説明

誘導発熱ローラ装置

【課題】誘導発熱ローラの表面温度の精度を高めるとともに、誘導発熱ローラ周辺の配線を簡素化した誘導発熱ローラ装置を提供すること。
【解決手段】中空内に誘導コイル2が配置され、該誘導コイル2への交流電流の印加により誘導発熱するローラシェル1と、前記ローラシェル1の肉厚内に挿入された温度検出器8と、前記温度検出器8の検出信号を線形化し誤差を修正してデジタル信号に変換して無線送信する送信部7と、前記送信部7からの信号を受信しデジタル信号を解読してアナログ信号に変換して温度調節計10に送るようにするとともに、前記誘導コイルと電磁結合する発電用コイル6を回転側に設け、前記発電用コイル6に誘起した電力を、回転側に設けた前記送信部7に供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘導発熱ローラ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ローラ本体の中空内部に誘導コイルを配置した誘導発熱ローラやローラ本体の中空内に熱流体を通流するローラなどの熱処理ローラでは、ローラの肉厚内に温度検知器を配置し、その温度検知器で検出したローラの表面温度検出信号に基づいて誘導コイルに流す電流や熱流体の温度を制御し、ローラの表面温度を所定の温度に維持するようにする場合がある。この場合、温度検知器で検出したローラの表面温度検出信号は、ローラのジャーナルに設置した回転トランスを介して地上側、すなわち固定側に配置した温度制御装置に送られる。回転側に配置されて温度検知器などへの電力は、固定側に配置した交流電源から回転トランスを介して供給されている。
【特許文献1】特開2003−178862号公報
【特許文献2】特開2004−195888号公報
【特許文献3】特開2002−093567号公報
【0003】
しかし、回転側に配置されて温度検知器の検出信号を、回転トランスを介して固定側の温度制御装置に送る構成では、検知精度の高い温度検知器を用いても、回転変圧器の伝達精度などに左右されローラの表面温度の変動を±0.1℃以内に収めることができないという問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、誘導発熱ローラの表面温度の精度を高めるとともに、誘導発熱ローラ周辺の配線を簡素化し、斯かる問題を解消する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、回転する中空のローラと、前記ローラの肉厚内に挿入された温度検出器と、前記ローラに装着され前記温度検出器の検出信号をデジタル信号に変換して無線送信する変換送信回路と、前記ローラの中空内に配置され前記ローラを発熱する誘導コイルとを備えた誘導発熱ローラ装置であって、前記誘導コイルと電磁結合して電力を誘起する発電用コイルを前記ローラに装着し、前記発電用コイルで誘起した電力を前記変換送信回路に供給してなることを主な特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、ローラの回転側で温度検知器の検知信号を高精度のデジタル信号に変換して固定側の温度制御装置に無線送信するので、精度の高い温度検出信号を得ることができ、これにより誘導発熱ローラの表面温度の精度を高めることができる。また、回転側に配置した温度検知器や変換送信回路に誘導コイルを利用して回転側で発電した電力を供給するので、誘導発熱ローラ周辺の配線をきわめて簡素化することができる。さらに、温度検知器の検知信号を固定側の温度制御装置に送るためや回転側に配置した温度検知器や変換送信回路に電力を供給するために必要とした回転変圧器を要さず、誘導発熱ローラ装置が簡素となり誘導発熱ローラ装置の組立に要する作業手間も削減できる。さらまた、温度制御装置をローラの配置位置に左右されず独立して任意の位置に配置することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
誘導発熱ローラの表面温度の精度を高めるとともに、誘導発熱ローラ周辺の配線を簡素化する目的を、ローラの肉厚内に設置された温度検知器と、前記温度検知器の検知信号をデジタル信号に変換して、前記ローラ外に配置された温度制御装置に無線伝送するとともに、ローラに設置された温度検知器や信号変換送信回路に、誘導コイルと電磁結合して発電する発電コイルで誘起した電力を供給することにより実現した。
【実施例】
【0008】
以下、本発明に係る実施例について図を参照して説明する。図1は実施例に係る誘導発熱ローラ装置の全体構造図、図2は図1に示す誘導発熱ローラ装置の回路ブロック図である。図1において、1はローラシェル、2は誘導コイル、3は鉄心、4は支持軸、5a、5bはローラシェル1の両端部にそれぞれで一体的に固定したジャーナル、6は誘導コイル2と電磁結合するローラシェル1の内面に固定された発電用コイル、7はジャーナル5bに固定された送信部、8はPt(白金)100Ωなどの温度検出器、9は受信部、10は温度調節計、11はサイリスタなどの電力制御回路、12は交流電源である。
【0009】
誘導コイル2は円筒状の鉄心3に巻回され、支持軸4に固定されている。支持軸4の一端は機台に固定され他端はジャーナル5bの内面で軸受け12を介して支持されている。ジャーナル5aと5bはそれぞれ軸受け13aと13bを介して機台に回転自在に支持され、図示しないモータの回転により回転する。ローラシェル1には気液二相の熱媒体を封入する複数の密閉室1aとPt(白金)100Ωの高精度の温度検知器を挿入する孔1bが形成されている。この孔1bに温度検知器6が挿入されている。
【0010】
交流電源12から電力制御回路11を経て誘導コイル2に交流電圧が印加されると、交番磁束を発生し、その交番磁束がローラシェル1に流れて電流を誘起し、その電流によってローラシェル1はジュール発熱する。ローラシェル1が加熱されると、その熱は密閉室1aの封入した熱媒体たとえば水を気化し、温度の低い部分に移動して熱を放出して液化する。この潜熱の移動によってローラシェル1の表面温度が均一化される。また、誘導コイル2で発生した交番磁束は発電用コイル6と交鎖して発電用コイル6に電圧を誘起する。発電用コイル6に誘起した電圧は、図2示すように回転するローラ側に装着した充電保護回路61を介して電気二重層コンデサやリチウム電池などからなる電力蓄積装置62に送られるとともに、送信部7に供給する。なお、電力蓄積装置62はローラが停止され誘導コイル2への電力の供給が遮断されたときに送信部7に電力を供給するためのものである。
【0011】
回転するローラ側に装着した送信部7は、図2に示すように構成されている。すなわち、図2において、71は温度検知器8に一定電流(1mA)を流し、降下電圧を50倍増幅し、0〜2Vの変化を0〜100℃の変化に対応させて出力する信号変換回路、72は100mSごとに信号変換回路71の出力であるアナログ信号をサンプリングし、その出力を16ビットに換算してデジタル信号(数値信号)に変換するA/Dコンバータ、73は温度検知器8の特性がリニア(線形)でなく約0.3℃の誤差が発生するため、入力したデジタル信号をリニアライズ(線形化)して約0.019℃の誤差に修正し、修正した16ビットのデジタル信号を2.4GHz域の電流信号にデジタル変調するマイクロコンピュータ、74はデジタル変調した電流信号を、アンテナ75を介して固定側の受信部9に送信する送信ICである。
【0012】
受信部9では、回転側の送信部7から送信された信号を、アンテナ91を介して受信IC92で受信し、受信した信号をマイクロコンピュータ93に送る。マイクロコンピュータ93は16ビットのデジタル電流信号を読み取り、そのデジタル信号をD/A変換器94に送り、D/Aコンバータ94で変換したアナログ信号(0〜100℃/4〜20mA)を温度調節計10へ送る。温度調節計10は、受信部9から送出された信号を温度検出信号とし、予め設定したローラシェル1の表面温度と比較し、その偏差を電力制御回路11に送り、電力制御回路11はその偏差に応じて誘導コイル2に印加する電力を調整する。
【0013】
以上のように構成した誘導発熱ローラ装置では、ローラの回転側で温度検知器の検知信号をデジタル信号に変換し、デジタル信号に変換後の信号を温度検知器の特性による誤差を修正して無線送信し、固定側で送信されたデジタル信号を受信しアナログ信号に変換し、そのアナログ信号を温度検知器の温度検出信号として温度制御装置に入力するので、回転側で温度検知器の検知信号を固定側に送るための回転変圧器を要さず、また、温度検知器の特性による誤差を修正した信号であることと相俟ってきわめて精度の高い温度検出信号を得ることができる。また、ローラの回転側に装着した温度検知器や変換送信回路に供給する電源をローラの回転側に装着した、誘導コイルと電磁結合する発電用コイルとするので、温度検知信号を得るための電線ケーブルが省略され、ローラ周辺の煩雑さを回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施例に係る誘導発熱ローラ装置の概略を示す構成図である。
【図2】図1に示す誘導発熱ローラ装置の温度検出回路のブロック回路図である。
【符号の説明】
【0015】
1 ローラシェル
2 誘導コイル
3 鉄心
4 支持軸
5a、5b ジャーナル
6 発電用コイル
61 充電保護回路
62 電力蓄積装置
7 送信部
71 信号変換回路
72 A/Dコンバータ
73 マイクロコンピュータ
74 送信IC
75 アンテナ
8 温度検出器
9 受信部
91 アンテナ
92 受信IC
93 マイクロコンピュータ
94 D/Aコンバータ
10 温度調節計
11 電力制御回路
12 交流電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転する中空のローラと、前記ローラの肉厚内に挿入された温度検出器と、前記ローラに装着され前記温度検出器の検出信号をデジタル信号に変換して無線送信する変換送信回路と、前記ローラの中空内に配置され前記ローラを発熱する誘導コイルとを備えた誘導発熱ローラ装置であって、前記誘導コイルと電磁結合して電力を誘起する発電用コイルを前記ローラに装着し、前記発電用コイルで誘起した電力を前記変換送信回路に供給してなることを特徴とする誘導発熱ローラ装置。
【請求項2】
発電用コイルで誘起した電力を蓄積する蓄積装置をローラに装着してなることを特徴とする請求項1に記載の誘導発熱ローラ装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−298816(P2008−298816A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−141418(P2007−141418)
【出願日】平成19年5月29日(2007.5.29)
【出願人】(000110158)トクデン株式会社 (91)
【Fターム(参考)】