説明

調整付き低電圧チャージポンプ

低出力電圧、高電流能力のチャージポンプを提供する技術を説明する。このチャージポンプは切替回路と複数のコンデンサを有する。初期化段階には各コンデンサの第1の極板がレギュレータ電圧を受け取るように接続され、各コンデンサの第2の極板は接地へ接続される。移動段階にはコンデンサが直列に接続され、第1のコンデンサより後ろの各コンデンサでは第2の極板が直列内の先行コンデンサの第1の極板へ接続される。ポンプの出力電圧は、直列内の最終コンデンサの第1の極板から供給される。ポンプの出力電圧レベルに応じた値を得るため、調整回路は基準電圧からレギュレータ電圧を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的にはチャージポンプの分野に関し、より具体的には相対的に低出力電圧、高電力効率、および高電流が要求されるチャージポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
チャージポンプは切替処理によりDC入力電圧より大きいDC出力電圧を提供する。チャージポンプは通常、入力と出力との間にスイッチに結合されたコンデンサを有する。1クロックの半サイクルにあたる充電半サイクルのときには、コンデンサが入力へ並列に結合し、入力電圧まで充電する。第2のクロックサイクルにあたる移動半サイクルのときには、充電されたコンデンサが入力電圧と直列に結合し、入力電圧レベルの2倍の出力電圧を提供する。このプロセスは図1aおよび図1bに示されている。充電半サイクルを示す図1aではコンデンサ5が、入力電圧VINと並列に配置されている。移動半サイクルを示す図1bでは、充電されたコンデンサ5が入力電圧と直列に配置されている。図1bに見られるように、充電されたコンデンサ5の正端子は接地に対して2*VINになる。
【0003】
チャージポンプは様々な状況で利用される。例えば、フラッシュ等の不揮発性メモリの周辺回路として利用され、プログラミング電圧や消去電圧等の様々に必要な作動電圧を低電源電圧から生成する。当該技術分野では従来のディクソン型ポンプ等の数々のチャージポンプ設計が知られている。しかし、チャージポンプへの普遍的依存のため、特にレイアウト面積とポンプの電流消費の縮減の点でポンプ設計の改善が引き続き求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第5,436,587号
【特許文献2】米国特許第6,370,075号
【特許文献3】米国特許第6,922,096号
【特許文献4】米国特許第7,135,910号
【特許文献5】米国特許出願第10/842,910号
【特許文献6】米国特許出願第11/295,906号
【特許文献7】米国特許出願第11/303,387号
【特許文献8】米国特許出願第11/497,465号
【特許文献9】米国特許出願第11/523,875号
【特許文献10】米国特許出願第11/845,903号
【特許文献10】米国特許出願第11/845,939号
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】"Charge Pump Circuit Design" by Pan and Samaddar, McGraw-Hill, 2006
【非特許文献2】ウェブページ「www.eecg.toronto.edu/〜kphang/ece1371/chargepumps.pdf」で入手できる"Charge Pumps: An Overview", Pylarinos and Rogers, Department of Electrical and Computer Engineering University of Toronto
【発明の概要】
【0006】
出力電圧を生成するチャージポンプを説明する。このチャージポンプは切替回路と複数のコンデンサを有する。コンデンサは、第1の初期化段階と第2の移動段階とで交互に接続可能である。第1の段階には各コンデンサの第1の極板がレギュレータ電圧を受け取るように接続され、各コンデンサの第2の極板は接地へ接続される。第2の段階にはコンデンサが直列に接続され、第1のコンデンサより後ろの各コンデンサでは第2の極板が直列内の先行コンデンサの第1の極板へ接続される。ポンプの出力電圧は、直列内の最終コンデンサの第1の極板から供給される。ポンプの出力電圧レベルに応じた値を得るため、調整回路は基準電圧からレギュレータ電圧を生成する。
【0007】
以下の本発明の例示的な例の説明には本発明の様々な態様、利点、特徴、および実施形態が含まれているが、この説明は添付の図面と併せて解釈すべきものである。本願明細書において参照する特許、特許出願、記事、その他の出版物、文書、事物はどれも、その全体が本願明細書においてあらゆる目的のために参照により援用されている。援用されている出版物、文書、または事物のいずれかと本願との間で用語の定義または使用に矛盾や食い違いがある場合には、本願の定義または使用が優先するものとする。
本発明の様々な態様と特徴は、以下の図を考査することでより良く理解できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1A】汎用チャージポンプにおける充電半サイクルの簡易回路図である。
【図1B】汎用チャージポンプにおける移動半サイクルの簡易回路図である。
【図2】調整型チャージポンプのトップレベルブロック図である。
【図3A】第1の実施形態のチャージポンプの初期化モードを示す。
【図3B】第1の実施形態のチャージポンプの移動モードを示す。
【図4A】代替の実施形態のチャージポンプの初期化モードを示す。
【図4B】代替の実施形態のチャージポンプの移動モードを示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
ここで説明するチャージポンプは、高効率、最小限のレイアウト面積要件、および高電流能力が好ましい用途に特に適している。例示的な実施形態は、先行技術よりもレイアウト面積と電流消費を抑え、高出力電流能力により3V〜6.5V範囲の出力を提供するのに適している。説明する設計は、例えば不揮発性メモリ回路上の周辺回路として応用できる。
【0010】
ディクソン型ポンプをはじめとする先行技術のチャージポンプやチャージポンプ全般については、例えば"Charge Pump Circuit Design" by Pan and Samaddar, McGraw-Hill, 2006 (非特許文献1)やウェブページ「www.eecg.toronto.edu/〜kphang/ece1371/chargepumps.pdf」で入手できる"Charge Pumps: An Overview", Pylarinos and Rogers, Department of Electrical and Computer Engineering University of Toronto(非特許文献2)で詳細を確認できる。米国特許第5,436,587号(特許文献1)、第6,370,075号(特許文献2)、第6,922,096号(特許文献3)、第7,135,910号(特許文献4)、ならびに2004年10月5日に出願された米国特許出願第10/842,910号(特許文献5)、2005年12月6日に出願された米国特許出願第11/295,906号(特許文献6)、2005年12月16日に出願された米国特許出願第11/303,387号(特許文献7)、2006年7月31日に出願された米国特許出願第11/497,465号(特許文献8)、2006年9月19日に出願された米国特許出願第11/523,875号(特許文献9)、2007年8月28日に出願された米国特許出願第11/845,903号(特許文献10)および第11/845,939号(特許文献11)では様々なチャージポンプの態様および設計について詳しい情報を確認できる。
【0011】
図2は、典型的なチャージポンプ構成のトップレベルブロック図である。ここで説明する設計は、ポンプ部201の詳細が先行技術とは異なる。図2に見られるように、ポンプ201は入力としてクロック信号と電圧Vregを得、出力Voutを提供する。ハイ(Vdd)接続とロー(接地)接続は明示されていない。電圧Vregはレギュレータ203によって提供され、レギュレータは入力として外部電圧源からの基準電圧Vrefと出力電圧Voutを得る。レギュレータブロック203は、所望のVout値が得られるようにVregの値を調整する。ポンプ部201は通常、例示的な実施形態で後述するようなクロスカップル型素子を有する。(「チャージポンプ」はポンプ部201のみを指す場合もあるが、レギュレータがある場合はポンプ部分201とレギュレータ203の両方を指すものとして通常解釈される。)
【0012】
Vrefは、例えば1.2ボルトのバンドギャップジェネレータ(図示せず)やその他の外部電圧源から提供される固定基準電圧である。Clock_Highはポンプ201へ入力されるクロック(図示せず)である。Clock_High(φ)の「1」電圧レベルは、好ましくは電荷移動に用いるスイッチでの降下を最小限に抑えるにあたって十分な高さにするべきである。
【0013】
図3A、図3Bおよび図4A、図4Bに1組の例示的な実施形態を示す。いずれの場合も、移動段階またはモードでは、複数(N個、ここではN=3個)のコンデンサが直列に接続され、初期化段階またはモードでは、低電圧レベル(通常は接地)とレギュレータ電圧との間でそれぞれのコンデンサが接続される。レギュレータ電圧はフィードバックに基づきレギュレータ回路から提供され、各内部ステージノードのプレチャージ制御に役立てることができる。
【0014】
図3Aおよび図3Bは、第1の実施形態のチャージポンプの初期化段階と移動段階をそれぞれ示している。これらの例に見られるステージ数Nは便宜上N=3だが、これ以外の数でも適宜使用できることが理解できるはずである。図3Aの初期化段階で各コンデンサの「下」極板(C1 311、C2 313、C3 315)は0Vに設定され、「上」極板は調整済み電圧Vregに基づくレベルにリセットされる。Vregはレギュレータ303から供給され、クロック信号CLKに基づきこれを果たすスイッチは模式的に図に示されている。スイッチとレギュレータ回路はいずれも当該技術分野で公知の標準的技術で実施できる。
【0015】
図3Bには第2の作動段階、すなわち移動段階が示される。N個のステージは、電圧源からのVddレベルと出力を供給する出力ノードとの間で直列に接続されている。この出力はレギュレータ303にも供給される。このため、調整フィードバックをもとに内部ステージノードのプレチャージレベルを制御でき(図3Aで説明)、クロックはVddレベルで常時作動できる。出力はVout=N*K*Vreg+Vddまで上昇する。Kは、作動時の電荷共有効率に基づく係数である。これはスイッチ(模式的に図に示す)にまたがるいかなる降下も無視した理想的レベルである。好ましくは、いかなる降下も最小限に抑えるレベルでスイッチを駆動する。上極板にVddを印加するだけでなく、初期化段階に調整電圧を使って上極板をプレチャージすることにより、調整された出力を得ることができ、図3Bの直列構成で高電力効率および高電流要求が達成される。
【0016】
図4Aおよび図4Bは、チャージポンプの代替の実施形態の初期化段階と移動段階をそれぞれ示している。種々の素子は、図3Aおよび図3Bと同様にラベル付けされ、同様の働きをする。主な違いとして、クロック振幅のみならず内部ステージノードのプレチャージレベル制御に調整フィードバックを役立てることができることが挙げられる。図4Bの移動段階では、VddではなくVregと出力ノードとの間でコンデンサが直列に接続される。その結果、出力電圧は(理想的には)Vout=N*K*Vreg+Vregまで上昇する。この場合にはレギュレータ回路403からのフィードバックによって全ての出力電圧を調整できる。
【0017】
正の電圧出力を生成する場合について、図3A、図3Bおよび図4A、図4Bの構成を説明したが、同様の構成で負の電圧を生成することもできる。さらに具体的には、それには、簡潔に述べれば図3A、図3Bおよび図4A、図4Bの実施形態を接続の点で「逆さ」にし、対応する負の調整電圧を使用すればよい。
【0018】
これまで特定の実施形態を参照しながら本発明を説明してきたが、この説明は本発明の一応用例に過ぎず、制限として解釈すべきものではない。開示した実施形態の特徴の様々な適応ならびに組み合わせは、添付の特許請求の範囲によって規定される本発明の範囲内にある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
出力電圧を生成するチャージポンプ回路であって、
第1の極板と第2の極板とを各々有する複数のコンデンサと、
切替回路であって、それによってコンデンサは第1の段階と第2の段階とで交互に接続され、第1の段階ではコンデンサの第1の極板がレギュレータ電圧を受け取るように接続され、コンデンサの第2の極板は接地へ接続され、第2の段階ではコンデンサが直列に接続され、直列内の第1のコンデンサより後ろの各コンデンサでは第2の極板が直列内の先行コンデンサの第1の極板へ接続され、最終コンデンサの第1の極板はチャージポンプ回路の出力電圧を供給するように接続される切替回路と、
基準電圧とチャージポンプからの出力電圧を受け取り、かつ前記基準電圧からレギュレータ電圧を生成するように接続可能な調整回路であって、レギュレータ電圧値は出力電圧レベルに応答する調整回路と、
を備えるチャージポンプ回路。
【請求項2】
請求項1記載のチャージポンプ回路において、
直列内の第1のコンデンサの第2の極板は、第2の段階中に電圧源から電圧レベルを受け取るように接続されるチャージポンプ回路。
【請求項3】
請求項1記載のチャージポンプ回路において、
直列内の第1のコンデンサの第2の極板は、第2の段階中にレギュレータ電圧を受け取るように接続されるチャージポンプ回路。
【請求項4】
請求項1記載のチャージポンプ回路において、
チャージポンプ回路は、不揮発性メモリ回路上の周辺回路の一部であるチャージポンプ回路。
【請求項5】
出力電圧を生成する方法であって、
第1の極板と第2の極板とを各々有する複数のコンデンサを設けるステップと、
第1の段階と第2の段階とで交互にコンデンサを接続するステップであって、前記第1の段階は、
レギュレータ電圧を受け取るようにコンデンサの第1の極板を接続することと、
第2の極板を接地へ接続することと、を含み、前記第2の段階は、
直列内の第1のコンデンサより後ろの各コンデンサでは第2の極板が直列内の先行コンデンサの第1の極板へ接続されるように直列のコンデンサを接続することと、
直列内の最終コンデンサの第1の極板からチャージポンプ回路の出力電圧を供給することと、を含む接続するステップと、
基準電圧から調整電圧を生成するステップであって、レギュレータ電圧値は出力電圧レベルに応答する生成するステップと、
を含む方法。
【請求項6】
請求項5記載の方法において、
前記第2の段階は、電圧源から電圧レベルを受け取るように直列内の第1のコンデンサを接続することをさらに含む方法。
【請求項7】
請求項5記載の方法において、
前記第2の段階は、レギュレータ電圧を受け取るように直列内の第1のコンデンサを接続することをさらに含む方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【公表番号】特表2011−507471(P2011−507471A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−538076(P2010−538076)
【出願日】平成20年12月8日(2008.12.8)
【国際出願番号】PCT/US2008/085827
【国際公開番号】WO2009/076277
【国際公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【出願人】(506197901)サンディスク コーポレイション (175)
【Fターム(参考)】