説明

赤外線吸収物品及びその製造方法

本明細書には、有機ポリマー、無機赤外吸収性添加剤、及び紫外吸収性添加剤からなる組成物が開示されている。また、本明細書には、有機ポリマー、無機赤外吸収性添加剤、及び紫外吸収性添加剤からなる組成物を溶融ブレンディングすることからなる、組成物を製造する方法も開示されている。本明細書にはまた、上記組成物からなる物品及び上記方法で製造される物品も開示されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤外線吸収物品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
乗物、住宅及びオフィスビルの内面による太陽光の吸収量が過大となると、室温が上昇し、乗員又は居住者の快適さを損ない、内装材の劣化を促し、大型空調装置の必要性を増大しかねない。特に乗物では、(特に砂漠気候での)夏の熱い日差しの下で駐車した車内で起こり得る静的均熱条件下では、密閉された車内の表面温度は100℃以上に達することがあり、自動車全体の熱量も高温に上昇しかねない。
【0003】
熱的不快感を軽減させるため乗物の空調装置の冷房負荷を高めることは、自動車工業界での現在の趨勢に反する。自動車エンジンは、軽量化と燃費向上のため小型化されつつあり、大型空調機の動力に費やす能力が低くなっている。
【0004】
業界及び政府の最近の関心事は、大気中に放出されるクロロフルオロカーボン(CFC)源として自動車空調機が演じる役割であって、冷房負荷の増大は一段と大型化した空調装置を要し、この問題が深刻になる。
【特許文献1】米国特許第4031063号明細書
【特許文献2】米国特許第4250078号明細書
【特許文献3】米国特許第6022920号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2004/0028920号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2004/0071957号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開第2004/0095433号明細書
【特許文献7】国際公開第95/02504号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
自動車、ビルなどでの畜熱とそれに伴う温度上昇を低減するため、ウィンドーとして用いられる透明材料に無機赤外吸収剤を配合することが試みられている。こうした赤外吸収剤は通例ホウ素の金属塩である。しかし、この解決策は、無機IR吸収剤が加水分解安定性に欠けるため経時的に分解するという点で成功していない。そこで、自動車並びに住宅及びオフィスビルなどでの太陽熱負荷を長期間低減させる新技術及び受動設計による解決策に対するニーズが存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書では、有機ポリマーと無機赤外吸収性添加剤と紫外吸収性添加剤を含んでなる組成物について開示する。
【0007】
また、有機ポリマーと無機赤外吸収性添加剤と紫外吸収性添加剤を含む組成物を溶融ブレンディングすることを含んでなる組成物の製造方法についても開示する。
【0008】
本明細書では、さらに、上記組成物からなる物品、及び上記方法で製造される物品についても開示する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本明細書では、近赤外(IR)域の光に対して長期間高い吸収性と高い反射性を呈するが、電磁スペクトルの可視域の光に対しては高い透過性と低い反射を示すフィルム、シート、平板などの物品について開示する。本明細書において言及するIR及びUVはすべて電磁スペクトルに関する。本発明の物品は単層でもよいし、多層でもよい。理論に束縛されるものではないが、UV吸収性添加剤と無機IR吸収性添加剤との相乗作用によって無機IR吸収性添加剤の加水分解安定性が増大するものと考えられる。この相乗作用によって、無機IR吸収性添加剤、ひいては物品が長期間吸収能を失わずにIR放射線を吸収できるようになる。本明細書で開示したすべての範囲はそれらの上限と下限を含み、結合可能である。
【0010】
上述の通り、本発明の物品は有機ポリマーと無機IR吸収性添加剤とUV吸収性添加剤とを含む組成物からなる。有機ポリマーは熱可塑性ポリマーでも熱硬化性ポリマーでもよい。好ましい有機ポリマーは芳香族熱可塑性ポリマー、芳香族熱硬化性ポリマー又は芳香族熱硬化性ポリマーと芳香族熱可塑性ポリマーの混合物である。使用し得る熱可塑性ポリマーは、オリゴマー、ホモポリマー、アイオノマー、デンドリマー、コポリマー、例えばブロックコポリマー、グラフトコポリマー、星形ブロックコポリマー、ランダムコポリマーなど、さらにはこれらのポリマーの1種以上を含む組合せがある。使用し得る熱可塑性ポリマーの好適な例は、ポリアセタール、ポリアクリル樹脂、ポリアルキド、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアリーレート、ポリアリールスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリ塩化ビニル、ポリスルホン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリベンゾオキサゾール、ポリオキサジアゾール、ポリベンゾチアジノフェノチアジン、ポリベンゾチアゾール、ポリピラジノキノキサリン、ポリピロメリトイミド、ポリキノキサリン、ポリベンズイミダゾール、ポリオキシインドール、ポリオキソイソインドリン、ポリジオキソイソインドリン、ポリトリアジン、ポリピリダジン、ポリピペラジン、ポリピリジン、ポリピペリジン、ポリトリアゾール、ポリピラゾール、ポリピロリジン、ポリカルボラン、ポリオキサビシクロノナン、ポリジベンゾフラン、ポリフタリド、ポリアセタール、ポリ無水物、ポリビニルエーテル、ポリビニルチオエーテル、ポリビニルアルコール、ポリビニルケトン、ポリハロゲン化ビニル、ポリビニルニトリル、ポリビニルエステル、ポリスルホネート、ポリスルフィド、ポリチオエステル、ポリスルホン、ポリスルホンアミド、ポリウレア、ポリホスファゼン、ポリシラザンなど又はこれらの熱可塑性ポリマーの1種以上を含む組合せである。本組成物で用いられる好ましい熱可塑性ポリマーは、ポリカーボネート、ポリカーボネートとポリシロキサンのコポリマー、コポリエステルカーボネート又はポリエステルとポリカーボネートとのブレンドのような熱可塑性ポリマーである。上述の通り、芳香族熱可塑性ポリマーが概して好ましい。
【0011】
熱可塑性ポリマーのブレンドも使用できる。熱可塑性ポリマーのブレンドの好適な例としては、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン/ナイロン、ポリカーボネート/アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン、アクリロニトリルブタジエンスチレン/ポリ塩化ビニル、ポリフェニレンエーテル/ポリスチレン、ポリフェニレンエーテル/ナイロン、ポリスルホン/アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン、ポリカーボネート/熱可塑性ウレタン、ポリカーボネート/ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート/ポリブチレンテレフタレート、熱可塑性エラストマーアロイ、ナイロン/エラストマー、ポリエステル/エラストマー、ポリエチレンテレフタレート/ポリブチレンテレフタレート、スチレン−無水マレイン酸/アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン、ポリエーテルエーテルケトン/ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン/ポリエーテルイミド ポリエチレン/ナイロン、ポリエチレン/ポリアセタールなどが挙げられる。
【0012】
熱硬化性ポリマーの好適な例としては、ポリウレタン、天然ゴム、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル、ポリアミド、ポリシロキサンなど又はこれらの熱硬化性樹脂の1種以上を含む混合物が挙げられる。芳香族熱硬化性ポリマーが概して好ましい。熱硬化性ポリマーのブレンド並びに熱可塑性ポリマーと熱硬化性ポリマーのブレンドを利用することもできる。
【0013】
熱可塑性ポリマーは、電磁スペクトルの光学的波長域の光に透明であるのが好ましい。既に述べた通り、ポリカーボネートを熱可塑性ポリマーの1種として本組成物で使用してもよい。本明細書で用いる「ポリカーボネート」、「ポリカーボネート組成物」及び「芳香族カーボネート鎖単位を含む組成物」という用語には、次の式(I)の構造単位を有する組成物が包含される。
【0014】
【化1】

式中、R基の総数の約60%以上は芳香族有機基であり、残りは脂肪族、脂環式又は芳香族基である。好ましくはRは芳香族有機基であり、さらに好ましくは次の式(II)の基である。
式中、R基の総数の約60%以上が芳香族有機基であり、その残りが脂肪族、脂環式又は芳香族基である。好ましくは、Rは芳香族有機基であり、さらに好ましくは次式(II)の基である。
【0015】
【化2】

式中、A及びAは各々単環式二価アリール基であり、YはAとAを0、1又は2原子で隔てる橋かけ基である。代表的な実施形態では、AとAの間には1原子が介在する。Y基の具体例は、−O−、−S−、−S(O)−、−S(O)−、−C(O)−、メチレン、シクロヘキシルメチレン、2−[2.2.1]−ビシクロへプチリデン、エチリデン、イソプロピリデン、ネオペンチリデン、シクロヘキシリデン、シクロペンタデシリデン、シクロドデシリデン、アダマンチリデンなどである。別の実施形態では、AとAの間には原子が介在せず、その具体例はビフェニルである。橋かけ基Yはメチレン、シクロヘキシリデン又はイソプロピリデンのような飽和炭化水素基でもよい。
【0016】
ポリカーボネートは、カーボネート前駆体とジヒドロキシ化合物とのSchotten−Bauman界面反応で製造できる。通例、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウムのような水性塩基を、ジヒドロキシ化合物を含むベンゼン、トルエン、二硫化炭素、クロロベンゼン、クロロホルム又はジクロロメタンのような水と非混和性の有機溶媒と混合する。反応促進のため、一般に相間移動剤が使用される。カーボネート前駆体としては、ハロゲン化カルボニルが用いられる。好ましいハロゲン化カルボニルは塩化カルボニル(ホスゲン)である。反応体混合物には、分子量調節剤を単独で又は混合物として添加してもよい。後述の枝分れ剤も単独で又は混合物として添加し得る。
【0017】
ポリカーボネートは、AとAの間に1原子のみが介在するジヒドロキシ化合物の界面反応で製造できる。本明細書で用いる「ジヒドロキシ化合物」という用語には、例えば次の一般式(III)のビスフェノール化合物が包含される。
【0018】
【化3】

式中、R及びRは各々独立に水素、ハロゲン原子(好ましくは臭素)又は一価炭化水素基を表し、p及びqは各々独立に0〜4の整数であり、Xは以下の式(IV)のいずれかの基を表す。
【0019】
【化4】

式中、R及びRは各々独立に水素原子又は一価線状もしくは環状炭化水素基を表し、Rは二価炭化水素基、酸素又は硫黄である。
【0020】
式(III)で表すことができる種類のビスフェノール化合物の具体例としては、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(「ビスフェノールA」ともいう。)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−n−ブタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−1−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−t−ブチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)プロパンなどのビス(ヒドロキシアリール)アルカン系列、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンなどのビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン系列、或いはこれらのビスフェノール化合物の1種以上を含む組合せが挙げられる。
【0021】
式(III)で表すことができるその他のビスフェノール化合物には、Xが−O−、−S−、−SO−又は−S(O)−であるものが挙げられる。かかるビスフェノール化合物の具体例を幾つか挙げると、4,4′−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジメチルフェニルエーテルなどのビス(ヒドロキシアリール)エーテル、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジメチルジフェニルスルフィドなどのビス(ヒドロキシジアリール)スルフィド、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジメチルジフェニルスルホキシドなどのビス(ヒドロキシジアリール)スルホキシド、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジメチルジフェニルスルホンなどのビス(ヒドロキシジアリール)スルホン、或いはこれらのビスフェノール化合物の1種以上を含む組合せである。
【0022】
ポリカーボネートの重縮合に利用し得るその他のビスフェノール化合物は、以下の式(V)で表される。
【0023】
【化5】

式中、Rはハロゲン原子、炭素原子数1〜10の炭化水素基又はハロゲン置換炭化水素基であり、nは0〜4の値である。nが2以上の場合、Rは同一でも、異なるものでもよい。式(V)で表すことができるビスフェノール化合物の例は、レゾルシノール、5−メチルレゾルシン、5−エチルレゾルシン、5−プロピルレゾルシン、5−ブチルレゾルシン、5−t−ブチルレゾルシン、5−フェニルレゾルシン、5−クミルレゾルシンなどの置換レゾルシノール化合物、カテコール、ヒドロキノン、3−メチルヒドロキノン、3−エチルヒドロキノン、3−プロピルヒドロキノン、3−ブチルヒドロキノン、3−t−ブチルヒドロキノン、3−フェニルヒドロキノン、3−クミルヒドロキノンなどの置換ヒドロキノン、或いはこれらのビスフェノール化合物の1種以上を含む組合せである。
【0024】
以下の式(VI)で表される2,2,2′,2′−テトラヒドロ−3,3,3′,3′−テトラメチル−1,1′−スピロビ[1H−インデン]−6,6′−ジオールのようなビスフェノール化合物も使用できる。
【0025】
【化6】

好適なポリカーボネートとしては、さらに、アルキルシクロヘキサン単位を含むビスフェノールから誘導されるものがある。かかるポリカーボネートは、以下の式(VII)に相当する構造単位を有する。
【0026】
【化7】

式中、R〜Rは各々独立に水素、C〜C12ヒドロカルビル又はハロゲンであり、R〜Rは各々独立に水素又はC〜C12ヒドロカルビルである。本明細書で用いる「ヒドロカルビル」とは、炭素と水素のみからなる残基をいう。かかる基は、脂肪族、芳香族、直鎖、環式、二環式、枝分れ、飽和又は不飽和のいずれでもよい。ヒドロカルビル基は、該置換基の炭素と水素に加えてヘテロ原子を含んでいてもよい。そこで、かかるヘテロ原子を含むと特記した場合、ヒドロカルビル基はカルボニル基、アミノ基、ヒドロキシル基などを含んでいてもよいし、或いはヒドロカルビル基の骨格にヘテロ原子を含んでいてもよい。アルキルシクロヘキサン含有ビスフェノール(例えば、2モルのフェノールと1モルの水素化イソホロンとの反応生成物)は、高いガラス転移温度及び高い熱変形温度を有するポリカーボネートポリマーの製造に有用である。かかるイソホロンビスフェノール含有ポリカーボネートは、以下の式(VIII)に相当する構造単位を有する。
【0027】
【化8】

式中、R〜Rは上記で定義した通りである。これらのイソホロンビスフェノール系ポリマーは、非アルキルシクロヘキサン系ビスフェノールを含むポリカーボネートコポリマー及びアルキルシクロヘキシルビスフェノール含有ポリカーボネートと非アルキルシクロヘキシルビスフェノールポリカーボネートとのブレンドを始めとして、Bayer社からAPECという商品名で市販されている。好ましいビスフェノール化合物はビスフェノールAである。
【0028】
一実施形態では、ジヒドロキシ化合物をヒドロキシアリール末端ポリ(ジオルガノシロキサン)と反応させてポリカーボネート−ポリシロキサンコポリマーとしてもよい。好ましくは、ポリカーボネート−ポリ(ジオルガノシロキサン)コポリマーは、界面反応条件下で、BPAのようなジヒドロキシ化合物とヒドロキシアリール末端ポリ(ジオルガノシロキサン)との混合物にホスゲンを導入することによって製造できる。第三アミン触媒又は相間移動触媒の使用によって反応体の重合を促進することができる。
【0029】
ヒドロキシアリール末端ポリ(ジオルガノシロキサン)は、以下の式(IX)のシロキサンヒドリドと脂肪族不飽和一価フェノールとの白金触媒付加反応を実施することによって製造できる。
【0030】
【化9】

式中、Rは例えばC(1−8)アルキル基、トリフルオロプロピルのようなハロアルキル基又はシアノアルキル基、或いはフェニル、クロロフェニル及びトリルのようなアリール基である。Rは、好ましくはメチル、メチルとトリフルオロプロピルの混成物、又はメチルとフェニルの混成物である。
【0031】
ヒドロキシアリール末端ポリ(ジオルガノシロキサン)の製造に使用し得る脂肪族不飽和一価フェノールの例を幾つか挙げると、オイゲノール、2−アルキルフェノール、4−アリル−2−メチルフェノール、4−アリル−2−フェニルフェノール、4−アリル−2−ブロモフェノール、4−アリル−2−t−ブトキシフェノール、4−フェニル−2−フェニルフェノール、2−メチル−4−プロピルフェノール、2−アリル−4,6−ジメチルフェノール、2−アリル−4−ブロモ−6−メチルフェノール、2−アリル−6−メトキシ−4−メチルフェノール、2−アリル−4,6−ジメチルフェノールなど、或いはこれらの1種以上を含む組合せである。
【0032】
典型的なカーボネート前駆体としては、例えば、塩化カルボニル(ホスゲン)及び臭化カルボニルのようなハロゲン化カルボニル、ビスハロホルメート、例えばビスフェノールAやヒドロキノンなどの二価フェノールのビスハロホルメート、エチレングリコールやネオペンチルグリコールのようなグリコール類のビスハロホルメート、並びにジフェニルカーボネート、ジ(トリル)カーボネート及びジ(ナフチル)カーボネートのようなジアリールカーボネートが挙げられる。界面反応に好ましいカーボネート前駆体は塩化カルボニルである。
【0033】
ホモポリマーではなくカーボネートコポリマーの使用が望まれる場合、2種以上の異なる二価フェノールの重合で得られるポリカーボネート、或いは二価フェノールとグリコール又はヒドロキシ末端もしくは酸末端ポリエステル又は二塩基酸又はヒドロキシ酸又は脂肪族二酸とのコポリマーを使用することもできる。一般に、有用な脂肪族二酸は炭素原子数2〜約40のものである。好ましい脂肪族二酸はドデカン二酸である。
【0034】
本組成物には、枝分れポリカーボネート及び線状ポリカーボネートと枝分れポリカーボネートのブレンドも使用できる。枝分れポリカーボネートは重合時に枝分れ剤を添加することで製造できる。枝分れ剤には、3個以上の官能基を有する多官能性有機化合物があり、該官能基にはヒドロキシル、カルボキシル、無水カルボキシル、ハロホルミル又はこれらの組合せがある。具体例としては、トリメリト酸、無水トリメリト酸、トリメリト酸トリクロライド、トリス−p−ヒドロキシフェニルエタン、イサチン−ビスフェノール、トリス−フェノールTC(1,3,5−トリス((p−ヒドロキシフェニル)イソプロピル)ベンゼン)、トリス−フェノールPA(4(4(1,1−ビス(p−ヒドロキシフェニル)−エチル)α,α−ジメチルベンジル)フェノール)、4−クロロホルミル無水フタル酸、トリメシン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸など、或いはこれらの枝分れ剤の1種以上を含む組合せが挙げられる。枝分れ剤は、所定の層のポリカーボネートの総重量を基準にして約0.05〜約4.0重量%(wt%)のレベルで添加し得る。
【0035】
一実施形態では、ポリカーボネートはジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとの溶融重縮合反応でも製造し得る。ポリカーボネートの製造に利用し得る炭酸ジエステルの例は、ジフェニルカーボネート、ビス(2,4−ジクロロフェニル)カーボネート、ビス(2,4,6−トリクロロフェニル)カーボネート、ビス(2−シアノフェニル)カーボネート、ビス(o−ニトロフェニル)カーボネート、ジトリルカーボネート、m−クレジルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ビス(ジフェニル)カーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジシクロヘキシルカーボネート、ビス(o−メトキシカルボニルフェニル)カーボネート、ビス(o−エトキシカルボニルフェニル)カーボネート、ビス(o−プロポキシカルボニルフェニル)カーボネート、ビス−o−メトキシフェニルカーボネート、ビス(o−ブトキシカルボニルフェニル)カーボネート、ビス(イソブトキシカルボニルフェニル)カーボネート、o−メトキシカルボニルフェニル−o−エトキシカルボニルフェニルカーボネート、ビス−o−(tert−ブトキシカルボニルフェニル)カーボネート、o−エチルフェニル−o−メトキシカルボニルフェニルカーボネート、p−(tert−ブチルフェニル)−o−(tert−ブトキシカルボニルフェニル)カーボネート、ビス−(エチルサリチル)カーボネート(これはビス(o−エトキシカルボニルフェニル)カーボネートなどである。)、ビス(−プロピルサリチル)カーボネート、ビス−ブチルサリチルカーボネート、ビス−ベンジルサリチルカーボネート、ビス−メチル−4−クロロサリチルカーボネートなど、或いはこれらの炭酸ジエステルの1種以上を含む組合せである。好ましい炭酸ジエステルは、ジフェニルカーボネート又はビス(メチルサリチル)カーボネート(BMSC)である。
【0036】
好ましくは、ポリカーボネートの重量平均分子量は約3000〜約1000000g/モルである。一実施形態では、ポリカーボネートは約10000〜約100000g/モルの分子量を有する。別の実施形態では、ポリカーボネートは約15000〜約50000g/モルの分子量を有する。さらに別の実施形態では、ポリカーボネートは約18000〜約40000g/モルの分子量を有する。
【0037】
ポリエステルとしては、脂肪族ポリエステル、芳香族ポリエステル、脂肪族−芳香族ポリエステル、脂環式−芳香族ポリエステル、ポリアリーレート又はこれらの組合せがある。本組成物での使用に好適な脂環式ポリエステルは、光学的透明性、向上した耐候性、耐薬品性及び低い吸水性を特徴とするものである。また、脂環式ポリエステルは本組成物に用いられる熱可塑性ポリマーとの溶融相溶性に優れていることが概して望ましい。代表的な実施形態では、組成物に用いられるポリカーボネートと良好な溶融相溶性を示す脂環式ポリエステルを使用するのが好ましい。脂環式ポリエステルは一般に、環式ジオールと二酸又はその誘導体との反応で製造される。二酸は芳香族でも脂肪族でもよい。高品質光学シート用の脂環式ポリエステルポリマーの製造に有用なジオールは直鎖、枝分れ又は脂環式ジオール、好ましくは直鎖又は枝分れアルカンジオールであり、炭素原子数2〜12のものがある。
【0038】
ジオールの好適な例としては、エチレングリコール、1,2−及び1,3−プロピレングリコールなどのプロピレングリコール、1,3−及び1,4−ブタンジオールなどのブタンジオール、ジエチレングリコール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル,2−メチル,1,3−プロパンジオール、1,3−及び1,5−ペンタンジオール、ジプロピレングリコール、2−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール(特にそのシス及びトランス異性体)、トリエチレングリコール、1,10−デカンジオール、さらにこれらのジオールの1種以上を含む組合せが挙げられる。特に好ましいのは、ジメタノールビシクロオクタン、ジメタノールデカリン、脂環式ジオール又はその化学的等価物、特に1,4−シクロヘキサンジメタノール又はその化学的等価物である。1,4−シクロヘキサンジメタノールをジオール成分として使用する場合、約1:4〜約4:1比のシス及びトランス異性体混合物を使用するのが一般に好ましい。この範囲内で、約1:3のシス/トランス異性体比を使用するのが概して望ましい。
【0039】
脂環式ポリエステルポリマーの製造に有用な二酸は脂肪族二酸であり、2つのカルボキシル基が各々飽和環の飽和炭素に結合したカルボン酸を包含する。脂環式酸の好適な例としては、デカヒドロナフタレンジカルボン酸、ノルボルネンジカルボン酸、ビシクロオクタンジカルボン酸が挙げられる。好ましい脂環式二酸は1,4−シクロヘキサンジカルボン酸及びtrans−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸である。ポリエステルが1種以上の脂環式環含有モノマーを有することを条件として、線状脂肪族二酸も有用である。線状脂肪族二酸の具体例は、コハク酸、アジピン酸、ジメチルコハク酸及びアゼライン酸である。二酸とジオールの混合物も脂環式ポリエステルの製造に使用し得る。
【0040】
シクロへキサンジカルボン酸及びその化学的等価物は、例えば、触媒(ロジウムを炭素やアルミナのような適当な担体に担持したものなど)を用いて、適当な溶媒(水や酢酸など)中で、イソフタル酸やテレフタル酸やナフタレン酸のような環状芳香族二酸及びその誘導体を水素化することによって調製できる。また、反応条件下で酸が少なくとも部分的に可溶性であるような不活性液体媒質と、炭素やシリカに担持したパラジウム又はルテニウム触媒とを用いて製造することもできる。
【0041】
水素化では、一般に、カルボン酸基がシス位又はトランス位にある2種以上の異性体が得られる。シス異性体とトランス異性体は結晶化又は蒸留で分離することができ、結晶化に際してはn−へプタンのような溶剤を使用してもよいし、使用しなくてもよい。シス異性体の方が混和し易いが、トランス異性体の方が高い溶融温度及び結晶化温度を有しているので特に好ましい。シス/トランス異性体混合物も使用でき、かかる混合物を使用する場合、シス異性体とトランス異性体の合計重量を基準にして、トランス異性体が約75重量%以上をなし、残部がシス異性体となるのが好ましい。異性体混合物又は2種以上の二酸を使用すると、コポリエステル又は2種類のポリエステルの混合物を脂環式ポリエステルポリマーとして使用することができる。
【0042】
これらの二酸のエステルを始めとする化学的等価物も脂環式ポリエステルの製造に使用できる。二酸の化学的等価物の好適な例は、ジアルキルエステルのようなアルキルエステル、ジアリールエステル、無水物、酸塩化物、酸臭化物など、さらにこれらの化学的等価物を1種以上含む組合せである。好ましい化学的等価物は、脂環式二酸のジアルキルエステルであり、最も好ましい化学的等価物は酸のジメチルエステル、特にジメチル−trans−1,4−シクロヘキサンジカルボキシレートである。
【0043】
ジメチル−1,4−シクロヘキサンジカルボキシレートは、ジメチルテレフタレートの環水素化で得ることができ、カルボン酸基がシス位及びトランス位にある2種類の異性体が得られる。異性体は分離でき、トランス異性体が特に好ましい。上述の通り、異性体混合物も使用し得る。
【0044】
ポリエステルポリマーは一般にジオール又はジオールの化学的等価成分と二酸又は二酸の化学的等価成分との縮合又はエステル交換重合で得られ、次の式(X)の繰返し単位を有する。
【0045】
【化10】

式中、Rは、炭素原子数2〜12の直鎖、枝分れ又は脂環式アルカンジオール又はその化学的等価物の残基である炭素原子数2〜12のアルキル又はシクロアルキル基であり、Rは二酸から誘導された脱カルボキシル残基であるアルキル又は脂環式基であるが、RとRの少なくとも一方がシクロアルキル基であることを条件とする。
【0046】
好ましい脂環式ポリエステルは、以下の式(XI)の繰返し単位を有するポリ(1,4−シクロヘキサン−ジメタノール−1,4−シクロヘキサンジカルボキシレート)(PCCD)である。
【0047】
【化11】

これは、式(X)のRがシクロヘキサンジメタノールから誘導されたシクロヘキサン環であり、Rがシクロヘキサンジカルボキシレート又はその化学的等価物から誘導されたシクロヘキサン環であり、そのシス異性体、トランス異性体又はシス異性体とトランス異性体の混合物から選択されたものである。脂環式ポリエステルポリマーは、一般に、適量(通例、最終生成物の総重量を基準にして約50〜400ppmのチタン)のテトラ(2−エチルへキシル)チタネートのような適当な触媒の存在下で製造できる。
【0048】
PCCDは一般にポリカーボネートと完全に混和性である。ポリカーボネート−PCCD混合物は、265℃、荷重2.16kg及び滞留時間4分で測定して、
約5cm/10分(cc/10min又はml/10min)以上約150cm/10分以下のメルトボリュームレートを有するのが一般に望ましい。この範囲内で、265℃、荷重2.16kg及び滞留時間4分で測定して、約7cc/10min以上、好ましくは約9cc/10min以上、さらに好ましくは約10cc/10min以上のメルトボリュームレートを有するのが一般に望ましい。同じく上記範囲内で、約125cc/10min以下、好ましくは約110cc/10min以下、さらに好ましくは約100cc/10min以上のメルトボリュームレートが望ましい。
【0049】
ポリカーボネートと混合できる他の好ましいポリエステルは、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリ(トリメチレンテレフタレート)(PTT)、ポリ(シクロヘキサンジメタノール−コ−エチレンテレフタレート)(PETG)、ポリ(エチレンナフタレート)(PEN)及びポリ(ブチレンナフタレート)(PBN)である。
【0050】
他のポリマーと混合できる別の好ましいポリエステルはポリアリーレートである。ポリアリーレートとは、一般に芳香族ジカルボン酸とビスフェノールとのポリエステルをいう。アリールエステル結合に加えてカーボネート結合を含むポリアリーレートコポリマーは、ポリエステルカーボネートと呼ばれ、混合物に好適に使用し得る。ポリアリーレートは、芳香族ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体とビスフェノール又はその誘導体との溶液重合又は溶融重合で製造できる。
【0051】
一般に、ポリアリーレートは1種以上のジフェノール残基を1種以上の芳香族ジカルボン酸残基と共に含んでいるのが好ましい。以下の式(XII)に示す好ましいジフェノール残基は、1,3−ジヒドロキシベンゼン成分(本明細書を通してレゾルシノール又はレゾルシノール成分という)から誘導される。レゾルシノール又はレゾルシノール成分には、非置換1,3−ジヒドロキシベンゼン及び置換1,3−ジヒドロキシベンゼンが包含される。
【0052】
【化12】

式(XII)において、(R)はC1−12アルキル又はハロゲンであり、nは0〜3である。好適なジカルボン酸残基としては、単環式成分、好ましくはイソフタル酸、テレフタル酸又はイソフタル酸とテレフタル酸の混合物、或いはジフェニルジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸などの多環式成分、或いはこれらの多環式成分の1種以上を含む組合せから誘導される芳香族ジカルボン酸残基が挙げられる。好ましい多環式成分はナフタレン−2,6−ジカルボン酸である。
【0053】
好ましくは、芳香族ジカルボン酸残基は、以下の式(XIII)で一般に表されるイソフタル酸及び/又はテレフタル酸の混合物から誘導される。
【0054】
【化13】

したがって、一実施形態では、ポリアリーレートは以下の式(XIV)に示すレゾルシノールアリーレートポリエステルからなり、R及びnは上記の式(XII)で定義した通りである。
【0055】
【化14】

式中、(R)はC1−12アルキル又はハロゲンであり、nは0〜3であり、mは約8以上である。Rは水素であるのが好ましい。好ましくは、nは0であり、mは約10〜約300である。イソフタレート/テレフタレートモル比は約0.25:1〜約4.0:1である。
【0056】
別の実施形態では、ポリアリーレートは以下の式(XV)に示す多環式芳香族基を有する熱安定性レゾルシノールアリーレートポリエステルからなる。
【0057】
【化15】

式中、(R)はC1−12アルキル又はハロゲンの1種以上であり、nは0〜約3であり、mは約8以上である。
【0058】
別の実施形態では、ポリアリーレートを共重合してカーボネートブロックとアリーレートブロックを含むブロックコポリエステルカーボネートを形成する。これには、以下の式(XVI)の構造単位を含むポリマーが挙げられる。
【0059】
【化16】

式中、各Rは独立にハロゲン又はC1−12アルキルであり、mは1以上であり、pは3以下であり、各Rは独立に二価有機基であり、nは約4以上である。好ましくは、nは約10以上であり、さらに好ましくは約20以上であり、最も好ましくは約30〜約150である。好ましくは、mは約3以上であり、さらに好ましくは約10以上であり、最も好ましくは約20〜約200である。代表的な実施形態では、mは約20〜50の量で存在する。
【0060】
熱可塑性ポリマーの重量平均分子量は約500〜約1000000g/モルであるのが一般に望ましい。一実施形態では、熱可塑性ポリマーは約10000〜約200000g/モルの重量平均分子量を有する。別の実施形態では、熱可塑性ポリマーは約30000〜約150000g/モルの重量平均分子量を有する。さらに別の実施形態では、熱可塑性ポリマーは約50000〜約120000g/モルの重量平均分子量を有する。本組成物に用いられる熱可塑性ポリマーの代表的な分子量は15000〜120000g/モルである。
【0061】
熱可塑性ポリマー及び/又は熱硬化性ポリマーは、一般に、組成物の重量を基準にして約70〜約99.9重量%(wt%)の量で使用される。一実施形態では、熱可塑性ポリマー及び/又は熱硬化性ポリマーは組成物の総重量を基準にして約75〜約99.7wt%の量で存在する。別の実施形態では、熱可塑性ポリマー及び/又は熱硬化性ポリマーは組成物の総重量を基準にして約80〜約99.5wt%の量で存在する。さらに別の実施形態では、熱可塑性ポリマー及び/又は熱硬化性ポリマーは組成物の総重量を基準にして約85〜約97wt%の量で存在する。
【0062】
無機IR吸収性添加剤は、一般に金属ホウ化物、特にホウ化ランタン(LaB)、ホウ化プラセオジム(PrB)、ホウ化ネオジム(NdB)、ホウ化セリウム(CeB)、ホウ化ガドリニウム(GdB)、ホウ化テルビウム(TbB)、ホウ化ジスプロシウム(DyB)、ホウ化ホルミウム(HoB)、ホウ化イットリウム(YB)、ホウ化サマリウム(SmB)、ホウ化ユーロピウム(EuB)、ホウ化エルビウム(ErB)、ホウ化ツリウム(TmB)、ホウ化イッテルビウム(YbB)、ホウ化ルテチウム(LuB)、ホウ化ストロンチウム(SrB)、ホウ化カルシウム(CaB)、ホウ化チタン(TiB)、ホウ化ジルコニウム(ZrB)、ホウ化ハフニウム(HfB)、ホウ化バナジウム(VB)、ホウ化タンタル(TaB)、ホウ化クロム(CrB及びCrB)、ホウ化モリブデン(MoB、Mo及びMoB)、ホウ化タングステン(W)など、又はこれらのホウ化物の1種以上を含む組合せのようなホウ化物の微粒子である。
【0063】
熱可塑性及び/又は熱硬化性ポリマーに分散させる前の無機IR吸収性添加剤はナノ粒度の粒子の形態であるのが望ましい。粒子の形状に特に制限はなく、例えば球状でも、不規則形状でも、板状でも、ウィスカーでもよい。ナノ粒度の粒子は、一般に約200nm以下の平均最大寸法を有する。一実施形態では、粒子の平均最大寸法は約150nm以下である。別の実施形態では、粒子の平均最大寸法は約100nm以下である。さらに別の実施形態では、粒子の平均最大寸法は約75nm以下である。さらに別の実施形態では、粒子の平均最大寸法は約50nm以下である。上述の通り、ナノ粒度の粒子は一般に約200nm以下の平均最大寸法を有する。一実施形態では、粒子の90%超が約200nm以下の平均最大寸法を有する。別の実施形態では、粒子の95%超が約200nm以下の平均最大寸法を有する。さらに別の実施形態では、粒子の99%超が約200nm以下の平均最大寸法を有する。二峰性又は多峰性の粒度分布のものを使用してもよい。
【0064】
無機IR吸収性添加剤は一般に約0.001g/m〜約2.0g/mの量で使用される。一実施形態では、無機IR吸収性添加剤は約0.03〜約1.0g/mの量で使用し得る。別の実施形態では、無機IR吸収性添加剤は約0.05〜約0.75g/mの量で使用し得る。さらに別の実施形態では、無機IR吸収性添加剤は約0.09〜約0.36g/mの量で使用し得る。
【0065】
無機IR吸収性添加剤は一般に、組成物の総重量を基準にして約0.02ppm〜約3000ppmの量で使用する。一実施形態では、無機IR吸収性添加剤は組成物の総重量を基準にして約1ppm〜約1500ppmの量で使用し得る。別の実施形態では、無機IR吸収性添加剤は組成物の総重量を基準にして約1.5ppm〜約1250ppmの量で使用し得る。さらに別の実施形態では、無機IR吸収性添加剤は組成物の総重量を基準にして約2.5ppm〜約600ppmの量で使用し得る。
【0066】
本組成物は好適なUV吸収性添加剤を含む。UV吸収性添加剤は、IR吸収性添加剤の加水分解安定性を増大させてその保存を促進する。好適なUV吸収性添加剤は、ベンゾフェノン類、例えば2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、4−ドデシルオキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクタデシルオキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4,4′−ジメトキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2′,4,4′−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−2′−カルボキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4,4′−ジメトキシ−5−スルホベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(2−ヒドロキシ−3−メチルアリールオキシ)プロポキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−クロロベンゾフェノンなど、ベンゾトリアゾール類、例えば2,2′−(ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2′−(ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、及び2,2′−(ヒドロキシ−X−tert−ブチル−5′−メチル−フェニル)ベンゾトリアゾールなど、サリチレート、例えばフェニルサリチレート、カルボキシフェニルサリチレート、p−オクチルフェニルサリチレート、ストロンチウムサリチレート、p−tert−ブチルフェニルサリチレート、メチルサリチレート、ドデシルサリチレートなど、並びにその他の紫外吸収剤、例えばモノ安息香酸レゾルシノール、2−エチルヘキシル−2−シアノ−3−フェニルシンナメート、2−エチル−ヘキシル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、エチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、2−2′−チオビス(4−t−オクチルフェノラート)−l−n−ブチルアミンなど、又はこれらのUV吸収性添加剤の1種以上を含む組合せである。好ましい市販のUV吸収剤は、Ciba Specialty Chemicals社から市販のTINUVIN 234、TINUVIN 329、TINUVIN 350及びTINUVIN 360、Cyanamid社から市販のUV−5411(Cyasorb UV5411とも呼ばれる。)、並びにBASF社から市販のUVINOL 3030である。押出で成形される物品の場合、揮発性の低さからUVINOL 3030が特に好ましい。
【0067】
UV吸収剤は一般に組成物の重量を基準にして約0.05wt%〜約5wt%の量で使用される。一実施形態では、UV吸収剤は組成物の総重量を基準にして0.1〜約0.5wt%の量で使用し得る。別の実施形態では、UV吸収剤は組成物の総重量を基準にして0.2〜約0.4wt%の量で使用し得る。
【0068】
一実施形態では、本組成物はIR線と無機IR吸収性添加剤との相互作用による温度上昇を補償するため熱安定剤を適宜含んでいてもよい。また、熱安定剤の添加は溶融ブレンディングのような加工作業の際に材料を保護する。一般に、無機IR吸収性添加剤を含む熱可塑性ポリマーの層は、露光時に最大約20℃の温度上昇に遭遇することがある。組成物に熱安定剤を添加すると、製品の長期老化特性が改善され、そのライフサイクルが延びる。
【0069】
別の実施形態では、加工処理時の有機ポリマーの劣化を防止するとともに物品の熱安定性を向上させるため、組成物に熱安定剤を適宜添加してもよい。好適な熱安定剤としては、ホスファイト、ホスホナイト、ホスフィン、ヒンダードアミン、ヒドロキシルアミン、フェノール類、アクリロイル修飾フェノール、ヒドロペルオキシド分解剤、ベンゾフラノン誘導体など、或いはこれらの熱安定剤の1種以上を含む組合せが挙げられる。市販の好適な熱安定剤は、IRGAPHOS 168、DOVERPHOS S−9228、ULTRANOX 641などである。所望により、組成物の熱安定性を向上させるため、IRGANOX 1076、Irganox 1010(いずれもCiba Specialty Chemicals社製)のようなヒンダードフェノール系酸化防止剤を適宜添加してもよい。好ましい熱安定剤はホスファイトである。
【0070】
熱安定剤は組成物の総重量を基準にして約0.001〜約3wt%の量で添加するのが一般に望ましい。一実施形態では、熱安定剤は組成物の総重量を基準にして約0.002〜約0.5wt%の量で添加される。別の実施形態では、熱安定剤は組成物の総重量を基準にして約0.005〜約0.2wt%の量で添加される。さらに別の実施形態では、熱安定剤は組成物の総重量を基準にして約0.01〜約0.1wt%の量で添加される。補助安定剤を添加する場合、組成物の総重量を基準にして約0.001〜約2wt%の量で添加するのが一般に望ましい。
【0071】
熱安定剤に加えて、離型剤、顔料、染料、耐衝撃性改良剤、滑剤、酸化防止剤、抗菌剤、難燃剤、視覚効果添加剤、繊維(例えば、炭素繊維、ガラス繊維、カーボンナノチューブなど)、帯電防止剤、可塑剤、充填材(例えば、フュームドシリカ、エーロゲル、カーボンブラックなど)のような他の添加剤を組成物に添加してもよい。
【0072】
本組成物はフィルム、シート、多層シート、平板などの物品に加工できる。一般に、組成物に剪断力を加えて無機IR吸収性添加剤及びUV吸収性添加剤を分散させることができる装置で組成物をコンパウンディングし、溶融又は溶液ブレンディングする。組成物を溶融ブレンディングするのが望ましい。かかるブレンド用装置の好適な例は押出機(例えば、単軸及び二軸押出機)、Bussニーダー、ヘリコーン、Waringブレンダー、Henschelミキサー、Banburyミキサー、射出成形機、ブロー成形機、真空成形機などの成形機である。組成物を押出機、Bussニーダー、Banburyミキサー、ヘリコーン、Waringブレンダー、Henschelミキサーなどで溶融ブレンディングする際、溶融ブレンドを適宜ロールミルで追加の剪断力に付すのが望ましいこともある。好ましいブレンド法は射出成形機によるものである。
【0073】
一実施形態では、組成物から製造される物品は多層シートからなる。多層シートは、一般に、シート押出後、ロールミル又はロールスタックでシートを貼り合わせることによって製造できる。多層シートの個々の層の押出は、単軸押出機又は二軸押出機で実施できる。層を単軸押出機で押出し、これらの層をロールミルで貼り合わせるのが望ましい。単軸押出機又は二軸押出機で層の共押出を行い、適宜これらの層をロールミルで貼り合わせるのがさらに望ましい。ロールミルは、所望に応じて、二本ロールミルでも、三本ロールミルでもよい。多層シートの製造には、単軸押出機による層の共押出が概して望ましい。
【0074】
一実施形態では、物品の押出に際して、熱可塑性及び/又は熱硬化性ポリマーと共に添加剤(例えば、無機IR吸収性添加剤及びUV吸収性添加剤)を押出機の供給スロートに添加してもよい。別の実施形態では、物品の押出に際して、添加剤をマスターバッチとして押出機に添加してもよい。熱可塑性ポリマーは押出機のスロートに供給されるが、マスターバッチは押出機のスロート又はスロートの下流のいずれで供給してもよい。代表的な実施形態では、物品の製造に際して、熱可塑性ポリマーを単軸押出機のスロートに供給し、無機IR吸収性添加剤及びUV吸収性添加剤はマスターバッチとして供給スロートの下流に添加する。
【0075】
多層物品では、その多層をなす個々のシートは所望に応じて類似又は異なる組成のものでよい。フィルム又はシートのような多層物品の製造に関する一実施形態では、物品の所望組成物を、共押出に先立って、別々に予備コンパウンディングしてもよい。この場合、予備コンパウンディングした組成物をまず二軸押出機、単軸押出機、Bussニーダー、ロールミルなどで溶融ブレンディングしてから、共押出に適した形状(例えば、ペレット、シートなど)にすればよい。次いで、予備コンパウンディングした材料を各押出機に供給して共押出すればよい。
【0076】
上述の通り、多層物品の層は共押出するのが望ましい。一実施形態では、多層シートの共押出法として、各押出機からのメルト流(押出物)をフィードブロックダイに供給し、そこでメルト流を合流してからダイに入れる。別の実施形態では、各押出機からのメルト流をマルチマニホルド内部合流ダイに供給する。異なるメルト流は別々にダイに入り、最終ダイオリフィスのすぐ内側で合流する。さらに別の実施形態では、各押出機からのメルト流をマルチマニホルド外部合流ダイに供給する。外部合流ダイは、異なるメルト流用に完全に独立したマニホルド及び別個のオリフィスを有しており、メルト流はダイを別々に通過し、ダイ出口を過ぎた直後に合流する。層は溶融状態にあるうちにダイのすぐ下流側で合体する。多層シートの製造に用いられる代表的なダイはフィードブロックダイである。代表的な実施形態では、多層シートの層の共押出に用いられる押出機は各々単軸押出機である。共押出シートは、所望により、ロールミルで適宜カレンダー仕上げしてもよい。多層シートは概して約0.5〜約35mmの厚さを有する。
【0077】
さらに別の実施形態では、本組成物を押出の前又は後に成形に付してIR吸収物品を製造してもよい。成形は圧縮成形、熱成形、射出成形、ガスアシスト射出成形、真空成形、ブロー成形などでよい。
【0078】
本組成物から得られる物品の好ましい形態はフィルム及びシートである。フィルムは厚さ約1000μm以下のものであり、シート又は平板は一般に1000μmを超える厚さを有する。
【0079】
本組成物から製造される物品は、その表面に入射する全IR線の約90%以上の量を吸収するのが望ましい。一実施形態では、物品はその表面に入射する全IR線の約60%以上の量を吸収し得る。別の実施形態では、物品はその表面に入射する全IR線の約50%以上の量を吸収し得る。さらに別の実施形態では、物品はその表面に入射する全IR線の約40%以上の量を吸収し得る。さらに別の実施形態では、物品はその表面に入射する全IR線の約20%以上の量を吸収し得る。さらに別の実施形態では、物品はその表面に入射する全IR線の約5%以上の量を吸収し得る。
【0080】
物品は電磁スペクトルのIR域の電磁放射線をできるだけ多く吸収するのが一般に望ましいが、物品は電磁スペクトルの可視域の光に透明であるのが望ましい。電磁スペクトルの可視域は一般に約400〜約700nmの波長を有する。物品は、可視域の光に対して約20%以上の透過率を有するのが望ましい。一実施形態では、物品は可視域の光に対して約30%以上の透過率を有するのが望ましい。別の実施形態では、物品は可視域の光に対して約40%以上の透過率を有するのが望ましい。さらに別の実施形態では、物品は可視域の光に対して約50%以上の透過率を有するのが望ましい。
【0081】
物品が約5%以下のヘイズを有することも望ましい。一実施形態では、ヘイズは約2%以下である。別の実施形態では、ヘイズは約1.8%以下である。さらに別の実施形態では、ヘイズは約1.6%以下である。
【0082】
一般に、本組成物から得られた物品は、約2年以上IR吸収能を失わないのが望ましい。一実施形態では、物品は、約2年以上IR吸収能を実質的に低下させずにIR放射線を吸収することができる。別の実施形態では、物品は、約10年以上IR吸収能を実質的に低下させずにIR放射線を吸収することができる。一実施形態では、IR吸収能の損失は(有効IR吸収剤含量の損失として測定して)周囲気候条件に曝露したとき2年間で約7%以下である。別の実施形態では、IR吸収能の損失は周囲気候条件に曝露したとき2年間で約5%以下である。さらに別の実施形態では、IR吸収能の損失は周囲気候条件に曝露したとき2年間で約4%以下である。さらに別の実施形態では、IR吸収能の損失は周囲気候条件に曝露したとき10年期で約10%以下である。IR吸収の損失は、所望期間の経過後、活性IR吸収添加剤の初期量と活性IR吸収添加剤の最終量との差をIR吸収添加剤の初期量で除した値として求められる。
【0083】
こうして製造した物品は、自動車、住宅、オフィスビル、その他IR線への露光によって発生する熱が望ましくない分野で好適に使用し得る。一実施形態では、物品は、図に示すように壁間に空気溝を有するマルチウォールシートとして共押出した後で屋根材又は窓材として使用できる。図は、各々のシートがブラケットで隔離され、ブラケット間にエアポケットを有するマルチウォールシートの概略図である。図にはシート厚さも示したが、これは個々の多層シート及びブラケットを含めたものである。ブラケットも、上述の熱可塑性ポリマーで製造することができる。一実施形態では、ブラケットはポリカーボネート、ポリエステル又はポリエステルカーボネート−ポリエステルから製造できる。
【0084】
一実施形態では、物品は様々な表面特性を向上させるためコーティングで適宜被覆してもよい。コーティングは、耐擦過性、防曇性などの改善のため、帯電防止特性の改善のため、表面のクリーニングを容易にするため、反射防止特性の付与のためなどの目的で、施工できる。
【実施例】
【0085】
以下の実施例で、各種の材料及び装置を用いて多層シートの様々な実施形態の幾つかを製造するための組成物及び方法を例示するが、これらの実施例は例示にすぎず、限定的なものではない。
【0086】
実施例1
本例は、熱可塑性ポリマーからなる層に無機IR吸収性添加剤及びUV吸収性添加剤を配合することの効果を例証するために実施した。組成物はポリカーボネートポリマー(GE Plastics社製PC105)、無機IR吸収性添加剤(住友商事から市販のLaB)及び以下の表1に示す様々なUV吸収性添加剤を含む。無機IR吸収性添加剤はマスターバッチの形態で押出機に添加した。マスターバッチはポリカーボネートポリマー中0.25wt%のLaBを含んでいた。表1(比較例)及び表2(実施例)に示す各種組成物は、Werner & Pfleiderer社製25mm噛合型二軸押出機を用いて、バレル温度40−200−250−270−300−300−300−300℃、300rpmで各組成物を溶融ブレンディングすることによって製造した。押出後、それぞれ280−290−300−295℃に設定した4つの温度ゾーンを有するEngel社製75トン射出成形機で2.5mm厚の着色平板を成形した。金型温度は90℃に設定した。
【0087】
耐候性試験又は熱老化(HA)試験前後の2.5mm厚の試験片中の活性LaB量を、Thermo Nicolet社から市販のAntaris MDS NIR装置での透過型フーリエ変換近赤外(FTNIR)分光法で測定した。ポリカーボネートポリマー中0.0070%以下の様々なLaB濃度で1000〜1400nmの全光吸収を測定することによって装置を較正した。この較正モデルはPLS(Partial Least Squares)法に基づくもので、FT−NIRの測定用プログラムに用いられている。このプログラムはスペクトル測定及び以降の計算に用いられる。さらに、各測定時にこのプログラムはスペクトル域のチェックを行う。スペクトルが較正時に得られたスペクトルから5%超ずれていると、プログラムは最終活性LaB量へのアーチファクトとなるのを防ぐための警告を発する。スペクトルは1669nm(Ar−CH1次倍音)での内部参照補正を実行して処理し、試料の厚さの変化に起因する光路差を補正する。
【0088】
キセノン耐候性試験は、キセノン1200 LMキャビネット内でISO規格4892−2Aに準拠してポリカーボネート平板で実施した。使用した条件は以下の通り:使用UV線はSuprax型フィルターを備えたキセノンアーク光源から得た(300〜400nm:60W/m)。使用した潅水サイクルは、18分間の脱塩水での水洗の後、102分の乾燥時間であった。温度設定点は65℃(±3℃)として選択した。熱老化は、平板をHereaus加熱オーブン内乾燥条件で120℃の温度に付すことによって実施した。既に述べた通り、表1に比較試料の組成及び結果を示し、表2には本発明の実施例の組成及び結果を示す。
【0089】
【表1】

表1は、UV吸収性添加剤をポリカーボネート混合物に添加しない場合、1000時間のキセノン耐候性試験後の活性LaB量の典型的損失が約6〜約7wt%であることを示している。平板の目視検査でLaBの典型的な緑がかった色が幾分薄くなったが、この結果は湿潤条件でのLaBの消失と一致する。
【0090】
【表2】

表2から、組成物にUV吸収性添加剤を添加すると、LaBの保存によってIR遮蔽剤保持率が改善されることが分かる。理論に束縛されるものではないが、UV吸収性添加剤と無機IR吸収性添加剤との間に予想外の相乗作用があって、無機IR吸収性添加剤の加水分解安定性が向上し、無機IR吸収性添加剤の保存が促進されるものと推測される。この無機IR吸収性添加剤の保存によって、組成物及び該組成物から製造される物品のIR吸収特性の保持が促進される。
【0091】
一実施形態では、組成物又は該組成物から製造された物品の1000時間のキセノン耐候性試験曝露後の赤外吸収保持率は、約96%以上である。別の実施形態では、組成物又は該組成物から製造された物品の1000時間のキセノン耐候性試験曝露後の赤外吸収保持率は約97%以上である。さらに別の実施形態では、組成物又は該組成物から製造された物品の1000時間のキセノン耐候性試験曝露後の赤外吸収保持率は約98%以上である。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】シートがブラケットで離隔されブラケット間にエアポケットを有するマルチウォールシートの概略図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機ポリマー、
無機赤外吸収性添加剤、及び
UV吸収性添加剤
を含んでなる組成物。
【請求項2】
前記有機ポリマーが、熱可塑性ポリマー、熱硬化性ポリマー又は熱可塑性ポリマーと熱硬化性ポリマーとのブレンドである、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
前記有機ポリマーが、芳香族熱可塑性ポリマー、芳香族熱硬化性ポリマー又は芳香族熱可塑性ポリマーと芳香族熱硬化性ポリマーとのブレンドである、請求項1記載の組成物。
【請求項4】
前記熱可塑性ポリマーが、ポリアセタール、ポリアクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアリーレート、ポリアリールスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリ塩化ビニル、ポリスルホン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリベンゾオキサゾール、ポリオキサジアゾール、ポリベンゾチアジノフェノチアジン、ポリベンゾチアゾール、ポリピラジノキノキサリン、ポリピロメリトイミド、ポリキノキサリン、ポリベンズイミダゾール、ポリオキシインドール、ポリオキソイソインドリン、ポリジオキソイソインドリン、ポリトリアジン、ポリピリダジン、ポリピペラジン、ポリピリジン、ポリピペリジン、ポリトリアゾール、ポリピラゾール、ポリピロリジン、ポリカルボラン、ポリオキサビシクロノナン、ポリジベンゾフラン、ポリフタリド、ポリアセタール、ポリ無水物、ポリビニルエーテル、ポリビニルチオエーテル、ポリビニルアルコール、ポリビニルケトン、ポリハロゲン化ビニル、ポリビニルニトリル、ポリビニルエステル、ポリスルホネート、ポリスルフィド、ポリチオエステル、ポリスルホン、ポリスルホンアミド、ポリウレア、ポリホスファゼン、ポリシラザン又はこれらの熱可塑性ポリマーの1種以上を含む組合せである、請求項2記載の組成物。
【請求項5】
前記熱可塑性ポリマーがビスフェノールAポリカーボネート、コポリエステルカーボネート又はポリエステルとポリカーボネートとのブレンドである、請求項2記載の組成物。
【請求項6】
前記ポリエステルが脂環式ポリエステル、ポリアリーレート又は脂環式ポリエステルとポリアリーレートとの組合せである、請求項5記載の組成物。
【請求項7】
前記脂環式ポリエステルが次の構造(X)を有する、請求項6記載の組成物。
【化1】

【請求項8】
前記ポリアリーレートが、以下の構造(XII)又は構造(XIII)のレゾルシノールアリーレートポリエステルである、請求項6記載の組成物。
【化2】

【化3】

式中、RはC1−12アルキル又はハロゲンであり、nは0〜3であり、mは約8以上である。
【請求項9】
前記ポリアリーレートがさらに共重合して以下の式(XVI)の構造単位を含むブロックコポリエステルカーボネートを形成している、請求項6記載の組成物。
【化4】

式中、各Rは独立にハロゲン又はC1−12アルキルであり、mは1以上であり、pは約0〜約3であり、各Rは独立に二価有機基であり、nは約4以上である。
【請求項10】
前記熱硬化性ポリマーがポリウレタン、天然ゴム、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル、ポリアミド、シリコーン又はこれらの熱硬化性樹脂の1種以上を含む組合せである、請求項2記載の組成物。
【請求項11】
前記無機赤外吸収性添加剤がホウ化ランタン(LaB)、ホウ化プラセオジム(PrB)、ホウ化ネオジム(NdB)、ホウ化セリウム(CeB)、ホウ化ガドリニウム(GdB)、ホウ化テルビウム(TbB)、ホウ化ジスプロシウム(DyB)、ホウ化ホルミウム(HoB)、ホウ化イットリウム(YB)、ホウ化サマリウム(SmB)、ホウ化ユーロピウム(EuB)、ホウ化エルビウム(ErB)、ホウ化ツリウム(TmB)、ホウ化イッテルビウム(YbB)、ホウ化ルテチウム(LuB)、ホウ化ストロンチウム(SrB)、ホウ化カルシウム(CaB)、ホウ化チタン(TiB)、ホウ化ジルコニウム(ZrB)、ホウ化ハフニウム(HfB)、ホウ化バナジウム(VB)、ホウ化タンタル(TaB)、ホウ化クロム(CrB及びCrB)、ホウ化モリブデン(MoB、Mo及びMoB)、ホウ化タングステン(W)又はこれらのホウ化物の1種以上を含む組合せである、請求項1記載の組成物。
【請求項12】
前記無機赤外吸収性添加剤が、平均粒径約200nm以下のナノ粒度の粒子からなる、請求項1記載の組成物。
【請求項13】
前記無機赤外吸収性添加剤が、当該組成物から製造された物品の表面積を基準に測定して約0.001〜約2.0g/mの量で存在する、請求項1記載の組成物。
【請求項14】
前記無機赤外吸収性添加剤が、当該組成物の総重量を基準にして約0.02〜約3000ppmの量で存在する、請求項1記載の組成物。
【請求項15】
前記紫外吸収剤がベンゾフェノン類、ベンゾトリアゾール類、サリチレート、モノ安息香酸レゾルシノール、2−エチルヘキシル−2−シアノ、3−フェニルシンナメート、2−エチル−ヘキシル−2−シアノ−3,3′−ジフェニルアクリレート、エチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、2,2′−チオビス(4−t−オクチルフェノラート)−l−n−ブチルアミン又はこれらのUV吸収剤の1種以上を含む組合せであり、UV吸収剤が組成物の総重量を基準にして0.05〜約5wt%の量で存在する、請求項1記載の組成物。
【請求項16】
約20%以上の赤外吸収を示す、請求項1記載の組成物。
【請求項17】
電磁スペクトルの可視域で約40%以上の透過率を示す、請求項1記載の組成物。
【請求項18】
約20%以上の赤外吸収、約20%以上の紫外線吸収、及び電磁スペクトルの可視域で約40%以上の透過率を示す、請求項1記載の組成物。
【請求項19】
ISO 4892−2A条件に準拠してキセノン耐光性試験光源に1000時間曝露した後の赤外吸収保持率が約96%以上である、請求項1記載の組成物。
【請求項20】
さらに熱安定剤を含んでおり、熱安定剤がホスファイト、ホスホナイト、ホスフィン、ヒンダードアミン、ヒドロキシルアミン類、フェノール類、アクリロイル修飾フェノール、ヒドロペルオキシド分解剤、ベンゾフラノン誘導体又はこれらの酸化防止剤の1種以上を含む組合せである、請求項1記載の組成物。
【請求項21】
前記熱安定剤が当該組成物の総重量を基準にして約0.001〜約3wt%の量で存在する、請求項20記載の組成物。
【請求項22】
有機ポリマーと無機赤外吸収性添加剤と紫外吸収性添加剤とを含む組成物を溶融ブレンディングすることを含んでなる、組成物の製造方法。
【請求項23】
溶融ブレンディングを剪断力を加えることによって実施する、請求項22記載の方法。
【請求項24】
剪断力を、押出機、Bussニーダー、ロールミル、Henschel、Waringブレンダー、ヘリコーン、成形機又はこれらの剪断力を加える方法の1種以上を含む組合せで加える、請求項23記載の方法。
【請求項25】
溶融ブレンディング共押出法で実施する、請求項22記載の方法。
【請求項26】
さらに、組成物を成形することを含む、請求項22記載の方法。
【請求項27】
圧縮成形、射出成形、ブロー成形、真空成形、熱成形、ガスアシスト射出成形又はこれらの成形方法の1種以上を含む組合せで成形する、請求項26記載の方法。
【請求項28】
さらに、組成物を被覆することを含む、請求項27記載の方法。
【請求項29】
請求項1記載の組成物から製造された物品。
【請求項30】
請求項22記載の方法で製造される物品。
【請求項31】
請求項27記載の方法で製造される物品。
【請求項32】
約20%以上の赤外吸収、約20%以上の紫外線吸収及び電磁スペクトルの可視域で約40%以上の透過率を示す、請求項30記載の物品。
【請求項33】
ISO 4892−2A条件に準拠してキセノン耐光性試験光源に1000時間曝露した後の赤外吸収保持率が約96%以上である、請求項30記載の物品。

【図1】
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【公表番号】特表2007−519804(P2007−519804A)
【公表日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−551064(P2006−551064)
【出願日】平成16年12月9日(2004.12.9)
【国際出願番号】PCT/US2004/041140
【国際公開番号】WO2005/075550
【国際公開日】平成17年8月18日(2005.8.18)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】