説明

誘電体層用組成物、グリーンシート、誘電体層形成基板及びその製造方法

【課題】画素欠陥のないPDPを得ることができる誘電体層用組成物及びグリーンシート、並びにこのグリーンシートから形成された誘電体層を有する誘電体層形成基板及びその製造方法を提供する。
【解決手段】熱分解性バインダー、ガラス成分および分散剤を含有してなる誘電体層用組成物であって、前記熱分解性バインダーが、重量平均分子量が20,000〜250,000で、かつ、ガラス転移温度が−5℃〜+40℃の高分子であり、前記熱分解性バインダーの含有量が、固形分比でガラス成分100重量部に対し、10〜50重量部である誘電体層用組成物を乾燥してフィルム化した後、該グリーンシートを基板に貼り合わせ、焼成することにより、誘電体層形成基板を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画素欠陥のないプラズマディスプレイを得ることができる誘電体層用組成物及びグリーンシート、並びにこのグリーンシートから形成された誘電体層を有する誘電体層形成基板、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
表示装置には、液晶表示装置やエレクトロルミネッセンス表示装置、プラズマディスプレイパネル等がある。これらの中でも、プラズマディスプレイパネル(以下、「PDP」ともいう。)は、新しいマルチメディアディスプレイとして注目を集めている。
【0003】
PDPの一例の断面図を図3に示す。図3に示すPDPは、前面板用ガラス基板1及び背面板用ガラス基板2の1対のガラス基板からなる。この前面板用ガラス基板1と背面板用ガラス基板2の内面には、互いに直交する透明電極3及びデータ電極4がそれぞれ形成されている。透明電極3及びデータ電極4は、誘電体層5(前面板誘電体層)及び6(背面板誘電体層)によりそれぞれ覆われている。また、ガラス基板1及び2は、保護膜7を介してリブ(隔壁)8によって放電空間(画素)に分離され、各画素には蛍光体9が形成されている。
【0004】
従来、前面板誘電体層及び背面板誘電体層を形成する方法としては、スクリーン印刷法が一般的であった。この方法は、ガラス粉末成分及び樹脂を含有するペーストを、目的の性能を得るのに必要な厚みまでガラス基板上に繰り返し印刷し、後に焼成して誘電体層を得るものである。しかしながら、この方法によれば、ペーストを塗布した後に溶剤を揮散させ、またペーストを塗布するという操作を繰り返す必要があるため、作業に長時間を要する。また、溶剤が残存して、誘電体層としての性能が劣化する原因となる場合があるため、必要とされる膜厚精度が得られなかったり、平滑な表面が得られないという問題があった。
【0005】
このような問題を解決すべく、近年、グリーンシートを用いることにより誘電体層を形成する方法が提案されている(特許文献1〜3等)。この方法によれば、目的の厚みを有し、表面が平滑な誘電体層を簡便に形成することができる。
【0006】
グリーンシートは、キャリアーフィルム上に、熱分解性バインダー、ガラス成分等を含有する誘電体層用組成物を塗工し、乾燥することでグリーンシートの層を形成し、さらにこのグリーンシート上に保護フィルムを積層して、長尺の積層体として製造される。誘電体層を形成するには、この積層体から保護フィルムを剥離し、剥離面をガラス基板上に加熱下に貼り合わせ(熱ラミネートともいう。)、さらにキャリアーフィルムを剥離した後、グリーンシートの層を焼成すればよい。
【0007】
しかしながら、この方法においては、グリーンシート運搬時等に外部から部分的に力が加わることにより、表面に打痕が入り、焼成過程を経てPDPに画素欠陥を引き起こすことがあった。また、表面に電極が形成された前面板用ガラス基板又は背面板用ガラス基板上にグリーンシートを熱ラミネートする際、電極とグリーンシートの間に微細な空隙が発生し、焼成過程を経てこの空隙が気泡となり、プラズマ放電時におけるショートの原因となって、PDPに画素欠陥を引き起こすことがあり、問題となっていた。
【0008】
【特許文献1】特開平9−102273号公報
【特許文献2】特開平11−106237号公報
【特許文献3】特開平11−180732号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、かかる従来技術の問題に鑑みてなされたものであり、画素欠陥のないPDPを得ることができる誘電体層用組成物及びグリーンシート、並びにこのグリーンシートから形成された誘電体層を有する誘電体層形成基板、及びその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決すべく検討した結果、(i)室温付近におけるグリーンシートの貯蔵弾性率が低すぎると、グリーンシート運搬時等に外部から部分的に力が加わることにより、表面に打痕が入り易くなること、及び、(ii)熱ラミネート時におけるグリーンシートの貯蔵弾性率が高すぎると、電極が形成された前面板用ガラス基板又は背面板用ガラス基板上にグリーンシートを熱ラミネートする際、電極とグリーンシートの間に空隙が発生し易いという知見を得た。そして、これらの知見に基づいて、室温付近では所定値以上の貯蔵弾性率を有し、かつ、熱ラミネート温度付近では所定値以下の貯蔵弾性率を有するグリーンシートを得るべく、鋭意研究した。
【0011】
その結果、特定の重量平均分子量及びガラス転移温度を有する熱分解性バインダーを、特定量含有させた誘電体層用組成物を調製し、この誘電体層用組成物を用いて得られるグリーンシートは、室温付近(25℃)では所定値以上の貯蔵弾性率を有し、かつ、熱ラミネート温度付近(80℃)では所定値以下の貯蔵弾性率を有することを見出した。また、、このような粘弾性特性を有するグリーンシートを用いることにより、気泡がなく、良好な膜質を有する誘電体層を形成することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
かくして本発明の第1によれば、熱分解性バインダー、ガラス成分及び分散剤を含有してなる誘電体層用組成物であって、前記熱分解性バインダーが、重量平均分子量が20,000〜250,000で、かつ、ガラス転移温度が−5℃〜+40℃の高分子であり、前記熱分解性バインダーの含有量が、固形分比で、ガラス成分100重量部に対し、10〜50重量部であることを特徴とする誘電体層用組成物が提供される。
本発明の誘電体層用組成物は、プラズマディスプレイパネルの誘電体層の形成に用いられるものであるのが好ましい。
【0013】
本発明の第2によれば、本発明の誘電体層用組成物を乾燥し、フィルム化してなることを特徴とするグリーンシートが提供される。
本発明のグリーンシートは、25℃で測定した貯蔵弾性率(E’)が80MPa以上であり、かつ、80℃で測定した貯蔵弾性率(E’)が60MPa以下であるものが好ましい。
【0014】
本発明の第3によれば、本発明の誘電体層用組成物から形成された誘電体層を有することを特徴とする誘電体層形成基板が提供される。
本発明の第4によれば、本発明のグリーンシートを基板に貼り合わせる工程と、該グリーンシートを焼成する工程とを有することを特徴とする誘電体層形成基板の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、画素欠陥のないPDPを得ることができる誘電体層用組成物及びグリーンシートが提供される。
本発明のグリーンシートは、グリーンシート運搬時等に打痕が入ることがなく、かつ、電極が形成された基板表面の凹凸形状に沿って空隙を生じることなく均一に貼り合わせることができる。そして、このグリーンシートを焼成することにより、気泡がなく、良好な膜質を有する誘電体層が形成された誘電体層形成基板を得ることができる。
本発明の製造方法によれば、本発明の誘電体層形成基板を簡便に効率よく製造することができる。
本発明の誘電体層形成基板を用いることで、画素欠陥がなく、耐電圧特性に優れるプラズマディスプレイパネルを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を、1)誘電体層用組成物、2)グリーンシート、並びに3)誘電体層形成基板及びその製造方法に項分けして詳細に説明する。
【0017】
1)誘電体層用組成物
本発明の誘電体層用組成物は、熱分解性バインダー、ガラス成分及び分散剤を含有してなる。
【0018】
(1)熱分解性バインダー
本発明の誘電体層用組成物においては、熱分解性バインダーとして、重量平均分子量が20,000〜250,000であり、ガラス転移温度が−5℃〜+40℃である高分子を用いる。熱分解性バインダーとして、前記範囲の重量平均分子量及びガラス転移温度を有する高分子を用いることで、運搬時等に打痕が入ることがなく、かつ、電極が形成された基板表面の凹凸形状に沿って空隙を生じることなく、均一に貼り合わせることができるグリーンシートを製造することができる。
【0019】
なお、熱分解性バインダーの重量平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)を用いて測定することができ、ガラス転移温度は、JIS K7121に準拠して示差走査熱量測定(DSC)により測定することができる。
【0020】
用いる熱分解性バインダーとしては、重量平均分子量が20,000〜250,000で、かつ、ガラス転移温度が−5℃〜+40℃の高分子であれば、特に制約されない。なかでも、結合剤としての機能を有し、焼成することにより分解して、容易に除去できる有機高分子として、優れたバインダーとしての役割とガラス基板との感圧接着剤としての役割を果たすアクリル樹脂の使用が好ましい。
【0021】
アクリル樹脂としては、例えば、(メタ)アクリレート化合物の単独重合体、(メタ)アクリレート化合物の2種以上から得られる共重合体、(メタ)アクリレート化合物と他の共重合性単量体から得られる共重合体等が挙げられる。これらの中でも、(メタ)アクリレート化合物の2種以上から得られる共重合体、(メタ)アクリレート化合物と他の共重合性単量体から得られる共重合体が好ましく、(メタ)アクリレート化合物と他の共重合性単量体から得られる共重合体がより好ましい。
【0022】
(メタ)アクリレート化合物の具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;
【0023】
2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;
フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート等のフェノキシアルキル(メタ)アクリレート;
2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−プロポキシエチル(メタ)アクリレート、2−ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2−メトキシブチル(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキル(メタ)アクリレート;
【0024】
ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート;
シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエニル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート等のシクロアルキル(メタ)アクリレート;
ベンジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0025】
他の共重合性単量体としては、上記(メタ)アクリレート化合物と共重合可能な化合物であれば特に制約されない。例えば、(メタ)アクリル酸、ビニル安息香酸、マレイン酸、ビニルフタル酸等の不飽和カルボン酸類;ビニルベンジルメチルエーテル、ビニルグリシジルエーテル、スチレン、α−メチルスチレン、ブタジエン、イソプレン等のビニル基含有ラジカル重合性化合物;等が挙げられる。
【0026】
これらの中でも、本発明に用いる熱分解性バインダーとしては、アルキル(メタ)アクリレートの少なくとも一種と、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの少なくとも一種とから得られる共重合体が特に好ましい。
【0027】
本発明においては、熱分解性バインダーとして、公知の製造方法で製造したもの、あるいは市販品として入手したものを用いることができる。
【0028】
熱分解性バンイダーの製造方法としては、特に制限されず、公知の方法を採用できる。例えば、アクリル樹脂は、前記(メタ)アクリレート化合物及び所望により他の共重合性単量体とを(共)重合させることにより製造することができる。重合方法は特に制限されず、例えば、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)等のラジカル重合開始剤を用いるラジカル重合法が挙げられる。
【0029】
本発明の誘電体層用組成物中の熱分解性バインダーの含有量は、固形分比で、後述するガラス成分100重量部に対し10〜50重量部である。熱分解性バインダーをこのような範囲で含有する誘電体層用組成物によれば、室温付近(25℃)では所定値以上の貯蔵弾性率を有し、かつ、熱ラミネート温度(80℃)では所定値以下の貯蔵弾性率を有するグリーンシートを製造することができる。
【0030】
(2)ガラス成分
本発明の誘電体層用組成物に用いるガラス成分としては、例えば、PbO−B(酸化鉛−酸化ホウ素)系ガラス、PbO−B−SiO(酸化鉛−酸化ホウ素−酸化ケイ素)系ガラス、PbO−B−SiO−A1(酸化鉛−酸化ホウ素−酸化ケイ素−酸化アルミニウム)系ガラス、PbO−B−BaO−SiO−A1−TiO(酸化鉛−酸化ホウ素−酸化バリウム−酸化ケイ素−酸化アルミニウム−酸化チタン)系ガラス、ZnO−B−SiO(酸化亜鉛−酸化ホウ素−酸化ケイ素)系ガラス、ZnO−B−Bi−BaO−SiO(酸化亜鉛−酸化ホウ素−酸化ビスマス−酸化バリウム−酸化ケイ素)系ガラス、ZnO−B−Bi−BaO−SiO−A1−TiO(酸化亜鉛−酸化ホウ素−酸化ビスマス−酸化バリウム−酸化ケイ素−酸化アルミニウム−酸化チタン)系ガラス、PbO−ZnO−B−SiO(酸化鉛−酸化亜鉛−酸化ホウ素−酸化ケイ素)系ガラス、NaO−B−SiO(酸化ナトリウム−酸化ホウ素−酸化ケイ素)系ガラス、BaO−CaO−SiO(酸化バリウム−酸化カルシウム−酸化ケイ素)系ガラス等が挙げられる。
【0031】
これらの中でも、PbO−B−BaO−SiO−A1−TiO(酸化鉛−酸化ホウ素−酸化バリウム−酸化ケイ素−酸化アルミニウム−酸化チタン)系ガラス、ZnO−B−Bi−BaO−SiO(酸化亜鉛−酸化ホウ素−酸化ビスマス−酸化バリウム−酸化ケイ素)系ガラスの使用が好ましい。
【0032】
本発明においては、これらのガラスをフリット、粉末状にして用いる。
ガラスを粉末状にして用いる場合、ガラス粉末の平均粒径は、0.1〜5μmであり、ガラス粉末の最大粒径は、好ましくは20μm以下である。ガラス粉末の粒径をこのように設定することで、優れた耐電圧特性を有する誘電体層を形成することができる。
【0033】
また、本発明の誘電体層用組成物を背面板誘電体層用組成物として用いる場合は、白色の誘電体層を得るために、前記ガラス成分は、さらにフィラー成分を含むことが好ましい。用いるフィラー成分としては、TiO(酸化チタン)、Al(アルミナ)、SiO(シリカ)、ZrO(ジルコニア)等が挙げられる。これらの中では、TiO、Alの使用が特に好ましい。
【0034】
ガラス成分中のガラス粉末とフィラー成分の混合比(重量比)は、通常、50:50〜100:0であるが、背面板誘電体層用組成物として用いる場合は、50:50〜95:5であり、前面板誘電体層用組成物として用いる場合は、100:0であるのがそれぞれ好ましい。
【0035】
ガラスをガラスフリットとして用いる場合、ガラスフリットは、ガラス粉末及び所望によりフィラー成分を所定割合で混合し、得られた混合物を溶融し、次いで、冷却することで得ることができる。
ガラス成分の添加量は、誘電体層用組成物に対して、通常40〜80重量%である。
【0036】
(3)分散剤
本発明の誘電体層用組成物に用いる分散剤としては、ガラス成分を均一に分散させることができるものであれば、特に制約されない。例えば、界面活性剤、シランカップリング剤等が挙げられる。
【0037】
界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム塩、アルキルスルホコハク酸ナトリウム塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム塩、ホルマリン縮合物ナトリウム塩、芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウム塩、等の陰イオン性界面活性剤;アルキルアミン塩、第四級アンモニウム塩等の陽イオン性界面活性剤;ポリエチレングリコールモノラウレート、ポリエチレングリコールモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ポリエチレングリコールジステアレート、ポリエチレングリコールモノオレエート、ラウリン酸ジエタノールアミド、デシルグルコシド、ラウリルグルコシド等の非イオン性界面活性剤;α−オレフィン・無水マレイン酸共重合体の部分エステル、脂肪族ポリカルボン酸塩、脂肪族ポリカルボン酸特殊シリコーン等のポリカルボン酸系高分子界面活性剤;ポリエーテルポリエステル酸、ポリエーテルポリオールポリエステル酸等のポリエーテルエステル酸類と、高分子ポリアミン等の有機アミン類とから得られる高分子分散剤(具体的には、ディスパロンDA−234(商品名、楠本化成(株)製)等)のポリエーテルエステル酸アミン塩;等が挙げられる。
【0038】
シランカップリング剤としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン・塩酸塩、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、アミノシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−アニリノプロピルトリメトキシシラン、オクタデシルジメチル(3−(トリメトキシシリル)プロピル)アンモニウムクロライド、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0039】
これらの中でも分散性に優れること等の理由から、ポリカルボン酸系高分子界面活性剤、ポリエーテルエステル酸アミン塩が特に好ましい。
【0040】
分散剤の添加量は、誘電体層用組成物に対して、通常0.01〜10重量%、好ましくは0.05〜5重量%、より好ましくは0.1〜3重量%である。分散剤の添加量が0.01重量%未満であると、分散状態が不均一で、ガラス成分が沈降を生じやすい誘電体層用組成物が得られるおそれがあり、10重量%より多いと、焼成工程を経ても分散剤が誘電体層内に残存し、耐電圧及び透明性又は反射性の低下の原因となる。
【0041】
(4)その他の成分
本発明の誘電体層用組成物には、その他の成分として溶剤が含まれていてもよい。
溶剤は、誘電体層用組成物に適当な流動性又は可塑性、良好な膜形成性を付与するものである。用いる溶剤としては、例えば、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、乳酸メチル等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類:N,N’−ジメチルホルムアミド、N,N’−ジメチルアセタミド、ヘキサメチルリン酸ホスホロアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類;ε−カプロラクタム等のラクタム類;γ−ラクトン、δ−ラクトン等のラクトン類;ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド等のスルホキシド類;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン等の脂肪族炭化水素類;シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロオクタン等の脂環式炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類;及びこれらの2種以上からなる混合溶媒;等が挙げられる。これらの中でも、エステル類、ケトン類、芳香族炭化水素類、又はこれらの2種以上からなる混合溶媒の使用が好ましく、エステル類と芳香族炭化水素類との混合溶媒の使用がより好ましい。溶剤の使用量は、誘電体層用組成物に対して、通常0〜55重量%である。
【0042】
本発明の誘電体層用組成物には、必要に応じて、可塑剤、粘着付与剤、分子量が5,000以下の(メタ)アクリレートオリゴマー、保存安定剤、消泡剤、熱分解促進剤、酸化防止剤等の添加剤が含まれていてもよい。
【0043】
可塑剤は加工適性を向上させるために添加される。用いる可塑剤としては、アジピン酸エステル系可塑剤、フタル酸エステル系可塑剤、グリコールエステル系可塑剤等が挙げられる。可塑剤の添加量は、ガラス成分100重量部に対して、0〜8重量部である。
【0044】
本発明の誘電体層用組成物は、上述した熱分解性バインダー、ガラス成分、分散剤、及び溶剤等の原料をプレミキシングした後、分散機にかけて機械的に分散させることにより調製することができる。
【0045】
分散に用いる分散機としては特に制約はなく、例えば、ボールミル、ビーズミルなどのメディアミル;超音波式、撹拌式等の各種ホモジナイザー;ジェットミル;ロールミル;等の公知の分散機が挙げられる。
【0046】
以上のようにして得られる本発明の誘電体層用組成物から得られる誘電体層は、気泡等がなく、耐電圧特性に優れているので、PDPの誘電体層の形成用材料として有用である。また、後述するように、本発明の誘電体層用組成物を使用して本発明のグリーンシートを製造することができる。
【0047】
2)グリーンシート
本発明のグリーンシートは、本発明の誘電体層用組成物を乾燥し、フィルム化してなることを特徴とする。
【0048】
本発明のグリーンシートは本発明の誘電体層用組成物をキャリアーフィルム上に塗工し、次いで乾燥してフィルム化することによって製造することができる。
【0049】
本発明のグリーンシートを製造する方法の一例を図1に示す。図1において、13はキャリアーフィルム、14は本発明の誘電体層用組成物を塗工する塗工装置、18は誘電体層用組成物の塗膜を乾燥する(溶媒を除去する)乾燥装置、20a及び20bは、グリーンシート上に保護フィルムを積層する積層ロールである。以下、図1を参照しながら、本発明のグリーンシートの製造方法を説明する。
【0050】
先ず、ロール状に巻き取られたキャリアーフィルム13が塗工装置14へ送られる。キャリアーフィルム13としては、誘電体層用組成物の塗膜との剥離性に優れるものであれば特に制限されない。例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等のプラスチックフィルムを用いることができる。また、前記プラスチックフィルムの片面に、シリコーン樹脂、アルキッド樹脂、フッ素樹脂、長鎖アルキル樹脂等の剥離剤を塗布したものを用いるのが好ましい。さらに、上記プラスチックフィルム上に剥離性を有する樹脂、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム上にポリオレフィン樹脂を押し出したものでもよい。
【0051】
次に、塗工装置14により、キャリアーフィルム13上に誘電体層用組成物が塗布される。塗工装置14は貯蔵部15と塗工部16からなる。貯蔵部15は、スラリー状の本発明の誘電体層用組成物を貯蔵し、本発明の誘電体層用組成物を一定量ずつ塗工部16に送液する。本発明の誘電体層用組成物は分散性及び貯蔵安定性に優れるので、貯蔵部15中において、ガラス成分等が沈降することなく均一に分散されている。また、塗工部16としては特に制限されない。例えば、ナイフコーター、ダイコーター等の公知のコーターを用いることができる。
【0052】
本発明の誘電体層用組成物の塗工量は、形成する誘電体層用組成物の塗膜17aの厚みに応じて適宜設定することができる。本発明の誘電体層用組成物は分散性及び貯蔵安定性に優れるので、均一な膜質を有する誘電体層用組成物の塗膜17aを形成することができる。
【0053】
次に、表面に誘電体層用組成物の塗膜17aが形成されたキャリアーフィルム13は、乾燥装置18に送り込まれる。この乾燥装置18内で誘電体層用組成物の塗膜17aを乾燥する(即ち、溶剤等の揮発成分を除去する)ことにより、誘電体層用組成物の乾燥塗膜、すなわち、グリーンシート17がキャリアーフィルム13上に積層された積層物を得ることができる。
【0054】
誘電体層用組成物の塗膜17aを乾燥する方法としては特に制限されないが、例えば、(a)塗膜が形成されたキャリアーフィルムを所定温度に加熱する方法、(b)前記塗膜表面に乾燥空気又は熱風を送り込む方法、(c)前記(a)及び(b)を組み合わせる方法等が挙げられる。乾燥するときの温度は、キャリアーフィルムが熱変形を生じることのない温度以下であれば特に制限されず、通常室温から150℃、好ましくは60〜130℃であり、乾燥時間は1〜10分である。
乾燥後の塗膜17aの厚みは、通常10〜200μm、好ましくは20〜120μmである。
【0055】
次いで、グリーンシート17上に保護フィルム19を積層する。
図1中、保護フィルム19はロール状に巻き取られた長尺のフィルムである。用いる保護フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等のプラスチックフィルム等を使用することができる。また、上記プラスチックフィルムの片面にシリコーン樹脂等の剥離剤を塗布したものを使用することもできる。
【0056】
グリーンシート17上に保護フィルム19を積層するには、図1中、2つの積層ロール20a及び20bの間をグリーンシート17と保護フィルム19とを通過させて、貼り合わせる(ラミネートする)。この場合、積層ロール20a及び20bの両方又は一方、例えば、保護フィルム面側のロール20bを加熱してもよい。
【0057】
以上のようにして、キャリアーフィルム13−グリーンシート17−保護フィルム19の3層からなる積層フィルム21を得ることができる。
得られた積層フィルム21は、ロール状に巻き取り、回収して保存、運搬することができる。
【0058】
このようにして得られるグリーンシート17の貯蔵弾性率(E’)は、特に制限されないが、25℃で測定した貯蔵弾性率(E’)が好ましくは80MPa以上、より好ましくは100MPa以上である。また、80℃で測定した貯蔵弾性率(E’)が好ましくは60MPa以下、より好ましくは50MPa以下である。
【0059】
グリーンシートの貯蔵弾性率(E’)は、公知の動的粘弾性測定装置(DMA)を使用して測定することができる。動的粘弾性測定装置(DMA)を使用する方法では、まずフィルム状の試料に正弦波状の周期荷重(測定モード;引っ張り)を与える。完全弾性体であれば、与えた力に対して遅れなく歪が同じ正弦波状となって検出される。試料がグリーンシートのごとき粘弾性体の場合には、与えた力と歪の位相にズレ(δ)が生じる。この時間的な遅れを持った歪と力は、複素弾性率(ヤング率)と言われ、複素平面上で実数部と虚数部に分離される。貯蔵弾性率はこの実数部をいい、力学的に検地できる見かけ上の要素で、試料の硬さを表す。
【0060】
一般的に、貯蔵弾性率(E’)が大きいほど硬く、貯蔵弾性率(E’)が小さいほど柔らかいグリーンシートであるということができる。本発明のグリーンシートは、25℃における貯蔵弾性率(E’)を大きくして、打痕を入り難くし、80℃における貯蔵弾性率(E’)を小さくして、電極が形成された基板の凹凸形状に沿って空隙を生じることなく均一に貼り合わせ(ラミネート)可能としたものである。
【0061】
本発明のグリーンシートは保形性及び転着性に優れるので、基板と熱ラミネートした後、焼成工程を経て、均一で良好な膜質を有する誘電体層を形成でき、結果として、画素欠陥のない高品質なPDPを提供することができる。
【0062】
3)誘電体層形成基板及びその製造方法
本発明の誘電体層形成基板は、基板表面に本発明の誘電体層用組成物から形成された誘電体層を有することを特徴とする。
本発明の誘電体層形成基板は、上記のようにして得られたグリーンシートから保護フィルムを剥離した後、前面板用基板又は背面板用基板に熱ラミネートし、次いで、キャリアーフィルムを剥離した後、該グリーンシートを焼成することにより得ることができる。
【0063】
ここで用いる基板としては、ガラス基板、セラミック基板等が挙げられ、ガラス基板が好ましい。また、ガラス基板としては、表面に電極が形成されたものであれば特に制限されず、公知のものを使用することができる。例えば、表面に透明電極が形成された前面板用ガラス基板、表面にデータ電極が形成された背面板用ガラス基板が挙げられる。また、基板の厚みは特に制限されないが、通常1〜10mm程度である。
【0064】
本発明の誘電体層形成基板を製造する一例を図2に示す。以下、図2を参照しながら、本発明の誘電体層形成基板を形成する方法を説明する。図2に示すものは、図3中、前面板用ガラス基板1上に透明誘電体層5を形成する例である。
【0065】
先ず、図2(a)に示すように、積層フィルム21の片面の保護フィルム19を剥離除去する。
次に、図2(b)に示すように、グリーンシート17を表面に透明電極3が形成された前面板用ガラス基板1上(透明電極3が形成されている側)に熱ラミネートする。
【0066】
熱ラミネートは、例えば、加熱ローラを用いて、加熱温度70〜130℃、圧力0.05〜1.0MPaの条件で行うことができる。
本発明のグリーンシートは、電極が形成された基板表面の凹凸形状に沿って空隙を生じることなく均一に熱ラミネートすることができる。
なお、本発明の誘電体層用組成物中の熱分解性バインダーは、バインダーであるとともに感圧性接着剤でもあるため、簡便な作業により、グリーンシート17をガラス基板1に均一に貼着することができる。
【0067】
次いで、図2(c)に示すように、グリーンシート17からキャリアーフィルム13を剥離除去し、グリーンシート17が熱ラミネートされたガラス基板1を焼成する。この過程で、誘電体層用組成物中の熱分解性バインダーが熱分解し、有機成分が完全に除去される。
【0068】
グリーンシート17が熱ラミネートされたガラス基板を焼成する方法としては、例えば、グリーンシート17が熱ラミネートされたガラス基板を加熱炉の中に入れて全体を加熱する方法が挙げられる。加熱温度及び加熱時間は、ガラス基板が熱により変形せず、熱分解性バインダーが熱分解し、有機成分が完全に除去され、かつ、無機成分(ガラス成分等)が均一な溶融状態となり、ガラス成分が溶融し、均一化する温度及び時間であれば特に制限されない。加熱温度は通常500〜700℃であり、加熱時間は通常数分から数時間である。
【0069】
本発明においては、この焼成を、300〜450℃の温度で10〜60分間加熱する仮焼成工程と、その後、さらに500〜700℃の温度で20〜120分間にわたって本焼成を行う本焼成工程とに分けて行うのが、より均一な膜質及び厚みで、透明性又は反射性及び表面平滑性に優れる誘電体層を得ることができることから好ましい。
【0070】
焼成後は、冷却することにより、図2(d)に示すように、厚さ5〜100μm、好ましくは7〜90μmの透明誘電体層5が積層されたガラス基板1を得ることができる。
得られる透明誘電体層5の直線光透過率は、好ましくは50%以上、より好ましくは55%以上である。
【0071】
本実施形態では、PDPの前面板用ガラス基板1に用いられる透明誘電体層5を形成する場合について説明したが、背面板用ガラス基板2に対する白色誘電体層6や、セラミック基板上に形成する誘電体層等も同様にして形成することができる。得られる白色誘電体層6の反射率は25〜100%である。
【0072】
本実施形態の誘電体層形成ガラス基板を用いることによって、画素欠陥が少なく、放電電圧特性に優れる高品質なPDPを製造することができる。
【実施例】
【0073】
次に、実施例及び比較例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明する。ただし、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0074】
(実施例1〜4、比較例1〜4)誘電体層用組成物1〜8の調製
熱分解性バインダー、ガラス成分、分散剤、可塑剤及び溶剤の所定量をビーズミル系分散機を用いて分散させることにより、実施例1〜4、比較例1〜4の誘電体層用組成物1〜8を調製した。
【0075】
熱分解性バインダー、ガラス成分、分散剤、可塑剤及び溶剤としては、下記のものを使用した。
(A)熱分解性バインダーA
2−エチルヘキシルメタクリレート(2−EHMA)と2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)を、2−EHMA:HEMA=90:10(重量比)で共重合して得られた、重量平均分子量(Mw)が200,000、ガラス転移温度が−5℃である高分子。
(B)熱分解性バインダーB
2−EHMAとn−ブチルメタクリレート(BMA)、メチルメタクリレート(MMA)及びHEMAを、2−EHMA:BMA:MMA:HEMA=40:40:10:10(重量比)で共重合して得られた、重量平均分子量(Mw)が80,000、ガラス転移温度が16℃である高分子。
【0076】
(C)熱分解性バインダーC
2−EHMA、BMA、MMA及びHEMAを、2−EHMA:BMA:MMA:HEMA=30:40:20:10(重量比)で共重合して得られた、重量平均分子量(Mw)が30,000、ガラス転移温度が26℃である高分子。
(D)熱分解性バインダーD
2−EHMA、BMA、MMA及びHEMAを、2−EHMA:BMA:MMA:HEMA=40:40:10:10(重量比)で共重合して得られた、重量平均分子量(Mw)が280,000、ガラス転移温度が16℃である高分子。
【0077】
(E)熱分解性バインダーE
2−EHMA、BMA、MMA及びHEMAを、2−EHMA:BMA:MMA:HEMA=40:40:10:10(重量比)で共重合して得られた、重量平均分子量(Mw)が10,000、ガラス転移温度が16℃である高分子。
(F)熱分解性バインダーF
2−EHMA、BMA、MMA及びHEMAを、2−EHMA:BMA:MMA:HEMA=20:30:30:20(重量比)で共重合して得られた、重量平均分子量(Mw)が80,000、ガラス転移温度が41℃である高分子。
【0078】
(2)ガラス成分
ガラス成分としては、以下のものを用いた。
(A)ガラス成分A
PbO(40重量%)−B(25重量%)−BaO(15重量%)−SiO(10重量%)−Al(5重量%)−TiO(5重量%)の成分からなるガラスフリット(平均粒径2μm)
(B)ガラス成分B
(25重量%)−ZnO(25重量%)−Bi(20重量%)−BaO(15重量%)−SiO(15重量%)の成分からなるガラスフリット(平均粒径2μm)
【0079】
(3)分散剤
分散剤として、ポリカルボン酸系高分子界面活性剤(商品名:フローレンG−700、共栄社化学社製)を用いた。
(4)可塑剤
可塑剤として、アジピン酸ジ2−エチルヘキシルを用いた。
(5)溶剤
溶剤として、酢酸エチルとトルエンの1:1(重量比)混合溶媒を用いた。
【0080】
実施例1〜4、比較例1〜4の誘電体層用組成物の調製に用いた、熱分解性バインダー、ガラス成分、分散剤、可塑剤及び溶剤の種類、及びそれらの使用量を下記第1表にまとめて示す。
【0081】
【表1】

【0082】
(実施例5)
キャリアーフィルムとして、片面をシリコーン樹脂により厚さ0.1μmで剥離処理された厚さ38μmの長尺のポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを用意した。このフィルムの剥離処理された面上に、上記で得た実施例1の誘電体層用組成物をナイフコーターを用いて塗布した。次いで、100℃で2分間乾燥して、PETフィルム上にグリーンシート1を得た。
【0083】
(実施例6〜8、比較例5〜8)
実施例5において、実施例1の誘電体層用組成物に代えて、実施例2〜4、及び比較例1〜4の誘電体層用組成物をそれぞれ用いた以外は実施例5と同様にして、グリーンシート2〜8をそれぞれ得た。
【0084】
(実施例9)
実施例5で得たグリーンシート1上に、前記PETフィルムと同じ長尺の、片面をシリコーン樹脂により厚さ0.1μmで剥離処理された保護用PETフィルムの剥離処理面をロール間圧着させることにより、PETフィルム−グリーンシート−PETフィルムの3層が積層されてなる積層フィルムを得た。
【0085】
次いで、上記で得たグリーンシート上の保護用PETフィルムを剥離除去し、積層フィルムのグリーンシート面を、表面に透明電極が形成された厚さ3mmのガラス基板(50mm×50mm)表面に重ね合わせ、加熱ローラを用いて熱ラミネート(80℃、0.2MPa)した。
【0086】
その後、キャリアーフィルム(PETフィルム)を剥離除去し、加熱炉内に入れ、昇温速度10℃/分で420℃まで昇温し、420℃で10分間加熱して、グリーンシート1内の樹脂を熱分解除去した。さらに590℃に昇温し、同温度で60分間焼成して、厚さ40μmの誘電体層が形成された誘電体層形成ガラス基板1を得た。
【0087】
(実施例10〜12、比較例9〜12)
実施例9において、グリーンシート1に代えて、グリーンシート2〜8をそれぞれ用いた以外は、実施例9と同様にして、誘電体層形成ガラス基板2〜8をそれぞれ得た。
【0088】
(グリーンシートの物性評価)
次に、上記で得たグリーンシート1〜8の、厚み及び貯蔵弾性率(E’)を測定し、打痕の有無を観察した。また、上記で得たグリーンシート1〜8の、保形性及び転着性を評価した。
【0089】
(1)厚みの測定
グリーンシート1〜8の厚みは、定圧厚さ測定器(TECLOCK CORPORATION社製)を使用して測定した。
測定結果を第2表に示す。
【0090】
(2)グリーンシートの貯蔵弾性率(E’)の測定
グリーンシート1〜8の、25℃と80℃における貯蔵弾性率(E’)を、動的粘弾性測定装置(DMA Q800、ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製)を用い、周波数:11Hzの条件で測定した。
測定結果を第2表に示す。
【0091】
(3)打痕の有無
実施例5〜8,及び比較例5〜8で得られた積層フィルムの一部から、それぞれ保護用PETフィルムを剥離した。保護用PETフィルムを剥離したグリーンシートの表面をマイクロスキャン(ナノフォーカス社製)を使用して観察し、打痕の有無を確認した。打痕がある場合を「あり」、ない場合を「なし」と評価した。評価結果を第2表に示す。
【0092】
(4)グリーンシートの保形性評価
グリーンシート1〜8の保形性を評価した。
グリーンシートの保形性は、グリーンシートをガラス基板への熱ラミネートした後、シート端部からのしみ出しの有無により評価した。しみ出しなしの場合は「○」、しみ出しありの場合は「×」と評価した。評価結果を第2表に示す。
【0093】
(5)グリーンシートのガラス基板への転着性の評価
実施例5〜8及び比較例5〜8のグリーンシート1〜8を電極付きガラス基板上にラミネートした際における転着性を評価した。
転着性は、グリーンシートをガラス基板上に熱ラミネートした後、キャリアーフィルムを容易に剥がせるか否かで評価し、容易に剥離する場合は「○」、剥離する際、グリーンシートがガラス基板から剥がれてしまう場合は「×」とした。評価結果を第2表に示す。
【0094】
【表2】

【0095】
第2表より、実施例5〜8のグリーンシート1〜4は打痕がなく、保形性、転着性に優れていた。
一方、比較例5及び8のグリーンシート5,8は転着性に劣っており、比較例6のグリーンシート6は打痕が入っていた。比較例7のグリーンシート7は、保形性に劣り、基板に転着する際シート形状が保持できず、シート端部からしみ出しが確認され、貯蔵弾性率(E’)の測定、転着性及び打痕の有無の評価ができなかった。
【0096】
(誘電体層の物性評価)
次に、上記で形成した誘電体層の厚みを測定し、透明性を評価した。
【0097】
(1)誘電体層の厚み測定
誘電体層形成ガラス基板1〜8の誘電体層の厚みを測定した。
測定は、接触式表面粗さ測定器(SV3000、(株)ミツトヨ製)を使用して行った。測定結果を第3表に示す。
【0098】
(2)誘電体層の透明性の評価
誘電体層形成ガラス基板1〜8の誘電体層の直線光透過率を、HAZEMETER測定装置(HAZE Meter、型式NDH2000、日本電色工業(株)製)により測定した。また透明性について、所望の透明性が得られた場合を「○」、得られなかった場合を「×」として評価した。
直線光透過率及び透明性の評価結果を第3表に示す。
【0099】
(3)電極両端部の気泡の有無
誘電体層形成ガラス基板1〜8の誘電体層と電極両端部の気泡の有無を、光学顕微鏡で観察して評価した。気泡が観察されなかった場合を「○」、気泡が観察された場合を「×」とした。評価結果を第3表に示す。
【0100】
【表3】

【0101】
第3表より、実施例9〜12で得られた誘電体層形成ガラス基板1〜4の誘電体層は、透明性に優れ、気泡がないものであった。
一方、比較例9で得られた誘電体層形成ガラス基板5の誘電体層は気泡が多く観察された。
比較例10の誘電体層形成ガラス基板6の誘電体層は透明性に劣るものであった。
比較例11で得られた誘電体層形成ガラス基板7の誘電体層は、グリーンシートの保形性が劣るため、評価できなかった。
また、比較例12で得られた誘電体層形成ガラス基板8の誘電体層は透明性に劣り、気泡が多く観察された。
【0102】
第1表〜第3表より、(1)実施例1〜4の誘電体層用組成物を用いることで、25℃で測定した貯蔵弾性率(E’)が80MPa以上であり、かつ80℃で測定した貯蔵弾性率(E’)が60MPa以下であるグリーンシートを容易に得ることができること(実施例5〜8)、(2)実施例5〜8のグリーンシートは打痕がなく、保形性及び転着性に優れており、このグリーンシートを用いることにより、透明性に優れ、気泡のない高品質の誘電体層が得られること(実施例9〜12)、及び、(3)実施例9〜12の誘電体層形成ガラス基板は、透明性に優れ、気泡のない(すなわち、耐電圧特性に優れる)誘電体層を有することがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】本発明のグリーンシートを製造する工程概略図である。
【図2】本発明の誘電体層形成基板の形成方法を示す工程断面図である。
【図3】プラズマディスプレイパネルの一例の構造断面図である。
【符号の説明】
【0104】
1…前面板用ガラス基板、2…背面板用ガラス基板、3…透明電極、4…データ電極、5…誘電体層(前面板誘電体層)、6…誘電体層(背面板誘電体層)、7…保護膜、8…リブ(隔壁)、9…蛍光体、13…キャリアーフィルム、14…塗工装置、15…貯蔵部、16…塗工部、17a…誘電体層用組成物の塗膜、17…グリーンシート、18…乾燥装置、19…保護フィルム、20a、20b…積層ロール、21…積層フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱分解性バインダー、ガラス成分および分散剤を含有してなる誘電体層用組成物であって、前記熱分解性バインダーが、重量平均分子量が20,000〜250,000で、かつ、ガラス転移温度が−5℃〜+40℃の高分子であり、前記熱分解性バインダーの含有量が、固形分比で、ガラス成分100重量部に対し、10〜50重量部であることを特徴とする誘電体層用組成物。
【請求項2】
プラズマディスプレイパネルの誘電体層の形成に用いられるものであることを特徴とする請求項1に記載の誘電体層用組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の誘電体層用組成物を乾燥し、フィルム化してなることを特徴とするグリーンシート。
【請求項4】
25℃で測定した貯蔵弾性率(E’)が80MPa以上であり、かつ80℃で測定した貯蔵弾性率(E’)が60MPa以下であることを特徴とする請求項3に記載のグリーンシート。
【請求項5】
請求項1または2に記載の誘電体層用組成物から形成された誘電体層を有することを特徴とする誘電体層形成基板。
【請求項6】
請求項3または4に記載のグリーンシートを基板に貼り合わせる工程と、該グリーンシートを焼成する工程とを有することを特徴とする誘電体層形成基板の製造方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−39288(P2007−39288A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−226729(P2005−226729)
【出願日】平成17年8月4日(2005.8.4)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】