説明

負荷短絡検出装置,画像形成装置

【課題】誘導コイルなどの負荷の短絡検出時におけるスイッチング素子への過電流の入力を防止することのできる負荷短絡検出装置及びこれを備える画像形成装置を提供すること。
【解決手段】少なくとも電源1,誘導コイル221,IGBT231が順に接続され,IGBT231の駆動の有無によって電源1から誘導コイル221への電力供給を制御する電気回路Xに,IGBT231に並列接続され,該IGBT231の非駆動状態で誘導コイル221に通電して該誘導コイル221の短絡の有無を検出する短絡検出回路24を設けておき,短絡検出回路24によって誘導コイル221の短絡が検出された場合に,ヒューズ12を切ることでIGBT231の駆動,即ちIGBT231への通電を禁止することを特徴として構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,電気回路の負荷の短絡を検出する負荷短絡検出装置に関し,特に,前記負荷への電力供給がスイッチング素子の通電の有無によって制御される電気回路における前記負荷の短絡検出技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から,例えば複写機やプリンタ装置,ファクシミリ装置,これらの複合機などの画像形成装置には,定着装置の定着ローラを誘導加熱方式で加熱する誘導加熱ヒータが設けられる。一般に,前記誘導加熱ヒータでは,誘導コイルへの電力供給を,トランジスタやFET,IGBTなどのスイッチング素子のスイッチング動作によって制御する。なお,前記誘導加熱ヒータは,前記画像形成装置に限られず,例えば電磁調理器などの家電製品にも用いられる。
ところで,前記誘導コイルは,経年劣化などによって短絡するおそれがある。前記誘導コイルに短絡が生じた状態で前記誘導加熱ヒータが稼働し,スイッチング素子への通電が開始されると,前記誘導コイルにおいて過電流が発生し,その過電流がスイッチング素子に流れ,該スイッチング素子が破壊されるという問題がある。
一方,例えば特許文献1には,誘導コイルに流れる電流に基づいて該誘導コイルへの供給電力の最大値を制限するための技術が開示されている。
【特許文献1】特開2001−43964号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら,前記特許文献1に開示された構成では,前記誘導コイルに流れる電流を検出する際にはスイッチング素子が駆動されており,該スイッチング素子に通電がなされている。そのため,前記誘導コイルが短絡している場合に前記スイッチング素子に過電流が入力されることがあり,該スイッチング素子に定格電流の大きなものを用いる必要があるが,前記スイッチング素子に定格電流の大きなものを用いるためにはコストの増大などの問題を伴うことになる。特に,トランジスタやFETなどに比べて,自己消弧形で大電力の高速スイッチングが可能なIGBTは,一般的に定格電流の大きなものが高価である。
従って,本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり,その目的とするところは,誘導コイルなどの負荷の短絡検出時におけるスイッチング素子への過電流の入力を防止することのできる負荷短絡検出装置及びこれを備える画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するために本発明は,少なくとも電源,負荷,スイッチング素子が順に接続され,前記スイッチング素子の駆動の有無によって前記電源から前記負荷への電力供給を制御する電気回路における前記負荷の短絡を検出する負荷短絡検出装置に適用されるものであって,前記スイッチング素子に並列接続され,該スイッチング素子の非駆動状態で前記負荷に通電して該負荷の短絡の有無を検出する短絡検出手段と,前記短絡検出手段によって前記負荷の短絡が検出された場合に,前記スイッチング素子の駆動を禁止する駆動禁止手段とを備えてなることを特徴とする負荷短絡検出装置として構成される。
具体的に,前記短絡検出手段は,当該負荷短絡検出装置が搭載される電気機器の稼働後,前記スイッチング素子の駆動開始前に,前記負荷の短絡の有無を検出するものであることが考えられる。
本発明によれば,前記負荷の短絡の有無が前記スイッチング素子の非駆動状態で検出されるため,該負荷に短絡が生じている場合における前記スイッチング素子への過電流の入力が防止され,該スイッチング素子に定格電流の小さなものを用いることができ,電気回路を安価に構成することができる。
特に,前記スイッチング素子として絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)を用いる場合は,定格電流の大きいものが高価になるため,本発明が好適である。
ここに,前記負荷は,例えば定着装置の定着ローラなどの誘導加熱に用いられる誘導コイルであることが考えられる。
【0005】
ところで,前記駆動禁止手段は,前記短絡検出手段によって前記負荷の短絡が検出された場合に,前記電源から前記負荷及び前記スイッチング素子への電力供給経路を遮断することにより,前記スイッチング素子の駆動を禁止するものであることが一例として考えられる。
このとき,前記電気回路に,前記電源から入力される交流電圧を直流電圧に変換して前記負荷に出力する電圧変換回路と,前記電源から前記電圧変換回路への電力供給経路上に定格以上の電流が流れたことを条件に該電力供給経路を遮断する過電流保護素子(ヒューズ等)とを設けておき,前記短絡検出手段によって前記負荷の短絡が検出された場合に,前記電圧変換回路の出力側を短絡させることにより前記過電流保護素子を切断させることが望ましい。
これにより,前記電力供給経路が確実に遮断されるため,前記電源から前記スイッチング素子への過電流の入力を確実に防止することが可能である。
より具体的な構成としては,前記駆動禁止手段が,前記電圧変換回路の出力側の短絡の有無を切り換えるサイリスタと,前記短絡検出手段によって前記負荷の短絡が検出された場合に前記サイリスタにゲート電流を流すサイリスタ駆動回路とを含んでなることが考えられる。
【0006】
また,前記短絡検出手段の一例としては,前記負荷から出力される電流を検出する電流検出手段を含んでなり,該電流検出手段により検出された電流に応じて前記負荷の短絡の有無を判断するものであることが考えられる。
また,前記電源及び前記負荷がコネクタ接続されるものである場合,前記短絡検出手段によって前記負荷の短絡の有無が検出されるときに,前記負荷に流れる電流に応じて前記コネクタの接続異常の有無を検出することも可能である。これにより,事前に前記負荷の接続状態の良否を確認することができるため,該負荷の不安定な動作を防止することができる。
ところで,本発明は,前記負荷短絡検出装置を備えてなり,前記負荷が,定着ローラの誘導加熱に用いられる誘導コイルである画像形成装置として捉えてもよい。当該画像形成装置では,前記定着ローラの誘導加熱が行われていない状態で,前記誘導コイルの短絡の有無が検出され,前記スイッチング素子への過電流の入力が防止される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば,前記負荷の短絡の有無が前記スイッチング素子の非駆動状態で検出されるため,該負荷に短絡が生じている場合における前記スイッチング素子への過電流の入力が防止され,該スイッチング素子に定格電流の小さなものを用いることができ,電気回路を安価に構成することができる。特に,前記スイッチング素子として絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)を用いる場合は,定格電流の大きいものが高価になるため,本発明が好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下添付図面を参照しながら,本発明の実施の形態について説明し,本発明の理解に供する。なお,以下の実施の形態は,本発明を具体化した一例であって,本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
ここに,図1は本発明の実施の形態に係る画像形成装置の定着装置に係る電気回路Xの概略構成図,図2は前記電気回路Xの動作を説明するためのタイムチャートである。
本発明の実施の形態に係る画像形成装置は,例えば複写機やプリンタ装置,ファクシミリ装置,これらの複合機など,電子写真方式の画像形成装置であって,トナー像が転写された用紙にそのトナー像を溶融定着させる定着装置を備えている。なお,前記画像形成装置や前記定着装置は,本実施の形態で説明する構成部品の他に一般的な画像形成装置や定着装置に設けられた構成部品を有している。
前記定着装置は,用紙に圧接される定着ローラを電磁誘導方式で誘導加熱するための誘導コイル221(負荷の一例,図1参照)を有しており,該誘導コイル221への電力供給を制御することによって,前記定着ローラの温度を制御する。具体的に,前記画像形成装置では,図1に示す電気回路X(図1参照)によって,後述のIGBT231の駆動の有無が制御されること(スイッチング制御)によって前記誘導コイル221への電力供給が制御される。
【0009】
まず,図1を用いて前記電気回路Xの概略構成について説明し,その後,図2を用いて前記電気回路Xの動作について説明する。
図1に示すように,前記電気回路Xは,商用交流電源などの電源1に接続された交流回路10と,当該電気回路Xの負荷である誘導コイル221が接続された直流回路20と,前記電源1から前記交流回路10に供給された交流電圧を直流電圧に変換して前記直流回路20に出力する整流回路30と,前記電源1から前記交流回路10に供給された交流電力から低電圧(5Vや15Vなど)の直流電圧を生成するAC/DCコンバータ40とを備えて構成されている。
前記整流回路30には,前記電源1から供給された交流電圧の全波整流を行うダイオードブリッジ回路や,高周波フィルタとして作用するコンデンサなどが設けられている。
前記AC/DCコンバータ40で生成された直流電圧は,当該画像形成装置を統括的に制御するマイコン2や,後述のスイッチング回路23のスイッチング制御を行うドライブ回路3などの駆動電圧,後述の短絡検出回路24のコンパレータ243の基準電圧として用いられる。
【0010】
ここで,前記交流回路10に接続された各電子部品について説明する。
図1に示すように,前記交流回路10には,前記整流回路30及び前記AC/DCコンバータ40の他に,バンドパスフィルタなどのフィルタ回路11,ヒューズ12(過電流保護素子の一例),インタロックスイッチ13,サーモスタット14,トランス15,電源スイッチ16などが接続されている。なお,前記サーモスタット14は,コネクタ26によって前記交流回路10に着脱可能に接続されている。
前記ヒューズ12は,定格以上の電流が流れたときに自己発熱によって切断され,前記電源1から前記交流回路10への電力供給経路を遮断するものである。例えば,前記ヒューズ12は,前記直流回路20の出力が短絡して前記交流回路10に過電流が流れた場合に切れる。
前記インタロックスイッチ13は,前記画像形成装置に設けられた各種のメンテナンス扉が開放されたときに前記交流回路10を遮断するリミットスイッチなどである。
前記サーモスタット14は,前記誘導コイル221の温度を検出するサーミスタ等の温度センサを有しており,該温度センサによる検出温度が予め設定された過大温度以上に達した場合に前記交流回路10を遮断することにより,前記直流回路20への電力供給を停止させるものである。
【0011】
前記トランス15では,前記交流回路10に流れる電流によって一次側コイルで磁束が発生し,該磁束によって二次側コイルに誘導電流が発生する。図示しないが,前記トランス15の二次側コイルには,前記誘導電流に基づいて前記交流回路10上に流れる電流値を検出する電流検出回路などが接続されている。前記電流検出回路で検出された電流値は,例えば前記マイコン2に入力され,該マイコン2による前記電気回路Xの異常検知や電流制御などに用いられる。
前記電源スイッチ16は,前記画像形成装置の稼働,停止を切り換えるものである。前記画像形成装置では,前記インタロックスイッチ13が閉じられ,前記電源スイッチ16がONされることにより,前記電源1から前記交流回路10に交流電力が供給される。これにより,前記AC/DCコンバータ40から前記マイコン2に駆動電圧が供給され,該マイコン2が稼働する。但し,前述したように,前記ヒューズ12が切れた場合には,前記交流回路10は遮断される。
【0012】
次に,前記直流回路20に接続された各電子部品について説明する。
図1に示すように,前記直流回路20には,平滑回路21,共振回路22,スイッチング回路23,短絡検出回路24(短絡検出手段の一例),短絡発生回路25(駆動禁止手段の一例)などが接続されている。
前記平滑回路21は,チョークコイル及びコンデンサを有するチョーク入力型平滑回路であって,前記整流回路30からの出力電圧を平滑(脈動分を除去)するものである。
前記共振回路22は,前記画像形成装置に設けられた定着ローラの誘導加熱に用いられる誘導コイル221と,該誘導コイル221に並列接続されたコンデンサ222とを有している。なお,前記誘導コイル221は,前記サーモスタット14と同様に前記コネクタ26によって前記直流回路20に着脱可能に接続されている。
【0013】
前記スイッチング回路23は,前記誘導コイル221への通電のスイッチング動作により,該誘導コイル221に交流パルスを入力するものであって,スイッチング素子の一例である絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)231と,該IGBT231に並列接続された逆導通ダイオード232とを有している。なお,前記IGBT231に換えてトランジスタやFETなどを用いてもかまわない。
具体的に,前記IGBT231は,ゲート端子に前記ドライブ回路3からスイッチング信号(駆動電流)が入力されることによって駆動し,コレクタ−エミッタ間を導通する。これにより,前記電源1からの供給電力は,前記整流回路30で整流された後,前記直流回路20において前記誘導コイル221及び前記IGBT231に通電される。即ち,前記電気回路Xでは,前記電源1,前記誘導コイル221,前記スイッチング回路23が順に接続されている。
なお,前記逆導通ダイオード232は,逆耐圧をもたせるためのものであって,前記IGBT231として逆阻止絶縁ゲートバイポーラトランジスタを用いる場合には,該逆導通ダイオード232は省略可能である。
【0014】
そして,前記短絡検出回路24及び前記短絡発生回路25を含む回路Y(図1参照)が,本発明に係る負荷短絡検出装置の一例に該当し,前記電気回路Xにおける前記誘導コイル221の短絡を検出するものである。
前記短絡検出回路24は,前記スイッチング回路23に並列接続されており,前記IGBT231の非駆動状態,即ち前記IGBT231に通電されていない状態で,前記誘導コイル221に通電し,該誘導コイル221の短絡の有無を検出するためのものである。具体的に,前記短絡検出回路24には,トランジスタ241,カレントトランス242,コンパレータ243などが設けられている。
前記トランジスタ241は,前記ドライブ回路3からゲート端子に駆動信号(駆動電流)が入力されることにより駆動し,コレクタ−エミッタ間を導通する。これにより,前記電源1からの供給電力は,前記整流回路30で整流された後,前記直流回路20において前記誘導コイル221及び前記短絡検出回路24に通電される。このとき,前記誘導コイル221を経て流れる電流は,前記カレントトランス242に流れることになる。
また,前記誘導コイル221と前記カレントトランス242との間のP点には前記マイコン2の入力ポートが接続されており,前記誘導コイル221に流れる電流は,該マイコン2にも入力される。
前記カレントトランス242では,前記誘導コイル221から流れる電流によって一次側コイルで磁束が発生し,該磁束によって二次側コイルに誘導電流が発生する。前記カレントトランス242の二次側コイルで発生する誘導電流は,抵抗などによって電圧値(以下,「検知電圧」という)としてその大きさが検出され,前記コンパレータ243に入力される。ここに,係る動作によって前記誘導コイル221に流れる電流を検出するときの前記カレントトランス242が電流検出手段の一例である。
【0015】
前記コンパレータ243は,前記検知電圧と前記AC/DCコンバータ40から入力される基準電圧(5V)とを比較し,前記検知電圧が前記基準電圧を超えている場合,短絡検出信号を前記短絡発生回路25に入力する。ここに,前記基準電圧は,前記誘導コイル221における短絡の発生を検知するために予め設定されたものであって,前記短絡検出信号は,前記誘導コイル221において短絡が発生していることを示すものである。このように,前記短絡検出回路24では,前記カレントトランス242で検出される前記誘導コイル221に流れる電流の大きさに基づいて該誘導コイル221における短絡の発生の有無を検出している。
前記短絡発生回路25は,前記コンパレータ243からの前記短絡検出信号によって駆動するトランジスタ251と,前記トランジスタ251の駆動によってゲート端子に駆動信号(駆動電流)が入力されるサイリスタ(SCR)252とを有している。前記サイリスタ252は,前記整流回路30の出力端子間に接続されており,ゲート端子への駆動信号の入力によって前記整流回路30の出力を短絡(導通)させる。前記整流回路30の出力が短絡されると,前記交流回路10に過電流が流れるため,該交流回路10上に設けられた前記ヒューズ12が切れ,該交流回路10は遮断される。
【0016】
以下,図2を用いて,図1を参照しつつ前記電気回路Xの動作について説明する。
ここに,図2(a)は前記誘導コイル221に短絡が生じていない場合,図2(b)は前記誘導コイル221に短絡が生じている場合の前記電気回路Xの動作を説明するためのタイムチャートである。なお,図2中のt1〜t7は時系列に並んだ時点を示している。
ここでは,前記インタロックスイッチ13は閉じており,また,前記サーモスタット14による前記交流回路10の遮断もなされていないものとする。なお,以下では,前記電源スイッチ16がONされ,前記画像形成装置が稼働されて前記定着ローラの加熱が開始される場合における前記電気回路Xの動作について説明する。但し,前記画像形成装置では,例えば省エネモードからの復帰時に前記定着ローラの加熱を開始する前にその都度同様の動作が実行されてもよい。
【0017】
まず,図2(a)を参照しつつ,前記誘導コイル221に短絡が生じていない場合について説明する。
図2(a)に示すように,前記誘導コイル221に短絡が生じていない状態で,前記電源スイッチ16がONされると(時点t1),前記画像形成装置が稼働する。具体的には,前記電源1から前記交流回路10上に交流電力が供給される。
この時点t1では,前記スイッチング回路23のIGBT231へのスイッチング信号の入力,前記短絡検出回路24のトランジスタ241への駆動信号の入力はなされていない。従って,前記IGBT231及び前記トランジスタ241が共に非駆動状態にあり,前記誘導コイル221に通電がなされていない状態である。
一方,前記電源スイッチ16がONされると,前記電源1から前記交流回路10への電力供給によって,前記AC/DCコンバータ40から前記マイコン2及び前記ドライブ回路3に駆動電圧(5V,15V)が供給され,前記マイコン2及び前記ドライブ回路3が駆動する。また,前記AC/DCコンバータ40から前記コンパレータ243への基準電圧(5V)の入力も開始される。
【0018】
そして,前記マイコン2が起動すると,該マイコン2は前記ドライブ回路3に対して,前記短絡検出回路24のトランジスタ241への駆動信号の入力を指示する。これにより,前記ドライブ回路3は,前記トランジスタ241に駆動信号を入力し,該トランジスタ241を駆動させる(時点t2)。これにより,前記電源1から供給された交流電力が,前記整流回路30で直流に変換された後,前記誘導コイル221に供給(通電)される(時点t3)。
そして,前記トランジスタ241の駆動により,前記カレントトランス242の一次側コイルにも電流が流れるため,該カレントトランス242の二次側コイルから前記コンパレータ243に前記検知電圧が入力される。
ここで,前記誘導コイル221に短絡が生じていない場合には,前記コンパレータ243に入力される前記検知電圧が前記基準電圧以下であるため,該コンパレータ243から前記短絡検出信号が出力されない。そのため,前記短絡発生回路25のトランジスタ251及びサイリスタ252が駆動せず,前記整流回路30の出力端子間は短絡されない。
【0019】
ところで,前記トランジスタ241の駆動により,前記誘導コイル221に流れる電流は,該誘導コイル221と前記カレントトランス242との間の前記P点から前記マイコン2にも入力される。
このとき,前記誘導コイル221が前記コネクタ26で前記直流回路20に正常に接続されていない場合には,該誘導コイル221に流れる電流が小さすぎたり,不安定であったりする。
従って,前記マイコン2では,前記誘導コイル221に流れる電流を検出し,該電流値に基づいて前記コネクタ26の接続異常の有無を検出することが可能である。ここで,前記マイコン2は,前記コネクタ26に接続異常が生じていると判断した場合,その旨をユーザに報知し,或いは前記誘導コイル221への通電を禁止するように処理する。このように,前記短絡検出回路24による前記誘導コイル221の短絡の有無の検出が行われるときに,前記コネクタ26の接続異常の有無の検出処理を実行するときの前記マイコン2がコネクタ接続異常検出手段に相当する。
【0020】
その後,前記マイコン2は,所定時間が経過すると,前記誘導コイル221に短絡が生じていないものと判断し,前記ドライブ回路3に対して前記スイッチング回路23のスイッチング制御の開始を指示する。これにより,前記ドライブ回路3は,前記スイッチング回路23のIGBT231へのスイッチング信号の入力を開始し,該IGBT231の駆動を開始させる(時点t7)。
このように,前記電気回路Xでは,前記画像形成装置の稼働後,前記スイッチング回路23のIGBT231の駆動が開始される前の非駆動状態で,前記誘電コイル221の短絡が生じていないことを確認した上で,該IGBT231の駆動が開始される。その後は,従来通り前記誘導コイル221への電力供給が前記IGBT231のスイッチング動作によって制御され,該誘導コイル221による前記定着ローラの誘導加熱が行われる。
なお,前記スイッチング回路23のIGBT231の駆動後も前記トランジスタ241の駆動を継続させれば,前記誘導コイル221の短絡を常に監視することが可能である。もちろん,前記誘導コイル221に短絡が生じていないことが検出された時点t7で,前記トランジスタ241の駆動を停止させることも他の実施例として考えられる。
【0021】
次に,図2(b)を参照しつつ,前記誘導コイル221に短絡が生じている場合について説明する。なお,図2(a)を用いて説明した動作と同じ内容については説明を省略する。
図2(b)に示すように,前記短絡検出回路24のトランジスタ241が作動して前記誘導コイル221に通電がなされたとき(時点t3),該誘導コイル221に短絡が生じている場合には,前記カレントトランス242に大電流が流れる。これにより,前記カレントトランス242から前記コンパレータ243に入力される前記検知電圧が前記基準電圧を超えることになり,該コンパレータ243から前記短絡発生回路25のトランジスタ251に前記短絡検出信号が入力される(時点t4)。
そして,前記トランジスタ251が作動すると,前記サイリスタ252のゲート端子に駆動信号(駆動電流)が入力されて該サイリスタ252が駆動し(時点t5),前記直流回路20の出力端子間が短絡される。これにより,前記交流回路10上に前記ヒューズ12の定格以上の電流が流れるため,該ヒューズ12が切断されて前記交流回路10が遮断される(時点t6)。即ち,前記ヒューズ12の切断によって,前記電源1から前記交流回路10,前記整流回路30,前記直流回路20を経て前記誘導コイル221及び前記IGBT231に続く電力供給経路が確実に遮断され,前記IGBT231の駆動が禁止される。なお,説明の便宜上,図2では前記時点t4〜t6に時間差を設けているが,該時点t4〜t6はごく短時間(略同時)である。
【0022】
このように,前記電気回路Xでは,前記画像形成装置(電気機器の一例)の稼働後,前記スイッチング回路23のIGBT231の駆動が開始される前の非駆動状態で,前記短絡検出回路24によって前記誘導コイル221に短絡が生じていることが検出された場合には,前記短絡発生回路25によって,その後の前記スイッチング回路23のIGBT231の駆動,即ち該IGBT231への通電が禁止される。これにより,前記誘導コイル221の短絡に起因する前記IGBT231への過電流入力を確実に防止することができる。従って,前記IGBT231に定格電流が小さく安価なものを採用することができ,前記電気回路Xの低コスト化を実現することができる。
【0023】
なお,前記短絡検出回路24のトランジスタ241,カレントトランス242などの電子部品には,大容量の定格電流を有するものを用いる必要があるが,これらの電子部品について定格電流が大きいものは一般的に高価ではないため,前記IGBT231に大容量のものを採用するよりも当該電気回路Xを安価に構成することができる。
しかも,前記誘導コイル221の短絡の発生時に前記ヒューズ12を切っているため,前記交流回路10を確実に遮断することができ,フェールセーフの観点から好適である。もちろん,前記短絡検出回路24からの短絡検出信号を前記マイコン2に入力しておき,前記誘導コイル221の短絡が生じた場合,前記マイコン2が前記ドライブ回路3から前記IGBT231へのスイッチング信号の入力をさせないように処理してもよい。この場合には,前記スイッチング信号の入力を禁止するための処理を実行するときの前記マイコン2が駆動禁止手段の一例となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施の形態に係る画像形成装置の定着装置に係る電気回路の概略構成図。
【図2】本発明の実施の形態に係る画像形成装置の定着装置に係る電気回路の動作を説明するためのタイムチャート。
【符号の説明】
【0025】
1…電源
2…マイコン
3…ドライブ回路
10…交流回路
11…フィルタ回路
12…ヒューズ
13…インタロックスイッチ
14…サーモスタット
15…トランス
16…電源スイッチ
20…直流回路
21…平滑回路
22…共振回路
221…誘導コイル
222…コンデンサ
23…スイッチング回路
231…IGBT(スイッチング素子の一例)
232…逆導通ダイオード
24…短絡検出回路
241…トランジスタ
242…カレントトランス
243…コンパレータ
25…短絡発生回路
251…トランジスタ
252…サイリスタ
26…コネクタ
30…整流回路
40…AC/DCコンバータ
X…電気回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも電源,負荷,スイッチング素子が順に接続され,前記スイッチング素子の駆動の有無によって前記電源から前記負荷への電力供給を制御する電気回路における前記負荷の短絡を検出する負荷短絡検出装置であって,
前記スイッチング素子に並列接続され,該スイッチング素子の非駆動状態で前記負荷に通電して該負荷の短絡の有無を検出する短絡検出手段と,
前記短絡検出手段によって前記負荷の短絡が検出された場合に,前記スイッチング素子の駆動を禁止する駆動禁止手段と,
を備えてなることを特徴とする負荷短絡検出装置。
【請求項2】
前記短絡検出手段が,当該負荷短絡検出装置が搭載される電気機器の稼働後,前記スイッチング素子の駆動開始前に,前記負荷の短絡の有無を検出するものである請求項1に記載の負荷短絡検出装置。
【請求項3】
前記スイッチング素子が,絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)である請求項1又は2のいずれかに記載の負荷短絡検出装置。
【請求項4】
前記負荷が,誘導加熱に用いられる誘導コイルである請求項1〜3のいずれかに記載の負荷短絡検出装置。
【請求項5】
前記駆動禁止手段が,前記短絡検出手段によって前記負荷の短絡が検出された場合に,前記電源から前記負荷及び前記スイッチング素子への電力供給経路を遮断することにより,前記スイッチング素子の駆動を禁止するものである請求項1〜4のいずれかに記載の負荷短絡検出装置。
【請求項6】
前記電気回路に,前記電源から入力される交流電圧を直流電圧に変換して前記負荷に出力する電圧変換回路と,前記電源から前記電圧変換回路への電力供給経路上に定格以上の電流が流れたことを条件に該電力供給経路を遮断する過電流保護素子とが設けられてなり,
前記駆動禁止手段が,前記短絡検出手段によって前記負荷の短絡が検出された場合に,前記電圧変換回路の出力側を短絡させることにより前記過電流保護素子を切断させるものである請求項5に記載の負荷短絡検出装置。
【請求項7】
前記駆動禁止手段が,前記電圧変換回路の出力側の短絡の有無を切り換えるサイリスタと,前記短絡検出手段によって前記負荷の短絡が検出された場合に前記サイリスタにゲート電流を流すサイリスタ駆動回路とを含んでなる請求項6に記載の負荷短絡検出装置。
【請求項8】
前記短絡検出手段が,前記負荷から出力される電流を検出する電流検出手段を含んでなり,該電流検出手段により検出された電流に応じて前記負荷の短絡の有無を判断するものである請求項1〜7のいずれかに記載の負荷短絡検出装置。
【請求項9】
前記電源及び前記負荷がコネクタ接続されるものであって,
前記短絡検出手段によって前記負荷の短絡の有無が検出されるときに,前記負荷に流れる電流に応じて前記コネクタの接続異常の有無を検出するコネクタ接続異常検出手段を更に備えてなる請求項1〜8のいずれかに記載の負荷短絡検出装置。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載された負荷短絡検出装置を備えてなり,
前記負荷が,定着ローラの誘導加熱に用いられる誘導コイルである画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−128348(P2009−128348A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−307388(P2007−307388)
【出願日】平成19年11月28日(2007.11.28)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】