説明

走査型電子顕微鏡における定量的3次元再構成のための方法および装置

【課題】走査型電子顕微鏡システムにおける3次元トモグラフィ・イメージ生成のための方法と装置を提供する。
【解決手段】標本の上端表面上に少なくとも2つの縦のマークを備え、それらの間に角度を持たせる。連続するイメージ記録において、それらのマークの位置が決定され、連続するイメージ記録の間において取り出されたスライスの厚さの定量化に使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走査型電子顕微鏡における標本のトモグラフィ・イメージ・データ・セットを生成する分野及び標本の3次元ビューを生成する分野に関する。
【背景技術】
【0002】
n次元データ・セットの獲得、問い合わせ、表示を行う能力の価値は、種々の科学的試練を通じて充分に確立されてきた。特に生物医学科学は、ボリューム・イメージ・データを可視化する洗練された方法を開発した。しかしながら、逐次FIB(Focused ion beam(集束イオン・ビーム))断面化の応用を介した3Dトモグラフィ・データの獲得とボリュームの可視化は、論証可能な方法として現れ始めたばかりであり、少数の研究者によって完成された研究しか存在しない。FIB‐SEMやFIBオージェ・トモグラフィは、10nmもしくはそれ未満に至るボリューム・データ分解能を提供する能力を立証し、したがって材料科学と生物医学両方の研究について偉大な将来的可能性を有する。しかしながら、これまでにFIBベースのナノトモグラフィの分野において達成されている最良の例であっても、このテクニックがその発展の初期段階にあるに過ぎないという事実を反映している。FIB‐SEMトモグラフィの従来技術については、非特許文献1ならびにそれに含まれる引用を参照する。
【0003】
FIBベースのトモグラフィのより広い利用を制限している要因には、生データの収集の容易性、速度、密度が含まれる。別の障害は、電子イメージングに適した堅牢であってしかも用途の広いデータ分析やボリューム可視化方法の具体化である。実際問題として、連続するFIB逐次断面のセットからボリューム・イメージ・データを収集するハードウエアは、10年以上も前から存在する。しかしながらFIBベースのナノトモグラフィは、今日まで、それに伴う時間、努力、特化されたデータ整理ノウハウに起因してあまり実用性のない応用とされてきた。
【0004】
これまでに開示されているFIBによって獲得された断面スライスの定量化の方法は、取り出された材料の厚さを測定するためのその断面に対して垂直に行う各フレーム・イメージの測定、もしくは断面イメージに基づいて定量化を行う別の方法を必要とする。しかしながら最初の方法は、別のイメージ記録システムを通じて垂直ビューを達成すること、および/または標本を移動して垂直ビューを達成することを必要とする。
【0005】
より最近では、たとえば特許文献1に、FIB‐SEMトモグラフィに使用可能なシステムが開示されている。
【0006】
【特許文献1】米国特許第6,855,938号
【特許文献2】国際特許出願第PCT/EP 03/01923号
【特許文献3】国際特許出願第WO 03/071578号
【特許文献4】米国特許出願第10/923,814号
【非特許文献1】ジアンヌッツィ,ルシル A.(Giannuzzi,Lucille A.);スティービー,フレッドA.(Stevie,Fred A.)編集「イントロダクション・トゥ・フォーカスト・イオン・ビームズ:インストゥルメンテーション、セオリー、テクニックス・アンド・プラクティス(Introduction to Focused Ion Beams : Instrumentation, Theory, Techniques and Practice)」スプリンガー出版(Springer‐Verlag)、2004年、第14章(ロバート・ハル(Robert Hull))および第15章(E.L.プリンシペ(E.L. Principe)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記に照らして、走査型電子顕微鏡において標本の3次元イメージ・データを生成するための方法を提供することを本発明の目的とする。また本発明の第2の目的は、標本の3次元イメージ・データを生成することのできる荷電粒子ビーム・システムを提供することとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1のコンセプトによれば、最初の目的が、走査型電子顕微鏡を用いて標本の3次元トモグラフィ・イメージ・データを生成するための方法によって解決される。当該方法は:
(a)標本の面に、互いの間に距離を有し、かつその距離が、表面の選択された方向において変化する2つの縦のマークを設けるステップ;
(b)選択された方向に対して垂直の方向にわたって標本を走査する荷電粒子のビームによって標本からスライスを取り出すステップ;
(c)選択された方向に対して垂直でない伝播方向を有する主電子ビームによって標本を走査し、標本によって放出された電子を検出することによりイメージ・データを記録し、かつイメージ・データをイメージ・データのセットとしてストアするステップ;
(d)上記のステップ(b)とステップ(c)を複数回にわたって反復し、イメージ・データの複数セットを生成するステップ;
(e)ストアされたイメージ・データを分析してイメージ・データの各セット内のマークを識別し、スライスの厚さを、イメージ・データの各セット内のマークの距離から計算するステップ;
を含む。
【0009】
本発明の第2のコンセプトによれば、前述の第2の目的が、荷電粒子ビーム・システムによって実現され、当該荷電粒子ビーム・システムは:電子ソース;電子ソースによって放出された電子により電子プローブを生成し、電子光学軸を決める少なくとも1つの電子光学レンズと電子光学軸に対して垂直な方向において電子プローブを偏向させる少なくとも1つの偏向システムとを含む電子光学システム;電子検出器;その電子検出器によって生成されたイメージ・データの複数のデータ・セットをストアすることのできる複数イメージ・メモリ;イメージ分析システム;を含み、イメージ分析システムが、イメージ・メモリ内にストアされたイメージ・データを分析して、複数イメージ・メモリ内にストアされたイメージ・データの各セット内のマークの位置を識別し、識別したマークの位置を基礎としてイメージ・データの各セットとイメージ・データの次の隣接するセットの間における距離値を計算し、かつ、この距離値をストアされたイメージ・データの複数のデータ・セットに割り当てるべく設計されていて;さらに、これらの距離値を使用して、イメージ・データの複数のデータ・セットの種々の所望の3次元ビューを生成することのできる表示システム;を含む。
【0010】
本発明の方法によれば、2つの平行でない縦のマークが標本面に設けられる。その後、それぞれの2つの記録の間に標本からスライスを取り出すステップを伴って、一連の標本のイメージが記録される。記録された一連のイメージ内のマークの種々の位置が評価され、取り出したスライスの厚さについての測定値として使用される。その後、これらの各スライスの厚さが、それぞれの記録されたイメージに割り当てられ、スライスに対して垂直の方向における標本内のスライスの位置に関する情報が定められる。これらのデータが利用できることから、標本の任意の3Dイメージを生成し、表示することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施形態をさらに詳細に説明する。
【0012】
図1に示されている荷電粒子ビーム・システムは、走査電子ビーム・コラム300と集束イオン・ビーム・コラム200を含む。図1に示されているとおり、電子ビーム・コラム300と集束イオン・ビーム・コラム200の光軸は、標本400の平面的な表面によって形成される面内において実質的に交差する。集束イオン・ビーム・コラムの光軸は、この標本400の平面に対して略垂直に延びており、したがってイオン・ビームが、この表面上に垂直に入射する。電子ビームがこの標本400の面に入射する角度は、この構成において約35°である。
【0013】
走査電子ビーム・コラム300においては、主電子ビームが、好ましくはショットキー電界エミッタとする電子ソース301とアノード303によって生成される。放出された電子は、電子ソース301とアノード303の間に配置された抽出電極302も通過する。加速された電子ビームは、続いてアノード303の底にある孔を通過し、磁気レンズによって設計されたコリメータ・システム304により、実質的にコリメートされる。開口絞り305を通過した後、電子ビームは、さらに電子ビーム・コラムの内側空間306を通過するが、その中に2次または後方散乱電子のための検出器312が配置される。
【0014】
電子のビーム方向に従って、磁気レンズと静電気レンズの組み合わせからなる対物レンズが備えられている。電子ビームはこのレンズによって標本400の表面に焦点が当てられる。対物レンズの磁気部分は、外側磁極片308と内側磁極片309をはじめ、その中に配置されるコイル本体307によって形成される。対物レンズの静電気部分は2つの電極310、311によって決められ、それらは、磁気レンズ部分の磁極片ギャップの領域内に配置されるか、その中で終端する。磁気レンズ部分の磁極片ギャップの領域内には、電子ビーム・コラムの光軸、すなわち電子ビーム・コラムの回転対称軸によって決まる光軸に対して電子ビームを垂直に偏向させるために、追加のサドル・コイル313がビームのパスに対して対称に配置されている。電子ビームを偏向することによって、電子ビームの焦点により形成される電子プローブを用いて標本400を走査することが可能になる。
【0015】
イオン・ビーム・コラム200は、先端に液体ガリウムの液滴を伴う構成を含むイオン・ソース201を含み、そこから抽出電極202によってイオン・ビームが抽出される。FIBコラム200のイオン光学系を通過するとき、イオン・ビームは連続的にコンデンサ203、可変絞り204、イオン・ビームの偏向と指向を行うための電極205、206のセットを通過し、最終的にFIBコラムからイオン・ビームが放出される前にビーム成形用の個別のレンズ207の配列を通過する。
【0016】
FIBコラムによって放出されるイオン・ビームが電子ビーム・コラムの対物レンズの漂遊磁界によって擾乱されないように、走査電子ビーム・コラム300の対物レンズの磁気部分の磁極片は、対物レンズの外側において生成される磁界が皆無もしくはほぼ皆無となる態様で設計されている。
【0017】
ここまで説明したシステムは、特許文献1に開示されており、当該特許文献については、電子光学システムとイオン光学システムの設計の追加の詳細に関して参照によりこれに援用される。
【0018】
図1の左側には、このシステムの制御要素のいくつかが示されている。走査制御1は、電子ビーム・コラムのサドル・コイル313に印加される走査信号を生成し、第2の走査制御5は、FIBコラムの偏向電極206に印加される走査信号を生成する。走査制御1の信号は、データ・メモリ2にも印加され、このデータ・メモリ2をトリガする。データ・メモリ2は、複数のイメージ・データ・セットをストアする数ギガバイトの容量を有する。
【0019】
主電子ビームに起因して標本400によって放出される2次および/または後方散乱電子が、走査電子ビーム・コラムの対物レンズの静電気レンズ部分によって電子ビーム・コラムの光軸の方向で加速され、検出器312によって検出される。検出器312によって検出された信号は、信号増大ユニット3によって増大され、走査制御1からの関連情報とともにデータ・メモリ2内にストアされる。
【0020】
走査制御5を使用し、集束イオン・ビームを偏向することによって、好ましくは電子ビーム・コラムの光軸とイオン・ビーム・コラムの光軸によって決まる平面(図1の描写面)に対して垂直に偏向することによって、標本400から薄いスライスが取り出される。同時に、走査電子ビームを使用して、かつ2次および/または後方散乱電子を検出してイメージ・データが生成される。1つのスライスが取り出される時間内に電子ビーム・コラムによって生成されるイメージ・データが1つのイメージ・データ・セットとなる。スライスを1つずつ順次反復的に取り出し、連続的にイメージ・データを生成することによって、複数のイメージ・データ・セットが記録され、データ・メモリ2内にストアされる。
【0021】
その後のステップで、データ・メモリ2内にストアされたイメージ・データの複数のセットが、データ評価ユニット4によって評価される。この評価について図2〜4を参照する。
【0022】
本発明によれば、3Dトモグラフィ・データの記録に先行して、標本面403上に2つの縦のマーク401、402が設けられる。マーク401、402は、標本400から集束イオン・ビームによって取り出されことになるスライスの面に垂直の方向において互いからの距離が変化する。したがって、これら2つの基準マークは、それらの間に角度ψを決める。これらのマークは、標本の面への堆積、またはエッチングによって作成することができる。しかしながら、可能な限りの分解能を受け取るために、マーク401、402を、FIBコラムからのイオンの堆積またはスパッタリング処理による2つの縦のマーク401、402のエッチングのいずれかで、本発明のシステムにより直接直接作成することがもっとも好ましい。スパッタリング処理は、偏向電極206によってスライスの取り出しの間におけるイオン・ビームの走査方向に対してほとんど垂直の所望の方向に集束イオン・ビームを走査する集束イオン・ビームを使用することが望ましい。その代替方法は、たとえば2003年2月25日に国際特許出願され(特許文献2(特許文献3))、かつ米国特許出願された特許文献(特許文献4)に開示されているような気体ノズルによって標本の領域内に持ち込まれる気体原子の電子ビーム誘導エッチングまたは電子ビーム誘導堆積によるマーク401、402の作成であり、これらの特許文献の全内容は、参照によってこれに援用されている。後者の場合においては、走査電子ビーム・コラム300の電子ビームを、サドル・コイル313を介して偏向させることによってマーク401、402が書き込まれる。
【0023】
マーク401、402が、それらの間に角度を有することから、各イメージ・データ・セット内のこれらのマークの位置は、各スライス404、405が取り出された後に変化する。スライス404、405の実際の前縁におけるマーク401、402の位置を識別し、連続するイメージ・データ・セット内におけるそれらの位置を比較することによって、それらの位置の値が、各スライス404、405の、それらのスライスの面に対して垂直な方向406、すなわちスライスの2つの長辺に対して垂直な方向における厚さの正確な測定値を決める。
【0024】
スライスの厚さの評価は、図4に示されているとおり、相似の三角形を比較することによって行うことが可能である。これにおいても401、402を用いてマークを図示し、Δtがスライスの厚さを定義しているとすれば、このスライスの厚さは、任意に決めたゼロ点0からの連続するイメージn、n+1のそれぞれにおけるマーク401の位置AnとAn+1および、この縦のマーク401がスライスの面に対して垂直の軸となす角度θから、次式に従って決定することができる:
Δt=(An‐An+1)/tanθ
【0025】
両方の位置An+1、Anと角度θは、SEMイメージ・データ・セット内において容易に決定することが可能である。したがって、原理的には、1つのマーク401だけあれば、スライスの厚さΔtの決定に充分となるが、各イメージ・データ・セットの位置をほかのイメージ・データ・セットに対して正確に識別するためには、両方の位置から両方のマーク401、402の交差を決定するように、第2のマーク402を、同様に各イメージ・データ・セット内で識別する必要がある。それによりこの交差が、すべてのイメージ・データを設定するための同一かつ一意的なゼロ点を定義する。
【0026】
図5のブロック図には、本発明のシステムの主要な処理ステップが示されている。ステップ100においては、SEMイメージのイメージ・データ信号が、電子光学コラムの電子ビームをその光軸に対して垂直な2つの方向において走査し、かつ2次または後方散乱電子を検出する間に記録される。続くステップ101においては、このイメージ・データのセットがイメージ・メモリ内にストアされる。ステップ102においては、イメージ・データが記録される間に、集束イオン・ビームによる標本のスパッタリングまたはドライ・エッチングによってスライスが標本から取り出される。これらのステップ100から102までのステップは、ステップ104に示されているとおりに所望の数のイメージ・データのセットがメモリ内にストアされるまで、再帰矢印103によって示されている反復が所望の回数にわたって行われる。
【0027】
ステップ104において、所望の数のイメージ・データのセットがメモリ内に記録された後、続くステップ105において、イメージ・データの各セット内のマークの位置が決定される。ステップ106においては、連続するイメージ・データのセット内におけるマークの位置からスライスの厚さの決定をはじめ、そのイメージ・データ・セットの横方向位置(すなわち、スライスの面内における位置)の決定が行われる。これらの位置データは、ステップ107においてイメージ・データの各セットに割り当てられるとともに、矢印108によって示されているとおり、メモリ内にもストアされる。
【0028】
上記のステップを完了すると、通常の周知の表示方法に従って高分解能の3Dイメージ表示の生成に充分な情報が用意される。したがって、矢印109よって示されるステップにおいて、メモリ内にストアされた情報の任意部分を読み出し、ステップ110において所望の任意3Dビューを生成して表示することが可能になる。
【0029】
前述したとおり、本発明は、FIB断面プロセスの間における高分解能の同時SEイメージの出現とともに、自動化された態様で1時間に満たない期間内に数百のSEMイメージ・フレームを獲得することが実用的となったことを示す。自動化されたイメージ記録と結合されたライブ・イメージング(すなわち、標本のFIBプロセスの間におけるイメージ・データの生成)が、データ獲得プロセスを有意に促進するとともに、容易にナノメートル・スケールの横方向分解能を得ることが可能である。それに加えて、高いコレクション密度は、数ミクロンやそれを超える深さにわたって切断平面に対して垂直の方向(すなわち、スライス面に対して垂直の方向)に沿った類似の分解能と解釈される。
【0030】
このライブ・データ獲得方法は、データ整理プロセスと結合され、それが動画化された断面シーケンス、部分ボリュームの分解、選択的な透明の適用を通じて、高品質ボリューム再構成の好ましい表示を可能にする。
【0031】
前述したとおり、本発明の方法と装置を用いれば、SEMイメージ・データが3次元において定量化される。前述した方法は、イメージのスライスの厚さと断面イメージの間における幾何学的関係を使用してイメージ・データの各セット(すなわち、イメージ・フレーム)のスライスの厚さを定量化する、単純であるが効果的な方法を採用している;異なるビューの下に記録されたイメージは必要でない。
【0032】
本発明の方法とシステムを用いると、3Dイメージ・データ・セットの記録が、最先端のシステムと方法に比べて少なくとも5倍は迅速になる。本発明の方法とシステムを用いた場合に、1時間内に400イメージ・フレームが記録可能であることを示すことができる。これは、単にシステムのオペレータによって決定される取り込み状態に依存するが、5〜20nm台の極めて高い深さ分解能と解釈される。
【0033】
本発明のシステムと方法は、完全なデータ取り込みの間に、データの取り込みを中断することになるイメージの移動をまったく必要としない。完全なデータ取り込みの間に標本が移動されないことから、平行移動および回転の誤差が最小化され、データ取り込みが最大まで加速される。またプロセスが連続的であるという性質は、スライスのイメージ・データが本質的により均質となり、トモグラフィ・データ取り込みプロセスの中断と再開に関連する再整列誤りや厚さの変動をより受けにくくなることを意味する。
【0034】
本発明の「山形基準」マーク・プロセスは、個別のイメージ・データ・セットのそれぞれにおける厚さを基礎とするか、あるいは全データ取り込みにわたる平均イメージ・スライスの厚さを基礎とする定量化を可能にする。単一ビュー内における断面上のマークの識別とイメージングが可能であることは、データ取り込みの速度とデータの精度を向上させることができる。データは、すべてのイメージ・データが取り込まれた後に処理することが可能であり、標本、標本のスパッタリング・レート、あるいは標本のそのほかのプロパティについての事前の知識も必要なければ、データ取り込みプロセスの間におけるそのほかの較正または測定も必要としない。
【0035】
マークは、原則的に、標本が本発明のシステムに取り付けられた状態のまま標本面へのエッチングまたは堆積によって、あるいはそのほかの方法によって作成することが可能である。これらのマークは、標本に対して陥没(つまり、エッチング)または隆起(つまり、堆積)のいずれとすることもできる。マークが堆積される場合には、それらを任意の適切な材料、酸化物、金属、有機物、無機物、またはそれらの任意の組み合わせから構成することが可能である。唯一の必要条件は、マークが、マークが設けられる標本面の上面ビューと標本の断面イメージ、すなわち標本面に対して垂直なイメージの間において明確かつ既知の幾何学的関係を有することである。もっとも直接的なアプローチは、標本の断面に対して垂直な標本面内にエッチングされた、既知の角度をなす2つの直線を構成するパターンである。直線の角度が既知であることから、相似の三角形の法則に基づいて単純な数学的関係を確立することが可能になる。
【0036】
その代替においては、より短い寸法にわたる精度の向上が希望されている場合に、異なる角度を伴うネスティングされたマークを使用することができる。たとえば、第3の角度を有する直線を追加することができる;直線間のより大きな角度は、連続する断面イメージ内に観察されるマークの位置に、より大きな変化レートをもたらす。
【0037】
上記の幾何学に関して言えば、直線を、システムのオペレータによって選択される任意の長さと角度とすることが可能である。
【0038】
ここで理解されるとおり、以上の説明は本発明の好ましい実施態様に関するものであり、付随する特許請求の範囲に定義されているとおりの本発明の精神ならびに範囲から逸脱することなく、それらに対する種々の変更および修正が考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明に従ったシステムを示した概略図である。
【図2】2つの縦のマークが提供された標本の斜視図である。
【図3】図2の標本の平面図である。
【図4】縦のマークの位置からスライスの厚さを決定するために使用される相似の三角形の関係を示した説明図である。
【図5】本発明に従った方法における種々のステップを示したブロック図である。
【符号の説明】
【0040】
1 走査制御、2 データ・メモリ、3 信号増大ユニット、4 データ評価ユニット、5 第2の走査制御、200 集束イオン・ビーム・コラム;イオン・ビーム・コラム;FIBコラム、201 イオン・ソース、202 抽出電極、203 コンデンサ、204 可変絞り、205 電極、206 電極;偏向電極、207 レンズ
300 走査電子ビーム・コラム;電子ビーム・コラム、301 電子ソース、302 抽出電極、303 アノード、304 コリメータ・システム、305 開口絞り、306 内側空間、307 コイル本体、308 外側磁極片、309 内側磁極片、310 電極、311 電極、312 検出器、313 サドル・コイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走査型電子顕微鏡を用いて標本の3次元トモグラフィ・イメージ・データを生成するための方法であって:
(a)前記標本の面に、互いの間に距離を有し、かつ前記距離が前記表面の選択された方向において変化する2つの縦のマークを設けるステップ;
(b)前記選択された方向に対して垂直の方向にわたって前記標本を走査する荷電粒子のビームによって前記標本からスライスを取り出すステップ;
(c)前記選択された方向に対して垂直でない伝播方向を有する主電子ビームによって前記標本を走査し、前記標本によって放出された電子を検出することによりイメージ・データを記録し、かつ前記イメージ・データをイメージ・データのセットとしてストアするステップ;
(d)前記ステップ(b)とステップ(c)を複数回にわたって反復し、イメージ・データの複数セットを生成するステップ;および、
(e)前記ストアされたイメージ・データを分析してイメージ・データの各セット内の前記マークを識別し、前記スライスの厚さを、前記イメージ・データの各セット内の前記マークの距離から計算するステップ;
を含む方法。
【請求項2】
前記スライスは、前記選択された方向に対して垂直な方向に長く延びており、前記選択された方向に短く延びている請求項1に記載の方法。
【請求項3】
追加のステップにおいて、前記マークの1つの長さと、前記マークの1つと前記選択された方向の間の角度が決定される請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記スライスの厚さの前記計算は、相似の三角形の比較を基礎として実行される請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記荷電粒子ビームは集束イオン・ビームである請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記荷電粒子ビームは集束電子ビームであり、電子ビームにより活性化可能な気体が、前記集束電子ビームが前記標本に入射する領域に与えられる請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記取り出すステップと前記走査するステップが同時に実行される請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記2つの縦のマークが、前記集束イオン・ビーム内のイオンの、イオン・ビーム誘導堆積によって生成される請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記2つの縦のマークが、イオン・ビーム・エッチングによって生成される請求項5に記載の方法。
【請求項10】
荷電粒子ビーム・システムであって:
電子ソース;
電子光学軸を決める少なくとも1つの電子光学レンズと少なくとも1つの偏向システムを含む電子光学システムであって、前記少なくとも1つの電子光学レンズが前記電子ソースによって放出された電子により電子プローブを生成し、前記偏向システムが前記電子プローブの、前記電子光学軸に対して垂直な方向における偏向を提供する、前記電子光学システム;
電子検出器;
前記電子検出器によって生成されたイメージ・データの複数のデータ・セットをストアするための複数イメージ・メモリ;
前記イメージ・メモリ内にストアされたイメージ・データを分析して、前記複数イメージ・メモリ内にストアされたイメージ・データの各セット内のマークの位置を識別し、イメージ・データの各セットとそのイメージ・データの次の隣接するセットとの間における距離値を、前記マークの前記識別した位置を基礎として計算し、かつ、前記距離値を前記ストアされたイメージ・データの複数のデータ・セットに割り当てるべく機能するイメージ分析システム;
前記距離値を使用して、イメージ・データの前記複数のデータ・セットの種々の所望の3次元ビューを生成するための表示システム;
を含む荷電粒子ビーム・システム。
【請求項11】
さらに、イオン・ソースとイオン光学システムを含み;前記イオン光学システムは、イオン光学軸を決め、それに沿って前記イオン・ソースによって放出されたイオンのイオン・ビームが走行し、かつ、前記イオン光学軸が、前記電子光学軸に対して傾斜している請求項10に記載の荷電粒子ビーム・システム。
【請求項12】
前記少なくとも1つの電子光学レンズは、前記イオン・ビームが走行する領域内において磁界のない設計がなされる請求項11に記載の荷電粒子ビーム・システム。
【請求項13】
前記電子光学レンズは静電対物レンズを含む請求項12に記載の荷電粒子ビーム・システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−294614(P2006−294614A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−105176(P2006−105176)
【出願日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【出願人】(504359318)カール・ツアイス・エヌティエス・ゲーエムベーハー (4)
【Fターム(参考)】