調光機能付蛍光ランプ点灯装置
【課題】特別な回路を付加することなく適正に蛍光ランプの予熱を行い蛍光ランプの寿命の減少を防止するとともに、省スペース、省コストで且つ調光制御信号設定の自由度が高い調光機能付蛍光ランプ点灯装置を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明に係る調光機能付蛍光ランプ点灯装置80によれば、OFFデューティ中に予熱デューティを設けこの予熱デューティの期間及び動作周波数を最適化することで、特別な回路を付加することなく蛍光ランプFの寿命低下を防止することができる。よって、調光機能付蛍光ランプ点灯装置80は、低コスト化、省スペース化が可能となり、様々な用途に適用可能な汎用性の高いものとなる。
【解決手段】本発明に係る調光機能付蛍光ランプ点灯装置80によれば、OFFデューティ中に予熱デューティを設けこの予熱デューティの期間及び動作周波数を最適化することで、特別な回路を付加することなく蛍光ランプFの寿命低下を防止することができる。よって、調光機能付蛍光ランプ点灯装置80は、低コスト化、省スペース化が可能となり、様々な用途に適用可能な汎用性の高いものとなる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光ランプの明るさを変化させる調光機能付蛍光ランプ点灯装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、省エネルギーの観点から商品のショーケースや自動販売機においても蛍光ランプの明るさを段階的(もしくは連続的)に変化させることが可能な調光機能を備えた蛍光ランプ点灯装置が使用される傾向にある。これら調光機能付蛍光ランプ点灯装置は基本的に蛍光ランプの点灯、消灯を交互に高速で切り替え、蛍光ランプの点灯時間を短くするとともにその分だけ消灯時間を長くすることにより蛍光ランプの調光を行う方法が多く採用されている。尚ここでは、蛍光ランプの明るさを減少させ特に全光時の50%以下にすることを深い調光と記すものとする。
【0003】
この蛍光ランプの調光方法の代表的なものとして、間欠発振制御方式(例えば下記[特許文献1])と周波数変調(PWM)方式(例えば下記[特許文献2])とが挙げられる。
【0004】
ここで、従来の調光機能付蛍光ランプ点灯装置の調光動作を間欠発振制御方式のものを用いて説明する。
【0005】
従来の調光機能付蛍光ランプ点灯装置の調光制御部には、蛍光ランプを消灯させるOFFデューティと蛍光ランプを点灯させるONデューティとを調光率に応じた比率で有し、ONデューティ時における動作周波数が規定された例えば図11に示すような調光制御信号が予め設定されている。蛍光ランプの調光はONデューティ比(調光制御信号の周期をTとした時のONデューティの占める割合)によって制御され、ONデューティ比が小さい程、深い調光となる。そして、調光制御信号の一般的な周期Tは、0.5msec〜10msecである。尚、図11に示す調光制御信号は、ONデューティ比が0.3、即ち調光率約30%の例を示している。
【0006】
従来の調光機能付蛍光ランプ点灯装置は、蛍光ランプが点灯した後に所定の調光(ここでは調光率30%)を指示する信号を受けると、調光制御部が図11に示すOFFデューティの調光制御信号A’を発振部に出力する。間欠発振制御方式の場合、発振部は調光制御信号A’を受けてスイッチング信号をOFFする。これにより、蛍光ランプへの高周波交流電力の供給が止まり、蛍光ランプのフィラメント電流(図12(a)の領域A’)及び管電流(図12(b)の領域A’)の流下が停止する。よって、蛍光ランプが消灯する。
【0007】
次に、調光制御部は再点弧デューティの調光制御信号Cを発振部に出力する。発振部は調光制御信号Cを受けて例えば動作周波数63kHzのスイッチング信号を出力する。これにより、蛍光ランプにはキック電圧が印加され図12(b)の領域Cに示すように管電流(交流)が徐々に増加しある一定値を超えたところで蛍光ランプが点灯する。尚、ここでの再点弧デューティは動作周波数63kHzで一定期間制御後、ONデューティの動作周波数に徐々に移行するものとした。
【0008】
次に、調光制御部はONデューティの調光制御信号Dを発振部に出力する。発振部は調光制御信号Dを受けて例えば動作周波数50kHzのスイッチング信号を出力する。これにより、蛍光ランプには図12(a)、図12(b)の領域Dに示すように、約0.400AO−Pのフィラメント電流(交流)と約0.300AO−Pの管電流(交流)が流下し、蛍光ランプの点灯が維持される。
【0009】
そして、繰り返し調光制御信号A’、C、Dが出力されることで蛍光ランプは消灯、点灯が繰り返され、結果として蛍光ランプの照度は低下する。これにより、蛍光ランプFは指示された調光率(本例では約30%)で点灯する。
【0010】
間欠発振制御方式の調光機能付蛍光ランプ点灯装置では、図12に示すように、OFFデューティの期間ではフィラメント電流及び管電流が流下しない。このため省エネルギー効果は大きく、消費電力対照度比の効率は良好といえる。また、ONデューティ比約50%までの範囲の調光では、蛍光ランプの寿命への悪影響も少ない。
【0011】
しかしながら、50%を超える深い調光になると、フィラメント電流が流れないOFFデューティの期間が長くなる。間欠発振制御方式ではOFFデューティの期間にはフィラメント電流は流下しないためフィラメントの温度が徐々に低下する。
【0012】
周知のように蛍光ランプのフィラメントには電子放射物質(エミッタ)が塗布されており、フィラメントが取り付けられた電極(陰極)に電流が流れるとこのフィラメントにフィラメント電流が流れ、これによりフィラメントが予熱される。そして、所定の電力が蛍光ランプの両電極に印加されると、予熱されたフィラメントから熱電子がもう一方の電極(陽極)に引かれて移動し放電が起こる。これにより蛍光ランプは点灯する。このときの適正なフィラメントの予熱温度は700℃前後であり、この適正な予熱温度以下の温度で放電を行うと、電子放射物質の飛散量が増大し蛍光ランプの寿命が減少する。
【0013】
そして、上記のようにOFFデューティの期間が長い場合、フィラメントの温度が適正温度よりも低下する可能性がある。このため、間欠発振制御方式では50%を超えるような深い調光を行うと蛍光ランプによってはその寿命が大きく減少する可能性がある。即ち、従来の間欠発振制御方式による調光はOFFデューティ時の管電流を迅速に低下させることが可能で深い調光を容易に行うことができ、また省エネルギーの効果も高い反面、深い調光ではフィラメントの予熱温度が不足し蛍光ランプの寿命が減少するという問題点がある。
【0014】
また、周波数変調方式では主に蛍光ランプの立ち消えを防止する為、図13に示すように、OFFデューティ時に管電流の流下が停止する高い動作周波数(図13では162kHz)を印加して蛍光ランプを消灯する。
【0015】
ここで、LC共振点灯方式における動作周波数と無放電状態の蛍光ランプへの出力電圧との関係は、LC共振回路を構成するインダクタ素子のインダクタ値と共振コンデンサの容量値とに依存し、インダクタ素子と共振コンデンサとが共振周波数をとるときに最大となる。そして、出力の最大電圧は電圧共振回路上の伝送インピーダンスで決定とともに、共振周波数foはインダクタ素子のインダクタンス値をL、共振コンデンサの容量値をCfとした時に、以下の式で表される。
【0016】
【数1】
また、蛍光ランプの非点灯時の出力電圧と動作周波数とのシミュレーション結果を図14に示す。尚、シミュレーションの条件は、スイッチング出力電圧=AC60V、インダクタ素子のインダクタンス値L=620μH、共振コンデンサの容量値Cf=0.015μF、回路インピーダンス=20Ω、動作周波数=40k〜135kHzとした。尚、通常インダクタ素子には直流カットコンデンサが直列接続されるがこの直流カットコンデンサの容量は共振コンデンサの容量Cfに対して十分大きい値として無視し、共振周波数を上記計算式により計算すると、共振周波数fo=52.2kHzとなる。
【0017】
図14の結果から、動作周波数が共振周波数foよりも増加すると出力電圧が減少することがわかる。そして、周波数変調方式ではこの共振周波数foよりも高い動作周波数を用いて蛍光ランプへの出力電圧を低下させ蛍光ランプの消灯又は減光を行う。
【0018】
しかしながら、蛍光ランプ点灯装置では雑音端子電圧の自主規制規格が存在し、150kHz以上の周波数帯域を動作周波数として使用することは好ましくない。よって、実際にはOFFデューティ時の動作周波数は150kHz未満とすることが望ましい。しかしながら、蛍光ランプの点灯はアーク放電によるものであるから、OFFデューティ時の動作周波数を150kHz未満(120kHz〜130kHz程度)とすると、ONデューティ時からの続流電流により管電流が迅速に低下せず蛍光ランプが直ちに消灯しない。このためONデューティ比と調光率との間にズレが生じ所望の調光率が得られない。従って、所望の調光率を得るためにはONデューティの期間を短縮するなどしなければならないが、ONデューティの期間の変化はフィラメントの予熱等にも関与し調光制御信号の設定が極めて煩雑となる。また、特に自動販売機に蛍光ランプ点灯装置を使用する場合には、自動販売機のデータ収集等の通信に使用する70kHz近傍の周波数帯(65kHz〜75kHz)を動作周波数として恒常的に使用することができない。このことが、さらに調光制御信号の設定を煩雑としている。
【0019】
ただし、周波数変調方式ではOFFデューティの期間でもフィラメント電流は流下するから間欠発振制御方式と比較してフィラメントの温度低下も少ない。しかしながら、周波数変調方式であっても深い調光を行いOFFデューティの期間を長くすれば、間欠発振制御方式と同様にフィラメントが適正温度よりも低下して蛍光ランプの寿命が減少する可能性がある。また、高い動作周波数のOFFデューティの期間を長くすれば、スイッチング素子の高速動作期間も長くなり、特に無負荷時(蛍光ランプが外された場合、蛍光ランプが寿命等で動作しない場合)等にはスイッチング素子が発熱するという問題点がある。
【0020】
従って、従来の周波数変調方式による調光はOFFデューティ時におけるフィラメントの温度低下が比較的少ないものの、深い調光を行えば間欠発振制御方式と同様にフィラメントが適正温度よりも低下して蛍光ランプの寿命が減少する可能性がある。また、上記の禁止周波数帯域を避けて調光制御信号の動作周波数を設定する必要があるため調光制御信号の設定の自由度が低い。さらに、スイッチング素子の発熱が大きいという問題点がある。
【0021】
調光動作による蛍光ランプの寿命低下は、仮にOFFデューティ時に適正な予熱温度が得られるフィラメント電流の値が、蛍光ランプによらず統一されて示されていれば、OFFデューティ時の動作周波数を適切に設定することである程度防止することができる。さらに、場合によっては蛍光ランプの定格寿命を銅鉄チョーク比の寿命で2倍程度にすることも可能である。従って、蛍光ランプメーカの改善により予熱のための適正なフィラメント電流が、蛍光ランプメーカ、蛍光ランプの種類、蛍光ランプ自体のバラツキによらず統一的に示されることが理想であるが、現状そこまでには至っていない。
【0022】
この点、[特許文献2]には、蛍光ランプを点灯もしくは消灯させる動作周波数に応じて、予熱電流の供給量を増減させる第1の供給源と第2の供給源とを備えた放電灯点灯装置に関する発明が開示されている。この[特許文献2]に開示された発明によれば、調光率が深くOFFデューティの期間が長い場合でも、十分なフィラメントの予熱を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【特許文献1】実開昭58−62592号公報
【特許文献2】特開2007−305500号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
しかしながら[特許文献2]に開示された発明は、予熱電流の供給量を増減させるためのトランス等の第1の供給源及び第2の供給源を必要とするため、特に蛍光ランプを複数点灯させる場合、その各々の点灯部に第1の供給源及び第2の供給源が必要となりコストの増加及び設置スペースが増大するという問題点がある。
【0025】
本発明は上記事情に鑑みて成されたものであり、特別な回路を付加することなく適正に蛍光ランプの予熱を行い蛍光ランプの寿命の減少を防止するとともに、省スペース、省コストで且つ調光制御信号設定の自由度が高い調光機能付蛍光ランプ点灯装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明は、
(1)商用電源1を直流化する直流化回路40と、当該直流化回路40からの直流電流を平滑化する直流電源部42と、調光率を指示する調光信号を出力する調光信号出力手段45と、蛍光ランプFを消灯させるOFFデューティと当該蛍光ランプFを点灯させるONデューティとを調光率に応じた比率で有する調光制御信号を、前記調光信号を受けて出力する調光制御部36と、前記調光制御信号に応じて所定の動作周波数のスイッチング信号を出力する発振部33と、当該スイッチング信号に応じたスイッチング制御により前記直流電源部42からの電力を高周波交流電力として出力端Pに出力するスイッチング部44と、前記出力端Pと前記蛍光ランプFの一方のフィラメントFraとの間に接続されるインダクタ素子Lと前記蛍光ランプFの他方のフィラメントFrbを前記直流電源部42に接続しさらに前記蛍光ランプFの両方のフィラメントFra、Frbを介して前記蛍光ランプLと並列接続される共振コンデンサCfとを備えたLC共振点灯方式の蛍光ランプ点灯部46と、を有する調光機能付蛍光ランプ点灯装置において、
前記OFFデューティが予熱デューティと消灯デューティとで構成され、当該消灯デューティに基づく調光制御信号Aにより前記蛍光ランプFを消灯するとともに、前記予熱デューティに基づく調光制御信号Bにより前記蛍光ランプFの消灯を維持しながら前記フィラメントFra、Frbの予熱を行うことを特徴とする調光機能付蛍光ランプ点灯装置80を提供することにより、上記課題を解決する。
(2)ONデューティの直後に消灯デューティを設けたことを特徴とする上記(1)記載の調光機能付蛍光ランプ点灯装置80を提供することにより、上記課題を解決する。
(3)ONデューティ、消灯デューティ、予熱デューティによる動作周波数を65kHz〜75kHzの範囲以外に設定することを特徴とする上記(1)又は(2)記載の調光機能付蛍光ランプ点灯装置80を提供することにより、上記課題を解決する。
(4)ONデューティの動作周波数を前記インダクタ素子Lと前記共振コンデンサCfとの共振周波数近傍に設定し、予熱デューティの動作周波数を当該共振周波数及び75kHzよりも高い周波数に設定することで、65kHz〜75kHzの範囲のノイズ成分を低減することを特徴とする上記(3)記載の調光機能付蛍光ランプ点灯装置80を提供することにより、上記課題を解決する。
(5)調光制御部36の出力する調光制御信号が、消灯デューティにおけるスイッチング信号を蛍光ランプの消灯する動作周波数とし、消灯デューティ、予熱デューティ、ONデューティのそれぞれの動作周波数を連続して周期的に出力する周波数変調方式の調光制御信号であることを特徴とする上記(1)乃至(4)のいずれかに記載の調光機能付蛍光ランプ点灯装置80を提供することにより、上記課題を解決する。
(6)蛍光ランプ点灯部46を出力端Pと直流電源部42との間に複数並列接続したことを特徴とする上記(1)乃至(5)のいずれかに記載の調光機能付蛍光ランプ点灯装置80を提供することにより、上記課題を解決する。
(7)直流化回路40が全波整流回路もしくは倍電圧整流回路で構成され且つ直流電源部42がコンデンサインプット方式、アクティブフィルタ方式又は部分平滑方式であることを特徴とする上記(1)乃至(6)のいずれかに記載の調光機能付蛍光ランプ点灯装置80を提供することにより、上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係る調光機能付蛍光ランプ点灯装置は、OFFデューティ中に予熱デューティを設けてこの予熱デューティで蛍光ランプの予熱を行うことで、特別な回路を付加することなく深い調光をした場合でも蛍光ランプの寿命の減少を防止することができる。また、特別な回路を付加する必要がないため、省スペース化と省コスト化とを図ることができる。さらに、予熱デューティを設けることで、蛍光ランプの予熱を他のデューティから独立して制御することが可能となり、調光制御信号の設定の自由度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係る調光機能付蛍光ランプ点灯装置のブロック図である。
【図2】本発明に係る実施例1の調光制御信号を説明する図である。
【図3】本発明に係る実施例1の調光制御信号によるフィラメント電流及び管電流を示す図である。
【図4】蛍光ランプ間にかかる出力周波数の測定結果を示すグラフである。
【図5】本発明に係る予熱デューティ比とフィラメント電力要素との関係を示すグラフである。
【図6】本発明に係る実施例2の調光制御信号を説明する図である。
【図7】本発明に係る実施例2の調光制御信号によるフィラメント電流及び管電流を示す図である。
【図8】比較例1の調光制御信号を説明する図である。
【図9】比較例1の調光制御信号によるフィラメント電流及び管電流を示す図である。
【図10】本発明に係る実施例及び比較例とフィラメント電力要素との関係を示すグラフである。
【図11】従来の調光制御信号を説明する図である。
【図12】従来の調光制御信号の間欠発振制御方式によるフィラメント電流及び管電流を示す図である。
【図13】従来の調光制御信号の周波数変調方式によるフィラメント電流及び管電流を示す図である。
【図14】動作周波数と出力電圧の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明に係る調光機能付蛍光ランプ点灯装置の実施の形態について図面に基づいて説明する。図1に示す本発明に係る調光機能付蛍光ランプ点灯装置80は、商用電源1を直流化する直流化回路40と、直流化回路40からの直流電流を平滑化した上で後述のスイッチング部44に供給する直流電源部42と、調光率を指示する調光信号を後述の調光制御部36に出力する調光信号出力手段45と、蛍光ランプFを消灯させる消灯デューティと蛍光ランプFのフィラメントを予熱するための予熱デューティと蛍光ランプFを点灯させるONデューティとを有する調光制御信号を出力する調光制御部36と、調光制御信号に応じた動作周波数のスイッチング信号を出力する発振部33と、スイッチング信号に応じたスイッチング制御により直流電源部42からの電力を高周波交流電力として出力端Pに出力するスイッチング部44と、スイッチング部44からの高周波交流電力により蛍光ランプFの点灯及び消灯を行う蛍光ランプ点灯部46と、を有している。
【0030】
直流化回路40としては、図1に示す全波整流回路の他、周知の倍電圧整流回路を使用することができる。また、直流電源部42としては、周知のコンデンサインプット方式、アクティブフィルタ方式、部分平滑方式のものを用いることができる。
【0031】
スイッチング部44はスイッチング信号が入力するゲート端子が後述の絶縁素子37を介して発振部33に接続された2つのFET素子Q1、Q2を有している。そして一方のFET素子Q1のソース端子が直流電源部42に接続され、他方のFET素子Q2のドレイン端子が直流電源部42に接続され、FET素子Q1のドレイン端子とFET素子Q2のソース端子とが出力端P接続されている。
【0032】
蛍光ランプ点灯部46はLC共振点灯方式の蛍光ランプ点灯装置で構成され、出力端Pと蛍光ランプFの一方のフィラメントFraとの間に接続されるインダクタ素子L及び直流カットコンデンサCと、蛍光ランプFの他方のフィラメントFrbを直流電源部42に接続した上で、さらに前記蛍光ランプFの両方のフィラメントFra、Frbを介して蛍光ランプLと並列接続される共振コンデンサCfと、を備えている。また、蛍光ランプ点灯部46は1つとは限らず、複数の蛍光ランプ点灯部46を出力端Pと直流電源部42との間に並列に接続することができる。尚、図1では蛍光ランプ点灯部46を4つ並列接続した例を示す。
【0033】
調光制御部36と発振部33とは調光機能付蛍光ランプ点灯装置80の制御部50内に設置される。そして、制御部50には調光制御部36と発振部33との他に、例えばスイッチング電源用の汎用IC等により構成され所定のクロック信号(例えば2.25kHz)を出力するクロック発振部34と、例えば汎用カウンターIC等により構成されクロック発振部34からのクロック信号を例えば1/10に分周して調光制御部36に出力する分周部35と、蛍光ランプFを初めに点灯する際の始動制御信号を発振部33に出力する始動制御部32と、発振部33からのスイッチング信号を各部と分離し絶縁状態でスイッチング部44のFET素子Q1、Q2のゲート電圧として出力する例えば信号用パルストランス等の絶縁素子37と、直流化回路40からの直流電流を小容量の制御回路用の電力に変換して制御部50の各部に供給する制御回路用電源31と、を有している。尚、図1においては、制御回路用電源31からの各部への電源供給ラインの記載は省略する。
【0034】
次に、調光機能付蛍光ランプ点灯装置80の動作を説明する。先ず、図示しない点灯スイッチ等がONされると、始動制御部32が発振部33に例えば発振周波数を動作周波数67kHzに変調する始動制御信号を1秒間出力する。発振部33は始動制御信号を受けて動作周波数67kHzのスイッチング信号を1秒間出力する。スイッチング部44は絶縁素子37を介して取得された動作周波数67kHzのスイッチング信号によりFET素子Q1、Q2を1秒間スイッチング制御する。このスイッチング制御により出力端Pに直流電源部42からの電力が動作周波数67kHzで1秒間出力される。出力端Pから出力される高周波交流電力は蛍光ランプ点灯部46に供給され蛍光ランプFの両フィラメントFra、Frbを予熱する。次に、始動制御部32は例えば動作周波数42kHzの制御信号を発振部33に出力する。これにより、蛍光ランプFは全光状態で点灯する。
【0035】
次に、ユーザが調光スイッチを操作したりタイマ等のON動作により所定の信号が調光信号出力手段45に入力すると、調光信号出力手段45は調光制御部36に対し調光率を指示する調光信号を出力する。調光制御部36には、分周部35からの分周されたクロック信号に基づいて形成されたONデューティ、予熱デューティ、消灯デューティを有する例えば図2に示す調光制御信号が予め設定されている。そして、調光制御部36は調光信号を受けて調光制御信号及びこの調光制御信号と対応した変調信号を順次、発振部33に出力する。尚、調光機能付蛍光ランプ点灯装置80が複数の調光率に対応可能な場合には、調光信号出力手段45は指示された調光率の調光信号を出力し、調光制御部36はこの調光信号に応じた調光制御信号を選択して出力する。また、調光機能付蛍光ランプ点灯装置80を段階的な調光率ではなく連続的な調光率に対応させる場合には、調光信号出力手段45をボリューム等で構成し、調光制御部36は調光信号の調光率に応じた調光制御信号をマイコン等によりその都度形成して出力する。
【実施例1】
【0036】
次に、図2を用いて調光制御部36が出力する調光制御信号及びこの調光制御信号による調光機能付蛍光ランプ点灯装置80の動作をさらに詳しく説明する。尚、図2に示す調光制御信号は、蛍光ランプ点灯部46を4つ並列接続した上で蛍光ランプFにFL20SS管を用い、直流電源部42に平滑コンデンサ560μF/200Vのコンデンサインプット式のものを採用し、インダクタ素子Lのインダクタ値を620μH、共振コンデンサCfの容量値を0.015μFとし、さらにONデューテ比が0.3(調光率約30%)の条件時に好適なものである。
【0037】
上記の調光制御信号の特に予熱デューティの期間及び動作周波数は、予め予備実験を行い最適な期間及び動作周波数を求めた上で、調光制御部36に設定しておく。また、調光機能付蛍光ランプ点灯装置80が複数の調光率に対応可能な場合には、その調光率毎に最適な予熱デューティの期間及び動作周波数を求め調光制御部36に設定しておく。尚、予熱デューティの期間及び動作周波数は、使用する蛍光ランプFの種類、調光機能付蛍光ランプ点灯装置80の各回路の構成、即ち直流化回路40、直流電源部42、スイッチング部44等の構成、インダクタ素子Lのインダクタ値、共振コンデンサCfの容量値等により異なる。
【0038】
図2に示す調光制御信号は、蛍光ランプFを点灯させるONデューティの調光制御信号D(ONデューテ比:0.3 動作周波数:50kHz)と、蛍光ランプFを消灯させる消灯デューティの調光制御信号A(スイッチング信号:OFF信号 間欠発振制御方式)と、蛍光ランプFの消灯を維持しながら蛍光ランプFのフィラメントに電流を流下しフィラメントの予熱を行う予熱デューティの調光制御信号B(予熱デューテ比:0.428 動作周波数:92kHz)とを有している。そして、消灯デューティと予熱デューティとがOFFデューティを構成し、OFFデューティとONデューティとを含めた調光制御信号の周期Tは0.5msec〜10msec(100Hz〜2kHz)である。尚、予熱デューテ比は(予熱デューティ)/(OFFデューティ)で表される。また、図2に示す調光制御信号には蛍光ランプFの再点灯時のキック電圧を印加する再点弧デューティの調光制御信号C(動作周波数63kHzで一定期間制御後、ONデューティの動作周波数に徐々に移行)を有している。ただし、この再点弧デューティは調光機能付蛍光ランプ点灯装置80の回路構成、使用する蛍光ランプFの種類によっては無くとも良い。
【0039】
ここで、調光信号出力手段45から調光信号が出力されると、調光制御部36は先ず図2に示す消灯デューティの調光制御信号A及びスイッチング信号をOFFするOFF信号を発振部33に出力する。発振部33は調光制御信号A及びOFF信号を受けて消灯デューティの期間、スイッチング信号をOFFする。これにより、蛍光ランプFへの高周波交流電力の供給が止まり、蛍光ランプFのフィラメント電流(図3(a)の領域A)及び管電流(図3(b)の領域A)の流下が停止する。よって、蛍光ランプFが消灯する。
【0040】
次に、調光制御部36は予熱デューティの調光制御信号B及び発振周波数を動作周波数92kHzに変調する変調信号を発振部33に出力する。発振部33は調光制御信号B及びこの変調信号を受けて予熱デューティの期間、動作周波数92kHzのスイッチング信号を出力する。これにより、蛍光ランプFのフィラメントには図3(a)の領域Bに示すように約0.300AO−Pのフィラメント電流(交流)が流下し、蛍光ランプFの蛍光管には図3(b)の領域Bに示すように約0.05AO−Pの管電流(交流)が流下する。この管電流では蛍光ランプFはほとんど点灯に至らないため、蛍光ランプFは消灯が維持されながら、蛍光ランプFのフィラメントにフィラメント電流(交流)が流下する。この場合、フィラメントは抵抗体となるからフィラメント電流が流下することで動作周波数92kHzの実効値に相当するジュール熱が発生する。これによりフィラメントは、適切な温度(約700℃程度)に予熱される。尚、実効値はある期間に流れる電流を自乗した値を全体の期間で平均化した値の平方根である。
【0041】
ここで仮に、周波数変調方式のようにOFFデューティ時にもフィラメント電流を流下する場合を考える。そして、OFFデューティ時におけるフィラメントの適切な予熱にOFFデューティ全体で0.25Armsの電流が必要とする場合、これをOFFデューティ全体で印加すると蛍光ランプFが直ちに消灯せず指示された調光を行えない可能性がある。このため、本発明では消灯デューティにより蛍光ランプFを消灯した後に予熱デューティを設け、この予熱デューティ期間に0.25Armsに相当する電流(例えば、予熱デューティがOFFデューティの半分の期間とした場合、約0.353Armsの電流)を流下することで、フィラメントの適切な予熱を行う。
【0042】
次に、調光制御部36は再点弧デューティの調光制御信号C及び調光制御信号Cに対応した変調信号を発振部33に出力する。尚、ここでの変調信号は、発振周波数を動作周波数63kHzに所定期間変調した上で50kHZに徐々に変調する信号の例を示す。発振部33は調光制御信号D及びこの変調信号を受けて動作周波数63kHz(所定期間経過後50kHZに徐々に変調する)のスイッチング信号を出力する。これにより、蛍光ランプFにはキック電圧が印加され図3(b)の領域Cに示すように管電流(交流)が徐々に増加し蛍光ランプFが点灯する。
【0043】
次に、調光制御部36はONデューティの調光制御信号D及び発振周波数を動作周波数50kHzに変調する変調信号を発振部33に出力する。尚、この動作周波数50kHzはインダクタ素子Lと共振コンデンサCfとの共振周波数fo(fo=52.5kHz)近傍の周波数である。発振部33は調光制御信号D及びこの変調信号を受けてONデューティの期間、動作周波数50kHzのスイッチング信号を出力する。これにより、蛍光ランプFには図3(a)、図3(b)の領域Dに示すように、約0.400AO−Pのフィラメント電流(交流)と約0.300AO−Pの管電流(交流)が流下し、蛍光ランプFの点灯が維持される。
【0044】
そして、繰り返し調光制御信号A〜D及びこれらと対応する変調信号が出力されることで蛍光ランプFは消灯、点灯が繰り返され、結果として蛍光ランプFの照度は低下する。これにより、蛍光ランプFは指示された調光率(本例では約30%)で点灯する。
【0045】
ここで、図11に示す従来の間欠発振制御方式の調光制御信号による調光動作時と、図2に示す本発明にかかる調光制御信号による調光動作時と、における蛍光ランプF(4灯)間にかかる出力周波数を測定した結果を図4に示す。尚、図4(a)が従来の間欠発振制御方式による周波数測定結果、図4(b)が本発明にかかる調光制御信号による周波数測定結果である。
【0046】
図4(a)、図4(b)では、ともにONデューティ時の動作周波数が50kHz、再点弧デューティ時の動作周波数が63kHzであるためこの範囲の周波数成分が高くなっている。また、図4(b)では、予熱デューティの動作周波数が92kHzであるためこの近傍の周波数成分にピークが存在している。ただし、図4(a)では、65kHz〜75kHzの動作周波数を使用していないにもかかわらず、ONデューティ時の動作周波数及び再点弧デューティ時の動作周波数の高調波成分により65kHz〜75kHzの周波数成分(ノイズ成分)が高いレベルで存在している。前述のように自動販売機では70kHzの信号を内部の通信に使用しており、この65kHz〜75kHzのノイズ成分の存在は自動販売機の通信に悪影響を及ぼし誤作動の原因となる可能性があり好ましいものではない。
【0047】
しかしながら、図4(b)では、65kHz〜75kHzのノイズ成分が低減していることがわかる。ここで、92kHzの動作周波数の予熱デューティは共振周波数よりも高い動作周波数で、かつ蛍光ランプFの消灯時のもののため高調波成分が少ない比較的sin波に近いものと考えられる。従って、高調波成分の少ない予熱デューティが存在することにより、結果として65kHz〜75kHzのノイズ成分が低減するものと考えられる。このことから、予熱デューティ時の動作周波数を75kHzよりも高い領域でかつ適切に設定することで、自動販売機の禁止周波数帯域である65kHz〜75kHzのノイズ成分を低減することができる。
【0048】
次に、調光制御信号の予熱デューティを設定するための予備実験に関して説明する。尚、ここでは、以下の条件で実験を行った。
商用電源:100V、50Hz
直流電源部:平滑コンデンサ560μF/200Vのコンデンサインプット式
スイッチング部:8.5A/200VのFET
絶縁素子:信号用パルストランス
クロック信号:2.25kHz
インダクタ素子L:620μH
直流カットコンデンサC:1μF
共振コンデンサCf:0.015μF
共振周波数fo:52.5kHz(標準値)
蛍光ランプ:FL20SS管(4灯並列接続)
ONデューティ比:30%(再点弧時間含む)
ONデューティの動作周波数:50kHz
再点弧デューティ:有り
調光制御信号周期:4.45msec(225Hz)
予熱デューティ動作周波数:92kHz
予熱デューティ比(%):0.0%、14.3%、28.6%、42.8%、57.1%
そして、このときにかかる蛍光ランプ(4灯)の管電流、フィラメント電流、合成電流、を測定した。この結果を、表1及び図5に示す。尚、合成電流は理想的には((フィラメント電流)2+(管電流)2)1/2で表されるものであるが、蛍光ランプの抵抗値等があるため実際にはこの値となっていない。
【0049】
【表1】
ここで、図5の横軸は蛍光ランプの明るさを示す指標であり管電流要素(比)と記す。この管電流要素(比)は調光率とほぼ一致し、フィラメントの温度が700℃になるときのフィラメント電流をI(700)としたときに
管電流要素(比)=管電流/I(700) となる。
尚、管電流要素(比)の1.0が管電流がフィラメント700℃比100%時である。また、図5の縦軸はフィラメントの予熱に関わる電力の指標でありフィラメント電力要素(比)と記す。このフィラメント電力要素(比)は合成電流をI(合)とし共振コンデンサCfに流れる電流をI(Cf)としたときに
フィラメント電力要素(比)=(I(合)/I(700))2+(I(Cf)/I(700))2 となる。
また、図5中の斜線で示す領域はフィラメントに対して適正な予熱の行われるフィラメント電力要素の範囲を示す。よって、図5中の斜線で示す領域から下方に乖離するに従い、フィラメントの予熱が不足し蛍光ランプFの寿命が低下する。尚、この適正フィラメント予熱電流の評価指標はランプ業界で懸案中のものであるが、本願発明者は上記のもの(管電流要素(比)及びフィラメント電力要素(比))を指標として検証を行ってきた。
【0050】
表1及び図5に示すように、上記の条件において調光率30%、予熱デューティ時の動作周波数92kHzの場合、予熱デューティ比が28.6%〜57.1%の範囲でそのフィラメント電力要素は適正な予熱の行われる領域内にあることが判る。このフィラメント電力要素は、同一規格の蛍光ランプFを用いても多少のバラつきが存在するため、予熱デューティ比の設定は図5中の鎖線で示すセンター値近傍に設定することが好ましい。よってこの場合、予熱デューティ比を42.8%と設定する。
【実施例2】
【0051】
次に、予熱デューティ比を42.8%(動作周波数92kHz)とし、予熱デューティの位置を図6に示すように2つの消灯デューティの調光制御信号Aの間に設けた例を示す。この場合でも図7(a)(b)の領域A1に示すように、ONデューティの直後に設けられた第1の消灯デューティの調光制御信号Aにより、フィラメント電流及び管電流の流下は停止し蛍光ランプFは確実に消灯する。よって、この場合でもONデューティ直後の続流電流を考慮に入れることなくフィラメントの予熱を適切に行うことができる。
【0052】
(比較例1)
次に、予熱デューティ比を42.8%(動作周波数92kHz)とし、予熱デューティの位置を図8に示すようにONデューティの直後に設けた例を示す。この場合、ONデューティの直後に予熱デューティが設けられているため、予熱デューティの動作周波数が蛍光ランプFの消灯領域のものであっても、ONデューティ時から続く続流電流により図9(b)の領域Bに示すように管電流は直ぐに減少せず蛍光ランプFは迅速に消灯しない。よって、指示された調光率と実際の調光率とにズレが生じることとなる。従って、ONデューティの直後には所定の期間の消灯デューティを設け、その後に予熱デューティを設けることが好ましい。
【0053】
次に、実施例1、実施例2の調光制御信号で調光動作をしたときと、以下の比較例2、3、4で調光動作をしたときとの、管電流要素(比)とフィラメント電力要素との関係を図10に、そのときの管電流、フィラメント電流、合成電流の測定結果を表2に示す。
【0054】
(比較例2)
実施例1、実施例2と同様の回路構成で図11に示す調光制御信号で間欠発振制御方式による調光動作(図12参照)を行った。
【0055】
(比較例3)
実施例1、実施例2と同様の回路構成で図11に示す調光制御信号で周波数変調方式による調光動作(図13参照)を行った。
【0056】
(比較例4)
直流化回路40として倍電圧整流回路を使用し、図11に示す調光制御信号で間欠発振制御方式による調光動作を行った。
【0057】
【表2】
図10、表2より、実施例1、実施例2のものは適切な予熱デューティを有しているため、調光率30%の深い調光であってもそのフィラメント電力要素は適正な予熱の行われる領域のセンター値近傍に位置していることがわかる。これにより、フィラメントの電子放射物質の消耗が抑制され蛍光ランプFの寿命低下の防止が期待できる。
【0058】
しかしながら、予熱デューティを備えていない比較例2、比較例3のものの調光率30%におけるフィラメント電力要素は適正な予熱の行われる領域の境界近傍で且つ境界外に位置している。この場合、蛍光ランプFによっては大幅に適正な予熱の行われる領域を逸脱し、著しく寿命が低下する可能性がある。
【0059】
さらに、比較例4のもののフィラメント電力要素は適正な予熱の行われる領域から大きく乖離している。本願発明者が比較例4の条件による蛍光ランプFの不灯になるまでの点灯累計時間を測定したところ2,000〜4,000時間であった。実験に使用したFL20SS管のJIS規格の定格寿命値は6,000時間であるから、比較例4の条件で上記の調光動作を行うと蛍光ランプF(FL20SS管)の寿命は凡そ半減することがわかる。また、比較例4の条件では調光率が約40%となっており、調光率30%を達成するためには更なるONデューティ期間の短縮が必要である。そして、ONデューティ期間が短縮すれば、そのフィラメント電力要素はさらに適正な予熱の行われる領域から乖離しそれに伴い蛍光ランプFの寿命も減少することが予想される。
【0060】
尚、図10、表2には示していないが、比較例4の倍電圧整流回路及びその他の直流化回路40を使用したものであっても、期間及びその動作周波数が最適化された予熱デューティを設けることで、調光率30%の深い調光を行った場合でもそのフィラメント電力要素を適正な予熱の行われる領域のセンター値近傍に位置させることができる。
【0061】
また、本例では消灯デューティ時にスイッチング信号をOFFする間欠発振制御方式の例を示しているが、本発明は周波数変調方式にも適用が可能である。この場合、消灯デューティ時に蛍光ランプFが消灯する高い動作周波数(例えば162kHz)の調光制御信号Aを出力すれば、蛍光ランプFは直ちに消灯する。また、禁止周波数帯域を考慮して消灯デューティ時の動作周波数を150kHz未満とし、調光率の調整のためONデューティの期間を短くしても、蛍光ランプFのフィラメントの予熱を行う予熱デューティは他デューティから独立して設定することが可能なため調光制御信号の設定を比較的自由に行うことができる。さらに、予熱デューティが存在することで動作周波数の高い消灯デューティの期間が短縮され、スイッチング部44を構成するスイッチング素子(FET素子Q1、Q2)の発熱を抑制することができる。
【0062】
以上のように、本発明に係る調光機能付蛍光ランプ点灯装置80によれば、OFFデューティ中に予熱デューティを設けこの予熱デューティの期間及び動作周波数を最適化することで、特別な回路を付加することなく蛍光ランプFの寿命低下を防止することができる。よって、本発明に係る調光機能付蛍光ランプ点灯装置80は、低コスト化、省スペース化が可能となり、様々な用途に適用可能な汎用性の高いものとなる。
【0063】
また、蛍光ランプの予熱を行う予熱デューティの設定は他のデューティから独立して行うことができるため、蛍光ランプの種類等や調光機能付蛍光ランプ点灯装置80の各部の構成等に応じて適切な予熱デューティの設定を行うことができる。さらに、予熱デューティを設けることにより、蛍光ランプの予熱を考慮することなく他のデューティの設定を行うことができるため、調光制御信号の設定の自由度及び調光機能付蛍光ランプ点灯装置80の各部の回路設計の自由度を向上させることができる。
【0064】
尚、上記の調光機能付蛍光ランプ点灯装置80は本発明に係る調光機能付蛍光ランプ点灯装置の好適な一例であるから、調光機能付蛍光ランプ点灯装置80の各部の構成及び動作等は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で変更して実施することが可能である。さらに、本例で示した予熱デューティの期間及び動作周波数は、本例の条件で好適なものであり、調光機能付蛍光ランプ点灯装置の回路構成、調光率、使用する蛍光ランプによって適宜変化する。
【符号の説明】
【0065】
1 商用電源
33 発振部
36 調光制御部
40 直流化回路
42 直流電源部
44 スイッチング部
45 調光信号出力手段
46 蛍光ランプ点灯部
80 調光機能付蛍光ランプ点灯装置
Cf 共振コンデンサ
L インダクタ素子
F 蛍光ランプ
Fra、Frb フィラメント
P 出力端
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光ランプの明るさを変化させる調光機能付蛍光ランプ点灯装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、省エネルギーの観点から商品のショーケースや自動販売機においても蛍光ランプの明るさを段階的(もしくは連続的)に変化させることが可能な調光機能を備えた蛍光ランプ点灯装置が使用される傾向にある。これら調光機能付蛍光ランプ点灯装置は基本的に蛍光ランプの点灯、消灯を交互に高速で切り替え、蛍光ランプの点灯時間を短くするとともにその分だけ消灯時間を長くすることにより蛍光ランプの調光を行う方法が多く採用されている。尚ここでは、蛍光ランプの明るさを減少させ特に全光時の50%以下にすることを深い調光と記すものとする。
【0003】
この蛍光ランプの調光方法の代表的なものとして、間欠発振制御方式(例えば下記[特許文献1])と周波数変調(PWM)方式(例えば下記[特許文献2])とが挙げられる。
【0004】
ここで、従来の調光機能付蛍光ランプ点灯装置の調光動作を間欠発振制御方式のものを用いて説明する。
【0005】
従来の調光機能付蛍光ランプ点灯装置の調光制御部には、蛍光ランプを消灯させるOFFデューティと蛍光ランプを点灯させるONデューティとを調光率に応じた比率で有し、ONデューティ時における動作周波数が規定された例えば図11に示すような調光制御信号が予め設定されている。蛍光ランプの調光はONデューティ比(調光制御信号の周期をTとした時のONデューティの占める割合)によって制御され、ONデューティ比が小さい程、深い調光となる。そして、調光制御信号の一般的な周期Tは、0.5msec〜10msecである。尚、図11に示す調光制御信号は、ONデューティ比が0.3、即ち調光率約30%の例を示している。
【0006】
従来の調光機能付蛍光ランプ点灯装置は、蛍光ランプが点灯した後に所定の調光(ここでは調光率30%)を指示する信号を受けると、調光制御部が図11に示すOFFデューティの調光制御信号A’を発振部に出力する。間欠発振制御方式の場合、発振部は調光制御信号A’を受けてスイッチング信号をOFFする。これにより、蛍光ランプへの高周波交流電力の供給が止まり、蛍光ランプのフィラメント電流(図12(a)の領域A’)及び管電流(図12(b)の領域A’)の流下が停止する。よって、蛍光ランプが消灯する。
【0007】
次に、調光制御部は再点弧デューティの調光制御信号Cを発振部に出力する。発振部は調光制御信号Cを受けて例えば動作周波数63kHzのスイッチング信号を出力する。これにより、蛍光ランプにはキック電圧が印加され図12(b)の領域Cに示すように管電流(交流)が徐々に増加しある一定値を超えたところで蛍光ランプが点灯する。尚、ここでの再点弧デューティは動作周波数63kHzで一定期間制御後、ONデューティの動作周波数に徐々に移行するものとした。
【0008】
次に、調光制御部はONデューティの調光制御信号Dを発振部に出力する。発振部は調光制御信号Dを受けて例えば動作周波数50kHzのスイッチング信号を出力する。これにより、蛍光ランプには図12(a)、図12(b)の領域Dに示すように、約0.400AO−Pのフィラメント電流(交流)と約0.300AO−Pの管電流(交流)が流下し、蛍光ランプの点灯が維持される。
【0009】
そして、繰り返し調光制御信号A’、C、Dが出力されることで蛍光ランプは消灯、点灯が繰り返され、結果として蛍光ランプの照度は低下する。これにより、蛍光ランプFは指示された調光率(本例では約30%)で点灯する。
【0010】
間欠発振制御方式の調光機能付蛍光ランプ点灯装置では、図12に示すように、OFFデューティの期間ではフィラメント電流及び管電流が流下しない。このため省エネルギー効果は大きく、消費電力対照度比の効率は良好といえる。また、ONデューティ比約50%までの範囲の調光では、蛍光ランプの寿命への悪影響も少ない。
【0011】
しかしながら、50%を超える深い調光になると、フィラメント電流が流れないOFFデューティの期間が長くなる。間欠発振制御方式ではOFFデューティの期間にはフィラメント電流は流下しないためフィラメントの温度が徐々に低下する。
【0012】
周知のように蛍光ランプのフィラメントには電子放射物質(エミッタ)が塗布されており、フィラメントが取り付けられた電極(陰極)に電流が流れるとこのフィラメントにフィラメント電流が流れ、これによりフィラメントが予熱される。そして、所定の電力が蛍光ランプの両電極に印加されると、予熱されたフィラメントから熱電子がもう一方の電極(陽極)に引かれて移動し放電が起こる。これにより蛍光ランプは点灯する。このときの適正なフィラメントの予熱温度は700℃前後であり、この適正な予熱温度以下の温度で放電を行うと、電子放射物質の飛散量が増大し蛍光ランプの寿命が減少する。
【0013】
そして、上記のようにOFFデューティの期間が長い場合、フィラメントの温度が適正温度よりも低下する可能性がある。このため、間欠発振制御方式では50%を超えるような深い調光を行うと蛍光ランプによってはその寿命が大きく減少する可能性がある。即ち、従来の間欠発振制御方式による調光はOFFデューティ時の管電流を迅速に低下させることが可能で深い調光を容易に行うことができ、また省エネルギーの効果も高い反面、深い調光ではフィラメントの予熱温度が不足し蛍光ランプの寿命が減少するという問題点がある。
【0014】
また、周波数変調方式では主に蛍光ランプの立ち消えを防止する為、図13に示すように、OFFデューティ時に管電流の流下が停止する高い動作周波数(図13では162kHz)を印加して蛍光ランプを消灯する。
【0015】
ここで、LC共振点灯方式における動作周波数と無放電状態の蛍光ランプへの出力電圧との関係は、LC共振回路を構成するインダクタ素子のインダクタ値と共振コンデンサの容量値とに依存し、インダクタ素子と共振コンデンサとが共振周波数をとるときに最大となる。そして、出力の最大電圧は電圧共振回路上の伝送インピーダンスで決定とともに、共振周波数foはインダクタ素子のインダクタンス値をL、共振コンデンサの容量値をCfとした時に、以下の式で表される。
【0016】
【数1】
また、蛍光ランプの非点灯時の出力電圧と動作周波数とのシミュレーション結果を図14に示す。尚、シミュレーションの条件は、スイッチング出力電圧=AC60V、インダクタ素子のインダクタンス値L=620μH、共振コンデンサの容量値Cf=0.015μF、回路インピーダンス=20Ω、動作周波数=40k〜135kHzとした。尚、通常インダクタ素子には直流カットコンデンサが直列接続されるがこの直流カットコンデンサの容量は共振コンデンサの容量Cfに対して十分大きい値として無視し、共振周波数を上記計算式により計算すると、共振周波数fo=52.2kHzとなる。
【0017】
図14の結果から、動作周波数が共振周波数foよりも増加すると出力電圧が減少することがわかる。そして、周波数変調方式ではこの共振周波数foよりも高い動作周波数を用いて蛍光ランプへの出力電圧を低下させ蛍光ランプの消灯又は減光を行う。
【0018】
しかしながら、蛍光ランプ点灯装置では雑音端子電圧の自主規制規格が存在し、150kHz以上の周波数帯域を動作周波数として使用することは好ましくない。よって、実際にはOFFデューティ時の動作周波数は150kHz未満とすることが望ましい。しかしながら、蛍光ランプの点灯はアーク放電によるものであるから、OFFデューティ時の動作周波数を150kHz未満(120kHz〜130kHz程度)とすると、ONデューティ時からの続流電流により管電流が迅速に低下せず蛍光ランプが直ちに消灯しない。このためONデューティ比と調光率との間にズレが生じ所望の調光率が得られない。従って、所望の調光率を得るためにはONデューティの期間を短縮するなどしなければならないが、ONデューティの期間の変化はフィラメントの予熱等にも関与し調光制御信号の設定が極めて煩雑となる。また、特に自動販売機に蛍光ランプ点灯装置を使用する場合には、自動販売機のデータ収集等の通信に使用する70kHz近傍の周波数帯(65kHz〜75kHz)を動作周波数として恒常的に使用することができない。このことが、さらに調光制御信号の設定を煩雑としている。
【0019】
ただし、周波数変調方式ではOFFデューティの期間でもフィラメント電流は流下するから間欠発振制御方式と比較してフィラメントの温度低下も少ない。しかしながら、周波数変調方式であっても深い調光を行いOFFデューティの期間を長くすれば、間欠発振制御方式と同様にフィラメントが適正温度よりも低下して蛍光ランプの寿命が減少する可能性がある。また、高い動作周波数のOFFデューティの期間を長くすれば、スイッチング素子の高速動作期間も長くなり、特に無負荷時(蛍光ランプが外された場合、蛍光ランプが寿命等で動作しない場合)等にはスイッチング素子が発熱するという問題点がある。
【0020】
従って、従来の周波数変調方式による調光はOFFデューティ時におけるフィラメントの温度低下が比較的少ないものの、深い調光を行えば間欠発振制御方式と同様にフィラメントが適正温度よりも低下して蛍光ランプの寿命が減少する可能性がある。また、上記の禁止周波数帯域を避けて調光制御信号の動作周波数を設定する必要があるため調光制御信号の設定の自由度が低い。さらに、スイッチング素子の発熱が大きいという問題点がある。
【0021】
調光動作による蛍光ランプの寿命低下は、仮にOFFデューティ時に適正な予熱温度が得られるフィラメント電流の値が、蛍光ランプによらず統一されて示されていれば、OFFデューティ時の動作周波数を適切に設定することである程度防止することができる。さらに、場合によっては蛍光ランプの定格寿命を銅鉄チョーク比の寿命で2倍程度にすることも可能である。従って、蛍光ランプメーカの改善により予熱のための適正なフィラメント電流が、蛍光ランプメーカ、蛍光ランプの種類、蛍光ランプ自体のバラツキによらず統一的に示されることが理想であるが、現状そこまでには至っていない。
【0022】
この点、[特許文献2]には、蛍光ランプを点灯もしくは消灯させる動作周波数に応じて、予熱電流の供給量を増減させる第1の供給源と第2の供給源とを備えた放電灯点灯装置に関する発明が開示されている。この[特許文献2]に開示された発明によれば、調光率が深くOFFデューティの期間が長い場合でも、十分なフィラメントの予熱を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【特許文献1】実開昭58−62592号公報
【特許文献2】特開2007−305500号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
しかしながら[特許文献2]に開示された発明は、予熱電流の供給量を増減させるためのトランス等の第1の供給源及び第2の供給源を必要とするため、特に蛍光ランプを複数点灯させる場合、その各々の点灯部に第1の供給源及び第2の供給源が必要となりコストの増加及び設置スペースが増大するという問題点がある。
【0025】
本発明は上記事情に鑑みて成されたものであり、特別な回路を付加することなく適正に蛍光ランプの予熱を行い蛍光ランプの寿命の減少を防止するとともに、省スペース、省コストで且つ調光制御信号設定の自由度が高い調光機能付蛍光ランプ点灯装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明は、
(1)商用電源1を直流化する直流化回路40と、当該直流化回路40からの直流電流を平滑化する直流電源部42と、調光率を指示する調光信号を出力する調光信号出力手段45と、蛍光ランプFを消灯させるOFFデューティと当該蛍光ランプFを点灯させるONデューティとを調光率に応じた比率で有する調光制御信号を、前記調光信号を受けて出力する調光制御部36と、前記調光制御信号に応じて所定の動作周波数のスイッチング信号を出力する発振部33と、当該スイッチング信号に応じたスイッチング制御により前記直流電源部42からの電力を高周波交流電力として出力端Pに出力するスイッチング部44と、前記出力端Pと前記蛍光ランプFの一方のフィラメントFraとの間に接続されるインダクタ素子Lと前記蛍光ランプFの他方のフィラメントFrbを前記直流電源部42に接続しさらに前記蛍光ランプFの両方のフィラメントFra、Frbを介して前記蛍光ランプLと並列接続される共振コンデンサCfとを備えたLC共振点灯方式の蛍光ランプ点灯部46と、を有する調光機能付蛍光ランプ点灯装置において、
前記OFFデューティが予熱デューティと消灯デューティとで構成され、当該消灯デューティに基づく調光制御信号Aにより前記蛍光ランプFを消灯するとともに、前記予熱デューティに基づく調光制御信号Bにより前記蛍光ランプFの消灯を維持しながら前記フィラメントFra、Frbの予熱を行うことを特徴とする調光機能付蛍光ランプ点灯装置80を提供することにより、上記課題を解決する。
(2)ONデューティの直後に消灯デューティを設けたことを特徴とする上記(1)記載の調光機能付蛍光ランプ点灯装置80を提供することにより、上記課題を解決する。
(3)ONデューティ、消灯デューティ、予熱デューティによる動作周波数を65kHz〜75kHzの範囲以外に設定することを特徴とする上記(1)又は(2)記載の調光機能付蛍光ランプ点灯装置80を提供することにより、上記課題を解決する。
(4)ONデューティの動作周波数を前記インダクタ素子Lと前記共振コンデンサCfとの共振周波数近傍に設定し、予熱デューティの動作周波数を当該共振周波数及び75kHzよりも高い周波数に設定することで、65kHz〜75kHzの範囲のノイズ成分を低減することを特徴とする上記(3)記載の調光機能付蛍光ランプ点灯装置80を提供することにより、上記課題を解決する。
(5)調光制御部36の出力する調光制御信号が、消灯デューティにおけるスイッチング信号を蛍光ランプの消灯する動作周波数とし、消灯デューティ、予熱デューティ、ONデューティのそれぞれの動作周波数を連続して周期的に出力する周波数変調方式の調光制御信号であることを特徴とする上記(1)乃至(4)のいずれかに記載の調光機能付蛍光ランプ点灯装置80を提供することにより、上記課題を解決する。
(6)蛍光ランプ点灯部46を出力端Pと直流電源部42との間に複数並列接続したことを特徴とする上記(1)乃至(5)のいずれかに記載の調光機能付蛍光ランプ点灯装置80を提供することにより、上記課題を解決する。
(7)直流化回路40が全波整流回路もしくは倍電圧整流回路で構成され且つ直流電源部42がコンデンサインプット方式、アクティブフィルタ方式又は部分平滑方式であることを特徴とする上記(1)乃至(6)のいずれかに記載の調光機能付蛍光ランプ点灯装置80を提供することにより、上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係る調光機能付蛍光ランプ点灯装置は、OFFデューティ中に予熱デューティを設けてこの予熱デューティで蛍光ランプの予熱を行うことで、特別な回路を付加することなく深い調光をした場合でも蛍光ランプの寿命の減少を防止することができる。また、特別な回路を付加する必要がないため、省スペース化と省コスト化とを図ることができる。さらに、予熱デューティを設けることで、蛍光ランプの予熱を他のデューティから独立して制御することが可能となり、調光制御信号の設定の自由度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係る調光機能付蛍光ランプ点灯装置のブロック図である。
【図2】本発明に係る実施例1の調光制御信号を説明する図である。
【図3】本発明に係る実施例1の調光制御信号によるフィラメント電流及び管電流を示す図である。
【図4】蛍光ランプ間にかかる出力周波数の測定結果を示すグラフである。
【図5】本発明に係る予熱デューティ比とフィラメント電力要素との関係を示すグラフである。
【図6】本発明に係る実施例2の調光制御信号を説明する図である。
【図7】本発明に係る実施例2の調光制御信号によるフィラメント電流及び管電流を示す図である。
【図8】比較例1の調光制御信号を説明する図である。
【図9】比較例1の調光制御信号によるフィラメント電流及び管電流を示す図である。
【図10】本発明に係る実施例及び比較例とフィラメント電力要素との関係を示すグラフである。
【図11】従来の調光制御信号を説明する図である。
【図12】従来の調光制御信号の間欠発振制御方式によるフィラメント電流及び管電流を示す図である。
【図13】従来の調光制御信号の周波数変調方式によるフィラメント電流及び管電流を示す図である。
【図14】動作周波数と出力電圧の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明に係る調光機能付蛍光ランプ点灯装置の実施の形態について図面に基づいて説明する。図1に示す本発明に係る調光機能付蛍光ランプ点灯装置80は、商用電源1を直流化する直流化回路40と、直流化回路40からの直流電流を平滑化した上で後述のスイッチング部44に供給する直流電源部42と、調光率を指示する調光信号を後述の調光制御部36に出力する調光信号出力手段45と、蛍光ランプFを消灯させる消灯デューティと蛍光ランプFのフィラメントを予熱するための予熱デューティと蛍光ランプFを点灯させるONデューティとを有する調光制御信号を出力する調光制御部36と、調光制御信号に応じた動作周波数のスイッチング信号を出力する発振部33と、スイッチング信号に応じたスイッチング制御により直流電源部42からの電力を高周波交流電力として出力端Pに出力するスイッチング部44と、スイッチング部44からの高周波交流電力により蛍光ランプFの点灯及び消灯を行う蛍光ランプ点灯部46と、を有している。
【0030】
直流化回路40としては、図1に示す全波整流回路の他、周知の倍電圧整流回路を使用することができる。また、直流電源部42としては、周知のコンデンサインプット方式、アクティブフィルタ方式、部分平滑方式のものを用いることができる。
【0031】
スイッチング部44はスイッチング信号が入力するゲート端子が後述の絶縁素子37を介して発振部33に接続された2つのFET素子Q1、Q2を有している。そして一方のFET素子Q1のソース端子が直流電源部42に接続され、他方のFET素子Q2のドレイン端子が直流電源部42に接続され、FET素子Q1のドレイン端子とFET素子Q2のソース端子とが出力端P接続されている。
【0032】
蛍光ランプ点灯部46はLC共振点灯方式の蛍光ランプ点灯装置で構成され、出力端Pと蛍光ランプFの一方のフィラメントFraとの間に接続されるインダクタ素子L及び直流カットコンデンサCと、蛍光ランプFの他方のフィラメントFrbを直流電源部42に接続した上で、さらに前記蛍光ランプFの両方のフィラメントFra、Frbを介して蛍光ランプLと並列接続される共振コンデンサCfと、を備えている。また、蛍光ランプ点灯部46は1つとは限らず、複数の蛍光ランプ点灯部46を出力端Pと直流電源部42との間に並列に接続することができる。尚、図1では蛍光ランプ点灯部46を4つ並列接続した例を示す。
【0033】
調光制御部36と発振部33とは調光機能付蛍光ランプ点灯装置80の制御部50内に設置される。そして、制御部50には調光制御部36と発振部33との他に、例えばスイッチング電源用の汎用IC等により構成され所定のクロック信号(例えば2.25kHz)を出力するクロック発振部34と、例えば汎用カウンターIC等により構成されクロック発振部34からのクロック信号を例えば1/10に分周して調光制御部36に出力する分周部35と、蛍光ランプFを初めに点灯する際の始動制御信号を発振部33に出力する始動制御部32と、発振部33からのスイッチング信号を各部と分離し絶縁状態でスイッチング部44のFET素子Q1、Q2のゲート電圧として出力する例えば信号用パルストランス等の絶縁素子37と、直流化回路40からの直流電流を小容量の制御回路用の電力に変換して制御部50の各部に供給する制御回路用電源31と、を有している。尚、図1においては、制御回路用電源31からの各部への電源供給ラインの記載は省略する。
【0034】
次に、調光機能付蛍光ランプ点灯装置80の動作を説明する。先ず、図示しない点灯スイッチ等がONされると、始動制御部32が発振部33に例えば発振周波数を動作周波数67kHzに変調する始動制御信号を1秒間出力する。発振部33は始動制御信号を受けて動作周波数67kHzのスイッチング信号を1秒間出力する。スイッチング部44は絶縁素子37を介して取得された動作周波数67kHzのスイッチング信号によりFET素子Q1、Q2を1秒間スイッチング制御する。このスイッチング制御により出力端Pに直流電源部42からの電力が動作周波数67kHzで1秒間出力される。出力端Pから出力される高周波交流電力は蛍光ランプ点灯部46に供給され蛍光ランプFの両フィラメントFra、Frbを予熱する。次に、始動制御部32は例えば動作周波数42kHzの制御信号を発振部33に出力する。これにより、蛍光ランプFは全光状態で点灯する。
【0035】
次に、ユーザが調光スイッチを操作したりタイマ等のON動作により所定の信号が調光信号出力手段45に入力すると、調光信号出力手段45は調光制御部36に対し調光率を指示する調光信号を出力する。調光制御部36には、分周部35からの分周されたクロック信号に基づいて形成されたONデューティ、予熱デューティ、消灯デューティを有する例えば図2に示す調光制御信号が予め設定されている。そして、調光制御部36は調光信号を受けて調光制御信号及びこの調光制御信号と対応した変調信号を順次、発振部33に出力する。尚、調光機能付蛍光ランプ点灯装置80が複数の調光率に対応可能な場合には、調光信号出力手段45は指示された調光率の調光信号を出力し、調光制御部36はこの調光信号に応じた調光制御信号を選択して出力する。また、調光機能付蛍光ランプ点灯装置80を段階的な調光率ではなく連続的な調光率に対応させる場合には、調光信号出力手段45をボリューム等で構成し、調光制御部36は調光信号の調光率に応じた調光制御信号をマイコン等によりその都度形成して出力する。
【実施例1】
【0036】
次に、図2を用いて調光制御部36が出力する調光制御信号及びこの調光制御信号による調光機能付蛍光ランプ点灯装置80の動作をさらに詳しく説明する。尚、図2に示す調光制御信号は、蛍光ランプ点灯部46を4つ並列接続した上で蛍光ランプFにFL20SS管を用い、直流電源部42に平滑コンデンサ560μF/200Vのコンデンサインプット式のものを採用し、インダクタ素子Lのインダクタ値を620μH、共振コンデンサCfの容量値を0.015μFとし、さらにONデューテ比が0.3(調光率約30%)の条件時に好適なものである。
【0037】
上記の調光制御信号の特に予熱デューティの期間及び動作周波数は、予め予備実験を行い最適な期間及び動作周波数を求めた上で、調光制御部36に設定しておく。また、調光機能付蛍光ランプ点灯装置80が複数の調光率に対応可能な場合には、その調光率毎に最適な予熱デューティの期間及び動作周波数を求め調光制御部36に設定しておく。尚、予熱デューティの期間及び動作周波数は、使用する蛍光ランプFの種類、調光機能付蛍光ランプ点灯装置80の各回路の構成、即ち直流化回路40、直流電源部42、スイッチング部44等の構成、インダクタ素子Lのインダクタ値、共振コンデンサCfの容量値等により異なる。
【0038】
図2に示す調光制御信号は、蛍光ランプFを点灯させるONデューティの調光制御信号D(ONデューテ比:0.3 動作周波数:50kHz)と、蛍光ランプFを消灯させる消灯デューティの調光制御信号A(スイッチング信号:OFF信号 間欠発振制御方式)と、蛍光ランプFの消灯を維持しながら蛍光ランプFのフィラメントに電流を流下しフィラメントの予熱を行う予熱デューティの調光制御信号B(予熱デューテ比:0.428 動作周波数:92kHz)とを有している。そして、消灯デューティと予熱デューティとがOFFデューティを構成し、OFFデューティとONデューティとを含めた調光制御信号の周期Tは0.5msec〜10msec(100Hz〜2kHz)である。尚、予熱デューテ比は(予熱デューティ)/(OFFデューティ)で表される。また、図2に示す調光制御信号には蛍光ランプFの再点灯時のキック電圧を印加する再点弧デューティの調光制御信号C(動作周波数63kHzで一定期間制御後、ONデューティの動作周波数に徐々に移行)を有している。ただし、この再点弧デューティは調光機能付蛍光ランプ点灯装置80の回路構成、使用する蛍光ランプFの種類によっては無くとも良い。
【0039】
ここで、調光信号出力手段45から調光信号が出力されると、調光制御部36は先ず図2に示す消灯デューティの調光制御信号A及びスイッチング信号をOFFするOFF信号を発振部33に出力する。発振部33は調光制御信号A及びOFF信号を受けて消灯デューティの期間、スイッチング信号をOFFする。これにより、蛍光ランプFへの高周波交流電力の供給が止まり、蛍光ランプFのフィラメント電流(図3(a)の領域A)及び管電流(図3(b)の領域A)の流下が停止する。よって、蛍光ランプFが消灯する。
【0040】
次に、調光制御部36は予熱デューティの調光制御信号B及び発振周波数を動作周波数92kHzに変調する変調信号を発振部33に出力する。発振部33は調光制御信号B及びこの変調信号を受けて予熱デューティの期間、動作周波数92kHzのスイッチング信号を出力する。これにより、蛍光ランプFのフィラメントには図3(a)の領域Bに示すように約0.300AO−Pのフィラメント電流(交流)が流下し、蛍光ランプFの蛍光管には図3(b)の領域Bに示すように約0.05AO−Pの管電流(交流)が流下する。この管電流では蛍光ランプFはほとんど点灯に至らないため、蛍光ランプFは消灯が維持されながら、蛍光ランプFのフィラメントにフィラメント電流(交流)が流下する。この場合、フィラメントは抵抗体となるからフィラメント電流が流下することで動作周波数92kHzの実効値に相当するジュール熱が発生する。これによりフィラメントは、適切な温度(約700℃程度)に予熱される。尚、実効値はある期間に流れる電流を自乗した値を全体の期間で平均化した値の平方根である。
【0041】
ここで仮に、周波数変調方式のようにOFFデューティ時にもフィラメント電流を流下する場合を考える。そして、OFFデューティ時におけるフィラメントの適切な予熱にOFFデューティ全体で0.25Armsの電流が必要とする場合、これをOFFデューティ全体で印加すると蛍光ランプFが直ちに消灯せず指示された調光を行えない可能性がある。このため、本発明では消灯デューティにより蛍光ランプFを消灯した後に予熱デューティを設け、この予熱デューティ期間に0.25Armsに相当する電流(例えば、予熱デューティがOFFデューティの半分の期間とした場合、約0.353Armsの電流)を流下することで、フィラメントの適切な予熱を行う。
【0042】
次に、調光制御部36は再点弧デューティの調光制御信号C及び調光制御信号Cに対応した変調信号を発振部33に出力する。尚、ここでの変調信号は、発振周波数を動作周波数63kHzに所定期間変調した上で50kHZに徐々に変調する信号の例を示す。発振部33は調光制御信号D及びこの変調信号を受けて動作周波数63kHz(所定期間経過後50kHZに徐々に変調する)のスイッチング信号を出力する。これにより、蛍光ランプFにはキック電圧が印加され図3(b)の領域Cに示すように管電流(交流)が徐々に増加し蛍光ランプFが点灯する。
【0043】
次に、調光制御部36はONデューティの調光制御信号D及び発振周波数を動作周波数50kHzに変調する変調信号を発振部33に出力する。尚、この動作周波数50kHzはインダクタ素子Lと共振コンデンサCfとの共振周波数fo(fo=52.5kHz)近傍の周波数である。発振部33は調光制御信号D及びこの変調信号を受けてONデューティの期間、動作周波数50kHzのスイッチング信号を出力する。これにより、蛍光ランプFには図3(a)、図3(b)の領域Dに示すように、約0.400AO−Pのフィラメント電流(交流)と約0.300AO−Pの管電流(交流)が流下し、蛍光ランプFの点灯が維持される。
【0044】
そして、繰り返し調光制御信号A〜D及びこれらと対応する変調信号が出力されることで蛍光ランプFは消灯、点灯が繰り返され、結果として蛍光ランプFの照度は低下する。これにより、蛍光ランプFは指示された調光率(本例では約30%)で点灯する。
【0045】
ここで、図11に示す従来の間欠発振制御方式の調光制御信号による調光動作時と、図2に示す本発明にかかる調光制御信号による調光動作時と、における蛍光ランプF(4灯)間にかかる出力周波数を測定した結果を図4に示す。尚、図4(a)が従来の間欠発振制御方式による周波数測定結果、図4(b)が本発明にかかる調光制御信号による周波数測定結果である。
【0046】
図4(a)、図4(b)では、ともにONデューティ時の動作周波数が50kHz、再点弧デューティ時の動作周波数が63kHzであるためこの範囲の周波数成分が高くなっている。また、図4(b)では、予熱デューティの動作周波数が92kHzであるためこの近傍の周波数成分にピークが存在している。ただし、図4(a)では、65kHz〜75kHzの動作周波数を使用していないにもかかわらず、ONデューティ時の動作周波数及び再点弧デューティ時の動作周波数の高調波成分により65kHz〜75kHzの周波数成分(ノイズ成分)が高いレベルで存在している。前述のように自動販売機では70kHzの信号を内部の通信に使用しており、この65kHz〜75kHzのノイズ成分の存在は自動販売機の通信に悪影響を及ぼし誤作動の原因となる可能性があり好ましいものではない。
【0047】
しかしながら、図4(b)では、65kHz〜75kHzのノイズ成分が低減していることがわかる。ここで、92kHzの動作周波数の予熱デューティは共振周波数よりも高い動作周波数で、かつ蛍光ランプFの消灯時のもののため高調波成分が少ない比較的sin波に近いものと考えられる。従って、高調波成分の少ない予熱デューティが存在することにより、結果として65kHz〜75kHzのノイズ成分が低減するものと考えられる。このことから、予熱デューティ時の動作周波数を75kHzよりも高い領域でかつ適切に設定することで、自動販売機の禁止周波数帯域である65kHz〜75kHzのノイズ成分を低減することができる。
【0048】
次に、調光制御信号の予熱デューティを設定するための予備実験に関して説明する。尚、ここでは、以下の条件で実験を行った。
商用電源:100V、50Hz
直流電源部:平滑コンデンサ560μF/200Vのコンデンサインプット式
スイッチング部:8.5A/200VのFET
絶縁素子:信号用パルストランス
クロック信号:2.25kHz
インダクタ素子L:620μH
直流カットコンデンサC:1μF
共振コンデンサCf:0.015μF
共振周波数fo:52.5kHz(標準値)
蛍光ランプ:FL20SS管(4灯並列接続)
ONデューティ比:30%(再点弧時間含む)
ONデューティの動作周波数:50kHz
再点弧デューティ:有り
調光制御信号周期:4.45msec(225Hz)
予熱デューティ動作周波数:92kHz
予熱デューティ比(%):0.0%、14.3%、28.6%、42.8%、57.1%
そして、このときにかかる蛍光ランプ(4灯)の管電流、フィラメント電流、合成電流、を測定した。この結果を、表1及び図5に示す。尚、合成電流は理想的には((フィラメント電流)2+(管電流)2)1/2で表されるものであるが、蛍光ランプの抵抗値等があるため実際にはこの値となっていない。
【0049】
【表1】
ここで、図5の横軸は蛍光ランプの明るさを示す指標であり管電流要素(比)と記す。この管電流要素(比)は調光率とほぼ一致し、フィラメントの温度が700℃になるときのフィラメント電流をI(700)としたときに
管電流要素(比)=管電流/I(700) となる。
尚、管電流要素(比)の1.0が管電流がフィラメント700℃比100%時である。また、図5の縦軸はフィラメントの予熱に関わる電力の指標でありフィラメント電力要素(比)と記す。このフィラメント電力要素(比)は合成電流をI(合)とし共振コンデンサCfに流れる電流をI(Cf)としたときに
フィラメント電力要素(比)=(I(合)/I(700))2+(I(Cf)/I(700))2 となる。
また、図5中の斜線で示す領域はフィラメントに対して適正な予熱の行われるフィラメント電力要素の範囲を示す。よって、図5中の斜線で示す領域から下方に乖離するに従い、フィラメントの予熱が不足し蛍光ランプFの寿命が低下する。尚、この適正フィラメント予熱電流の評価指標はランプ業界で懸案中のものであるが、本願発明者は上記のもの(管電流要素(比)及びフィラメント電力要素(比))を指標として検証を行ってきた。
【0050】
表1及び図5に示すように、上記の条件において調光率30%、予熱デューティ時の動作周波数92kHzの場合、予熱デューティ比が28.6%〜57.1%の範囲でそのフィラメント電力要素は適正な予熱の行われる領域内にあることが判る。このフィラメント電力要素は、同一規格の蛍光ランプFを用いても多少のバラつきが存在するため、予熱デューティ比の設定は図5中の鎖線で示すセンター値近傍に設定することが好ましい。よってこの場合、予熱デューティ比を42.8%と設定する。
【実施例2】
【0051】
次に、予熱デューティ比を42.8%(動作周波数92kHz)とし、予熱デューティの位置を図6に示すように2つの消灯デューティの調光制御信号Aの間に設けた例を示す。この場合でも図7(a)(b)の領域A1に示すように、ONデューティの直後に設けられた第1の消灯デューティの調光制御信号Aにより、フィラメント電流及び管電流の流下は停止し蛍光ランプFは確実に消灯する。よって、この場合でもONデューティ直後の続流電流を考慮に入れることなくフィラメントの予熱を適切に行うことができる。
【0052】
(比較例1)
次に、予熱デューティ比を42.8%(動作周波数92kHz)とし、予熱デューティの位置を図8に示すようにONデューティの直後に設けた例を示す。この場合、ONデューティの直後に予熱デューティが設けられているため、予熱デューティの動作周波数が蛍光ランプFの消灯領域のものであっても、ONデューティ時から続く続流電流により図9(b)の領域Bに示すように管電流は直ぐに減少せず蛍光ランプFは迅速に消灯しない。よって、指示された調光率と実際の調光率とにズレが生じることとなる。従って、ONデューティの直後には所定の期間の消灯デューティを設け、その後に予熱デューティを設けることが好ましい。
【0053】
次に、実施例1、実施例2の調光制御信号で調光動作をしたときと、以下の比較例2、3、4で調光動作をしたときとの、管電流要素(比)とフィラメント電力要素との関係を図10に、そのときの管電流、フィラメント電流、合成電流の測定結果を表2に示す。
【0054】
(比較例2)
実施例1、実施例2と同様の回路構成で図11に示す調光制御信号で間欠発振制御方式による調光動作(図12参照)を行った。
【0055】
(比較例3)
実施例1、実施例2と同様の回路構成で図11に示す調光制御信号で周波数変調方式による調光動作(図13参照)を行った。
【0056】
(比較例4)
直流化回路40として倍電圧整流回路を使用し、図11に示す調光制御信号で間欠発振制御方式による調光動作を行った。
【0057】
【表2】
図10、表2より、実施例1、実施例2のものは適切な予熱デューティを有しているため、調光率30%の深い調光であってもそのフィラメント電力要素は適正な予熱の行われる領域のセンター値近傍に位置していることがわかる。これにより、フィラメントの電子放射物質の消耗が抑制され蛍光ランプFの寿命低下の防止が期待できる。
【0058】
しかしながら、予熱デューティを備えていない比較例2、比較例3のものの調光率30%におけるフィラメント電力要素は適正な予熱の行われる領域の境界近傍で且つ境界外に位置している。この場合、蛍光ランプFによっては大幅に適正な予熱の行われる領域を逸脱し、著しく寿命が低下する可能性がある。
【0059】
さらに、比較例4のもののフィラメント電力要素は適正な予熱の行われる領域から大きく乖離している。本願発明者が比較例4の条件による蛍光ランプFの不灯になるまでの点灯累計時間を測定したところ2,000〜4,000時間であった。実験に使用したFL20SS管のJIS規格の定格寿命値は6,000時間であるから、比較例4の条件で上記の調光動作を行うと蛍光ランプF(FL20SS管)の寿命は凡そ半減することがわかる。また、比較例4の条件では調光率が約40%となっており、調光率30%を達成するためには更なるONデューティ期間の短縮が必要である。そして、ONデューティ期間が短縮すれば、そのフィラメント電力要素はさらに適正な予熱の行われる領域から乖離しそれに伴い蛍光ランプFの寿命も減少することが予想される。
【0060】
尚、図10、表2には示していないが、比較例4の倍電圧整流回路及びその他の直流化回路40を使用したものであっても、期間及びその動作周波数が最適化された予熱デューティを設けることで、調光率30%の深い調光を行った場合でもそのフィラメント電力要素を適正な予熱の行われる領域のセンター値近傍に位置させることができる。
【0061】
また、本例では消灯デューティ時にスイッチング信号をOFFする間欠発振制御方式の例を示しているが、本発明は周波数変調方式にも適用が可能である。この場合、消灯デューティ時に蛍光ランプFが消灯する高い動作周波数(例えば162kHz)の調光制御信号Aを出力すれば、蛍光ランプFは直ちに消灯する。また、禁止周波数帯域を考慮して消灯デューティ時の動作周波数を150kHz未満とし、調光率の調整のためONデューティの期間を短くしても、蛍光ランプFのフィラメントの予熱を行う予熱デューティは他デューティから独立して設定することが可能なため調光制御信号の設定を比較的自由に行うことができる。さらに、予熱デューティが存在することで動作周波数の高い消灯デューティの期間が短縮され、スイッチング部44を構成するスイッチング素子(FET素子Q1、Q2)の発熱を抑制することができる。
【0062】
以上のように、本発明に係る調光機能付蛍光ランプ点灯装置80によれば、OFFデューティ中に予熱デューティを設けこの予熱デューティの期間及び動作周波数を最適化することで、特別な回路を付加することなく蛍光ランプFの寿命低下を防止することができる。よって、本発明に係る調光機能付蛍光ランプ点灯装置80は、低コスト化、省スペース化が可能となり、様々な用途に適用可能な汎用性の高いものとなる。
【0063】
また、蛍光ランプの予熱を行う予熱デューティの設定は他のデューティから独立して行うことができるため、蛍光ランプの種類等や調光機能付蛍光ランプ点灯装置80の各部の構成等に応じて適切な予熱デューティの設定を行うことができる。さらに、予熱デューティを設けることにより、蛍光ランプの予熱を考慮することなく他のデューティの設定を行うことができるため、調光制御信号の設定の自由度及び調光機能付蛍光ランプ点灯装置80の各部の回路設計の自由度を向上させることができる。
【0064】
尚、上記の調光機能付蛍光ランプ点灯装置80は本発明に係る調光機能付蛍光ランプ点灯装置の好適な一例であるから、調光機能付蛍光ランプ点灯装置80の各部の構成及び動作等は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で変更して実施することが可能である。さらに、本例で示した予熱デューティの期間及び動作周波数は、本例の条件で好適なものであり、調光機能付蛍光ランプ点灯装置の回路構成、調光率、使用する蛍光ランプによって適宜変化する。
【符号の説明】
【0065】
1 商用電源
33 発振部
36 調光制御部
40 直流化回路
42 直流電源部
44 スイッチング部
45 調光信号出力手段
46 蛍光ランプ点灯部
80 調光機能付蛍光ランプ点灯装置
Cf 共振コンデンサ
L インダクタ素子
F 蛍光ランプ
Fra、Frb フィラメント
P 出力端
【特許請求の範囲】
【請求項1】
商用電源を直流化する直流化回路と、
当該直流化回路からの直流電流を平滑化する直流電源部と、
調光率を指示する調光信号を出力する調光信号出力手段と、
蛍光ランプを消灯させるOFFデューティと当該蛍光ランプを点灯させるONデューティとを調光率に応じた比率で有する調光制御信号を、前記調光信号を受けて出力する調光制御部と、
前記調光制御信号に応じて所定の動作周波数のスイッチング信号を出力する発振部と、
当該スイッチング信号に応じたスイッチング制御により前記直流電源部からの電力を高周波交流電力として出力端に出力するスイッチング部と、
前記出力端と前記蛍光ランプの一方のフィラメントとの間に接続されるインダクタ素子と、前記蛍光ランプの他方のフィラメントを前記直流電源部に接続し、さらに前記蛍光ランプの両方のフィラメントを介して前記蛍光ランプと並列接続される共振コンデンサと、を備えたLC共振点灯方式の蛍光ランプ点灯部と、
を有する調光機能付蛍光ランプ点灯装置において、
前記OFFデューティが予熱デューティと消灯デューティとで構成され、
当該消灯デューティに基づく調光制御信号により前記蛍光ランプを消灯するとともに、
前記予熱デューティに基づく調光制御信号により前記蛍光ランプの消灯を維持しながら前記フィラメントの予熱を行うことを特徴とする調光機能付蛍光ランプ点灯装置。
【請求項2】
ONデューティの直後に消灯デューティを設けたことを特徴とする請求項1記載の調光機能付蛍光ランプ点灯装置。
【請求項3】
ONデューティ、消灯デューティ、予熱デューティによる動作周波数を65kHz〜75kHzの範囲以外に設定することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の調光機能付蛍光ランプ点灯装置。
【請求項4】
ONデューティの動作周波数を前記インダクタ素子と前記共振コンデンサとの共振周波数近傍に設定し、予熱デューティの動作周波数を当該共振周波数及び75kHzよりも高い周波数に設定することで、65kHz〜75kHzの範囲のノイズ成分を低減することを特徴とする請求項3記載の調光機能付蛍光ランプ点灯装置。
【請求項5】
調光制御部の出力する調光制御信号が、消灯デューティにおけるスイッチング信号を蛍光ランプの消灯する動作周波数とし、消灯デューティ、予熱デューティ、ONデューティのそれぞれの動作周波数を連続して周期的に出力する周波数変調方式の調光制御信号であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の調光機能付蛍光ランプ点灯装置。
【請求項6】
蛍光ランプ点灯部を出力端と直流電源部との間に複数並列接続したことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の調光機能付蛍光ランプ点灯装置。
【請求項7】
直流化回路が全波整流回路もしくは倍電圧整流回路で構成され且つ直流電源部がコンデンサインプット方式、アクティブフィルタ方式又は部分平滑方式であることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の調光機能付蛍光ランプ点灯装置。
【請求項1】
商用電源を直流化する直流化回路と、
当該直流化回路からの直流電流を平滑化する直流電源部と、
調光率を指示する調光信号を出力する調光信号出力手段と、
蛍光ランプを消灯させるOFFデューティと当該蛍光ランプを点灯させるONデューティとを調光率に応じた比率で有する調光制御信号を、前記調光信号を受けて出力する調光制御部と、
前記調光制御信号に応じて所定の動作周波数のスイッチング信号を出力する発振部と、
当該スイッチング信号に応じたスイッチング制御により前記直流電源部からの電力を高周波交流電力として出力端に出力するスイッチング部と、
前記出力端と前記蛍光ランプの一方のフィラメントとの間に接続されるインダクタ素子と、前記蛍光ランプの他方のフィラメントを前記直流電源部に接続し、さらに前記蛍光ランプの両方のフィラメントを介して前記蛍光ランプと並列接続される共振コンデンサと、を備えたLC共振点灯方式の蛍光ランプ点灯部と、
を有する調光機能付蛍光ランプ点灯装置において、
前記OFFデューティが予熱デューティと消灯デューティとで構成され、
当該消灯デューティに基づく調光制御信号により前記蛍光ランプを消灯するとともに、
前記予熱デューティに基づく調光制御信号により前記蛍光ランプの消灯を維持しながら前記フィラメントの予熱を行うことを特徴とする調光機能付蛍光ランプ点灯装置。
【請求項2】
ONデューティの直後に消灯デューティを設けたことを特徴とする請求項1記載の調光機能付蛍光ランプ点灯装置。
【請求項3】
ONデューティ、消灯デューティ、予熱デューティによる動作周波数を65kHz〜75kHzの範囲以外に設定することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の調光機能付蛍光ランプ点灯装置。
【請求項4】
ONデューティの動作周波数を前記インダクタ素子と前記共振コンデンサとの共振周波数近傍に設定し、予熱デューティの動作周波数を当該共振周波数及び75kHzよりも高い周波数に設定することで、65kHz〜75kHzの範囲のノイズ成分を低減することを特徴とする請求項3記載の調光機能付蛍光ランプ点灯装置。
【請求項5】
調光制御部の出力する調光制御信号が、消灯デューティにおけるスイッチング信号を蛍光ランプの消灯する動作周波数とし、消灯デューティ、予熱デューティ、ONデューティのそれぞれの動作周波数を連続して周期的に出力する周波数変調方式の調光制御信号であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の調光機能付蛍光ランプ点灯装置。
【請求項6】
蛍光ランプ点灯部を出力端と直流電源部との間に複数並列接続したことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の調光機能付蛍光ランプ点灯装置。
【請求項7】
直流化回路が全波整流回路もしくは倍電圧整流回路で構成され且つ直流電源部がコンデンサインプット方式、アクティブフィルタ方式又は部分平滑方式であることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の調光機能付蛍光ランプ点灯装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2010−244966(P2010−244966A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−94776(P2009−94776)
【出願日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【出願人】(592019198)株式会社エスアイエレクトロニクス (2)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【出願人】(592019198)株式会社エスアイエレクトロニクス (2)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]