説明

貼付剤

【課題】支持体との密着性及び含水層に対する耐水性と投錨性並びに伸縮性に優れたプライマー層を含む貼付剤を提供すること。
【解決手段】フィルム状支持体、該フィルム状支持体の片面に積層されてなる含水層、及び該フィルム状支持体と該含水層の間に形成されるプライマー層からなる貼付剤であって、該プライマー層が、少なくとも第3級アミンとガラス転移温度が50℃以下のポリマーを含むことを特徴とする貼付剤とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含水層に対する耐水性及び支持体との密着性に優れるとともに高い伸縮性を備えるプライマー層を有する貼付剤に関する。詳細には、フィルム状支持体、該フィルム状支持体の片面に積層されてなる含水層、及び該フィルム状支持体と該含水層の間に形成されるプライマー層からなる貼付剤であって、該プライマー層が、少なくとも第3級アミン及びガラス転移温度が50℃以下のポリマーを含む貼付剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、美容用、治療用等の目的で皮膚に貼り付けて使用される貼付剤は、一般的に不織布等で構成される支持体と、該支持体に積層され、水分、化粧料や薬剤等を含有する含水層と、含水層の表面に剥離可能に貼着されるフィルムとで構成されている。このように形成される貼付剤は、使用する際、フィルムを含水層から剥離して取り除き、含水層の表面を皮膚に貼着し、含水層に含まれる化粧料や薬剤を経皮吸収させることを目的とする。
【0003】
一般的に含水ゲルシートを保持する支持体としては不織布が使用されてきたが、この不織布は、その厚みと柔軟性の低さ故に使用感に優れないという問題を有していた。そこで例えばポリエチレンフィルムや塩化ビニルフィルム等の柔軟性の高いプラスチックフィルムを用いることが提案されているが、これらのプラスチックフィルムは、含水層との投錨性が悪く、剥離時にいわゆる糊残り現象、つまり剥離後の皮膚面にゲルが残ってしまうという問題があった。
【0004】
上記問題に鑑みて、支持体と含水層の間にプライマー層を設けることにより両者の投錨性を向上させる発明が創出されている。
例えば、特許文献1には、熱可塑性樹脂フィルム表面に、カチオン性基を有する重合体を主成分としたアンカー剤層と、水溶性高分子を主成分とする含水層が形成されてなる皮膚貼付シートが開示されている。特許文献1によると、この発明は、フィルム基材と含水層との密着性が良好で、皮膚から剥がした後に皮膚上に含水層が残らないという利点がある。
【0005】
しかしながら、この発明のアンカー剤層で使用されるカチオン性基を有する重合体は水溶性であるため、特定の支持体との密着性に劣るばかりか、含水粘着剤層に対する耐水性に劣るという問題を有していた。
即ち、含水層に対して高い耐水性を維持しつつ、支持体との密着性に優れる貼付剤が期待されているが、未だそのような発明は創出されていないのが現状である。
【0006】
【特許文献1】特開2001−348328号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、フィルム状支持体、該フィルム状支持体の片面に積層されてなる含水層、及び該フィルム状支持体と該含水層の間に形成されるプライマー層からなる貼付剤において、そのプライマー層に、少なくとも第3級アミン及びガラス転移温度が50℃以下のポリマーを含むことにより、プライマー層の耐水性及び伸縮性だけでなく、支持体との密着性、含水層に対する投錨性に優れたプライマー層が得られることを見出し本発明に至った。
即ち、本発明の課題は、支持体との密着性及び含水層に対する耐水性と投錨性並びに伸縮性に優れたプライマー層を含む貼付剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、フィルム状支持体、該フィルム状支持体の片面に積層されてなる含水層、及び該フィルム状支持体と該含水層の間に形成されるプライマー層からなる貼付剤であって、該プライマー層が、少なくとも第3級アミンとガラス転移温度が50℃以下のポリマーを含むことを特徴とする貼付剤に関する。
請求項2に係る発明は、前記第3級アミンが耐水性を有することを特徴とする請求項1記載の貼付剤に関する。
請求項3に係る発明は、前記ガラス転移温度が50℃以下のポリマーが、前記プライマー層に耐水性と伸縮性を付与することを特徴とする請求項1又は2に記載の貼付剤に関する。
請求項4に係る発明は、前記ガラス転移温度が50℃以下のポリマーが、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリオレフィン及びポリ塩化ビニルから選択されるいずれか1種以上の熱可塑性エラストマー及び/又はゴムであることを特徴とする請求項1乃至3いずれかに記載の貼付剤に関する。
請求項5に係る発明は、前記貼付剤が、化粧品、医薬部外品又は医薬品であることを特徴とする請求項1乃至4いずれかに記載の貼付剤に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の貼付剤は、優れた耐水性及び伸縮性を有するとともに、支持体との密着性、含水層に対する投錨性に優れたプライマー層を備える。これにより、含水層に含まれる水分が支持体に滲み出ることがなく、使用者に不快感を与えることがない。
本発明に係るプライマー層は、支持体との密着性に優れる。これにより、本発明の貼付
剤は、長時間の使用や、複数回の貼り直しに耐え得るという優れた効果を有する。
本発明に係るプライマー層は、高い伸縮性を備えるから、被貼付面が平面ではない場合においても、被貼付面に追従する。特に、高い伸縮性を備える支持体が使用された場合は、被貼付部の運動に対してもうまく追従するとともに、使用時の窮屈感、締め付け感も軽減するという優れた効果を有する。
【0010】
本発明の貼付剤においては、透明性の高いプライマー層を形成することができる。従って、透明性の高い支持体及び含水層を選択することにより、貼付時の視覚的違和感が著しく低く、見た目にみずみずしく、清涼感、美観性に優れる貼付剤が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の貼付剤は、フィルム状支持体、該フィルム状支持体の片面に積層されてなる含水層、及び該フィルム状支持体と該含水層の間に形成されるプライマー層からなる貼付剤であって、該プライマー層が、少なくとも第3級アミン及びガラス転移温度が50℃以下のポリマーを含むことを特徴とする。以下、本発明の貼付剤について詳細に説明する。
【0012】
まず、プライマー層について説明する。
本発明に係るプライマー層は、フィルム状支持体の片面に、少なくとも第3級アミン及びガラス転移温度が50℃以下のポリマーを溶解した溶液を塗布して乾燥することにより形成される。
前記第3級アミンとしては、ジメチルC−16−C22アミン、N,N―ジラウリルーN―メチルアミン、アルキルベンジルジメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、3−オクタデシルオキシプロピルーN,N,Nートリメチルアンモニウムクロライド、ココナットトリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルパルミチルアミン、アルキルプロピレンジアミンが挙げられる。前記第3級アミンを使用した場合、特に含水層との投錨性に優れる。
【0013】
前記ガラス転移温度が50℃以下のポリマーは、好ましくは、熱可塑性エラストマー及び/又はゴムが使用される。具体的には、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル等、或いは天然ゴム、合成ゴム等のゴムが挙げられるが、好ましくは、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン、より望ましくは、ポリエステル、ポリウレタンである。これらのポリマーは、プライマー層に耐水性と伸縮性を付与することができる。尚、本発明で使用する第3級アミンは、耐水性を有するとともに、前記ガラス転移温度が50℃以下のポリマー溶液との相溶性に優れている。
【0014】
第3級アミン及びガラス転移温度が50℃以下のポリマーを溶解する溶媒としては、第3級アミン及びガラス転移温度が50℃以下のポリマーを溶解することができる溶媒であれば特に限定されない。本発明においては、トルエン、ベンゼン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン、酢酸エチル、メチルエチルケトンなどの炭化水素系溶媒;アセトニトリル、プロピオニトリルなどのニトリル系溶媒;ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素、クロロベンゼン、ブロモベンゼンなどのハロゲン化炭化水素系溶媒;テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンなどのエーテル系溶媒等の有機溶媒が好ましく使用される。これらは単独で用いてもよいし複数を混合して用いてもよい。
【0015】
第3級アミンとガラス転移温度が50℃以下のポリマーは、前記溶液中、好ましくは1:1〜100(重量比)、より好ましくは1:5〜70(重量比)とされる。この理由は、第3級アミンとガラス転移温度が50℃以下のポリマーが前記重量比で含まれるプライマー層は、特に耐水性に優れるとともに、支持体との密着性、含水層との投錨性に優れる。
【0016】
次に、フィルム状支持体について説明する。
本発明に係るフィルム状支持体としては、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル等、或いは天然ゴム、合成ゴム等が挙げられるが、好ましくは、ポリウレタン、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、より望ましくはポリエステル、ポリウレタンである。
【0017】
さらに、含水層について説明する。
本発明に係る含水層とは、少なくとも水を含むとともに、貼付時に被貼付面に対し何らかの効果をもたらすように機能する層をいう。
前記効果としては、例えば、保湿、細胞賦活、美肌、美白、抗酸化、抗炎症、冷却、シワ取り等が挙げられるが、これらに限定されない。また、これら効果を得るために、公知の有効成分を添加してもよく、その添加量も適宜調整される。
【0018】
前記含水層は、少なくとも50重量%の水分を保持し、水溶性高分子を金属イオンにより架橋してゲル化される。例えば、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸、及び多価金属塩が好適に含まれる。この多価金属塩としては、例えば、アルミニウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩等が挙げられるが特に限定されない。
本発明に係る含水層はゲル状であるから、使用時には優れた使用感・感触を提供することができる。
前記含水層には、任意に、保存剤、乳化剤、pH調整剤、吸収促進剤等を含んでも良い。
【0019】
本発明の貼付剤の適用部位としては、顔(唇、頬部、目元部、目の上下部、鼻部、額部)、腕部、脚部、胸部、腹部、背部、首部等が挙げられ、化粧品、医薬品、医薬部外品、衛生材料として、好適に用いられる。
本発明の貼付剤は、好ましくは化粧品、医薬部外品又は医薬品とされる。
【0020】
次に、図面を参照しつつ本発明の貼付剤の形状について説明する。
図1は本発明の貼付剤の斜視図、図2は図1のA−A線断面図を示す。図1及び2中(1)は本発明の貼付剤、(2)はフィルム状支持体、(3)はプライマー層、(4)は含水層を示す。
フィルム状支持体(2)の厚みは用途に応じて適宜調整されるが、好ましくは2μm〜200μmである。この理由は、200μmを超えると支持体の伸縮性が損なわれ、貼付時に違和感を感じ、また、2μm未満の場合は支持体にコシが無く、貼付時に貼付作業が困難になるため、いずれの場合も好ましくないからである。
前記プライマー層(3)の厚みは、好ましくは0.1〜50μmである。この理由は、50μmを超えるとプライマー層の伸長回復率とプライマー層の透明性が、ともに低下し、0.1μm未満の場合はプライマー層の破断点伸度及び強度に低下傾向が確認される為いずれの場合も好ましくないからである。
【0021】
前記含水層(4)の厚みは用途に応じて適宜調整されるが、好ましくは500〜3000μmである。この理由は、3000μmを超えると製造時に含水層の厚みがバラつき易く、また貼付時に重み、ズレを感じる可能性があり、500μm未満の場合は単位面積あたりの必要な効能成分含有量が少なく効能効果が期待出来ないため、さらには単位面積あたりの含水量が低下することにより使用感に優れないという理由から、いずれの場合も好ましくないからである。
本発明の貼付剤の含水層表面に、任意に、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、OPPフィルム、ポリエチレンをラミネートした紙等のカバーフィルム(5)を敷いてもよい。これにより、含水層の乾燥、汚染等を防ぐことができる。
【0022】
本発明の貼付剤において、透明度の高い支持体及び含水層を使用することにより、外観は高い透明性を有し、貼付時の視覚的違和感が著しく低く、見た目にみずみずしく、清涼感、美観性に優れた貼付剤を製造することができる。
【0023】
以下、本発明の貼付剤の製造方法について説明する。
フィルム状支持体を準備する。次に、プライマー層を形成するために、有機溶媒に少なくとも第3級アミン及びガラス転移温度が50℃以下のポリマーを溶解した溶液を作製し、フィルム状支持体の片面に塗布する。塗布した後、これを、熱風発生機等によって乾燥させることによりプライマー層を形成する。
その後、プライマー層表面に、公知の方法にて作製した含水層を展延し、本発明の貼付剤が得られる。
【実施例】
【0024】
以下、本発明の貼付剤を実施例に基づきより詳細に説明する。
[貼付剤の製造]
以下の表1に記載の支持体、第3級アミン及びポリマーを使用して、実施例1〜2、比較例1〜6を作製した。詳細には、第3級アミン1重量部及びポリマー20重量部を酢酸エチル100重量部に溶解して得られた溶液を支持体に塗布して、乾燥させた。
尚、下記の試験例1〜3で使用する含水層は、ポリアクリル酸ナトリウム5重量部、乾燥水酸化アルミニウム1重量部、グリセリン25重量部、酒石酸1重量部、精製水60重量部を練合して得た。
【0025】
【表1】

【0026】
得られた実施例1,2及び比較例1〜6について、耐水性試験、支持体との密着性及び含水層投錨性試験、伸縮性試験を行った。各試験の結果を[表2]に示す。
【0027】
(試験例1;耐水性試験)
実施例1,2及び比較例1〜6に、含水層を2000μmになるように展延させ、室温40℃、湿度70%の恒温室内に72時間静置し、含水層の水分によるプライマー層の変化を確認した。評価基準を以下に示す。
○:プライマー層に変化がない。
△:プライマー層が膨潤する。
×:プライマー層が溶解する。
【0028】
(試験例2;支持体との密着性及び含水層投錨性試験)
実施例1,2及び比較例1〜6に、含水層を2000μmになるように展延させ、室温40℃、湿度70%の恒温室内に72時間静置し、プライマー層の支持体への密着性及びプライマー層に対する含水層投錨性を確認した。評価基準を以下に示す。
○:支持体とプライマー層が密着し、且つプライマー層に対して含水層の投錨が得られる
△:プライマー層に対する含水層の投錨は得られるが、支持体とプライマー層が層間剥離する。
×:各層それぞれ容易に層間剥離する。
【0029】
(試験例3;伸縮性試験)
実施例1,2及び比較例1〜6に、含水層を2000μmになるように展延させ、室温25℃、湿度60%の恒温室内に48時間静置し、直径100mmのクロムシリンダーロールに含水層が接触するように貼付しプライマー層の運動追従性、破壊を確認した。評価基準を以下に示す。
○:支持体と同等の運動追従性が得られ、且つプライマー層に破壊が見られない。
△:貼付直後は支持体と同等の運動追従性が得られるが、所定時間静置後プライマー層に破壊が見られる。
×:支持体と同等の運動追従性が得られず(即ち、支持体として機能せず)、また所定時間静置後プライマー層に破壊が見られる。
【0030】
【表2】

【0031】
試験例1〜3より明らかなとおり、フィルム状支持体、該フィルム状支持体の片面に積層されてなる含水層、及び該フィルム状支持体と該含水層の間に形成されるプライマー層からなる貼付剤であって、該プライマー層が、少なくとも第3級アミン及びガラス転移温度が50℃以下のポリマーを含む貼付剤は、支持体密着性・投錨性、耐水性及び伸縮性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の貼付剤の斜視図である。
【図2】図1におけるA−A断面図である。
【符号の説明】
【0033】
1 本発明の貼付剤
2 フィルム状支持体
3 プライマー層
4 含水層
5 カバーフィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム状支持体、該フィルム状支持体の片面に積層されてなる含水層、及び該フィルム状支持体と該含水層の間に形成されるプライマー層からなる貼付剤であって、
該プライマー層が、少なくとも第3級アミンとガラス転移温度が50℃以下のポリマーを含むことを特徴とする貼付剤。
【請求項2】
前記第3級アミンが耐水性を有することを特徴とする請求項1記載の貼付剤。
【請求項3】
前記ガラス転移温度が50℃以下のポリマーが、前記プライマー層に耐水性と伸縮性を付与することを特徴とする請求項1又は2に記載の貼付剤。
【請求項4】
前記ガラス転移温度が50℃以下のポリマーが、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリオレフィン及びポリ塩化ビニルから選択されるいずれか1種以上の熱可塑性エラストマー及び/又はゴムであることを特徴とする請求項1乃至3いずれかに記載の貼付剤。
【請求項5】
前記貼付剤が、化粧品、医薬部外品又は医薬品であることを特徴とする請求項1乃至4いずれかに記載の貼付剤。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−94794(P2008−94794A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−280759(P2006−280759)
【出願日】平成18年10月13日(2006.10.13)
【出願人】(593008427)日本電子精機株式会社 (12)
【Fターム(参考)】