説明

貫流ボイラ装置及び貫流ボイラの燃焼制御方法

【課題】燃焼を段階制御しつつ、負荷に円滑に対応した燃焼制御を行い得る様にした貫流ボイラ装置及び貫流ボイラの燃焼制御方法を提供する。
【解決手段】蒸気圧を検出する圧力検出器33と、該圧力検出器からの蒸気圧検出結果に基づき流量調整手段32を制御してバーナノズル6への燃料供給量を該バーナノズルの燃焼負荷率が前記蒸気圧検出結果に対応する様制御する制御装置19とを具備し、該制御装置は設定された複数の燃焼負荷率の切替えにより燃焼制御を行う段階燃焼制御モードと、設定された燃焼負荷率の範囲で燃焼負荷率に対応して比例燃焼制御を行う比例燃焼制御モードによる燃焼制御が可能であり、検出される蒸気圧が高負荷、低負荷の場合は、前記段階燃焼制御を実行し、中負荷の場合は前記比例燃焼制御を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は貫流ボイラ装置、特に小型の多管式貫流ボイラ及び貫流ボイラの燃焼制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
貫流ボイラ装置、特に小型の多管式貫流ボイラの燃焼制御では、簡便な燃焼制御方法が採用されている。例えば、燃焼負荷率を複数位置に設定し、ボイラの負荷に対応させ燃焼負荷率を選択し、選択した燃焼負荷率となる様にボイラの燃焼を段階制御している。
【0003】
例えば、4位置燃焼制御で設定される燃焼負荷率が低燃焼20%、中燃焼60%、高燃焼100%である場合、ボイラの負荷が20%、60%、100%のいずれかである場合は、対応負荷率を選択してボイラの燃焼を制御すればよいが、実際にはボイラの負荷が設定した負荷率と一致することはなく、燃焼の制御はボイラの負荷に対応する様ボイラの負荷率を切替えて燃焼を段階制御している(多位置燃焼制御)。
【0004】
例えば、ボイラの負荷が80%である場合は、60%の中燃焼、100%の高燃焼を適宜切替え、平均的な燃焼負荷率が80%となる様に燃焼を制御している。又、ボイラの負荷が20%以下の場合、例えば10%の場合は、20%の低燃焼と燃焼の停止を組合わせて燃焼負荷率が10%となる様に制御している。
【0005】
この為、ボイラの負荷が80%である場合は、ボイラの負荷が一定であっても、60%の中燃焼と100%の高燃焼とを頻繁に繰返すことになる。この為ボイラの負荷が一定であるにも拘らず、圧力変動を生じる。又、貫流ボイラでは、燃焼負荷率に対応して水位制御を行うが、燃焼負荷率を頻繁に切替えると、水管内の水位が燃焼負荷率の切替えに追従することができず、蒸気へ水分が混入し、乾度が低下し、蒸気の品質が悪くなる。又、バーナの燃焼状態の切替えに対応し、燃焼用空気を送出するファンの運転状態の切替えが行われるが、急激な増速、減速により、エネルギ効率が低下する等の問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−147402号公報
【特許文献2】特開2007−278539号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は斯かる実情に鑑み、ボイラの燃焼を段階制御しつつ、実際のボイラ負荷に円滑に対応した燃焼制御を行い得る様にした貫流ボイラ装置及び貫流ボイラの燃焼制御方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、バーナノズルと、該バーナノズルに燃料を供給する燃料供給ラインと、該燃料供給ラインに設けられ、燃焼負荷率に対応する流量に燃料の流量を調整可能な流量調整手段と、ボイラの水位を段階的に検出する水位検出装置と、該水位検出装置からの水位検出結果に基づき設定された複数の段階の1つに水位を制御する水位制御部と、蒸気圧を検出する圧力検出器と、該圧力検出器からの蒸気圧検出結果に基づき前記流量調整手段を制御して前記バーナノズルへの燃料供給量を該バーナノズルの燃焼負荷率が前記蒸気圧検出結果に対応する様制御する制御装置とを具備し、該制御装置は設定された複数の燃焼負荷率の切替えにより燃焼制御を行う段階燃焼制御モードと、設定された燃焼負荷率の範囲で燃焼負荷率に対応して比例燃焼制御を行う比例燃焼制御モードによる燃焼制御が可能であり、検出される蒸気圧が高負荷、低負荷の場合は、前記段階燃焼制御を実行し、中負荷の場合は前記比例燃焼制御を実行する貫流ボイラ装置に係るものである。
【0009】
又本発明は、前記燃料はガス燃料であり、前記流量調整手段は、前記燃料供給ラインに設けられた比例弁と、燃焼用空気の供給量を調整するダンパとを有し、前記比例弁は前記ダンパの調整圧に対応した流量の燃料ガスを供給し、前記制御装置は前記ダンパの開度を制御する貫流ボイラ装置に係るものである。
【0010】
又本発明は、前記燃料は液体燃料であり、前記流量調整手段は、前記バーナノズルの燃料を供給する燃料供給ポンプと、該燃料供給ポンプの下流と上流を接続する戻しラインと、該戻しラインに設けられたモータ弁とを有し、前記制御装置は前記モータ弁の開度を制御する貫流ボイラ装置に係るものである。
【0011】
又本発明は、前記燃焼負荷率の変更は、設定された水位で、蒸気に水分が混入する領域と、ボイラの加熱管が過熱する領域とを除く範囲で行われる貫流ボイラ装置に係るものである。
【0012】
又本発明は、バーナノズルは複数の噴霧ノズルを有し、高燃焼負荷率、中燃焼負荷率、低燃焼負荷率に応じて前記噴霧ノズルが選択される貫流ボイラ装置に係るものである。
【0013】
又本発明は、水位検出装置により複数段階に水位を検出し、各段階の水位に対応した燃焼負荷率で段階燃焼制御を行う貫流ボイラの燃焼制御方法であって、各段階の水位の内、高燃焼負荷率に対応した水位及び低燃焼負荷率に対応した水位では、予め設定された燃焼負荷率を切替えて目標負荷に対応する様燃焼を段階制御し、中燃焼負荷率に対応した水位では、実際のボイラの稼働状態に応じて、比例制御で燃焼を制御する貫流ボイラの燃焼制御方法に係るものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、バーナノズルと、該バーナノズルに燃料を供給する燃料供給ラインと、該燃料供給ラインに設けられ、燃焼負荷率に対応する流量に燃料の流量を調整可能な流量調整手段と、ボイラの水位を段階的に検出する水位検出装置と、該水位検出装置からの水位検出結果に基づき設定された複数の段階の1つに水位を制御する水位制御部と、蒸気圧を検出する圧力検出器と、該圧力検出器からの蒸気圧検出結果に基づき前記流量調整手段を制御して前記バーナノズルへの燃料供給量を該バーナノズルの燃焼負荷率が前記蒸気圧検出結果に対応する様制御する制御装置とを具備し、該制御装置は設定された複数の燃焼負荷率の切替えにより燃焼制御を行う段階燃焼制御モードと、設定された燃焼負荷率の範囲で燃焼負荷率に対応して比例燃焼制御を行う比例燃焼制御モードによる燃焼制御が可能であり、検出される蒸気圧が高負荷、低負荷の場合は、前記段階燃焼制御を実行し、中負荷の場合は前記比例燃焼制御を実行するので、一番使用頻度の高い中負荷での燃焼率の切替えがなくなり、圧力変動を抑制でき、実際のボイラ負荷に円滑に対応することが可能であり、補機類の消耗を軽減し、燃料空気を送風するファンのエネルギ効率を向上できる。
【0015】
又本発明によれば、前記燃焼負荷率の変更は、設定された水位で、蒸気に水分が混入する領域と、ボイラの加熱管が過熱する領域とを除く範囲で行われるので、水位制御は段階制御が可能であり、コストの低減が図れると共に既存の貫流ボイラ装置に対しても実施可能である。
【0016】
又本発明によれば、バーナノズルは複数の噴霧ノズルを有し、高燃焼負荷率、中燃焼負荷率、低燃焼負荷率に応じて前記噴霧ノズルが選択されるので、簡単なバーナノズルの構成で液体燃料の使用が可能となり、設備コストの低減が図れる。
【0017】
又本発明によれば、水位検出装置により複数段階に水位を検出し、各段階の水位に対応した燃焼負荷率で段階燃焼制御を行う貫流ボイラの燃焼制御方法であって、各段階の水位の内、高燃焼負荷率に対応した水位及び低燃焼負荷率に対応した水位では、予め設定された燃焼負荷率を切替えて目標負荷に対応する様燃焼を段階制御し、中燃焼負荷率に対応した水位では、実際のボイラの稼働状態に応じて、比例制御で燃焼を制御するので、一番使用頻度の高い中負荷での燃焼率の切替えがなくなり、圧力変動を抑制でき、実際のボイラ負荷に円滑に対応することが可能であり、補機類の消耗を軽減し、燃料空気を送風するファンのエネルギ効率を向上できる等の優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施例に係る貫流ボイラ装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】本発明に於ける燃焼状態と水位と得られる蒸気の状態を示す線図である。
【図3】本発明の第2の実施例に係る貫流ボイラ装置の概略構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の第3の実施例に係る貫流ボイラ装置の概略構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施例を説明する。
【0020】
図1は、本発明の実施例に係る貫流ボイラ装置の概略を示している。
【0021】
図1中、1はボイラ本体であって、該ボイラ本体1は、円周方向へ所要の間隔で立設された竪向きで且つ複数の加熱管2と、該加熱管2で包囲され、上端、下端が閉塞された円筒状の燃焼室3と、前記加熱管2の下部に接続された環状の下部管寄せ4と、前記加熱管2の上部に接続された環状の上部管寄せ5とを備え、該上部管寄せ5の中心には、前記燃焼室3内に燃料ガスを噴射するバーナノズル6が下向きに取付けられている。
【0022】
前記下部管寄せ4には給水管8が接続され、該給水管8には、前記下部管寄せ4に水を供給し得る様にした給水ポンプ9及び前記下部管寄せ4から前記給水ポンプ9へ水が逆流しない様にした逆止弁10が設けられている。
【0023】
11は気水分離器であって、該気水分離器11の上部側と前記上部管寄せ5の上面とは蒸気管12により接続され、前記気水分離器11の底部と前記下部管寄せ4とは降水管13により接続されている。
【0024】
14は前記加熱管2内にある水のレベル(水位)を検出する為に用いる水位検出装置であって、既存の貫流ボイラ装置に設けられた水位検出装置と同様の構成を有し、前記水位検出装置14は水位検出用容器15を具備し、該水位検出用容器15の底部と前記下部管寄せ4とは下部連通管16によって連通され、前記水位検出用容器15の上端部と前記上部管寄せ5とは、上部連通管17によって連通されている。
【0025】
前記水位検出用容器15には、長さの異なる6本の水位検出用電極棒18a,18b,18c,18d,18e,18fが挿入されており、各水位検出用電極棒18a,18b,18c,18d,18e,18fの下端位置は、夫々高さが異なり且つ18a,18b,18c,18d,18e,18fの順に下端位置が高くなる様配設されている。更に各水位検出用電極棒18a,18b,18c,18d,18e,18fにより検出された水位は、水位検出信号Ha,Hb,Hc,Hd,He,Hf(Ha<Hb<Hc<Hd<He<Hf)として水位制御部20へ出力される。従って、前記水位検出装置14は段階的に、ボイラの水位を検出する。
【0026】
図2は、燃焼状態と水位と得られる蒸気の状態を示しており、曲線27aと曲線27bに囲まれた領域Aが良好な乾き度を持った蒸気が得られる領域、前記曲線27aより上側の領域Bは、水位が高すぎ蒸気に水分が混入し、乾き度が低下する領域、前記曲線27bより下側の領域Cは水位が低すぎ前記加熱管2が過熱する領域となっている。
【0027】
水位検出用電極棒18a,18b,18c,18d,18e,18fが検出する水位、Hb<Hc(高燃焼(100%)の時の水位)、Hc<Hd(中燃焼(40%〜80%)の時の水位)、Hd<He(低燃焼(20%)の時の水位)での、良好な乾き度を持った蒸気が得られる範囲は幅を有しており、図2に示される様に、Hb<Hcの水位では燃焼負荷率が75%〜100%であり、同様にHc<Hdの水位では燃焼負荷率が40%〜80%、Hd<Heの水位では燃焼負荷率が20%〜55%である。
【0028】
従って、高燃焼では燃焼負荷率が75%〜100%の範囲で、又中燃焼では燃焼負荷率が40%〜80%の範囲で、更に低燃焼では燃焼負荷率が20%〜55%の範囲で、バーナの燃焼負荷率の設定を変更しても良質な蒸気が得られる。尚、上記燃焼負荷率の範囲は例示であり、状況に応じて適宜変更が可能である。
【0029】
図1中、19は制御装置であって、該制御装置19は、操作パネル等の入力部34、半導体メモリ、HDD等の記憶部35を具備し、前記入力部34は、表示部、テンキー等を有し、高燃焼、中燃焼、低燃焼の燃焼負荷率を設定可能となっている。又、前記制御装置19は後述する蒸気圧検出信号及び設定された燃焼負荷率に基づき後述する流量調整手段32の弁開度を制御する。
【0030】
前記記憶部35には、4位置の段階燃焼制御を実行する為のシーケンスプログラム、水位制御部20による水位制御を実行する為の水位制御プログラム、前記入力部34からの操作により、高燃焼、中燃焼、低燃焼の燃焼負荷率の変更、設定を可能とする燃焼負荷率設定プログラムが格納される。
【0031】
前記制御装置19は、燃焼状態に対応した水位レベル指令を前記水位制御部20に送出し、前記水位制御部20は前記水位検出信号Ha,Hb,Hc,Hd,He,Hfに基づき前記給水ポンプ9の駆動を制御して水の供給量を調整し、水位が所定の範囲に保持される様にする。例えば、水位レベル指令が高負荷(100%燃焼)であると、水位がHbとHcとの間に、又中負荷(80%〜40%燃焼)であると、水位がHcとHdとの間に、又低負荷(20%燃焼)であると、水位はHdとHeとの間にそれぞれ位置する様に、前記水位制御部20が前記給水ポンプ9の駆動を制御して、給水量を調整する。
【0032】
本実施例では、前記水位検出装置14の検出結果に基づき水位制御を行った場合に、制御される水位に対応する燃焼負荷率が範囲を有することを利用し、最も利用の多い中負荷では比例燃焼制御を実行し、段階燃焼制御で実際の稼働状態に適合させ、負荷の切替え頻度を減少させ、圧力変動を少なくして安定した貫流ボイラ装置の運転を可能とする。
【0033】
前記バーナノズル6には燃料ガス供給ライン21が接続され、該燃料ガス供給ライン21に上流側(バーナノズル6が下流端)から圧力調整部31、流量調整手段32が設けられ、該流量調整手段32は前記制御装置19と電気的に接続され、該制御装置19からの開度指令信号Vにより、弁の開度が制御され、前記バーナノズル6に供給される燃料の流量が調整される様になっている。
【0034】
前記流量調整手段32としては、無段に流量調整が可能である流量調整弁、例えばモータ弁が用いられる。又、弁開度を調整する為のアクチュエータとしてステッピングモータが用いられ、該ステッピングモータを駆動する為の、1パルス駆動信号と弁開度変化が規定され、前記制御装置19からは予定開度に対応した数のパルスが、開度指令信号Vとして前記流量調整手段32に与えられる。尚、モータとしては弁開度を制御できるものとして、サーボモータ等が用いられてもよい。
【0035】
前記蒸気管12には圧力検出器33が設けられている。該圧力検出器33は、例えば、圧力センサとマイコンが一体となったものであり、前記蒸気管12を流れる蒸気の蒸気圧Pを検出し、蒸気圧検出信号P(Ph,Pm(Pmh,Pmm,Pml),Pl)として前記制御装置19に出力する。該制御装置19には予めボイラ負荷に対応する閾値と目標圧力値PMが設定されており、前記圧力検出器33から入力される蒸気圧検出信号Pと前記閾値とを比較し、燃焼モードを変更する様前記圧力調整部31、前記流量調整手段32、前記水位制御部20を制御する。尚、目標圧力値はPmh<PM<Pmlの範囲で設定される。
【0036】
前記蒸気圧検出信号Ph,Pm,Plはそれぞれボイラの負荷状態を示すものであり、それぞれ圧力値に対応し、Phは高負荷,Pmは中負荷,Plは低負荷であり、Ph<Pm<Plである。更に、Pmh<Pmm<Pmlであり、Pmlは中負荷の上限値、Pmhは中負荷の下限値を示し、Pmmは負荷状態にリアルタイムで対応し、Pmh〜Pmlの範囲である。例えば、Ph:高負荷(100%負荷)、Pm:中負荷(Pmh:80%負荷〜Pml:40%負荷)、Pl:低負荷(20%負荷)である。
【0037】
以下、作用について説明する。
【0038】
前記圧力調整部31は、前記燃料ガス供給ライン21により供給される燃料ガスの圧力(1次圧)を既定値(2次圧)となる様に圧力調整する。前記流量調整手段32に供給される圧力が既定値(一定値)に調整されることで、前記流量調整手段32の弁開度の調整で、流量が一義的に決定される。
【0039】
前記制御装置19は、初期設定した燃焼負荷率となる様な供給流量となる様に、前記流量調整手段32の弁開度を段階制御する。例えば、該流量調整手段32のアクチュエータがステッピングモータである場合は、前記制御装置19は、高燃焼ではAパルス数の開度指令信号(Vh)を前記流量調整手段32に出力し、中燃焼ではBパルス数の開度指令信号(Vm:Vmh,Vmm,Vml)、低燃焼ではCパルス数の開度指令信号(Vl)を前記流量調整手段32に出力する様に構成されている。
【0040】
ここで、Vh>Vm>Vlであり、又、Vmh>Vmm>Vmlである。更に、Vmhは中燃焼状態の上限値、Vmlは中燃焼状態の下限値であり、VmmはVmh〜Vmlの範囲で前記圧力検出器33からの蒸気圧検出信号P(後述)に追従して目標圧力を維持する様に変動する。
【0041】
前記制御装置19には、前記圧力検出器33から蒸気圧検出信号Ph,Pm(Pmh,Pmm,Pml),Plが入力され、前記制御装置19は入力された蒸気圧検出信号Ph,Pm,Plに基づき、負荷状態を判断し、開度指令信号Vを決定すると共に前記流量調整手段32に出力する。
【0042】
又、前記制御装置19は、負荷状態の判断に基づき、燃焼の制御モードを選択する。即ち、負荷状態が100%の場合、即ち蒸気圧検出信号がPhの場合は、燃焼負荷率100%の固定燃焼制御モード、負荷状態が100%〜80%の場合、即ち蒸気圧検出信号がPh〜Pmhの場合は、前記制御装置19からは開度指令信号Vh又はVmhが前記流量調整手段32に出力され、燃焼負荷率100%と燃焼負荷率80%との切替えによる段階燃焼制御モードが実行される。
【0043】
又、負荷状態が80%〜40%の場合は、即ち蒸気圧検出信号がPmh〜Pmlの場合は、前記流量調整手段32に開度指令信号Vmmが出力され、圧力変動に対応し、目標圧力となる様に負荷率を変動する比例燃焼制御モードが実行される。
【0044】
比例燃焼制御モードでは、前記圧力検出器33で検出される蒸気圧検出信号Pmmが前記制御装置19にリアルタイムでフィードバックされ、該制御装置19では経時的な蒸気圧力変動が演算され、蒸気圧力変動が反映された開度指令信号Vmmが前記流量調整手段32に出力され、前記圧力検出器33が検出した圧力と目標圧力PMとの偏差をなくす様前記流量調整手段32の開度が比例制御される。尚、負荷状態が80%〜40%に対応する水位は、HcとHdとの間に保持すればよく、水位については従前と同様段階制御でよい。
【0045】
更に、負荷状態が40%〜20%の場合は、即ち蒸気圧検出信号がPml〜Plの場合は、前記制御装置19から開度指令信号Vml又はVlが前記流量調整手段32に出力され、燃焼負荷率40%と燃焼負荷率20%との切替えによる段階燃焼制御モードが実行される。負荷状態が20%〜0%の場合は、開度指令信号Vml又は閉信号が出力され、燃焼負荷率20%と燃焼停止の切替えによる段階燃焼制御モードが実行される。
【0046】
尚、燃焼負荷率20%から負荷を増加させる場合(低燃焼から中燃焼へ移行する場合)、一旦、中燃焼負荷率60%とし、更に増加減して目標値に到達する様にしてもよい。この場合、20%燃焼負荷率と40%燃焼負荷率との間をハンチングすることが防止される。同様に、燃焼負荷率100%から負荷を減少させる場合(高燃焼から中燃焼へ移行する場合)、一旦、中燃焼負荷率60%とし、更に増加減して目標値に到達する様にすることで、80%燃焼負荷率と100%燃焼負荷率との間をハンチングすることが防止される。
【0047】
実際の定常運転については、負荷状態は略80%〜40%の範囲に収ることから、比例燃焼制御モードが実行されることになり、負荷の切替え頻度が減少し、圧力変動が少なくなる。
【0048】
又燃焼制御と並行して燃焼空気の供給量も制御される。燃焼空気の供給量の制御は、送風機(図示せず)を制御することで行われ、前記燃焼負荷率の制御と同様、高負荷、低負荷は段階制御、中負荷については比例制御が行われる。又送風機の運転がインバータ制御される場合は、中負荷に対して急激な増速、減速がなく、消費電力を低減できる。
【0049】
又、前記圧力検出器33からの蒸気圧検出信号P、前記流量調整手段32の切替えの履歴、ボイラ負荷率の変動の履歴等のボイラ稼働データは、前記記憶部35に経時的且つ時系列に蓄積される。蓄積したデータに基づき高燃焼、中燃焼、低燃焼に対応する燃焼制御モードの切替え時期(燃焼制御モードの切替えの蒸気圧検出信号Pの閾値)等を運転状態に合わせて最適なものとすることが可能である。
【0050】
尚、前記流量調整手段32の下流側に流量計を設け、設定流量と調整後の流量との間で偏差があるかどうかを検出し、偏差がある場合は、前記流量調整手段32の開度を補正して、流量設定精度を向上させる様にしてもよい。
【0051】
又、前記流量調整手段32の変形として、弁回転軸にリンクを連結し、モータ等のアクチュエータにより、該リンクを介して弁を回転させ、弁開度を調整する様にしてもよい。
【0052】
図3は、第2の実施例を示している。第2の実施例は、空気ダンパの開度に伴い変化するダンパ2次側空気圧力に基づき負荷別に対応させ燃料流量を制御するシステムを示している。
【0053】
尚、図3中、図1中で示したものと同等のものには同符号を付し、その説明を省略する。
【0054】
図3中、37は燃焼用空気送風機、38は該燃焼用空気送風機37の下流側に設けた風量調整用の空気ダンパ、39は空気ダンパ開度調整用のダンパモータを示す。該ダンパモータ39は、リミット付コンデンサモータ、ステッピングモータ、サーボモータ等、前記空気ダンパ38の開度を調整可能なアクチュエータが使用される。
【0055】
燃料ガス供給ライン21の圧力調整部31の下流側に比例弁40が設けられ、該比例弁40の下流側の調整圧及び前記空気ダンパ38の下流側の調整圧がフィードバックされ、空気ダンパ38下流側の圧力に比例したガス圧(ガス供給量)となる様に、流量調整手段32によって燃料ガスの供給量が調整される様になっている。
【0056】
第2の実施例の場合、前記空気ダンパ38、前記ダンパモータ39、前記比例弁40等が流量調整手段32を構成する。
【0057】
第2の実施例に於いては、圧力検出器33からの蒸気圧検出信号Pに基づき、前記ダンパモータ39を介して前記空気ダンパ38の開度を調整し、前記バーナノズル6に供給する燃焼用空気の流量を制御している。
【0058】
高燃焼の場合、制御装置19から、ダンパモータ39に高燃焼開度指令信号Vhが出力され、空気ダンパ開度が高燃焼開度となり、ダンパ2次側の空気圧力が上昇し、その圧力が導管36により比例弁40に導入され、該比例弁40側で設定された倍率により、燃料の2次圧力が高くなることで、高燃焼の燃料流量が設定される。
【0059】
高燃焼で連続運転中に運転圧力が上昇(負荷減少)し、前記圧力検出器33からの蒸気圧検出信号がPmlとなった場合は、前記制御装置19は中燃焼開度指令信号Vmhにより予め設定された中燃焼上限負荷になる様、前記空気ダンパ38の開度を閉じ、同様に燃料流量が減少設定される。その後は開度指令信号Vmmにより、目標圧力となる様、中燃焼開度を比例制御で調整し、燃料流量を増減する。
【0060】
更に予め設定された中燃焼下限負荷で運転中に圧力が上昇(負荷減少)し、蒸気圧検出信号がPmhとなった場合は、低燃焼開度指令信号Vlがダンパモータ39に出力され、予め設定された低燃焼開度となる様、前記空気ダンパ38の開度を閉じることで空気圧力が更に降下し、燃料流量が減少設定され、目標圧力の変動を防止する。
【0061】
又、予め設定された低燃焼負荷で運転中に圧力が降下(負荷増加)する場合は中燃焼開度指令信号Vmlにより予め設定された中燃焼下限開度に前記空気ダンパ38を開き、その後は開度指令信号Vmmにより、目標圧力となる様、中燃焼ダンパ開度を開閉する。
【0062】
又、予め設定された中燃焼上限負荷で運転中に圧力が降下(負荷増加)する場合は高燃焼開度指令信号Vhが出力され、前記空気ダンパ38は高燃焼ダンパ開度となり、目標圧力の変動を防止する。
【0063】
図4は、第3の実施例を示し、第3の実施例では、燃料として油等の液体燃料とした場合である。尚、図4中、図1中で示したものと同等のものには同符号を付し、その説明を省略する。
【0064】
バーナノズルには液体用のバーナノズル50が用いられ、該バーナノズル50は高燃焼用噴油ノズル51、中燃焼用噴油ノズル52、低燃焼用噴油ノズル53を具備し、前記高燃焼用噴油ノズル51は第1電磁弁44を介して燃料供給ライン41に接続され、前記中燃焼用噴油ノズル52は第2電磁弁47を介して前記燃料供給ライン41に接続され、前記低燃焼用噴油ノズル53は第3電磁弁48を介して前記燃料供給ライン41に接続されている。該燃料供給ライン41には燃料供給ポンプ42が設けられている。
【0065】
尚、前記高燃焼用噴油ノズル51、前記中燃焼用噴油ノズル52、前記低燃焼用噴油ノズル53は、それぞれ噴霧量を異ならせてもよく、或は同じとしてもよい。
【0066】
前記第1電磁弁44、前記第2電磁弁47、前記第3電磁弁48は燃料の供給を停止する場合、或は非常時に燃料を緊急停止する場合等に使用され、前記燃料供給ライン41を全閉する。又、稼働時には、前記電磁弁44,47,48は燃焼状態に応じて択一的に全開となる。
【0067】
前記第1電磁弁44、前記第2電磁弁47、前記第3電磁弁48と前記燃料供給ポンプ42との間と、該燃料供給ポンプ42の上流側とを接続する戻しライン45が設けられ、該戻しライン45には流量調整用のモータ弁46が設けられている。該モータ弁46に用いられる、アクチュエータとしてのモータには、ステッピングモータ、或はサーボモータが使用される。
【0068】
第3の実施例の場合、前記第1電磁弁44、前記第2電磁弁47、前記第3電磁弁48、前記戻しライン45、前記モータ弁46等が流量調整手段32を構成する。
【0069】
前記燃料供給ポンプ42は規定流量(一定流量)を送出する様構成されており、前記戻しライン45は送出された流量の一部を前記燃料供給ポンプ42の上流側に戻し、戻し量は前記モータ弁46の弁開度によって決定される。前記戻しライン45による戻し量が多ければ、前記バーナノズル50に供給される燃料の量が少なくなり、又戻し量が少なければ、前記バーナノズル50に供給される燃料の量が多くなる。
【0070】
高燃焼、又は低燃焼に用いられる高燃焼用噴油ノズル51、又は低燃焼用噴油ノズル53に燃料油を供給する状態では前記モータ弁46は全閉とされ、中燃焼に用いられる中燃焼用噴油ノズル52に燃料油を供給する場合は、前記モータ弁46の開度が調整され、前記流量調整手段32への燃料油供給量が負荷状態に比例して調整される。即ち、中燃焼負荷域については戻り油量をモータ弁46の開度の変更で調整し、バーナより噴霧する油量を増減可能とし、目標運転圧力になる様に、燃焼負荷を比例的に制御する。
【0071】
着火(低燃焼)時は制御装置19からの運転信号V及び開信号Vlにより、噴油ポンプが起動、閉信号Vmmにより前記モータ弁46は全閉とし、開信号Vlにより前記第3電磁弁48が開となり、予め設定された低燃焼油量を噴霧する。尚、前記第1電磁弁44、前記第2電磁弁47は全閉である。
【0072】
燃焼開始後、目標運転圧力より低い場合、中燃焼に移行するが、この時、予め低燃焼油量+中燃焼油量が中燃焼下限負荷となる様に信号Vmmによりモータ弁46が開度設定され、その後、開信号Vmにより第2電磁弁47が開となり中燃焼に移行する。以降は開閉信号Vmmにより、目標圧力となる様に戻り油量をモータ弁46の開度を増減し、中燃焼油量を調整する。
【0073】
更に予め設定された中燃焼上限負荷で運転中に圧力が降下(負荷増加)する場合は信号Vmmによりモータ弁46は予め低燃焼油量+中燃焼油量+高燃焼油量で定格油量となる様に弁開度が設定された後、開信号Vhにより前記第1電磁弁44が開(即ち前記第1電磁弁44、前記第2電磁弁47、前記第3電磁弁48が開)となり高燃焼に移行し、目標圧力の変動を防止する。
【0074】
高燃焼で連続運転中に運転圧力が上昇(負荷減少)する場合は、予め低燃焼油量+中燃焼油量が中燃焼上限負荷となる様に信号Vmmによりモータ弁46が開度設定され、その後、開信号VhがOFFとなり、第1電磁弁44が閉となり、中燃焼に移行する。その後は開閉信号Vmmにより、目標圧力となる様に戻り油量をモータ弁46の開度を増減し、中燃焼油量を調整する。
【0075】
更に予め設定された中燃焼下限負荷で運転中に圧力が上昇(負荷減少)する場合は閉信号Vmmにより前記モータ弁46は全閉とし、その後、開信号VmがOFFとなり第2電磁弁47が閉となり低燃焼に移行することで目標圧力の変動を防止する。
【0076】
又、燃料流量の変化に伴い空気流量も変更する必要がある。これは上記各信号(Vh,Vm(Vmh,Vmm,Vml),Vl)により、空気ダンパの開度を同様に制御することで各運転負荷に合わせた空気流量とする。送風機の運転にインバータを用いる場合は、同様に各運転負荷に合わせた周波数に変更することで、各運転負荷に合わせた空気流量とする。
【符号の説明】
【0077】
1 ボイラ本体
2 加熱管
3 燃焼室
6 バーナノズル
14 水位検出装置
19 制御装置
20 水位制御部
21 燃料ガス供給ライン
31 圧力調整部
32 流量調整手段
33 圧力検出器
34 入力部
35 記憶部
36 導管
37 燃焼用空気送風機
38 空気ダンパ
39 ダンパモータ
40 比例弁
41 燃料供給ライン
42 燃料供給ポンプ
44 第1電磁弁
45 戻しライン
46 モータ弁
47 第2電磁弁
48 第3電磁弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バーナノズルと、該バーナノズルに燃料を供給する燃料供給ラインと、該燃料供給ラインに設けられ、燃焼負荷率に対応する流量に燃料の流量を調整可能な流量調整手段と、ボイラの水位を段階的に検出する水位検出装置と、該水位検出装置からの水位検出結果に基づき設定された複数の段階の1つに水位を制御する水位制御部と、蒸気圧を検出する圧力検出器と、該圧力検出器からの蒸気圧検出結果に基づき前記流量調整手段を制御して前記バーナノズルへの燃料供給量を該バーナノズルの燃焼負荷率が前記蒸気圧検出結果に対応する様制御する制御装置とを具備し、該制御装置は設定された複数の燃焼負荷率の切替えにより燃焼制御を行う段階燃焼制御モードと、設定された燃焼負荷率の範囲で燃焼負荷率に対応して比例燃焼制御を行う比例燃焼制御モードによる燃焼制御が可能であり、検出される蒸気圧が高負荷、低負荷の場合は、前記段階燃焼制御を実行し、中負荷の場合は前記比例燃焼制御を実行することを特徴とする貫流ボイラ装置。
【請求項2】
前記燃料はガス燃料であり、前記流量調整手段は、前記燃料供給ラインに設けられた比例弁と、燃焼用空気の供給量を調整するダンパとを有し、前記比例弁は前記ダンパの調整圧に対応した流量の燃料ガスを供給し、前記制御装置は前記ダンパの開度を制御する請求項1の貫流ボイラ装置。
【請求項3】
前記燃料は液体燃料であり、前記流量調整手段は、前記バーナノズルの燃料を供給する燃料供給ポンプと、該燃料供給ポンプの下流と上流を接続する戻しラインと、該戻しラインに設けられたモータ弁とを有し、前記制御装置は前記モータ弁の開度を制御する請求項1の貫流ボイラ装置。
【請求項4】
前記燃焼負荷率の変更は、設定された水位で、蒸気に水分が混入する領域と、ボイラの加熱管が過熱する領域とを除く範囲で行われる請求項1又は請求項2又は請求項3の貫流ボイラ装置。
【請求項5】
バーナノズルは複数の噴霧ノズルを有し、高燃焼負荷率、中燃焼負荷率、低燃焼負荷率に応じて前記噴霧ノズルが選択される請求項3の貫流ボイラ装置。
【請求項6】
水位検出装置により複数段階に水位を検出し、各段階の水位に対応した燃焼負荷率で段階燃焼制御を行う貫流ボイラの燃焼制御方法であって、各段階の水位の内、高燃焼負荷率に対応した水位及び低燃焼負荷率に対応した水位では、予め設定された燃焼負荷率を切替えて目標負荷に対応する様燃焼を段階制御し、中燃焼負荷率に対応した水位では、実際のボイラの稼働状態に応じて、比例制御で燃焼を制御することを特徴とする貫流ボイラの燃焼制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−163270(P2012−163270A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−24729(P2011−24729)
【出願日】平成23年2月8日(2011.2.8)
【出願人】(591203118)株式会社IHI汎用ボイラ (7)
【Fターム(参考)】