説明

調理装置

【課題】1台の装置で冷却、加熱の使用に対応した構造を持ち、また、一連の調理において、調理温度または出力、調理時間の複数の組み合わせによる調理プログラムを設定することで、調理者が不在のときにも自動的に調理を行うことができ、さらには複数の調理機器の機能を組み合わせにより台所の省スペース化を可能とするものである。
【解決手段】調理室1に、誘導加熱コイル5と、誘導加熱コイル5を冷却する為のコイル冷却ファンと、調理室1内に冷気を送り込む冷却ファン10と、各電気機能部品の動作を制御する制御手段と、一連の調理における調理室1内の調理温度、調理時間の複数の組み合わせによる調理プログラムを設定、または運転状態を表示する操作パネルを備え、誘導加熱コイル5と冷却手段8とを個別または同時に動作させ、調理室1内の被調理物を調理するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は加熱手段として誘導加熱コイルを、冷却手段としてコンプレッサまたはペルチェ素子等を共に搭載した調理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年共働きの家庭が増えるにあたって、美食傾向が進む反面面倒な調理を行う時間がないため、家庭での調理のための時間が減少傾向にある。また、健康志向に伴い、減塩等の健康食品が大いに注目されている。
【0003】
しかし、一般家庭での料理においては、減塩等を行った調理はほとんどされていないのが現状であり、減塩を行うと当然味は薄くなり、通常と同様の味を出すためには手間隙を掛けて調理を行うことになる。
【0004】
このため時間を有効に使い、且つ質の高い調理を行うことができる調理装置が求められている。
【0005】
例えば長時間外出するとき、帰宅予定時刻に自動調理を完了させるためには、被調理物をしばらく冷蔵または冷凍保存し、帰宅予定時刻を見計らって解凍または加熱を開始し、調理する必要がある。特に減塩調理において味を良く早く染込ませるためには、加熱と冷却を繰り返すことが良いとされており、多くの時間と労力が必要である。
【0006】
しかし、冷蔵庫、コンロ、及びオーブン等は、個々に独立した機器であるため、各工程ごとに被調理物の入れ替えと、調理温度や調理時間等の設定が必要である。また、加熱調理を無人で行うことの不安もあり、無人での自動調理は不可能であるが、これらを一体化することで調理の自動化、短時間化、調理品質の向上、安全性の向上、あるいは台所の省スペース化が期待できる。
【0007】
例えば冷蔵庫と電子レンジを一体化した従来の技術として、冷凍、冷蔵庫のケース本体の中ほどに電子レンジの枠体を設け、この枠体の一部に、不使用時、切り換えダンパーを開いて枠体内へ冷気を供給することにより、枠体内の食品を冷蔵保存し得るようにするものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
また、電子レンジと冷蔵庫とを着脱自在の吸気ダクトを接続し、電子レンジ内に冷気を供給しながらマイクロ波を被調理物に照射し、解凍を行うものがある(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開昭63−150573号公報
【特許文献2】特開平10−132289号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載の構成は、冷蔵庫に加熱手段として電子レンジを組み合わせてはいるが、保冷後に加熱、または加熱後に保冷といった調理に利用できる機能は持っていない。
【0010】
また、特許文献2に記載の構成は、調理室内に冷気を供給しながらマイクロ波によって解凍を行い、加熱機能と冷却機能を調理に積極的に用いてはいるが、ダクトによって電子レンジと冷蔵庫を接続するという構成は、それぞれの配置が限定され、また準備の手間を伴い現実的ではない。
【0011】
本発明は上記従来の問題点を解決するもので、1台の装置で冷却、加熱を行う低温から高温の温度範囲での使用に対応した構造を持ち、また、加熱を不燃の断熱壁で囲われた調理室で行うことにより、加熱調理中に無人であっても安全であり、また、一連の調理において、調理温度または出力、調理時間の複数の組み合わせによる調理プログラムを設定することで、被調理物を調理室内に入れるだけで、調理者が不在のときにも自動的に調理を行うことができ、さらには複数の調理機器の機能を組み合わせたことで台所の省スペース化を可能とする調理装置を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために本発明は、扉と耐熱性の断熱材を封入した断熱箱とにより構成された調理室に、誘導加熱コイルと、前記調理室と前記誘導加熱コイルとを隔離する非導電性のプレートと、前記誘導加熱コイルを冷却する為のコイル冷却ファンと、前記調理室とダクトによって結合され周囲を断熱材で囲まれた冷却手段と、この冷却手段によってつくられた冷気を前記ダクトを通して前記調理室内に送り込む冷却ファンと、各電気機能部品の動作を制御する制御手段と、前記調理室底部の温度を検知する鍋底センサと、一連の調理における前記調理室内の調理温度、調理時間の複数の組み合わせによる調理プログラムを設定、または運転状態を表示する操作パネルを備え、前記制御手段は、前記操作パネルによって設定された調理プログラムと、前記温度センサによる検知温度に基づき、前記誘導加熱コイルと前記冷却手段とを個別または同時に動作させ、前記調理室内の被調理物を調理するものである。
【0013】
したがって、調理開始直前までは被調理物をしばらく冷蔵または冷凍保存することができ、調理開始後は被調理物に適した方法で解凍や加熱調理を行い、最初に被調理物を前記調理室内に入れる以外の手間をかけずに高い調理品質の調理を行うことができる。
【0014】
また、本発明は、調理室内にヒータを設け、このヒータの熱を庫内ファンによって庫内に攪拌することにより、誘導加熱コイルによる迅速な加熱と、ヒータによるコンベクションオーブン式の加熱との長所を使い分けることができ、より被調理物に適した調理を行うことができる。
【0015】
また、本発明は、操作パネルによって調理プログラム、あるいは調理終了時刻を予約するため、調理の自動化および調理の終了時刻設定が容易に行えるものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の調理装置は、1台の装置で冷却、誘導加熱コイルによる加熱を行うことができる結果、低温から高温の温度範囲での使用に対応した構造を持ち、一連の調理において、調理温度、調理時間の複数の組み合わせによる調理プログラムを設定することで、被調理物を調理室内に入れるだけで、調理者が不在のときにも自動的に調理を行うことができ、またあらゆる温度帯と、2種類の加熱方法とによる調理によって、調理品質の向上と調理品目のバリエーションの増加を可能とし、さらには複数の調理機器の機能を組み合わせたことで台所の省スペース化がはかれるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
請求項1に記載の発明は、扉と耐熱性の断熱材を封入した断熱箱とにより構成された調理室と、前記調理室の下方に設けられた誘導加熱コイルと、前記調理室と前記誘導加熱コイルとを隔離する非導電性のプレートと、前記誘導加熱コイルを冷却する為のコイル冷却ファンと、前記調理室とダクトによって結合され周囲を断熱材で囲まれた冷却手段と、この冷却手段によってつくられた冷気を前記ダクトを通して前記調理室内に送り込む冷却ファンと、各電気機能部品の動作を制御する制御手段と、前記調理室底部の温度を検知する鍋底センサと、一連の調理における前記調理室内の調理温度、調理時間の複数の組み合わせによる調理プログラムを設定、または運転状態を表示する操作パネルとを備え、前記制御手段は、前記操作パネルによって設定された調理プログラムと、前記温度センサによる検知温度に基づき、前記誘導加熱コイルと前記冷却手段とを個別または同時に動作させ、前記調理室内の被調理物を調理するものである。
【0018】
これにより、調理開始直前までは被調理物をしばらく冷蔵または冷凍保存することができ、調理開始後は被調理物に適した方法で解凍や加熱調理を行い、最初に被調理物を前記調理室内に入れる以外の手間をかけずに高い調理品質の調理を行うことができる。
【0019】
請求項2に記載の発明は、前記調理室内に設けられたヒータと、このヒータの熱を庫内に攪拌する庫内ファンとを備え、誘導加熱コイルと前記ヒータとの2種類の加熱手段を用いて被調理物に適した調理を行うものである。
【0020】
これにより、前記誘導加熱コイルによる迅速な加熱と、前記ヒータによるコンベクションオーブン式の加熱との長所を使い分けることができ、より被調理物に適した調理を行うことができる。
【0021】
請求項3に記載の発明は、前記操作パネルによって調理終了時刻を予約出来る機能を備えたものである。
【0022】
これにより、予約された時刻に調理を終了させることができ、しかも、調理者は、調理プログラムの設定を行う際に、調理者が希望する調理終了時刻から逆算して調理時間を設定する必要がなく、設定を分かり易くすると共に設定誤りの可能性が減少するものである。
【0023】
請求項4に記載の発明は、前記調理プログラムを、予め制御手段内のメモリに記憶させ、調理品目を操作パネルにて選択することによって対応した調理プログラムに従い自動調理を行うものである。
【0024】
これにより、調理品目を選択するだけで自動調理を開始できることで、調理者は設定の手間を省くことができる。
【0025】
請求項5に記載の発明は、調理室内に庫内センサを備え、鍋底センサと共に調理室及び被調理物の温度管理を行うものである。
【0026】
その結果、調理室内の空気温度、または被調理物からの蒸気温度等を検知することで、被調理物の調理状態をより正確に把握することができる。
【0027】
請求項6に記載の発明は、特に第1から第5のいずれか1つの発明において、冷却手段と誘導加熱コイルの格納箇所間に風路を設け、冷却ファンからの冷却風は調理室内だけではなく前記誘導加熱コイルをも冷却できるものである。
【0028】
これにより、前記誘導加熱コイル冷却専用の手段を設ける必要が無く、低コストでの構成を可能とする。
【0029】
請求項7に記載の発明は、調理終了後の経過時間を表示するもので、これにより、調理者の事情により調理終了後に調理室内から被調理物を取り出せない事態が生じても、調理終了後の経過時間が分かり、被調理物の状態をある程度判断できる。
【0030】
請求項8に記載の発明は、前記調理装置と携帯電話との通信機能を備えたものであり、外出中の調理状態を確認したり、調理プログラムを変更したり、予約しておいた調理終了時刻の変更を行う等、遠隔地から調理状態の確認及び操作を行うことができる。
【0031】
以下、本発明のいくつかの実施の形態について図面を用いて説明するが、これらの実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0032】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1における調理装置の正面断面図、図2は同実施の形態における調理装置の側面断面図である。
【0033】
図1及び図2において、調理室1はオーブンレンジの調理室程度のサイズに構成されていて、内壁にはフッ素コーティングが行われた金属材料が用いられている。前記調理室1の周辺は、断熱材2で囲われており、また、扉3にも断熱材2が封入されている。前記扉3と調理室1との嵌合部には、耐熱性のパッキン4が設けられ、熱や冷気の漏れを遮断している。これらの断熱構造によって、加熱調理中の機体外部の温度上昇防止による安全性の向上と、冷却性能の向上及び機体の結露を防ぐ役割を担う。前記断熱材2は、低温から高温の幅広い範囲での耐久性を求められるため、グラスウール等を使用することが望ましい。
【0034】
誘導加熱コイル5は、前記調理室1の下部に設けられており、調理室1とはプレート6で仕切られている。前記誘導加熱コイル5は通電することで温度上昇するが、誘導加熱コイル5付近に備えたコイル冷却ファン7を回転し冷却する。
【0035】
冷却手段8は、コンプレッサ(ヒートポンプ)方式、またはペルチェ方式の冷却システムによって構成されている。この冷却手段8は、ダクト9によって調理室1と結合されており、このダクト9は送風用と吸い込み用の2種類で構成されている。前記調理室1を冷却する際には、冷却ファン10を回転させ、ダクト9を通して調理室1に冷風を循環させる。通常であれば、余分に開閉可能なダンパー等を設け、必要時以外は調理室1と冷却手段8を隔離する必要があるが、冷却手段8が調理室1の下部に設けられていることで、調理室1が高温時、又は冷却手段8が低温時にもお互いが影響を受けにくくなっており、開閉ダンパーを設ける必要はない。もしコスト性よりも性能を優先するならば、開閉ダンパーを設けることが望ましい。
【0036】
制御手段11aは、マイコン、リレー、メモリIC等によって構成された制御基板で、前記調理室1内の温度と調理プログラムとに基づき、あらゆる負荷の駆動処理を行う。前記メモリICは書き換えが可能なEEPROMなどが望ましく、このメモリICより調理プログラムの読み出し、または書込みを行う。操作パネル13aは、制御手段11a上に設けられており、液晶パネル等による表示部と複数のスイッチからなる操作部(いずれも図示せず)とで構成され、調理温度、調理時間の組み合わせを幾段階かに渡って設定することができる。例えば、低温から高温、そして高温から中温(低温→高温→中温)という連続した調理プログラムの設定を行うことが可能である。調理プログラム設定時は、設定内容を順に表示し、調理運転時は、調理温度及び残り時間や出来上がり時間等を表示し、それ以外のときは現在時刻を表示する。
【0037】
鍋底センサ12は、前記調理室1の下部中央に設けられており、前記制御手段11aは、この検知温度により駆動させる負荷を判別する。このセンサ12は、調理室1内で調理を行う際に用いる鍋やフライパン等の調理装置具の底面温度を検知することで、調理食材の温度の検知をも可能とする。前記鍋底センサ12が検知する温度は、低温から高温まで幅広く変動するため、鍋底センサ12にはこの範囲を正確に検知できるものが求められるが、1種類のセンサでの検知は困難であるため、低温用と高温用との2種類のセンサを併用する方法も考えられる。
【0038】
図3は本発明の実施の形態1における調理装置の調理プログラム設定例を示す説明図である。ここでは、野菜の煮物の自動調理について説明する。
【0039】
野菜の煮物を調理するにあたって、味の染込みを促進させ、通常よりも少ない調味料での健康的な料理とするために、「煮込みから冷却、そして再加熱(煮込み→冷却→再加熱)」のサイクルで調理を行う場合を例に説明する。
【0040】
例えば、調理者が7時に外出するとき、帰宅する19時にすぐに野菜の煮物を食べられるように自動調理の準備を行うとする。これは準備から12時間後を目標として設定を行う場合を想定している。調理者は設定準備さえ終えれば、後は調理が完了するまでこの調理装置に触れる必要はなく、睡眠をとろうとも、外出しようとも構わない。
【0041】
まず、調理者は操作パネル13aによって、ステップ1として保冷の設定を行う。保冷は調理を開始する前に食材が腐食してしまわないために必要な工程である。ここでは保冷温度は「5℃」と設定する。保冷時間は出来上がり予定時刻から逆算して「8時間10分」と設定する。ただし、食材が100℃に達するまでの時間は食材の量によって変化するため、ここでは約10分と想定して逆算を行っている。
【0042】
ステップ2で設定する「煮込み」の「30分」は、食材が100℃に達するまでの約10分を加算して40分として計算している。この想定時間によって出来上がりの時間には若干の誤差が生じてしまうが、もし予定時刻よりも早く調理が完了したとしても調理者が帰宅するまでの間、自動的に保温を行うので問題はない。
【0043】
次にステップ2として加熱の設定を行う。煮込み温度は「100℃」、煮込み時間は「30分」と設定する。
【0044】
次にステップ3として冷却の設定を行う。冷却温度は「65℃」、冷却時間は「3時間00分」と設定する。食材は60℃以下になると雑菌が発生しやすくなるため、安全な調理ができるように5℃のクリアランスを見て65℃とした。
【0045】
最後にステップ4として、再加熱の設定を行う。加熱温度は「100℃」、加熱時間は食材が100℃に達した時点で調理終了となるため設定する必要はない。
【0046】
以上の設定を終えて、数種類の野菜と調合した出し汁を入れた鍋を調理室1内に入れ、運転を開始する。
【0047】
まず、保冷が開始される。冷却手段8と冷却ファン10が動作し、調理室1内に冷気が送り込まれる。設定温度は「5℃」であるため、冷却ファン10は鍋底センサ12が4℃以下を検知すると停止し、5℃以上を検知すると再度動作を開始することで、調理室1内を5℃付近に保つ。保冷運転が8時間10分を経過するとステップ2に移る。
【0048】
煮込みが開始されると、誘導加熱コイル5に通電し、設定温度である「100℃」まで加熱する。誘導加熱コイル5は、鍋底センサ12の検知温度が100℃付近で安定するまで通電する。鍋底センサ12の検知温度が100℃付近で安定すると、次は設定した30分間の煮込みを行う。この間は誘導加熱コイル5への出力の調整、またはON/OFFを行い鍋底センサ12の検知温度が100℃になるように保つ。煮込みが30分を経過するとステップ3に移る。
【0049】
次に、冷却運転が開始されると、冷却手段8と冷却ファン10が動作し、調理室1内に冷気が送り込まれる。設定温度は「65℃」であるため、冷却ファン10は鍋底センサ12が65℃を検知するまで動作を継続し、65℃を検知すると停止する。この後は、鍋底センサ12の検知温度が63℃以下になると誘導加熱コイル5への通電を行い、68℃以上になると冷却手段8と冷却ファン10を動作し65℃を保つ。冷却運転が3時間を経過するとステップ4に移る。
【0050】
再加熱が開始されると、再度誘導加熱コイル5に通電し、設定温度である「100℃」まで加熱する。誘導加熱コイル5は鍋底センサ12の検知温度が100℃付近で安定するまで通電する。鍋底センサ12の検知温度が100℃付近で安定すると、自動調理運転を終了する。出来上がり後は、調理者が外出先から帰宅していない場合や、調理者が気付いていない場合を想定して鍋底センサ12の検知温度を80℃程度に保つように、誘導加熱コイル5への通電を行い、料理が冷めてしまわないように自動的に保温を行う。また、保温時間が30分を超えると食材の腐食を防止するために冷却運転を行い、鍋底センサ12の検知温度が5℃になるまで冷却する。
【0051】
以上のように本実施の形態においては、扉3と耐熱性の断熱材2を封入した断熱箱とにより構成された調理室1と、調理室1の下方に設けられた誘導加熱コイル5と、調理室1と誘導加熱コイル5とを隔離する非導電性のプレート6と、誘導加熱コイル5を冷却する為のコイル冷却ファン7と、調理室1とダクト9によって結合され周囲を断熱材で囲まれた冷却手段8と、この冷却手段8によってつくられた冷気をダクト9を通して調理室1内に送り込む冷却ファン10と、各電気機能部品の動作を制御する制御手段11aと、調理室1底部の温度を検知する鍋底センサ12と、一連の調理における調理室1内の調理温度、調理時間の複数の組み合わせによる調理プログラムを設定、または運転状態を表示する操作パネル13aとを備え、制御手段11aは、操作パネル13aによって設定された調理プログラムと、鍋底センサ12による検知温度に基づき、誘導加熱コイル5と冷却手段8とを個別または同時に動作させ、調理室1内の被調理物を調理するもので、調理開始直前までは被調理物をしばらく冷蔵または冷凍保存することができ、調理開始後は被調理物に適した方法で解凍や加熱調理を行い、最初に被調理物を前記調理室1内に入れる以外の手間をかけずに高い調理品質の調理を行うことができる。
【0052】
(実施の形態2)
図4は本発明の実施の形態2における調理装置の正面断面図、図5は同調理装置の側面断面図である。
【0053】
図4及び図5において、ヒータ14は調理室1内に設けられており、これにはシーズヒータや赤外線ヒータ等が使用されている。また、前記ヒータ14は1種類に限らず、例えばシーズヒータと赤外線ヒータの2種類を併用しても良い。前記ヒータ14の熱を調理室1内に攪拌するために庫内ファン15を回転する。また、庫内ファン15によって攪拌される熱風が万遍なく調理室1内を循環するように、ダクトプレート16に熱風の吹出し口、及び吸込み口が効率よく設けてある。制御手段11bは、実施の形態1の機能に加えてヒータ14を動作させるための構成を持つ。操作パネル12bは加熱運転を設定する際に、加熱温度と加熱時間との設定に加えて誘導加熱コイル5とヒータ14とのいずれかの加熱手段を選択できる機能が設けられている。
【0054】
先の実施の形態1では、誘導加熱コイル5のみによって加熱を行っていたが、本実施の形態では、加熱手段を誘導加熱コイル5とヒータ14とのいずれかを選択することができる。加熱運転を設定する際には、加熱温度と加熱時間との設定に加えて操作パネル13からいずれかの加熱手段を選択設定すればよい。
【0055】
誘導加熱コイル5とヒータ14との加熱方式にはそれぞれに利点がある。誘導加熱コイル5が加熱のスピードに優れていることに対して、ヒータ14によるコンベクションオーブン形式の加熱は、例えば煮物調理を行う際に鍋を全周囲から加熱するため、鍋の中で対流が起きず煮崩れをしない。よって長時間の煮込みや中温での食材の保持にはヒータ14による加熱が有効である。また、煮込み料理に限らずグラタン等のオーブン料理をも自動調理できるようになる。
【0056】
以上のように本実施の形態においては、先の実施の形態に加えて前記調理室1内に設けられたヒータ14と、このヒータ14の熱を庫内に攪拌する庫内ファン15とを備え、誘導加熱コイル5とヒータ14との2種類の加熱手段を用いて被調理物に適した調理を行うもので、前記誘導加熱コイル5による迅速な加熱とヒータ14によるコンベクションオーブン式の加熱との長所を使い分けることで、より被調理物に適した調理を行うことができる。
【0057】
(実施の形態3)
図6は本発明の実施の形態3における調理装置の表示操作部の概略図である。
【0058】
図6において、制御手段11cは、実施の形態1または実施の形態2の機能に加えて、操作パネル13cによって設定された調理完了予約時間に調理を完了できるように運転時間を算出し自動調理を行う機能を備えている。
【0059】
例えば、調理者が外出前7時に、帰宅時間である19時に調理が完了するように予約を行うとする。自動調理はaからgまでのステップで行われ、ステップaは調理前の保冷、ステップbは100℃に到達するまでの加熱、ステップcは煮込み、ステップdは味の染込みを促進させるための冷却、ステップeは調理完了に向けての再加熱、ステップfは調理完了予約時間に調理者が不在のときの保温、ステップgは後に前記ステップeの値を修正するために60℃から100℃に達するまでの時間を計数したものである。
【0060】
調理者は操作パネル13cによって一連の調理プログラムを設定する。まず、ステップaの設定を「沸騰」と選択する。次にステップcの設定を「100℃」、「30分」と入力する。次にステップdの設定を「65℃」、「3時間」と入力する。さらにステップeの設定を「沸騰」と選択する。最後に「タイマ予約」スイッチを押し、出来上がり時間を「19:00」と設定する。以上の操作で設定は完了である。
【0061】
ここで、前記各ステップa、b、eの調理時間が設定されていないが、ステップbは仮に「10分」、ステップeは仮に「5分」として、ステップaの保冷時間を計算する。今回は「19時−7時−(ステップb10分+ステップc30分+ステップd3時間+ステップe5分)」がステップa保冷時間となる。
【0062】
運転を開始すると、ステップaの保冷が開始され、やがてステップbへと移行する。ステップbの時間は仮に10分としているが、この時間で沸騰するとは限らない。もし、ステップbで8分で沸騰した場合は、誤差の2分をステップdの時間に加算する。また、ステップbにて65℃〜100℃までに掛かる時間を計数し、この時間をステップgとしてステップeで仮に設定した「5分」と置き換える。もしステップgが4分で完了した場合は誤差の1分をステップdの時間に加算する。
【0063】
このように不特定の値は運転中に修正を加えながら、設定した出来上がり時間に正確に調理完了することができる。
【0064】
以上のように本実施の形態においては、先の実施の形態における調理装置に加えて、操作パネル13cによって調理終了時刻を予約出来る機能を備え、予約された時刻に調理を終了させるもので、調理者は調理プログラムの設定を行う際に、調理者が希望する調理終了時刻から逆算して調理時間を設定する必要がなく、設定を分かり易くすると共に設定誤りの可能性を減少させる。
【0065】
(実施の形態4)
図7は本発明の実施の形態4における調理装置の表示操作部の概略図である。
【0066】
図7において、制御手段11d内のメモリは、予め調理品目ごとの調理プログラムを記憶しており、操作パネル13dによって、調理品目を選択することで、制御手段11dは対応した調理プログラムを読み出して調理を行う。
【0067】
制御手段11d内のメモリに記憶されている調理プログラムは、調理装置メーカーによって予め記憶されており、調理者が設定する必要はない。
【0068】
図8は本発明の実施の形態4における調理装置の調理品目の分類を示す図である。
【0069】
まず、調理者は操作パネル13dの「自動調理」スイッチを押す。すると、調理品目に対応した番号が表示される。例えば「筑前煮」「野菜煮」「おでん」等の煮込み料理を行いたいときは、プログラム番号「1」を選択するだけでよい。
【0070】
調理品目の選択を終了後、もし出来上がり希望時刻を設定したければ操作パネル13d上の「タイマ予約」スイッチを押して出来上がり時刻を設定し運転を開始する。
【0071】
以上のように、本実施の形態においては、先の実施の形態に加えて調理プログラムが予め制御手段11d内のメモリに記憶されており、調理品目を操作パネル13dにて選択することによって対応した調理プログラムに従い自動調理を行うもので、調理品目を選択するだけで自動調理を開始でき、調理者は設定の手間を省くことができる。
【0072】
(実施の形態5)
図9は本発明の実施の形態5における調理装置の側面断面図である。
【0073】
図9において、庫内センサ17は庫内上部に取り付けられた温度サーミスタである。また、制御手段11eは庫内センサ17の検知温度に基づいて調理室1の庫内温度の制御と、加熱時に被調理物から発生した蒸気温度を検知することによる沸騰検知を行う。特に煮物調理を行う際、煮汁の温度が沸点に近づくと、水蒸気によって庫内センサ17の温度は急激に上昇をする。この温度勾配と鍋底センサ12の検知温度によって、より正確に沸騰の検知を行うことができる。例えば、庫内温度センサ16の検知温度が急激に上昇し、かつ鍋底センサ12の検知温度が98℃以上のときに沸騰の検知を行う。
【0074】
また、鍋底センサ12だけではなく、庫内センサ17による庫内温度の制御もできることから、コンベクションオーブンとしての機能もより優れたものとなる。
【0075】
以上のように本実施の形態においては、先の実施の形態に加えて調理室1内に庫内センサ17を備え、鍋底センサ12と共に調理室1及び被調理物の温度管理を行うもので、調理室1内の空気温度、または被調理物からの蒸気温度等を検知することで、被調理物の調理状態をより正確に把握することができる。
【0076】
(実施の形態6)
図10は本発明の実施の形態6における調理装置の正面断面図である。
【0077】
図10において、吸込口18は、冷却ファン10の風路上に設けてあり、多少の冷気が誘導加熱コイル5を通過するようになっている。冷却手段8による冷気は、吸込口18から誘導加熱コイルを通過冷却し、吐出口19より冷却手段8へと循環する。
【0078】
誘導加熱コイルの冷却は、コイル冷却ファン7のようなもので行うのが通常であるが、冷却手段8の冷気を利用することで、冷却ファン7を省くことができる。
【0079】
以上のように本実施の形態においては、先の実施の形態に加えて冷却手段8と誘導加熱コイル5の格納箇所間に風路を設け、冷却ファン10からの冷却風は調理室1内だけではなく誘導加熱コイル5をも冷却できるもので、誘導加熱コイル5冷却専用の手段を設ける必要が無く、低コストでの構成を可能とする。
【0080】
(実施の形態7)
図11は本発明の実施の形態7における調理装置の表示操作部の概略図である。
【0081】
図11において、操作パネル13eは、制御手段11fが計数した調理終了後の経過時間を表示する。
【0082】
調理が終了すると、基本的には保冷や保温を行い、調理者が調理完了に気付かずに放置しておいても被調理物の品質を落とさないように制御する。しかし、それでも時間が経つことで被調理物が固くなってしまったり、やわらかくなりすぎたりと徐々にではあるが品質の低下は免れない。調理者は調理後の経過時間を見て、被調理物がまだ美味しく食べられるのか否かをある程度判断することができる。
【0083】
以上のように本実施の形態においては、先の実施の形態に加えて調理終了後の経過時間を表示するもので、調理者の事情により調理終了後に調理室1内から被調理物を取り出せない事態が生じても、調理終了後の経過時間が分かることで、被調理物の状態をある程度判断できる。
【0084】
(実施の形態8)
図12は本発明の実施の形態8における調理装置のブロック図である。
【0085】
図12において、先の実施の形態における調理装置に、通信モジュール20を接続する構成としたものである。これによって、基地局21を介して携帯電話のディスプレイ22に調理装置のデータを転送することができる。
【0086】
例えば調理者が外出中に携帯電話によって現在までの調理状況を確認したり、以降の調理プログラムの変更を行ったり、調理完了時間の変更を行うことができる。
【0087】
以上のように本実施の形態においては、先の実施の形態に加えて調理装置と携帯電話との通信機能を備えたもので、外出中の調理状態を確認したり、調理プログラムを変更したり、予約しておいた調理終了時刻の変更を行う等、遠隔地から調理状態の確認及び操作を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明の調理装置は、誘導加熱コイルとヒータと冷却手段とを備え、2種類の加熱方法と冷却手段を持ちあらゆる温度帯での調理を可能としている。よって、煮物調理、冷凍食品、焼き魚等の調理も可能であり、また、加熱調理が完了した食材を本発明の調理装置で冷凍保存して次の日の朝に出来上がるように再加熱調理を行う等使用用途は幅広い。また、調理室が大きくなるように構成し、レストラン等で業務用として使用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明の実施の形態1における調理装置の正面断面図
【図2】同調理装置の側面断面図
【図3】同調理装置における調理プログラム設定例を示す説明図
【図4】本発明の実施の形態2における調理装置の正面断面図
【図5】同調理装置の側面断面図
【図6】本発明の実施の形態3における調理装置の表示操作部の概略図
【図7】本発明の実施の形態4における同調理装置の表示操作部の概略図
【図8】同調理装置の調理品目の分類を示す図
【図9】本発明の実施の形態5における調理装置の側面断面図
【図10】本発明の実施の形態6における調理装置の正面断面図
【図11】本発明の実施の形態7における調理装置の表示操作部の概略図
【図12】本発明の実施の形態8における調理装置のブロック図
【符号の説明】
【0090】
1 調理室
2 断熱材
3 扉
4 パッキン
5 誘導加熱コイル
6 プレート
7 コイル冷却ファン
8 冷却手段
9 ダクト
10 冷却ファン
11a 制御手段
11b 制御手段
11c 制御手段
11d 制御手段
11e 制御手段
11f 制御手段
12 鍋底センサ
13a 操作パネル
13b 操作パネル
13c 操作パネル
13d 操作パネル
13e 操作パネル
14 ヒータ
15 庫内ファン
16 ダクトプレート
17 庫内センサ
18 吸込口
19 吐出口
20 通信モジュール
21 中継基地
22 ディスプレイ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
扉と耐熱性の断熱材を封入した断熱箱とにより構成された調理室と、前記調理室の下方に設けられた誘導加熱コイルと、前記調理室と前記誘導加熱コイルとを隔離する非導電性のプレートと、前記誘導加熱コイルを冷却する為のコイル冷却ファンと、前記調理室とダクトによって結合され周囲を断熱材で囲まれた冷却手段と、この冷却手段によってつくられた冷気を前記ダクトを通して前記調理室内に送り込む冷却ファンと、各電気機能部品の動作を制御する制御手段と、前記調理室底部の温度を検知する鍋底センサと、一連の調理における前記調理室内の調理温度、調理時間の複数の組み合わせによる調理プログラムを設定、または運転状態を表示する操作パネルとを備え、前記制御手段は、前記操作パネルによって設定された調理プログラムと、前記温度センサによる検知温度に基づき、前記誘導加熱コイルと前記冷却手段とを個別または同時に動作させ、前記調理室内の被調理物を調理する調理装置。
【請求項2】
前記調理室内に、ヒータと、このヒータの熱を庫内に攪拌する庫内ファンとを備え、前記誘導加熱コイルと前記ヒータとの2種類の加熱手段を用いて被調理物に適した調理を行う請求項1に記載の調理装置。
【請求項3】
前記操作パネルに、調理終了時刻の予約機能を備え、予約された時刻に調理を終了させる請求項1または2に記載の調理装置。
【請求項4】
前記調理プログラムは、予め制御手段内のメモリに記憶されており、調理品目を操作パネルにて選択することによって対応した調理プログラムに従い自動調理を行う請求項1から3のいずれか一項に記載の調理装置。
【請求項5】
前記調理室内に庫内センサを備え、鍋底センサと共に調理室及び被調理物の温度管理を行う請求項1から4のいずれか一項に記載の調理装置。
【請求項6】
前記冷却手段と誘導加熱コイルの格納箇所間に風路を設け、前記冷却ファンからの冷却風は調理室内だけではなく、前記誘導加熱コイルをも冷却する請求項1から5のいずれか一項に記載の調理装置。
【請求項7】
前記操作パネルに、調理終了後の経過時間を表示する請求項1から6のいずれか一項に記載の調理装置。
【請求項8】
携帯電話により前記制御手段を制御する通信機能を備えた請求項1から7のいずれか一項に記載の調理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−108022(P2006−108022A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−295946(P2004−295946)
【出願日】平成16年10月8日(2004.10.8)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】