説明

負帯電性を示す架橋(メタ)アクリル酸エステル系多孔質着色樹脂粒子、その製造方法及びそのシリコーンオイル分散体

【課題】非極性分散媒中での沈降が少なくかつ分散性に優れ、かつ多孔質樹脂粒子からの着色顔料の脱落が少なく、また非極性分散媒に電荷制御剤等の分散剤を用いることなく、電圧印加により単独で電気泳動する着色樹脂粒子、その製造方法及びそのシリコーンオイル分散体を提供することを課題とする。
【解決手段】(メタ)アクリル酸アルキルエステル系単量体及び架橋剤と、負帯電性付与用の電子吸引基を有する化合物及び電子供与基を有する化合物と、着色顔料とを含む重合性単量体組成物由来の重合体から構成され、かつ2〜90m2/gの比表面積及び0.01〜0.7cm3/gの細孔容積を有することを特徴とする負帯電性を示す架橋(メタ)アクリル酸エステル系多孔質着色樹脂粒子により、上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像表示用素子、電気粘性流体用粒子等に好適に用いられる負帯電性を示す架橋(メタ)アクリル酸エステル系多孔質着色樹脂粒子、その製造方法及びそのシリコーンオイル分散体に関する。
【背景技術】
【0002】
着色樹脂粒子は、塗料、トナー、化粧品、流体の可視化等種々の分野で利用されている。それらの中でも、非極性溶剤中で電圧を印加することにより、相対する電極間を電気泳動により移動する特性を有する着色樹脂粒子は、電子ペーパー等の画像表示用素子、静電潜像用粒子、電気粘性流体等の用途として、各分野において不可欠な原料として注目されている。
【0003】
ここで、着色樹脂粒子が画像表示装置の画像表示用素子として用いられる一例を紹介する。スペーサーを介して対向配置された、少なくとも一方が透明である2枚の電極基板の間に、画像表示素子としての着色樹脂粒子が分散媒中に分散された表示液を封入した表示パネルを構成する。この表示パネルの2枚の電極基板間に電界を印加することで、着色樹脂粒子を電気泳動により移動させることにより、表示を得ることができる。このような原理による画像表示装置は、視野角が通常の印刷物並みに広い、消費電力が少ない、メモリー性を有する等の長所を有することから、安価な表示装置として注目されている。
【0004】
このような着色樹脂粒子の電気泳動を利用した画像表示装置には、表示液中の分散媒として、非極性のものが一般に用いられる。非極性の分散媒としては、シリコーンオイルやパラフィン系炭化水素等の脂肪族炭化水素類が挙げられる。しかし、着色樹脂粒子と分散媒との比重差が非常に大きいことから、着色樹脂粒子が表示液中で沈降凝集してしまい、画像表示装置に表示ムラや動作不良が生じるという問題ある。また、染料を含有してなる着色樹脂粒子は染料の溶出により着色安定性が不十分となる場合があり、また樹脂粒子の表層部分に着色顔料が保持されてなる着色樹脂粒子は着色顔料の脱落により、所望の色表示が困難となる問題がある。
【0005】
このような問題を改善する従来技術としては、染料が共有結合で固定化されてなる着色多孔質粒子が知られている(特許文献1参照)。また、樹脂粒子の表層部分に着色顔料が含有されてなる多孔質着色樹脂粒子および着色樹脂粒子が知られている(特許文献2および3参照)。また、着色樹脂粒子が複数の中空マイクロカプセル粒子を含むことで、沈降を防止する技術が知られている(特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−354890号公報
【特許文献2】特開2006−274250号公報
【特許文献3】特開2008−231306号公報
【特許文献4】特許第3949308号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の方法では、分散媒に対する染料の脱着抑制が十分でなく、着色安定性が不十分になるという課題があった。また、特許文献2および3では着色顔料が粒子表層部分に含有されており、樹脂粒子からの顔料の脱落が起こり易いために画像表示装置の表示ムラを起こす課題があった。特許文献4の方法では、中空マイクロカプセルを複数含む粒子において、空隙の数や量を正確に調整することが非常に困難で、得られた着色樹脂粒子の粒子間で大きな比重分布が生じ、電気泳動において着色樹脂粒子の移動がバラツキ、画像表示装置の表示ムラや動作不良を起こすことがあるという課題があった。
【0008】
そこで、本発明は、非極性分散媒中での沈降が少なくかつ分散性に優れ、かつ多孔質樹脂粒子からの着色顔料の脱落が少なく、また非極性分散媒に電荷制御剤等の分散剤を用いることなく、電圧印加により単独で電気泳動する着色樹脂粒子、その製造方法及びそのシリコーンオイル分散体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かくして、本発明によれば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系単量体及び架橋剤と、負帯電性付与用の電子吸引基を有する化合物及び電子供与基を有する化合物と、着色顔料とを含む重合性単量体組成物由来の重合体から構成され、かつ2〜90m2/gの比表面積及び0.01〜0.7cm3/gの細孔容積を有することを特徴とする負帯電性を示す架橋(メタ)アクリル酸エステル系多孔質着色樹脂粒子が提供される。
【0010】
また、本発明によれば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系単量体15〜93.4重量%と、架橋剤5〜70重量%と、電子吸引基を有する化合物0.5〜78.9重量%と、電子供与基を有する化合物0.1〜20重量%と、着色顔料1〜25重量%とを含む重合性単量体組成物100重量部に対して、反応不活性有機溶剤5〜250重量部を含む混合物を、水性媒体中で重合させることで多孔質着色樹脂粒子を得る工程を含むことを特徴とする負帯電性を示す架橋(メタ)アクリル酸エステル系多孔質着色樹脂粒子の製造方法が提供される。
【0011】
さらに、本発明によれば、上記の負帯電性を示す架橋(メタ)アクリル酸エステル系多孔質着色樹脂粒子をシリコーンオイルに分散させてなる負帯電性を示す電気泳動用着色樹脂粒子のシリコーンオイル分散体が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、非極性分散媒中での沈降が少なくかつ分散性に優れ、また多孔質樹脂粒子からの着色顔料の脱落が少なく、また非極性分散媒に電荷制御剤等の分散剤を用いることなく、電圧印加により単独で電気泳動する着色樹脂粒子、その製造方法及びそのシリコーンオイル分散体を提供することができる。
本発明の負帯電性を示す架橋(メタ)アクリル酸エステル系多孔質着色樹脂粒子は、帯電特性の安定性に優れ、樹脂粒子の沈降が抑制されている。また着色顔料が粒子内部に存在しており着色顔料の脱落が起こり難いため、画像表示用素子、電気粘性流体用粒子等として好適に用いることができる。
【0013】
また、電子供与基を有する化合物が、(メタ)アクリル酸のアミノアルキルエステル、スチレンのアミノアルキル誘導体及びピリジル基を有する重合性単量体から選択される少なくとも1種以上である場合、帯電極性がより安定した、負帯電性を示す架橋(メタ)アクリル酸エステル系多孔質着色樹脂粒子を提供できる。
【0014】
また、電子吸引基を有する化合物が、
クロロエチル(メタ)アクリレート、ジブロモプロピル(メタ)アクリレート、トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、EO(エチレンオキシド)変性トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、トリヨードフェノール(メタ)アクリレート、トリフロロエチル(メタ)アクリレート、テトラフロロプロピル(メタ)アクリレート、ヘキサフロロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフロロペンチル(メタ)アクリレート、ヘプタデカフロロデシル(メタ)アクリレート及びクロロスチレンから選択される化合物、
クロムアゾ錯体染料、鉄アゾ錯体染料及びコバルトアゾ錯体染料から選択される、電子吸引基を有し荷電制御剤として機能するアゾ含金属化合物、
サリチル酸亜鉛錯体、サリチル酸クロム錯体及びサリチル酸アルミニウム錯体から選択される、電子吸引基を有し荷電制御剤として機能するサリチル酸金属錯体、並びに
フェノールがその2,6−位で縮合された、電子吸引基を有し荷電制御剤として機能するカリックスアレーン系化合物
から選択される少なくとも1種以上である場合、帯電極性がより安定した、負帯電性を示す架橋(メタ)アクリル酸エステル系多孔質着色樹脂粒子を提供できる。
【0015】
また、本発明の製造方法によれば、本発明の負帯電性を示す架橋(メタ)アクリル酸エステル系多孔質着色樹脂粒子を容易に製造することができる。
【0016】
さらに、上記の負帯電性を示す架橋(メタ)アクリル酸エステル系多孔質着色樹脂粒子をシリコーンオイルに分散させてなるシリコーンオイル分散体は、負帯電性を示し、表示ムラや動作不良のない画像表示装置の表示液として好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施例3の多孔質着色樹脂粒子の透過型電子顕微鏡(TEM)写真である。
【図2】比較例1の着色樹脂粒子の透過型電子顕微鏡(TEM)写真である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の負帯電性を示す架橋(メタ)アクリル酸エステル系多孔質着色樹脂粒子(以下「多孔質着色樹脂粒子」ともいう)は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系単量体及び架橋剤と、負帯電性付与用の電子吸引基を有する化合物及び電子供与基を有する化合物と、着色顔料とを含む重合性単量体組成物由来の重合体から構成され、かつ2〜90m2/gの比表面積及び0.01〜0.7cm3/gの細孔容積を有することを特徴とする。
本発明の多孔質着色樹脂粒子は、従来の中実の着色樹脂粒子に比べて、非極性分散媒中で沈降し難い。
【0019】
本発明の多孔質着色樹脂粒子は、2〜90m2/gの比表面積を有する。比表面積が2m2/g未満では、多孔質樹脂粒子の比表面積が小さいため沈降を防止する効果が不十分になることがある。一方、比表面積が90m2/gを超えると、樹脂粒子が壊れやすくなることがある。好ましい比表面積は5〜70m2/gである。なお、比表面積の測定方法については、実施例において詳述する。
【0020】
本発明の多孔質着色樹脂粒子は、0.01〜0.7cm3/gの細孔容積を有する。細孔容積が0.01cm3/g未満では、樹脂粒子の沈降を防止する効果が不十分になることがある。一方、細孔容積が0.7cm3/gを超えると、粒子の変形および粒子が脆くなることがある。好ましい細孔容積は0.01〜0.5cm3/gである。なお、細孔容積の測定方法については、実施例において詳述する。
【0021】
本発明の多孔質着色樹脂粒子は、0.2〜60μmの平均粒子径を有するのが好ましい。平均粒子径が0.2μm未満では、表示に必要な色濃度を確保することが難しくなり、分散媒中の着色樹脂粒子の濃度を高めることが必要となる。そうなると分散体の粘度が非常に高くなり、着色樹脂粒子の電気泳動による移動が困難となることがある。一方、平均粒子径が60μmを超えると、粒子径が大きくなり過ぎ、分散媒中で直ぐに沈降してしまい動作不良等を起こすことがある。より好ましい平均粒子径は1〜25μmである。
【0022】
多孔質着色樹脂粒子は、単分散性に優れていることが好ましい。単分散性とは、粒子の大きさが略均一であって凝集せずに散らばりやすい状態のことを指す。単分散性の1つの指標となる粒度分布において、変動係数(CV値)が40%以下であることが好ましい。CV値が40%を超えると、着色樹脂粒子同士の電気泳動性に大きなバラツキが見られるようになり、表示ムラ、更には動作不良が生じることがある。より好ましいCV値は30%以下である。なお、平均粒子径及びCV値の測定方法については、実施例において詳述する。
【0023】
本発明の多孔質着色樹脂粒子の製造方法は、特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系単量体15〜93.4重量%と、架橋剤5〜70重量%と、電子吸引基を有する化合物0.5〜78.9重量%と、電子供与基を有する化合物0.1〜20重量%と、着色顔料1〜25重量%とを含む重合性単量体組成物100重量部に対して、反応不活性有機溶剤5〜250重量部を含む混合物を、水性媒体中で重合させることで多孔質着色樹脂粒子を得る工程を含む方法が挙げられる。
上記の製造方法に基づいて、本発明の多孔質着色樹脂粒子について説明するが、これにより本発明は限定されない。
【0024】
(1)(メタ)アクリル酸アルキルエステル系単量体
(メタ)アクリル酸アルキルエステル系単量体としては、重合可能なものであれば特に限定されるものではないが、得られる樹脂粒子の重合安定性や耐光性の点で、エステル部分に炭素数1〜20の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有するものが特に好ましい。
具体的には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸イソステアリル等が挙げられ、これらの中でも(メタ)アクリル酸イソステアリルが特に好ましい。これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0025】
(メタ)アクリル酸アルキルエステル系単量体は、重合性単量体組成物中、15〜93.4重量%含まれていることが好ましい。単量体が15重量%未満では、多孔質着色樹脂粒子の物性が低下することがある。一方、単量体が93.4重量%を超えると、得られる多孔質着色樹脂粒子の帯電特性の制御が不十分になり易く、電気泳動がばらつく原因となることがある。より好ましくは20〜80重量%である。
【0026】
(2)他の単量体
(メタ)アクリル系重合性単量体以外に、他の単官能ビニル系重合性単量体を使用してもよい。他の単官能ビニル系重合性単量体としては、広く一般的に用いられる各種単官能ビニル系単量体を使用できる。例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−フェニルスチレン、o−クロロスチレン、m−クロロスチレン、p−クロロスチレン等のスチレン系単量体、塩化ビニル、酢酸ビニル等が挙げられる。
但し、着色樹脂粒子を画像表示素子に使用する場合、耐光性の低いスチレン系単量体を使用しないか、又はその使用量を減らすことが好ましい。
これらの単官能ビニル系単量体は単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0027】
(3)架橋剤
架橋剤としては、分子内に重合性を有するビニル基を2個以上有する多官能ビニル系重合性単量体などが挙げられ、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、これらの誘導体等の芳香族ジビニル化合物、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、アリルメタクリレート、t−ブチルアミノエチルメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート等のジエチレン性不飽和カルボン酸エステル、N,N−ジビニルアニリン、ジビニルエーテル、ジビニルサルファイド、ジビニルスルホン酸の全てのジビニル化合物及び3個以上のビニル基を有する化合物が挙げられる。これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0028】
架橋剤は、重合性単量体組成物中、5〜70重量%含まれていることが好ましい。架橋剤が5重量%未満では、樹脂粒子が多孔質状になり難いことがある。一方、架橋剤が70重量%を超えると、樹脂粒子同士の合着が起こりやすくなり、また架橋剤が比較的高価であるため経済的ではない。より好ましくは10〜60重量%である。
【0029】
(4)電子吸引基を有する化合物
電子吸引基を有する化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば、
クロロエチル(メタ)アクリレート、ジブロモプロピル(メタ)アクリレート、トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、EO(エチレンオキシド)変性トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、トリヨードフェノール(メタ)アクリレート、トリフロロエチル(メタ)アクリレート、テトラフロロプロピル(メタ)アクリレート、ヘキサフロロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフロロペンチル(メタ)アクリレート、ヘプタデカフロロデシル(メタ)アクリレート及びクロロスチレンから選択される化合物;
クロムアゾ錯体染料、鉄アゾ錯体染料及びコバルトアゾ錯体染料から選択される、電子吸引基を有し荷電制御剤として機能するアゾ含金属化合物;
サリチル酸亜鉛錯体、サリチル酸クロム錯体及びサリチル酸アルミニウム錯体から選択される、電子吸引基を有し荷電制御剤として機能するサリチル酸金属錯体;並びに
フェノールがその2,6−位で縮合された、電子吸引基を有し荷電制御剤として機能するカリックスアレーン系化合物等が挙げられる。これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0030】
「電子吸引基」としては、ハロゲン基、ニトロ基、シアノ基、ケト基等が挙げられる。
電子吸引基を有する、「アゾ含金属化合物」、「サリチル酸系化合物」及び「カリックスアレーン系化合物」は、電子吸引基を有することにより負帯電の荷電制御剤として機能する化合物であり、これらは荷電制御剤として市販されている。
アゾ含金属化合物としては、例えば、オリエント化学工業株式会社製の製品名:ボントロンS−34、S−44S及びS−54、保土谷化学工業株式会社製の製品名:T−95等が挙げられる。
サリチル酸金属錯体としては、例えば、オリエント化学工業株式会社製の製品名:ボントロンE−81及びE−84等が挙げられる。
カリックスアレーン系化合物としては、例えば、オリエント化学工業株式会社製の製品名:E−89等が挙げられる。
【0031】
電子吸引基を有する化合物は、重合性単量体組成物中、0.5〜78.9重量%含まれていることが好ましい。電子吸引基を有する化合物が0.5重量%未満では、負帯電性を示すことが難しいことがある。一方、電子吸引基を有する化合物が78.9重量%を超えると、樹脂密度が高くなり、得られる多孔質着色樹脂粒子の真密度が大きくなり、分散媒中での多孔質着色樹脂粒子の沈降が起き易くなり、沈降凝集等を生ずることがある。より好ましくは1.5〜50重量%である。
【0032】
(5)電子供与基を有する化合物
電子供与基を有する化合物としては、多孔質樹脂粒子に安定した帯電極性を付与できる点で、窒素含有基を有する化合物が好ましい。窒素含有基としては、一級アミノ基、二級アミノ基、三級アミノ基、四級アミノ基(4級アンモニウム塩中の窒素含有基)等のアミノ基等が挙げられる。アミノ基は、窒素含有基を有する化合物の末端に位置する基以外に、環中に存在する窒素含有基も含まれる。
【0033】
具体的な窒素含有基を有する化合物としては、例えばN−メチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−エチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジブチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジ−tert−ブチルアミノエチルアクリレート、N−フェニルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジフェニルアミノエチルメタクリレート及び2−N−ピペリジルエチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸のアミノアルキルエステル、アミノスチレン、ジメチルアミノスチレン、N−メチルアミノエチルスチレン、ジメチルアミノエトキシスチレン、ジフェニルアミノエチルスチレン、N−フェニルアミノエチルスチレン等のスチレンのアミノアルキル誘導体、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、2−ビニル−6−メチルピリジン等のピリジル基を有する重合性単量体等が挙げられる。また、4級アンモニウム塩のような電子供与性の化合物も使用できる。これらの中でも、3級アミノ基を有する化合物が好ましい。これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0034】
電子供与基を有する化合物は、重合性単量体組成物中、0.1〜20重量%含まれていることが好ましい。電子供与基を有する化合物が0.1重量%未満であっても、20重量%を超えても、多孔質着色樹脂粒子の負帯電性が十分得られないことがある。より好ましくは0.2〜15重量%である。
【0035】
(6)着色顔料
着色顔料としては、公知の無機顔料や有機顔料を使用できる。
無機顔料としては、例えば、アルミナ、二酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化クロム、酸化セリウム、ベンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、シリカ微粉体、炭化ケイ素、窒化ケイ素、炭化ホウ素、炭化タングステン、炭化チタン等の粉末又は粒子が挙げられる。
【0036】
有機顔料としては、C.I.ピグメントイエロー1、3、12、13、14、17、24、34、35、37、42(黄色酸化鉄)、53、55、74、81、83、95、97、98、100、101、104、108、109、110、117、120、138、153、C.I.ピグメントレッド1、2、3、5、17、22、23、31、38、48:2、48:2、48:3、48:4、49:1、52:2、53:1、57:1、
60:1、63:1、63:2、64:1、81、83、88、101(ベンガラ)、104、105、106、108、112、114、122(キナクリドンマゼンタ)、123、146、149、166、168、170、172、177、178、179、1
85、190、193、209、219、254、C.I.ピグメントブルー1、2、15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、17:1、56、60、63、C.I.ピグメントグリーン1、4、7、8、10、17、18、36等が挙げられる。
着色顔料は、酸・塩基処理、カップリング剤処理、ポリマーグラフト処理、プラズマ処理、酸化/還元処理等により表面処理されていてもよい。
【0037】
着色顔料は、顔料の種類により多少異なるが、重合性単量体組成物中、1〜25重量%含まれていることが好ましい。着色顔料が1重量%未満では、得られる多孔質着色樹脂粒子における着色度が十分なものとならないことがある。一方、着色顔料が25重量%を超えると、重合性単量体組成物の粘度が非常に高くなり、多孔質着色樹脂粒子が得られ難いことがある。また、着色顔料の比重が大きい場合、樹脂粒子の比重が増加するため分散媒中において沈降凝集等を生ずることがある。より好ましくは2〜20重量%である。
【0038】
また、顔料分散剤を使用してもよい。顔料分散剤は、従来から使用されているものを特に制限なく使用できるが、その中でも高分子分散剤を使用することが好ましい。例えば、脂肪酸アミン系分散剤、カルボジイミド系分散剤、ポリエステルアミン系分散剤、変性ポリウレタン系分散剤、変性ポリアクリレート系分散剤、多鎖型高分子非イオン系分散剤、高分子イオン活性剤等が挙げられる。これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。顔料分散剤の使用量は、全顔料100重量部に対して、通常1〜100重量部、好ましくは1〜40重量部である。
【0039】
(7)反応不活性有機溶剤
反応不活性有機溶剤は、重合性単量体組成物の重合反応に関与しない有機溶剤であり、有機溶剤が多孔化剤として働くことにより、本発明の多孔質着色樹脂粒子に多孔性を付与するものと考えられる。
このような反応不活性有機溶剤としては、例えば、トルエン、ベンゼン等の芳香族炭化水素、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、n−ヘキサン、n−オクタン、n−ドデカン等の飽和脂肪族炭化水素類、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、ドデカメチルペンタシロキサンなどのシロキサン類が挙げられる。これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0040】
反応不活性有機溶剤は、重合性単量体組成物100重量部に対して、5〜250重量部含まれていることが好ましい。反応不活性有機溶剤が5重量未満では、多孔質樹脂粒子の比表面積が減少し沈降を防止する効果が不十分になることがある。一方、反応不活性有機溶剤が250重量部を超えると、多孔質樹脂粒子内の空隙が多くなり過ぎて、使用したときに粒子の変形、破壊等がおこることがある。より好ましくは10〜150重量部である。
【0041】
(8)水性媒体
水系媒体としては、水、又は水と水溶性溶剤(例えば、低級アルコール)との混合物が挙げられるが、分散安定性の点から水が好ましい。水性媒体は、懸濁した粒子の安定化を図るために、重合性単量体組成物100重量部に対して、100〜1000重量部使用することが好ましい。
【0042】
(9)他の添加剤
水性媒体には、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性イオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤等の界面活性剤が添加されてもよい。界面活性剤の添加量は、重合性単量体組成物100重量部に対して、0.01〜5重量部が好ましい。より好ましくは0.02〜3重量部である。
【0043】
アニオン性界面活性剤としては、オレイン酸ナトリウム、ヒマシ油カリ等の脂肪酸油、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム等のアルキル硫酸エステル塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩等が挙げられる。
【0044】
カチオン性界面活性剤としては、例えば、ラウリルアミンアセテート、ステアリルアミンアセテート等のアルキルアミン塩、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド等の第四級アンモニウム塩等が挙げられる。
両性イオン界面活性剤としては、ラウリルジメチルアミンオキサイドや、リン酸エステル系又は亜リン酸エステル系界面活性剤が挙げられる。
【0045】
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセリン脂肪酸エステル、オキシエチレン−オキシプロピレンブロックポリマー等が挙げられる。
【0046】
重合には、重合開始剤を用いる。通常重合に用いられる油溶性の過酸化物系又はアゾ系の開始剤が挙げられる。例えば、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酸化オクタノイル、オルソクロロ過酸化ベンゾイル、オルソメトキシ過酸化ベンゾイル、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、キュメンハイドロパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド等の過酸化物系開始剤、2,2−アゾビスイソブチロニトリル、2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2−アゾビス(2,3−ジメチルブチロニトリル)、2,2−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2−アゾビス(2,3,3−トリアゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2−アゾビス(2,3,3−トリメチルブチロニトリル)、2,2−アゾビス(2−イソプロピルブチロニトリル)、1,1−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2−(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル、4,4−アゾビス(4−シアノバレリン酸)、ジメチル−2,2−アゾビスイソブチレート等が挙げられる。これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0047】
重合開始剤の添加量は、重合性単量体組成物100重量部に対して、0.05〜10重量部が好ましく、0.1〜5重量部が特に好ましい。
また、水性媒体中での乳化粒子の発生を抑えるために、亜硝酸塩類、亜硫酸塩類、ハイドロキノン類、アスコルビン酸類、水溶性ビタミンB類、クエン酸、ポリフェノール類等の水溶性の重合禁止剤を用いてもよい。
【0048】
(10)重合条件
重合は、公知の重合方法、例えば懸濁重合法、乳化重合法等を用いることができるが、重合安定性及び粒子径の調整のし易さから懸濁重合法が好ましい。以下、懸濁重合法による着色樹脂粒子の製造方法の一例について説明するが、本発明は、この製造方法のみに限定されるものではない。
【0049】
重合性単量体組成物を、分散安定剤を用いて水性媒体に懸濁させる。
分散安定剤は、重合性単量体組成物の添加前に水系分散媒へ添加することが好ましい。
懸濁重合は、水性媒体を、例えば40〜120℃、好ましくは45〜110℃の温度に加熱することにより行うことができる。懸濁重合が完了した後、得られた多孔質樹脂粒子を水性媒体中より分離、洗浄、乾燥した後、必要に応じて分級工程を経て、所望粒径の着色樹脂粒子を得ることができる。
【0050】
分散安定剤としては、目的とする多孔質樹脂粒子が得られるものであれば何ら制限されるものではないが、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等の有機高分子化合物からなる分散安定剤、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸アルミニウム、リン酸亜鉛等のリン酸塩、ピロリン酸カルシウム、ピロリン酸マグネシウム、ピロリン酸アルミニウム、ピロリン酸亜鉛等のピロリン酸塩、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、メタケイ酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、コロイダルシリカ等の難水溶性無機化合物からなる分散安定剤が挙げられる。これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、重合終了後に系のpHを調整することにより容易に溶解し、除去可能な無機化合物を用いるのがよい。例えば、第三リン酸カルシウムや複分解生成法によるピロリン酸マグネシウム、ピロリン酸カルシウム、コロイダルシリカを使用すると、目的とする多孔質樹脂粒子をより安定的に得ることができるため好ましい。
【0051】
分散安定剤は、得られる多能質樹脂粒子の粒子径が所定の大きさになるようにその組成や使用量を適宜調節して使用される。分散安定剤の添加量は、重合性単量体組成物100重量部に対して、0.1〜30重量部が好ましく、0.5〜20重量部がさらに好ましい。
【0052】
(多孔質着色樹脂粒子の用途)
得られる多孔質着色樹脂粒子は、画像表示用素子、電気粘性流体用粒子等の粒子の電気泳動を利用する用途に使用できる。この用途では、多孔質着色樹脂粒子は、分散媒中に分散させて使用される。
分散媒としては、非極性のものであればよく、特に限定されるものではない。非極性の分散媒としては、例えばペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ドデカン等のパラフィン系炭化水素、イソヘキサン、イソオクタン、イソドデカン等のイソパラフィン系炭化水素、流動パラフィン等のアルキルナフテン系炭化水素、ジメチルシリコーンオイル、フェニルメチルシリコーンオイル、ジアルキルシリコーンオイル、アルキルフェニルシリコーンオイル、環状ポリジアルキルシロキサン又は環状ポリアルキルフェ
ニルシロキサン等のシリコーンオイルが挙げられる。
【0053】
これら非極性の分散媒のうち、環境への影響、着色樹脂粒子の電気泳動のし易さ等を考慮すると、動的粘度が2〜20センチストークスのジメチルシリコーンオイル、フェニルメチルシリコーンオイル、ジアルキルシリコーンオイル、アルキルフェニルシリコーンオイル、環状ポリジアルキルシロキサン又は環状ポリアルキルフェニルシロキサン等のシリコーンオイルを用いることが好ましい。これらのシリコーンオイルの25℃における液比重は、概ね0.79〜1.00g/cm3の範囲である。
【0054】
シリコーンオイルに着色樹脂粒子を分散させて得られる分散体において、着色樹脂粒子が占める割合は、分散体100重量%に対して1〜50重量%であることが好ましい。より好ましくは、10〜40重量%である。1重量%未満の場合、表示に必要な色濃度を確保できない場合がある。一方、50重量%を超える場合、分散体の粘度が高くなり、着色樹脂粒子が電気泳動により移動できない場合がある。
【実施例】
【0055】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
まず、平均粒子径及びCV値の測定方法、比表面積の測定方法、細孔容積の測定方法、極性の評価方法、沈降性の評価方法について説明する。
【0056】
(平均粒子径及びCV値の測定方法)
多孔質着色樹脂粒子の平均粒子径の測定方法は、Coulter Electronics Limited発行のReference MANUAL FOR THE COULTER MULTISIZER(1987)に従って、粒子サイズに適した細孔容積サイズを有するアパチャーを用いてキャリブレーションを行う方法とする。使用するアパチャーの細孔径サイズは、平均粒子径が1〜10μm未満の多孔質着色樹脂粒子に対しては50μmを、平均粒子径が10〜30μm未満の多孔質着色樹脂粒子に対しては100μmのものを用いる。
【0057】
測定には、精密粒度分布測定装置(ベックマンコールター社製、型式:コールターマルチサイザーIII)を用いる。具体的には、多孔質着色樹脂粒子0.1gを0.3%ノニオン系界面活性剤溶液10ml中にタッチミキサー及び超音波を用いて予備分散させ、これを本体備え付けのISOTONII(ベックマンコールター社製、測定用電解液)を満たしたビーカー中に、緩く攪拌しながらスポイドで滴下して、本体画面の濃度計の示度を10%前後に合わせる。次にマルチサイザーIII本体にアパチャーをセットし、Current、Gain、Polarityをアパチャーサイズに合わせた所定の条件で測定を行う。測定中は気泡が入らない程度にビーカー内を緩く攪拌しておき、多孔質着色樹脂粒子を10万個測定した時点で測定を終了する。
【0058】
体積加重の平均粒子径(体積%モードの算術平均径:体積メジアン径)を多孔質着色樹脂粒子の平均粒子径(Y)として算出する。
変動係数(CV値)を、標準偏差(σ)及び上記平均粒子径(Y)から次式により算出する。
CV値(%)=(σ/Y)×100
【0059】
(比表面積の測定方法)
比表面積は、多孔質着色樹脂粒子を70℃で24時間乾燥した後、0.3g秤量し、気体吸着による粒子(固体)の比表面積測定方法であるJIS Z 8830:2001のBET多点定容量法に基づき、自動比表面積/細孔分布測定装置(島津製作所社製トライスター3000/バキュプレップ061LB)により、窒素ガスを用いて測定する。
【0060】
(細孔容積の測定方法)
細孔容積は、多孔質着色樹脂粒子を70℃で24時間乾燥した後、0.3g秤量し、自動比表面積/細孔分布測定装置(島津製作所社製トライスター3000/バキュプレップ061LB)により、窒素ガスを用いて測定したBJH法による細孔分布計算結果の積算値から得られる。
【0061】
(極性の評価)
シリコーンオイル中における多孔質着色樹脂粒子の極性を、次の方法により測定する。
20mlのガラス瓶に、多孔質着色樹脂粒子を量り取り、そこに多孔質着色樹脂粒子固形分が5重量%になるようにシリコーンオイル(動粘度:2センチストークス、信越化学工業株式会社製、製品名:KF−96L−2CS)を加えて10gとし、これを測定用試料とする。
次に、片面に酸化インジウムスズ(ITO)をコートしたガラス板2枚を、コート面を内側にし、銅テープを貼り付けたスペーサーをガラス板間に挟んでガラス板の間隔を1mmとした平行平板(冶具)を用意する。この冶具を測定用試料に浸漬し、冶具の左側に+100Vの電圧を印加して10秒間静置する。10秒経過後、測定用試料から冶具を引き上げ、左側のガラス板に粒子が付着していれば極性は負、右側のガラス板に粒子が付着していれば極性は正と判断する。
【0062】
(沈降性の評価)
シリコーンオイル中における着色樹脂粒子の分散安定性評価については、次の方法により行う。
実施例、比較例に記載の着色樹脂粒子を3g量り取り、そこへ着色樹脂粒子固形分が5重量%となるようにシリコーンオイル(動粘度:2センチストークス、KF-96L-2CS、信越化学社製)を加えて超音波を3分間照射し着色樹脂粒子を分散させ、これを測定用試料とする。測定用試料20mlを20mlメスシリンダーに移し、静置15分経過後の着色樹脂粒子の分散状態を観察し、着色樹脂粒子の沈降した高さをメスシリンダーの目盛りから読みとる。
沈降高さ=無色透明な上澄みの最下部の目盛り
【0063】
電子供与基を有する化合物(窒素含有基を有する化合物)の製造例1
500mlセパラブルフラスコにシリコーンオイル(動粘度:1センチストークス、信越化学工業株式会社製、製品名:KF−96L−1CS)150gと、予め重合開始剤として2,2−アゾ−ビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)(以下「ABNV」)3gを溶解した。N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート(共栄社化学株式会社製、製品名:ライトエステルDE)10g、シリコーンマクロモノマー(チッソ株式会社製、製品名:サイラプレーンFM−0721)138g及びα−メチルスチレンダイマー(日油株式会社製、製品名:ノフマーMSD)1.2gを添加し、窒素雰囲気下70℃にて攪拌を行いながら20時間溶液重合を行った。重合終了後、減圧下70℃にてシリコーンオイルを除去することで、電子供与基を有する化合物Aを得た。
【0064】
電子供与基を有する化合物(窒素含有基を有する化合物)の製造例2
500mlセパラブルフラスコにシリコーンオイル(動粘度:1センチストークス、信越化学工業株式会社製、製品名:KF−96L−1CS)140gと、予め重合開始剤として2,2−アゾ−ビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)(以下「ABNV」)3gを溶解した。N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート(共栄社化学株式会社製、製品名:ライトエステルDE)15g、シリコーンマクロモノマー(チッソ株式会社製、製品名:サイラプレーンFM−0725)120g及びα−メチルスチレンダイマー(日油株式会社製、製品名:ノフマーMSD)1.0gを添加し、窒素雰囲気下70℃にて攪拌を行いながら20時間溶液重合を行った。重合終了後、減圧下70℃にてシリコーンオイルを除去することで、電子供与基を有する化合物Bを得た。
【0065】
(実施例1)
(メタ)アクリル酸アルキルエステル系単量体としてのアクリル酸イソステアリル(以下「ISTA」)と、電子吸引基を有する化合物としてのトリフロロエチルメタクリレート(共栄社化学株式会社製、製品名:ライトエステルM3F、以下「TFEMA」)との単量体混合物に、着色顔料としての顔料Y(山陽色素株式会社製、製品名:Fast Yellow 7416)を加え、直径5mmのジルコニアビーズの入ったビーズポッド中で12時間攪拌することで、単量体混合物に顔料を分散させた。次いで、得られた分散液の一部を計り取り、ISTA、架橋剤としてのエチレングリコールジメタクリレート(以下「EGDMA」)及び電子供与基を有する化合物としての製造例で得られた窒素含有基を有する化合物を添加して、ISTA/TFEMA/EGDMA/窒素含有基を有する化合物A/顔料Y=63/10/20/1.0/6.0(重量%)の重合性単量体組成物を得た。得られた重合性単量体組成物100重量部に、反応不活性有機溶剤として酢酸エチル24重量部及び重合開始剤としてのABNV1.0重量部を順次添加した。
【0066】
次いで、予め調整された、アニオン性界面活性剤としてのラウリルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.025重量%と無機系分散剤としてのピロリン酸マグネシウム1.0重量%を分散した水500重量部に重合性単量体組成物を投入し、高速乳化・分散機(特殊機化工業株式会社(現:プライミクス株式会社)製、型式:T.K.ホモミクサーMARKII 2.5型)を用いて、回転数3500rpmで5分間撹拌し、1次懸濁液を得た。
次いで、ナノマイザープロセッサー(ナノマイザー株式会社製、型式:LD−500)を接続したナノマイザー(ナノマイザー株式会社製、型式:LA−33型)を用いて、一次圧力5kg/cm2で1次懸濁液を処理し、2次懸濁液を得た。
【0067】
得られた2次懸濁液を、窒素雰囲気下で全体を均一に撹拌しながら昇温し、60℃で12時間保持して、単量体を重合させた。次いで常温まで冷却し、塩酸を添加してpHを2以下とし懸濁安定剤としてのピロリン酸マグネシウムを溶解させた。次いで固液分離、水洗浄を繰り返し行った後、70℃の減圧乾燥機で12時間乾燥させ、多孔質着色樹脂粒子を得た。
得られた着色樹脂粒子は、平均粒子径10.1μm、CV値24.4%、比表面積3.5m3/g、細孔容積0.01cm3/gであった。また、シリコーンオイル中での極性は負であり、沈降高さは16.4であった。
【0068】
(実施例2)
重合性単量体組成物としてISTA/TFEMA/EGDMA/化合物A/顔料Y=56/20/20/1.0/3.0(重量%)を、反応不活性有機溶剤としてKF−96L−1CS(オクタメチルトリシロキサン:信越化学工業社製)(以下「1CS」)を25重量部、ラウリルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.026重量%用いたこと以外は、実施例1と同様にして多孔質着色樹脂粒子を得た。
得られた着色樹脂粒子は、平均粒子径8.6μm、CV値25.1%、比表面積3.7m3/g、細孔容積0.01cm3/gであった。また、シリコーンオイル中での極性は負であり、沈降高さは16.0であった。
【0069】
(実施例3)
重合性単量体組成物としてISTA/TFEMA/EGDMA/化合物A/顔料Y=49/20/20/5.0/6.0(重量%)を、反応不活性有機溶剤として1CS21重量部、ラウリルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.026重量%を用いたこと以外は、実施例1と同様にして多孔質着色樹脂粒子を得た。
得られた着色樹脂粒子は、平均粒子径8.9μm、CV値26.2%、比表面積8.1m3/g、細孔容積0.02cm3/gであった。また、シリコーンオイル中での極性は負であり、沈降高さは17.0であった。
また、図1に多孔質着色樹脂粒子の透過型電子顕微鏡(TEM)写真を示す。図中、黒色(最も濃い色の)部分は顔料部分、薄い黒色(比較的濃い色の)部分は樹脂部分、薄い灰色(比較的薄い色の)部分は空孔部分を示す。この写真及び比表面積と細孔容積のデータから、得られた着色樹脂粒子が着色顔料を粒子内部に含有しており、かつ多孔質であることがわかる。
【0070】
(実施例4)
重合性単量体組成物としてISTA/TFEMA/EGDMA/化合物A/顔料Y=60/20/15/3.0/2.0(重量%)を、反応不活性有機溶剤として1CS 23重量部、ラウリルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.025重量%を用いたこと以外は、実施例1と同様にして多孔質着色樹脂粒子を得た。
得られた着色樹脂粒子は、平均粒子径9.3μm、CV値23.6%、比表面積5.7m3/g、細孔容積0.02cm3/gであった。また、シリコーンオイル中での極性は負であり、沈降高さは17.5であった。
【0071】
(実施例5)
重合性単量体組成物としてMMA/TFEMA/EGDMA/化合物A/顔料Y=59/5.0/30/3.0/3.0(重量%)を、反応不活性有機溶剤として酢酸エチル24重量部、ラウリルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.035重量%を用いたこと以外は、実施例1と同様にして多孔質着色樹脂粒子得た。
得られた着色樹脂粒子は、平均粒子径5.3μm、CV値27.1%、比表面積35m3/g、細孔容積0.12cm3/gであった。また、シリコーンオイル中での極性は負であり、沈降高さは13.5であった。
【0072】
(実施例6)
重合性単量体組成物としてMMA/BONTRON E−89(カリックスアレーン系化合物:オリエント化学工業社製)/EGDMA/化合物B/顔料Y=45/3.0/42/7.0/3.0(重量%)を、反応不活性有機溶剤として酢酸エチル120重量部、ラウリルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.026重量%を用いたこと以外は、実施例1と同様にして多孔質着色樹脂粒子得た。
得られた着色樹脂粒子は、平均粒子径8.9μm、CV値27.5%、比表面積61m3/g、細孔容積0.39cm3/gであった。また、シリコーンオイル中での極性は負であり、沈降高さは14.2であった。
【0073】
(実施例7)
重合性単量体組成物としてMMA/TFEMA/EGDMA+DVB(新日鉄化学社製)/化合物B/顔料Y=56/6.0/20+10/3.0/5.0(重量%)を、反応不活性有機溶剤として酢酸エチル120重量部、ラウリルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.027重量%を用いたこと以外は、実施例1と同様にして多孔質着色樹脂粒子得た。
得られた着色樹脂粒子は、平均粒子径8.4μm、CV値26.5%、比表面積40m3/g、細孔容積0.28cm3/gであった。また、シリコーンオイル中での極性は負であり、沈降高さは13.6であった。
【0074】
(実施例8)
重合性単量体組成物としてLA(大阪有機化学工業社製)/TFEMA/EGDMA/化合物B/顔料R(大日精化株式会社製、製品名:クロモファインレッド6605T)=24/45/25/3.0/3.0(重量%)を、反応不活性有機溶剤として酢酸エチル100重量部、ラウリルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.025重量%を用いたこと以外は、実施例1と同様にして多孔質着色樹脂粒子得た。
得られた着色樹脂粒子は、平均粒子径9.2μm、CV値28.1%、比表面積15m3/g、細孔容積0.07cm3/gであった。また、シリコーンオイル中での極性は負であり、沈降高さは15.3であった。
【0075】
(比較例1)
重合性単量体組成物としてISTA/TFEMA/EGDMA/化合物A/顔料Y=52/20/20/2.0/6.0(重量%)を用い、反応不活性有機溶剤を用いないこと以外は、実施例1と同様にして着色樹脂粒子を得た。
得られた着色樹脂粒子は、平均粒子径9.4μm、CV値23.1%、比表面積0.6m3/gであった。また、シリコーンオイル中での極性は負であり、沈降高さは13.7であった。なお、細孔が存在せず、その細孔容積は測定できなかった。
また、図2に着色樹脂粒子の透過型電子顕微鏡(TEM)写真を示す。
【0076】
(比較例2)
重合性単量体組成物としてMMA/TFEMA/EGDMA/化合物A/顔料Y=78/10/5.0/1.0/6.0(重量%)を用い、反応不活性有機溶剤を用いないこと以外は、実施例1と同様にして着色樹脂粒子を得た。
得られた着色樹脂粒子は、平均粒子径8.9μm、CV値26.9%、比表面積0.7m3/gであった。また、シリコーンオイル中での極性は負であり、沈降高さは9.6であった。なお、細孔が存在せず、その細孔容積は測定できなかった。
実施例1〜8及び比較例1〜2の結果を、使用した原料およびそれらの使用量と共に表1に示す。また、各多孔質着色樹脂粒子について測定した密度も併せて示す。
【0077】
【表1】

【0078】
表1の結果から、本発明の多孔質着色樹脂粒子(実施例1〜4)は、これらと同程度の密度を有する従来の中実の着色樹脂粒子(比較例1)に比べて、シリコーンオイル中での沈降が少ないことがわかる。
また、本発明の多孔質着色樹脂粒子(実施例5〜8)は、これらと同程度の密度を有する従来の中実の着色樹脂粒子(比較例2)に比べて、シリコーンオイル中での沈降が少ないことがわかる。
すなわち、樹脂粒子の密度が沈降高さに影響を与えることから、本発明の多孔質着色樹脂粒子は、同程度の密度を有する従来の中実の着色樹脂粒子と比較した場合に、非極性溶媒中での沈降が防止できることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル酸アルキルエステル系単量体及び架橋剤と、負帯電性付与用の電子吸引基を有する化合物及び電子供与基を有する化合物と、着色顔料とを含む重合性単量体組成物由来の重合体から構成され、かつ2〜90m2/gの比表面積及び0.01〜0.7cm3/gの細孔容積を有することを特徴とする負帯電性を示す架橋(メタ)アクリル酸エステル系多孔質着色樹脂粒子。
【請求項2】
前記電子供与基を有する化合物が、(メタ)アクリル酸のアミノアルキルエステル、スチレンのアミノアルキル誘導体及びピリジル基を有する重合性単量体から選択される少なくとも1種以上である請求項1に記載の負帯電性を示す架橋(メタ)アクリル酸エステル系多孔質着色樹脂粒子。
【請求項3】
前記電子吸引基を有する化合物が、
クロロエチル(メタ)アクリレート、ジブロモプロピル(メタ)アクリレート、トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、EO(エチレンオキシド)変性トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、トリヨードフェノール(メタ)アクリレート、トリフロロエチル(メタ)アクリレート、テトラフロロプロピル(メタ)アクリレート、ヘキサフロロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフロロペンチル(メタ)アクリレート、ヘプタデカフロロデシル(メタ)アクリレート及びクロロスチレンから選択される化合物、
クロムアゾ錯体染料、鉄アゾ錯体染料及びコバルトアゾ錯体染料から選択される、電子吸引基を有し荷電制御剤として機能するアゾ含金属化合物、
サリチル酸亜鉛錯体、サリチル酸クロム錯体及びサリチル酸アルミニウム錯体から選択される、電子吸引基を有し荷電制御剤として機能するサリチル酸金属錯体、並びに
フェノールがその2,6−位で縮合された、電子吸引基を有し荷電制御剤として機能するカリックスアレーン系化合物
から選択される少なくとも1種以上である請求項1または2に記載の負帯電性を示す架橋(メタ)アクリル酸エステル系多孔質着色樹脂粒子。
【請求項4】
(メタ)アクリル酸アルキルエステル系単量体15〜93.4重量%と、架橋剤5〜70重量%と、電子吸引基を有する化合物0.5〜78.9重量%と、電子供与基を有する化合物0.1〜20重量%と、着色顔料1〜25重量%とを含む重合性単量体組成物100重量部に対して、反応不活性有機溶剤5〜250重量部を含む混合物を、水性媒体中で重合させることで多孔質着色樹脂粒子を得る工程を含むことを特徴とする負帯電性を示す架橋(メタ)アクリル酸エステル系多孔質着色樹脂粒子の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1つに記載の負帯電性を示す架橋(メタ)アクリル酸エステル系多孔質着色樹脂粒子をシリコーンオイルに分散させてなる負帯電性を示す電気泳動用着色樹脂粒子のシリコーンオイル分散体。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−201819(P2012−201819A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−68406(P2011−68406)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】