説明

調整可能なグレーティングコンプレッサを備えたパルスレーザ光源

【課題】繰り返し周波数が可変の複数の超短光パルスを備えるパルスレーザビームを生じさせるレーザ光源を提供する。
【解決手段】このレーザ光源は、光パルスを出力するファイバ発振器と、光パルスを受け取るために配置されるパルスストレッチャとを備える。光パルスは光パルス幅を有する。パルスストレッチャは、光パルス幅を拡大し、引き伸ばされた光パルスを生じさせる分散を有する。レーザ光源は、引き伸ばされた光パルスを受け取るように配置されるファイバ増幅器を更に含む。ファイバ光増幅器は、引き伸ばされた光パルスを増幅するための利得を有する。レーザ光源は、光パルス幅を減少させる分散を有する自動的に調整可能なグレーティングコンプレッサを含む。グレーティングコンプレッサは、異なった繰り返し周波数についてこの分散を自動的に調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(優先権主張出願)
本願は、全体として参照することにより本明細書に組み込まれる「可視フェムト秒パルスを活用する光導波路書き込み(OPTICAL WAVEGUIDE WRITING UTILIZING VISIBLE FETMOSECOND PULSES)と題される2004年12月20日に出願された米国特許出願番号第60/638,072号に対する優先権を主張する。
【0002】
本願発明の装置及び方法は、パルスレーザ及びパルスレーザを用いて導波路を製造することに関する。
【背景技術】
【0003】
周知であるように、導波路は、例えばスラブの中等、媒体の中で光を伝搬するための光学経路を備える。この導波路は、媒体内の物質の屈折率を変化させることにより製造可能である。導波路は、例えば、基板の表面に配置された、あるいは基板の中に埋め込まれたチャネル導波路を含む。複雑な3次元アーキテクチャの集積化された光学系はこのような導波路構造で形成されることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
導波路は、材料の物理的な状態を変化させるため、及び物質内の屈折率を変化させるために媒体の中に光を照射することによって製造可能である。導波路書き込みは、レーザ、特にパルスレーザを使用して実現できる。残念なことに、導波路書き込みは複雑なプロセスである。このプロセスは市販されているレーザシステムを使用する多くの導波路にとっては実現可能ではない可能性がある。したがって、レーザ光を用いて導波路書き込みを可能にする追加の装置及び方法が必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書に説明されている多様な実施形態は、繰り返し周波数が可変の複数の超短光パルスを備えるパルスレーザビームを生じさせるレーザ光源を含む。一実施形態では、レーザ光源は、光パルスを出力するファイバ発振器と、光パルスを受け取るように配置されるパルスストレッチャとを備える。光パルスは光パルス幅を有する。このパルスストレッチャは、光パルス幅を増加し、引き伸ばされた光パルスを生じさせる分散を有する。レーザ光源は、引き伸ばされた光パルスを受け取るように配置されるファイバ増幅器を更に備える。ファイバ光増幅器は、引き伸ばされた光パルスを増幅する利得を有する。レーザ光源は光パルス幅を減少させる分散を有する自動的に調整可能なグレーティングコンプレッサを含む。グレーティングコンプレッサの分散は調整可能である。グレーティングコンプレッサは、異なった繰り返し周波数について分散を自動的に調整する。
【0006】
本発明の別の実施態様も、繰り返し周波数が可変の複数の超短光パルスを備えるパルスレーザビームを生じさせるレーザ光源を備える。レーザ光源は光パルス幅を有する光パルスを出力するファイバ発振器と、光パルス幅を減少させる分散を有する自動調整可能なグレーティングコンプレッサとを備える。分散は調整可能であり、グレーティングコンプレッサは異なった繰り返し周波数について分散を自動的に調整する。
【0007】
別の実施形態は、繰り返し周波数が可変の複数の超短光パルスを備えるパルスレーザビームを生じさせる方法を備える。この方法は光パルス幅を有する光パルスを生じさせることと、圧縮された光パルスを生成するために光パルス幅を減少させることと、繰り返し周波数を変化させることとを含む。この方法では、コンプレッサの分散は、最小パルス幅を生じさせるために異なった繰り返し周波数について自動的に調整される。
【0008】
本明細書に説明されている別の実施形態は、媒体内で導波路を製造する方法を備える。この方法は持続時間が約300フェムト秒と700フェムト秒の間のパルス幅と、約490ナノメートルと550ナノメートルの間の範囲の波長を有する光パルスを備える超高速パルスレーザビームを生じさせることを含む。この方法は、媒体の領域の中に超高速パルスレーザビームの少なくとも一部を導くことと、媒体の領域からこの超高速パルスレーザビームを除去することとを更に含む。媒体の領域の中に導かれる超高速パルスレーザビームは、導波路が媒体内に形成されるように超高速パルスレーザビームが除去された後に領域内の媒体の屈折率を変化させるほど十分な強度を有する。本方法の一実施形態では、超高速パルスレーザビームは約5J/cmと約50J/cmの間の、媒体の領域に対するレーザフルエンスを有する。別の実施形態では、光パルスは約100kHzから5MHzの間の繰り返し周波数を有する。
【0009】
導波路を製造するこの方法の別の実施形態は、赤外光を生じさせることと、可視光ビームを生じさせるために赤外光の周波数を倍増することとを更に含む。
【0010】
導波路を製造するこの方法の別の実施形態では、媒体は、実質的に透明な結晶、ガラス及びポリマーから成る物質群から選択される。別の実施形態では、媒体は溶融石英を備える。更に別の実施形態では、媒体は物質イオン化バンドギャップλを有する物質を備え、波長は3.0λと5λの間である。
【0011】
別の実施形態では、この方法は、細長い導波路を形成するために媒体を移動することを更に備える。
【0012】
更に別の実施形態では、この方法は、細長い導波路を形成するために超高速パルスレーザビームを移動することを更に備える。
【0013】
本明細書に開示されている別の実施形態は、媒体内で導波路を製造するためのシステムを備える。このシステムは赤外ファイバレーザと、周波数逓倍器と、移動システムとを備える。赤外ファイバレーザは超高速パルス赤外レーザビームを出力する。周波数逓倍器は超高速パルス赤外レーザビームを受け取り、約490ナノメートルと550ナノメートルの間の範囲の波長を有する超高速パルス可視レーザビームを出力する。超高速パルス可視レーザビームは、持続時間が300フェムト秒と700フェムト秒の間のパルス幅を有する光パルスを備える。超高速パルス可視レーザビームは媒体の空間領域を照射する。移動システムは、媒体内でこの導波路を形成するために空間領域を移動する。
【0014】
本システムの一実施形態では、赤外ファイバレーザはYbドープ・ファイバレーザを備える。更に別の実施形態では、赤外ファイバレーザは1030ナノメートルと1050ナノメートルの間の波長を出力し、周波数逓倍器は、第二高調波発生を介して波長が515ナノメートルと525ナノメートルの間の光を生成する非線形光学素子を備える。
【0015】
導波路を製造するためのこのシステムの別の実施形態では、超高速パルス可視レーザビームは約5J/cmと50J/cmの間の、空間領域に対するレーザフルエンスを有する。更に別の実施形態では、光パルスは約100kHzから5MHzで繰り返し周波数が可変である。
【0016】
導波路を製造するための本システムの別の実施形態は、超高速可視パルスレーザビームを受け取り、それをもって空間領域を照射するように配置される光学系を更に備える。本システムの一実施形態では、この光学系は顕微鏡対物レンズを備える。このシステムの別の実施形態では、光学系は約1.0未満という開口数を有する。
【0017】
導波路を製造するためのこのシステムの一実施形態では、移動システムは、媒体が上に配置される移動ステージを備える。更に別の実施形態では、移動システムは可動ミラーを備える。
【0018】
また本明細書に開示されているのは、超高速パルス可視レーザビームを生じさせる超高速パルス可視レーザ光源を備える導波路を製造するためのシステムでもある。超高速パルス可視レーザビームは約300フェムト秒と800フェムト秒の間のパルス期間と、約490ナノメートルと550ナノメートルの間の波長を有する光パルスを備える。このシステムはビームの中に配置される媒体を更に備える。この媒体は物理的な構造と、この構造が可視光のビームによって変化を受け、それによって屈折率を変化させるようにこの構造に依存する屈折率とを有する。
【0019】
導波路を製造するための本システムの一実施形態では、媒体は物質イオン化バンドギャップλを有し、波長は3.0λと5λの間である。更に別の実施形態では媒体は溶融石英を備えるが、別の実施形態では、媒体は透明な結晶、ガラス、及びポリマーから成る物質群から選択される。
【0020】
やはり本明細書に開示されているのは、可視光ビームを生じさせることと、媒体の領域の中にこの可視光を導き、領域内の媒体の物理的な状態を変化し、領域内の屈折率を変更し、それにより導波路を形成することとを含む、媒体内で導波路を製造する方法である。
【0021】
導波路を製造する本方法の一実施形態では、光源が3.0λと5λの間の出力波長を有し、この場合λは物質イオン化バンドギャップである。別の実施形態では、可視光が緑色の光を備える。更に別の実施形態では、可視光ビームは、溶融石英内での導波路書き込みのために約490ナノメートルと550ナノメートルの間の範囲内の導波路を有する。
【0022】
本明細書に開示されている更に別の実施形態は、媒体内で導波路を製造する方法を備える。この方法は可視光ビームを生じさせることと、可視ビームの少なくとも一部を媒体のある領域内に導くことと、媒体の領域から可視光を除去することとを含む。媒体の領域の中に導かれる可視光ビームは、可視光ビームが媒体内で導波路を形成するために除去された後に、領域内の媒体の屈折率を変化させるほど十分な強度を有する。
【0023】
導波路を製造する本方法の一実施形態では、光源は3.0λと5λの間の出力波長を有し、この場合λは物質イオン化バンドギャップである。本方法の別の実施形態では可視光ビームは緑色の光を備える。更に別の実施形態では、可視光ビームは溶融石英内での導波路書き込みのために約490ナノメートルと550ナノメートルの間の範囲内の導波路を有する。
【0024】
導波路を製造する本方法の別の実施形態は、赤外光を生じさせることと、可視光ビームを生じさせるために赤外光の周波数を倍増することとを更に含む。本方法の別の実施形態では、周波数を倍増することは第二高調波発生を含む。別の実施形態では、赤外光は約1040ナノメートルのレーザ光を備え、可視光ビームは約520ナノメートルのレーザ光を備える。更に別の実施形態では、方法は約100kHzから5MHzの可変繰り返し周波数で赤外レーザをパルス化することを更に含む。更に別の実施形態では、赤外レーザは、グレーティングコンプレッサと、最適パルス圧縮にこの繰り返し周波数の変化を与えるために自動的に再配置される搬送装置とを含む。
【0025】
導波路を製造する本方法の一実施形態は、約300フェムト秒と700フェムト秒の間の期間のパルスを生じさせるために可視光ビームをパルス化することを更に含む。本発明の別の実施形態では、媒体は実質的に透明な結晶、ガラス及びポリマーから成る物質群から選択される。本方法の更に別の実施形態では、この媒体は溶融石英を備える。
【0026】
導波路を製造する本方法の追加の実施形態は、細長い導波路を形成するために媒体を移動することを更に含む。本方法の別の実施形態は、細長い導波路を形成するために可視光ビームを移動することを更に含む。本方法の更に別の実施形態では、媒体内の屈折率は、可視光の除去後に増加する。
【0027】
本明細書に開示される別の実施形態は、導波路を製造するためのシステムを備える。このシステムは、可視光のビームを生じさせる光源と、このビーム内に配置される媒体とを備える。媒体は物理的な構造と、この構造に依存する屈折率とを有する。この構造は、屈折率が変化するように可視光のビームによって移動される。
【0028】
本システムの一実施形態では、光源は3.0λと5λの間の出力波長を有し、この場合λは物質イオン化バンドギャップである。本システムの別の実施形態では、光源は、溶融石英内での導波路書き込みのために、約490ナノメートルと550ナノメートルの間の出力波長を有する。更に別の実施形態では、光源はレーザを備える。更に別の実施形態では、媒体は実質的に透明な結晶、ガラス、及びポリマーから成る物質群から選択される。本システムの実施形態では、この媒体は溶融石英を備える。
【0029】
本明細書に開示されている別の実施形態は、媒体内で導波路を製造するためのシステムも備える。また本システムは、可視光を出力し、可視光で媒体の空間領域を照射する可視レーザ光源と、媒体内で導波路を形成するために空間領域を移動するための移動システムとを備える。
【0030】
導波路を製造するための本システムの一実施形態では、可視レーザ光ソースは赤外レーザと、周波数逓倍器とを備える。別の実施形態では、赤外レーザはYbドープ・ファイバレーザとを備える。更に別の実施形態では、赤外レーザは1045ナノメートルの波長レーザを備え、周波数逓倍器は、第二高調波発生を介して522.5ナノメートルの波長光を生じさせる非線形光学素子を備える。更に別の実施形態では、可視レーザ光源は約490ナノメートルと550ナノメートルの間の出力波長を有する。例えば、赤外ファイバレーザは1030ナノメートルと1050ナノメートルの間の波長を出力してよく、周波数逓倍器は、第二高調波発生を介して515ナノメートルと525ナノメートルの間の波長の光を生じさせてよい非線形光学素子を備える。追加の実施形態では、可視レーザ光源は約100kHzから5MHzにおいて、繰り返し周波数が可変である。
【0031】
導波路を製造するための本システムの別の実施形態では、赤外レーザはグレーティングコンプレッサと、最適パルス圧縮に繰り返し周波数の変化を与えるためにグレーティングコンプレッサの分散が自動的に調整される機構とを含む。
【0032】
本システムの別の実施形態は、可視レーザ光源から出力される可視光を受け取り、可視光で空間領域を照射するために配置される光学系を更に含む。一実施形態では、光学系は顕微鏡対物レンズを備える。別の実施形態では、光学系は約1.0未満の開口数を有する。
【0033】
導波路を製造する本システムの別の実施形態では、移動システムは、媒体が配置される移動ステージを備える。本システムの別の実施形態では、この移動システムは可動ミラーを備える。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施形態に係る媒体内に導波路を書き込むための、可視レーザ光源と収束光学系と媒体を支持する移動システムとを備えるシステムを示す。
【図2】発振器とパルスストレッチャと光増幅器とグレーティングコンプレッサとを備える、本発明の実施形態に係る可視光源の概略図を示す。
【図3A】第1と第2のグレーティングと鏡とを備える、本発明の実施形態に係るグレーティングコンプレッサの概略図を示す。
【図3B】1つのグレーティングと2つの逆反射体とを備える、本発明の実施形態に係るグレーティングコンプレッサの概略図を示す。
【図4】移動システムが回転式鏡又は傾斜式鏡を備える、本発明の実施形態に係る導波路を書き込むためのシステムを示す。
【図5】媒体の中に又は媒体の上にパターンを形成するためにマスクを使用した、本発明の実施形態に係る導波路を書き込むためのシステムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0035】
溶融石英を備える媒体内に導波路を書き込むことのできるシステム10が図1に描かれている。このシステム10は、可視光を出力する可視レーザ光源12を備える。可視レーザ光源12は、例えば約490ナノメートルと550ナノメートル間の可視光スペクトルの緑範囲の出力波長を有する。この波長範囲はいくつかの実施形態では約450ナノメートルと700ナノメートルの間でもあってよい。
【0036】
可視レーザ光源12は、約1045ナノメートルという波長を有する光を出力する、Ybドープ・ファイバレーザ14を備える。例示的なYbがドープされた増幅ファイバレーザ14は、IMRAアメリカ(IMRA America)、アナーバー(Ann Arbor)、ミシガン(Michigan)から入手できるFCPAμJewelを備える。このファイバレーザは約100kHzと5MHzの間のパルス繰り返し周波数を有し、約300fsと700fsの間のパルス期間を有する超短パルスを出力できる。この高い繰り返し周波数が、相対的に高い移動速度(〜1mm/s)で低損失導波路の製造を可能にする。これらの範囲外の値も他の実施形態では使用してもよい。
【0037】
可視レーザ光源12は、Ybドープ・ファイバレーザから光パルスを受け取る周波数逓倍器16を更に含む。これのような非線形媒体は変換効率と出力ビーム品質を最大にすることができるため、この周波数逓倍器16の1つの好適実施形態は、非臨界位相整合リチウムトリボレート(LBO)を活用する。周波数逓倍器は、ベータバリウムホウ酸塩(BBO)、チタンリン酸カリウム(KTP)、ビスマストリボレートBiB、リン酸二水素カリウム(KDP)、リン酸二重水素化カリウム(KDP)、ニオブ酸カリウム(KNbO)、ニオブ酸リチウム(LiNbO)等の非線形媒体も備えてよく、入射ビームを非線形媒体の中に焦点を合わせ、変換率を高め、第二高調波出力ビームを平行にするために適切な光学系を含んでよい。いくつかの実施形態では、周波数逓倍器は、第二高調波発生を介して約522nmの波長で周波数逓倍された出力を生じさせる。周波数逓倍器16から、及び可視レーザ光源12からのこの出力は図1ではビーム18として示されている。
【0038】
他のタイプの光源及び特に他のタイプの可視レーザ光源12が使用可能である。他のタイプのレーザが使用可能である。例えば、他のタイプのファイバパルスレーザ及び非ファイバパルスレーザが使用可能である。周波数逓倍及び第二高調波発生が、さまざまな実施形態で使用可能であり、また利用されなくてもよい。
【0039】
システム12は、可視レーザ光源12から出力される可視光を受け取るように配置される光学系20を更に含む。光学系20は、例えば、ビーム18の焦点をターゲット領域22の中に合わせる顕微鏡対物レンズを含んでよい。(図1の図面は概略であり、このビームの焦点を合わせる光学系は使用可能であるが、ビームの収束を示していないことに留意する。)
光学系20は、約1.0未満及びいくつかの実施形態では約1.0と0.4の間の開口数(NA)を有してよい。低NAの収束型対物レンズが、例えばNA>1.0の油浸対物レンズ及び水浸対物レンズを基準にして焦点深度が長いために三次元導波路パターンの製造を容易にする。また、約520mmに近い可視波長は、近赤外(NIR)波長よりも可視顕微鏡使用で使用される標準高倍率対物レンズと互換性がある。このようにして、この対物レンズにより生じる挿入損失及びビーム収差は大幅に削減される。他のタイプの光学系20が使用可能であり、光学系は特定の実施形態で除外されてよい。
【0040】
システム10は、導波路を形成するためにレーザビームを媒体24の上に、特に媒体内又は媒体上のターゲット領域22の中に導く。この媒体24はいくつかの実施形態では溶融石英を備えてよい。媒体24は結晶だけではなく、ガラス又はポリマーも含んでよい。使用可能な物質の例は、フッ素でドーピングされた石英ガラス、及び石英、サファイア、フッ化カルシウム、フッ化マグネシウム、フッ化バリウム、及びベータバリウムホウ酸塩等の高バンドギャップ結晶性物質を含む。他の物質も使用可能である。
【0041】
システム10は、ターゲット領域22を移動するための搬送システム26を更に含む。媒体24は、例えば、移動される移動ステージ28の上に取り付けられてよい、あるいはそれ以外の場合レーザビーム18に対して移動してよい。他の実施形態では、レーザビーム18は、例えば回転又は傾斜できるミラーを使用して移動されてよい。レーザビーム18は、例えば顕微鏡レンズ20をシフトすることによって等、他の光学素子を移動することによって移動又は移動されてよい。ビーム18を媒体24に対して移動させる、あるいはそれ以外の場合ターゲット領域22を移動させるための他の構成及び装置が使用可能である。
【0042】
媒体24に入射する可視光は、媒体24の屈折率を変化させる。多様な好適実施形態では、ターゲット領域22の可視レーザ光による照射が、媒体24の物理的状態を変化し、ターゲット領域22内の屈折率を高める。屈折率は可視レーザ光で照射されない媒体24の周辺部分と比較して変更又は増加される。媒体24の物理的状態が変化されるため、レーザビーム18を取り除いても、屈折率の変化又は上昇は維持される。可視光を使用した屈折率を照射で変化させる多くの機構が使用可能である。
【0043】
前述されたようなシステム10は多くの技術的な特長を提供する。例えば、周波数逓倍された1045ナノメートルの放射線の使用は、多数の利点を提供する。例えば、Ybドープ・ファイバレーザの基本波長(1045nm)で溶融石英に書き込まれる導波路は高い光学損失を生じさせる一方、同じレーザ(522nm)の第二高調波で類似した条件下で書き込まれる導波路は非常に低い光学損失を生じさせる。
【0044】
また、更に短い波長は、回折限界スポットサイズの削減のために更に密接な収束を可能にする。したがって、相対的に低い入射パルスエネルギーで高い焦点強度/フルエンスを達成することが可能である。
【0045】
更に短い波長は、更に長い波長を基準にした多光子吸収プロセスも強化する必要がある。更に短い波長は下位多光子イオン化を生じさせ、非線形吸収状態間で更に幅広い分離につながる。これが屈折率変更閾値と損失閾値の間の分離を増大して、より大きなプロセス・ウィンドウを可能にする。しかしながら、他の実験超短パルスでは、400−nmレーザ照射が導波路を書き込む際に成功しないことが興味深い。
【0046】
また、実質的に多くの対物レンズが生体顕微鏡法に設計されているため、(光の透過及び収差補正等の)これらの顕微鏡対物レンズの性能は可視波長については改善されるか、あるいは最適化される。したがって、Ybをベースにしたレーザの第二高調波を使用することによって、波長は既存の顕微鏡システム内への単純な統合を可能にする。したがって導波路書き込みは基本検査システムとともに並列で統合できる。
【0047】
導波路書き込みは複雑且つやりがいのあるプロセスである。上述したように、あるクラスの物質によく適している可能性のある技法が、別のクラスの物質には不適切な場合がある。したがって、導波路書き込みが可能である領域を特定することは、例えば更に低い光学損失、更に小さなスポットサイズの使用、及び更に高い焦点強度/フルエンスの使用、既存の顕微鏡システム等への統合の改善等の利点を提供するであろうが、それ以外の場合には適用できない可能性がある。
【0048】
1つの好適実施形態では、図2に概略で示されているようなレーザ光源200は、例えば、IMRAアメリカの改良型FCPA μJewelを備える。種々のレーザ光源200に関する追加の詳細は、ともに全体として参照することにより本明細書に組み込まれる、2004年11月22日に出願された、「全ファイバチャープパルス増幅システム(All-Fiber Chirped Pulse Amplification Systems)」」(IM−114)と題される米国特許出願第10/992,762号、及び2005年4月26日に発行された「モジュール式高エネルギーかつ広く同調可能な超高速ファイバソース(Modular, High Energy, Widely-tunable Ultrafast Fiber Source)」と題される米国特許第6,885,683号に開示されている。一般的には、このようなレーザ光源200は、発振器210と、パルスストレッチャ220と、光増幅器230と、グレーティングコンプレッサ240とを備える。
【0049】
発振器210は光共振器を形成する1組の反射光学素子を備えてよい。発振器210は、この共振器内に配置される利得媒体を更に備えてよい。この利得媒体は、光パルスが発振器210によって発生するような材料である。利得媒体はポンプ光源(不図示)によって光学的にポンピングされることができる。一実施形態では、利得媒体はYbがドープされたファイバ等のドープされたファイバを備える。反射光学素子はいくつかの実施形態では、1つ又は複数の鏡又はファイバブラッグ格子を備えてよい。反射光学素子は、ドープされたファイバの端部に配置されてよい。他のタイプの構成だけではなく、他のタイプの利得媒体及び反射体も使用可能である。発振器210は、パルス期間又は幅(半値全幅、FWHM)τ、及び繰り返し周波数Γを有する光パルスを出力する。
【0050】
パルスストレッチャ220は分散を有する光ファイバを備えてよい。パルスストレッチャ220は、発振器210に光学的に結合され、発振器によって出力される光パルスを受け取るように配置される。特定の実施形態では、発振器210とパルスストレッチャ220は光ファイバであるが、結合されている、あるいは重ね継がれている。他の装置及び他のタイプのパルスストレッチャ220も使用可能である。パルスストレッチャの出力はチャープパルスである。パルスストレッチャ220は、パルス幅τを拡大し、パルスを引き伸ばし、パルスの振幅も削減する。
【0051】
パルスストレッチャ220は、増幅器が引き伸ばされた光パルスを受け取るように増幅器230に光学的に結合されている。増幅器230は、パルスを増幅する利得媒体を備える。増幅器230は、いくつかの実施形態ではYbがドープされたファイバ等のドープされたファイバを備えてよい。増幅器230は光学的にポンピングされてよい。同じ又は異なる光学ポンプソースは、発振器210及び増幅器230をポンピングするために使用可能である。増幅器230は非線形であってよく、自己位相変調を導入してよい。したがって、さまざまな振幅光パルスはさまざまな量の位相遅延を経験してよい。他のタイプの増幅器及び他の構成が使用可能である。
【0052】
グレーティングコンプレッサ240は、光増幅器230から増幅された光パルスを受け取るように配置される。さまざまなタイプのグレーティングコンプレッサ240が技術上周知である。グレーティングコンプレッサ240は、分散を導入する1つ又は複数のグレーティングを備え、さまざまな波長にさまざまな光経路を提供するように構成される。チャープパルスを受け取るグレーティングコンプレッサ240は、(例えば、時間的に光パルスの後ろの)更に短い波長の位相遅延とは異なっている(例えば、時間的に光パルスの前に)更に長い波長の位相遅延を提供するように構成されてよい。位相遅延は、コンプレッサから出力されるパルスにおいて、更に長い波長と短い波長が時間的に重複し、パルス幅が縮小されるほどであってよい。光パルスはそれによって圧縮される。
【0053】
一実施形態では、レーザ光源200はYbドープの増幅ファイバレーザ(例えば、IMRAアメリカの改良型FCPAμJewel)を備える。このようなレーザは、商業的な固体レーザシステムに優る複数の主要な優位点を提供する。例えば、このレーザ光源は、約100kHzから5MHzの「類のない範囲」に及ぶ可変繰り返し周波数を提供する。更に、発振器専用システムより高いパルスエネルギーは、焦点の配置で更に大きな柔軟性を可能にする。固体再生反復システムより高い繰り返し周波数は更に高速の製造速度を可能にする。可変繰り返し周波数は、さまざまなガラス等のさまざまな媒体の屈折率変更条件の最適化も容易にする。
【0054】
レーザ光源200の一実施形態では、パルスは従来のステップ型シングルモードファイバの長さで引き伸ばされ、バルクグレーティングコンプレッサ240で圧縮される。ストレッチャ220とコンプレッサ240間の三次分散の大きな不一致は、キュービコン(cubicon)パルスを使用することにより電力増幅器230内での自己位相変調を介して補償される。このキュービコンパルスは立方体のスペクトル及び時間形状を有する。電力増幅器230における自己位相変調の影響を受けて、赤のスペクトル成分のためのはるかに小さい非線形位相遅延を引き起こす一方で、三角形のパルス形は、パルスの青のスペクトル成分のための非線形位相遅延を拡大する。この自己位相変調の程度は電力増幅器230内でのレーザパルスの強度に依存する。更に、繰り返し周波数の変動が輝度の変化を引き起こし、したがって位相遅延及び分散も変えるであろう。
【0055】
大部分は一定のポンピングに起因する一定の平均電力Pavgの場合、Pavg=Epulse×Γであり、この場合Epulseはパルスエネルギー(J)であり、Γは繰り返し周波数(Hz)である。したがって、一定の平均電力の場合、繰り返し周波数を増加するとパルスエネルギーは減少する。逆に、繰り返し周波数を減少すると、パルスエネルギーは増加する。パルスエネルギーが、例えば100kHzで3μJから5MHzで150nJまで繰り返し周波数とともに変化することを考慮すると、自己位相変調の程度も変化する。増幅器230において自己変調が変化するとパルス幅が変化する。繰り返し周波数の変動により引き起こされるパルス幅のこの変化を補正するために、グレーティングコンプレッサ240の分散を調整できる。
【0056】
図3Aは、繰り返し周波数の変化に伴いグレーティングコンプレッサの分散を自動的に調整するグレーティングコンプレッサ240の一実施形態を概略で描いている。グレーティングコンプレッサ240は、第1のグレーティングと第2のグレーティング242、244及び鏡246を含む。描かれているように、光学経路は第1と第2のグレーティング242、244と鏡246の間に伸張する。したがって、入力を通してグレーティングコンプレッサ240まで受け取られる光248のビームは第1のグレーティグ242に入射し、そこから回折される。ビーム248は、以後、第2のグレーティング244に導かれ、そこから鏡246に向かって回折される。ビーム248は鏡246から反射され、第2のグレーティング244に戻され、そこから第1のグレーティグ242に回折される。このビーム248は、入力を通って第1のグレーティング242から戻され回折される。
【0057】
図3Aは、矢印252によって表現される方向で第2のグレーティングを移動するように構成される移動ステージ250上に配置される第2のグレーティング244を示している。移動ステージ250は、移動ステージの移動を制御する制御回路254と通信している。また制御回路254は記憶装置256と通信している。制御回路254はプロセッサと、マイクロプロセッサと、CPUと、コンピュータと、ワークステーションと、パーソナルデジタルアシスタントと、ポケットPC又は他のハードウェアデバイスを備えてよい。制御回路254は、ハードウェア、ソフトウェア又はファームウェアに記憶されている命令又は処理ステップの集合を実行してよい。命令又は処理ステップの集合体は制御回路254内に、又は何らかの他のデバイス又は媒体に記憶されてよい。
【0058】
命令又は処理ステップの集合体はコンピュータプログラムコード要素及び/又は電子論理回路を含んでよい。制御回路254の多様な実施形態は、デジタル処理装置(例えば、コンピュータ、制御回路、プロセッサ、ワークステーション、ラップトップ、パームトップ、パーソナルデジタルアシスタント、携帯電話、キオスク等)に一連の機能ステップを実行するように命令する形式で論理要素をレンダリングする機械構成部品を含む。この論理回路は、一連のコンピュータ命令又は制御要素実行可能命令としてプロセッサによって実行されるコンピュータプログラムによって具現化されてよい。これらの命令を生成するために使用できるこれらの命令又はデータは、例えば、RAM内、又はハードディスクドライブ又は光ドライブ上に、又はディスク上に常駐してよく、あるいは命令は磁気テープ、電子読み出し専用メモリ、又は適切なデータ記憶装置、又は動的に変更又は更新されてよい、あるいは動的に変更又は更新されなくてよいコンピュータアクセス可能媒体に記憶されてよい。したがって、これらの方法及びプロセスは、まだ考案されていないものだけではなく技術上周知のものも含めて、例えば、磁気ディスク、コンパクトディスク等の光ディスク、光ディスクドライブ又は他の記憶装置又は媒体に含まれてよい。記憶媒体は、ハードウェアを使用して実現される処理ステップを含んでよい。これらの命令は、以後変更される圧縮されたデータ等の記憶媒体上のフォーマットであってよい。
【0059】
更に、処理のいくつか又はすべては、同じデバイス上で、このデバイスと通信する1台又は複数台のデバイス上で、あるいは他の多様な組み合わせの上ですべて実行できる。プロセッサは、ネットワークに組み込まれてもよく、プロセスの部分はネットワーク内の別個のデバイスによって実行されてよい。ユーザインタフェース等の情報のディスプレイはデバイス上に含むことができ、あるいは情報はデバイスに通信でき、及び/又は別個のデバイスと通信できる。
【0060】
記憶装置256は、まだ考案されていないものだけではなく技術上周知のものも含めて、例えばディスクドライブ、揮発性メモリ又は不揮発性メモリ、光ディスク、テープ又は他の記憶装置又は記憶媒体を備えてよい。記憶装置256と制御回路254間の通信は、例えば結線を介して、あるいは電磁伝送によってでもよく、例えば電気、光学、磁気、又はマイクロ波等によってよい。同様に制御回路254と移動ステージ252間の通信は、例えば結線を介して又は電磁伝送によってでもよく、例えば電気、光学、磁気又はマイクロ波等によってよい。多岐に渡る構成及び装置が考えられる。
【0061】
図3Aも、第1のグレーティング242の移動を表す矢印258を示している。これらのグレーティング242、244のどちらかあるいは両方とも制御回路254又は他の制御回路に接続されている搬送装置を使用して移動されてよい。第1及び/又は第2のグレーティング242、244のこのような移動はその間の分離を変更し、グレーティング間の光が移動する光学経路の長さを増減する。この光路長を増減すると、ビーム上のグレーティングの角分散の影響が増減される。特定の実施形態では、鏡246も移動されてよい。
【0062】
多様な実施形態では、記憶装置256は繰り返し周波数を表す値と、移動ステージ250のための位置つまり移動量を表す値とを含むデータベースを備える。繰り返し周波数が、例えばユーザによって設定又は変更されると、制御回路254は記憶装置256にアクセスし、移動ステージ250の位置及び/又は1つ又は両方のグレーティング242、244の位置を自動的に調整するために使用される値をそこから受け取ってよい。
【0063】
前述されたように、図3Aに示されているグレーティングコンプレッサ240の実施形態では、矢印252により示されるようなグレーティング244の移動が、回折される光がグレーティング間で伝搬する光学経路距離を変化する。この光路長を変化すると、グレーティングコンプレッサ240によりビーム248に導入される分散が変更される。したがって、搬送装置250を使用して異なる量、第2のグレーティング244を移動すると、グレーティングコンプレッサ240の分散が変更されるので、これはレーザ光源200の他の部分の分散の変動を補償するために使用可能である。特に制御回路254は、繰り返し周波数の変化に起因する増幅器530内の分散の変化に対抗するために繰り返し周波数の変化に応えて適切な量、搬送装置250を介して第2のグレーティング244の移動を自動的に引き起こすように構成されてよい。
【0064】
さまざまな構成が考えられる。図3Aに関して、グレーティング242、244と鏡246の異なる組み合わせが、例えばグレーティング間のビーム248の光学経路を変化することによりグレーティングコンプレッサ240の分散を自動的に調整するために移動されてよい。
【0065】
更に、グレーティングコンプレッサ240は違う設計としてもよい。グレーティング242、244のどちらか及び鏡246が排除されてよい。別の実施形態では、例えばグレーティングコンプレッサ240は、鏡246なしで第1と第2のグレーティング242、244を備える。他の実施形態では、更に多くのグレーティングが使用可能である。更に、他の実施形態では、グレーティングコンプレッサ240は、第2のグレーティング244なしで、第1のグレーティング242と鏡246とを備える。違う設計も可能である。例えば鏡の代わりにプリズムが使用可能である。プリズムは、グレーティングコンプレッサ240及びレーザ光源200からポンピングされるレーザビーム248の出力を容易にしてよい。更に、まだ考案されていないものも技術上周知のものも含めて、他の構成が使用可能である。
【0066】
図3Bは、グレーティング242と、第1の、及び第2の逆反射体272、274とを備えるグレーティングコンプレッサ240の別の実施形態を描く。第1の逆反射体272は、矢印252によって表される方向で逆反射体272を移動させるように構成された移動ステージ250上に置かれる。移動ステージ250は、図3Aに関して説明されるものと実質的に同様に動作するように構成されてよい。入射ビーム248は、入力からグレーティングコンプレッサ24に受け取られ、光学経路に沿ってグレーティング242まで移動し、そこから回折される。ビーム248は、以後第1の逆反射体272まで移動し、グレーティング242に向かって向け直される。ビーム248はグレーティング242から回折され、第2の逆反射体274に向かって移動する。ビーム248は第2の逆反射体274から反射し、グレーティングコンプレッサ240を通して、及び入力を通してその経路を逆にする。
【0067】
逆反射体272、274はビームを反射することに加え、この反射されたビームが入射ビームに関して側面方向で変位されることを規定するプリズムを備えてよい。したがって、入力ビームは出力ビームからそれによって分離できる。図3Bでは、第1の逆反射体272が水平方向で(紙の平面で)入力ビームと出力ビームを側面に沿って分離するように向けられる。図3Bに示される第2の逆反射体274はプリズムも備える。このプリズムは水平方向で(紙の平面の中から)入力ビームと出力ビームを側面に沿って分離するように向けられる。その結果、第1の逆反射体と第2の逆反射体272、274は、互いに関して異なって向けられる(例えば90°回転される)実質的に同一のプリズムを備えてよい。他のタイプの逆反射体及び他の構成も使用可能である。
【0068】
矢印252によって示されるような第1の逆反射体272の移動は、グレーティング242からの反射間のビーム248によって移動する光学経路の距離を変化し、したがってグレーティングコンプレッサ240によってビーム248に導入される分散を変化させる。したがって、搬送装置250を使用して第1の逆反射体272を、異なる量、移動するとグレーティングコンプレッサ240の分散が変更される。更に、第1の逆反射体272は、繰り返し周波数の変化に起因する増幅器530の分散の変化に対抗するために、繰り返し周波数の変化に応えて適切な量、第1の逆反射体272の移動を自動的に引き起こすように構成される制御回路(図示されていないが、制御回路254に概して類似してよい)に動作可能なように結合されてよい。図3Bに示されているグレーティングコンプレッサ240の動作の他の態様は、図3Aに示されているグレーティングコンプレッサ240の動作の態様に概して類似してよい。変動も考えられる。
【0069】
加えて、制御回路254がグレーティングコンプレッサ240内の移動ステージ250を自動的に調整するために使用する繰り返し周波数に関する情報を含む記憶装置256を使用する代わりに、制御回路は搬送装置250の適切な変位を決定するためのさまざまな装置を使用してよい。例えば、繰り返し周波数を監視する光学検波器(例えば、フォトダイオード)が含まれてよい。制御回路254は、光学検波器からこの情報を使用してよい。他の実施形態では、光学検波器はパルス幅の測度を提供し、制御回路254はグレーティングコンプレッサ240の分散を自動的に調整するためにこの情報を使用する。光学検波器と制御回路254を含むフィードバックシステムは、グレーティングコンプレッサ240の分散を自動的に調整するために含まれてよい。レーザシステム200を制御するためにフィードバックを使用することに関する追加の詳細は、全体として参照することにより本明細書に組み込まれている2004年3月31日に出願された「プロセスパラメータ、コントロール、及び制御付きのフェムト秒レーザ処理システム(Femtosecond Laser Processing System with Process Parameters, Controls and Feedback)(IM−110)と題される米国特許出願第10/813,269号に開示されている。設計の他の変更も考えられる。
【0070】
繰り返し周波数の変動について自動的に調整する自動グレーティングコンプレッサを備えるレーザ光源200は本明細書に開示されるように導波路を製造する上で使用可能であるが、レーザ光源の応用はこのような目的に制限されず、他の用途にも使用可能である。
【0071】
しかしながら、このレーザ光源200は、導波路を製造するために特に有用であろう。高繰り返し周波数と相対的に高いパルスエネルギーの組み合わせは、高NA焦点対物レンズを必要とせずに高速で(〜1mm/s)低損失導波路を書き込むことを可能にする。相対的に低いNA焦点対物レンズを使用する能力は、光学的なレイアウトを簡略化し、三次元構造の製造に有用である長い作業距離と長い焦点深度を提供する。
【0072】
このようなシステム10は、溶融石英において導波路を書き込むために特に有用であろう。溶融石英はその大きなイオン化バンドギャップ(〜9eV)のため、導波路を書き込むことが相対的に困難なガラスである。λというイオン化バンドギャップのある材料を考えると、実験は<1dB/cm伝搬損失のある導波路を製造するために、導波路の書き込みが約3.0λと5λの間の領域を含むことを示す。更に長い波長で溶融石英に導波路を書き込むことは可能であるが、3.5λ近くで動作すると、より幅広いプロセス・ウィンドウ(屈折率変更閾値と損失閾値の間のより大きな分離)が提供される。更に、書き込み波長≧5λの低損失導波路を製造するための<150fsと比較して、3.5λ近くで動作するときには最高500fsパルスまで使用できる。3.0λ以下の波長では導波路書き込みの効果が削減される可能性があり、負の屈折率変化等のより好ましくない結果を生じさせる。例えば、全体として参照することにより本明細書に組み込まれているジャーナル・オブ・オプティカル・ササイアティ・オブ・アメリカ(J. Opt. Soc. Am.)B、第19巻、2496から2504ページ(2002年)のストレソフ(Streltsov)及びボレリ(Borrelli)を参照すること。システム10の特定の実施形態は前述の波長範囲及びパルス幅で動作するが、システム10の他の実施形態は異なる波長範囲及びパルス幅(例えば、100fsから1000fsまで、及びこの範囲外)を活用してよい。
【0073】
1μmの波長のフェムト秒レーザ光源での導波路書き込みは、リン酸塩ガラスとホウケイ酸塩ガラスのサンプルで実現できる。全体として参照することにより本明細書にも組み込まれる、オプティクス・レターズ(Opt. Lett.)第29巻、1900から1902ページ(2004年)のオセラーメ(Osellame)ら、及びSPIE会議記録5339、168ページ(2004年)の中のM.ウイル(Will)らを参照すること。1μmという基本波長はホウケイ酸塩ガラス、ソーダ石灰ガラス、及びリン酸塩ガラス等の相対的に低いバンドギャップの透明な物質によく適しているが、前述されたようなレーザ光源200の実施形態の第二高調波周波数で動作すると、更に幅広いクラスの高バンドギャップ透明材料を含むようにレーザの実用性が拡大される。
【0074】
前述したように、システムの構成は異なってよく、導波路を製造する方法の移動例が考えられる。図4は、例えば、移動システムが回転式鏡又は傾斜式鏡30を備えるシステムを示す。このシステム10は収束光学系を含まない。レーザ光源12から出力されるレーザビーム18は、横断方向の断面を十分に縮小した。図5は、移動システムを含まない導波路を製造するためのシステムを示す。可視光は可視光によって照射される媒体24上又は媒体24内のパターンを形成するマスク32を照射する。マスク32を結像するための結像光学系34も示されている。システム10は、レーザ光でマスクを照射するためにレーザ光源12とマスク32の間に配置される照明光学系(不図示)を更に含んでよい。他の実施形態では、マスク又はレチクルが、ビーム及び/又は媒体を移動する又は段差を付けることに加えて使用可能である。
【0075】
別の実施形態では、ファイバ導波路は、ファイバの端部を通って可視光を照射することによって形成されることができる。可視光は、ファイバの屈折率を変化させ、それによりファイバ内にコアを生じさせる。このコアは、ファイバの全長に沿って更に領域内のファイバの状態を変化させるために、更にファイバに沿って可視光を導く。したがって、コアはファイバに沿って長手方向に引き伸ばされる。したがって、ファイバ光学媒体における空間領域はこの例では自動的に移動される。他の構成も考えられる。
【0076】
屈折率の変化を基礎とする、グレーティング、レンズ、位相マスク、鏡等の他のタイプの光学要素及び構造は、本明細書に開示されているものに類似した装置及びプロセスを使用して製造することができる。他の移動も考えられる。
【0077】
本発明の特定の実施形態は説明されているが、これらの実施形態は例証としてのみ提示されており、本発明の範囲を制限することを目的としていない。したがって、本発明の大きさ及び範囲は続く請求項及びその同等物に従って定義されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体中に導波路を製造する方法であって、
約300フェムト秒と700フェムト秒の間のパルス幅と、約490ナノメートルと5
50ナノメートルの間の範囲の波長を備える超高速パルスレーザビームを生成し、
前記媒体中の領域に前記超高速パルスレーザビームの少なくとも一部を照射し、
前記媒体中から前記超高速パルスレーザビームを除く、
ことを含み、前記媒体中の領域に照射された前記超高速パルスレーザビームは、前記媒
体中から前記超高速パルスレーザビームが除かれた後、前記媒体の屈折率を変化させ、こ
れにより、前記媒体中に前記導波路を形成するに十分な強度を有することを特徴とする方
法。
【請求項2】
前記超高速パルスレーザビームが、約5J/cmと約50J/cmの間の、媒体の
領域に対するレーザフルエンスを有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記光パルスが、約100kHzから5MHzの間の繰り返し周波数を有することを特
徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
赤外光を生じさせ、該赤外光の周波数を2逓倍して可視光ビームを生じさせることとを
更に含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記媒体が、実質的に透明な結晶、ガラス及びポリマーから成る物質群から選択される
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記媒体が、溶融石英を備えることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記媒体が、物質イオン化バンドギャップλを有する物質を備え、前記波長は3.0
λと5λの間であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
細長い導波路を形成するために前記媒体を移動することを更に含むことを特徴とする請
求項1に記載の方法。
【請求項9】
細長い導波路を形成するために超高速パルスレーザビームを移動することを更に含むこ
とを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
媒体中に導波路を製造するためのシステムであって、
超高速パルス赤外レーザビームを出力する赤外ファイバレーザと、
前記超高速パルス赤外レーザビームを受け取り、前記媒体の空間領域を照射する超高速
パルス可視レーザビームであって、約490ナノメートルと550ナノメートルの間の範
囲の波長を有し、300フェムト秒と700フェムト秒の間のパルス幅を有する光パルス
を備える超高速パルス可視レーザビームを出力する周波数逓倍器と、
前記媒体中に前記導波路を形成するために前記空間領域を移動する移動システムと、
を備えることを特徴とするシステム。
【請求項11】
前記赤外ファイバレーザが、Ybドープ・ファイバレーザを備えることを特徴とする請
求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記赤外ファイバレーザが、1030ナノメートルと1050ナノメートルの間の波長
を出力し、
前記周波数逓倍器が、第二高調波発生により波長が515ナノメートルと525ナノメ
ートルの間の光を生成する非線形光学素子を備える、
ことを特徴とする請求項10に記載のシステム。
【請求項13】
前記超高速パルス可視レーザビームが、約5J/cmと50J/cmの間の、前記
空間領域に対するレーザフルエンスを有することを特徴とする請求項10に記載のシステ
ム。
【請求項14】
前記光パルスが、約100kHzから5MHzで繰り返し周波数が可変であることを特
徴とする請求項10に記載のシステム。
【請求項15】
前記超高速可視パルスレーザビームを受け取り、前記超高速可視パルスレーザビームに
より前記空間領域を照射するように配置された光学系を更に備えることを特徴とする請求
項10に記載のシステム。
【請求項16】
前記光学系が、顕微鏡対物レンズを備えることを特徴とする請求項15に記載のシステ
ム。
【請求項17】
前記光学系が約1.0未満の開口数を有することを特徴とする請求項15に記載のシス
テム。
【請求項18】
前記移動システムが、前記媒体を搭載する移動ステージを備えることを特徴とする請求
項10に記載のシステム。
【請求項19】
前記移動システムが、可動ミラーを備えることを特徴とする請求項10に記載のシステ
ム。
【請求項20】
導波路を製造するためのシステムであって、
約300フェムト秒と800フェムト秒の間のパルス幅と、約490ナノメートルと5
50ナノメートルの間の波長を有する光パルスを備える超高速パルス可視レーザビームを
生成する超高速パルス可視レーザ光源と、
前記ビームの中に配置される媒体であって、物理的な構造と、該構造が可視光のビーム
によって変化を受け、それによって屈折率が変化する、前記構造に依存する屈折率とを有
する媒体と、
を備えることを特徴とするシステム。
【請求項21】
前記媒体が、物質イオン化バンドギャップλを有し、前記波長は3.0λと5λ
の間であることを特徴とする請求項20に記載のシステム。
【請求項22】
前記媒体が、実質的に透明な結晶、ガラス及びポリマーから成る物質群から選択される
ことを特徴とする請求項20に記載のシステム。
【請求項23】
前記媒体が、溶融石英を備えることを特徴とする請求項22に記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−70095(P2013−70095A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2013−30(P2013−30)
【出願日】平成25年1月4日(2013.1.4)
【分割の表示】特願2007−66456(P2007−66456)の分割
【原出願日】平成17年12月20日(2005.12.20)
【出願人】(593185670)イムラ アメリカ インコーポレイテッド (65)
【出願人】(507253613)ザ ガバーニング カウンシル オブ ザ ユニバーシティ オブ トロント (4)
【Fターム(参考)】