質量を減少させることにより心房細動を治療する方法及び装置
患者の左心房内にて組織の非線状領域を含むターゲット組織をアブレートする装置及び方法。この方法は、組織係合部分を有するアブレータを備えるアブレーション装置を選ぶステップと、患者の胸腔に侵入するステップと、ターゲット組織を識別するステップとを含むことができる。この方法は、組織係合部分がアブレーションエネルギをターゲット組織に伝達することができるようにアブレーション装置をターゲット組織に隣接する位置に配置するステップも含むことができる。この方法は、組織係合部分をアブレーションエネルギにて励起して左心房内の組織の非線状領域にフートプリントを形成し且つ左心房内の励起可能な組織の全質量を減少させるステップを更に備えることができる。
【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本出願は、その内容の全体を参考として引用し本明細書に含めた、2004年5月14日付けで出願された米国仮特許出願60/571,182号の出願日の利益を主張するものである。[0002]本発明は、全体として、ツール及び方法、より具体的には、心房細動又はその他の医学状態を防止し且つ治療するため左心房の励起可能な組織の質量(mass)を減少させるべくアブレーション(ablation;除去)を使用することに関する。
【背景技術】
【0002】
心房細動を開始させる局所的トリガー作用は、肺静脈及びそれらの心門から頻回に生じると考えられる。外科医は、不整脈の伝搬を防止するためこれら領域内の心臓の基質を変更する技術を使用している。慢性的な心房細動の一部の患者にてCox/MAZE III術が採用されている。この術は、右心房及び左心房の壁を外科的に切開することにより右心房及び左心房の脱分極の波面伝搬を制御するものである。これらの切開部は、盲端部又は終端伝導経路を形成し、これは、リエントリーする心房性頻脈の発生を防止する。
【0003】
[0004]Cox/MAZE術は、心房細動を治療する点にて成功しているものの、この術は極めて複雑であり、現在、極く少数の極めて熟達した心臓外科医によってのみその他の心臓切開法と組み合わせて実施されている。この術は、性質上、心臓へ外的損傷を極めて与え易く、また、右心房及び左心房は切断し且つ互いに縫い合わせて、脱分極の波面が伝搬しないであろう線状の人工的病変部を画成する。今日までCox/MAZE術は、従来の切断し且つ縫い合わせる技術によって行われている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
[0005]マーケットは、より迅速で、安全で且つより非侵襲性のアプローチを要求している。その結果、最近、肺静脈を取り囲み且つ隔離し、また、MAZE手術の切開部を複製するメカニズムの多数の研究及び評価が行われている。数社がこれらの線に沿って下方の組織を加熱し(又は冷却し)又は化学的に破壊するアブレーション技術を開発している。[0006]それに代えて、例えば、高周波エネルギを心房の内面又は外面に印加して、脱分極の波面が伝搬しないであろう人工的病変部を形成することにより、電気外科的アブレーションによってMAZE術に類似した術を実施することが可能であることが示唆されている。
【0005】
かかる術は、ポーメランツ(Pomeranz)及びその他の者に対して発行された米国特許明細書第5,895,417号(「ポーメランツの‘417号特許」)、シュワルツ(Swartz)及びその他の者に対して発行された米国特許明細書第5,575,766号(「シュワルツの‘766号特許」)、ポーメランツ及びその他の者に対して発行された米国特許明細書第6,032,077号(「ポーメランツの‘077号特許」)、スワンソン(Swanson)及びその他の者に対して発行された米国特許明細書第6,142,994号(「スワンソンの‘994号特許」)、フレイシュマン(Fleischman)及びその他の者に対して発行された米国特許明細書第5,871,523号(「フレイシュマンの‘523号特許」)に開示されており、これらの全ては、その内容の全体を参考として引用し本明細書に含めてある。
【0006】
[0007]ポーメランツの‘417号特許には、細長い部材に沿って隔てられた複数の電極を取り付けることにより患者の心臓の室内に線状の人工的病変部を形成することによって組織をアブレートする装置が開示されている。シュワルツの‘766号特許には、左心房及び右心房内の双方に別個のアブレーション軌道を形成することにより心房の不整脈を治療する方法が開示されている。ポーメランツの‘077号特許には、食塩水に浸漬される電極上の泡によってアブレートすべき組織に電気的に接続されるアブレーションカテーテルが開示されている。ポーメランツの‘077号特許における泡は、電極からのエネルギが接触した組織をアブレートするのを許容する伝導性流体として作用する。スワンソンの‘994号特許には、診断又は治療のため1つの要素を患者の体内に配置する外科的方法及び装置が開示されている。スワンソンの‘994号特許における装置は、貫通して伸びる管腔を有する軸を備えるカテーテル又はプローブとすることができる。フレイシュマンの‘523号特許には、ら旋状に巻いたエミッタが開示されており、該エミッタは、エミッタ上を可動である絶縁シースを有する要素上に配置されている。
【0007】
[0008]組織をアブレートするため、色々な型式の電気生理学的装置が使用されている。典型的に、かかる装置は、患者に連結された接地電極を介して完成される電気回路にて1つの電極として作用する伝導性先端又はブレードを有している。接触点は小さく又は線状であり、人工的病変部を生じさせてアブレートした組織の線状軌道を形成する。電源が2つの電極の間にて高レベルの電気エネルギを形成して、組織内のタンパク質を変性させ且つ細胞を死滅させるのに十分なレベルまで組織が加熱されるようにする。かかる術が効果的であるためには、電気外科的により形成された人工的病変部は、その長さに沿って連続し且つ心臓組織を貫通して完全に伸びることが望ましい。
【0008】
[0009]幾つかの製造メーカは、長軸線に沿って線状配列の電極を有するカテーテルを開発している(例えば、アマゾール(Amazr)、メッカ(MECCA)及びリベレーション(Revelation)カテーテル)。外科医は、カテーテル及び電極を組織と接触する位置に配置し、個別に又は連続的に電極の各々にエネルギを印加する。更に、励起され且つその長さに沿って動く電極を組み込んだカテーテルは、カリフォルニア州94538、フリーモント、フリーモント通り47929のAFXインキからのフレックス(Flex)−10のようなものが提案されている。
【0009】
[0010]外科医は、同一の技術を適用して心臓に線状の人工的病変部を形成することもできる。例えば、コットキャンプ(Kottkamp)及びその他の者は、心臓血管の電気生理学ジャーナル(Journal of Cardiovascular Electrophysiology)10:772−780(1999)「慢性的心房細動の手術間の高周波アブレーション:解剖学的「アンカー」リエントリー回路を解消することによる左心房修復アプローチ法(Intraoperative Radio Frequency Ablation of Chronic Atrial Fibrillation:A Left Atrial Curative Approach by Elimination of Anatomic ‘Anchor’ Reentrant Circuits)という名称の論文にて、一連のスポット又は短い(1cm以下)の線状の人工的病変部を形成する手持ち型装置について記述している。その他の研究者は、長い線状の単極プローブを使用して多少より長い人工的病変部を形成している。更にその他の者は、上述したものと類似した多数電極線状カテーテルを使用して正味、線状の人工的病変部である一連のアブレーションを形成している。
【0010】
[0011]殆どの研究者の主たる研究点は、肺静脈を隔離することである。循環(Circlation)108:657−660(2003)におけるG.スタバイル(Stabile)、P.タルコ(Turco)、V.エロッカ(La Rocca)、P.ノセリノ(Nocerino)、E.スタバイル(Stabile)及びA.Dc シモン(Simone)による「心房細動を修復するため肺静脈の隔離が必要か?(Is Pulmonary Vein Isolation Necessary for Curing Atrial Fibrillation?)という名称の論文にて論じるように、心房細動を防止し且つ修復するとき、かかる隔離は不要であることを示唆する研究が増えている。肺静脈を隔離することのみに重点を置くことよりも、左心房の励起可能な組織の全体量を減少させることが心房細動を防止するのに十分である。全体的な着想は、心房細動のリエントリーする波及び伝搬を防止するため左心房の非直線状の領域を十分に大きくアブレートすることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
[0012]本発明の幾つかの実施の形態は、患者の左心房内の組織の非線状領域(non-linear area of tissue)を含むターゲット組織をアブレートする方法を提供するものである。この方法は、組織係合部分を有するアブレータ又はアブレーション部材を備えるアブレーション装置を選ぶステップと、患者の胸腔に侵入(penetrating)するステップと、ターゲット組織を識別するステップとを含むことができる。この方法は、組織係合部分がアブレーションエネルギをターゲット組織まで伝達することができるようにアブレーション装置をターゲット装置に隣接して配置するステップを含むこともできる。この方法は、組織係合部分をアブレーションエネルギにて励起させ左心房内の非線状の組織領域にフートプリント(footprint;足跡、範囲)を形成し且つ左心房内の励起可能な組織の全質量を減少させるステップを更に含むことができる。
【0012】
[0013]幾つかの実施の形態において、アブレーション装置は、基端と、末端と、管腔とを有する挿入ツールを含むことができる。アブレーション装置は、導体と、組織係合部分とを有するアブレータ又はアブレーション部材を含むことができる。導体は、挿入ツールの基端から伸びる供給端部と、組織係合部分に連結された送り出し端部とを含むことができる。アブレータは、管腔内に除去可能に挿入することができる。アブレーション装置は、導体と接続されたエネルギ源を含むこともできる。挿入ツールは、患者の体内に挿入し、末端がターゲット組織に隣接するようにすることができる。導体は、アブレータを管腔外に押し出してターゲット組織と係合するようにすることができる。エネルギは、エネルギ源からアブレータまで伝導してターゲット組織にフートプリントを形成し励起可能な組織の全質量を減少させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
[0033]本発明の任意の実施の形態について詳細に説明する前に、本発明はその適用が以下の説明に記載し又は添付図面に示した構成要素の構造及び配置の詳細に限定されないことを理解すべきである。本発明は、その他の実施の形態が具体化可能であり且つ色々な方法にて実施又は実行することができる。また、本明細書にて使用した用語及び術語は、説明の目的のためであり、限定的であるとみなすべきではないことも理解すべきである。「含む」、「備える」又は「有する」及びその類字語を使用することは、以下に記載した物品及びその等価物、並びに追加的な物品を包含することを意味するものである。「取り付けた」、「接続した」及び「連結した」という用語は、広く使用され且つ直接的に及び間接的に取り付け、接続し及び連結することの双方を包含するものである。更に、「接続した」及び「連結した」とは、物理的又は機械的接続又は連結にのみ制限されず、直接的又は間接的であるかどうかを問わず、電気的接続部又は連結部を含むことができる。
【0014】
[0034]本発明の幾つかの実施の形態は、心臓の左心房内の作用可能な組織の質量を減少させ(例えば、組織の質量を収縮不能、作用不能にし又は動作電位を伝搬不能であるようにすることにより)心房細動を防止し又は修復する方法及び装置を提供する。本発明の幾つかの実施の形態は、左心房の大きい面積をアブレートすることにより、脱分極の波面のリエントリーを防止するステップを含むことができる。更に、本発明の幾つかの実施の形態は、心房細動の維持を実質的に防止することができる。
【0015】
[0035]本発明の実施の形態は、隣接する組織に害を与えずに、領域の全体をアブレートする目的にて、接触し又は接触しない局所、また、多分取り囲む組織にアブレーティングエネルギを伝導するため使用されるアブレーション装置を提供することができる。アブレーション装置は、左心房内の所定の組織領域を覆う設計とされた寸法のフートプリントを有する電極を含むことができる。
【0016】
[0036]本発明の幾つかの実施の形態に従い、アブレーション装置は、左心房全体内の組織の非線状領域をアブレートするため使用することができる。この方法は、経心房隔膜穿刺により又は動脈系を通じて逆行することの何れかを介してアブレーション装置を心房の心内膜に位置決めすることにより実行することができる。これと代替的に、本発明の実施の形態は、剣状突起下又は肋骨間切開の何れかにより心膜腔を通して後左心房にアクセスする心外膜アプローチ法を使用してアブレーティング装置を挿入することにより、所定の領域内の左心房内組織をアブレートする方法を提供するようにしてもよい。
【0017】
[0037]本発明の幾つかの実施の形態は、心房細動を制御し、防止し且つ修復するため、大きいフートプリントのアブレーション電極を使用して組織をアブレートする方法を提供する。該方法は、指向性エネルギ送り出し、アブレーション装置を保護された領域から離間する絶縁部又は分離部を使用して心臓、肺及び食道のその他の領域を保護しつつ、左心房内の所定の組織領域をアブレートするステップを含むことができる。この心臓組織をアブレートする方法は、経静脈カテーテルを使用してアブレーション装置を心臓の内部から送り出すステップを含むことができる。エコー図、超音波診断器、磁気共鳴画像法、超音波、X線、アブレーション装置におけるセンサ又はトランスミッタ又はその他のマッピング技術のような位置探知及び画像化技術は、取り巻く組織への損傷を最小にし得るよう適正に配置することを許容することができる。
【0018】
[0038]本発明の幾つかの実施の形態は、所定のフートプリントを有する配置可能なアブレーション装置を含み、該アブレーション装置は、胸壁の切開部を通して送り出して双極電極と経心筋係合することにより、アブレートすることができる。該アブレーション装置は、電気外科用装置又はその他の型式のアブレーション装置(例えば、熱アブレーション、マイクロ波アブレーション、低温アブレーション、超音波アブレーション等)と共に、任意の適宜な方法及び(又は)術を使用して、左心房内の組織をアブレートしその内部の励起可能な組織の容積を減少させることができる。
【0019】
[0039]本発明の幾つかの実施の形態の装置及び方法は、左心房の励起可能な全質量を減少させ且つ、心房細動(AF)を減少又は修復し得る設計とされている。本発明の幾つかの実施の形態は、熱を発生させ、また、組織の領域をアブレートする高周波エネルギを使用する。しかし、本発明のその他の実施の形態は、マイクロ波、低温、超音波、レーザ、熱等のような追加的又は代替的なエネルギ源を含むことができる。また、本発明の幾つかの実施の形態は、心室のような心臓の他の領域内に人工的アブレーション病変部を形成するため使用することができる。
【0020】
[0040]図1には、後方下方から見た、人間の心臓10が示されている。左心房12は、アブレートすべき組織領域を含む、領域のターゲット組織15の外面14を有する。幾つかの実施の形態において、ターゲット組織15は、肺静脈の回りを伸びるが、肺静脈を含まない左心房の全後壁組織として画成することができる。図1に示すように、ターゲット組織15は、全体として、肺静脈16から隔てられて肺静脈16への損傷を防止することができる。
【0021】
[0041]図2に示すように、左心房12の内室22は、ターゲット組織15の内面24を含む。肺静脈16自体は、全体として、静脈の狭窄を懸念してターゲット組織15内に含まれない。ターゲット組織15の内面24は、肺静脈16を取り囲む、心門領域内に伸びるが、肺静脈の内腔までは伸びず、僧帽弁の輪付近まで伸びる全左心房後壁として画成することができる。右下方肺静脈の一方又は双方と僧帽弁輪との間の領域内に伝導ブロック部を形成することは興味が持たれる。保護すべき組織は、ターゲット組織15として画成されない患者の全ての組織を含むことができる。保護すべき組織は、損傷を防止するため隔離することができる。ターゲット組織15は、肺静脈16の心門から隔てることができるが、同様に、肺静脈心門を取り囲む領域まで伸びるようにしてもよい。
【0022】
[0042]図3には、ターゲット組織15をアブレートする、本発明の1つの実施の形態に従ったアブレーション装置30が示されている。該アブレーション装置30は、トロカール、内視鏡ポート、カテーテル等のような、挿入ツール32を含み又は挿入ツール32と共に使用することができる。挿入ツール32は、末端34と、基端36とを含むことができる。アブレーション装置30はまた、挿入ツール32を通って伸び且つ、挿入ツール32の末端34及び(又は)基端36にて開くことのできる管腔38を含めることもできる。アブレーション装置30は、挿入ツール32の末端34から伸びることのできるアブレータ43を更に含むことができる。アブレータ43は、患者42の切開部40を通して送り出すため、管腔38内に挿入することができる。導体44は、管腔38を貫通して伸びてアブレータ43を電源46と接続することができる。電源46は、高周波エネルギのようなアブレーションエネルギ源とすることができる。その他の形態のアブレーション方法及びエネルギ源をアブレータ43と共に使用することができる。アブレーション技術のその他の形態は、マイクロ波、超音波、熱、低温、放射線及び化学的アブレーションを含むが、これらにのみ限定されるものではない。
【0023】
[0043]アブレータ43をターゲット組織15上に適正に配置することは、直接可視化、蛍光透視X線可視化、超音波陽子放出断層撮影、蛍光透視、心臓内エコー、経食道エコー、磁気共鳴画像法、コンピュータ断層撮影、又は内視鏡画像法のような任意の適宜な手段により実行することができる。図3に示すように、マッピングツール48は、ターゲット組織15に対するアブレータ43の位置を表し又は可視化すべくディスプレイ52と接続されたセンサ50を含むことができる。トグルスティック54又はポインタペン56のような入力装置を使用して心臓10にてターゲット組織15を識別することができる。[0044]アブレータ34は、組織係合部分60(図4ないし図6に図示)を含むことができ、該組織係合部分60は、組織係合部分60が各励起により所定の領域をアブレートすることを許容するフートプリントを含むことができる。
【0024】
[0045]図4に示すように、アブレータ43は、心内膜又は心外膜の取り付けのためフートプリントを有する組織係合部分60を備えるバルーン58を含むことができる。フートプリントは、患者個人の必要性に順応し得る寸法及び形状とすることができる。バルーン58は、挿入ツール32内に配置されたインフレータ管62を含むことができる。インフレータ管62は、拡張源64と接続してバルーン58を空気、CO2、食塩水等にて拡張させることができる。バルーン58における絶縁体66は、組織係合部分60のフートプリントに対して圧接するターゲット組織15をアブレートする間、隣接する組織をアブレータ43内にてエネルギから保護することができる。バルーン58内の食塩水又は気体によって追加的な絶縁を実現することができる。
【0025】
挿入ツール32は、可撓性又は剛性とし、外科医がバルーン58の位置を操作して組織係合部分60をターゲット組織15と接触させるのを助けることができる。拡張源64は、液体又は気体をインフレータ管62を通して導き、バルーン58を拡張させることができる。バルーン58は、拡張して組織係合部分60がターゲット組織15に対して圧接するようにすることができる。幾つかの実施の形態において、図4に示すように、屈曲するストラッツ67は、左心房12内に配設してアブレータ43を押し左心房の後壁と接触させることができる。心膜腔内に配設されたとき、バルーン58は、拡張させて組織係合部分60を心外膜のターゲット組織15と強制的に接触させることができる。
【0026】
[0046]幾つかの実施の形態において、バルーン58は、組織係合部分60として作用する伝導面を含むことができる。萎んだバルーン58は、左心房12内に又はターゲット組織15の心外膜面を取り囲む心膜腔内に挿入することができる。1つの実施の形態において、次に、バルーン58は、拡張源64からの食塩水にて拡張させ且つバルーン58の熱透過性の組織係合部分60を後左心房に対して配置し且つ、バルーン58の絶縁部分を前左心房に対して配置することができるよう向き決めすることができる。食塩水は、電源46により供給された電流によって50℃ないし80℃の範囲の温度、また、幾つかの実施の形態において、55℃ないし65℃の範囲まで加熱することができる。これらの温度のとき、ターゲット領域15内の細胞は、全体として、コラーゲンの収縮無しにて死滅する。これと代替的に、バルーン58は、低温技術により冷却して心房組織を凍結し且つターゲット組織15をアブレートするようにしてもよい。全体として、低温治療のための温度は、−20℃以下ないし−40℃の範囲でなければならない。
【0027】
[0047]図4には、アブレータ43を取り囲む絶縁体66を有するバルーン58の断面図が示されている。アブレータ43は、電源46のエネルギをターゲット組織15に伝送すべく組織係合部分60に1つ又はより多くのアブレーティング要素68を含むことができる。アブレーティング要素68は、例えば、1つ又はより多くの電極、超音波トランスデューサ、マイクロ波アンテナ、低温要素、化学的要素及び(又は)放射性要素を備えることができる。バルーン58を左心房12内に挿入することは、拡張する間、バルーン58を操作して組織係合部分60のアブレーティング要素68をターゲット組織15に対して圧接し且つアブレーティング要素68を保護すべき組織から隔てることを許容する。絶縁体66は、ターゲット組織15の領域内に無い隣接する組織を保護することができる。
【0028】
[0048]アブレータ43は、図4Bに示すように、カテーテル70のような挿入ツール32を使用して患者の体内の所望の位置まで送り出すことができる。アブレータ43のフートプリントは、任意の患者の解剖学的形態及び(又は)所望の任意のアブレーションパターンに合った形態とすることができる。アブレータ43の萎んだバルーン58は、カテーテル70の末端34を通して除去可能に挿入し、導体44が図4Bに示すように挿入ツール32を貫通して伸びるようにすることができる。カテーテル70は、患者42の体内に挿入し(図3に関して説明したように)、末端34をターゲット組織15に隣接する位置に配置することができる。図4に示すように、導体44を使用してアブレータ43を管腔38から末端34から伸びる位置まで押し出すことができる。
【0029】
[0049]図5及び図5Aには、円形のアブレータ43の1つの実施の形態が示されている。その他の実施の形態において、アブレータ43は、楕円形、長円形等とすることができる。円形のアブレータ43は、組織係合面60と、外側スカート部72とを含むことができる。外側スカート部72は、組織係合面60を肺静脈16のような傷付き易い組織から隔てるための分離片として使用することができる。円形のアブレータ43は、組織係合面60に1つ又はより多くのアブレーティング要素68を有しており、また、図5Aに示すように、反対面に絶縁層66を有することができる。アブレーティング要素68は、ら旋形又は円形のパターンにて配置することができる。外側スカート部72は、シリコーン又はその他のエラストマー的材料のような柔軟で熱絶縁性の材料にて製造することができる。外側スカート部72は、アブレーティング要素68を保護すべき組織から確実に隔てるため、弾性的な材料で出来た外端縁74を含むことができる。
【0030】
[0050]円形のアブレータ43は、後左心房に隣接する心膜腔内に挿入することにより心外膜にて使用することができる。1つの実施の形態において、円形のアブレータ43は、代替的に、非コイル状のら旋状形態を含むようにしてもよい。非コイル状のら旋体は、シース32を通じて配置することができ、また、シース32を超えて前進したとき、非コイル状となり所望の形状をとることができる。NiTiのような予め形成した形状記憶合金又は超弾性合金を使用してら旋体が非コイル状となり所望の形状となることを保証することができる。
【0031】
[0051]別の実施の形態において、2つの円形のアブレータ43を双極の配置にて使用することができる。1つのアブレータ43は、ターゲット組織15の外面14上にあり、別のアブレータ43は、左心房12のターゲット組織15の内面24上に位置するようにする。円形の双極アブレータ43は、非コイル状のら旋形態を使用して配置することができる。非コイル状のら旋体は、シース32を通して配置し、また、シース32を超えて前進したとき、非コイル状となって所望の形状をとることができる。ら旋体が非コイル状となって所望の形状となるのを保証すべく、NiTiのような予め形成した形状記憶合金又は超弾性合金を使用することができる。
【0032】
[0052]図6及び図15には、湾曲した端縁76を有する所定の形状の湾曲型パッチアブレータ43の2つの実施の形態が示されている。湾曲した端縁76は、肺静脈16のような心臓内の構造体に対して圧接し、組織係合面60をターゲット組織15に対して配置することができる。図6に示すように、アブレーティング要素68は、心外膜又は心内膜に取り付ける双方のため挿入ツール32を貫通して伸びる導体44によって電源46と接続することができる。
【0033】
[0053]図7には、第一のアブレーティング要素80と、第二のアブレーティング要素82という2つのアブレーティング要素を有するアブレータ43が示されている。導体44を使用して、第一及び第二のアブレーティング要素80、82を共に又は別個に接続して個別に制御することができる。1つの実施の形態において、アブレーティング要素80、82は、高周波エネルギを使用して励起させることができる電極を備えることができる。アブレーティング要素80、82は、ポート83に付与された真空圧により組織と接触した状態に保持することができる。これと代替的に、第一のアブレーティング要素80は、高強度に収束された超音波(HIFU)クリスタル送信機又はトランスデューサとし、また、第二のアブレーティング要素82は、別のHIFUクリスタル送信機又はトランスデューサとしてもよく、その双方は、超音波エネルギをターゲット組織15に収束させる。これと代替的に、第一及び第二のアブレーティング要素80、82は、マイクロ波アブレーションエネルギをターゲット組織15まで送り出すことができるマイクロ波アンテナとしてもよい。幾つかの実施の形態において、食道内の位置からアブレーションエネルギを心臓の後左心房に収束させるべくアブレータ43を使用することができる。
【0034】
[0054]図8には、スカート部73と、患者の体内に配置してターゲット組織15を取り囲むことができる配設可能なワイパ86とを有するアブレータ43が示されている。スカート部73は、吸引チャンバ84に付与された真空圧によりターゲット組織15に対して保持することができる。配設可能なワイパ86は、導体44と接続し且つ、アブレータ43のスカート部73内を動いて回動点(例えば、モータ88)の回りを円弧状に回転することができる。配設可能なワイパ86は、1つ又はより多くのアブレーティング要素を含むことができる。配設可能なワイパ86は、側部から側部に掃き払い且つ(又は)360°回転し且つ、回転する間又は回転する一部分の間、エネルギを付与してアブレートする。スカート部73はカテーテル70内に除去可能に挿入し得るよう折り畳むことができる。弾性的な外端縁74は、真空圧が付与されたとき、ターゲット組織15に解放可能に密封することができる。スカート部73と配設可能なワイパ86との間の空隙は、隣接する組織をアブレーションエネルギによる損傷から保護する。また、アブレーションをスカート部73内にて案内するのを助けるため、導体44に隣接して管腔を提供し光ファイバ又は内視鏡型カテーテルが通るのを許容し、このことは、スカート部73及びアブレーションのため選んだ領域の適正な位置を視覚的に確認することができる。
【0035】
[0055]図9には、カテーテル70から伸びるフートプリントを有する接着剤舌状体90を含むアブレータ43が示されている。スカート部72を使用して外端縁74内の組織をアブレートすることができる。接着剤舌状体90は、ターゲット組織15に除去可能に取り付けて導体44を通して付与された真空圧により指向性アブレーションをすることができる。その他の実施の形態において、組織係合面60における生物適合可能な糊又は接着剤91により接触させ易くすることができる。スカート部72のチャンバ84内にて伝導性流体92を使用してアブレーティングエネルギを外端縁74内の全ての組織に伝達することができる。これと代替的に、解放速度の遅いアブレーション化学剤により接着剤絶縁体90を心外膜に取り付けて組織をアブレートすることができる。接着剤舌状体90はまた、幾つかの実施の形態において、抗不整脈薬剤又はその他の薬剤を含むようにしてもよい。
【0036】
[0056]図10には、例えば、化学的アブレーション剤及び(又は)放射性アブレーション剤のような1つ又はより多くのアブレーション剤を送り出す設計とされたアブレータ43が示されている。導体又は導管44は、アブレーティブ剤を先端96を通して運びスカート部72の外端縁74内にて組織と接触するようにすることができる。先端96は、左心房内に配置されるようカテーテル70内に除去可能に挿入することができる。カテーテル70は、操作し且つ回転させてスカート部72がターゲット組織15を覆うようにすることができる。アブレーション剤は、スカート部72内にてチャンバ84内に導入しターゲット組織15をアブレートすることができる。アブレーション手順の後、残留する全てのアブレーション剤を先端96を通して除去することができる。幾つかの実施の形態において、先端96は、アブレーション剤を組織内に機械的に注射し及び(又は)無針注射し得る設計とすることができる。1つの実施の形態において、アブレーション剤は治療すべき組織内に拡散する。これと代替的に、アブレーション剤は、解放速度が遅いよう制御された送り出し及び(又は)イオン導入技術を介して送り出されるようにしてもよい。
【0037】
[0057]図11には、単一のロール又は平行なロールとなるようにロール状にすることができ、また、挿入ツール32内に除去可能に挿入することのできるロール状アブレーティング要素98を含むアブレータ43が示されている。S字形の記憶ワイヤー100は、導体44がロール状アブレーティング要素98を管腔38から押し出すとき、ロール状アブレーティング要素98を非ロール状にしてもよい。ロール状アブレーティング要素98は、ロール状にして心臓10と心膜との間に配置しターゲット組織15の外面14まで心外膜アブレーションすることができる。ロール状アブレーティング要素98は、図5及び図6に示した円形で且つ湾曲した実施の形態にそれぞれ類似したものとすることができる。
【0038】
[0058]図12には、折り重ね部106の各々の頂点104に配置されたアブレーティング要素68a、68bを有するウェブ付きファン102を含むアブレータ43が示されている。アブレーティング要素68aは、ターゲット組織15に隣接して配置されたとき、励起させることができ、また、ターゲット組織15から隔てられたアブレーティング要素68bは、非励起状態に止まりターゲット組織15の領域外の組織を保護することができる。ウェブ付きファン102は、一側部に絶縁層を含むことができる。ウェブ付きファン102は、展開させて平坦なシートにしアブレーティング要素68a、68bの全て又は一部分を励起させることができる。ウェブ付きファン102は、カテーテル70の管腔38内に除去可能に挿入し得るよう圧縮することができる。
【0039】
[0059]図13A及び図13Bには、多数のアブレーティング要素68を有する拡張可能な金網を備えるアブレータ43が示されている。アブレータ43は、挿入ツール32を使用して左心房内に配置することができる。アブレーティング要素68の各々は、マッピングツール48を使用して個々に表わすことができ、また、ディスプレイ52に表示してもよい。導体44は、ターゲット組織15と接触した個々の電極68を電源46により励起させて組織をアブレートすることを許容する。1つ又はより多くのセンサ50を拡張可能な金網内に配置してターゲット組織15の位置を探知することができる。後左心房と接触する拡張可能な金網におけるアブレーティング要素68を選ぶことができる。この選択は、電気生理学的マッピング、コンピュータ利用の複雑なアルゴリズム、画像化、高性能なアブレーティング要素68の個別の操作又はその他の適宜な方法により容易にすることができる。適宜なアブレーティング要素68は、個々に又は全体的に励起させ、後部にアブレートした組織の領域を形成することができる。
【0040】
[0060]図14には、湾曲した端縁76により画成された所定の形状を有する湾曲型アブレータ43が示されている。湾曲した端縁76は、肺静脈16のような心臓の構造体に対して圧接し組織係合面60をターゲット組織15に対して配置することができる。1つ又はより多くのアブレーティング要素68を、導体44により電源(図示せず)と接続することができる。[0061]図16には、挿入ツール32(例えば、シース)から配設してアブレートするための領域を形成することのできる1つ又はより多くのコイル状アブレーティング要素を有するコイル状線形アブレータ43が示されている。幾つかの実施の形態において、コイル状線形アブレータ43は、エネルギを一方向に(例えば、後左心房の心外膜面に向けて)送り出すことができる。
【0041】
[0062]幾つかの実施の形態において、アブレータ43(例えば、1つ又はより多くのアブレーティング要素を有するアブレーションエネルギの伝送部材)は、ターゲット組織15から遠方にあるようにすることができる。例えば、超音波エネルギを遠方からターゲット組織15に収束させ、ターゲット組織とアブレータ43との間に配置された非ターゲット組織をアブレートせずに通過する間、ターゲット組織15をアブレーションすることができる。ターゲット組織15におけるエネルギの収束位置は、アブレートすべき非線状領域の回りの収束点をステアリングすることにより、アブレートすべき領域の全体に亙って動かすことができる。ステアリング機構は手操作とし(例えば、超音波トランスデューサを組織に対して物理的に動かすことにより)又は電気式(例えば、超音波トランスデューサの位相配列を使用し又は超音波収束領域をその他の方法で変更することにより)とすることができる。
【0042】
[0063]本発明の幾つかの実施の形態は、心房細動を治療するのに効果的であり、しかも、幾つかの従来の方法よりも安全に実行することができる。本発明の幾つかの実施の形態は、幾つかの従来の方法よりも迅速にアブレーションを実行することができる。本発明の幾つかの実施の形態は、心臓の左心房付属器官(LAA)−多くの人の血栓及び発作の主要な発生源のようなーの切断、結紮、接合等を行うため使用することもできる。本発明の幾つかの実施の形態の結果、患者への外的損傷が減少し、また、心臓及びそれを取り巻く構造体を偶発的に損傷する機会が少なくなる。本発明の幾つかの実施の形態は、アブレーション装置30及び(又は)アブレータ43を胸壁を通して挿入するのに必要な切開部の寸法を最小限にすることができる。本発明の幾つかの実施の形態は、心房細動を治療するため隣接する線状の人工的病変部の必要性を解消することができる。本発明の幾つかの実施の形態は、外科医が拍動する心臓の心外膜面から心臓内に人工的病変部を形成することを許容することができる。本発明の幾つかの実施の形態は、心臓の内部から経静脈カテーテルを介して実施することができる。[0064]本発明の色々な追加的な特徴及び有利な効果は、特許請求の範囲に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】胸腔から除去された人間の心臓の後方下側図である。
【図2】左心房と、肺静脈に達する心門とを示す人間の心臓の断面図である。
【図3】患者に取り付けられている状態を示す、本発明の1つの実施の形態に従ったアブレーション装置の概略図である。
【図4】絶縁したバルーン上にアブレータを有する本発明の別の実施の形態に従ったアブレーション装置の頂面図である。図4Aは、図4の線4A−4Aに沿った断面図である。図4Bは、内部に除去可能に挿入された図4のアブレータを有する挿入ツールの末端の部分斜視図である。
【図5】パッチのようなアブレータを有する本発明の別の実施の形態に従ったアブレーション装置の頂面図である。図5Aは、図5の線5A−5Aに沿ったアブレーション装置の断面図である。
【図6】湾曲型パッチのようなアブレータを有する本発明の別の実施の形態に従ったアブレーション装置の頂面図である。
【図7】双極電極のようなアブレータを有する本発明の別の実施の形態に従ったアブレーション装置の斜視図である。
【図8】ワイパを有する吸引テントを有する本発明の別の実施の形態に従ったアブレーション装置の斜視図である。
【図9】接着剤舌状体電極のようなアブレータを有する本発明の別の実施の形態に従ったアブレーション装置の斜視図である。
【図10】焼灼化学剤アプリケータを有するヘッドを備える本発明の別の実施の形態に従ったアブレーション装置の斜視図である。
【図11】カテーテル又は他の送り込みツール内に挿入するためロール状電極を有する本発明の別の実施の形態に従ったアブレーション装置の頂面図及び端面図である。
【図12】ウェブアブレータを有する本発明の別の実施の形態に従ったアブレーション装置の側面図である。
【図13A】電極を有する拡張可能な金網を有する本発明の別の実施の形態に従ったアブレーション装置の斜視図である。
【図13B】電極を有する拡張可能な金網を有する本発明の別の実施の形態に従ったアブレーション装置の斜視図である。
【図14】肺静脈に隣接してアブレーティングするため湾曲型アブレータを有する本発明の別の実施の形態に従ったアブレーション装置の側面図である。
【図15】湾曲型パッチのようなアブレータを有する本発明の別の実施の形態に従ったアブレーション装置の頂面図である。
【図16】カテーテル又は他の送り出しツール内に挿入するためロール状電極を有する本発明の別の実施の形態に従ったアブレーション装置の頂面図である。
【発明の分野】
【0001】
本出願は、その内容の全体を参考として引用し本明細書に含めた、2004年5月14日付けで出願された米国仮特許出願60/571,182号の出願日の利益を主張するものである。[0002]本発明は、全体として、ツール及び方法、より具体的には、心房細動又はその他の医学状態を防止し且つ治療するため左心房の励起可能な組織の質量(mass)を減少させるべくアブレーション(ablation;除去)を使用することに関する。
【背景技術】
【0002】
心房細動を開始させる局所的トリガー作用は、肺静脈及びそれらの心門から頻回に生じると考えられる。外科医は、不整脈の伝搬を防止するためこれら領域内の心臓の基質を変更する技術を使用している。慢性的な心房細動の一部の患者にてCox/MAZE III術が採用されている。この術は、右心房及び左心房の壁を外科的に切開することにより右心房及び左心房の脱分極の波面伝搬を制御するものである。これらの切開部は、盲端部又は終端伝導経路を形成し、これは、リエントリーする心房性頻脈の発生を防止する。
【0003】
[0004]Cox/MAZE術は、心房細動を治療する点にて成功しているものの、この術は極めて複雑であり、現在、極く少数の極めて熟達した心臓外科医によってのみその他の心臓切開法と組み合わせて実施されている。この術は、性質上、心臓へ外的損傷を極めて与え易く、また、右心房及び左心房は切断し且つ互いに縫い合わせて、脱分極の波面が伝搬しないであろう線状の人工的病変部を画成する。今日までCox/MAZE術は、従来の切断し且つ縫い合わせる技術によって行われている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
[0005]マーケットは、より迅速で、安全で且つより非侵襲性のアプローチを要求している。その結果、最近、肺静脈を取り囲み且つ隔離し、また、MAZE手術の切開部を複製するメカニズムの多数の研究及び評価が行われている。数社がこれらの線に沿って下方の組織を加熱し(又は冷却し)又は化学的に破壊するアブレーション技術を開発している。[0006]それに代えて、例えば、高周波エネルギを心房の内面又は外面に印加して、脱分極の波面が伝搬しないであろう人工的病変部を形成することにより、電気外科的アブレーションによってMAZE術に類似した術を実施することが可能であることが示唆されている。
【0005】
かかる術は、ポーメランツ(Pomeranz)及びその他の者に対して発行された米国特許明細書第5,895,417号(「ポーメランツの‘417号特許」)、シュワルツ(Swartz)及びその他の者に対して発行された米国特許明細書第5,575,766号(「シュワルツの‘766号特許」)、ポーメランツ及びその他の者に対して発行された米国特許明細書第6,032,077号(「ポーメランツの‘077号特許」)、スワンソン(Swanson)及びその他の者に対して発行された米国特許明細書第6,142,994号(「スワンソンの‘994号特許」)、フレイシュマン(Fleischman)及びその他の者に対して発行された米国特許明細書第5,871,523号(「フレイシュマンの‘523号特許」)に開示されており、これらの全ては、その内容の全体を参考として引用し本明細書に含めてある。
【0006】
[0007]ポーメランツの‘417号特許には、細長い部材に沿って隔てられた複数の電極を取り付けることにより患者の心臓の室内に線状の人工的病変部を形成することによって組織をアブレートする装置が開示されている。シュワルツの‘766号特許には、左心房及び右心房内の双方に別個のアブレーション軌道を形成することにより心房の不整脈を治療する方法が開示されている。ポーメランツの‘077号特許には、食塩水に浸漬される電極上の泡によってアブレートすべき組織に電気的に接続されるアブレーションカテーテルが開示されている。ポーメランツの‘077号特許における泡は、電極からのエネルギが接触した組織をアブレートするのを許容する伝導性流体として作用する。スワンソンの‘994号特許には、診断又は治療のため1つの要素を患者の体内に配置する外科的方法及び装置が開示されている。スワンソンの‘994号特許における装置は、貫通して伸びる管腔を有する軸を備えるカテーテル又はプローブとすることができる。フレイシュマンの‘523号特許には、ら旋状に巻いたエミッタが開示されており、該エミッタは、エミッタ上を可動である絶縁シースを有する要素上に配置されている。
【0007】
[0008]組織をアブレートするため、色々な型式の電気生理学的装置が使用されている。典型的に、かかる装置は、患者に連結された接地電極を介して完成される電気回路にて1つの電極として作用する伝導性先端又はブレードを有している。接触点は小さく又は線状であり、人工的病変部を生じさせてアブレートした組織の線状軌道を形成する。電源が2つの電極の間にて高レベルの電気エネルギを形成して、組織内のタンパク質を変性させ且つ細胞を死滅させるのに十分なレベルまで組織が加熱されるようにする。かかる術が効果的であるためには、電気外科的により形成された人工的病変部は、その長さに沿って連続し且つ心臓組織を貫通して完全に伸びることが望ましい。
【0008】
[0009]幾つかの製造メーカは、長軸線に沿って線状配列の電極を有するカテーテルを開発している(例えば、アマゾール(Amazr)、メッカ(MECCA)及びリベレーション(Revelation)カテーテル)。外科医は、カテーテル及び電極を組織と接触する位置に配置し、個別に又は連続的に電極の各々にエネルギを印加する。更に、励起され且つその長さに沿って動く電極を組み込んだカテーテルは、カリフォルニア州94538、フリーモント、フリーモント通り47929のAFXインキからのフレックス(Flex)−10のようなものが提案されている。
【0009】
[0010]外科医は、同一の技術を適用して心臓に線状の人工的病変部を形成することもできる。例えば、コットキャンプ(Kottkamp)及びその他の者は、心臓血管の電気生理学ジャーナル(Journal of Cardiovascular Electrophysiology)10:772−780(1999)「慢性的心房細動の手術間の高周波アブレーション:解剖学的「アンカー」リエントリー回路を解消することによる左心房修復アプローチ法(Intraoperative Radio Frequency Ablation of Chronic Atrial Fibrillation:A Left Atrial Curative Approach by Elimination of Anatomic ‘Anchor’ Reentrant Circuits)という名称の論文にて、一連のスポット又は短い(1cm以下)の線状の人工的病変部を形成する手持ち型装置について記述している。その他の研究者は、長い線状の単極プローブを使用して多少より長い人工的病変部を形成している。更にその他の者は、上述したものと類似した多数電極線状カテーテルを使用して正味、線状の人工的病変部である一連のアブレーションを形成している。
【0010】
[0011]殆どの研究者の主たる研究点は、肺静脈を隔離することである。循環(Circlation)108:657−660(2003)におけるG.スタバイル(Stabile)、P.タルコ(Turco)、V.エロッカ(La Rocca)、P.ノセリノ(Nocerino)、E.スタバイル(Stabile)及びA.Dc シモン(Simone)による「心房細動を修復するため肺静脈の隔離が必要か?(Is Pulmonary Vein Isolation Necessary for Curing Atrial Fibrillation?)という名称の論文にて論じるように、心房細動を防止し且つ修復するとき、かかる隔離は不要であることを示唆する研究が増えている。肺静脈を隔離することのみに重点を置くことよりも、左心房の励起可能な組織の全体量を減少させることが心房細動を防止するのに十分である。全体的な着想は、心房細動のリエントリーする波及び伝搬を防止するため左心房の非直線状の領域を十分に大きくアブレートすることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
[0012]本発明の幾つかの実施の形態は、患者の左心房内の組織の非線状領域(non-linear area of tissue)を含むターゲット組織をアブレートする方法を提供するものである。この方法は、組織係合部分を有するアブレータ又はアブレーション部材を備えるアブレーション装置を選ぶステップと、患者の胸腔に侵入(penetrating)するステップと、ターゲット組織を識別するステップとを含むことができる。この方法は、組織係合部分がアブレーションエネルギをターゲット組織まで伝達することができるようにアブレーション装置をターゲット装置に隣接して配置するステップを含むこともできる。この方法は、組織係合部分をアブレーションエネルギにて励起させ左心房内の非線状の組織領域にフートプリント(footprint;足跡、範囲)を形成し且つ左心房内の励起可能な組織の全質量を減少させるステップを更に含むことができる。
【0012】
[0013]幾つかの実施の形態において、アブレーション装置は、基端と、末端と、管腔とを有する挿入ツールを含むことができる。アブレーション装置は、導体と、組織係合部分とを有するアブレータ又はアブレーション部材を含むことができる。導体は、挿入ツールの基端から伸びる供給端部と、組織係合部分に連結された送り出し端部とを含むことができる。アブレータは、管腔内に除去可能に挿入することができる。アブレーション装置は、導体と接続されたエネルギ源を含むこともできる。挿入ツールは、患者の体内に挿入し、末端がターゲット組織に隣接するようにすることができる。導体は、アブレータを管腔外に押し出してターゲット組織と係合するようにすることができる。エネルギは、エネルギ源からアブレータまで伝導してターゲット組織にフートプリントを形成し励起可能な組織の全質量を減少させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
[0033]本発明の任意の実施の形態について詳細に説明する前に、本発明はその適用が以下の説明に記載し又は添付図面に示した構成要素の構造及び配置の詳細に限定されないことを理解すべきである。本発明は、その他の実施の形態が具体化可能であり且つ色々な方法にて実施又は実行することができる。また、本明細書にて使用した用語及び術語は、説明の目的のためであり、限定的であるとみなすべきではないことも理解すべきである。「含む」、「備える」又は「有する」及びその類字語を使用することは、以下に記載した物品及びその等価物、並びに追加的な物品を包含することを意味するものである。「取り付けた」、「接続した」及び「連結した」という用語は、広く使用され且つ直接的に及び間接的に取り付け、接続し及び連結することの双方を包含するものである。更に、「接続した」及び「連結した」とは、物理的又は機械的接続又は連結にのみ制限されず、直接的又は間接的であるかどうかを問わず、電気的接続部又は連結部を含むことができる。
【0014】
[0034]本発明の幾つかの実施の形態は、心臓の左心房内の作用可能な組織の質量を減少させ(例えば、組織の質量を収縮不能、作用不能にし又は動作電位を伝搬不能であるようにすることにより)心房細動を防止し又は修復する方法及び装置を提供する。本発明の幾つかの実施の形態は、左心房の大きい面積をアブレートすることにより、脱分極の波面のリエントリーを防止するステップを含むことができる。更に、本発明の幾つかの実施の形態は、心房細動の維持を実質的に防止することができる。
【0015】
[0035]本発明の実施の形態は、隣接する組織に害を与えずに、領域の全体をアブレートする目的にて、接触し又は接触しない局所、また、多分取り囲む組織にアブレーティングエネルギを伝導するため使用されるアブレーション装置を提供することができる。アブレーション装置は、左心房内の所定の組織領域を覆う設計とされた寸法のフートプリントを有する電極を含むことができる。
【0016】
[0036]本発明の幾つかの実施の形態に従い、アブレーション装置は、左心房全体内の組織の非線状領域をアブレートするため使用することができる。この方法は、経心房隔膜穿刺により又は動脈系を通じて逆行することの何れかを介してアブレーション装置を心房の心内膜に位置決めすることにより実行することができる。これと代替的に、本発明の実施の形態は、剣状突起下又は肋骨間切開の何れかにより心膜腔を通して後左心房にアクセスする心外膜アプローチ法を使用してアブレーティング装置を挿入することにより、所定の領域内の左心房内組織をアブレートする方法を提供するようにしてもよい。
【0017】
[0037]本発明の幾つかの実施の形態は、心房細動を制御し、防止し且つ修復するため、大きいフートプリントのアブレーション電極を使用して組織をアブレートする方法を提供する。該方法は、指向性エネルギ送り出し、アブレーション装置を保護された領域から離間する絶縁部又は分離部を使用して心臓、肺及び食道のその他の領域を保護しつつ、左心房内の所定の組織領域をアブレートするステップを含むことができる。この心臓組織をアブレートする方法は、経静脈カテーテルを使用してアブレーション装置を心臓の内部から送り出すステップを含むことができる。エコー図、超音波診断器、磁気共鳴画像法、超音波、X線、アブレーション装置におけるセンサ又はトランスミッタ又はその他のマッピング技術のような位置探知及び画像化技術は、取り巻く組織への損傷を最小にし得るよう適正に配置することを許容することができる。
【0018】
[0038]本発明の幾つかの実施の形態は、所定のフートプリントを有する配置可能なアブレーション装置を含み、該アブレーション装置は、胸壁の切開部を通して送り出して双極電極と経心筋係合することにより、アブレートすることができる。該アブレーション装置は、電気外科用装置又はその他の型式のアブレーション装置(例えば、熱アブレーション、マイクロ波アブレーション、低温アブレーション、超音波アブレーション等)と共に、任意の適宜な方法及び(又は)術を使用して、左心房内の組織をアブレートしその内部の励起可能な組織の容積を減少させることができる。
【0019】
[0039]本発明の幾つかの実施の形態の装置及び方法は、左心房の励起可能な全質量を減少させ且つ、心房細動(AF)を減少又は修復し得る設計とされている。本発明の幾つかの実施の形態は、熱を発生させ、また、組織の領域をアブレートする高周波エネルギを使用する。しかし、本発明のその他の実施の形態は、マイクロ波、低温、超音波、レーザ、熱等のような追加的又は代替的なエネルギ源を含むことができる。また、本発明の幾つかの実施の形態は、心室のような心臓の他の領域内に人工的アブレーション病変部を形成するため使用することができる。
【0020】
[0040]図1には、後方下方から見た、人間の心臓10が示されている。左心房12は、アブレートすべき組織領域を含む、領域のターゲット組織15の外面14を有する。幾つかの実施の形態において、ターゲット組織15は、肺静脈の回りを伸びるが、肺静脈を含まない左心房の全後壁組織として画成することができる。図1に示すように、ターゲット組織15は、全体として、肺静脈16から隔てられて肺静脈16への損傷を防止することができる。
【0021】
[0041]図2に示すように、左心房12の内室22は、ターゲット組織15の内面24を含む。肺静脈16自体は、全体として、静脈の狭窄を懸念してターゲット組織15内に含まれない。ターゲット組織15の内面24は、肺静脈16を取り囲む、心門領域内に伸びるが、肺静脈の内腔までは伸びず、僧帽弁の輪付近まで伸びる全左心房後壁として画成することができる。右下方肺静脈の一方又は双方と僧帽弁輪との間の領域内に伝導ブロック部を形成することは興味が持たれる。保護すべき組織は、ターゲット組織15として画成されない患者の全ての組織を含むことができる。保護すべき組織は、損傷を防止するため隔離することができる。ターゲット組織15は、肺静脈16の心門から隔てることができるが、同様に、肺静脈心門を取り囲む領域まで伸びるようにしてもよい。
【0022】
[0042]図3には、ターゲット組織15をアブレートする、本発明の1つの実施の形態に従ったアブレーション装置30が示されている。該アブレーション装置30は、トロカール、内視鏡ポート、カテーテル等のような、挿入ツール32を含み又は挿入ツール32と共に使用することができる。挿入ツール32は、末端34と、基端36とを含むことができる。アブレーション装置30はまた、挿入ツール32を通って伸び且つ、挿入ツール32の末端34及び(又は)基端36にて開くことのできる管腔38を含めることもできる。アブレーション装置30は、挿入ツール32の末端34から伸びることのできるアブレータ43を更に含むことができる。アブレータ43は、患者42の切開部40を通して送り出すため、管腔38内に挿入することができる。導体44は、管腔38を貫通して伸びてアブレータ43を電源46と接続することができる。電源46は、高周波エネルギのようなアブレーションエネルギ源とすることができる。その他の形態のアブレーション方法及びエネルギ源をアブレータ43と共に使用することができる。アブレーション技術のその他の形態は、マイクロ波、超音波、熱、低温、放射線及び化学的アブレーションを含むが、これらにのみ限定されるものではない。
【0023】
[0043]アブレータ43をターゲット組織15上に適正に配置することは、直接可視化、蛍光透視X線可視化、超音波陽子放出断層撮影、蛍光透視、心臓内エコー、経食道エコー、磁気共鳴画像法、コンピュータ断層撮影、又は内視鏡画像法のような任意の適宜な手段により実行することができる。図3に示すように、マッピングツール48は、ターゲット組織15に対するアブレータ43の位置を表し又は可視化すべくディスプレイ52と接続されたセンサ50を含むことができる。トグルスティック54又はポインタペン56のような入力装置を使用して心臓10にてターゲット組織15を識別することができる。[0044]アブレータ34は、組織係合部分60(図4ないし図6に図示)を含むことができ、該組織係合部分60は、組織係合部分60が各励起により所定の領域をアブレートすることを許容するフートプリントを含むことができる。
【0024】
[0045]図4に示すように、アブレータ43は、心内膜又は心外膜の取り付けのためフートプリントを有する組織係合部分60を備えるバルーン58を含むことができる。フートプリントは、患者個人の必要性に順応し得る寸法及び形状とすることができる。バルーン58は、挿入ツール32内に配置されたインフレータ管62を含むことができる。インフレータ管62は、拡張源64と接続してバルーン58を空気、CO2、食塩水等にて拡張させることができる。バルーン58における絶縁体66は、組織係合部分60のフートプリントに対して圧接するターゲット組織15をアブレートする間、隣接する組織をアブレータ43内にてエネルギから保護することができる。バルーン58内の食塩水又は気体によって追加的な絶縁を実現することができる。
【0025】
挿入ツール32は、可撓性又は剛性とし、外科医がバルーン58の位置を操作して組織係合部分60をターゲット組織15と接触させるのを助けることができる。拡張源64は、液体又は気体をインフレータ管62を通して導き、バルーン58を拡張させることができる。バルーン58は、拡張して組織係合部分60がターゲット組織15に対して圧接するようにすることができる。幾つかの実施の形態において、図4に示すように、屈曲するストラッツ67は、左心房12内に配設してアブレータ43を押し左心房の後壁と接触させることができる。心膜腔内に配設されたとき、バルーン58は、拡張させて組織係合部分60を心外膜のターゲット組織15と強制的に接触させることができる。
【0026】
[0046]幾つかの実施の形態において、バルーン58は、組織係合部分60として作用する伝導面を含むことができる。萎んだバルーン58は、左心房12内に又はターゲット組織15の心外膜面を取り囲む心膜腔内に挿入することができる。1つの実施の形態において、次に、バルーン58は、拡張源64からの食塩水にて拡張させ且つバルーン58の熱透過性の組織係合部分60を後左心房に対して配置し且つ、バルーン58の絶縁部分を前左心房に対して配置することができるよう向き決めすることができる。食塩水は、電源46により供給された電流によって50℃ないし80℃の範囲の温度、また、幾つかの実施の形態において、55℃ないし65℃の範囲まで加熱することができる。これらの温度のとき、ターゲット領域15内の細胞は、全体として、コラーゲンの収縮無しにて死滅する。これと代替的に、バルーン58は、低温技術により冷却して心房組織を凍結し且つターゲット組織15をアブレートするようにしてもよい。全体として、低温治療のための温度は、−20℃以下ないし−40℃の範囲でなければならない。
【0027】
[0047]図4には、アブレータ43を取り囲む絶縁体66を有するバルーン58の断面図が示されている。アブレータ43は、電源46のエネルギをターゲット組織15に伝送すべく組織係合部分60に1つ又はより多くのアブレーティング要素68を含むことができる。アブレーティング要素68は、例えば、1つ又はより多くの電極、超音波トランスデューサ、マイクロ波アンテナ、低温要素、化学的要素及び(又は)放射性要素を備えることができる。バルーン58を左心房12内に挿入することは、拡張する間、バルーン58を操作して組織係合部分60のアブレーティング要素68をターゲット組織15に対して圧接し且つアブレーティング要素68を保護すべき組織から隔てることを許容する。絶縁体66は、ターゲット組織15の領域内に無い隣接する組織を保護することができる。
【0028】
[0048]アブレータ43は、図4Bに示すように、カテーテル70のような挿入ツール32を使用して患者の体内の所望の位置まで送り出すことができる。アブレータ43のフートプリントは、任意の患者の解剖学的形態及び(又は)所望の任意のアブレーションパターンに合った形態とすることができる。アブレータ43の萎んだバルーン58は、カテーテル70の末端34を通して除去可能に挿入し、導体44が図4Bに示すように挿入ツール32を貫通して伸びるようにすることができる。カテーテル70は、患者42の体内に挿入し(図3に関して説明したように)、末端34をターゲット組織15に隣接する位置に配置することができる。図4に示すように、導体44を使用してアブレータ43を管腔38から末端34から伸びる位置まで押し出すことができる。
【0029】
[0049]図5及び図5Aには、円形のアブレータ43の1つの実施の形態が示されている。その他の実施の形態において、アブレータ43は、楕円形、長円形等とすることができる。円形のアブレータ43は、組織係合面60と、外側スカート部72とを含むことができる。外側スカート部72は、組織係合面60を肺静脈16のような傷付き易い組織から隔てるための分離片として使用することができる。円形のアブレータ43は、組織係合面60に1つ又はより多くのアブレーティング要素68を有しており、また、図5Aに示すように、反対面に絶縁層66を有することができる。アブレーティング要素68は、ら旋形又は円形のパターンにて配置することができる。外側スカート部72は、シリコーン又はその他のエラストマー的材料のような柔軟で熱絶縁性の材料にて製造することができる。外側スカート部72は、アブレーティング要素68を保護すべき組織から確実に隔てるため、弾性的な材料で出来た外端縁74を含むことができる。
【0030】
[0050]円形のアブレータ43は、後左心房に隣接する心膜腔内に挿入することにより心外膜にて使用することができる。1つの実施の形態において、円形のアブレータ43は、代替的に、非コイル状のら旋状形態を含むようにしてもよい。非コイル状のら旋体は、シース32を通じて配置することができ、また、シース32を超えて前進したとき、非コイル状となり所望の形状をとることができる。NiTiのような予め形成した形状記憶合金又は超弾性合金を使用してら旋体が非コイル状となり所望の形状となることを保証することができる。
【0031】
[0051]別の実施の形態において、2つの円形のアブレータ43を双極の配置にて使用することができる。1つのアブレータ43は、ターゲット組織15の外面14上にあり、別のアブレータ43は、左心房12のターゲット組織15の内面24上に位置するようにする。円形の双極アブレータ43は、非コイル状のら旋形態を使用して配置することができる。非コイル状のら旋体は、シース32を通して配置し、また、シース32を超えて前進したとき、非コイル状となって所望の形状をとることができる。ら旋体が非コイル状となって所望の形状となるのを保証すべく、NiTiのような予め形成した形状記憶合金又は超弾性合金を使用することができる。
【0032】
[0052]図6及び図15には、湾曲した端縁76を有する所定の形状の湾曲型パッチアブレータ43の2つの実施の形態が示されている。湾曲した端縁76は、肺静脈16のような心臓内の構造体に対して圧接し、組織係合面60をターゲット組織15に対して配置することができる。図6に示すように、アブレーティング要素68は、心外膜又は心内膜に取り付ける双方のため挿入ツール32を貫通して伸びる導体44によって電源46と接続することができる。
【0033】
[0053]図7には、第一のアブレーティング要素80と、第二のアブレーティング要素82という2つのアブレーティング要素を有するアブレータ43が示されている。導体44を使用して、第一及び第二のアブレーティング要素80、82を共に又は別個に接続して個別に制御することができる。1つの実施の形態において、アブレーティング要素80、82は、高周波エネルギを使用して励起させることができる電極を備えることができる。アブレーティング要素80、82は、ポート83に付与された真空圧により組織と接触した状態に保持することができる。これと代替的に、第一のアブレーティング要素80は、高強度に収束された超音波(HIFU)クリスタル送信機又はトランスデューサとし、また、第二のアブレーティング要素82は、別のHIFUクリスタル送信機又はトランスデューサとしてもよく、その双方は、超音波エネルギをターゲット組織15に収束させる。これと代替的に、第一及び第二のアブレーティング要素80、82は、マイクロ波アブレーションエネルギをターゲット組織15まで送り出すことができるマイクロ波アンテナとしてもよい。幾つかの実施の形態において、食道内の位置からアブレーションエネルギを心臓の後左心房に収束させるべくアブレータ43を使用することができる。
【0034】
[0054]図8には、スカート部73と、患者の体内に配置してターゲット組織15を取り囲むことができる配設可能なワイパ86とを有するアブレータ43が示されている。スカート部73は、吸引チャンバ84に付与された真空圧によりターゲット組織15に対して保持することができる。配設可能なワイパ86は、導体44と接続し且つ、アブレータ43のスカート部73内を動いて回動点(例えば、モータ88)の回りを円弧状に回転することができる。配設可能なワイパ86は、1つ又はより多くのアブレーティング要素を含むことができる。配設可能なワイパ86は、側部から側部に掃き払い且つ(又は)360°回転し且つ、回転する間又は回転する一部分の間、エネルギを付与してアブレートする。スカート部73はカテーテル70内に除去可能に挿入し得るよう折り畳むことができる。弾性的な外端縁74は、真空圧が付与されたとき、ターゲット組織15に解放可能に密封することができる。スカート部73と配設可能なワイパ86との間の空隙は、隣接する組織をアブレーションエネルギによる損傷から保護する。また、アブレーションをスカート部73内にて案内するのを助けるため、導体44に隣接して管腔を提供し光ファイバ又は内視鏡型カテーテルが通るのを許容し、このことは、スカート部73及びアブレーションのため選んだ領域の適正な位置を視覚的に確認することができる。
【0035】
[0055]図9には、カテーテル70から伸びるフートプリントを有する接着剤舌状体90を含むアブレータ43が示されている。スカート部72を使用して外端縁74内の組織をアブレートすることができる。接着剤舌状体90は、ターゲット組織15に除去可能に取り付けて導体44を通して付与された真空圧により指向性アブレーションをすることができる。その他の実施の形態において、組織係合面60における生物適合可能な糊又は接着剤91により接触させ易くすることができる。スカート部72のチャンバ84内にて伝導性流体92を使用してアブレーティングエネルギを外端縁74内の全ての組織に伝達することができる。これと代替的に、解放速度の遅いアブレーション化学剤により接着剤絶縁体90を心外膜に取り付けて組織をアブレートすることができる。接着剤舌状体90はまた、幾つかの実施の形態において、抗不整脈薬剤又はその他の薬剤を含むようにしてもよい。
【0036】
[0056]図10には、例えば、化学的アブレーション剤及び(又は)放射性アブレーション剤のような1つ又はより多くのアブレーション剤を送り出す設計とされたアブレータ43が示されている。導体又は導管44は、アブレーティブ剤を先端96を通して運びスカート部72の外端縁74内にて組織と接触するようにすることができる。先端96は、左心房内に配置されるようカテーテル70内に除去可能に挿入することができる。カテーテル70は、操作し且つ回転させてスカート部72がターゲット組織15を覆うようにすることができる。アブレーション剤は、スカート部72内にてチャンバ84内に導入しターゲット組織15をアブレートすることができる。アブレーション手順の後、残留する全てのアブレーション剤を先端96を通して除去することができる。幾つかの実施の形態において、先端96は、アブレーション剤を組織内に機械的に注射し及び(又は)無針注射し得る設計とすることができる。1つの実施の形態において、アブレーション剤は治療すべき組織内に拡散する。これと代替的に、アブレーション剤は、解放速度が遅いよう制御された送り出し及び(又は)イオン導入技術を介して送り出されるようにしてもよい。
【0037】
[0057]図11には、単一のロール又は平行なロールとなるようにロール状にすることができ、また、挿入ツール32内に除去可能に挿入することのできるロール状アブレーティング要素98を含むアブレータ43が示されている。S字形の記憶ワイヤー100は、導体44がロール状アブレーティング要素98を管腔38から押し出すとき、ロール状アブレーティング要素98を非ロール状にしてもよい。ロール状アブレーティング要素98は、ロール状にして心臓10と心膜との間に配置しターゲット組織15の外面14まで心外膜アブレーションすることができる。ロール状アブレーティング要素98は、図5及び図6に示した円形で且つ湾曲した実施の形態にそれぞれ類似したものとすることができる。
【0038】
[0058]図12には、折り重ね部106の各々の頂点104に配置されたアブレーティング要素68a、68bを有するウェブ付きファン102を含むアブレータ43が示されている。アブレーティング要素68aは、ターゲット組織15に隣接して配置されたとき、励起させることができ、また、ターゲット組織15から隔てられたアブレーティング要素68bは、非励起状態に止まりターゲット組織15の領域外の組織を保護することができる。ウェブ付きファン102は、一側部に絶縁層を含むことができる。ウェブ付きファン102は、展開させて平坦なシートにしアブレーティング要素68a、68bの全て又は一部分を励起させることができる。ウェブ付きファン102は、カテーテル70の管腔38内に除去可能に挿入し得るよう圧縮することができる。
【0039】
[0059]図13A及び図13Bには、多数のアブレーティング要素68を有する拡張可能な金網を備えるアブレータ43が示されている。アブレータ43は、挿入ツール32を使用して左心房内に配置することができる。アブレーティング要素68の各々は、マッピングツール48を使用して個々に表わすことができ、また、ディスプレイ52に表示してもよい。導体44は、ターゲット組織15と接触した個々の電極68を電源46により励起させて組織をアブレートすることを許容する。1つ又はより多くのセンサ50を拡張可能な金網内に配置してターゲット組織15の位置を探知することができる。後左心房と接触する拡張可能な金網におけるアブレーティング要素68を選ぶことができる。この選択は、電気生理学的マッピング、コンピュータ利用の複雑なアルゴリズム、画像化、高性能なアブレーティング要素68の個別の操作又はその他の適宜な方法により容易にすることができる。適宜なアブレーティング要素68は、個々に又は全体的に励起させ、後部にアブレートした組織の領域を形成することができる。
【0040】
[0060]図14には、湾曲した端縁76により画成された所定の形状を有する湾曲型アブレータ43が示されている。湾曲した端縁76は、肺静脈16のような心臓の構造体に対して圧接し組織係合面60をターゲット組織15に対して配置することができる。1つ又はより多くのアブレーティング要素68を、導体44により電源(図示せず)と接続することができる。[0061]図16には、挿入ツール32(例えば、シース)から配設してアブレートするための領域を形成することのできる1つ又はより多くのコイル状アブレーティング要素を有するコイル状線形アブレータ43が示されている。幾つかの実施の形態において、コイル状線形アブレータ43は、エネルギを一方向に(例えば、後左心房の心外膜面に向けて)送り出すことができる。
【0041】
[0062]幾つかの実施の形態において、アブレータ43(例えば、1つ又はより多くのアブレーティング要素を有するアブレーションエネルギの伝送部材)は、ターゲット組織15から遠方にあるようにすることができる。例えば、超音波エネルギを遠方からターゲット組織15に収束させ、ターゲット組織とアブレータ43との間に配置された非ターゲット組織をアブレートせずに通過する間、ターゲット組織15をアブレーションすることができる。ターゲット組織15におけるエネルギの収束位置は、アブレートすべき非線状領域の回りの収束点をステアリングすることにより、アブレートすべき領域の全体に亙って動かすことができる。ステアリング機構は手操作とし(例えば、超音波トランスデューサを組織に対して物理的に動かすことにより)又は電気式(例えば、超音波トランスデューサの位相配列を使用し又は超音波収束領域をその他の方法で変更することにより)とすることができる。
【0042】
[0063]本発明の幾つかの実施の形態は、心房細動を治療するのに効果的であり、しかも、幾つかの従来の方法よりも安全に実行することができる。本発明の幾つかの実施の形態は、幾つかの従来の方法よりも迅速にアブレーションを実行することができる。本発明の幾つかの実施の形態は、心臓の左心房付属器官(LAA)−多くの人の血栓及び発作の主要な発生源のようなーの切断、結紮、接合等を行うため使用することもできる。本発明の幾つかの実施の形態の結果、患者への外的損傷が減少し、また、心臓及びそれを取り巻く構造体を偶発的に損傷する機会が少なくなる。本発明の幾つかの実施の形態は、アブレーション装置30及び(又は)アブレータ43を胸壁を通して挿入するのに必要な切開部の寸法を最小限にすることができる。本発明の幾つかの実施の形態は、心房細動を治療するため隣接する線状の人工的病変部の必要性を解消することができる。本発明の幾つかの実施の形態は、外科医が拍動する心臓の心外膜面から心臓内に人工的病変部を形成することを許容することができる。本発明の幾つかの実施の形態は、心臓の内部から経静脈カテーテルを介して実施することができる。[0064]本発明の色々な追加的な特徴及び有利な効果は、特許請求の範囲に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】胸腔から除去された人間の心臓の後方下側図である。
【図2】左心房と、肺静脈に達する心門とを示す人間の心臓の断面図である。
【図3】患者に取り付けられている状態を示す、本発明の1つの実施の形態に従ったアブレーション装置の概略図である。
【図4】絶縁したバルーン上にアブレータを有する本発明の別の実施の形態に従ったアブレーション装置の頂面図である。図4Aは、図4の線4A−4Aに沿った断面図である。図4Bは、内部に除去可能に挿入された図4のアブレータを有する挿入ツールの末端の部分斜視図である。
【図5】パッチのようなアブレータを有する本発明の別の実施の形態に従ったアブレーション装置の頂面図である。図5Aは、図5の線5A−5Aに沿ったアブレーション装置の断面図である。
【図6】湾曲型パッチのようなアブレータを有する本発明の別の実施の形態に従ったアブレーション装置の頂面図である。
【図7】双極電極のようなアブレータを有する本発明の別の実施の形態に従ったアブレーション装置の斜視図である。
【図8】ワイパを有する吸引テントを有する本発明の別の実施の形態に従ったアブレーション装置の斜視図である。
【図9】接着剤舌状体電極のようなアブレータを有する本発明の別の実施の形態に従ったアブレーション装置の斜視図である。
【図10】焼灼化学剤アプリケータを有するヘッドを備える本発明の別の実施の形態に従ったアブレーション装置の斜視図である。
【図11】カテーテル又は他の送り込みツール内に挿入するためロール状電極を有する本発明の別の実施の形態に従ったアブレーション装置の頂面図及び端面図である。
【図12】ウェブアブレータを有する本発明の別の実施の形態に従ったアブレーション装置の側面図である。
【図13A】電極を有する拡張可能な金網を有する本発明の別の実施の形態に従ったアブレーション装置の斜視図である。
【図13B】電極を有する拡張可能な金網を有する本発明の別の実施の形態に従ったアブレーション装置の斜視図である。
【図14】肺静脈に隣接してアブレーティングするため湾曲型アブレータを有する本発明の別の実施の形態に従ったアブレーション装置の側面図である。
【図15】湾曲型パッチのようなアブレータを有する本発明の別の実施の形態に従ったアブレーション装置の頂面図である。
【図16】カテーテル又は他の送り出しツール内に挿入するためロール状電極を有する本発明の別の実施の形態に従ったアブレーション装置の頂面図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の左心房内の組織の非線状領域を含むターゲット組織をアブレートする方法において、
組織係合部分を有するアブレータを備えるアブレーション装置を選ぶステップと、
患者の胸腔に侵入するステップと、
ターゲット組織を識別するステップと、
組織係合部分がアブレーションエネルギをターゲット組織に伝達することができるようにアブレーション装置をターゲット組織に隣接する位置に配置するステップと、
組織係合部分をアブレーションエネルギにて励起して左心房内の組織の非線状領域にフートプリントを形成し且つ左心房内の励起可能な組織の全質量を減少させるステップとを備える、ターゲット組織をアブレートする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、高周波エネルギ、熱エネルギ、低温エネルギ、化学的エネルギ、薬理学的エネルギ、超音波エネルギ、マイクロ波エネルギ、レーザエネルギ及び放射線エネルギの少なくとも1つを使用するアブレーション装置を選ぶステップを更に備える、方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法において、バルーン、金網、パッチ、ロール状電極、ファン、双極電極、ワイパー及びクリスタル送信機の少なくとも1つを含むアブレーション装置を選ぶステップを更に備える、方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法において、剣状突起下切開、肋骨下切開、胸骨切開、開胸切開及び経静脈穿刺の少なくとも1つを通じて入ることにより胸腔に侵入するステップを更に備える、方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法において、直接可視化、X線、超音波、磁気共鳴画像法、陽電子放出断層撮影、コンピュータ断層撮影、蛍光透視、内視鏡的観測、心臓内エコー及び経食道エコーの少なくとも1つを使用してターゲット組織を識別するステップを更に備える、方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法において、アブレーション装置を心外膜アプローチ法により左心房の外側に隣接する位置に配置するステップを更に備える、方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法において、アブレーション装置を心内膜アプローチ法により左心房の内側に隣接する位置に配置するステップを更に備える、方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法において、アブレーション装置を経食道アプローチ法により左心房に隣接する位置に配置するステップを更に備える、方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法において、組織係合部分を超音波エネルギにて励起するステップを更に備える、方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法において、超音波エネルギをターゲット組織に収束させるステップを更に備える、方法。
【請求項11】
請求項1に記載の方法において、エネルギを組織係合部分にてアブレーション装置の一部分に伝達するステップを更に備える、方法。
【請求項12】
請求項1に記載の方法において、
アブレーション装置を挿入ツールの送り出し端部内に除去可能に配置するステップと、
挿入ツールを切開部を通して患者の体内に配置するステップと、
送り出し端部をターゲット組織に隣接する位置に導くステップと、
アブレーション装置を挿入ツールから除去するステップと、
組織係合部分をターゲット組織と接触させ得るようにアブレーション装置を調節するステップとを更に備える、方法。
【請求項13】
請求項1に記載の方法において、生物接着剤、真空圧、拡張可能なバルーン、機械的偏向、磁界、形状記憶合金及び超弾性合金の少なくとも1つにより組織係合部分をターゲット組織に固定するステップを更に備える、方法。
【請求項14】
請求項1に記載の方法において、ターゲット組織に隣接する組織の損傷を防止し得るよう絶縁体をアブレーション装置内に提供するステップを更に備える、方法。
【請求項15】
患者のターゲット組織をアブレートするアブレーション装置において、
基端、末端、管腔を有する挿入ツールと、
導体及び組織係合部分を有するアブレータであって、導体は挿入ツールの基端から伸びる供給端と、組織係合部分に連結された送り出し端部とを有し、管腔内に除去可能に挿入された前記アブレータと、
導体と接続されたエネルギ源と、
末端がターゲット組織に隣接するように患者の体内に挿入される挿入ツールと、
アブレータを管腔から外に押し出して、ターゲット組織と係合させる導体とを備え、
エネルギはエネルギ源からアブレータまで伝達されて、ターゲット組織にフートプリントを形成し、励起可能な組織の全質量を減少させるようにした、アブレーション装置。
【請求項16】
請求項15に記載のアブレーション装置において、ターゲット組織を検知し得るようアブレータと接続されたセンサを更に備える、アブレーション装置。
【請求項17】
請求項15に記載のアブレーション装置において、アブレータの組織係合部分を可視化するマッピングツールを更に備える、アブレーション装置。
【請求項18】
請求項15に記載のアブレーション装置において、挿入ツールはカテーテルを有する、アブレーション装置。
【請求項19】
請求項15に記載のアブレーション装置において、アブレータは、ターゲット組織に除去可能に取り付けることのできるパッチ(patch)を有し、該パッチは、接着剤パッチ、舌状体パッチ、円形パッチ、バルーンパッチ、吸引パッチ、化学剤解放パッチ、ロール状パッチ、炭素パッチ、ウェブ付きパッチの少なくとも1つを含む、アブレーション装置。
【請求項20】
請求項15に記載のアブレーション装置において、アブレータは、ターゲット組織に対して吸引することのできるスカート部を有し、該スカート部はエネルギをターゲット組織に伝達すべく流体を受け入れる、アブレーション装置。
【請求項21】
請求項20に記載のアブレーション装置において、流体は導電性である、アブレーション装置。
【請求項22】
請求項20に記載のアブレーション装置において、流体は苛性(caustic)である、アブレーション装置。
【請求項23】
請求項20に記載のアブレーション装置において、流体は熱伝導性である、アブレーション装置。
【請求項24】
請求項15に記載のアブレーション装置において、アブレータは、バルーンを有し、該バルーンは拡張してターゲット組織に隣接する患者のキャビティを占め、バルーンは挿入ツールの末端内に除去可能に格納され、バルーンは拡張してバルーンが挿入ツールから出るようにし、また、バルーンは組織係合部分がターゲット組織に対して当接するよう配置可能である、アブレーション装置。
【請求項25】
請求項15に記載のアブレーション装置において、アブレータは化学剤送り出しシステムを有する、アブレーション装置。
【請求項26】
請求項25に記載のアブレーション装置において、化学剤送り出しシステムは、拡散、イオン導入、機械的注射、無針注射、及び解放速度が遅いように制御された送り出し、の少なくとも1つの送り出し方法を含む、アブレーション装置。
【請求項27】
請求項15に記載のアブレーション装置において、アブレータは、スカート部と、該スカート部内の接着剤舌状体とを有し、該舌状体はスカート部内にて動いてターゲット組織と係合し、スカート部はアブレータを真空圧によりターゲット組織に固定するようにした、アブレーション装置。
【請求項28】
請求項15に記載のアブレーション装置において、組織係合部分は第一の双極組織電極と、第二の双極組織電極とを有し、第一の双極組織電極は左心房の内部の心内膜に取り付けられ、第二の双極組織電極は左心房の外側の心外膜に取り付けられ、第一及び第二の双極組織電極の各々は、エネルギ源と接続され、エネルギはエネルギ源から付与されて第一の双極組織電極から第二の双極組織電極まで伝達され、第一及び第二の双極組織電極の間に配置された左心房の組織の質量を収縮不能、作用不能、動作電位を伝搬不能であることの少なくとも1つとなるようにすることができる、アブレーション装置。
【請求項1】
患者の左心房内の組織の非線状領域を含むターゲット組織をアブレートする方法において、
組織係合部分を有するアブレータを備えるアブレーション装置を選ぶステップと、
患者の胸腔に侵入するステップと、
ターゲット組織を識別するステップと、
組織係合部分がアブレーションエネルギをターゲット組織に伝達することができるようにアブレーション装置をターゲット組織に隣接する位置に配置するステップと、
組織係合部分をアブレーションエネルギにて励起して左心房内の組織の非線状領域にフートプリントを形成し且つ左心房内の励起可能な組織の全質量を減少させるステップとを備える、ターゲット組織をアブレートする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、高周波エネルギ、熱エネルギ、低温エネルギ、化学的エネルギ、薬理学的エネルギ、超音波エネルギ、マイクロ波エネルギ、レーザエネルギ及び放射線エネルギの少なくとも1つを使用するアブレーション装置を選ぶステップを更に備える、方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法において、バルーン、金網、パッチ、ロール状電極、ファン、双極電極、ワイパー及びクリスタル送信機の少なくとも1つを含むアブレーション装置を選ぶステップを更に備える、方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法において、剣状突起下切開、肋骨下切開、胸骨切開、開胸切開及び経静脈穿刺の少なくとも1つを通じて入ることにより胸腔に侵入するステップを更に備える、方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法において、直接可視化、X線、超音波、磁気共鳴画像法、陽電子放出断層撮影、コンピュータ断層撮影、蛍光透視、内視鏡的観測、心臓内エコー及び経食道エコーの少なくとも1つを使用してターゲット組織を識別するステップを更に備える、方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法において、アブレーション装置を心外膜アプローチ法により左心房の外側に隣接する位置に配置するステップを更に備える、方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法において、アブレーション装置を心内膜アプローチ法により左心房の内側に隣接する位置に配置するステップを更に備える、方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法において、アブレーション装置を経食道アプローチ法により左心房に隣接する位置に配置するステップを更に備える、方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法において、組織係合部分を超音波エネルギにて励起するステップを更に備える、方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法において、超音波エネルギをターゲット組織に収束させるステップを更に備える、方法。
【請求項11】
請求項1に記載の方法において、エネルギを組織係合部分にてアブレーション装置の一部分に伝達するステップを更に備える、方法。
【請求項12】
請求項1に記載の方法において、
アブレーション装置を挿入ツールの送り出し端部内に除去可能に配置するステップと、
挿入ツールを切開部を通して患者の体内に配置するステップと、
送り出し端部をターゲット組織に隣接する位置に導くステップと、
アブレーション装置を挿入ツールから除去するステップと、
組織係合部分をターゲット組織と接触させ得るようにアブレーション装置を調節するステップとを更に備える、方法。
【請求項13】
請求項1に記載の方法において、生物接着剤、真空圧、拡張可能なバルーン、機械的偏向、磁界、形状記憶合金及び超弾性合金の少なくとも1つにより組織係合部分をターゲット組織に固定するステップを更に備える、方法。
【請求項14】
請求項1に記載の方法において、ターゲット組織に隣接する組織の損傷を防止し得るよう絶縁体をアブレーション装置内に提供するステップを更に備える、方法。
【請求項15】
患者のターゲット組織をアブレートするアブレーション装置において、
基端、末端、管腔を有する挿入ツールと、
導体及び組織係合部分を有するアブレータであって、導体は挿入ツールの基端から伸びる供給端と、組織係合部分に連結された送り出し端部とを有し、管腔内に除去可能に挿入された前記アブレータと、
導体と接続されたエネルギ源と、
末端がターゲット組織に隣接するように患者の体内に挿入される挿入ツールと、
アブレータを管腔から外に押し出して、ターゲット組織と係合させる導体とを備え、
エネルギはエネルギ源からアブレータまで伝達されて、ターゲット組織にフートプリントを形成し、励起可能な組織の全質量を減少させるようにした、アブレーション装置。
【請求項16】
請求項15に記載のアブレーション装置において、ターゲット組織を検知し得るようアブレータと接続されたセンサを更に備える、アブレーション装置。
【請求項17】
請求項15に記載のアブレーション装置において、アブレータの組織係合部分を可視化するマッピングツールを更に備える、アブレーション装置。
【請求項18】
請求項15に記載のアブレーション装置において、挿入ツールはカテーテルを有する、アブレーション装置。
【請求項19】
請求項15に記載のアブレーション装置において、アブレータは、ターゲット組織に除去可能に取り付けることのできるパッチ(patch)を有し、該パッチは、接着剤パッチ、舌状体パッチ、円形パッチ、バルーンパッチ、吸引パッチ、化学剤解放パッチ、ロール状パッチ、炭素パッチ、ウェブ付きパッチの少なくとも1つを含む、アブレーション装置。
【請求項20】
請求項15に記載のアブレーション装置において、アブレータは、ターゲット組織に対して吸引することのできるスカート部を有し、該スカート部はエネルギをターゲット組織に伝達すべく流体を受け入れる、アブレーション装置。
【請求項21】
請求項20に記載のアブレーション装置において、流体は導電性である、アブレーション装置。
【請求項22】
請求項20に記載のアブレーション装置において、流体は苛性(caustic)である、アブレーション装置。
【請求項23】
請求項20に記載のアブレーション装置において、流体は熱伝導性である、アブレーション装置。
【請求項24】
請求項15に記載のアブレーション装置において、アブレータは、バルーンを有し、該バルーンは拡張してターゲット組織に隣接する患者のキャビティを占め、バルーンは挿入ツールの末端内に除去可能に格納され、バルーンは拡張してバルーンが挿入ツールから出るようにし、また、バルーンは組織係合部分がターゲット組織に対して当接するよう配置可能である、アブレーション装置。
【請求項25】
請求項15に記載のアブレーション装置において、アブレータは化学剤送り出しシステムを有する、アブレーション装置。
【請求項26】
請求項25に記載のアブレーション装置において、化学剤送り出しシステムは、拡散、イオン導入、機械的注射、無針注射、及び解放速度が遅いように制御された送り出し、の少なくとも1つの送り出し方法を含む、アブレーション装置。
【請求項27】
請求項15に記載のアブレーション装置において、アブレータは、スカート部と、該スカート部内の接着剤舌状体とを有し、該舌状体はスカート部内にて動いてターゲット組織と係合し、スカート部はアブレータを真空圧によりターゲット組織に固定するようにした、アブレーション装置。
【請求項28】
請求項15に記載のアブレーション装置において、組織係合部分は第一の双極組織電極と、第二の双極組織電極とを有し、第一の双極組織電極は左心房の内部の心内膜に取り付けられ、第二の双極組織電極は左心房の外側の心外膜に取り付けられ、第一及び第二の双極組織電極の各々は、エネルギ源と接続され、エネルギはエネルギ源から付与されて第一の双極組織電極から第二の双極組織電極まで伝達され、第一及び第二の双極組織電極の間に配置された左心房の組織の質量を収縮不能、作用不能、動作電位を伝搬不能であることの少なくとも1つとなるようにすることができる、アブレーション装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図5A】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13A】
【図13B】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図5A】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13A】
【図13B】
【図14】
【図15】
【図16】
【公表番号】特表2007−537011(P2007−537011A)
【公表日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−513412(P2007−513412)
【出願日】平成17年5月13日(2005.5.13)
【国際出願番号】PCT/US2005/016806
【国際公開番号】WO2005/112812
【国際公開日】平成17年12月1日(2005.12.1)
【出願人】(591007804)メドトロニック・インコーポレーテッド (243)
【住所又は居所原語表記】710Medtronic Parkway,Minneapolis,Minnesota 55432,U.S.A
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年5月13日(2005.5.13)
【国際出願番号】PCT/US2005/016806
【国際公開番号】WO2005/112812
【国際公開日】平成17年12月1日(2005.12.1)
【出願人】(591007804)メドトロニック・インコーポレーテッド (243)
【住所又は居所原語表記】710Medtronic Parkway,Minneapolis,Minnesota 55432,U.S.A
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]