説明

負圧システム

【課題】負圧検出手段の異常を簡易な構成で検出することが可能な負圧システムを提供する。
【解決手段】負圧システム24では、アクチュエータ12の駆動によって負圧を発生する負圧ポンプ60と、負圧ポンプ60と接続され、ブレーキペダル18への操作入力を倍力する負圧式倍力装置20と、負圧式倍力装置20の負圧室200に接続され、負圧室200の圧力を検出する圧力検出手段40と、アクチュエータ12の作動時間又は作動状態及び圧力検出手段40の検出値に基づいて圧力検出手段40の異常を判定する異常判定手段26とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、負圧を発生させることでブレーキペダルの操作を補助する負圧システムに関し、より詳細には、前記負圧を検出する負圧検出手段の異常を判定することが可能な負圧システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ブレーキペダルを備えるブレーキ装置では、ブレーキペダルの操作を補助するため、油圧システムと負圧システムを用いることが広く行われている。油圧システムは、マスタシリンダとホイールシリンダを結ぶ配管中の油圧(ブレーキ液圧)を複数の弁などにより調整することでブレーキペダルの操作を補助する。また、負圧システムは、ブレーキペダルの操作に合わせてバキュームポンプ等により負圧を発生させることで、ブレーキペダルの操作を補助する(非特許文献1及び特許文献1)。
【0003】
非特許文献1では、負圧センサ(7)が検出した負圧室(2)内の負圧変動と、ストップランプスイッチ(8)で検出した制動の有無とに応じて、CPU(9)が、異常の有無及び故障部位を判定して、スピーカ(10)などのウォーニング装置で警告する(第1頁右欄2〜6行目)。ここでの異常には、バキューム配管の破損、バキュームタンク(2)又はブレーキブースタ(3)からの漏れ及びバキュームポンプ(1)の破損がある(第1頁右欄7〜23行目、図3及び図4)。
【0004】
特許文献1では、エンジンの吸気管に接続されたブレーキブースタ(71)に設けられた圧力センサ(63)の出力値が、吸気管内の圧力を検知する吸気圧センサ(61)の出力値に基づいて定められた所定範囲外の値となった場合に、圧力センサ(63)に異常が生じたものと判定する(要約、請求項1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−157613号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】「自動車技術事例集(発行番号96280)」、日本自動車工業会知的財産部会、1996年7月30日、p.104〜105
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のように、非特許文献1では、負圧センサとストップランプスイッチの出力を用いてバキューム配管の破損、バキュームタンク又はブレーキブースタからの漏れ及びバキュームポンプの破損を判定するが、負圧センサ(負圧検出手段)の異常を判定する必要性も存在する。また、特許文献1では、負圧センサの異常を判定可能であるが、吸気圧センサを用いる分、構成が複雑になる。
【0008】
この発明はこのような課題を考慮してなされたものであり、負圧検出手段の異常を簡易な構成で検出することが可能な負圧システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に係る負圧システムは、アクチュエータの駆動によって負圧を発生する負圧ポンプと、前記負圧ポンプと接続され、ブレーキペダルへの操作入力を倍力する負圧式倍力装置と、前記負圧式倍力装置の負圧室に接続され、前記負圧室の圧力を検出する圧力検出手段と、前記アクチュエータの作動時間及び前記圧力検出手段の検出値に基づいて前記圧力検出手段の異常を判定する異常判定手段とを備えることを特徴とする。
【0010】
この発明によれば、アクチュエータの作動時間又は作動状態と圧力検出手段の検出値とに基づいて圧力検出手段の異常を判定する。このため、当該判定を行うために別の圧力検出手段を用いることが必要なくなるため、圧力検出手段の異常を簡易な構成で判定することが可能となる。
【0011】
前記負圧ポンプは、例えば、内燃機関により駆動される直動式負圧ポンプからなり、前記内燃機関の回転数が、当該回転数の変化量が安定することを判定するための回転数安定化判定閾値以上であることを条件に、前記異常判定手段による異常の判定を行ってもよい。これにより、負圧ポンプが直動式である場合に、圧力検出手段の異常判定を精度良く行うことが可能となる。
【0012】
前記負圧システムは、さらに、ブレーキ液圧を検出する液圧検出手段を備え、前記ブレーキ液圧が、前記ブレーキペダルの操作の有無を判定するためのブレーキ操作閾値以下であることを条件に、前記異常判定手段による異常の判定を行ってもよい。ブレーキペダルの操作が行われている場合、負圧室の圧力が変動して不安定となるため、圧力検出手段の異常判定を精度良く行うことができなくなる可能性がある。上記構成によれば、ブレーキペダルの操作がない場合を選択して圧力検出手段の異常判定を行うため、異常判定を精度良く行うことが可能となる。
【0013】
前記負圧システムは、さらに、前記負圧室に接続された内燃機関の吸気管に設けられる過給器を備え、前記異常判定手段は、前記過給器の異常時に前記異常の判定の実行を禁止してもよい。これにより、過給器の異常に起因して負圧が過給器側に流れ、圧力検出手段の異常を誤判定することを避けることが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、アクチュエータの作動時間又は作動時間と圧力検出手段の検出値とに基づいて圧力検出手段の異常を判定する。このため、当該判定を行うために別の圧力検出手段を用いることが必要なくなるため、圧力検出手段の異常を簡易な構成で判定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】この発明の一実施形態に係る負圧システムを搭載した車両の概略構成図である。
【図2】前記車両に含まれる電子制御装置のハードウェア構成及び当該ハードウェア構成が備える機能を示す図である。
【図3】前記実施形態において負圧センサの異常を判定する異常判定処理のフローチャートである。
【図4】前記実施形態において異常判定条件を判定するフローチャートである。
【図5】前記異常判定条件の判定及びその後の処理を行う際のエンジン回転数、大気圧及びマスタパワー圧のデータの一例を示す図である。
【図6】前記実施形態における異常判定のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
A.一実施形態
1.車両10の構成
(1)全体構成
図1は、この実施形態に係る負圧システム24を搭載した車両10の概略構成図である。本実施形態の車両10は、ディーゼルエンジン車である。
【0017】
車両10は、負圧システム24に加え、エンジン12と、EGRバイパス流路14と、ターボチャージャ16と、ブレーキペダル18と、ブレーキブースタ20(負圧式倍力装置)と、油圧システム22と、電子制御装置26(以下「ECU26」という。)と、警告灯28とを有する。さらに、車両10は、エンジン回転数センサ30と、水温センサ32と、大気圧センサ34と、外気温センサ36と、液圧センサ38と、負圧センサ40と、ブレーキスイッチ42とを有する。
【0018】
(2)ブレーキブースタ20
ブレーキブースタ20は、負圧ポンプ60に接続され、ブレーキペダル18への操作入力を倍力(増大)する。ブレーキブースタ20は、ダイアフラム204を挟んで配置された負圧室200及び変圧室202を有する。
【0019】
(3)油圧システム22
油圧システム22は、ブレーキブースタ20に連結されたマスタシリンダ50と、図示しない複数の電磁弁が設けられた弁機構52と、弁機構52及び配管56を介してマスタシリンダ50に接続され、車輪58に制動力を付与するホイールシリンダ54とを有する。
【0020】
(4)負圧システム24
負圧システム24は、配管62を介してブレーキブースタ20の負圧室200に接続された負圧ポンプ60と、配管62に設けられたチェック弁64とを有する。配管62には、バキューム・スイッチング・バルブ66(以下「VSV66」という。)を介してEGRバイパス流路14が接続され、エレクトリック・バキューム・レギュレーティング・バルブ68(以下「EVRV68」という。)を介してターボチャージャ16が接続されている。
【0021】
本実施形態の負圧ポンプ60は、エンジン12の回転駆動力により駆動される方式(直動式)である。代わりに、エンジン12の回転駆動力に依存しない方式(例えば、電動式)であってもよい。EGRバイパス流路14は、排気ガス再循環装置(EGR)の一部を構成する。
【0022】
(5)各種センサ
エンジン回転数センサ30は、エンジン12の回転数(以下「エンジン回転数NE」という。)を検出する。水温センサ32は、エンジン12の冷却水の水温Twを検出する。大気圧センサ34は、大気圧Paを検出する。外気温センサ36は、外気温Taを検出する。液圧センサ38は、油圧システム22におけるブレーキ液圧Pbkを検出する。負圧センサ40は、ブレーキブースタ20の負圧室200に接続され、負圧室200内の圧力(以下「マスタパワー圧Pmp」又は「M/P圧Pmp」という。)を検出する。
【0023】
(6)ECU26
ECU26は、各種センサの出力(検出値)に基づいて、通信線98等を介してエンジン12、ターボチャージャ16、油圧システム22、負圧システム24及び警告灯28を制御する。
【0024】
図2には、ECU26のハードウェア構成及び当該ハードウェア構成が備える機能が示されている。図2に示すように、ECU26は、ハードウェアとして、入出力部70、演算部72及び記憶部74を有する。
【0025】
演算部72は、記憶部74に記憶されているプログラムを実行することにより、エンジン制御機能80、アンチロックブレーキシステム制御機能82(以下「ABS制御機能82」という。)、車両挙動安定化システム制御機能84(以下「VSA制御機能84」という。)、ターボチャージャ制御機能86(以下「T/C制御機能86」という。)及び負圧システム制御機能88を実現する。
【0026】
エンジン制御機能80は、図示しないアクセルペダルの操作量等に応じてエンジン12を制御する機能である。ABS制御機能82は、油圧システム22から車輪58に対して制動力が加えられている際(ブレーキ操作時)に車輪58のロックを防止する機能である。VSA制御機能84は、車両10の挙動を安定化する機能である。より具体的には、VSA制御機能84は、例えば、非ブレーキ操作時(加速時等)の車輪58の空転を防ぐトラクション制御機能と、車両10がカーブ等を旋回する際の横滑りを防止する横滑り防止機能と、運転者が車両10(自車)を障害物から回避させるために操向ハンドル(図示せず)を操作する際、当該操作を補助する回避操作支援機能とを含む。
【0027】
T/C制御機能86は、ターボチャージャ16を制御する機能であり、ターボチャージャ故障検出機能90(以下「T/C故障検出機能90」という。)を含む。
【0028】
負圧システム制御機能88は、負圧システム24(例えば、負圧ポンプ60)を制御する機能であり、負圧センサ異常判定機能92を含む。本実施形態では、演算部72が、負圧センサ異常判定機能92を実行することにより、負圧センサ40の異常を判定することができる。
【0029】
2.本実施形態における負圧センサ40の異常判定処理
(1)異常判定処理の概要
図3は、負圧センサ40の異常を判定する異常判定処理のフローチャートである。ステップS1において、ECU26は、異常判定条件を判定する(詳細は、図4等を参照して後で述べる)。ステップS2において、ECU26は、ステップS1の判定結果に基づき、異常判定条件が満たされているか否かを判定する。異常判定条件が満たされていない場合(S2:NO)、今回の処理を終える。異常判定条件が満たされている場合(S2:YES)、ステップS3に進む。
【0030】
ステップS3において、ECU26は、負圧センサ40の異常判定を行う(異常判定の詳細は、図6等を参照して後で述べる。)。そして、ステップS3の結果、負圧センサ40に異常がない場合(S4:NO)、ECU26は、今回の処理を終える。負圧センサ40に異常がある場合(S4:YES)、ステップS5において、ECU26は、運転者に対して警告を行う。具体的には、ECU26は、警告灯28を点灯させ、運転者に異常の発生を通知する。これに代えて又はこれに加えて、ECU26は、図示しないスピーカを用いて警告音を発するなどその他の方法で運転者に異常の発生を通知してもよい。
【0031】
(2)異常判定条件の判定(図3のS1)
図4は、異常判定条件を判定するフローチャート(図3のS1の詳細)である。図5は、異常判定条件の判定及びその後の処理を行う際のエンジン回転数、大気圧及びマスタパワー圧のデータの一例を示す。
【0032】
図4のステップS11において、ECU26は、アイドル停止を許可可能であるか否かを判定する。アイドル停止は、エンジン12のアイドリングを停止することを意味する。本実施形態において、ECU26は、アイドル停止を許可可能であるか否かの判定を、水温センサ32が検出したエンジン冷却水の水温Twが所定の閾値(水温閾値TH_tw)以上であるか否か、及び外気温センサ36が検出した外気温Taが所定の閾値(外気温閾値TH_ta)以上であるか否か等により判定する。
【0033】
アイドル停止を許可可能でない場合(S11:NO)、ステップS24において、ECU26は、異常判定条件を満たさないと判定する。アイドル停止を許可可能である場合(S11:YES)、ステップS12において、ECU26は、アイドル停止を行う。
【0034】
ステップS13において、ECU26は、アイドル停止後所定時間(時間T1)が経過したか否かを判定する。時間T1は、例えば、アイドル停止により各部の動作を停止させるために十分な時間である。アイドル停止後時間T1が経過していない場合(S13:NO)、ステップS13を繰り返す。アイドル停止後時間T1が経過した場合(S13:YES)、ステップS14に進む。
【0035】
ステップS14において、ECU26は、エンジン12を再始動させる(図5の時点t1)。続くステップS15において、ECU26は、エンジン12の再始動後所定時間(時間T2)が経過したか否かを判定する。当該時間T2は、例えば、エンジン12の動作を安定させるための時間を設定することができる。エンジン12の再始動後時間T2が経過していない場合(S15:NO)、ステップS15を繰り返す。エンジン12の再始動後時間T2が経過した場合(S15:YES)、ステップS16に進む。
【0036】
ステップS16において、ECU26は、液圧センサ38が正常に動作しているか否かを判定する。当該判定は、例えば、液圧センサ38の出力値(出力電圧)が、正常動作時であれば取り得ない値となっているかを判定することにより行う。液圧センサ38が正常に動作している場合(S16:YES)、ステップS17に進む。液圧センサ38が正常に動作していない場合(S16:NO)、ステップS24において、ECU26は、異常判定条件を満たさないと判定する。この際、ECU26は、警告灯28にその旨の表示をしてもよい。
【0037】
ステップS17において、ECU26は、ABS制御が作動中であるか否かを判定する。ABS制御が作動中である場合(S17:YES)、ステップS24において、ECU26は、異常判定条件を満たさないと判定する。ABS制御が作動中でない場合(S17:NO)、ステップS18において、ECU26は、VSA制御が作動中であるか否かを判定する。VSA制御が作動中である場合(S18:YES)、ステップS24において、ECU26は、異常判定条件を満たさないと判定する。VSA制御が作動中でない場合(S18:NO)、ステップS19に進む。
【0038】
ステップS19において、ECU26は、エンジン回転数センサ30からのエンジン回転数NEが、所定の下限値L1(回転数安定化判定閾値)を上回るか否かを判定する。本実施形態の負圧ポンプ60は、エンジン12によって駆動される直動式である。また、下限値L1は、例えば、エンジン回転数NEの変化量[rpm/s]を安定させることができる値(例えば、1000rpm以上)に設定する。或いは、負圧ポンプ60の最大性能を発揮させるエンジン回転数NE以上に設定してもよい。このため、エンジン回転数NEが下限値L1を超えることで、負圧ポンプ60が安定して動作していることを知ることができる。なお、下限値L1との比較に加え、所定の領域(例えば、800〜810rpmの範囲)に入っているか否かを判定してもよい。エンジン回転数NEが下限値L1を上回らない場合(S19:NO)、ステップS24において、ECU26は、異常判定条件を満たさないと判定する。エンジン回転数NEが下限値L1を上回る場合(S19:YES、図5の時点t2)、ステップS20に進む。
【0039】
ステップS20において、ECU26は、ブレーキ液圧Pbkが所定の下限値L2(ブレーキ操作閾値)未満であるか否かを判定する。下限値L2は、ブレーキペダル18が操作されているか否かを判断する値(例えば、100kPa)に設定される。ブレーキ液圧Pbkが下限値L2以上である場合(S20:NO)、ブレーキペダル18の操作がなされていると判断可能である。この場合、ステップS24において、ECU26は、異常判定条件を満たさないと判定する。ブレーキ液圧Pbkが下限値L2未満である場合(S20:YES)、ブレーキペダル18の操作がなされていないと判断可能である。この場合、ステップS21に進む。
【0040】
ステップS21において、ECU26は、ターボチャージャ16が正常に動作しているか否かを判定する。当該判定は、演算部72のT/C故障検出機能90を用いて判定する。ターボチャージャ16が正常に動作している場合(S21:YES)、ステップS22に進む。ターボチャージャ16が正常に動作していない場合(S21:NO)、ステップS24において、ECU26は、異常判定条件を満たさないと判定する。
【0041】
ステップS22において、ECU26は、ステップS17を開始した後所定時間(時間T3)が経過したか否かを判定する。当該時間T3は、例えば、エンジン12の動作が安定し、異常判定を行うのに好適な状況であるか否かを判定するための閾値(例えば、10〜60秒のいずれか)である。時間T3が経過していない場合(S22:NO)、ステップS18に戻る。時間T3が経過した場合(S22:YES、図5の時点t3)、ステップS23において、ECU26は、異常判定条件を満たすと判定する。
【0042】
(3)異常判定(図3のS3)
図6は、異常判定のフローチャート(図3のS3の詳細)である(図5の時点t3以降)。ステップS31において、ECU26は、負圧センサ40からマスタパワー圧Pmpを取得する。ステップS32において、ECU26は、M/P圧Pmpが所定範囲内にあるか否かを判定する。具体的には、この時点におけるエンジン回転数NEと負圧ポンプ60の性能との関係から取り得るM/P圧Pmpの上限値TH_Pmp_h及び下限値TH_Pmp_lと、M/P圧Pmpとを比較する。そして、M/P圧Pmpが、下限値TH_Pmp_l以上であり且つ上限値TH_Pmp_h以下であるか否かを判定する。なお、上限値TH_Pmp_h及び下限値TH_Pmp_lは、実験値又はシミュレーション値として事前に設定し、記憶部74に記憶しておく。
【0043】
M/P圧Pmpが所定範囲内にある場合(S32:YES)、ステップS33において、ECU26は、負圧センサ40における異常の発生を示す異常フラグF1をリセットする。後述するステップS34の処理と合わせ、本実施形態では、所定時間(後述する時間T4)内に一度でもM/P圧Pmpが所定範囲内に入れば、負圧センサ40に異常は発生していないと判定する。M/P圧Pmpが所定範囲内にない場合(S32:NO)、ステップS34に進む。
【0044】
ステップS34において、ECU26は、異常判定の開始後所定時間(時間T4)(図5の時点t3〜t4)が経過したか否かを判定する。当該時間T4は、負圧センサ40の異常判定に要する時間(例えば、0.5秒)として設定することができる。時間T4が経過していない場合(S34:NO)、ステップS31に戻る。時間T4が経過した場合(S34:YES)、ステップS35において、ECU26は、異常フラグF1を立てる。異常フラグF1には、M/P圧Pmpが下限値TH_Pmp_lを下回ったことを示す低圧異常フラグF1lと、M/P圧Pmpが上限値TH_Pmp_hを上回ったことを示す高圧異常フラグF1hとがある。
【0045】
ステップS36において、ECU26は、3回連続同じ異常フラグF1(低圧又は高圧)が続いたか否かを判定する。3回連続同じ異常フラグF1が続いていない場合(S36:NO)、ステップS31に戻る。3回連続同じ異常フラグF1が続いた場合(S36:YES)、ステップS37において、ECU26は、負圧センサ40に異常が発生したとの判断を確定する。
【0046】
3.本実施形態の効果
以上のように、本実施形態によれば、負圧ポンプ60の作動時間(時間T4)及び負圧センサ40の検出値(M/P圧Pmp)に基づいて負圧センサ40の異常を判定する。このため、当該判定を行うために別の圧力検出手段(別の負圧センサ、吸気圧センサ等)を用いることが必要なくなるため、負圧センサ40の異常を簡易な構成で判定することが可能となる。
【0047】
本実施形態では、負圧ポンプ60は、エンジン12により駆動される直動式であり、負圧センサ40は、エンジン回転数NEが、エンジン回転数NEの変化量が安定することを判定するための下限値L1以上であることを条件に異常の判定を行う(図4のS19)。これにより、負圧ポンプ60が直動式である場合に、負圧センサ40の異常判定を精度良く行うことが可能となる。
【0048】
本実施形態では、ブレーキ液圧Pbkが、ブレーキペダル18の操作の有無を判定するための下限値L2以下であることを条件に、負圧センサ40の異常の判定を行う(図4のS20)。ブレーキペダル18の操作が行われている場合、負圧室200の圧力が上昇して不安定となるため、負圧センサ40の異常判定を精度良く行うことができなくなる可能性がある。上記構成によれば、ブレーキペダル18の操作がない場合を選択して負圧センサ40の異常判定を行うため、異常判定を精度良く行うことが可能となる。なお、ブレーキスイッチ42がオンになったことを追加条件とすれば、さらに誤判定を防止することが可能となる。
【0049】
本実施形態では、ECU26は、ターボチャージャ16の異常時に負圧センサ40の異常判定の実行を禁止する(図4のS21)。これにより、ターボチャージャ16の異常に起因して負圧がターボチャージャ16側に流れ、負圧センサ40の異常を誤判定することを避けることが可能となる。
【0050】
B.変形例
なお、この発明は、上記実施形態に限らず、この明細書の記載内容に基づき、種々の構成を採り得ることはもちろんである。例えば、以下の構成を採用することができる。
【0051】
1.車両10
上記実施形態では、車両10は、ディーゼルエンジン車であったが、これに限らず、例えば、電気自動車(ハイブリッド車及び燃料電池車を含む。)又はガソリンエンジン車であってもよい。
【0052】
2.負圧ポンプ60(負圧の発生手段及び方法)
上記実施形態では、負圧ポンプ60は、エンジン12により駆動される直動式であったが、これに限らない。例えば、負圧ポンプ60は、電動式であってもよい。
【0053】
上記実施形態では、負圧システム24における負圧(M/P圧Pmp)は、負圧ポンプ60、EGRバイパス流路14及びターボチャージャ16により発生可能とされたが、負圧を発生する手段及び方法は、これに限らない。例えば、負圧ポンプ60、EGRバイパス流路14及びターボチャージャ16のいずれか1つ又は2つで行うことも可能である。
【0054】
3.負圧センサ40の異常判定
上記実施形態では、図4の処理を用いて負圧センサ40の異常判定を行ったが、これに限らない。例えば、負圧ポンプ60の作動状態から負圧センサ40の検出値(M/P圧Pmp)が取り得る範囲(上限値のみ又は下限値のみを設定する場合を含む。)を設定し、検出値がこの範囲を外れたときに負圧センサ40に異常が発生していると判定することもできる。ここにいう負圧ポンプ60の作動状態には、負圧ポンプ60の出力、回転数(上記実施形態では、エンジン回転数NEに比例する。)等が含まれる。
【0055】
4.その他
上記実施形態では、車両10は、ターボチャージャ16を搭載していたが、その代わりに、スーパーチャージャを搭載し、これを利用して負圧を発生させてもよい。或いは、ターボチャージャ16及びスーパーチャージャのいずれも搭載しない車両10も可能である。
【0056】
上記実施形態では、負圧ポンプ60の作動状態に応じて負圧センサ40の異常を判定したが、反対に、負圧センサ40の検出値から負圧ポンプ60の動作異常を判定することもできる。この場合、負圧ポンプ60及び負圧センサ40以外に負圧ポンプ60又は負圧センサ40の異常を監視する手段(例えば、別の負圧センサ又は特許文献1のような吸気圧センサ)を設けておけば、フェールセーフの観点で優れた構成とすることができる。
【符号の説明】
【0057】
12…エンジン(アクチュエータ、内燃機関)
16…ターボチャージャ(過給器) 18…ブレーキペダル
20…ブレーキブースタ(負圧式倍力装置)
24…負圧システム 26…ECU(異常判定手段)
38…液圧センサ 40…負圧センサ(圧力検出手段)
60…負圧ポンプ 200…負圧室
L1…下限値(回転数安定化判定閾値) L2…下限値(ブレーキ操作閾値)
NE…エンジン回転数 Pbk…ブレーキ液圧
Pmp…マスタパワー圧(負圧室の圧力)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクチュエータの駆動によって負圧を発生する負圧ポンプと、
前記負圧ポンプと接続され、ブレーキペダルへの操作入力を倍力する負圧式倍力装置と、
前記負圧式倍力装置の負圧室に接続され、前記負圧室の圧力を検出する圧力検出手段と、
前記アクチュエータの作動時間又は作動状態と前記圧力検出手段の検出値とに基づいて前記圧力検出手段の異常を判定する異常判定手段と
を備えることを特徴とする負圧システム。
【請求項2】
請求項1記載の負圧システムにおいて、
前記負圧ポンプは、内燃機関により駆動される直動式負圧ポンプからなり、
前記内燃機関の回転数が、当該回転数の変化量が安定することを判定するための回転数安定化判定閾値以上であることを条件に、前記異常判定手段による異常の判定を行う
ことを特徴とする負圧システム。
【請求項3】
請求項1又は2記載の負圧システムにおいて、さらに、
ブレーキ液圧を検出する液圧検出手段を備え、
前記ブレーキ液圧が、前記ブレーキペダルの操作の有無を判定するためのブレーキ操作閾値以下であることを条件に、前記異常判定手段による異常の判定を行う
ことを特徴とする負圧システム。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の負圧システムにおいて、さらに、
前記負圧室に接続された内燃機関の吸気管に設けられる過給器を備え、
前記異常判定手段は、前記過給器の異常時に前記異常の判定の実行を禁止する
ことを特徴とする負圧システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−214185(P2012−214185A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−82241(P2011−82241)
【出願日】平成23年4月1日(2011.4.1)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】