説明

識別コードの形成方法

【課題】不良のワイヤーボンディングマシンを識別する所要時間を短縮可能な識別コードの形成方法を提供する。
【解決手段】複数のボンディングパッド111を有するチップ110は、複数のフィンガー121を有する搭載体120に設置される。搭載体120上に一本の二進法コード基準ライン130を設定し、二進法コード基準ライン130によりフィンガー121群を第1コード区域122と第2コード区域123とに区切る。ワイヤーボンディング方式でボンディングパッド111群とフィンガー121群とを電気接続するボンディングワイヤ140群は、フィンガー121群の第1コード区域122または第2コード区域123の何れかと接合して、ワイヤーボンディングマシンの識別コードを構成する。このような方法によると、不良のワイヤーボンディングマシンを前記識別コードにより迅速に追跡することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体実装過程に利用可能な識別コードの形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
IC(Integrate Circuit)チップとチップ搭載体との電気接続方式は、何種類もある。例えば、ワイヤーボンディング、テープ自動ボンディング、フリップチップボンディング等の方式がよく使用されているが、半導体実装工程においてチップと基板との間の接続に最も利用される接続方式は、ワイヤーボンディング技術である。ワイヤーボンディング工程では、基板、またはリードフレームを外部接続用にして、ボンディングワイヤを介して前記基板、またはリードフレームのインナフィンガー、またはインナリードとチップのボンディングパッドとをワイヤーボンディング技術で電気接続している。
【0003】
ワイヤーボンディングマシンは、既に半導体パッケージ工場で使用され、その数量も多く増えている。中華民国国内工業技術研究院の調査によると、半導体パッケージ工場内にあるウエハーダイシングマシン、ダイアタッチングマシン、ワイヤーボンディングマシンのそれぞれの数量は、約1対4対16の比率であり、ワイヤーボンディングは自動または半自動化方式で行っている。
【0004】
従来のワイヤーボンディング工程において、設定ミスによるボンディングワイヤの接合不良や他のボンディング問題が発生した場合、人力を使って沢山のワイヤーボンディングマシンの中から不良のマシンを発見するのは困難であった。さらに、迅速に不良のマシンを見付けなければ後続にワイヤーボンディングミスが継続され材料損失になってしまうという問題があった。
【0005】
従って、不良のワイヤーボンディングマシンを迅速に追跡することができるような識別機能を備える設備や方法の開発は、重要な課題となる。簡単にバーコード(barcode)または外部識別コードをチップ搭載体に接着させだけでは、半導体実装工程を進行中のバーコードまたは外部識別コードには、紛失、損傷、または汚染等の問題が容易に生じる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の主な目的は、不良のワイヤーボンディングマシンを追跡可能な識別コードの形成方法を提供することにある。
また、本発明のもう一つの目的は、ワイヤーボンディング工程中に形成可能な識別コードの形成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するために本発明による識別コードの形成方法は次のステップを含む。
先ず、複数のボンディングパッドを有するチップを用意し、前記チップを搭載体に設置する。前記搭載体は、複数のフィンガーを有し、前記搭載体の上に一本の二進法コード基準ラインを設定する。
前記二進法コード基準ラインは、前記フィンガー群を区切ることにより、前記フィンガー群を前記ボンディングパッド群に近接する第1コード区域、および前記ボンディングパッド群から遠い第2コード区域に分ける。
【0008】
最後に、ワイヤーボンディング方式で複数のボンディングワイヤを形成し、前記ボンディングワイヤ群を用いて前記ボンディングパッド群と前記フィンガー群とを電気接続する。
ここでは、前記ボンディングワイヤ群は前記フィンガー群の一端と接続する場合、前記フィンガー群にある前記第1コード区域および前記第2コード区域の何れかと任意に接合することによって識別コードを構成している。
【0009】
前記識別コードは、長さが異なる前記ボンディングワイヤ群から構成することができる。
前記ボンディングワイヤ群は、少なくとも一本の長いボンディングワイヤを有する。前記長いボンディングワイヤは、前記二進法コード基準ラインを越えて前記第2コード区域と接続して「1」と識別する。
【0010】
前記ボンディングワイヤ群は、少なくとも一本の短いボンディングワイヤを有する。前記短いボンディングワイヤは、前記二進法コード基準ラインを越えず前記第1コード区域と接続して「0」と識別する。
前記二進法コード基準ラインは、直線であってもよい。
【0011】
前記搭載体として、リードフレームを使用してもよい。このとき、前記フィンガー群は前記リードフレームにある複数のリードの内端に形成する。
また、前記搭載体として、基板を使用してもよい。
【0012】
前記二進法コード基準ラインは、前記フィンガー群を等分することができる。
また、少なくとも一つの前記フィンガーはT字形のようになってもよい。
あるいは、少なくとも一つのフィンガーは十字形のようになってもよい。
【0013】
このように、搭載体の上に一本の二進法コード基準ラインを設定し、ワイヤーボンディングマシンを用いて長さが異なる複数のボンディングワイヤにより形成された本発明による識別コードは、不良のワイヤーボンディングマシンの追跡に使用され、不良のワイヤーボンディングマシンを識別する所要時間を短縮する。また、後続のワイヤーボンディングの不良を防止し、材料の損失を低減し、製造品の良品率を向上させる。さらに、半導体実装工程の進行中に、識別コードの損失、損傷あるいは汚染等が生じる問題がない。
【0014】
また、このような本発明による識別コードの形成ステップは、上述のようにワイヤーボンディング工程中に実施することができる。そのため、製造ステップを増やすこと無くワイヤーボンディングマシンの不良を迅速に識別することができる。このように製造過程との整合による極めて便利な方式で形成した識別コードは、汚染を起こさず良品率にも影響を及ぼさない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
(一実施形態)
本発明の一実施形態について、図1から図4を参照して説明する。
図1に示すように、本実施形態による識別コードの形成方法は、主に「チップを用意する」ステップ11、「チップを搭載体に設置する」ステップ12、「搭載体の上に一本の二進法コード基準ラインを設定する」ステップ13、「ワイヤーボンディング方式で複数のボンディングワイヤの形成と同時に識別コードを構成する」ステップ14等を含む。
【0016】
先ず、ステップ11において、チップを用意する。図2および図3に示すように、チップ110は主面112を備え、チップ110の外部接続用電極として主面112には複数のボンディングパッド111を設置する。ボンディングパッド111は、チップ110の主面112の側面、その反対の側面、あるいは周囲の側面に配列することができる。チップ110は、シリコン、ガリウムヒ素(gallium arsenide)あるいは他の半導体材質を採用して製作することができる。
【0017】
次に、ステップ12において、チップを搭載体に設置する。図2に示すように、チップ110を搭載体120の上表面に設置する。本実施形態において、例えば、B‐ステージ樹脂、粘着性フィルム、エポキシ、非導電樹脂あるいは液状樹脂等を用いたダイアタッチングフィルム150によって、チップ110を搭載体120の上表面に接着する。
【0018】
図3に示すように、搭載体120は複数のフィンガー121を備える。本実施形態において、搭載体120にはリードフレームを使用することができ、フィンガー121群はリードフレームにある複数のリードの内端に形成する。各リード124はフィンガー121を有している。フィンガー121群は、チップ110の周辺に形成するので、ボンディングパッド111群と便利に電気接続することができる。
なお、図3に示すように、少なくともフィンガー121はT字形のようになり、あるいは少なくとも一つのフィンガー121は十字形(例えば、48号リード)のようにすることができる。
また、他の実施形態において、搭載体120として、基板、印刷回路基板、回路薄膜または各種のチップ載板を使用してもよい。
【0019】
次に、ステップ13において、搭載体の上に一本の二進法コード基準ラインを設定する。図2および図3に示すように、二進法コード基準ライン130は、フィンガー121群を区切っている。これにより、フィンガー121群に、ボンディングパッド111群に近接する第1コード区域およびボンディングパッド111群から遠い第2コード区域を設ける。
二進法コード基準ライン130は直線であってもよく、例えば、識別マシンによって同時に設定される仮直線、または搭載体120上にエッチングあるいは敷設で形成される実線である。
【0020】
また、二進法コード基準ライン130は、フィンガー121群を等分することが好ましい。つまり、二進法コード基準ライン130は、フィンガー121群の中心に位置するので、フィンガー121群は2つのコード区域(第1コード区域122と第2コード区域123)に等分されてワイヤーボンディングを行うときに便利である。
しかしながら、二進法コード基準ライン130がフィンガー121群の中心に位置することは必ずしも必要ではなく、需要に応じ第1コード区域122と第2コード区域123とが占める比率を調整することもできる。
【0021】
最後に、ステップ14において、ワイヤーボンディング方式で複数のボンディングワイヤの形成と同時にワイヤーボンディングマシンの識別コードを構成する。図2および図3において、ワイヤーボンディング技術を用い複数のボンディングワイヤ140を形成する。ボンディングワイヤ140群の両端は、ボンディングパッド111群とフィンガー121群とにそれぞれ接続され、これによりチップ110と搭載体120とは相互に電気接続される。
ここで、ボンディングワイヤ140群はフィンガー121群の一端と接続する場合、フィンガー群にある第1コード区域122および第2コード区域123の何れかと任意に接続することによって、ワイヤーボンディングマシンの識別コードを構成している。
【0022】
具体的に言うと、ワイヤーボンディングマシンの識別コードは、長さが異なるボンディングワイヤ140群から構成する。通常、ボンディングワイヤ140群は、少なくとも一本の長いボンディングワイヤ141を有し、長いボンディングワイヤ141を、二進法コード基準ライン130を超えて第2コード区域123と接続することで、識別コード「1」として識別する。
【0023】
一方、ボンディングワイヤ140群は、少なくとも一本の短いボンディングワイヤ142を有し、短いボンディングワイヤ142は、二進法コード基準ライン130を越えず第1コード区域122と接続することで識別コード「0」として識別する。
また、設定規則の相違により、識別コードを置き換えることができ、例えば、二進法コード基準ライン130を越える長いボンディングワイヤ141を識別コード「0」とし、二進法コード基準ライン130を越えない短いボンディングワイヤ142を識別コード「1」として識別してもよい。
【0024】
各ワイヤーボンディングマシンには識別コードが設けられ、このワイヤーボンディングマシンの識別コードにより、搭載体120にワイヤーボンディングマシンの識別コードをワイヤーボンディング方式で形成する。
即ち、上述のワイヤーボンディングマシンの識別コードの形成は、電気接続のワイヤーボンディング工程と同時に行うことができるため、余分にバーコードの貼着、あるいは外部からの識別コードを追加する必要性がない。
【0025】
本実施形態において、図3および図4に示すように、ワイヤーボンディングマシン番号が1である場合、48号リード124の上に「1」を表す長いボンディングワイヤ141をワイヤーボンディングで形成し、残るリード124の上に「0」を表す短いボンディングワイヤ142をワイヤーボンディングで形成する。このように、ワイヤーボンディングマシンの識別コード「1」は、搭載体120のボンディングワイヤ140群が1号ワイヤーボンディングマシンにより形成されることを示している。
【0026】
また、他の例で説明すると、図3に示すように、48号リードのボンディングワイヤ140は識別コード「1」を表す長いボンディングワイヤ141とし、47号リードのボンディングワイヤ140は識別コード「1」を表す長いボンディングワイヤ141とし、46号リードのボンディングワイヤ140は識別コード「0」を表すい短いボンディングワイヤ142とし、45号リードのボンディングワイヤ140は識別コード「1」を表す長いボンディングワイヤ141とし、44号リードのボンディングワイヤ140は識別コード「0」を表す短いボンディングワイヤ142とする。よって、上述のボンディングワイヤ140群から構成されるワイヤーボンディングマシンの識別コードは「01011」のようになっている。
【0027】
ワイヤーボンディングマシンの識別コード「01011」は、二進法で表現される二進数であり、この二進法では演算の基本単位としてのビット(bit)を使用し、各ビットは0と1だけで数を表している。
二進数を十進数に変換する方法は、例えば、二進数の1011を十進数に変換する場合、先ず最下位(最右側)の桁から20、21、22、23……の重みをつける。従って、二進数の1011は1011=1×23+0×22+1×21+1×20=11となり、これは十進数の11に相当する。
【0028】
本実施形態において、前記ワイヤーボンディングマシンの識別コード「01011」は01011=0×24+1×23+0×22+1×21+1×20=11となり、これは、搭載体120のボンディングワイヤ140群が11号ワイヤーボンディングマシンにより形成さたことを示している。同様に、上述のように他のワイヤーボンディングマシンの識別コードも確認することができる。48本全部のリード124によると、248‐1の数のワイヤーボンディングマシンを識別することができる。
【0029】
このように本実施形態による識別コードの形成方法によると、ワイヤーボンディング工程を行い、同時に上述のワイヤーボンディングマシンの識別コードを形成することができる。それはチップ110と搭載体120との上に、長さが異なる複数のボンディングワイヤとして構成し、各搭載体が何号のワイヤーボンディングマシンを介してワイヤーボンディングが行われたかを判別できる。
【0030】
ワイヤーボンディングで形成されたボンディングワイヤの品質に問題がある場合、ワイヤーボンディングマシンの識別コードによって短時間に不良のワイヤーボンディングマシンを見つけてその作業を停止させ、検査および修理を実行し、後続にワイヤーボンディングミスが継続されることを避けることができる。
以上、本発明をその好適な実施形態に基づいて説明したが、本発明の保護範囲は特許請求の範囲で限定されて、この保護範囲に基づいて、本発明の精神と範囲内に触れるいかなる変更や修正も本発明の保護範囲に属する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施形態による識別コードの形成方法を示すフローチャートである。
【図2】本発明の一実施形態による識別コードを示す断面図である。
【図3】本発明の一実施形態による識別コードを示す平面図である。
【図4】本発明の一実施形態による識別コードとリード番号とを示す説明図である。
【符号の説明】
【0032】
110:チップ、111:ボンディングパッド、112:主面、120:搭載体、121:フィンガー、122:第1コード区域、123:第2コード区域、124:リード、130:二進法コード基準ライン、140:ボンディングワイヤ、141:長いボンディングワイヤ、142:短いボンディングワイヤ、150:ダイアッタチングフィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のボンディングパッドを有するチップを用意するステップと、
複数のフィンガーを有する搭載体に前記チップを設置するステップと、
前記搭載体の上に設定した一本の二進法コード基準ラインによって、前記ボンディングパッド群に近接する第1コード区域と前記ボンディングパッド群から遠い第2コード区域とに前記フィンガー群を区切るステップと、
前記フィンガー群の前記第1コード区域または前記第2コード区域の何れかと前記ボンディングパッド群とをワイヤーボンディング方式で電気接続し、識別コードを構成するボンディングワイヤ群を形成するステップと、を含むことを特徴とする識別コードの形成方法。
【請求項2】
前記識別コードは、長さが異なる前記ボンディングワイヤ群から構成することを特徴とする請求項1に記載の識別コードの形成方法。
【請求項3】
前記ボンディングワイヤ群は少なくとも一本の長いボンディングワイヤを有し、前記長いボンディングワイヤは、前記二進法コード基準ラインを越えて前記第2コード区域と接続して「1」と識別することを特徴とする請求項1に記載の識別コードの形成方法。
【請求項4】
前記ボンディングワイヤ群は少なくとも一本の短いボンディングワイヤを有し、前記短いボンディングワイヤは、前記二進法コード基準ラインを越えず前記第1コード区域と接続して「0」と識別することを特徴とする請求項1に記載の識別コードの形成方法。
【請求項5】
前記二進法コード基準ラインは、直線であることを特徴とする請求項1に記載の識別コードの形成方法。
【請求項6】
前記搭載体としてリードフレームを使用し、前記フィンガー群は前記リードフレームにある複数のリードの内端に形成することを特徴とする請求項1に記載の識別コードの形成方法。
【請求項7】
前記搭載体として基板を使用することを特徴とする請求項1に記載の識別コードの形成方法。
【請求項8】
前記二進法コード基準ラインは、前記フィンガー群を等分することを特徴とする請求項1に記載の識別コードの形成方法。
【請求項9】
少なくとも一つのフィンガーは、T字形のようになっていることを特徴とする請求項1に記載の識別コードの形成方法。
【請求項10】
少なくとも一つのフィンガーは、十字形のようになっていることを特徴とする請求項1に記載の識別コードの形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−212461(P2009−212461A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−56615(P2008−56615)
【出願日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願人】(506292169)力成科技股▲分▼有限公司 (36)
【Fターム(参考)】