説明

調理素材加熱用板状体

【課題】熱的、機械的に堅牢であり、熱伝導がよく遠赤外線高効果で魚を外観よく美味しく焼き上げることができ、焼いた魚から排出される油等を落下流出させることなく、焼き上げてからも余熱で保温されるという調理素材加熱用板状体。
【解決手段】調理素材加熱用板状体として、好ましくは重量比7対3からなるペタライトと蛙目粘土との混合物を生地にし所定形状に成形したものに、釉薬として重量比8対2からなるペタライトとフリットの粉体混合物に等重量の水を加えたものをほどこし、1180℃で焼成して得られる。形状としては、平板状に四角形をなし、上面にうね状の突条を並列し、上面周辺付近を所定幅傾斜させて周縁を高くし、少なくとも上面全体と下面周辺付近に釉薬をほどこし、対向辺に把持片を突出させ、底面各辺の内側に載置用脚部を設けてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は調理素材の加熱用板状体の製法とその形状に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、魚類や野菜類、肉類等調理素材の加熱用器具として、金属材料による格子状や並列状あるいは平板状のものが広く使用され、加熱源の上方に置かれて使用されているが、焼き上げる際に焦げたり、煙がでたり、液汁がこぼれ落ちることが多く、調理素材の焼き上がりの外観や調理場の雰囲気を阻害することがお多く、改善が望まれている。
【0003】
従来にみられ改善策として、特許文献1によれば、調理素材を揚げたり、ゆでたり、煮炊きするための陶磁器鍋として、焼き上げ前の素材中に耐熱性、耐薬品性、機械的強度、電気的特性に優れ、成形時に高流動性を有する結晶性樹脂からなるセラミック材料を混練し、完成した鍋本体の表面にフッソ樹脂塗膜を形成させたものがみられ、その結果、熱伝導率がよいため、素材の細胞を痛めず、持ち味を生かしたおいしい料理ができるというが、フッソ樹脂塗膜の耐久性に限界があり、フッソ樹脂使用による経済性にも問題がある。
【0004】
一方、電磁誘導加熱方式による土鍋として、アルミニウムや銀などを厚さ0.5mm以下の薄膜として貼り付けたものが市販されているが、アルミニウムや銀などは熱膨張係数が土鍋に比較して大きいため、調理器として使用中にクラックや剥離が生じたりする問題がある。そのため、導電性のセラミックスが研究され、たとえば、特許文献2によりホウ化ジルコニウムなどと酸化物系のβ−スポンジュメンなどとの複合体が知られているが、耐衝撃性に弱く、高価であり経済的でない。
【0005】
そこで、安価で耐衝撃性に優れた発熱体として、セラミックス発熱体として、酸化物系セラミックスと炭素材とを含み、電磁誘導加熱により発熱するものとして、炭素材が鱗状黒鉛であり、酸化物系セラミックスがリチウム及びアルミニウムを含むケイ酸塩系セラミックスであることを特徴とするものが特許文献3により提案されているが、セラミックス発熱体として、電磁誘導加熱の設備を別途必要とするものであり、使用場所が限定されるので、汎用性に欠けるから、当該提案には問題がある。
【0006】
なお、目を転じて魚焼器として従来の考案をみると、魚類の魚皮を痛めることなく、美しく焼き上げることができるものとして、特許文献4によれば、載置面を鋸歯波形に形成した載置板を枠内に複数枚装着して構成し、各載置板には油受片を具有させ、油垂れを防ぎ、油溜まりへと導くようにしてあり、鋸歯波形が配列されているので、魚類が多数の点で受けた状態で焼き上がるので、焼き上がった魚類を外しても皮身が剥がれることなく、自然の形で焼き上がるという特許文献4がみられるが、魚類が多数の点で受けた状態で焼き上がるので、むしろ多数の点が魚類の皮身に刺さり、傷跡が食欲を損ねるという難がある。
【0007】
これと同様の目的で、グリルの中のグリル網を外して、グリルの受け皿の上にアルミ箔を用いたトレーを載せる。そのトレーには斜めに凹凸が付いていて魚を載せて魚が焼き終われば、それなるアルミ箔を廃棄するというが、魚が自然の形で焼き上がるというものの、形状を維持し得るアルミ箔の強度に問題があるほか、アルミ資源の消費や環境保全上の問題もある。
【0008】
ほかにも、特許文献5の魚焼器として、魚載せ板の外周縁に鍔部を形成して機械的強度をもたせ、その内側に突条を多数突設し、中央を最も高く盛り上げ、鍔部の内側に凹溝を設けて焼いた魚から排出される油等を下方への傾斜で当該凹溝に流出させて、魚をカラッと美味しく焼き上げるというが、魚が突状から転げ落ちやすく、むしろ魚をカラッと美味しく焼き上げるというのが困難とみられる。
【特許文献1】特開平10−43058
【特許文献2】特開平2002−167266
【特許文献3】特開平2004−299913
【特許文献4】実用新案登録第3104906号
【特許文献5】実用新案登録第3044530号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は加熱源の種類に左右されることなく、熱的にも機械的にも堅牢であり、熱伝導がよく遠赤外線高効果で魚を外観よく美味しく焼き上げることができ、焼いた魚から排出される油等を落下流出させることなく、焼き上げてからも板状体の余熱で保温されるという調理素材加熱用板状体を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
ここにおいて、本発明者は ペタライトと蛙目(ガイロメ)粘土との混合物を生地にし所定形状に成形したものに、釉薬としてペタライトとフリットとの含水混合物をほどこし焼成して調理素材加熱用板状体が得られることを見出し、それが、好ましくは重量比7対3からなるペタライトと蛙目粘土との混合物を生地にし所定形状に成形したものに、釉薬として重量比8対2からなるペタライトとフリットの粉体混合物に等重量の水を加えたものをほどこし、1180℃で焼成して得られること、ならびに形状として、平板状に四角形をなし、上面にうね状の突条を並列して、上面周辺付近を所定幅傾斜させて周縁を高くし、少なくとも上面全体と下面周辺付近に釉薬をほどこし、対向辺に把持片を突出させ、底面各辺の内側に載置用脚部を設けたものが使い易いことを見出すにいたった。
【0011】
本発明の調理素材加熱用板状体1(以下、単に加熱用板状体1と略記する)を作るには、ペタライトと蛙目(ガイロメ)粘土とを生地にしてよく混練し、型枠等を用いて成型してから、釉薬にペタライトとフリットの含水混合物を用いて焼成する。ペタライトは炭酸リチウムLi2 CO3 とアルミナAl2 3 および珪石SiO2 とから合成することもできるが、天然鉱物として存在する輸入のペタライト(LiO2 ・Al2 3 ・8SiO2 )を使用したほうが便利である。ペタライトは耐熱、耐衝撃性に優れ、低い熱膨張性を示す結晶物質で、殆ど0に近い熱膨張曲線を示すものである。また、蛙目粘土は瀬戸のものが好適で、カオリナイト鉱物で殆ど構成されており、水分をおよそ20%含有したものを使用する。フリットは珪石や長石を混ぜて一旦ガラス状に溶融し、水に不溶性の釉薬材料としたものであり、1200℃以下の低火度の釉薬をつくるのに用いられている。
【発明の効果】
【0012】
本発明の加熱用板状体1は安価に量産でき、とくに、熱的にも機械的にも堅牢であることを特徴とする。また、板状体1上面6のうね状部2を形成する突条部4の頂部の断面が円弧状をなしているので、焼き上がった魚の表面にく食い込み目が生ずることなく、魚が一様に焼き上がるので食欲をそそる。また、ガス火等で焼いても、火熱の伝達に偏りがなく、加熱用板状体1全体が一様に加熱され、魚の油等は突条部4間の溝をなす凹部5に落ち、調理素材加熱用板状体1上面6の周辺付近を所定幅傾斜させて周縁を高くしてあるので、魚の油等が加熱用板状体1からこぼれ落ちるようなことがなく、魚をふっくらと美味しく焼き上げることができる。本発明の加熱用板状体1はとくに魚の場合に好適であるが、調理素材の種類が魚に限定されることはない。なお、使用にあたり、ガス直下に載せ少し温かくなってから魚を載せて焼くようにしたほうが良い。また、その結果、遠赤外線高効果で調理素材の内部がよく加熱されるので、魚特有の生臭さが消え、程よく焼くことができる。本発明の加熱用板状体1は使用直後熱くなっているので、素手で触れないで把持片8を防熱手袋で掴むこと、テーブルに細長状の載置用脚部9を介して鍋敷の上に載せ置くことを要する。加熱用板状体1に汚れがある場合は台所用洗剤で洗い乾燥させておく。もし焦げ付き汚れがみられる場合は、ナイロンたわしとクレンザー等で洗っておくと良い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
なお、特許請求の範囲に生地成分のペタライトと蛙目粘土との重量比や釉薬におけるペタライトとフリットの粉体混合重量比や成型物の焼成温度を限定的に記載してあるが、それらは最好適な値であり、使用にあたりそれらに限定されることはなく、多少の開きがあることはいうまでもないが、焼成温度を1180℃以上にすれば、板状体が焼き割れをするのでそれは避けるべきである。
【0014】
なお、本発明の実施例による加熱用板状体1の形状を図1ないし図5に例示してあり、たとえば、突条部4の高さが約6mmあり、一辺が約18.5mmの正方形からなり、重量が約1.6kgとなる。その場合、突条部4として14本程度のものが好適である。
【産業上の利用可能性】
【0015】
本発明の加熱用板状体1は型枠等を用いて量産され易く、各種調理素材に広く使用されると思われる。加熱用板状体1の洗浄も釉薬面7があるので容易である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施例による加熱用板状体の平面図
【図2】実施例による加熱用板状体のA−A断面
【図3】実施例による加熱用板状体の正面図
【図4】実施例による加熱用板状体の底面図
【図5】実施例による加熱用板状体の把持片側からの側面図
【符号の説明】
【0017】
1 調理素材加熱用板状体
2 うね状部
3 断面の凹凸曲線
4 突条部
5 凹部
6 上面
7 釉薬面
8 把持片
9 載置用脚部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペタライトと蛙目(ガイロメ)粘土との混合物を生地にし所定形状に成形したものに、釉薬としてペタライトとフリットとの含水混合物をほどこし焼成して得られる調理素材加熱用板状体。
【請求項2】
重量比7対3からなるペタライトと蛙目粘土との混合物を生地にし所定形状に成形したものに、釉薬として重量比8対2からなるペタライトとフリットの粉体混合物に等重量の水を加えたものをほどこし、1180℃で焼成して得られる請求項1記載の調理素材加熱用板状体。
【請求項3】
形状として、平板状に四角形をなし、上面にうね状の突条を並列して、上面周辺付近を所定幅傾斜させて周縁を高くし、少なくとも上面全体と下面周辺付近に釉薬をほどこし、対向辺に把持片を突出させ、底面各辺の内側に載置用脚部を設けてある請求項1記載の調理素材加熱用板状体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−167062(P2006−167062A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−361963(P2004−361963)
【出願日】平成16年12月14日(2004.12.14)
【出願人】(501468264)
【Fターム(参考)】