説明

警報器

【課題】内蔵する電池で操作する電池式CO警報器などの警報器において、余分な部品等を必要としない低コストで、衝撃等にも影響されない高信頼性を有し、簡単な操作で出荷モードを解除して本稼働モードにできるようにする。
【解決手段】出荷モードではCPU11の動作状態を「ストップ」とし、COセンサ回路12の電源をオフとする。点検用の押しボタンや点検紐でオン/オフする既存のスイッチ回路19のオンにより、CPU11を「高速」の操作状態とする。スイッチ回路19のオン状態が2秒以上継続されると、出荷モードを解除し、警報スピーカ1でブザー音と音声警報を発して、COセンサ回路12の電源をオンとする。このように、押しボタンの長押し操作と、ソフトウエアでモードを切り替える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内蔵した電池で動作する火災警報器やガス漏れ警報器、火災ガス漏れ警報器など、各種警報器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電池式の警報器は、在庫時の電池消耗を懸念して、電池を接続しない状態で出荷している。そのため、設置場所では、警報器の電池蓋を空けて電池を取り出し、電池のコネクタを回路基板上のコネクタに接続して再び電池蓋を閉めるという作業が必要になる。
【0003】
この場合、ドライバを使ってネジを緩め、再びネジを締める作業や小さなコネクタを基板上のコネクタに差し込むといった作業が、現場で設置を行う作業者にとっては負担になるという問題がる。また、ネジを紛失したり、コネクタが押しづらいなどの問題もある。
【0004】
このような問題を解消するものとして、例えば特開2005−165611号公報(特許文献1)に開示された警報器がある。この特許文献1の従来の警報器は、点検ヒモを引っ張り出すことでバネと磁石によるロック機構が作動し電源スイッチとしてのリードスイッチがオン状態となり、警報器が本稼働するものである。
【0005】
また、このような電源スイッチを設けるものとして、例えば図4のような構成が考えられる。図4(A) のものは、電池100と定電圧回路110との間に機械式の電源スイッチ120を設けたものであり、この電源スイッチ120をオン状態とすることでCPU130に電源が供給されて警報器が本稼働モードとなる。また、図4(B) のものは、電池100と定電圧回路110との間に押しボタンスイッチ140とトランジスタスイッチ150とを設け、押しボタンスイッチ140を押すとCPU130に電源が供給され、CPU130がトランジスタスイッチ150をオン状態とし、押しボタンスイッチ140を離してもCPU130への電源供給が維持され、警報器が本稼働モードとなる。
【特許文献1】特開2005−165611号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記特許文献1の従来の警報器では、機械式のロック機構が何らかの原因で破損した場合や、磁石とバネの機構が何らかの衝撃で誤動作してロックが外れた場合、あるいは点検ひもの操作時に何らかの原因でロックが外れた場合は、電源がオフとなってしまい、警報器が稼働しなくなるという問題がある。また、出荷輸送中等の衝撃、または点検ひもが何かに引掛かって電源がオンとなる場合があり、出荷時の電池消耗の防止という点で意味をなさなくなる。また、電源制御にリードスイッチを使用しているため、それに伴う周辺回路、部品(リードスイッチを含む)のコストが余分にかかるという問題がある。
【0007】
また、図4のようなものでは、電池に接続された専用の電源スイッチが必要となる。また、図4(B) のものでは、トランジスタスイッチ150を制御するため、本稼働中に消費電力が増えたり、CPU130が暴走した場合に電源が切れてしまうという問題もある。
【0008】
そこで、本発明は、余分な部品等を必要としない低コストで、衝撃等にも影響されない高信頼性を有し、簡単な操作で出荷モードを解除して本稼働モードとできる警報器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の警報器は、電源としての電池を内蔵し、該電池で稼働して設置領域の異常を監視し、異常が検出されたときに警報を出力する警報器であって、外部から手動操作可能なスイッチ手段と、プログラムで動作して当該警報器を制御する制御部とを備え、出荷モード時に前記制御部が出荷モードプログラムに基づいて前記スイッチ手段の操作状態を監視し、該スイッチ手段が所定時間連続してオン状態が検出されたときに本稼働して前記異常の監視動作を開始することを特徴とする。
【0010】
請求項1の警報器において、制御部はプログラム的にスイッチ手段の状態を監視し、外部からスイッチ手段を予め決められた所定時間以上、オン操作すれば、制御部がプログラム的に出荷モードから本稼働モードとなる。また、出荷モードのとき制御部はスイッチ手段の操作だけに反応すればよいので、制御部自体の電池消費もきわめて少ない。さらに、所定時間だけ連続してオン状態とならなければ本稼動しないので、衝撃などによる誤ったオン操作で誤動作しにくい。
【0011】
請求項2の警報器は、請求項1に記載の警報器であって、前記スイッチ手段は、点検動作を行うための点検スイッチであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の警報器によれば、制御部がプログラム的に出荷モードから本稼働モードとなるので、スイッチ手段として点検スイッチ等の既存のスイッチを用いることができ、余分なスイッチを必要としない。また、プログラム的に制御するので機械的なロック機構等を必要とせず、衝撃等にも影響されずに高い信頼性が得られる。さらに、所定時間だけ連続してオン状態とならなければ本稼動しないので、意図的な操作以外の、衝撃などによる誤ったオン操作で誤動作することを極力防止できる。
【0013】
請求項2の警報器によれば、請求項1の効果に加えて、点検スイッチを利用して、不要な部品を必要としない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図1は実施の形態の警報器の要部ブロック図である。この実施の形態の警報器は電池式CO警報器であり、制御部としてのCPU11を備えており、電池BはコネクタCを介して定電圧回路21に接続されて本体ケース内に配設されている。
【0015】
CPU11には、空気中のCO濃度を検出してCO濃度検出信号を出力するCOセンサ回路12、定電圧回路21の電圧低下を検知してCPU11に低下検出信号を出力する電池電圧低下検出回路13、視覚的な警報報知手段としてのLEDランプを点灯及び消灯する表示回路14、音響的な警報報知手段としての警報スピーカ1でブザー音及び音声の出力を行う音声出力回路15、警報スピーカ1の断線を検知してCPU11に断線検出信号を出力するスピーカ断線監視回路16、電源投入などによりCPU11にリセット信号を発生するCPUリセット回路17、CPU11が実行するプログラムや各種設定データを記憶しているメモリ回路18、点検ボタンとしての押しボタン2の操作によりオン/オフするスイッチ回路19、パーソナルコンピュータを接続してシリアル通信を行うためのシリアルインターフェース回路20、を備えている。なお、押しボタン2は本体ケースから外部に僅かに突出しており、外部から操作可能になっている。
【0016】
次に実施の形態の警報器のCPU11の制御による本稼働モードの概略動作について説明する。CPU11はCOセンサ回路12を監視しており、COセンサ回路12がCO濃度検出信号を出力すると、CPU11は表示回路14を制御してLEDランプの点滅等を行い、音声出力回路15を駆動して警報スピーカ1によりブザー音及び音声で警報を発する。なお、図示しない連動コネクタを介して他の警報器(連動器)が接続されている場合には、警報時に連動信号を出力する。さらに、この連動コネクタで他の警報器からの連動信号を受信すると、LEDランプの点滅やブザー音と音声による警報を発する。
【0017】
また、CPU11は、電池電圧低下検出回路13、スピーカ断線監視回路16の出力を監視しており、それぞれの監視回路で異常が検出されると、各機能の異常内容を緑警報ランプの点滅とブザー音と音声警報により通知する。また、本稼動モード時には、押しボタン2の操作によりスイッチ回路19でオンが検出されると、機器の点検、機能の異常内容の確認、警報音の停止等が行われる。
【0018】
この本稼働モードは、この警報器の製造及び検査後、出荷前の状態でもあり、この本稼働モードでパーソナルコンピュータからの要求コマンドを受けて、出荷モードに設定される。この出荷モードに設定したときは、警報スピーカ1でブザー音を発するとともにLEDランプ等の点滅を行う。
【0019】
一方、警報器を設置場所に設置して、押しボタン2を2秒以上押し続けると、スイッチ回路19の2秒以上のオン状態が検出され、出荷モードが解除されて本稼働モードになる。この出荷モードの解除時には、警報スピーカ1によるブザー音と音声警報(試験用)の通報、LEDランプのフラッシュ点滅等を行う。
【0020】
図2は出荷モードを解除する時のタイミングチャートであり、図2(A) は解除有効時の場合、図2(B) は解除無効の場合を示す。出荷モードのときは、COセンサ回路12の電源がオフとされ、CPU11の動作が停止(ストップ)されることにより、低消費電力状態となっている。また、電池電圧低下検出回路13、スピーカ断線監視回路16の駆動も停止され、低消費電力状態となる。ただし、CPU11の動作が停止されていても、スイッチ回路19がオンとなると、CPU11には強制割込みが発生し、CPU11は後述の割込み処理を行う。
【0021】
まず、図2(A) に示すように、CPU11の動作状態は「ストップ」となっている。また、スイッチ回路19はオンで出力信号が「Low(ローレベル)」、オフで出力信号が「Hi(ハイレベル)」)となる。押しボタン2の操作でスイッチ回路19がオンとなると、スイッチ回路19の出力信号の立ち下がり(オンイベント)によりCPU11の動作状態は「高速」となり、後述の割込み処理を開始する。そして、所定時間として2秒間の計時を開始し、2秒間以上スイッチ回路19のオン状態(Low)が継続されると、動作モードを本稼働モードに設定し、COセンサ回路12も電源をオンにする。また、警報スピーカ1でブザー音及び音声警報(試験用)を発し、LEDランプをフラッシュ点滅させる。なお、この本稼動モードによりCPU11の動作状態は「高速」で確定する。
【0022】
なお、図2(B) に示すように、スイッチ回路19の最初の出力信号の立ち下がり(オンイベント)から2秒間以内に立ち上がり(オフイベント)が検出されると、すなわち、押しボタン2が2秒以上押し続けられなかった場合は、CPU11の動作状態が「ストップ」となり、そのまま出荷モードが継続される。
【0023】
図3はスイッチ回路19の最初の立ち下がり(オンイベント)で起動される割込み処理のフローチャートであり、該割込み処理が開始されると、ステップS1で2秒タイマを起動し、ステップS2でスイッチ回路19の出力信号の立ち上がり(オフイベント)が検出されるか判定するとともに、検出されなければステップS3で2秒タイマがタイムアップしたかを判定し、タイムアップしなければステップS2に戻る。
【0024】
そして、2秒タイマがタイムアップする前にスイッチ回路19の出力信号の立ち上がりが検出されれば、ステップS4でCPU11の動作状態を「ストップ」にして、出荷モードのまま終了する。一方、スイッチ回路19の立ち上がりが検出されないまま2秒タイマがタイムアップすると、ステップS5で、動作モードを本稼働モードとし、COセンサ回路12の電源をオンにし、さらに、各監視回路を駆動状態とする。次に、ステップS6で警報スピーカ1でブザー音を発し、ステップS7でLEDランプのをフラッシュ点滅させ、ステップS8で警報スピーカ1で音声警報(試験用)を発し、この割込み処理から復帰して、前記本稼働モードの動作を行うためのプログラムに処理に移行する。
【0025】
以上の処理により、警報器を設置場所に設置して、押しボタン2を2秒間以上押し続けるという簡単な操作(長押し操作)だけで、出荷モードが解除され、本稼働モードになる。また、電池Bを本体ケース内に接続及び内蔵した状態でも、出荷モード時には低消費電力状態となっているので、電池Bの消耗を防止できる。また、スイッチ回路19、押しボタン2という、点検操作を行うためのスイッチ手段を利用しているので、余分な部品を必要とせず、衝撃等にも影響されない。なお、スイッチ回路19は点検紐等を引っ張ることによりオンとなるような構成でもよい。この場合、点検紐を長く(2秒以上)引っ張ることで出荷モードが解除される。
【0026】
このように、出荷モード時に、CPU11はスイッチ回路19からの信号監視のみを行っている。この出荷モードでは、COセンサ回路12の駆動や電池電圧低下検出回路13の駆動などは行わないため、消費電流を最低限(約10μA)に抑えることができる。なお、出力モードの状態でいるのは、例えば在庫期間のように長くて半年くらいである。例えば前掲の図4(B) のように押しボタンスイッチ140とトランジスタスイッチ150とを設ける例では、トランジスタスイッチ150がオンしているときの電流を10μAとすると(電池電圧が6V、トランジスタを安定動作さえるための抵抗を数百kΩとする)、この警報器の使用期間中(3年間〜5年間)、その電流が余分に流れることになるので、上記実施形態のように出荷モードで半年間のほうが、明かに電池の消耗が少ない。
【0027】
以上の実施の形態では、所定時間として2秒間を例に説明したが、所定時間は2秒以上、2秒以下でもよい。ただし、ある程度の時間をかけるほうが、誤動作回避にはてきしている。
【0028】
また、実施の形態では電池式CO警報器を例に説明したが、本発明は、内蔵した電池で動作するものであれば、火災警報器、ガス漏れ警報器、火災ガス漏れ警報器など、各種警報器にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施の形態の警報器の要部ブロック図である。
【図2】実施の形態における出荷モードを解除する時のタイミングチャートである。
【図3】実施の形態における割込み処理のフローチャートである。
【図4】電池に接続される電源スイッチを設けた回路構成の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0030】
2 押しボタン(スイッチ手段)
11 CPU
12 COセンサ回路
19 スイッチ回路(スイッチ手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源としての電池を内蔵し、該電池で稼働して設置領域の異常を監視し、異常が検出されたときに警報を出力する警報器であって、
外部から手動操作可能なスイッチ手段と、プログラムで動作して当該警報器を制御する制御部とを備え、
出荷モード時に前記制御部が出荷モードプログラムに基づいて前記スイッチ手段の操作状態を監視し、該スイッチ手段が所定時間連続してオン状態が検出されたときに本稼働して前記異常の監視動作を開始することを特徴とする警報器。
【請求項2】
前記スイッチ手段は、点検動作を行うための点検スイッチであることを特徴とする請求項1に記載の警報器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−241930(P2007−241930A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−67143(P2006−67143)
【出願日】平成18年3月13日(2006.3.13)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】