジュールの出力に基づいて前記鍋の温度を算出する温度検出回路と、冷却風を供給する冷却ファンを備えた誘導加熱調理器において、前記赤外線モジュールは、受光した放射線量に応じた信号を出力する赤外線検出回路と、該赤外線検出回路を搭載したプリント配線基板と、該プリント配線基板の上方を覆うとともに開口部を有する樹脂ケースと、該開口部を封鎖する窓材と、該窓材の上方を除き前記樹脂ケースの上方を覆う防磁ケースで構成され、前記赤外線センサモジュールに供給される冷却風の一部は、前記樹脂ケースと前記防磁ケースの間に設けられた隙間を通って、前記樹脂ケース、前記防磁ケース、および、前記窓材を冷却する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トッププレート上の鍋の温度を精度よく検出することができる誘導加熱調理器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、誘導加熱調理器の鍋の温度検出方法として、鍋を載置するトッププレート裏面に設置したサーミスタ等の感温素子で鍋底の温度を間接的に検出するものや、鍋底から放射される赤外線をトッププレート越しに赤外線センサで観測し温度を検出するものがある(特許文献1)。
【0003】
赤外線センサを用いた鍋温度検出方法では、赤外センサが加熱コイルの熱の影響を受けてしまいセンサ自身が高温になる場合や、赤外線センサを収納するセンサケースが高温となってしまい、センサ出力が不安定となり温度検知精度を低下する可能性がある。また、赤外線センサの周辺が、加熱され高温になると鍋温度以外の熱外乱の影響をセンサが受けて、センサ温度の検知性能が低下する恐れがあった。これら熱外乱の抑制手段としてセンサ及びセンサ周辺を冷却する必要があった。赤外線センサの冷却手段としては、センサを収納しているセンサケースの内部に直接冷却風を供給する技術が知られている(特許文献2)。また、赤外線を受光するセンサケース上面側の冷却技術も知られている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−244999号公報
【特許文献2】特開2010−287533号公報
【特許文献3】特開2011−54517号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2に記載された赤外線センサの冷却技術は、センサを収納したセンサケースの下方側から、誘導加熱調理器の加熱コイルや、加熱コイルの火力を制御する高周波制御回路を冷却するための冷却風の一部を供給するものである。また、センサケースに複数の開口部を設けて、センサケース内部に冷却を供給して、センサ自身を冷却するものである。
【0006】
しかしながら、センサケースのトッププレート側は、加熱コイル温度の影響を受けて高温となることから、センサケース下方から上方に向けて冷却風を吹き付けても赤外線受光方向の熱外乱を取り除くことは困難である。また、赤外線センサ自身に冷却風を吹き付けてしまうと、冷却風の温度変化に応じてセンサ自身の温度も急変してしまいセンサの基準電圧が不安定となり、特許文献1に記載されているような温度検出精度の低下が考えられる。
【0007】
また、特許文献3に記載された赤外線センサは、赤外線センサ受光部がセンサケースから吐出しており、受光部以外のセンサ基板などを収納ケースに収め、収納ケースの外郭を絶縁板で覆うことで電気ノイズの影響を排除する構成となっており、加熱コイル側のセンサケース上面に冷却風を供給している。さらに、収納ケース上面と絶縁板との間に隙間を設け、この隙間に冷却風を供給してセンサを冷却している。
【0008】
しかしながら、赤外線センサの受光部は収納ケースの外部に有り、センサが直接冷却風に当たることから冷却風の温度変化に応じて赤外線センサ自身の温度も急変してしまい先に述べたように温度検出精度の低下が考えられる。
【0009】
本発明の目的は、前記不具合を解決するものであり、赤外線センサ周辺の熱外乱を排除して鍋の温度を精度良く検出できる誘導加熱調理器を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題は、鍋を載置するトッププレートと、該トッププレートの下方に設けられる加熱コイルと、該加熱コイルに高周波電力を供給する高周波電力供給回路と、該加熱コイルの下方に設けられた赤外線センサモジュールと、該赤外線センサモジュールの出力に基づいて前記鍋の温度を算出する温度検出回路と、冷却風を供給する冷却ファンを備えた誘導加熱調理器において、前記赤外線モジュールは、受光した放射線量に応じた信号を出力する赤外線検出回路と、該赤外線検出回路を搭載したプリント配線基板と、該プリント配線基板の上方を覆うとともに開口部を有する樹脂ケースと、該開口部を封鎖する窓材と、該窓材の上方を除き前記樹脂ケースの上方を覆う防磁ケースで構成され、前記赤外線センサモジュールに供給される冷却風の一部は、前記樹脂ケースと前記防磁ケースの間に設けられた隙間を通って、前記樹脂ケース、前記防磁ケース、および、前記窓材を冷却することによって解決できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、トッププレートと赤外線センサ間を冷却すると共に赤外線センサ近傍の窓材や防磁ケースを効率良く冷却できることから、鍋温度以外の熱外乱を抑制し、トッププレート上に載置した鍋の温度を精度良く検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例1の誘導加熱調理器の外観斜視図。
【図2】図1の右側の誘導加熱部のほぼ中央で切断した側面断面図。
【図3】鍋加熱制御システムを示す機能ブロック図。
【図4】実施例1における赤外線センサモジュール12の断面図。
【図5】赤外線センサモジュール12の上面を分解した斜視図。
【図6】トッププレート1や窓材25に用いた結晶化ガラスの赤外線透過特性。
【図7】実施例2における赤外線センサモジュール12の断面図。
【図8】実施例3における赤外線センサモジュール12の断面図。
【図9】実施例4におけるセンサケース26の正面図と側面図。
【図10】実施例4における赤外線センサモジュール12の断面図。
【図11】実施例5における赤外線センサモジュール12専用の第2冷却ファンを組合せた誘導加熱調理器の冷却フロー。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施例について図1から図11に従って説明する。
【実施例1】
【0014】
まず、実施例1における誘導加熱調理器について図1から図6に従って説明する。図1は、本実施例の誘導加熱調理器の外観斜視図である。ここに示すように、本実施例の誘導加熱調理器は、本体2のトッププレート1の上面に設けられた3つの誘導加熱部3(3a、3b、3c)と、本体2の全面左部に設けられた1つのグリル加熱部8を備え、システムキッチンのようなキッチン家具に組み込まれて使用される誘導加熱調理器である。
【0015】
トッププレート1は耐熱性の高い結晶化ガラスよりなり、誘導加熱部3には鉄等の磁性体又はアルミ等の非磁性体よりなる鍋が載置される。このトッププレート1は、4μm以下の波長の赤外線を透過し、これより長い波長をカットする光学特性を有する。誘導加熱部3に載置した鍋は、トッププレート1下に配置した各々の加熱コイルで誘導加熱される。誘導加熱部3a〜3cには鍋底が放射した赤外線をトッププレートの下方に透過する赤外線透過領域4(4a〜4c)を設けている。尚、ここでは誘導加熱部3を3つとしたが、任意の数の誘導加熱部3を設けて良い。
【0016】
本体2の後部では上方に向けて吸気口5および排気口6が開口している。吸気口5は、本体2内部の制御部(図示せず)に冷却風を取り入れるものであり、排気口6は、本体2内部を冷却した冷却風を排気するものである。なお、本実施例では、吸気口5を本体2後部の右側に、排気口6を本体後部の左側に配置した例を示すが、両者の配置を逆にしてもよく、何れか一方または両方を本体2の前面に設ける構成としても良い。
【0017】
本体2上面には操作部7a〜7cを設けており、これらによって、誘導加熱部3a〜3cの加熱の設定、操作を行い、液晶パネルで誘導加熱の出力状態を表示し、使用者に加熱出力の強さを伝達する。
【0018】
図2は、右側の誘導加熱部3aのほぼ中央での誘導加熱調理器の側面断面図である。誘導加熱部3a用の誘導加熱コイル9の下方には、複数の誘導加熱コイルに高周波電力を供給する高周波電力供給回路10と、高周波電力供給回路10と複数の誘導加熱コイルに冷却風を供給する冷却ファン11と、高周波電力供給回路10および冷却ファン11を収納した基板ケース10aを配置している。そして、誘導加熱コイル9の直下には赤外線センサモジュール12を配置している。また、鍋が放射する赤外線を下方の赤外線センサモジュール12に導くと共に、誘導加熱コイル9から放射される赤外線が赤外線センサモジュール12に入射されるのを防ぐ導波管18を備えている。
【0019】
次に、図2の矢印で示す冷却風の流れについて説明する。冷却ファン11の駆動により本体2の吸気口5から吸込んだ冷却風は、冷却ファン11の仕事により高周波電力供給回路10や誘導加熱コイル9などに供給され発熱部品を冷却する。さらに、誘導加熱コイル9に供給される冷却風の一部は赤外線センサモジュール12にも供給されセンサ及びセンサ周辺を冷却する。本体2内部の発熱部を冷却した冷却風は排気口6を抜けて外部に排出される。
【0020】
図3は、鍋加熱制御システムを示す機能ブロック図である。ここに示すように、本実施例の誘導加熱調理器では、赤外線センサモジュール12の出力とトッププレート1の裏面に接触させたサーミスタ13の出力に基づいて被加熱物である鍋14の温度を算出する温度検出回路15、後述する反射率検出回路20の出力に基づいて鍋14の放射率を算出する放射率算出回路16、温度検出回路15が算出した温度を放射率算出回路16の出力に基づいて補正し、補正した温度に応じて高周波電力供給回路10を制御し誘導加熱コイル9に供給する電力を制御する制御回路17により鍋加熱制御システムを構成している。
【0021】
図4は、本実施例の赤外線センサモジュール12の断面図である。また、図5は、赤外線センサモジュールの上面を分解した斜視図である。
【0022】
これらに示すように、熱型赤外線検出回路19、反射率検出回路20を搭載したプリント配線基板21の外郭は、上部樹脂ケース22aと、側底部樹脂ケース22bで囲まれており、上部樹脂ケース22aには開口部23を設けている。そして、開口部23を封鎖するように窓材25が設けられる。上部樹脂ケース22aと側底部樹脂ケース22bは、窓材25に対応した開口部24cを有する上部防磁ケース24aと、側底部防磁ケース24bで囲われている。また、本実施例では、図4に示すように、上部防磁ケース24aと上部樹脂ケース22aの間に、約1mmの間隔101が設けられている。さらに、上部防磁ケース24aと側底部防磁ケース24bは、上部防磁ケース24aの開口部24cに対応した開口部26aと、上部防磁ケース24aの端部から窓材25まで冷却風27の風路となる風洞26bを設けた樹脂製のセンサケース26で覆われている。
【0023】
樹脂ケース22の開口部23は窓材25により封鎖されているので、内部の熱型赤外線検出回路19や反射率検出回路20には冷却風が直接当たることは無い。すなわち、この構成により、冷却風が熱型赤外線検出回路19や反射率検出回路20に与える影響を低減している。また、樹脂ケース22を熱伝導率の低い樹脂で構成することによって、赤外線センサモジュール12の内部の温度が急激に変化するのを防止している。すなわち、この構成によって熱型赤外線検出回路19や反射率検出回路20の温度が伝熱によって急変化するのを防止している。さらに、防磁ケース24を非磁性体のアルミ製にすることによって、赤外線センサモジュール12の内部に浸入する電磁気的ノイズを低減し、防磁ケースが受ける輻射熱を放熱しやすい構成とした。
【0024】
図6は、トッププレート1や窓材25に用いた結晶化ガラスの赤外線透過特性を示す。図中は赤外線波長と赤外線透過率、赤外線波長と黒体温度の放射エネルギの関係を示す。波長が約0.6〜2.6μmの帯域で透過率80%を超えると共に約2.7〜4μmで透過率30%以上であり、他の波長域では透過率30%に満たない。100℃の黒体の熱放射エネルギは、約2μmで最小値、約7μmで最大値を取り、300℃の黒体の熱放射エネルギは、約1.2μmで最小値、約5μmで最大値を取り、100〜300℃の黒体が放射する赤外線は、結晶化ガラスの透過率80%を超える帯域に収まるもので、100〜300℃の鍋が放射する波長の赤外線を結晶化ガラス製のトッププレート1や窓材25を透過し、赤外線センサモジュール12内部の熱型赤外線検出回路19へ向かうことができる。一方で、鍋が放射する赤外線のうち昇温効果の高い4μm以上の波長の大部分をカットされるので、本体2内部が昇温効果の高い赤外線により温められるのを防止できる。
【0025】
このような構成を取ることにより、熱型赤外線検出回路19、反射率検出回路20は、冷却風、周辺温度の急激な変化、昇温効果の高い波長の赤外線の影響、電気的なノイズの悪影響を小さくでき、調理温度120〜300℃の広い温度範囲において精度の高い信号を出力でき、鍋の温度を正確に測定することができる。
【0026】
ここで、熱型赤外線検出回路19の赤外線受光素子にサーモパイルを用い、該サーモパイルから出力される信号を増幅するアンプを備えた場合を例にとり、鍋の温度検出方法を説明する。
【0027】
サーモパイルは受光した赤外線のエネルギに比例して電圧を出力するものである。このため、鍋の温度が上昇すると鍋底からの赤外線放射強度も強くなり、サーモパイルが受光する赤外線エネルギ量が増え、サーモパイルの出力信号電圧が高くなる。一般に、物体の放射する赤外線エネルギはその物体の絶対温度の4乗に比例するというステファン・ボルツマンの法則(数1)があり、温度が高くなればなるほど加速度的に大きな赤外線エネルギを放射する。すなわち、サーモパイルを用いて単位面積当たりの放射量Wを知ることができれば、(数1)に基づいて放射物体の絶対温度を算出できる。
【0028】
W=(2π5κ4/15c23)×T4=σT4 (数1)
W:単位面積当たりの放射量(W/cm2・μm)
κ:ボルツマン定数=1.3807×10-23(W・s/K)
c:光速度=2.9979×1010(cm/s)
h:プランク定数=6.6261×10-34(W・s2
σ:ステファン・ボルツマン定数=5.6706×10-12(W/cm2・K4
T:放射物体の絶対温度(K)
反射率検出回路20は赤外線発光素子と赤外線発光素子で構成されている。赤外線発光素子が発光した赤外線は、導波管18を通り鍋底面で反射して赤外線受光素子に戻る。赤外線受光素子は赤外線量に比例して電圧が発生し、電圧値から赤外線量を知ることができる。つまり、反射率検出回路20は赤外線発光量と赤外線受光量の比から鍋の反射率ρを検出することができる。ここで、反射率検出回路20が求めた反射率に基づいて放射率算出回路16が放射率を算出する方法を説明する。温度Tの金属物質の表面から放射される赤外線エネルギ(E=εσT4)の放射率εと表面の反射率ρの間にはキルヒホフの法則による(数2)が成立する。(但し、透過率α=0とする)すなわち、鍋の反射率を知ることができれば、(数2)を変形した(数3)に基づいて、鍋の放射率εを算出できることが分かる。
【0029】
ε+ρ=1 (数2)
ε=1−ρ (数3)
放射率εが異なる場合、同じ温度であっても、放射する赤外線エネルギが異なるので、熱型赤外線検出回路19内のサーモパイルが検出した赤外線エネルギに対して、放射率算出回路16が算出した放射率εを用いて補正することで、反射率ρが異なる鍋を用いた時であっても鍋底温度を検出できる。
【0030】
次に、本実施例の動作を説明する。ユーザがトッププレート1上に鍋を置き、操作部7aを操作して加熱を開始すると、制御回路17が高周波電力供給回路10を制御して誘導加熱コイル9に所定の電力を供給する。誘導加熱コイル9に高周波電流が供給されると、誘導加熱コイル9から誘導磁界が発せられ、トッププレート1上の鍋に渦電流が発生し誘導加熱される。この誘導加熱によって鍋の温度が上昇する。鍋の温度が上昇すればその温度に応じて赤外線を放射するので、赤外線センサモジュール12で測定した赤外線エネルギ量と反射率から鍋の温度を検出して、ユーザが設定した鍋温度に調整でき、設定温度で調理することができる。
【0031】
次に、図4を用いて、赤外線センサモジュール12近傍での冷却風27の流れおよび断熱構造を詳細に説明する。赤外線センサモジュール12には、側方から冷却風27が供給される。この冷却風27の一部は風洞26bに供給され、一部は隙間101に供給される。風洞26bに供給された冷却風は、センサケース26の開口部26aを通り抜けて導波管18に流れる。また、隙間101に供給された冷却風27aは、供給側の端部から反対側の端部へ通り抜ける。このような冷却風27の流れにより、上部樹脂ケース22a、窓材25、上部防磁ケース24a、および、導波管18が冷却され、これらから発せられる赤外線量が低減する。また、上部防磁ケース24aと上部樹脂ケース22aの間に空気断熱層となる間隔101を設けたので、上方からの熱伝導や自らの誘導加熱により比較的高温になり易い上部防磁ケース24aから上部樹脂ケース22aへの熱伝導が抑制され、上部樹脂ケース22aが放射する赤外線量を更に抑制できる。
【0032】
以上で説明したように、本実施例の構成によれば、導波管18、上部防磁ケース24a、窓材25、上部樹脂ケース22aから放射される赤外線量を抑制できるので、上部樹脂ケース22a等からの赤外線が熱型赤外線検出回路19に与える影響を小さくでき、鍋14の温度を正確に検出することができる。
【0033】
なお、本実施例では、隙間101を1mmとした例を示したが、風路としての機能と、空気断熱層としての機能を担う限り、隙間101の大きさを任意に設定することができる。ただし、赤外線センサモジュールの小型化を考慮すると、隙間101は5mm以下にするのが望ましい。
【実施例2】
【0034】
実施例2について、図7を使用して説明する。なお、実施例1と同等の点については説明を省略することとする。
【0035】
図7は、本実施例の赤外線センサモジュール12の断面図を示す。本実施例では、実施例1で説明した間隔101に加え、センサケース26と上部防磁ケース24aの間にも隙間102を設けた。赤外線センサモジュール12に供給される冷却風27の一部は隙間102にも供給され、供給側の端部から反対側の端部へ通り抜ける。風洞26b、隙間101、102を流れる冷却風27により、上部樹脂ケース22a、窓材25、上部防磁ケース24a、および、導波管18が冷却され、これらから発せられる赤外線量が低減する。また、センサケース26と上部防磁ケース24aの間に空気断熱層となる間隔102を設けたので、上方からの熱伝導により比較的高温になり易いセンサケース26から上部防磁ケース24aへの熱伝導が抑制され、上部防磁ケース24aが放射する赤外線量を更に抑制できる。
【0036】
以上で説明したように、本実施例では、実施例1の構成に隙間102を加えたことにより、鍋14が放射する赤外線以外の赤外線を更に抑制することができ、熱型赤外線検出回路19が検出する鍋の温度を更に正確なものにすることができる。
【実施例3】
【0037】
実施例3について、図8を使用して説明する。なお、実施例1と同等の点については説明を省略することとする。
【0038】
図8は、本実施例の赤外線センサモジュール12の断面図を示す。本実施例では、実施例1で説明したセンサケース26の風洞26bの下流側にも風洞26cを設け、風洞26bに供給された冷却風の一部が風洞26cにも流れるようにした。このように、冷却風の供給側端部から反対側端部に貫通する風洞を流れる冷却風によって上部防磁ケース24aを更に効率よく冷却することができるので、上部防磁ケース24aが放射する赤外線量を更に抑制できる。
【0039】
以上で説明したように、本実施例では、実施例1の構成に風洞26cを加えたことにより、上部防磁ケース24aが放射する赤外線を更に抑制することができ、熱型赤外線検出回路19が検出する鍋の温度を更に正確なものにすることができる。
【実施例4】
【0040】
実施例4について、図9、図10を使用して説明する。なお、実施例1と同等の点については説明を省略することとする。
【0041】
図9(a)は本実施例のセンサケース26を上部防磁ケース24a側から観た正面図、図9(b)は側面図を示す。ここに示すように、センサケース26は、開口部26aの上部防磁ケース24a側に複数の突起状のリブ28を備えている。本実施例の図中のリブ28は3個の場合で説明するが、リブ28の数は何個設置しても構わない。
【0042】
本実施例のセンサケース26のリブ28の作用について、図10の断面図を用いて説明する。リブ28は、上部防磁ケース24aの開口部24cを貫通し窓材25を押さえる。リブ28は点接触で窓材25を固定できることからセンサケース26の熱が窓材25へ伝導する量を抑制できる。また、熱伝導性の高い上部防磁ケース24aと窓材25の接触を避けることができることから、センサケース26や上部防磁ケース24aの熱が窓材25へ伝導することを抑制できる。
【0043】
本実施例では、実施例1の赤外線センサモジュール12を用いて説明したが、実施例2、3の赤外線センサモジュールに本センサケース26を搭載しても同様の効果が得られる。
【実施例5】
【0044】
実施例5について、図11を使用して説明する。なお、実施例1と同等の点については説明を省略することとする。
【0045】
図11は、赤外線センサモジュール12専用の冷却ファンを採用した誘導加熱調理器の冷却フローを示す。冷却フローは、冷却ファン11の駆動により本体2の吸気口5から冷却風を吸込み、冷却ファン11を通じて高周波電力供給回路10や誘導加熱コイル9などの発熱部品に冷却風を供給して冷却する。さらに、誘導加熱コイル9に供給される冷却風の一部は赤外線センサモジュール12の冷却風27として導かれセンサ及びセンサ周辺を冷却する。赤外線センサモジュール12の近傍にはセンサ冷却専用の第2冷却ファン29を設けており、冷却風を赤外線センサモジュール12へ直接供給する。本体2内部の発熱部品を冷却した冷却風は排気口6を抜けて外部に排出される。
【0046】
冷却ファン11の回転数が可変式の誘導加熱調理器において、ユーザの設定した火力に応じて冷却ファン11の回転数を調節する場合がある。このような動作の場合、ファンが低回転で使用されると赤外線センサモジュール12に供給される冷却風量が少なく、センサ周辺の冷却が不十分となり鍋の温度の検出精度を低下させる恐れがある。冷却ファン11とは独立した第2冷却ファン29は火力に関係なく、センサ冷却に適切な風量を常に供給できることから、センサを安定的に冷却できることとなり、ユーザの使用状態に係らず、鍋温度の検出が常に精度良く検出できることとなる。
【符号の説明】
【0047】
1 トッププレート
2 本体
5 吸気口
6 排気口
9 誘導加熱コイル
10 高周波電力供給回路
11 冷却ファン
12 赤外線センサモジュール
15 温度検出回路
16 放射率算出回路
17 制御回路
18 導波管
19 熱型赤外線検出回路
20 反射率検出回路
22 樹脂ケース
24 防磁ケース
25 窓材
26 センサケース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鍋を載置するトッププレートと、該トッププレートの下方に設けられる加熱コイルと、該加熱コイルに高周波電力を供給する高周波電力供給回路と、該加熱コイルの下方に設けられた赤外線センサモジュールと、該赤外線センサモジュールの出力に基づいて前記鍋の温度を算出する温度検出回路と、冷却風を供給する冷却ファンを備えた誘導加熱調理器において、
前記赤外線モジュールは、受光した放射線量に応じた信号を出力する赤外線検出回路と、該赤外線検出回路を搭載したプリント配線基板と、該プリント配線基板の上方を覆うとともに開口部を有する樹脂ケースと、該開口部を封鎖する窓材と、該窓材の上方を除き前記樹脂ケースの上方を覆う防磁ケースで構成され、
前記赤外線センサモジュールに供給される冷却風の一部は、前記樹脂ケースと前記防磁ケースの間に設けられた隙間を通って、前記樹脂ケース、前記防磁ケース、および、前記窓材を冷却することを特徴とする誘導加熱調理器。
【請求項2】
請求項1に記載の誘導加熱調理器において、
さらに、前記窓材の上方を除き前記防磁ケースの上方を覆うセンサケースを備えており、
前記赤外線センサモジュールに供給される冷却風の一部は、前記防磁ケースと前記センサケースの間に設けられた隙間を通って、前記防磁ケース、および、前記センサケースを冷却することを特徴とする誘導加熱調理器。
【請求項3】
請求項1に記載の誘導加熱調理器において、
さらに、前記窓材の上方を除き前記防磁ケースの上方を覆うとともに、冷却風の供給側端部から反対側端部に貫通する風洞を有するセンサケースを備えており、
前記赤外線センサモジュールに供給される冷却風の一部は、前記風洞を通って、前記防磁ケース、および、前記センサケースを冷却することを特徴とする誘導加熱調理器。
【請求項4】
請求項1に記載の誘導加熱調理器において、
さらに、前記窓材の上方を除き前記防磁ケースの上方を覆うセンサケースを備えており、
該センサケースの前記防磁ケース側の面に突起部を設け、
該突起部で前記窓材を上方から押さえることを特徴とする誘導加熱調理器。
【請求項5】
請求項1〜4何れか一項に記載の誘導加熱調理器において、
高周波電力供給回路と加熱コイルに冷却風を供給する第一の冷却ファンと、
前記赤外線センサモジュールに冷却風を供給する第二の冷却ファンを備えたことを特徴とする誘導加熱調理器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−97935(P2013−97935A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−238155(P2011−238155)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(399048917)日立アプライアンス株式会社 (3,043)
【Fターム(参考)】