説明

貨幣処理装置

【課題】釣銭補充の際の利便性を向上する。
【解決手段】貨幣処理装置は、投入された貨幣を金種毎に振り分けて計数し、金種毎または混合金種の収納庫に収納し、上位制御部からの出金指示に基づいて金種および枚数を決定して収納庫から釣銭を出金するものである。ここでは、貨幣の収納枚数データを記憶するメモリ部114、メモリ部114に釣銭として収納されているべき貨幣枚数の下限値を設定し、また、釣銭補充開始の操作を受け付ける操作・表示部120、上記釣銭補充開始の操作を受け付けるとメモリ部114に記憶された上記下限値と実際の収納枚数データを比較し、収納枚数が下限値以下の貨幣が存在する場合、棒金収納庫の棒金ドロアの開放を許可する演算部115、および演算部115が開放を許可すると棒金ドロアを開放する棒金収納庫制御部112を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、投入口に投入された貨幣を金種毎に鑑別して計数し、金種毎に収納すると共に、出金指示に基づいて金種および枚数を決定して出金する貨幣処理装置に関し、とくに、POS(Point Of Sales)レジスタ等に接続されて使用される貨幣処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スーパーマーケット等に設置されるPOSレジスタには、預かり金の入金および釣銭の出金を行う貨幣処理装置が接続されている。貨幣処理装置には、一般に、硬貨を収納して管理する硬貨処理装置と紙幣を収納して管理する紙幣処理装置とから構成される。このような貨幣処理装置を用いると、投入された紙幣や硬貨(以下、貨幣という)を上記各専用の装置に収納すると共に、貨幣の金種を鑑別し、金種毎の在高を計数する等の管理を行うことができる。
【0003】
また、貨幣処理装置は、上記各装置の他にキャッシュドロア(以下、単にドロアという)と呼ばれる予備金庫を備えている。ドロアは、例えば、売上金や上記各装置に収納しきれない貨幣等を一時的に保管するためのものである。
【0004】
ここで、ドロアの開放は、通常、セキュリティ等の要件から、貨幣処理装置の上位に接続されたPOSレジスタによる操作が必要となる。しかし、常にPOSレジスタの操作を必要とすると、不意にドロアの開放が必要となった際にPOSレジスタでの操作に手間取り、作業効率が低下するという問題がある。これに対し、硬貨処理装置や紙幣処理装置から貨幣を取り出してドロアに移す際、収納部の満杯や貨幣の汚損が原因で収納不可であれば、貨幣処理装置における開放指令のみでドロアを開放可能とする方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−004347号公報(段落番号[0007]〜[0018]、図3等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、貨幣処理装置では、上記の硬貨処理装置や紙幣処理装置において、金種毎に釣銭として必要な貨幣の収納枚数を管理している。そして、貨幣処理装置に収納されている釣銭用の貨幣の数量が減ってくると、POSレジスタに貨幣の補充が必要である旨を通知する。更に、POSレジスタの操作者は、この通知により補充の必要性を認識し、釣銭用の貨幣を貨幣処理装置に補充する。
【0006】
通常、釣銭用の貨幣の保管場所は、店舗後方の会計室やサービスカウンタ等、POSレジスタの設置位置とは別の場所であることが多い。このため、貨幣補充に際して、店舗内を大きく移動しなくてはならず、非常に手間が掛かる。これに対し、ドロアに釣銭用の貨幣を保管可能とすることが考えられる。このようにすると、貨幣処理装置に収納された釣銭の補充に際して、ドロア内に保管された貨幣を用いることができるため店舗内を移動する手間を省くことができる。この場合でも、ドロアの開放にはPOSレジスタでの操作を考慮する必要がある。
【0007】
これに対して、上記特許文献1に記載の方法では、硬貨処理装置等の余剰貨幣をドロアに収納する際に、貨幣処理装置における操作のみでドロアを開放可能としているが、釣銭補充の動作に際しては、依然として作業効率が低下する可能性がある。
【0008】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、釣銭補充の際に利便性の高い貨幣処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
投入された貨幣を金種毎に振り分けて計数し、金種毎または混合金種の収納庫に収納し、上位制御部からの出金指示に基づいて金種および枚数を決定して前記収納庫から釣銭を出金する貨幣処理装置が提供される。この貨幣処理装置は、前記収納庫とは別に金種毎に包装された包装硬貨を保管する予備金庫と、前記収納庫に収納された金種のうち少なくとも一種の前記硬貨の数が所定の下限値以下であると判定し、かつ、当該硬貨の補充指示を受け付けると、前記予備金庫を開放する制御部と、を有する。
【0010】
このような貨幣処理装置によれば、予備金庫により、収納庫とは別に金種毎に包装された包装硬貨が保管される。そして、制御部により、収納庫に収納された金種のうち少なくとも一種の硬貨の数が所定の下限値以下であると判定され、かつ、当該硬貨の補充指示が受け付けられると、予備金庫が開放される。
【発明の効果】
【0011】
上記貨幣処理装置によれば、釣銭補充の際の利便性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照してこの発明の実施の形態について説明する。図1は、貨幣処理装置の外観を示す図であって、(a)は上面図、(b)は正面図である。
(貨幣処理装置の構成)
この貨幣処理装置10は、紙幣の収納庫を有する紙幣部11と硬貨の収納庫を有する硬貨部12および棒金収納庫20を有し、不図示の上位制御部であるPOSレジスタから情報を受け取る受取部13と、必要な情報を記憶する不図示のメモリ(記憶媒体)を有している。また、上記収納庫の貨幣(紙幣および硬貨)の収納状況に関する情報を表示して所要のガイダンスを行う操作表示パネル14を備え、紙幣部11には紙幣投入口15および紙幣出金口16が設けられ、硬貨部12には硬貨投入口17および硬貨出金口18が設けられている。回収庫19は、各金種別収納庫から貨幣を回収するための回収庫である。棒金収納庫20は、棒金硬貨(金種毎、かつ、複数枚毎に包装された包装硬貨)を保管するための予備金庫である。棒金収納庫20は、棒金ストッカともいう。
【0013】
受取部13は、操作表示パネル14に表示もしくは音声出力する情報をPOSレジスタから受け取る。また、操作表示パネル14に表示もしくは音声出力する情報を記憶するメモリは、貨幣処理装置10内に無くてもよく、外部のUSBメモリ等を用いて必要な情報を入力するようにしてもよい。
【0014】
貨幣処理装置10は、紙幣投入口15および硬貨投入口17から投入された紙幣あるいは硬貨を金種毎に鑑別して計数し、金種毎に設けられた収納庫もしくは混合金種の収納庫に収納し、POSレジスタからの出金指示に基づいて金種および数を決定して、上記収納庫から釣銭を出金する釣銭機として機能する。そして、受取部13では、上記出金指示金額と預かり金金額をPOSレジスタから受け取り、POSレジスタから預かり金の金額データが入力されると入金許可状態となって、紙幣投入口15および硬貨投入口17から投入された貨幣と預かり金の金額とが照合される。この時、例えば、入金照合を行う場合、操作表示パネル14では、上記預かり金金額を表示し、預かり金金額の表示から貨幣の入金計数毎に減算表示することも可能である。
【0015】
図2は、棒金収納庫を示す斜視図であって、(a)は、棒金収納庫の外観を示し、(b)は棒金収納庫に格納された棒金ドロアを示している。
棒金収納庫20は、貨幣処理装置10の下部に設置されて、その筐体20aの形状は装置全体が高くならないよう、一段だけの薄い棒金ドロア21を前面から引き出すように構成されている。棒金ドロア21は、図2(b)に示すように、複数の棒金収納スリット22とバラ貨幣、バラ紙幣および商品券等の紙葉類を収納するバラ貨幣収納部23を有している。棒金収納スリット22には、特定金種の棒金硬貨Mをそれぞれ1本ずつ収納可能に構成されている。各棒金収納スリット22内には、棒金硬貨Mの軸線が棒金ドロア21の引き出し方向と一致する向きで水平に保持される。
【0016】
棒金ドロア21は、各棒金収納スリット22内での棒金硬貨Mの有無および金種を検知する棒金識別センサ24を有している。各棒金収納スリット22の棒金識別センサ24には、予め収納される金種の材質や直径等の情報が予め設定される。棒金識別センサ24は、各棒金収納スリット22に予め設定された棒金硬貨Mの金種が、該当の金種でない等を判定し、POSレジスタに送信する。
【0017】
そして、この棒金収納庫20は、棒金識別センサ24から上位制御部であるPOSレジスタに必要なデータを送信すると共に、棒金ドロア21を開閉制御する信号をPOSレジスタから受け取るように構成されている。
【0018】
更に、棒金収納庫20は、操作表示パネル14が操作されることで発生する棒金ドロア21を開閉制御するための信号を受け取るように構成されている。このような開閉制御の信号の出力に際して、棒金識別センサ24の判定結果を開閉可否の条件に課すことが可能である。
【0019】
(操作表示パネルの構成)
図3は、貨幣処理装置に設けられた操作表示パネルの構成の具体例を示す図である。この操作表示パネル14は、7セグメントで数値を表示するLED表示器14aと、LCD表示器14bとを備えている。LED表示器14aは、9桁の数字表示部分が設けられていて、各桁で金種毎の貨幣が「満杯」、「適量」、「空」等と、その収納状況を表示する。LCD表示器14bは、その貨幣の収納状況に関するログ情報および他の必要な情報を文章で表示する。なお、LCD表示器14bが出力する情報は音声出力することも可能である。
【0020】
また、収納庫の貨幣収納枚数と釣銭として必要な収納枚数の下限値や貨幣収納可能枚数とを比較し、貨幣収納枚数が貨幣収納可能枚数に到達した時点でその収納庫の金種のみ貨幣の受付を禁止し、その情報をLED表示器14aで表示する。
【0021】
操作表示パネル14は、表示もしくは音声出力すべき情報が有ることを示すヘルプランプ(表示器)14cを有している。また、LED表示器14a、LCD表示器14b、およびヘルプランプ(表示器)14cの右側には、3行4列に12個の操作ボタン群14dが配置されている。
【0022】
操作ボタン群14dの最上部(第1列)には、それぞれ紙幣スイッチ、ヘルプスイッチ、在高スイッチとして、「7」、「8」、「9」の置数ボタンを兼ねる3つの機能スイッチが配置され、第2列には、それぞれ硬貨スイッチ、回収スイッチ、補充スイッチとして、「4」、「5」、「6」の置数ボタンを兼ねる3つの機能スイッチが配置され、第3列には、スクロールボタン、履歴スイッチ、設定スイッチとして、「1」、「2」、「3」の置数ボタンを兼ねる3つの機能スイッチが配置されている。また、最下部(第4列)のボタンは、「0」の置数ボタンを兼ねるスクロールボタン、取消復旧ボタンおよび実行ボタンである。
【0023】
図4は、LED表示器の状態表示方法の具体例を示す図である。図4の状態表示リスト14eには、収納庫に収納された貨幣の数量の状態が6通り示されている。以下にそれぞれの状態の表示方法を説明する。
【0024】
(1)エンプティ、すなわち、該当の貨幣の数量が0の場合、7セグメントLEDで表される数値のうち、“0”がLED表示器14aに表示される。
(2)ニアエンプティ、すなわち、貨幣の数量がエンプティ状態に近く、補充が必要である場合、7セグメントLEDのうち、最下部の横方向の1セグメントが点滅表示する。他のセグメントは、消灯する。
【0025】
(3)適量(少)、すなわち、適量であるが、ニアエンプティに近い状態の場合、7セグメントLEDのうち、最下部の1セグメントが点灯する。他のセグメントは、消灯する。
【0026】
(4)適量(中)、すなわち、多くも少なくもないと判定される場合、7セグメントLEDのうち最下部の1セグメントおよび中段の横方向の1セグメントが点灯する。他のセグメントは、消灯する。
【0027】
(5)適量(多)、すなわち、適量であるが、ニアフル(フルは、満杯の状態)に近い場合、7セグメントLEDのうち最下部および最上部のセグメントおよび中段の横方向の1セグメントが点灯する。他のセグメントは、消灯する。
【0028】
(6)ニアフルまたはフル、すなわち、該当の貨幣が満杯に近い場合、7セグメントLEDのうち最下部および最上部のセグメントおよび中段の横方向の1セグメントが点滅する。他のセグメントは、消灯する。
【0029】
なお、上記(1)〜(6)におけるエンプティや適量の値の少、中および多の判定基準範囲等は、予め管理者によって、適切な範囲が設定される。
貨幣処理装置10は、LED表示器14aに上記(1)〜(6)の状態を表示することで、操作者に紙幣部11や硬貨部12に収納されている貨幣の数量を通知する。また、貨幣処理装置10は、受取部13を介してPOSレジスタに情報を送信して、POSレジスタから操作者に上記状態を通知することもできる。上記の(1)および(2)の状態が釣銭として必要な貨幣が不足している場合に該当する。そして、貨幣処理装置10の操作者は、上記の(1)や(2)の状態を、例えば、操作表示パネル14やPOSレジスタから確認し、紙幣部11や硬貨部12への該当の貨幣の補充動作を行う。
【0030】
(貨幣処理装置の制御機構)
図5は、貨幣処理装置の制御機構を示すブロック図である。貨幣処理装置10は、制御部110、操作・表示部120および上位通信部130を有する。
【0031】
制御部110は、入出金計数処理部111、棒金収納庫制御部112、機構制御部113、メモリ部114、演算部115および論理部116を有する。
入出金計数処理部111は、機構制御部113を介してメモリ部114と接続されている。入出金計数処理部111は、紙幣投入口15や硬貨投入口17から投入された貨幣を金種毎に振り分けて計数して、それらを貨幣処理装置10の金種毎に設けられた収納庫もしくは混合金種の収納庫に収納すると共に、紙幣出金口16や硬貨出金口18からの釣銭等の出金動作を制御している。また、入出金計数処理部111は、収納庫に収納された貨幣枚数情報を計数した結果である貨幣枚数情報を生成して、メモリ部114に格納する。
【0032】
棒金収納庫制御部112は、機構制御部113を介してメモリ部114に接続されている。棒金収納庫制御部112は、演算部115による棒金ドロア21の開放可否の判定に基づいて、棒金ドロア21内の棒金硬貨Mの計数処理および棒金収納庫20の棒金ドロア21の開放制御を行う。
【0033】
メモリ部114は、機構制御部113および演算部115と接続されている。メモリ部114は、釣銭用として必要な金種毎の貨幣の数の下限値を記憶する。この下限値の設定は、操作者が操作・表示部120を操作することで行われる。下限値は、適切な値が管理者によって予め決定される。また、メモリ部114は、収納庫の貨幣枚数情報を記憶する。更に、メモリ部114には、特定の動作(余剰金の回収動作等)の際には、操作・表示部120における操作のみで棒金ドロア21を開放可能としてよいか否かの許可情報を上位のPOSレジスタから上位通信部130を介して設定可能に構成されている。
【0034】
演算部115には、棒金収納庫20を開放するための比較論理を構成する論理部116が接続されている。論理部116には、例えば、「釣銭用として必要な下限値以下になった場合、開放可能とする」、「上位機からの許可があった場合、開放可能とする」等、棒金収納庫20を開放するための比較論理が格納される。演算部115では、こうした論理部116の比較論理機能を用いて、メモリ部114に記憶されたデータを比較し、比較結果に基づいて棒金収納庫20の開放可否を決定する。
【0035】
操作・表示部120は、操作者が釣銭用収納枚数の設定操作を行うためのインタフェースを提供する。操作・表示部120には、各金種の硬貨に対して、釣銭として必要な収納数の下限値を指示する操作キーや指示された内容を表示する表示パネル等が設けられており、制御部110におけるメモリ部114との間でデータを授受するように構成されている。操作・表示部120は、図1における操作表示パネル14に該当する。
【0036】
上位通信部130は、制御部110と接続され、制御部110からの通信要求に基づいて上位制御部と通信を行う。上位通信部130は、図1に示す受取部13におけるPOSレジスタ等の上位制御部(図示せず)との通信機能を示している。
【0037】
図6は、貨幣枚数管理テーブルの構造例を示す図である。貨幣枚数管理テーブル114aは、メモリ部114に記憶される。貨幣枚数管理テーブル114aには、No.を示す項目、区分を示す項目、金種を示す項目、枚数を示す項目、本数を示す項目、枚数下限値を示す項目およびフラグを示す項目が設けられている。各項目の横方向に並べられた情報同士が互いに関連付けられて、1つの金種についての情報を構成する。
【0038】
No.を示す項目には、項目番号が設定される。区分を示す項目には、該当の貨幣がバラ硬貨、バラ紙幣および棒金のいずれであるかを示す情報が設定される。金種を示す項目には、貨幣の金種が設定される。枚数を示す項目には、対応する区分がバラ硬貨およびバラ紙幣である場合、収納庫に収納されている貨幣の数が設定される。また、枚数を示す項目には、対応する区分が棒金である場合、棒金収納庫20に収納された棒金に含まれる硬貨の枚数が設定される。本数を示す項目には、対応する区分が棒金である場合、その枚数に対応する棒金の本数が設定される。なお、本数を示す項目は、対応する区分がバラ硬貨およびバラ紙幣である場合、設定無し(図6では、“−(ハイフン)”と表記)となる。枚数下限値を示す項目には、対応する区分がバラ硬貨である場合、該当の貨幣が釣銭として必要な下限値が設定される。なお、枚数下限値を示す項目には、対応する区分がバラ紙幣および棒金である場合、設定無しとなる。フラグを示す項目には、各区分の貨幣に対して、判別不可能である貨幣が存在するか否かを示すフラグが設定される。
【0039】
貨幣枚数管理テーブル114aには、例えば、No.“1”、区分が“バラ硬貨”、金種が“1円”、枚数が“130”枚、本数が設定無し、枚数下限値が“20”、フラグが“確定”という情報が設定される。これは、1円のバラ硬貨が収納庫に130枚収納されており、釣銭用として必要な貨幣数の下限値が20枚であることを示している。また、フラグに“確定”が設定されており、区分がバラ硬貨である貨幣に関して、貨幣詰まりや汚損等による数量未確定の貨幣が存在しないことを示している。
【0040】
また、貨幣枚数管理テーブル114aには、例えば、No.“13”、区分が“棒金”、金種が“10円”、枚数が“150”枚、本数が“3”本、枚数下限値が設定無し、フラグが“未確定”という情報が設定される。これは、10円の棒金(1本で50枚分)が棒金収納庫20に150枚分、すなわち、棒金本数3本分が収納されていることを示している。また、フラグに“未確定”が設定されており、区分が棒金である貨幣に関して、金種が未確定の貨幣が存在することを示している。
【0041】
なお、フラグを示す項目は、区分毎に設けるものとしたが、更に金種毎に細分化して設けるようにしてもよい。また、枚数下限値を示す項目に、金種毎の下限値枚数を設定するものとしたが、一律に同じ値を設定するようにしてもよい。また、枚数下限値は、図4におけるエンプティ枚数もしくはニアエンプティ枚数設定値と関連付けて設定をしてもよい。
【0042】
次に、以上のような構成の貨幣処理装置10における処理の詳細について説明する。
(金銭処理動作)
まず、貨幣処理装置10の金銭処理動作について説明する。
【0043】
商品コードのスキャン等によって、お客様の買い上げ品の登録が全て終了すると、POSレジスタでは、その合計額が計算され、それがPOSレジスタの表示部に表示される。通常、レジ担当者は、表示された合計額を読み上げ、お客様からは買い上げ品の合計額以上の貨幣が預かり金としてレジ担当者に渡される。
【0044】
レジ担当者は、預かり金の金額を読み上げると共に、その金額をPOSレジスタの入力部から入力する。POSレジスタでは、預かり金の入力額から買い上げ品の合計額の差額が釣銭金額として計算され、貨幣処理装置10に釣銭金額データとして通知される。
【0045】
貨幣処理装置10では、受け取った釣銭金額データに従って、その必要金種と枚数が計算され、対応する貨幣が出金される。レジ担当者は、POSレジスタで発行されたレシート、および貨幣処理装置10から出金された釣銭貨幣をお客様に渡す。その後、お客様が受け取った釣銭貨幣に納得してPOSレジスタを離れた時点で、貨幣処理装置10に預かり金を入金する。この時、貨幣処理装置10の入出金計数処理部111では、入金された紙幣および硬貨の枚数を計数して、メモリ部114が記憶している収納庫の収納枚数データに加算すると共に、出金された紙幣および硬貨の枚数を収納枚数データから減算する。
【0046】
以上が釣銭先払い出し方式によるPOSレジスタでの貨幣の受け渡しに伴う貨幣処理装置10の金銭処理動作である。こうした方式とは別に、貨幣処理装置10に預かり金の紙幣および硬貨を投入して、その金額を計数させることによって、預かり金の機械計数額と買い上げ品の合計額との差額として釣銭金額を算出し、釣銭貨幣を出金する先入金計数方式を適用することもできる。
【0047】
(釣銭補充動作)
次に、貨幣処理装置10における、同装置内に不足した釣銭を補充する釣銭補充動作について説明する。
【0048】
図7は、釣銭補充の際の処理の流れを示すフローチャートである。以下、図7に示す処理をステップ番号に沿って説明する。
[ステップS11]レジ担当者は、操作・表示部120における補充開始操作を行う。レジ担当者は、例えば、貨幣処理装置10の操作表示パネル14の操作ボタン群14dにおける置数ボタン「6」に対応する補充ボタンを押下することで上記補充開始操作を行う。演算部115は、この補充開始操作を受け付ける。
【0049】
[ステップS12]演算部115は、メモリ部114の貨幣枚数管理テーブル114aおよび論理部116に格納された比較論理に基づいて、下限値以下となっている硬貨が存在するか否かを判定する。存在する場合、処理がステップS13に移される。存在しない場合、処理が完了する。
【0050】
[ステップS13]棒金収納庫制御部112は、演算部115による要補充硬貨有りの判定結果を検知すると、棒金ドロア21を開放する。
[ステップS14]レジ担当者は、棒金ドロア21に収納された棒金のうち、補充対象金種の棒金の包装を解いて硬貨投入口17に投入して硬貨の補充を行う。
【0051】
[ステップS15]レジ担当者は、棒金ドロア21を棒金収納庫20に収納する。貨幣処理装置10は、棒金収納庫20を閉塞する。
なお、レジ担当者は、操作・表示部120に出力される収納貨幣の数量状態を確認して補充が必要であるか否かを判別して、補充開始操作を行うことができる。操作・表示部120に表示される収納貨幣の数量状態は、例えば、演算部115が所定の周期でステップS12と同様の判定処理を行い、その結果を図4に示したような表示方法で操作・表示部120が出力する。そして、レジ担当者は、その出力内容によって、補充の要否を認識する。
【0052】
このように、貨幣処理装置10は、釣銭硬貨の補充の要否を判定し、補充が必要な場合に補充開始操作を受け付けると、棒金ドロア21を開放する。このようにすると、釣銭硬貨の補充に際して、上位のPOSレジスタの制御が不要となり、簡易な操作のみで自装置に保管された棒金から補充することができるため、利便性が向上し、迅速な釣銭補充動作が可能となる。
【0053】
(在高計算処理)
次に、貨幣処理装置10における、同装置内に収納された貨幣の機械計数による在高計算処理について説明する。
【0054】
図8は、在高計算の際の処理の流れを示すフローチャートである。以下、図8に示す処理をステップ番号に沿って説明する。
[ステップS21]レジ担当者は、操作・表示部120における在高計算の開始操作を行う。レジ担当者は、例えば、貨幣処理装置10の操作表示パネル14の操作ボタン群14dにおける置数ボタン「9」に対応する在高ボタンを押下することで上記開始操作を行う。演算部115は、この在高計算の開始操作を受け付ける。
【0055】
[ステップS22]入出金計数処理部111は、紙幣部11および硬貨部12に収納された貨幣を識別し、メモリ部114に記憶された貨幣枚数管理テーブル114aのフラグの項目に確定または不確定を設定する。また、棒金収納庫制御部112は、棒金ドロア21に収納された棒金硬貨Mの金種および数量を棒金識別センサ24の検出結果に基づいて判定し、各金種を識別する。更に、棒金収納庫制御部112は、計数結果に基づいてメモリ部114に記憶された貨幣枚数管理テーブル114aのフラグの項目に確定または不確定を設定する。
【0056】
[ステップS23]演算部115は、メモリ部114の貨幣枚数管理テーブル114aおよび論理部116に格納された比較論理に基づいて、金種が不確定となっている棒金が存在するか否かを判定する。存在する場合、処理がステップS24に移される。存在しない場合、処理がステップS27に移される。なお、金種が不確定と判定される場合には、例えば、各棒金収納スリット22に予め指定された金種の棒金が収納されていない場合、そもそも棒金収納スリット22に有るべき棒金が未収納である場合、等が有り得る。
【0057】
[ステップS24]棒金収納庫制御部112は、演算部115による金種が不確定の棒金有りの判定結果を検知すると、棒金ドロア21を開放し、レジ担当者に対して各棒金の確認を促す。
【0058】
[ステップS25]レジ担当者は、各棒金の収納箇所や不足棒金等の確認を行い、不備を特定して棒金収納スリット22に対する棒金の配置の修正や不足棒金の補充を行う。
[ステップS26]レジ担当者は、棒金ドロア21を棒金収納庫20に収納する。貨幣処理装置10は、棒金収納庫20を閉塞する。
【0059】
[ステップS27]棒金収納庫制御部112は、全棒金の金種を判定すると、貨幣枚数管理テーブル114aのフラグの項目に確定を設定する。そして、入出金計数処理部111および棒金収納庫制御部112は、全金種が確定したことを検出して各金種の収納枚数を計数する。
【0060】
このように、貨幣処理装置10は、棒金収納庫20に棒金識別センサ24を備えており、棒金の金種が判別できない場合には、棒金ドロア21を開放してレジ担当者に確認を促す。これにより、レジ担当者は、不足棒金の補充や棒金の配置等の動作を的確に行うことができ、利便性が向上する。
【0061】
なお、ステップS25において、棒金の確認が適正に実施されなかった場合、すなわち、棒金ドロア21に依然として金種が不確定の棒金が存在する場合には、ステップS26の後に強制的に棒金ドロア21を開放して確認を促すようにしてもよい。このようにすると、棒金ドロア21が閉塞、すなわち、各棒金の金種が確定しないと在高計算処理が行われないため、収納貨幣の計数を適正に行うことができる。
【0062】
ただし、不確定の棒金が存在する旨を上位のPOSレジスタに通知するような場合には、POSレジスタから確認を促すことも可能であるため、棒金ドロア21を強制開放することなく閉塞状態にしてもよい。
【0063】
(金銭回収処理)
次に、貨幣処理装置10における、同装置内に収納された余剰金の回収処理について説明する。余剰金とは、貨幣処理装置10に収納された貨幣のうちから、使用開始時の在高からレジ取引を通じて増加した金額を示す。このような回収処理は、貨幣処理装置10の1日の運用の終了時点等で実施される。レジ担当者は、図1における回収庫19を用いて回収動作を行うが、この作業に際して、棒金ドロア21のバラ貨幣収納部23に収納された機械計数外の貨幣(棒金以外の貨幣)に関して計数または回収を行い、POSレジスタに登録する必要もある。以下では、本動作に関する貨幣処理装置10の処理を具体的に説明する。
【0064】
図9は、回収動作の際の処理の流れを示すフローチャートである。以下、図9に示す処理をステップ番号に沿って説明する。
[ステップS31]レジ担当者は、操作・表示部120における回収動作の開始操作を行う。レジ担当者は、例えば、貨幣処理装置10の操作表示パネル14の操作ボタン群14dにおける置数ボタン「5」に対応する回収ボタンを押下することで上記開始操作を行う。演算部115は、この回収動作の開始操作を受け付ける。
【0065】
[ステップS32]演算部115は、メモリ部114を参照して、棒金ドロア21の開放が回収動作の開始操作に対して、上位のPOSレジスタから許可されているか否かを判定する。許可されている場合、処理がステップS33に移される。許可されていない場合、処理が終了する。
【0066】
[ステップS33]棒金収納庫制御部112は、演算部115による開閉可の判定結果を検知すると、棒金ドロア21を開放し、レジ担当者に対して機械計数外貨幣の計数または回収動作を促す。
【0067】
[ステップS34]レジ担当者は、回収庫19を用いた回収動作を行うと共に、棒金ドロア21のバラ貨幣収納部23に収納された硬貨や紙幣等の計数または回収動作を行う。
[ステップS35]レジ担当者は、棒金ドロア21を棒金収納庫20に収納する。貨幣処理装置10は、棒金収納庫20を閉塞する。
【0068】
このように、貨幣処理装置10は、余剰金の回収動作の際に、上位のPOSレジスタから棒金ドロア21の開放が予め許可とされていれば、POSレジスタでの操作を不要として、貨幣処理装置10の操作のみで棒金ドロア21内の貨幣の回収動作も行うことができる。これにより、レジ担当者は、簡易な操作で機械計数外貨幣の回収を開始することができるので、利便性が向上する。
【0069】
なお、上記ステップS32の判定処理を省略することもでき、上記に示した回収動作を行う等、特定の条件下において、上位のPOSレジスタからの開閉可否の許可を不要として棒金ドロア21の開放を可能とすることもできる。
【0070】
更に、図9の説明では、余剰金の回収動作を例に挙げて説明したが、例えば、硬貨または紙幣を個別に精密計算し直す精算動作に連動して、棒金ドロア21を開放するようにしてもよい。
【0071】
以上、説明したように、貨幣処理装置10では、釣銭硬貨の不足を的確に判定して、簡易な操作で迅速に釣銭の補充を行うことができる。
また、在高計算時においても、棒金の金種の確定を行って在高計算を行うため、適正な計算結果を得ることができる。更に、不足棒金を的確に把握して補充することも可能であり、運用における利便性も向上する。
【0072】
また、他の金銭処理動作時、例えば、POSレジスタにより、余剰金の回収動作時には貨幣処理装置10における操作のみで棒金ドロア21の開放を可能とする旨の設定を行うこともでき、特定の利用方法に応じて更に利便性の向上を図ることも可能である。
【0073】
以上、本発明の貨幣処理装置を図示の実施の形態に基づいて説明したが、これらに限定されるものではなく、各部の構成は同様の機能を有する任意の構成のものに置換することができる。また、他の任意の構成物や工程が付加されてもよい。更に、本発明は前述した実施の形態のうちの任意の2以上の構成(特徴)を組み合わせたものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】貨幣処理装置の外観を示す図であって、(a)は上面図、(b)は正面図である。
【図2】棒金収納庫を示す斜視図であって、(a)は、棒金収納庫の外観を示し、(b)は棒金収納庫に格納された棒金ドロアを示している。
【図3】貨幣処理装置に設けられた操作表示パネルの構成の具体例を示す図である。
【図4】LED表示器の状態表示方法の具体例を示す図である。
【図5】貨幣処理装置の制御機構を示すブロック図である。
【図6】貨幣枚数管理テーブルの構造例を示す図である。
【図7】釣銭補充の際の処理の流れを示すフローチャートである。
【図8】在高計算の際の処理の流れを示すフローチャートである。
【図9】回収動作の際の処理の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0075】
10 貨幣処理装置
11 紙幣部
12 硬貨部
13 受取部
14 操作表示パネル
15 紙幣投入口
16 紙幣出金口
17 硬貨投入口
18 硬貨出金口
19 回収庫
20 棒金収納庫(棒金ストッカ)
21 棒金ドロア
22 棒金収納スリット
23 バラ貨幣収納部
24 棒金識別センサ
110 制御部
111 入出金計数処理部
112 棒金収納庫制御部
113 機構制御部
114 メモリ部
115 演算部
116 論理部
120 操作・表示部
130 上位通信部
M 棒金硬貨(包装硬貨)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
投入された貨幣を金種毎に振り分けて計数し、金種毎または混合金種の収納庫に収納し、上位制御部からの出金指示に基づいて金種および枚数を決定して前記収納庫から釣銭を出金する貨幣処理装置において、
前記収納庫とは別に金種毎に包装された包装硬貨を保管する予備金庫と、
前記収納庫に収納された金種のうち少なくとも一種の前記硬貨の数が所定の下限値以下であると判定し、かつ、当該硬貨の補充指示を受け付けると、前記予備金庫を開放する制御部と、
を有することを特徴とする貨幣処理装置。
【請求項2】
前記所定の下限値は、金種毎に設けられており、
前記制御部は、前記硬貨の数を金種毎に前記所定の下限値以下であるかを判定することを特徴とする請求項1記載の貨幣処理装置。
【請求項3】
前記予備金庫は、前記包装硬貨の金種を判別し、判別した金種毎に計数する計数部を有することを特徴とする請求項1記載の貨幣処理装置。
【請求項4】
前記計数部は、前記包装硬貨の金種毎の保管場所を判別することを特徴とする請求項3記載の貨幣処理装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記計数部による前記包装硬貨の金種および保管場所の判別の結果、前記包装硬貨の金種と保管場所とが所定の対応関係にない場合、前記予備金庫を開放することを特徴とする請求項4記載の貨幣処理装置。
【請求項6】
前記計数部は、前記予備金庫が閉塞している場合に、前記包装硬貨の計数を行うことを特徴とする請求項5記載の貨幣処理装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記計数部による前記包装硬貨の金種の判別の結果、前記包装硬貨の金種と保管場所とが所定の対応関係にない場合、当該対応関係が不一致である旨を前記上位制御部に通知することを特徴とする請求項4記載の貨幣処理装置。
【請求項8】
前記予備金庫は、前記包装硬貨を含む貨幣を保管しており、
前記制御部は、前記予備金庫に保管された貨幣を取り出す際に発生する回収開始指示、または、前記予備金庫に保管された貨幣の数を精算する際に発生する精算開始指示、を受け付けると、前記予備金庫を開放することを特徴とする請求項1記載の貨幣処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−276817(P2009−276817A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−124657(P2008−124657)
【出願日】平成20年5月12日(2008.5.12)
【出願人】(000237710)富士電機リテイルシステムズ株式会社 (1,851)
【Fターム(参考)】