説明

誤操作推定方法、誤操作推定装置及び誤操作推定プログラム

【課題】実際に誤操作が行われる前に、誤操作が行われそうな箇所を把握する。
【解決手段】操作履歴入力部11によりユーザが対象となるアプリケーションを操作した内容を示す操作履歴を入力し、エラー確率計算部14が操作履歴中のボタンの押下回数、操作間隔等に基づいてエラー確率を計算する。これにより、ユーザが実際にエラーを起こしていなくても、エラー確率を計算し、ユーザがエラーを起こしやすい箇所を把握することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アプリケーション中の操作対象が誤操作されるエラー確率を計算する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータ上で動作する多くのアプリケーションは1画面の中に多数のボタンを有し、これらのボタンを押下することで複数の操作・設定が可能となる。例えば、一般的な文書作成ソフトやインターネットブラウザなどでは、画面上部に「ファイル」「編集」「表示」「ツール」などのメニューボタンを備える。メニューボタンを選択したときに開かれるダイアログ画面内も、フォント設定ボタン、タブ間隔設定ボタン等の細かな設定のための設定ボタンを備える。
【0003】
一方、特許文献1には、アプリケーションの全ての操作パターンを予め記憶しておき、ユーザの操作履歴を用いてユーザの操作傾向を判定し、ユーザがどの操作を行うのかをシミュレーションする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−172667号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように様々な機能が割り当てられた多数のボタンが存在するアプリケーションでは、ユーザが本来やりたい作業とは異なるボタンを誤って選択してしまうことがある。繰り返し利用するアプリケーションの場合、人は無意識にいつもと同じ作業を行う。そのため、ユーザが誤って選択する可能性が高いボタンは、ユーザのそれまでの操作経験に依存するが、それを事前に推定する方法がない。
【0006】
例えば、特許文献1では、ユーザ毎にどの操作を行う可能性が高いのかをシミュレートすることができる。つまり、ユーザが行う可能性の高い操作を把握することができる。しかしながら、ユーザが「誤って」選択する可能性が高いボタンを把握することはできない。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、実際に誤操作が行われる前に、誤操作が行われそうな箇所を把握することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の本発明に係る誤操作推定方法は、アプリケーションが表示する画面において表示される操作対象が誤操作されるエラー確率を算出する誤操作推定方法であって、ユーザが操作した前記操作対象を識別する操作対象IDと当該操作対象が操作された時刻を入力して操作履歴保持手段に操作履歴として蓄積するステップと、アプリケーションが表示する画面を識別する画面IDと当該画面において表示される前記操作対象を識別する前記操作対象IDとを関連付けて画面情報として蓄積した画面情報蓄積手段から前記画面情報を読み出し、前記画面情報に含まれる前記画面ID毎に、当該画面IDに関連付けられた前記操作対象IDそれぞれについて、前記操作履歴保持手段に蓄積された前記操作履歴を参照して当該操作対象IDに対応する前記操作対象が操作された回数、操作された時間間隔、操作されたタイミングの少なくとも1つを取得し、当該操作対象のエラー確率を算出するステップと、を有することを特徴とする。
【0009】
上記誤操作推定方法において、前記エラー確率を算出するステップは、前記操作対象が操作された回数を取得し、当該回数に応じて前記操作対象のエラー確率に所定値を加算することを特徴とする。
【0010】
上記誤操作推定方法において、前記画面情報は、前記操作対象間の距離情報を含むものであって、前記エラー確率を算出するステップは、前記操作対象が操作された回数を取得し、当該回数が所定の閾値以上の操作対象からの距離が所定の距離以下である前記操作対象のエラー確率に所定値を加算することを特徴とする。
【0011】
上記誤操作推定方法において、前記エラー確率を算出するステップは、前記操作対象が操作された回数を取得し、当該回数が0である操作対象のエラー確率に所定値を加算することを特徴とする。
【0012】
上記誤操作推定方法において、前記エラー確率を算出するステップは、前記操作対象が操作された回数を取得し、当該回数が1以上数回以下である操作対象のエラー確率から所定値を減算することを特徴とする。
【0013】
上記誤操作推定方法において、前記エラー確率を算出するステップは、前記操作対象が操作された時間間隔を取得し、当該時間間隔が所定の閾値以下である操作対象のエラー確率に所定値を加算することを特徴とする。
【0014】
上記誤操作推定方法において、前記エラー確率を算出するステップは、前記操作対象が操作されたタイミングを取得し、当該タイミングが現在時刻に近くなるほど加算する値が大きくなるようにエラー確率に所定値を加算することを特徴とする。
【0015】
第2の本発明に係る誤操作推定装置は、アプリケーションが表示する画面において表示される操作対象が誤操作されるエラー確率を算出する誤操作推定装置であって、ユーザが操作した操作対象を識別する操作対象IDと当該操作対象が操作された時刻を入力する操作履歴入力手段と、前記入力手段が入力した前記操作対象IDと前記時刻を操作履歴として蓄積する操作履歴保持手段と、アプリケーションが表示する画面を識別する画面IDと当該画面において表示される前記操作対象を識別する前記操作対象IDとを関連付けて画面情報として蓄積した画面情報蓄積手段と、前記画面情報蓄積手段から前記画面情報を読み出し、前記画面情報に含まれる前記画面ID毎に、当該画面IDに関連付けられた前記操作対象IDそれぞれについて、前記操作履歴保持手段に蓄積された前記操作履歴を参照して当該操作対象IDに対応する前記操作対象が操作された回数、操作された時間間隔、操作されたタイミングの少なくとも1つを取得し、当該操作対象のエラー確率を算出するエラー確率算出手段と、を有することを特徴とする。
【0016】
第3の本発明に係る誤操作推定プログラムは、上記誤操作推定方法をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、実際に誤操作が行われる前に、誤操作が行われそうな箇所を把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本実施の形態における誤操作推定装置の構成を示す機能ブロック図である。
【図2】画面遷移を行うアプリケーションの例を示す図である。
【図3】操作履歴の例を示す図である。
【図4】上記誤操作推定装置の処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0020】
図1は、本実施の形態における誤操作推定装置の構成を示す機能ブロック図である。同図に示す誤操作推定装置1は、ユーザによるアプリケーションの操作履歴を入力して、操作回数、操作対象(ボタン等)の配置、操作を行った時間間隔、操作を行ったタイミングなどに基づいて操作対象が誤操作されるエラー確率を算出するものである。
【0021】
図1に示す誤操作推定装置1は、操作履歴入力部11、操作履歴保持部12、画面情報保持部13、エラー確率計算部14、結果蓄積部15、および出力部16を備える。誤操作推定装置1が備える各部は、演算処理装置、記憶装置等を備えたコンピュータにより構成して、各部の処理がプログラムによって実行されるものとしてもよい。このプログラムは誤操作推定装置1が備える記憶装置に記憶されており、磁気ディスク、光ディスク、半導体メモリ等の記録媒体に記録することも、ネットワークを通して提供することも可能である。
【0022】
本実施例では、図2に示す画面遷移を行うアプリケーションを例に説明する。図2に示すアプリケーションは、画面上にボタンを備えており、ボタンが押下されることで画面が遷移する。例えば、ある画面で設定値を入力して「次へ」ボタンを押すと、別の画面に遷移するウィザード形式のアプリケーションや、画面上部のツールバーから「ファイル」「編集」等のメニューボタンを選択するアプリケーションである。図2に示す例では、画面[1]のボタン2を押下すると画面[3]に遷移して画面[3]が表示されることを示している。各画面、各ボタンには、それぞれを識別する画面ID、ボタンIDが付与されている。また、本誤操作推定装置1が対象とするアプリケーションはWebページであってもよい。Webページの各ページ(画面に相当)には、リンク(ボタンに相当)が用意されており、リンクを押下することで異なるWebページに遷移するからである。以下、本実施の形態における誤操作推定装置1の各部について説明する。
【0023】
操作履歴入力部11は、ユーザの操作履歴の入力を受け付ける。操作履歴は、ユーザがボタンの押下などの操作をした時刻、どの画面のどのボタンを操作したかを示す画面ID、ボタンIDなどの情報である。この操作履歴は、ユーザの操作を観察する観察者が観察結果に基づいて操作履歴入力部11に入力しても良いし、システム側で操作情報を自動で取得してもよい。自動で操作情報を取得する方法としては、例えば、キーボードの入力を記録するツールなどを用いることができる。
【0024】
操作履歴保持部12は、操作履歴入力部11から操作履歴を受け付けて保持する。図3に、操作履歴保持部12が保持する操作履歴の例を示す。同図に示すように、操作履歴入力部11から入力された時刻、画面ID、ボタンIDと、前の操作を実行してからの時間間隔が操作履歴として蓄積されている。同図に示す例では、画面[1]がアプリケーションの最初の画面であり、時刻0:00,5:32,6:12,7:12,8:01,8:30にそれぞれアプリケーションを立ち上げたことが分かる。また、たとえば時刻0:12において画面[1]のボタン1が押下されているので、時刻0:12の段の間隔の欄に記載される値は12秒となる。
【0025】
画面情報保持部13は、アプリケーション中の全画面に関する情報である画面情報を保持する。画面情報保持部13は、画面情報として、画面を識別する画面IDに、その画面IDで識別される画面に存在するボタンのボタンIDを関連付けて保持する。画面情報は、アプリケーション作成者やマニュアル作成者が画面情報保持部13に事前に記録しておく。
【0026】
エラー確率計算部14は、操作履歴保持部12、画面情報保持部13それぞれから操作履歴と画面情報を読み出し、画面情報に記載された全ボタンIDそれぞれについてエラー確率を計算する。エラー確率の計算方法の詳細については後述する。
【0027】
結果蓄積部15は、エラー確率計算部14から計算結果である操作対象それぞれに対するエラー確率を受け取り蓄積する。
【0028】
出力部16は、ユーザの出力要求に応じて、結果蓄積部15から操作対象それぞれに対応するエラー確率を読み出して出力する。出力方法としては、操作対象とエラー確率を対応付けた表として紙に出力してもよいし、グラフなどにしてディスプレイに出力してもよい。なお、ユーザの出力要求があってから出力する方法の他に、結果蓄積部15に計算結果が入力され次第出力する方法、結果蓄積部15に予め設定した閾値以上の結果が蓄積されたら出力する方法、または一定時間経過後に出力する方法など出力するタイミングは問わない。
【0029】
次に、本実施の形態における誤操作推定装置1の動作について説明する。
【0030】
図4は、本実施の形態における誤操作推定装置1の処理の流れを示すフローチャートである。
【0031】
操作履歴入力部11に操作内容、時刻が入力されると、操作履歴入力部11は入力された情報を操作履歴保持部12へ出力する(ステップS11)。操作履歴保持部12は、入力された情報を操作履歴として保持する。
【0032】
操作履歴入力部11に最後に値が入力された後、次の入力がないまま一定時間経過したか否かを判定する(ステップS12)。一定時間経過していない場合は、ステップS11へ戻り、入力を待つ。
【0033】
一定時間経過した場合、操作履歴保持部12は、保持した操作履歴をエラー確率計算部14へ出力する(ステップS13)。
【0034】
エラー確率計算部14は、画面情報保持部13から画面情報を読み出し、画像情報に記載された各ボタンIDに対応する操作対象のエラー確率を操作履歴を元に計算し、計算結果を結果蓄積部15へ出力する(ステップS14)。
【0035】
結果蓄積部15は、エラー確率計算部14から受け取った計算結果を蓄積し、出力部16に出力する(ステップS15)。
【0036】
次に、エラー確率の計算方法について説明する。
【0037】
人間はある一定の確率でエラーを起こすものであるため、操作のしやすさなどに応じて、全画面の全ボタンのエラー確率を同一の値に初期化しておく。例えば、ボタンmを誤って押す確率(エラー確率)をE(m)と表すと、E(1)=E(2)=E(3)=・・・=E(m)=1/Tと設定する。Tは、1以上の定数で、T=1000,T=100000など、ボタンのサイズや操作に求められるタイムプレッシャーに応じて予め定めておく。その後、以下に述べるルールのいずれか、またはその組み合わせでエラー確率を更新する。
【0038】
(ルール1)
あるボタンの押下回数が同一画面上の他のボタンの押下回数と比べて著しく多い場合に、そのボタンのエラー確率を高くする。これは、次の理由による。ユーザは、同じ画面で同じ操作を繰り返し実行した経験があると、本来異なる操作をしたいと考えていたとしても、誤っていつもと同じ操作を行ってしまう傾向があるからである。例えば、一画面中にボタン1〜5が付置されていたときに、ボタン1がボタン2〜5と比較して著しく多く押下されている場合は、ボタン1を誤って押下する確率が高まる。
【0039】
エラー確率の具体的な計算方法としては、同一画面に存在する全ボタン数をnとし、各ボタンの過去の押下回数をp(1)〜p(n)、ボタンmの更新後のエラー確率をE1(m)と表し、次式で求める。
【0040】
IF p(m)−max p(t)(t=1〜n)>K then
E1(m)=E(m)+(p(m)−max p(t))/Σp(k)
Else E1(m)=E(m)
ただし、max p(t)は同一画面に存在する他のボタンの中で最も操作回数の多いボタンの押下回数、Kは10,20など予め設定した任意の閾値、Σp(k)は同一画面内の全ボタンの押下回数の総和である。つまり、上式では、ボタンmの押下回数p(m)が他のボタンの押下回数の最大値と比べてK以上多い場合、エラー確率を高くする。エラー確率計算部14は、画面情報保持部13が保持する画面情報を参照して、画面ID毎に上記の処理を行い、その画像IDに関連付けられたボタンIDについてのエラー確率を更新する。ボタンの押下回数は、操作履歴保持部12が保持する操作履歴を参照して求める。
【0041】
他にも、よく押下されるボタンが2つ以上存在しており、それら以外のボタンがほとんど押下されていない場合にも、同様のルールで、よく押下されるボタンのエラー確率を高くすることも考えられる。具体的には、次式のように、ボタンの押下回数が一定値Kを超えた場合に、一律にエラー確率を高くする。
【0042】
IF p(m)>K then E1(m)=E(m)+p(m)/Σp(k)
または、次式に示すように、各ボタンが押下されるごとに押下されたボタンのエラー確率を高くする。
【0043】
E1(m)=E(m)+p(m)/Σp(k)
なお、上記は一例であり、同一画面で同じ操作を繰り返していた場合に、その操作のエラー確率を高くする計算方法であればよい。
【0044】
(ルール2)
よく押下されるボタンのそばに付置されているボタンは誤って押されることが多くなるので、よく押下されるボタンと画面上で距離の近いボタンのエラー確率を高くする。例えば、50,100など予め設定した一定回数S以上押されたボタンから画面上で一定距離K以下の距離に付置されたボタンのエラー確率を高くする。
【0045】
エラー確率の具体的な計算方法としては、一定回数S以上押されたボタンからボタンmまでの距離をdとし、ボタンmのエラー確率E2(m)を次式で計算する。
【0046】
d<K のとき、E2(m)=E(m)+(K−d)/K
d≧K のとき、E2(m)=E(m)
ルール2を適用する場合は、画面情報にボタン間の距離情報を予め記載しておく。距離情報としては、所定の大きさのディスプレイでアプリケーションを表示させたときの実際の距離や画面サイズに対する割合で表す。
【0047】
(ルール3)
全く押したことのないボタンは、そのボタンを押すとどのようなことが起きるかについての知識がない場合が多く、誤った目的で押下される可能性が高い。そこで、押下回数が0回のボタンのエラー確率を高くする。
【0048】
エラー確率の具体的な計算方法の例としては、ボタンmの押下回数をp(m)、更新後のエラー確率をE3(m)として次式によりエラー確率を計算する。
【0049】
p(m)=0 のとき、E3(m)=E(m)+1/W
p(m)≠0 のとき、E3(m)=E(m)
Wは予め定めた1以上の定数である。
【0050】
(ルール4)
1回以上押したことがあるが、1〜3回程度と回数がそれほど多くない場合はエラー確率を低くする。すなわち、1回以上の操作経験があれば、その操作を実行した際にどのようなことが起きるかをユーザが理解している可能性が高く、知識不足によるエラーの確率は低い。また、操作経験がそれほど多くない場合には、ユーザは慎重に操作する可能性が高いため、エラー確率は低くなる。
【0051】
エラー確率の計算方法としては、押下回数が1回以上数回以下のボタンのエラー確率を低くする。
【0052】
(ルール5)
ボタンを押下する操作が素早い場合はエラー確率を高くする。これは、勢いで異なるボタンを押してしまう可能性が高まるためである。操作履歴の時間間隔の値が一定以下である場合、そのボタンのエラー確率を高くする。
【0053】
エラー確率の計算方法としては、例えば、操作履歴保持部12が保持する操作履歴から間隔、画面ID、ボタンIDを読み出し、各ボタン毎に間隔の平均をとり、その平均が予め定めた閾値以下の場合には、そのボタンのエラー確率を高くする。なお、判定に用いる間隔の値として平均のほかにも最小値、最頻値など他の統計値を利用できる。あるいは、閾値以下の間隔で操作される毎にそのボタンのエラー確率を高くする。
【0054】
(ルール6)
最近押したボタンのエラー確率を高くし、しばらく押していないボタンのエラー確率を低くする。これは、ユーザは過去によく押したボタンよりも、最近押したボタンを選択する傾向にあるからである。
【0055】
エラー確率の計算方法としては、例えば、各ボタンを一度押す度にそのボタンのエラー確率を高くするが、そのボタンが最近押されたものであるか否かでエラー確率の上げ方を変える。具体的には、ボタンmが1回目に押された時刻から現在までの経過時間をT(m,1)、2回目に押された時刻から現在までの経過時間をT(m,2)として次式を計算する。
【0056】
E6(m)=E(m)+Σ(1/T(m,k))
Σ(1/T(m,k))は1/T(m,k)にk=1,2,3,・・・,nを代入して加算した値である。上記の式により、現在に近くなるほど大きな値がエラー確率に加算されて、最近押したボタンほどエラー確率を高く設定できる。
【0057】
なお、上記のルール1〜ルール6は、単独で適用してもよいし、2つ以上のルールを適用してエラー確率を更新してもよい。例えば、ルール1とルール2を適用する場合は、ルール1,2によりE1(m),E2(m)を計算して、E1(m)+E2(m)−E(m)などと各エラー確率を加算する方法が考えられる。ここで、E(m)を減算しているのは、E1(m),E2(m)も元のエラー確率E(m)が加算された式であるため、E1(m),E2(m)を加算するとE(m)が二度加算されてしまうからである。
【0058】
なお、本実施の形態では、操作対象としてボタンを例に説明したが、画面に付置されるボタン以外にも、メニュー、ラジオボタン、チェックボックス、HTMLのハイパーリンクなどのユーザが操作・選択できるものであってもよい。
【0059】
また、本実施の形態では、ボタンを押下すると次の画面に遷移するアプリケーションを例に説明したが、必ずしもボタン押下後に画面遷移をするアプリケーションである必要はなく、画面に対して何らかの操作(例えば「マウスで押下」「キーボードで記号を入力」等)をすることのできるアプリケーションであればその構成は問わない。
【0060】
以上説明したように、本実施の形態によれば、操作履歴入力部11によりユーザが対象となるアプリケーションを操作した内容を示す操作履歴を入力し、エラー確率計算部14が操作履歴中のボタンの押下回数、操作間隔等に基づいてエラー確率を計算することにより、ユーザが実際にエラーを起こしていなくても、エラー確率を計算し、ユーザがエラーを起こしやすい箇所を把握することができる。これにより、ヒューマンエラーを防止することが可能となる。
【0061】
なお、本発明は、非常にリスクの高い作業、例えば航空機の操縦操作に関わるアプリケーションなどのボタンを一つ押し間違えると重大な事故につながる作業において、各ユーザがエラーを起こす確率を事前に算出してアラートを出す、という使途を想定している。例えば、アプリケーション動作中に各ボタンのエラー確率を算出しながら、エラー確率が一定値以上のボタンが押下された場合に確認を促す確認画面を表示させるために用いる。また、ボタンの脇に算出したエラー確率を表示させてもよい。
【0062】
さらに、本発明は、アプリケーション操作を2人以上の担当者が操作する場合にも用いることができる。例えば、担当者1が一連の操作を行い、担当者2が担当者1の操作が正しいことを確認した後に「実行」ボタンを押すような操作を想定する。この場合、本発明を用いて、担当者1が行った操作のうち誤っている可能性が高い部分を判定して表示することで、担当者2のミスチェックの負担を軽減し、重大なミスの防止につなげることができる。
【符号の説明】
【0063】
1…誤操作推定装置
11…操作履歴入力部
12…操作履歴保持部
13…画面情報保持部
14…エラー確率計算部
15…結果蓄積部
16…出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アプリケーションが表示する画面において表示される操作対象が誤操作されるエラー確率を算出する誤操作推定方法であって、
ユーザが操作した前記操作対象を識別する操作対象IDと当該操作対象が操作された時刻を入力して操作履歴保持手段に操作履歴として蓄積するステップと、
アプリケーションが表示する画面を識別する画面IDと当該画面において表示される前記操作対象を識別する前記操作対象IDとを関連付けて画面情報として蓄積した画面情報蓄積手段から前記画面情報を読み出し、前記画面情報に含まれる前記画面ID毎に、当該画面IDに関連付けられた前記操作対象IDそれぞれについて、前記操作履歴保持手段に蓄積された前記操作履歴を参照して当該操作対象IDに対応する前記操作対象が操作された回数、操作された時間間隔、操作されたタイミングの少なくとも1つを取得し、当該操作対象のエラー確率を算出するステップと、
を有することを特徴とする誤操作推定方法。
【請求項2】
前記エラー確率を算出するステップは、前記操作対象が操作された回数を取得し、当該回数に応じて前記操作対象のエラー確率に所定値を加算することを特徴とする請求項1記載の誤操作推定方法。
【請求項3】
前記画面情報は、前記操作対象間の距離情報を含むものであって、
前記エラー確率を算出するステップは、前記操作対象が操作された回数を取得し、当該回数が所定の閾値以上の操作対象からの距離が所定の距離以下である前記操作対象のエラー確率に所定値を加算することを特徴とする請求項1又は2記載の誤操作推定方法。
【請求項4】
前記エラー確率を算出するステップは、前記操作対象が操作された回数を取得し、当該回数が0である操作対象のエラー確率に所定値を加算することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の誤操作推定方法。
【請求項5】
前記エラー確率を算出するステップは、前記操作対象が操作された回数を取得し、当該回数が1以上数回以下である操作対象のエラー確率から所定値を減算することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の誤操作推定方法。
【請求項6】
前記エラー確率を算出するステップは、前記操作対象が操作された時間間隔を取得し、当該時間間隔が所定の閾値以下である操作対象のエラー確率に所定値を加算することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の誤操作推定方法。
【請求項7】
前記エラー確率を算出するステップは、前記操作対象が操作されたタイミングを取得し、当該タイミングが現在時刻に近くなるほど加算する値が大きくなるようにエラー確率に所定値を加算することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の誤操作推定方法。
【請求項8】
アプリケーションが表示する画面において表示される操作対象が誤操作されるエラー確率を算出する誤操作推定装置であって、
ユーザが操作した操作対象を識別する操作対象IDと当該操作対象が操作された時刻を入力する操作履歴入力手段と、
前記入力手段が入力した前記操作対象IDと前記時刻を操作履歴として蓄積する操作履歴保持手段と、
アプリケーションが表示する画面を識別する画面IDと当該画面において表示される前記操作対象を識別する前記操作対象IDとを関連付けて画面情報として蓄積した画面情報蓄積手段と、
前記画面情報蓄積手段から前記画面情報を読み出し、前記画面情報に含まれる前記画面ID毎に、当該画面IDに関連付けられた前記操作対象IDそれぞれについて、前記操作履歴保持手段に蓄積された前記操作履歴を参照して当該操作対象IDに対応する前記操作対象が操作された回数、操作された時間間隔、操作されたタイミングの少なくとも1つを取得し、当該操作対象のエラー確率を算出するエラー確率算出手段と、
を有することを特徴とする誤操作推定装置。
【請求項9】
請求項1乃至7のいずれかに記載された誤操作推定方法をコンピュータに実行させることを特徴とする誤操作推定プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−220994(P2012−220994A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−82996(P2011−82996)
【出願日】平成23年4月4日(2011.4.4)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】