説明

誘導同期電動機とそれを用いた密閉型電動圧縮機

誘導同期電動機は、主巻線と補助巻線とを有する固定子と、継鉄部と継鉄部に埋め込まれた永久磁石と継鉄部の外周近傍に設けた二次導体とを有する回転子と、起動装置とを有する。その起動装置は、誘導同期電動機の補助巻線に直列に接続された起動コンデンサと、補助巻線と起動コンデンサとの回路を開閉する開閉部とを有する。開閉部は、誘導同期電動機の停止時には、補助巻線と起動コンデンサとの回路を閉じる。また誘導同期電動機の起動後には回路を開く。この誘導同期電動機は、消費電力が低下して高効率で再起動性の良い。それを用いた密閉型電動圧縮機も同様の効果を奏する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気冷蔵庫やエアコン等に搭載される誘導同期電動機とそれを用いた密閉型電動圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気冷蔵庫やエアコン等に搭載される密閉型電動圧縮機には、効率向上のため、誘導同期電動機が使用され始めている。また、起動装置には、正特性サーミスタを内蔵したPTCリレーが使用されている。このような電動機と圧縮機は例えば、特開2002−300763号公報に開示されている。
【0003】
以下、図面を参照しながら従来の誘導同期電動機とそれを用いた密閉型電動圧縮機を説明する。図11は、従来の密閉型電動圧縮機の断面図、図12は従来の誘導同期電動機の回転子の断面図、図13は従来の誘導同期電動機の回路図である。
【0004】
密閉容器6には誘導同期電動機(以下、電動機)1と電動機1によって駆動される圧縮部5が収容されている。電動機1は起動時にはインダクションモータとして働き、安定運転時には誘導同期型のモータとして電源周波数に同期して回転する。電動機1は、固定子2と回転子3とから構成されている。固定子2は、電気鉄板を積層して形成したコア(図示せず)に主巻線11と補助巻線12とが旋巻されて構成されている。回転子3は、同じく電気鉄板を積層して形成した継鉄部9に永久磁石10を収納するとともに、継鉄部9の外周近傍にアルミからなる二次導体4を形成して構成されている。
【0005】
運転コンデンサ15はハーメチックターミナル7を介して補助巻線12と接続されている。起動コンデンサ14と、正特性サーミスタ(以下、サーミスタ)13が内蔵されているPTCリレー8は、運転コンデンサ15と並列に、補助巻線12と直列に接続されている。
【0006】
図14は誘導同期電動機の速度−トルク曲線を示した特性図であり、横軸は電動機1の回転速度、縦軸はトルクを示している。
【0007】
曲線87は誘導電動機として有するトルク特性で、合成トルク81は、永久磁石10によって発生するブレーキトルク88と曲線87の示すトルク特性との合成である。合成トルク81が電動機1の出力トルクとなる。トルク90は電動機1の起動トルクであり、トルク83は最大トルクである。トルク84は同期速度における出力トルクで、電動機1は通常トルク84における最大値以下の負荷で同期運転される。
【0008】
以上のように構成された電動機1とそれを用いた密閉型電動圧縮機について、以下その動作を説明する。
【0009】
電源が投入されると、電動機1の主巻線11、補助巻線12と、サーミスタ13と、起動コンデンサ14、運転コンデンサ15とに起動電流が流れる。起動電流が流れると主巻線11と補助巻線12は回転磁界を形成し、二次導体4に誘起電流が生じ磁界が発生する。これにより、起動トルク90によって回転子3が回転を開始し、出力トルク81の曲線に沿って回転速度が上昇する。そして同期速度に近づくとトルク84の発生する同期速度で同期運転に移る。
【0010】
また同時に、サーミスタ13に電流が流れることで自己発熱によりサーミスタ13の温度が上昇し、抵抗値がジャンプアップする。これにより起動コンデンサ14への通電が実質的に遮断され、電動機1は同期速度で運転を続ける。
【0011】
そして回転子3は圧縮部5を駆動し、周知の圧縮動作がなされる。
【0012】
しかしながら、上記従来の構成では、サーミスタ13には、電動機1の運転中、高抵抗値を維持するのに必要な発熱を継続するため、微小電流が流れ続ける。また、電動機1で必要なトルク特性を得るためには、上述したように永久磁石10により発生するブレーキトルクによって相殺されるトルクを補う必要がある。このため、通常の誘導電動機と比較して、電磁誘導トルクを大きくする必要がある。
【0013】
電磁誘導トルクを大きくするためには、一般的に補助巻線12の巻数を増やして巻数比を大きくする。しかしながらその結果、補助巻線12の誘起電圧が高くなり、補助巻線12に接続されるPTCリレー8の印加電圧も高くなる。このため、サーミスタ13には通常の誘導電動機と比較して、高い耐電圧特性が必要である。
【0014】
そして、サーミスタ13の耐電圧特性を上げるためには、サーミスタ13の体積を大きくする必要がある。このようにすると高抵抗値を維持するのに必要な発熱量が増加し、その結果PTCリレー8自体の消費電力が3〜4Wになり、電動機1の効率が大きく低下する。このため、密閉型電動圧縮機の効率が低下する。
【0015】
また、サーミスタ13の径を大きくすることにより、サーミスタ13の熱容量が増え、冷却されにくくなる。このため、再起動が可能な温度に冷えるまでの時間が伸び、密閉型電動圧縮機の再起動性が低下する。
【発明の開示】
【0016】
本発明の誘導同期電動機は、主巻線と補助巻線とを有する固定子と、継鉄部と継鉄部に埋め込まれた永久磁石と永久磁石の外周近傍に設けた二次導体とを有する回転子と、起動装置とを有する。その起動装置は、誘導同期電動機の補助巻線に直列に接続された起動コンデンサと、補助巻線と起動コンデンサとの回路を開閉する開閉部とを有する。開閉部は、誘導同期電動機の停止時には、補助巻線と起動コンデンサとの回路を閉じる。また誘導同期電動機の起動後には回路を開く。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、各実施の形態において、同じ構成、同じ動作をする部分については先行する実施の形態と同一符号を付与し、詳細な説明を省略する。
【0018】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態による密閉型電動圧縮機の断面図、図2は同誘導同期電動機の回転子の断面図である。図3は同誘導同期電動機の回路図である。
【0019】
密閉型電動圧縮機(以下、圧縮機)31において、密閉容器36には誘導同期電動機(以下、電動機)21と、電動機21によって駆動される圧縮部35が収容されている。電動機21は起動時にはインダクションモータとして働き、安定運転時には誘導同期型のモータとして電源周波数に同期して回転する。電動機21は、固定子32と回転子33とを有する。固定子32は、電気鉄板を積層して形成したコア(図示せず)に主巻線22と補助巻線23とが旋巻されて構成されている。回転子33は、同じく電気鉄板を積層して形成した継鉄部39に永久磁石40を収納するとともに、継鉄部39の外周近傍にアルミからなる二次導体34を形成して構成されている。
【0020】
補助巻線23には起動装置24Aを構成する正特性サーミスタ(以下、サーミスタ)25、トライアック29、起動コンデンサ27が直列に接続されている。この直列回路に並列に運転コンデンサ28が接続されている。トライアック29は、サーミスタ25と起動コンデンサ27とに直列に接続され、トライアック29のゲートには、トライアック29の制御回路であるトリガー回路30が接続されている。トリガー回路30としては、抵抗とダイオード、コンデンサで構成された回路、正特性サーミスタで構成されたもの等(図示しない)公知のものを使用できる。
【0021】
以上のように構成された電動機21について、以下その動作を説明する。
【0022】
起動時、トライアック29はオフ状態であるが、トリガー回路30に通電されると、トライアック29がオン状態になる。そして補助巻線23に起動電流が流れ、電動機21が起動を開始する。すなわち主巻線22、補助巻線23と、サーミスタ25と、起動コンデンサ27、運転コンデンサ28とに起動電流が流れる。起動電流が流れると主巻線22と補助巻線23は回転磁界を形成し、二次導体34に誘起電流が生じ磁界が発生する。このように固定子32の発生する磁界により生じる起動トルクによって回転子33が回転を開始し、回転速度が上昇する。そして同期速度に近づくと同期運転に移る。
【0023】
一方、起動電流が流れると、起動装置24に内蔵されているサーミスタ25が通電により発熱し、抵抗値が急激に上昇し、補助巻線23に流れる電流値は減少する。このようにして起動が完了し、誘導電動機21は同期速度で運転する。
【0024】
さらに起動から一定時間後、トリガー回路30がトライアック29のゲート電圧を低下させ、トライアック29をオフ状態とする。トライアック29がオフになるとサーミスタ25への通電が遮断されるため、サーミスタ25の電力消費が無くなる。このようにトライアック29とトリガー回路30とは、電動機21の起動時に導通し、起動後に回路を開いて起動コンデンサ27を切り離す開閉部を構成している。そしてサーミスタ25と起動コンデンサ27とこの開閉部とが起動装置24Aを構成している。
【0025】
このため、サーミスタ25により消費される数ワットの電力消費が無くなり、効率の高い電動機21と圧縮機31とが得られる。さらにサーミスタ25への通電が遮断されると、圧縮機31の運転中、サーミスタ25は放熱冷却されるため、低抵抗の状態に復帰する。その結果ほぼ常時起動可能な状態になっているので、再起動性の良い電動機21と圧縮機31とが得られる。また、トライアック29のスイッチング機能により開閉部を構成しているので、無接点で信頼性が高い。
【0026】
なお、図3においてサーミスタ25を除いた回路を構成してトライアック29のスイッチング機能にのみで開閉部を構成してもよい。この場合、電動機21の起動後の適切なタイミングにトリガー回路30により回路を開く必要がある。これに対し、図3のようにサーミスタ25を設ければ、電動機21の起動後すぐにサーミスタ25の抵抗値が上昇して実質的に回路を開き、その後トライアック29を作動させればよい。すなわち、トリガー回路30の制御には、それほど精度を必要としない。
【0027】
(実施の形態2)
図4は本発明の実施の形態2における誘導同期電動機の回路図である。図4では、起動装置24Bは、サーミスタ25、起動コンデンサ27、バイメタルスイッチ41、補助正特性サーミスタ(以下、補助サーミスタ)42で構成されている。バイメタルスイッチ41はサーミスタ25と起動コンデンサ27とに直列に接続されている。バイメタルスイッチ41には、バイメタルスイッチ41と並列に補助巻線23に接続された加熱部である補助サーミスタ42が熱結合されて、バイメタルスイッチ41に熱影響を与える。本構成ではバイメタルスイッチ41と補助サーミスタ42とが開閉部を構成している。そしてサーミスタ25と起動コンデンサ27とこの開閉部とが起動装置24Bを構成している。これ以外の構成は実施の形態1と同様である。
【0028】
以上のように構成された誘導同期電動機(以下、電動機)21と起動装置24Bとの動作を説明する。
【0029】
起動時、可動接点142は固定接点144と接触しバイメタルスイッチ41はオン状態で、補助巻線23に起動電流が流れ、電動機21が起動を開始する。起動電流が流れると、起動装置24Bに内蔵されているサーミスタ25が通電により発熱し、抵抗値が急激に上昇し、補助巻線23に流れる電流値は減少する。このようにして起動が完了し、誘導電動機21は同期速度で運転する。
【0030】
さらに起動から一定時間後、補助サーミスタ42が発熱し、バイメタルスイッチ41を加熱する。バイメタルスイッチ41が動作温度に達すると反転して、可動接点142が固定接点144から切り離され、バイメタルスイッチ41がオフ状態になる。バイメタルスイッチ41がオフになるとサーミスタ25への通電が遮断されるため、サーミスタ25の電力消費が無くなる。よって、実施の形態1と同様に効率が高く再起動性のよい電動機21と圧縮機31とが得られる。
【0031】
なお、この際、補助サーミスタ42は通常、自己発熱に必要な消費電力を極めて低く設定できるため、この発熱によるロスは非常に少ない。
【0032】
また、上記構成において図5のようにサーミスタ25を取り除いても起動装置24Cを構成できる。この構成ではバイメタルスイッチ41と補助サーミスタ42とが開閉部を構成している。そして起動コンデンサ27とこの開閉部とが起動装置24Cを構成している。以下、この構成による電動機21と起動装置24Cとの動作を説明する。
【0033】
起動時には、バイメタルスイッチ41はONの状態であり、補助巻線23と主巻線22とに起動電流が流れ、主巻線22と補助巻線23とが回転磁界を形成する。電動機21は速度−トルク曲線に沿って、回転速度を上昇させ、同期速度に達して同期運転になり、起動を完了する。
【0034】
この起動から同期運転に到る間で補助サーミスタ42が発熱し、バイメタルスイッチ41を加熱する。バイメタルスイッチ41が動作温度に達すると反転して、バイメタルスイッチ41がオフ状態になる。つまり起動コンデンサ27は補助巻線23から切り離される。
【0035】
バイメタルスイッチ41の開閉動作において、消費される電力はバイメタルスイッチ41を加熱する補助サーミスタ42の電力である。その消費電力は1W以下であるため、PTCリレーに用いられるサーミスタ25の消費電力と比較して小さい。このため起動装置24CはPTCリレーと比較して低消費電力で、電動機21を起動させるとともにバイメタルの反転状態を維持する。
【0036】
このように補助サーミスタ42の少ない消費電力で電動機21、圧縮機31を起動、運転させることができる。すなわち、PTCリレーを使用したときに発生する運転時の数ワット程度の消費電力分を節電でき、高い効率が得られる。
【0037】
さらに、補助サーミスタ42はPTCリレーに比べ高抵抗であることから容量が小さく、その結果放熱が早く、再起動に必要な温度に到達する時間が早い。そのため、再起動性の良い電動機21、圧縮機31が得られる。
【0038】
しかしながら、図5のようにバイメタルスイッチ41を補助サーミスタ42の熱により作動させる場合、バイメタルスイッチ41の作動精度にはバラツキを含みやすい。そのため、図4のようにサーミスタ25を併用することによって電動機21の起動後すぐにサーミスタ25の抵抗値が上昇して実質的に回路が開かれる。
【0039】
なお、本実施の形態で示した図4,図5の構成において、加熱部とし、補助サーミスタ42の代わりにヒータ43を用いても同様の作用効果が得られる。この際、ヒータ43は通常、発熱に必要な消費電力を極めて低く設定できるため、この発熱によるロスは比較的少ない。また補助サーミスタ42に較べて安価である。
【0040】
(実施の形態3)
図6は本発明の実施の形態3における誘導同期電動機の回路図である。図6では、起動装置24Dは、サーミスタ25、起動コンデンサ27、電流型リレー(以下、リレー)44で構成されている。リレー44の固定接点122、可動接点123はサーミスタ25と起動コンデンサ27とに直列に接続されている。リレー44のコイル124は主巻線22に直列に接続されている。本構成ではリレー44が開閉部を構成している。そしてサーミスタ25と起動コンデンサ27とこの開閉部とが起動装置24Dを構成している。これ以外の構成は実施の形態1と同様である。
【0041】
図7はリレー44の断面図である。リレー44はケース125内に、固定接点122と可動接点123とを有する。可動接点123はプランジャー126と一体になっている。リレー44は、プランジャー126をガイドするセンターピン127、可動接点123の駆動を補助するスプリング128とをさらに有する。コイル124は、プランジャー126の周囲を囲うようにケース125の外側に巻かれている。
【0042】
以上のように構成された誘導同期電動機(以下、電動機)21とリレー44を含む起動装置24Dとの動作を説明する。
【0043】
起動時に、主巻線22に流れる起動電流によりコイル124に磁界が発生する。これにより、可動接点123と一体になったプランジャー126がセンターピン127にガイドされてコイル124に引きつけられて反重力側に移動する。そして固定接点122と可動接点123とが接触してオン状態になり、補助巻線23に起動電流が流れる。この時、スプリング128は縮み反発力を蓄える。
【0044】
補助巻線23に起動電流が流れると、電動機21が起動を開始する。起動電流が流れると起動装置24Dに内蔵されているサーミスタ25が通電により発熱し、抵抗値が急激に上昇し、補助巻線23に流れる電流値は減少する。このようにして起動が完了し、電動機21は同期速度で運転する。
【0045】
起動完了とともに、主巻線22に流れる電流値も急激に減少するため、コイル124の磁界による磁力が減少する。そして自重とスプリング128の反発力により可動接点123と一体になったプランジャー126が重力方向に動いて可動接点123が固定接点122から離れて開く。すなわちリレー44の接点がオフになり、サーミスタ25への通電が遮断され、サーミスタ25の電力消費が無くなる。このため、サーミスタ25により消費される数ワットの電力消費が無くなる。よって、実施の形態1と同様に効率が高く再起動性のよい電動機21と圧縮機31とが得られる。しかも電動機21の起動とほぼ同時に起動装置が遮断され、より効率が高い。
【0046】
また、上記構成において図8のようにサーミスタ25を取り除いても起動装置24Eを構成できる。この構成でもリレー44が開閉部を構成している。そして起動コンデンサ27とこの開閉部とが起動装置24Eを構成している。以下、この構成による電動機21と起動装置24Eとの動作を説明する。
【0047】
起動時に、上記と同様にしてリレー44がオン状態になり補助巻線23に起動電流が流れる。起動電流が主巻線22と補助巻線23とに流れると、主巻線22と補助巻線23とが回転磁界を形成し、電動機21は速度−トルク曲線に沿って回転速度を上昇させる。そして電動機21の回転は同期速度に達して同期運転になり起動が完了する。リレー44は、電動機21が同期速度に達してから接点を開いて起動コンデンサ27を切り離すので、電動機21が確実に起動する。
【0048】
電動機21の起動が完了すると急激に主巻線22に流れる電流が減少し、前述のように可動接点123が固定接点122から離れて開き、起動コンデンサ27は補助巻線23から切り離される。この可動接点123の開閉動作において、消費される電力はコイル124の抵抗成分のみであり、運転時にほとんど消費電力が発生しない。
【0049】
従って、リレー44を使用することにより、電動機21や圧縮機31において、PTCリレーを使用したときに発生する運転時の数ワット程度の消費電力分を節電でき、高い効率が得られる。
【0050】
このように、本構成ではPTCリレーを使用せずに電動機21及び圧縮機31を起動させるので、PTCリレーの電力消費が無くなり、効率が高まり、再起動性が向上する。また構造が簡単なので、起動装置を小型化できる。
【0051】
本実施の形態において、リレー44のみで起動コンデンサ27の回路を開く場合、起動時にリレー44の接点122,123には大電流が流れる。これに対し、サーミスタ25を適用する構成では、起動前の状態で5〜40Ωの抵抗をサーミスタ25が有するため接点122、123へ流れる電流が低減される。この結果、接点122,123の荒れや溶着が防止され、その寿命が改善される。
【0052】
(実施の形態4)
図9は、本発明の実施の形態4における電圧型リレーを用いた誘導同期電動機の回路図、図10は同実施の形態における電圧型リレーの断面図である。
【0053】
本実施の形態では、起動装置24Fは、起動コンデンサ27と、電圧型リレー(以下、リレー)101とで構成されている。誘導同期電動機(以下、電動機)21は主巻線22、補助巻線23を有する。補助巻線23にはリレー101の固定接点102、可動接点103と、起動コンデンサ27とが直列に接続されている。この直列回路に並列に運転コンデンサ28が接続され、リレー101のコイル104は補助巻線23に並列に接続されている。本構成ではリレー101が開閉部を構成している。そして起動コンデンサ27とこの開閉部とが起動装置24Fを構成している。
【0054】
リレー101のケース105内には、固定接点102と可動接点103とが配設され、固定接点102は起動コンデンサ27と直列に接続されている。可動子106の一端には開口部107があり、可動接点103の先端が遊嵌され、もう一端は固定台108に支持されるとともに、スプリング109で掛止されている。コイル104は、鉄心110に巻設されて可動子106の近傍に配設されている。可動子106は鉄、ニッケル等の磁性体金属からなる。
【0055】
以上のように構成された電動機21とリレー101を含む起動装置24Fとの動作を説明する。
【0056】
電動機21の停止時は、スプリング109により可動子106が上方に引き上げられているため、可動接点103は固定接点102と接触し閉じている。起動時には、主巻線22、補助巻線23に同時に起動電流が流れる。起動電流が流れると主巻線22と補助巻線23とが回転磁界を形成し、電動機21は速度−トルク曲線に沿って、回転速度を上昇させ、同期速度に達して同期運転になり、起動を完了する。
【0057】
また、起動と同時に補助巻線23に並列に接続されたコイル104に起動電流が流れ、鉄心110に磁力が発生するが、初期の電圧では磁力が弱く、鉄心110は可動子106を吸引しない。しかし電動機21の回転速度が増加し、同期速度に達すると、鉄心110は磁力を増加し、スプリング109の力に打ち勝って可動子106を吸引する。そして可動子106の開口部107が可動接点103を押し下げて可動接点103が固定接点102と離れて回路を開き、起動コンデンサ27を切り離して起動が完了する。このようにリレー101は電動機21が同期速度に達してから接点を開き、起動コンデンサ27を切り離すので、電動機21が確実に起動する。
【0058】
運転中はコイル104が誘起しているので可動子106は鉄心110に吸引され、可動接点103は開の状態を保持する。
【0059】
一方、電動機21の停止時に、コイル104は無通電になり、鉄心110には磁力が発生しない。このため、スプリング109の力により接点は再び閉の状態になる。この可動接点103の開閉動作において、消費される電力はコイル104の抵抗成分のみであり、運転時にほとんど消費電力が発生しない。
【0060】
従って、リレー101を使用することにより、電動機21や圧縮機31において、PTCリレーを使用したときに発生する運転時の数ワット程度の消費電力分を節電でき、高い効率が得られる。
【0061】
このように、本構成でもPTCリレーを使用せずに電動機21及び圧縮機31を起動させるので、PTCリレーの電力消費が無くなり、効率が高まり、再起動性が向上する。
【産業上の利用可能性】
【0062】
誘導同期電動機は、主巻線と補助巻線とを有する固定子と、固定子の生じる磁場により回転する回転子と、起動装置とを有する。その起動装置は、誘導同期電動機の補助巻線に直列に接続された起動コンデンサと、補助巻線と起動コンデンサとの回路を開閉する開閉部とを有する。開閉部は、誘導同期電動機の停止時には、補助巻線と起動コンデンサとの回路を閉じる。また誘導同期電動機の起動後には回路を開く。この構成により、PTCリレーの正特性サーミスタによる電力消費がなくなり、又正特性サーミスタが冷却されるので、効率が高く、再起動性の良い誘導同期電動機が得られる。さらにこのような誘導同期電動機を用いて効率が高く、再起動性の良い密閉型電動圧縮機が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の実施の形態による密閉型電動圧縮機の断面図
【図2】本発明の実施の形態による誘導同期電動機の回転子の断面図
【図3】本発明の実施の形態による誘導同期電動機の回路図
【図4】本発明の実施の形態による他の誘導同期電動機の回路図
【図5】本発明の実施の形態によるさらに他の誘導同期電動機の回路図
【図6】本発明の実施の形態によるさらに他の誘導同期電動機の回路図
【図7】図6における起動装置の断面図
【図8】本発明の実施の形態によるさらに他の誘導同期電動機の回路図
【図9】本発明の実施の形態によるさらに他の誘導同期電動機の回路図
【図10】図9における起動装置の断面図
【図11】従来の密閉型電動圧縮機の断面図
【図12】従来の誘導同期電動機における回転子の断面図
【図13】従来の誘導同期電動機の回路図
【図14】誘導同期電動機の速度−トルク曲線図
【符号の説明】
【0064】
1 誘導同期電動機
2 固定子
3 回転子
4 二次導体
5 圧縮部
6 密閉容器
7 ハーメチックターミナル
8 PTCリレー
9 継鉄部
10 永久磁石
11 主巻線
12 補助巻線
13 正特性サーミスタ
14 起動コンデンサ
15 運転コンデンサ
21 誘導同期電動機
22 主巻線
23 補助巻線
24A,24B,24C,24D,24E,24F 起動装置
25 正特性サーミスタ
27 起動コンデンサ
28 運転コンデンサ
29 サイリスタ
30 トリガー回路
31 密閉型電動圧縮機
32 固定子
33 回転子
34 二次導体
35 圧縮部
36 密閉容器
37 ハーメチックターミナル
39 継鉄部
40 永久磁石
41 バイメタルスイッチ
42 補助正特性サーミスタ
43 ヒータ
44 電流型リレー
81 合成トルク
83 最大トルク
84 同期運転時トルク
87 トルク曲線
88 ブレーキトルク
90 起動トルク
101 電圧型リレー
102 固定接点
103 可動接点
104 コイル
105 ケース
106 可動子
107 開口部
108 固定台
109 スプリング
110 鉄心
122 固定接点
123 可動接点
124 コイル
125 ケース
126 プランジャー
127 センターピン
128 スプリング
142 可動接点
144 固定接点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主巻線と補助巻線とを有する固定子と、
継鉄部と、前記継鉄部に埋め込まれた永久磁石と、前記継鉄部の外周近傍に設けた二次導体とを有する回転子と、を備えた誘導同期電動機であって、
前記補助巻線に直列に接続された起動コンデンサと、
前記誘導同期電動機の停止時には、前記補助巻線と前記起動コンデンサとの回路を閉じ、前記誘導同期電動機の起動後に前記回路を開く開閉部と、を有する起動装置と、をさらに備えた、
誘導同期電動機。
【請求項2】
前記開閉部は、
前記回路に直列に接続されたトライアックと、
前記トライアックを制御するトリガー回路と、を有する、
請求項1記載の誘導同期電動機。
【請求項3】
前記開閉部は、
前記回路に直列に接続されたバイメタルスイッチと、
前記バイメタルスイッチに並列に接続され、前記バイメタルスイッチに熱影響を与える加熱部と、を有する、
請求項1記載の誘導同期電動機。
【請求項4】
前記加熱部は、補助正特性サーミスタとヒータとのいずれかで構成された、
請求項3記載の誘導同期電動機。
【請求項5】
前記開閉部は、
前記主巻線に直列に接続されたコイルと、
前記コイルにより駆動する可動接点と、
前記回路に直列に接続され、前記可動接点と接触する固定接点と、を有する電流型リレーである、
請求項1記載の誘導同期電動機。
【請求項6】
前記電流型リレーは、前記可動接点と一体に形成されたプランジャーと、をさらに備え、前記電動機の起動時には前記コイルによって前記プランジャーを反重力方向に移動させて前記回路を閉じ、前記電動機の起動後には前記プランジャーにかかる重力によって前記回路を開く、
請求項5の誘導同期電動機。
【請求項7】
前記開閉部は、
前記補助巻線と並列に接続されたコイルと、
前記コイルにより駆動する可動接点と、
前記回路に直列に接続され、前記可動接点と接触する固定接点と、を有する電圧型リレーである、
請求項1記載の誘導同期電動機。
【請求項8】
前記起動装置は前記回路に直列に接続された正特性サーミスタと、をさらに有し、
前記開閉部は前記電動機の起動後に前記正特性サーミスタへの通電を遮断する、
請求項2、3、5のいずれかに記載の誘導同期電動機。
【請求項9】
密閉容器と、
主巻線と補助巻線とを有する固定子と、
継鉄部と前記継鉄部に埋め込まれた永久磁石と前記永久磁石の外周近傍に設けた二次導体とを有する回転子と、を有し、前記密閉容器内に設けられた誘導同期電動機と、
前記補助巻線に直列に接続された起動コンデンサと、
前記誘導同期電動機の停止時には、前記補助巻線と前記起動コンデンサとの回路を閉じ、前記誘導同期電動機の起動後に前記回路を開く開閉部と、を有する起動装置と、
前記誘導同期電動機によって駆動される圧縮部と、を備えた、
密閉型電動圧縮機。
【請求項10】
前記開閉部は、
前記回路に直列に接続されたトライアックと、
前記トライアックを制御するトリガー回路と、を有する、
請求項9記載の密閉型電動圧縮機。
【請求項11】
前記開閉部は、
前記回路に直列に接続されたバイメタルスイッチと、
前記バイメタルスイッチに並列に接続され、前記バイメタルスイッチに熱影響を与える加熱部と、を有する、
請求項9記載の密閉型電動圧縮機。
【請求項12】
前記加熱部は、補助正特性サーミスタとヒータとのいずれかで構成された、
請求項11記載の密閉型電動圧縮機。
【請求項13】
前記開閉部は、
前記主巻線に直列に接続されたコイルと、
前記コイルにより駆動する可動接点と、
前記回路に直列に接続され、前記可動接点と接触する固定接点と、を有する電流型リレーである、
請求項9記載の密閉型電動圧縮機。
【請求項14】
前記電流型リレーは、前記可動接点と一体に形成されたプランジャーと、をさらに備え、前記電動機の起動時には前記コイルによって前記プランジャーを反重力方向に移動させて前記回路を閉じ、前記電動機の起動後には前記プランジャーにかかる重力によって前記回路を開く、
請求項13記載の密閉型電動圧縮機。
【請求項15】
前記開閉部は、
前記補助巻線と並列に接続されたコイルと、
前記コイルにより駆動する可動接点と、
前記回路に直列に接続され、前記可動接点と接触する固定接点と、を有する電圧型リレーである、
請求項9記載の密閉型電動圧縮機。
【請求項16】
前記起動装置は前記回路に直列に接続された正特性サーミスタと、をさらに有し、
前記開閉部は前記電動機の起動後に前記正特性サーミスタへの通電を遮断する、
請求項10、11、13のいずれかに記載の密閉型電動圧縮機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公表番号】特表2007−527189(P2007−527189A)
【公表日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−518503(P2006−518503)
【出願日】平成16年4月19日(2004.4.19)
【国際出願番号】PCT/JP2004/005541
【国際公開番号】WO2005/006520
【国際公開日】平成17年1月20日(2005.1.20)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】