説明

貫通配線基板

【課題】電磁界による影響を受け難く、信号ノイズの発生が低減された貫通配線基板の提供。
【解決手段】(1)基板1を構成する複数の面のうち、何れか2つの面を結ぶ微細孔が基板1内に配され、該微細孔内に導電性物質が配されてなる貫通配線を複数設けた貫通配線基板10であって、前記複数の貫通配線のうち少なくとも2本の隣接した貫通配線2,3からなるペア配線4が、その長手方向の少なくとも一区間hにおいて互いにツイストすることを特徴とする貫通配線基板10。(2)ペア配線4が差動伝送路を構成することを特徴とする(1)に記載の貫通配線基板10。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貫通配線基板に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体基板内に貫通電極(貫通配線)を配して、基板のおもて面と裏面とにそれぞれ配されたパッド電極を電気的に接続するインターポーザーが知られている(特許文献1)。従来の貫通電極は、基板の厚み方向へ直線的に延びた形状として配されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−228393号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、半導体装置の一層の小型化によって、基板内の貫通配線の微細化および高密度化が進んでいる。これに伴い、貫通配線の周囲を含めた外部からの電磁界による影響を受け易くなり、該貫通配線に信号ノイズが発生するという問題がある。ここで、「貫通配線の周囲を含めた外部からの電磁界」とは、当該貫通配線自身が発生する電磁界以外のものをいう。従って、前記「外部からの電磁界」の発生源が、当該貫通配線が配された貫通配線基板の内部に存在する場合もある。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、基板外部及び基板内部からの電磁界による影響を受け難く、信号ノイズの発生が低減された貫通配線基板の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の請求項1に記載の貫通配線基板は、基板を構成する複数の面のうち、何れか2つの面を結ぶ微細孔が前記基板内に配され、該微細孔内に導電性物質が配されてなる貫通配線を複数設けた貫通配線基板であって、前記複数の貫通配線のうち少なくとも2本の隣接した貫通配線からなるペア配線が、その長手方向の少なくとも一区間において互いにツイストすることを特徴とする。
【0006】
前記2本の隣接した貫通配線がペア配線となり、さらに互いにツイストして(撚り合わせて)なるツイストペア配線を形成することによって、該ツイストペア配線を横切る磁束により発生するノイズ電流を小さくすることができる。これにより、基板外部及び基板内部からのの電磁界による信号ノイズの発生を低減できる。
【0007】
本発明の請求項2に記載の貫通配線基板は、請求項1において、前記ペア配線が差動伝送路を構成することを特徴とする。
前記ツイストペア配線を差動伝送路とした場合、ツイストペア配線を構成する一方の貫通配線が発生する第一の磁束と、該ツイストペア配線を構成する他方の貫通配線が発生する第二の磁束とを、互いに打ち消すことができる。
【0008】
本発明の請求項3に記載の貫通配線基板は、請求項1又は2において、前記ペア配線を構成する貫通配線の前記ツイストする区間が曲線状に延設されていることを特徴とする。
前記ツイストする区間は曲線状に延設されているので、尖った部分や屈曲して折れ曲がった部分等の、電界の集中する(電気抵抗が局所的に高まる部分)が無い。この結果、当該貫通配線における伝送損失を抑制することができる。
本発明の請求項4に記載の貫通配線基板は、請求項1〜3のいずれか一項において、前記ペア配線が基板内に複数配されていることを特徴とする。
前記ツイストペア配線が基板内に複数配された場合、個々のツイストペア配線は前述の通り、基板外部及び基板内部からの電磁界による影響を受け難いので、複数のツイストペア配線間で電磁界が生じたとしても、個々のツイストペア配線に信号ノイズが発生することを低減できる。これにより、各ツイストペア配線同士の間隔を狭められるので、基板内に複数のツイストペア配線を高密度で配することができる。
【0009】
本発明の請求項5に記載の貫通配線基板は、請求項1〜4のいずれか一項において、前記ペア配線が基板の主面同士を結ぶことを特徴とする。
前記ツイストペア配線が基板の主面同士を結ぶことにより、該ツイストペア配線を介して接続された各主面間の信号伝送におけるノイズの発生を低減できる。
【0010】
本発明の請求項6に記載の貫通配線基板は、請求項1〜5のいずれか一項において、前記ペア配線が基板の主面と側面とを結ぶことを特徴とする。
前記ツイストペア配線が基板の主面と側面とを結ぶことにより、該ツイストペア配線を介して接続された、主面と側面との信号伝送におけるノイズの発生を低減できる。
【0011】
本発明の請求項7に記載の貫通配線基板は、請求項1〜6のいずれか一項において、前記基板には、さらに冷却用流体の流路が配されていることを特徴とする。
この構成によれば、前記冷却用流体が基板内の熱を吸収して基板外で放熱することによって、基板を冷却できる。
本発明の請求項8に記載の貫通配線基板は、請求項7において、前記流路が、前記ペア配線を構成する2本の隣接した貫通配線の間隙に配されていることを特徴とする。
この構成によれば、前記ツイストペア配線が発生しうる熱をより効率的に冷却できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、基板外部及び基板内部からの電磁界による影響を受け難く、信号ノイズが発生し難い貫通配線基板を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明にかかる貫通配線基板10の側面を示す模式図である。
【図2】本発明にかかる貫通配線基板20の側面を示す模式図である。
【図3】本発明にかかる貫通配線基板30の側面を示す模式図である。
【図4】本発明にかかる貫通配線基板40の側面を示す模式図である。
【図5】本発明にかかる貫通配線基板50の側面を示す模式図である。
【図6】本発明にかかる貫通配線基板60の側面を示す模式図である。
【図7】本発明にかかる貫通配線基板65の側面を示す模式図である。
【図8】本発明にかかる貫通配線基板70の側面を示す模式図である。
【図9】本発明にかかる貫通配線基板80の側面を示す模式図である。
【図10】本発明にかかる貫通配線基板85の側面を示す模式図である。
【図11】本発明にかかる貫通配線基板の製造方法の一例を示す、模式的な側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、好適な実施の形態に基づき、図面を参照して本発明を説明する。
【0015】
本発明にかかる貫通配線基板の第一態様は、図1の模式的な側面図で示すように、基板1を構成する複数の面のうち、一方の主面1aと他方の主面1bとを結ぶ微細孔が基板1内に配され、該微細孔内に導電性物質が配されてなる貫通配線2,3を複数設けた貫通配線基板10であって、前記複数の貫通配線2,3のうち少なくとも2本の隣接した貫通配線からなるペア配線4を形成し、該ペア配線4を構成する2本の隣接した貫通配線2,3は、その長手方向の少なくとも一区間hにおいて互いにツイストする螺旋形状をなすものである。
【0016】
なお、図1においてペア配線が二重螺旋形状となっていることを示すために、ペア配線を構成する第一の貫通配線2と第二の貫通配線3とを異なるハッチングで示してある(これらの貫通配線の材料が異なることを示すものではない)。
また本発明において、「一方の主面」は基板の最も面積が広い面を意味し、「他方の主面」は一方の主面と向かい合うように対をなす面を意味する。
【0017】
第一の貫通配線2は、一方の主面1aに露出する露出部2aと、他方の主面1bに露出する露出部2bとを有する。同様に、第二の貫通配線3は、一方の主面1aに露出する露出部3aと、他方の主面1bに露出する露出部3bとを有する。各露出部の直上における基板表面には電極パッド5がそれぞれ設けられている。各電極パッド5は必要に応じて基板の表面配線に接続されている(不図示)。
【0018】
ここで、基板1の一方の主面1aにおける第一の貫通配線2の露出部2aと第二の貫通配線3の露出部3aとの距離をL1とする。また、基板1の他方の主面1bにおける第一の貫通配線2の露出部2bと第二の貫通配線3の露出部3bとの距離をL2とする。このとき距離L1と距離L2とは、同じであっても良く、異なっていても良い。各距離L1,L2は目的に応じて適宜調整できる。また、基板1の内部における第一の貫通配線2と第二の貫通配線3との距離を狭くするほど、ノイズの発生を抑えることができる。ツイストペア配線4の形成の容易さの観点及びツイストペア配線4における螺旋形状が形成される区間hを長くする観点から、前記距離L1,L2は5μm〜500μmの範囲であることが好ましく、10μm〜200μmの範囲であることがより好ましく、20μm〜50μmの範囲であることが更に好ましい。
【0019】
各露出部の上に設けられた電極パッド5は、互いに電気回路的に独立していても良いし、独立していなくても良い。つまり、図1において、露出部2a上に設けられた電極パッドと露出部3a上に設けられた電極パッドは分離していても良いし、結合していても良い。同様に、露出部2b上に設けられた電極パッドと露出部3b上に設けられた電極パッドは分離していても良いし、結合していても良い。
【0020】
第一の貫通配線2は、基板1の厚み方向に延びており、その長手方向(基板の厚み方向)の一区間hにおいて、第二の貫通配線3と互いにツイストする螺旋形状をなしている。同様に、第二の貫通配線3は、基板1の厚み方向に延びており、その長手方向の一区間hにおいて、第一の貫通配線2と互いにツイストする螺旋形状をなしている。
前記一区間hにおいて、第一の貫通配線2及び第二の貫通配線3は曲線状に延設されていて、尖った部分や折れ曲がって角を有する屈曲部分は無い。
【0021】
前記螺旋形状(撚り合わせ構造)の撚り数、撚り間隔、区間hの長さ、は特に制限されないが、撚り数が多いほどノイズ発生を低減でき、撚り間隔が狭いほどノイズ発生を低減でき、ツイストする区間hが長いほどノイズ発生を低減できる。具体的には、基板の厚さ、貫通配線の長さ、貫通配線の太さ、貫通配線基板の目的等に応じて調整すればよいが、例えば基板厚みが300μmである場合、撚り数を1〜100回、撚り間隔を1μm〜150μm、ツイストする区間hの長さを150μm〜300μmとしたツイストペア配線4が例示できる。
【0022】
第一の貫通配線2と第二の貫通配線3は、互いに電気回路的に独立していても良いし、独立していなくても良い。つまり、例えば図1において、第一の貫通配線2の露出部2a上に設けられた電極パッドと第二の貫通配線3の露出部3a上に設けられた電極パッドとが、分離していても良いし、結合していても良い。同様に、第一の貫通配線2の露出部2b上に設けられた電極パッドと第二の貫通配線3の露出部3b上に設けられた電極パッドとが、分離していても良いし、結合していてもよい。
【0023】
以上で説明したように、第一の貫通配線2と第二の貫通配線3とがツイストペア配線4を形成することによって、該ツイストペア配線4の間隙Sを横切って通過する磁束(例えば図1において紙面垂直方向の磁束)により発生するノイズ電流を打ち消すことができる。これにより、外部からの電磁界による信号ノイズの発生を低減できる。
【0024】
本発明にかかる貫通配線基板10において、ツイストペア配線4が差動伝送路を構成することが好ましい。この場合、第一の貫通配線2と第二の貫通配線3とが差動ペアを構成する。
ツイストペア配線4を差動伝送路とした場合、ツイストペア配線4を構成する第一の貫通配線2が発生する第一の磁束と、該ツイストペア配線4を構成する第二の貫通配線3が発生する第二の磁束とを、該ツイストペア配線4を構成する2本の貫通配線2,3同士の間隙Sにおいて、互いに打ち消すことができる。これにより、差動伝送路を構成するツイストペア配線4では、信号ノイズを低減する効果がより高められる。
【0025】
図2に示す貫通配線基板20のように、本発明の貫通配線基板には、別の貫通配線99が設けられていても良い。別の貫通配線99が設けられていても設けられていなくても、前述したツイストペア配線4のノイズ低減効果には実質的な影響はない。
なお、貫通配線基板20における構成のうち、貫通配線基板10と同じ構成には同じ符号を付してある。
【0026】
図3に示す貫通配線基板30のように、本発明の貫通配線基板には、ツイストペア配線が基板1内に複数配されうる。貫通配線基板30には3組のツイストペア配線4,4’,4”が配されている。各ツイストペア配線の撚り数、撚り間隔、及びツイストする区間hの長さは同じであっても良いし、異なっていても良い。貫通配線基板の使用目的に応じて、適宜調整される。
【0027】
貫通配線基板30のように3組のツイストペア配線4,4’,4”を基板1内に配した場合、個々のツイストペア配線4,4’,4”は前述の通り外部からの電磁界による影響を受け難い。このため、各ツイストペア配線がそれぞれ電磁界を周囲に放射したとしても、個々のツイストペア配線4,4’,4”に信号ノイズが発生することを低減できる。これにより、各ツイストペア配線4,4’,4”同士の間隔を狭められるので、基板1内に複数のツイストペア配線を高密度で配することができる。
【0028】
以上で説明した貫通配線基板10,20,30に配されたツイストペア配線4は、基板1の一方の主面1aと他方の主面1bとを結ぶものである。
ツイストペア配線4が基板1の主面同士を結ぶことにより、該ツイストペア配線4を介して接続された各主面のデバイス(不図示)間の信号伝送におけるノイズの発生を低減できる。つまり、本発明の貫通配線基板を、信号ノイズの発生を低減したインターポーザーとすることができる。
【0029】
図4に示す貫通配線基板40のように、本発明の貫通配線基板に配されたツイストペア配線4が基板1の主面1aと側面1cとを結んでいても良い。
ツイストペア配線4が基板1の主面1aと側面1cとを結ぶことにより、該ツイストペア配線4を介して接続された、主面に接続されたデバイス(不図示)と側面に接続されたデバイス(不図示)との信号伝送におけるノイズの発生を低減できる。つまり、本発明の貫通配線基板を、信号ノイズの発生を低減したインターポーザーとすることができる。
【0030】
図5に示す貫通配線基板50のように、本発明の貫通配線基板に配されたツイストペア配線4が基板1の第一の側面1cと第二の側面1dとを結んでいても良い。ここで、第一の側面1cと第二の側面1dは、必ずしも向き合う面である必要はなく、隣り合う二つの側面であってもよい。
ツイストペア配線4が基板1の主面1aと側面1cとを結ぶことにより、該ツイストペア配線4を介して接続された、主面に接続されたデバイス(不図示)と側面に接続されたデバイス(不図示)との信号伝送におけるノイズの発生を低減できる。つまり、本発明の貫通配線基板を、信号ノイズの発生を低減したインターポーザーとすることができる。
【0031】
また、図6に示す貫通配線基板60のように、本発明の貫通配線基板に配されたツイストペア配線4に、さらに第三の貫通配線6を加えて、ツイスト組配線7(ツイストトリオ配線7)としても良い。各貫通配線2,3,6の撚り数、撚り間隔、及びツイスト区間hを適宜調整することによって、各貫通配線2,3,6に生じる信号ノイズを低減できる場合がある。例えば各貫通配線2,3,6の撚り数、撚り間隔、及びツイスト区間hを同じに揃えることが好ましい。
【0032】
すなわち、本発明の貫通配線基板は、基板1を構成する複数の面のうち、何れか2つの面を結ぶ微細孔が基板1内に配され、該微細孔内に導電性物質が配されてなる貫通配線を複数設けた貫通配線基板であって、前記複数の貫通配線のうち少なくとも一部が、隣設した2本以上の貫通配線からなる組配線を形成し、該組配線を構成する2本以上の貫通配線は、その長手方向の少なくとも一区間において互いにツイストする螺旋形状をなしていても良い。本発明の貫通配線基板における前記組配線を構成する貫通配線の本数は、特に制限されず、例えば2〜5本が好ましく、2又は3本がより好ましい。
【0033】
また、図7に示す貫通配線基板65のように、本発明の貫通配線基板には、ツイストペア配線4を囲むように電磁シールド9を設けても良い。電磁シールド9によって外部からの電磁界(電磁ノイズ)を遮断して、ペア配線に信号ノイズが発生することを低減できる。
【0034】
電磁シールド9の材質は、外部からの電磁界を遮断できる材質であれば特に制限されず、例えば酸化鉄、Mn、Co、Ni、Cu、Zn等の磁性体が好適なものとして挙げられる。
【0035】
電磁シールド9は、1組のツイストペア配線4を囲むものであっても良いし、複数のツイストペア配線をまとめて囲むものであっても良い。
【0036】
電磁シールド9の形状は特に制限されず、ツイストペア配線4を囲む形状であれば特に制限されない。例えば図7に示したような円筒形状が例示できる。該円筒の厚みは、電磁ノイズの遮蔽効率の観点から、0.1μm〜10μmが好ましく、0.5μm〜5μmがより好ましく、0.75μm〜1.25μmが更に好ましい。電磁シールド9の円筒形状は、外部から届く電磁ノイズの周波数に応じて、ノイズ遮蔽効果を効率的に得られる円筒の厚みを選択することができる。
基板1の側面から見たときに、電磁シールド9がツイストペア配線4の20〜100%を遮蔽していることが好ましく、60〜100%を遮蔽していることがより好ましく、80〜100%を遮蔽していることが更に好ましい。
【0037】
また、図8に示す貫通配線基板70のように、本発明の貫通配線基板には、さらに冷却用流体の流路8が配されていることが好ましい。
この構成によれば、空気や水等の冷却用流体を流路8に通して、該冷却用流体が基板1内の熱を吸収して、基板外でその熱を放出することによって、基板1を冷却できる。
【0038】
流路8の形状や経路は特に制限されず、貫通配線基板の目的と、貫通配線の形状に応じて適宜調整できる。例えば図8に示すように、流路8がツイストペア配線4を構成する第一の貫通配線2と第二の貫通配線3との間隙Sを通過するように配される経路が好ましい。この構成によれば、ツイストペア配線4が発生しうる熱をより効率的に冷却できる。また、流路が、ツイストペア配線4の長手方向に沿って且つツイストペア配線4の近傍に配されることも好ましい(不図示)。この構成においても、ツイストペア配線4が発生しうる熱をより効率的に冷却できる。
【0039】
本発明にかかる貫通配線基板における基板1の材質は、石英やパイレックス(登録商標)等のガラス基板、サファイア基板、樹脂基板又はシリコン等の半導体であることが好ましく、単一層の基板であることが好ましい。ここで、「単一層の基板」とは、複数の基板を張り合わせてなる多層構造の基板とは区別される基板を表す。単一層の基板で形成することによって、基板内において、貫通配線が配される微細孔の内壁面および流路の内壁面に継ぎ目や貼り合せ面が存在しない。これにより、貫通配線を構成する導電性物質が継ぎ目や貼り合わせ目に進入することによる配線間の短絡不良を防止できたり、継ぎ目や貼り合わせ目における接合不良や剥離不良を防止できる。また、冷却用流体用の流路として用いる場合には、冷却用流体の漏れを防止することができる。
基板1の厚さは特に制限されないが、例えば100μm〜1000μmである。
【0040】
基板1が半導体基板である場合は、通常、その基板表面に絶縁層(酸化膜)を配する。例えばシリコン基板1の基板表面にはSiOからなる酸化膜を配すればよい。一方、基板1がガラス基板等の絶縁性基板である場合は、絶縁層は不要である。
【0041】
基板1の材質がガラス又は半導体であり、別の半導体デバイスを基板1に実装する場合、基板1と半導体デバイスとの線膨張係数差は小さい。このため、基板1に半導体デバイスを接続する際に半田を使用した場合、熱膨張による両者の接合部位の位置ズレが生じず、精度の高い接続が可能となる。
例えば、本発明にかかる貫通配線基板80に半導体デバイス81(電子部品81)が備えられた例を図9に示す。半導体デバイス81は、半田バンプ82を介してペア配線4〜4’’’に電気的に接続されている。この構成では、貫通配線基板80がインターポーザー基板として用いられている。また、別の例として、本発明にかかる貫通配線基板85にIC、MEMS、光学素子などの機能部83が形成された例を図10に示す。機能部83は、貫通配線基板85の一方の主面1a側に形成されており、一方の主面1aの表面配線を介してペア配線4、4’と電気的に接続している。そして、一方の主面1aから他方の主面1bにかけて貫通するペア配線4、4’によって、一方の主面1a側に形成された機能部83と貫通配線基板85の他方の主面1bとを電気的に接続することができる。
【0042】
基板1の材料としては、特に絶縁性のガラスが好ましい。前記微細孔の内壁面に絶縁層を形成せずに、導電性物質を充填又は成膜して貫通配線を形成することができるので、製造が容易となる。さらに貫通配線において、浮遊容量成分の存在等による高速伝送の阻害要因がない等の利点がある。
【0043】
本発明にかかる貫通配線基板における貫通配線は、基板1内部に形成された微細孔に、導電性物質が成膜又は充填されてなるものであることが好ましい。貫通配線は基板1の内部に形成されているため、外気に触れることにより酸化して劣化する虞が少ない。この結果、本発明の貫通配線基板の長期使用における信頼性を高められる。
前記導電性物質としては、例えばCu(銅)、Ag(銀)、Au(金)、及びAl(アルミ)等の金属や金錫(Au−Sn)等の合金が用いられる。前記微細孔に導電性物質を成膜又は充填する方法としては、溶融金属吸引法、めっき法等が適宜用いられる。
また、前記導電性物質として、微細孔に充填又は成膜することができる材料であれば良く、展性(延性)に乏しいために線材になり難い導電性物質を使用することもできる。
また、本発明にかかる貫通配線基板における貫通配線は、予めケーブル状(線状)に加工した導電性物質を縒り合わせて得られるのではなく、微細孔内に導電性物質を配して形成される。したがって、当該貫通配線のツイスト形状において、部分的な伸びや縮みによる応力ストレスが蓄積している箇所がない。このため、当該貫通配線にクラックが発生したり、断線してしまう不具合を低減することができる。さらに、ペア配線を構成する貫通配線は微細孔内に導電性物質を配して形成されるので、当該貫通配線の途中に、継ぎ目、貼り合せ箇所が無い。このため、貫通配線における伝送損失を抑制することができる。
【0044】
前記貫通配線が基板表面に露出する露出部上には、電極パッドが設けられていることが好ましい。前記電極パッドの材質は、導電性材料からなるものであれば特に制限されず、アルミニウム、銅からなる金属板(金属膜)やはんだバンプ等が適用できる。電極パッドの材質は、貫通配線の材質と同一にする必要はなく、目的に応じて任意の材料を用いられる。
【0045】
以上で説明した貫通配線基板において、各貫通配線は基板の表面に対して垂直に延びて露出部を形成しているが、本発明はこれに限定されない。つまり、本発明の貫通配線基板において、各貫通配線は、基板の表面に対して垂直に延びて露出部を形成していても良いし、基板の表面に対して斜めに延びて露出部を形成しても良い。
【0046】
<貫通配線基板の製造方法>
次に、本発明の貫通配線基板の製造方法の一例として、貫通配線基板10を製造する方法を図11に示す。図11は、貫通配線基板10を製造する基板1の側面図である。
【0047】
[工程A]
まず、図11(a)に示すように、ガラス又は半導体からなる基板1にレーザー光11を照射して、基板1内にガラス又は半導体が改質されてなる第一の改質部12を形成する。該改質部12は、第一の貫通配線2(第一の微細孔14)が配される領域に形成される。
【0048】
基板1の一方の主面1a側からレーザー光11を照射して、基板1内に焦点Fを結ぶ。焦点Fが結ばれた位置で、基板1の材料が改質される。第一の貫通配線2の他方の主面1bにおける露出部となる位置から、螺旋形状となる区間hに順に焦点Fを走査して第一の改質部12を形成する(図11(a))。図では走査方向を矢印で示してある。
【0049】
同様に、基板1の一方の主面1a側からレーザー光11を照射して、第二の貫通配線3の他方の主面1bにおける露出部となる位置から、螺旋形状となる区間hに順に焦点Fを走査して第二の改質部13を形成する(図11(b))。この際、既に形成している第一の改質部12が第二の改質部13の形成を妨げる位置にある場合は、レーザー光11と基板1との相対位置を変更するために移動したり、レーザー光11を基板1の他方の主面1bや側面から照射すればよい。これによって、貫通配線2,3となる全領域に改質部12,13が形成される。
【0050】
レーザー光11の光源としては、例えばフェムト秒レーザーを挙げることができる。該レーザー光11を照射することによって、例えば、径が数μm〜数十μmである改質部12,13を形成することができる。また、基板1内部におけるレーザー光11の焦点Fを結ぶ位置を制御することにより、所望の形状を有する改質部12,13を形成することができる。
【0051】
以上では、レーザー光11を基板1の一方の主面1a側から照射する場合を示したが、異なる面から照射してもよい。
一般に、改質された部分のレーザー光の透過率は、改質されていない部分のレーザー光の透過率とは異なるため、改質された部分を透過させたレーザー光の焦点位置を制御することが困難になる場合がある。したがって、レーザー照射する側の面から見て、奥に位置する領域について先に改質部を形成することが望ましい。
【0052】
[工程B]
改質部12,13を形成した基板1をエッチング液(薬液)に浸漬して、ウェットエッチングすることによって、改質部12,13を基板1から除去する。その結果、第一の改質部12および第二の改質部13が存在した領域に、それぞれ第一の微細孔14および第二の微細孔15が形成される(図11(c))。本実施形態では基板1の材料としてガラスを用い、エッチング液としてフッ酸(HF)の10質量%溶液を主成分とする溶液を用いた。
【0053】
このエッチングは、基板1の改質されていない部分に比べて、改質部12,13が非常に速くエッチングされる現象を利用するものであり、結果として改質部12,13の形状に応じた微細孔14,15を形成することができる。
前記エッチング液は特に限定されず、例えばフッ酸(HF)を主成分とする溶液、フッ酸に硝酸等を適量添加したフッ硝酸系の混酸等を用いることができる。また、基板1の材料に応じて、他の薬液を用いることもできる。
【0054】
[工程C]
微細孔14,15が形成された基板1において、該微細孔14,15に導電性物質(導体)を充填または成膜して、貫通配線2,3を形成する(図11(d))。導電性物質としては、例えば金錫(Au−Sn)、銅(Cu)等が挙げられる。前記導体物質の充填または成膜方法としては、溶融金属吸引法、めっき法など、適宜用いることができる。
【0055】
このように形成した貫通配線2,3は、基板内部に配された微細孔内に支持されているため、ペア配線のツイスト形状(撚り合わせ構造)が解けてしまうことがなく、ペア配線のツイスト形状を長期にわたって安定的に保持することができる。従って、ノイズの発生を低減する効果を安定的に長期にわたって保持することができる。
【0056】
さらに所望に応じて、各貫通配線の露出部上に電極パッド(外部電極端子)5を形成してもよい。電極パッド5の形成方法は、めっき法、スパッタ法など、適宜用いることができる。以上の工程A〜Cにより、図11に示した貫通配線基板10が得られる。
【0057】
また、図7に示した貫通配線基板65のように、電磁シールド9を備えた貫通配線基板を製造する方法としては、次の方法が挙げられる。
例えば、前述の工程Aにおいて基板1の電磁シールド9となる領域に改質部を形成し、続く工程Bにおいて該改質部をエッチングによって除去して、形成された空孔に磁性体を導入する方法が挙げられる。この方法によれば、円筒、円柱、楕円、又は多面体形状など、所望の形状でツイストペア配線4を包含する或いは包囲する電磁シールドを形成することができる。
【0058】
また、基板1に前記空孔を形成する他の方法としては、微小ドリルを使用する方法、基板1の表面にレジストマスクを設けてエッチングする方法、等が挙げられる。
基板1内部に形成した空孔に磁性体を導入する方法としては、例えば、棒状の磁性体を嵌め込む方法、スパッタリング法やめっき法によって磁性体を成膜又は充填する方法、磁性体を含む樹脂ペーストを印刷法によって充填する方法等が挙げられる。
【0059】
基板1に電磁シールド9を備える場合、貫通配線2,3を先に形成しても良いし、電磁シールド9を先に形成しても良いし、これらを同時に形成しても良い。
【0060】
基板1としてガラス基板又シリコン等の半導体基板を使用した場合の製造方法としては、例えば300mm径のガラス基板又は半導体基板に、工程Aにおいて改質部12,13を複数形成し、その後の工程B,Cによって複数の貫通配線2,3を備えたガラス基板又は半導体基板を得る。その後、該基板から個々の貫通配線基板をダイシング等によって切り出して製造する方法が、製造効率の観点から好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明の貫通配線基板は、ICや電子部品の製造に広く利用することができる。
【符号の説明】
【0062】
1…基板、1a…基板の一面、1b…基板の他面、1c…基板の側面、1d…基板の側面、2…第一の貫通配線、2a,2b…露出部、3…第二の貫通配線、3a,3b…露出部、4,4’,4”,4’’’…ツイストペア配線(ペア配線)、5…電極パッド(外部電極端子)、6…第三の貫通配線、7…ツイストトリオ配線、8…流路、9…電磁シールド、10…貫通配線基板、11…レーザー光、12…第一の改質部、13…第二の改質部、14…第一の微細孔、15…第二の微細孔、h…ツイスト区間、S…貫通配線同士の間隙、20,30,40,50,60,65,70,80,85…貫通配線基板、81…半導体デバイス(電子部品)、82…半田バンプ、83…機能部(IC,MEMS,光学素子)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を構成する複数の面のうち、何れか2つの面を結ぶ微細孔が前記基板内に配され、該微細孔内に導電性物質が配されてなる貫通配線を複数設けた貫通配線基板であって、
前記複数の貫通配線のうち少なくとも2本の隣接した貫通配線からなるペア配線が、その長手方向の少なくとも一区間において互いにツイストすることを特徴とする貫通配線基板。
【請求項2】
前記ペア配線が差動伝送路を構成することを特徴とする請求項1に記載の貫通配線基板。
【請求項3】
前記ペア配線を構成する貫通配線の前記ツイストする区間が曲線状に延設されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の貫通配線基板。
【請求項4】
前記ペア配線が基板内に複数配されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の貫通配線基板。
【請求項5】
前記ペア配線が基板の主面同士を結ぶことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の貫通配線基板。
【請求項6】
前記ペア配線が基板の主面と側面とを結ぶことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の貫通配線基板。
【請求項7】
前記基板には、さらに冷却用流体の流路が配されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の貫通配線基板。
【請求項8】
前記流路が、前記ペア配線を構成する2本の貫通配線の間隙を横切るように配されていることを特徴とする請求項7に記載の貫通配線基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−234992(P2012−234992A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−103131(P2011−103131)
【出願日】平成23年5月2日(2011.5.2)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】