説明

走行履歴収集システムおよび車載装置

【課題】送信すべき走行履歴を的確に判定し、限られた時期に効率的に送信可能な走行履歴収集システムを提供すること。
【解決手段】車両センサ2からの走行データを基に生成した車両の走行履歴を記録する走行履歴DB13と、記録した走行履歴から送信区間の判定を行う送信区間判定部14と、判定した送信区間の走行履歴をセンタ7に送信する走行履歴送信部15とを備え、送信区間判定手段15は、走行速度が最初に閾値以下になった地点を送信区間判定の開始地点とし、その後、閾値以上の状態が所定期間を超えて継続した場合に、走行速度が閾値以上になった地点を送信区間判定の終了地点として送信区間を判定することにより、走行速度が閾値以上になっても所定期間を超えない場合は送信区間判定の終了地点と判定されないため、判定が的確になり、送信頻度も少なくなり、効率的な送信が可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の走行履歴を収集し、無線通信手段を用いてセンタ装置に送信する走行履歴収集システムおよびそれに用いられる車載装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載した端末装置で車両の走行履歴を収集し、それを蓄積しておいて、路側装置と端末装置との間の狭域無線通信手段、或いは、携帯電話のような広域無線通信手段のいずれかを用いて、センタ装置に送信し、道路交通網の渋滞状況などを判定する技術が知られている。
【0003】
しかしながら、これまでのものでは、狭域無線通信を使用して車両の走行履歴を送信する場合、車両が路側装置のある位置まで走行しないと、走行履歴を送信できず、センタ装置で収集する走行履歴に収集時間の遅れが生じるという問題があり、また、広域無線通信を使用して車両の走行履歴を送信する場合には、収集時間の遅れをなくし、即座に車両の走行履歴を送信可能であるが、道路網全体の交通状況を収集するために、走行履歴を送信する車両の数を増加させた場合、広域無線通信網に大きな負担がかかり、最悪の場合、広域無線通信網がパンクし、広域無線通信手段を使用できなくなるという問題があった。
【0004】
そのため、従来から、こうした問題に対処して、端末装置からセンタ装置に走行履歴を送信する場合、その送信頻度や送信データの量をそれぞれ次のような方法で削減し、広域無線通信手段を有効に利用することが考えられている。
【0005】
すなわち、第1の方法は、走行速度を常時監視しておき、走行速度が大きく変化したときにその前後をその走行速度の終わり、始まりと判断し、始まりから終わりまでの区間の走行速度を固定化し、それをその区間の走行速度として送信したり、平均化してその値をその区間の走行速度として送信したりする方法である(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
この方法によれば、走行速度が大きく変化したときに、走行速度に関し所定の特徴づけを行って送信することになり、走行速度が大きく変化しない間は、走行速度を送信することがないため、走行速度の送信頻度が従来に比し少なくなり、また、データ量も前記所定の区間で固定したり、平均化したりするため、少なくなり、広域無線通信を用いても、それを有効に活用することができる。
【0007】
そして、第2の方法は、走行速度や走行方向、その他の情報をセンタ装置に送信する場合に、その送信間隔、データ量を車両の渋滞状況や同じ役割を持った他の端末装置が送信中かどうかによってそれぞれ異なるようにする方法である(例えば、特許文献2参照)。
【0008】
この方法によれば、渋滞中は、通常の走行状態より走行速度やその他の情報を送信する送信間隔を広くし、また、他の端末装置が送信中である場合には、他の端末装置で既に送信されている情報は送信せず、他の端末装置で送信していない情報のみ送信することができ、したがって、端末装置からセンタ装置への送信頻度やデータ量をそれぞれ従来に比して少なくでき、第1の方法と同様、広域無線通信を用いても、それを有効に活用することができる。
【0009】
また、第3の方法は、センタ装置から道路網の交通情報(渋滞情報)を取得し、走行する道路区間の道路状況の予測を行い、次に、実際に走行して得られた走行履歴から道路状況を判定して予測結果と比較を行い、比較の結果、予測値と実測値が互いに異なる場合にのみ該当する道路区間の実際の走行履歴をセンタ装置に送信する方法である(例えば、特許文献3参照)。
【0010】
この方法によれば、センタ装置から取得した交通情報と実際に走行して得られた交通情報とが互いに異なるときにのみ、実際に走行して得られた交通情報をセンタ装置に送信することになるため、それ以外のときは送信する必要がなく、また、送信する場合も異なる部分(データ)のみを送信すればよく、第1、第2の方法と同様、広域無線通信を用いても、それを有効に活用することができる。
【0011】
このように、従来から考えられている3つの方法を用いれば、それぞれ送信頻度及びデータ量を少なくすることができ、広域無線通信網を用いても、それをパンクさせずに有効に利用することができる可能性がある。
【特許文献1】特表2000−504859号公報
【特許文献2】特開2000−90396号公報
【特許文献3】特表2000−507732号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上記した従来の3つの方法では、それぞれ次のような課題を有する。
【0013】
先ず、特許文献1に記載されたものでは、端末装置において取得した速度データが送信判定の閾値以下となる走行区間の走行履歴をセンタ装置に送信する方法を採用しているが、送信判定の閾値付近で速度データが変化する場合、センタ装置への送信区間と非送信区間とが連続して存在することがあり、端末装置におけるセンタへの送信処理による負荷が大きく増大する可能性がある。また、ある程度の区間において、走行速度の平均を取る場合、走行状態によっては、平均値が実際の道路の状況と一致しない結果となる可能性があり、道路の状況によって走行履歴から渋滞区間やセンタ装置に送信する走行区間の判定が正確に行われないことがあるという問題がある。
【0014】
次に、特許文献2に記載されたものでは、端末装置で記録した速度データについて特徴付け、例えば、平均値化、あるいは、速度データの値でレベル付けなど、を行う方法において、同じ特徴の区間が非常に長く続く場合や渋滞の影響で車両が移動でき無い場合、走行履歴を端末装置からセンタに送信されるまでに時間を要し、情報として必要な時にセンタで使用することができない可能性がある。同様に、走行履歴の蓄積データサイズが一定のサイズ蓄積した場合に送信する方式でも同様の課題がある。
【0015】
また、特許文献3に記載されたものでは、走行履歴を収集する自動車に搭載された端末装置において、センタ装置から最新の道路状況の情報を取得して道路状況の変化を推定し、現在走行中の走行履歴と比較の結果、道路交通状況が変化したと判定した場合に、該当する道路区間の走行履歴を端末装置からセンタに送信する方式において、常時、最新の道路状況がセンタに集まる道路区間については有効であるが、そうでない道路区間についてはセンタで予測した道路状況との比較の実行、あるいは、道路状況が不明であるため比較できないことから、道路状況の変化を正しく判定できない課題がある。
【0016】
本発明は、これらの課題に対処してなされたものであり、送信すべき走行履歴を的確に判定し、限られた時期に効率的に送信可能な走行履歴収集送信装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の走行履歴収集システムは、車両の走行データを検出する車両センサと、車両センサからの走行データを基に車両の走行履歴を生成し記録する記録手段と、記録した走行履歴から送信区間の判定を行う送信区間判定手段と、判定された送信区間の走行履歴をセンタに送信する走行履歴送信手段とを備え、送信区間判定手段が、走行履歴に含まれる走行速度が最初に閾値以下になったとき、その地点を送信区間判定の開始地点とし、その後、速度データが閾値以上になり閾値以上の状態を予め定めた規定期間を超えて継続した場合に、速度データが閾値以上になった地点を送信区間判定の終了地点として送信区間を判定する構成を有する。
【0018】
この構成により、走行速度が最初に閾値以下になったとき、その地点を送信区間判定の開始地点とし、その後、速度データが閾値以上になっても、閾値以上の状態が予め定めた規定期間を超えない限り送信区間判定の終了地点として判定しないため、それまでの間は閾値以下として所謂渋滞、事故などの区間と判定することになり、正確に渋滞、事故などの区間を判定し、センタに送信することができる。
【0019】
また、本発明の走行履歴収集システムは、予め定めた規定期間が、走行速度が閾値以上になってから予め定めた規定の走行距離、又は、予め定めた規定の走行時間のいずれか一方、又は、両方である構成を有する。
【0020】
この構成により、予め定めた規定期間を距離、又は、時間で任意に設定することができるという作用を有する。
【0021】
また、本発明の走行履歴収集システムは、走行履歴が、車両の渋滞や事故などの道路状況を表す履歴を含む構成を有する。
【0022】
この構成により、車両の渋滞、事故などの状況を容易に送信することができる。
【0023】
また、本発明の走行履歴収集システムは、送信区間判定手段において、走行速度が閾値以上になってからも予め定めた規定期間継続しない場合には、送信区間判定の終了地点として判定しない構成を有する。
【0024】
この構成により、規定期間以内で閾値以上の走行速度が検出されても、それを渋滞、事故などとして検知せず、それだけ送信の機会も少なくなり、トラヒックを少なくすることができる。
【0025】
また、本発明の走行履歴収集システムは、走行履歴送信手段において、送信区間判定手段が送信区間判定の終了地点を判定したとき、その判定の開始地点から終了地点までの送信区間の走行履歴をセンタに送信する構成を有する。
【0026】
この構成により、送信区間判定の終了地点を判定した段階で、これまでの走行履歴を一気に送信することになり、常時走行履歴を送信している場合に比し、また、渋滞でもないのに送信している場合に比し、送信トラヒックを小さくすることができる。
【0027】
また、本発明の走行履歴収集システムは、走行履歴送信手段において、送信区間が予め定めた判定区間最小許容値を超えたとき、送信区間の走行履歴を広域無線通信手段、又は、狭域無線通信手段を用いてセンタに送信し、超えないとき、狭域無線通信手段を通して送信する構成を有する。
【0028】
この構成により、走行速度が一旦閾値以下になり、その後、閾値以上になっても規定期間以上閾値以上になることがなく、送信区間が極端に長くなる場合でも、その送信区間が判定区間最小許容値を超えたとき、送信区間の走行履歴を広域無線通信手段、又は、狭域無線通信手段で送信することになり、渋滞、事故などがあった場合、適度に走行履歴を送信することができるという作用を有する。
【0029】
また、本発明の走行履歴収集システムは、判定区間最小許容値が、予め定めた判定区間最小許容距離、又は、予め定めた判定区間最小許容時間のいずれか一方、又は、両方である構成を有する。
【0030】
この構成により、時間、又は、距離、或いは、その両方で任意に最小許容値を設定し、最小許容値を超えた段階で走行履歴を送信することができる。
【0031】
また、本発明の走行履歴収集システムは、走行履歴送信手段において、走行速度が閾値以上になった場合でも予め定めた規定期間を超えて継続しない状態があったとき、これらの継続しない期間の合計とそれ以外の状態における期間の合計の少なくとも一方を算出し、算出した一方の期間と前記送信区間との比率を基に、送信区間の走行履歴を広域無線通信手段で送信するか、狭域無線通信手段で送信するかを選択する構成を有する。
【0032】
この構成により、渋滞、事故などがあっても、それによって余り渋滞が激しくないときは狭域無線通信手段を用いて送信する、激しいときには広域無線通信手段を用いて直ちに送信すると言った使い分けができ、広域無線通信手段、狭域無線通信手段を効率的に使用することができる。
【0033】
また、本発明の走行履歴収集システムは、算出した一方の期間と送信区間との比率が予め定めた送信判定基準値より大きいとき、広域無線通信手段、小さいとき、狭域無線通信手段を用いて送信する構成を有する。
【0034】
この構成により、先に説明したように、渋滞が激しいときと、そうでないときとで広域無線通信手段、狭域無線通信手段を的確に使い分けることができる。
【0035】
また、本発明の走行履歴収集システムは、走行履歴送信手段において、送信区間の終了地点を判定しない場合でも、送信区間の判定開始地点より予め定めた送信遅れ許容値に達したとき、それまでの送信履歴の送信動作を開始する構成を有する。
【0036】
この構成により、送信区間の終了地点を判定しない場合でも、送信区間の判定開始地点より予め定めた送信遅れ許容値に達したとき、それまでの送信履歴の送信動作を開始することになり、送信遅れを未然に防止することができる。
【0037】
また、本発明の走行履歴収集システムは、送信遅れ許容値が、送信区間の判定開始地点より予め定めた一定距離、または、一定時間のいずれか一方、または、両方である構成を有する。
【0038】
この構成により、送信遅れ許容値を時間、距離、または、それらの両方で任意に設定することができる。
【0039】
また、本発明の走行履歴収集システムは、送信履歴の送信動作に、送信遅れ許容値までの区間が予め定めた判定区間最小許容値を超えたとき、送信遅れ許容値までの区間の走行履歴を、広域無線通信手段を用いて送信し、予め定めた判定区間最小許容値を超えないとき、狭域無線通信手段を用いて送信する動作を含む構成を有する。
【0040】
この構成により、送信遅れ許容値までの区間が予め定めた判定区間最小許容値を超えたとき、送信遅れ許容値までの区間の走行履歴を、広域無線通信手段を用いて送信し、予め定めた判定区間最小許容値を超えないとき、狭域無線通信手段を用いて送信することができ、広域無線通信手段、狭域無線通信手段を効率的に用いることができる。
【0041】
また、本発明の走行履歴収集システムは、送信履歴の送信動作に、送信遅れ許容値までの走行速度が閾値以上になった場合でも、予め定めた規定区間を超えて継続しない状態があったとき、これらの継続しない区間の合計とそれ以外の区間における合計の少なくとも一方を算出し、算出した一方の区間と送信遅れ許容値までの区間との比率を基に、送信遅れ許容値までの走行履歴を広域無線通信手段で送信するか、狭域無線通信手段で送信するかを選択する動作を含む構成を有する。
【0042】
この構成により、算出した一方の区間と送信遅れ許容値までの区間との比率を基に、送信遅れ許容値までの走行履歴を広域無線通信手段で送信するか、狭域無線通信手段で送信するかを選択することができ、広域無線通信手段、狭域無線通信手段を効率的に用いることができる。
【0043】
また、本発明の走行履歴収集システムは、走行履歴送信手段において、送信区間の判定開始地点より予め定めた送信遅れ許容値に達した後も、予め定めた送信遅れ許容値に達するごとに、送信遅れ許容値の間の走行履歴をそれぞれ送信する構成を有する。
【0044】
この構成により、送信遅れがあれば、送信遅れ許容値になる毎にそれまでの走行履歴を自動的に送信する動作を開始することになり、送信遅れを未然に防止することができる。
【0045】
また、本発明の走行履歴収集システムは、走行履歴送信手段において、予め定めた送信遅れ許容値に達した後に送信区間判定終了地点を判定したとき、送信遅れ許容値に達した地点から送信区間判定終了地点までの区間の走行履歴を送信遅れ許容値に達するまでの区間の走行履歴の送信状況に応じて広域無線通信手段、狭域無線通信手段のいずれか一方で送信する構成を有する。
【0046】
この構成により、送信遅れ許容値までの走行履歴を送信した場合に、その後の走行履歴を送信する際、送信遅れ許容値までの走行履歴の送信状況にしたがって広域無線通信手段、狭域無線通信手段をそれぞれ使用することになり、広域無線通信手段、狭域無線通信手段をより効率的に活用することができるようになる。
【0047】
また、本発明の走行履歴収集システムは、走行区間判定手段に、送信区間の判定開始地点から判定終了地点までの間に存在する右左折地点を検出する検出手段と、検出手段によって右左折地点が検出されたとき、右左折地点を判定区間の仮の終了地点とし、以降引続いて判定終了地点までの走行履歴を検出する手段とを備えた構成を有する。
【0048】
この構成により、走行履歴に右折、左折があれば、それをも走行履歴として送信することができる。
【0049】
また、本発明の走行履歴収集システムは、送信区間判定手段によって判定する送信区間や走行履歴送信手段によって選択する無線通信手段をそれぞれ決定する条件、定数を、走行する道路の種別に応じて異なる値に設定可能な構成を有する。
【0050】
この構成により、条件、定数を適宜設定することにより、道路の種別、例えば、高速道路、自動車専用道路、国道県道などの一般道路などに応じて、最適の条件、定数を設定することができ、それぞれの道路における渋滞情報を正確に送信することができる。
【0051】
また、本発明の走行履歴収集システムは、定数に、送信区間の判定処理開始地点、終了地点をそれぞれ判定する閾値、終了判定用の走行区間長、走行時間、判定区間最小許容距離、判定区間最小許容時間、送信判定基準値、送信遅れ許容距離、送信遅れ許容時間、狭域無線通信待ち許容距離、狭域無線通信待ち許容距離の少なくとも1つ、または、複数を含む構成を有する。
【0052】
この構成により、これらの定数を適宜に設定し、最適に定数を選択することができる。
【0053】
また、本発明の走行履歴収集システムは、走行履歴送信手段が狭域無線通信手段を選択し、狭域無線通信手段を用いて走行履歴を送信するとき、狭域無線通信手段と通信可能な路側機に近い位置まで走行し、路側機と通信可能な状態になるまで、走行履歴の送信を待つ構成を有する。
【0054】
この構成により、狭域無線通信手段が選択されたときには、路側機と通信可能な状態になるまで送信を待つことになり、路側機と通信可能な状態になったとき、送信すべき走行履歴を送信することになる。
【0055】
また、本発明の走行履歴収集システムは、送信待ちの状態が予め定めた狭域無線通信通信待ち許容距離、待ち許容時間のいずれか一方、又は、両方を越えたとき、広域無線通信手段を用いて走行履歴を送信する構成を有する。
【0056】
この構成により、路側機と通信可能な状態になるの長時間待ち、そのちの状態が予め定めた狭域無線通信通信待ち許容距離、待ち許容時間のいずれか一方、又は、両方を越えた場合には、狭域無線通信手段に代えて、広域無線通信手段を用いて走行すべき走行履歴を自動的に送信するため、これにより、広域無線通信手段、狭域無線通信手段を用いて効率的に走行履歴を送信することができる。
【発明の効果】
【0057】
本発明は、車両の走行データを検出する車両センサと、車両センサからの走行データを基に車両の走行履歴を生成し記録する記録手段と、記録した走行履歴から送信区間の判定を行う送信区間判定手段と、判定された送信区間の走行履歴をセンタに送信する走行履歴送信手段とを備え、送信区間判定手段が、走行履歴に含まれる走行速度が最初に閾値以下になったとき、その地点を送信区間判定の開始地点とし、その後、速度データが閾値以上になり閾値以上の状態を予め定めた規定期間を超えて継続した場合に、速度データが閾値以上になった地点を送信区間判定の終了地点として送信区間を判定するように構成したものであり、走行速度が最初に閾値以下になったとき、その地点を送信区間判定の開始地点とし、その後、速度データが閾値以上になっても、閾値以上の状態が予め定めた規定期間を超えない限り送信区間判定の終了地点として判定しないため、それまでの間は閾値以下として所謂渋滞、事故などの渋滞区間と判定し、それをセンタに送信することができ、送信頻度を少なくすることができるだけでなく、渋滞区間もより効率的に判定できるという効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0058】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。
【0059】
図1は、本発明の一実施の形態における走行履歴収集システムを示す概略ブロック図である。
【0060】
本発明の一実施の形態における走行履歴収集システムにおいて、走行履歴を収集する対象となる車両には、走行履歴収集用の端末装置1と、車両センサ2と、狭域無線通信手段3と、広域無線通信手段4とをそれぞれ搭載する。
【0061】
走行履歴収集用の端末装置1は、車両センサ2で検出した車両の動作情報を取得する車両情報収集部11と、車両情報収集部11で取得した車両情報から走行履歴を生成し、走行履歴データベース(以下、走行履歴DBという)13に記録する走行履歴記録部12と、走行履歴を蓄積する走行履歴DB13と、走行履歴から送信区間の検出を行う送信区間判定部14とを備えている。
【0062】
さらに、端末装置1は、走行履歴に送信区間があった場合、走行履歴を基に作成された走行データを、狭域無線通信手段3および路側装置5を通して走行履歴収集センタ装置7に送信するか、或いは、広域無線通信手段4および広域無線通信アンテナ6を通して走行履歴収集センタ装置7に送信するかをそれぞれ選択する選択機能と、走行履歴から走行履歴収集センタ装置7に送信するための送信データを作成する機能と、狭域無線通信手段3と広域無線通信手段4をそれぞれ制御する制御機能とを有する走行履歴送信部15を備えている。
【0063】
車両センサ2は、衛星を利用して位置を測位するGPS装置21、車両の旋回度を検出する角速度センサ22、車両の速度を検出する車速センサ23等よりなり、車両の位置情報や走行方向、走行速度などの検出を行う機能を備えている。
【0064】
狭域無線通信手段3は、光ビーコンや電波ビーコン、DSRC等の路上に設置された、所謂、路側装置5との間で狭域の無線通信によりデータ通信を行う機能を備えている。
【0065】
広域無線通信手段4は、携帯電話やデジタルMCA等の広域の無線通信インフラとの間の無線通信によりデータ通信を行う機能を備えている。
【0066】
走行履歴を収集するセンタ側は、路側装置5と、広域無線通信用のアンテナ6と、走行履歴収集センタ装置7とから構成される。
【0067】
ここで、路側装置5は、車両に搭載された狭域無線通信手段3との間で狭域の無線通信手段4によりデータ通信を行う機能を備えている。また、広域無線通信用のアンテナ6は、車両に搭載した携帯電話やデジタルMCA等の広域無線通信手段4との間の無線通信によりデータ通信を行う機能を備えている。
【0068】
走行履歴収集センタ装置7は、狭域無線通信手段3と広域無線通信手段4からそれぞれ路側装置5や広域無線通信アンテナ6を介して、複数の走行履歴収集用の端末装置1から車両の走行履歴を受信する機能と、受信した車両の走行履歴に含まれる位置情報や速度情報、走行方向等の情報を基に交通道路網における各地点間の移動に必要な所要時間や渋滞状況等の道路状況を算出する機能と、算出した所要時間や渋滞状況等の道路情報を該当する道路区間と走行履歴が端末装置1で検出された時間帯毎に蓄積する機能とを備えている。
【0069】
次に、本発明の一実施の形態における走行履歴収集システムの動作について説明する。
【0070】
車両センサ2が位置や走行速度、走行方向を検出すると、それが端末装置1の車両情報収集部11で収集され、走行履歴記録部12を介して走行履歴として走行履歴DB13に記録される。走行履歴DB13に記録された走行履歴は送信区間判定部14に供給され、走行履歴中に送信区間があるかどうか判定される。送信区間があれば、それまでの走行履歴を走行履歴送信部15に送出し、狭域無線通信手段3か広域無線通信手段4のいずれかを用いてセンタ側に送信し、センタ側では、これらの走行履歴を広域無線通信用のアンテナ6、或いは、路側装置5を介して受信し、走行履歴収集センタ装置7において、収集、統合し、渋滞情報などの交通情報を生成する。
【0071】
なお、ここで、送信区間をどのように判定し、走行履歴を狭域無線通信手段3または広域無線通信手段4のいずれを介して送信するかであるが、それらを模式的に示したのが、図2〜図5である。
【0072】
以下、図2〜図5を用いて、送信区間をどのように判定するか、送信に際して、走行履歴送信部15がどのようにして狭域無線通信手段3、あるいは広域無線通信手段4を選択するかについて説明する。
【0073】
まず、図2(A)、(B)に示すように、車両センサ2で検出され、走行履歴DB13に記録された走行履歴内の走行速度データは、送信区間判定部14において予め定めた送信区間判定閾値Vtrafと比較される。走行速度データが送信区間判定閾値Vtraf以下であり、その時点で送信区間判定処理が実行されていない場合には、走行速度データが送信区間判定閾値Vtraf以下になった地点を、送信区間判定処理開始地点Taと設定し、以降、送信区間判定処理を実行する。
【0074】
送信区間判定処理を実行している間も走行履歴内の走行速度データを監視しておき、走行速度データが送信区間判定閾値Vtraf以上になった場合、その時点Tbで送信区間判定処理の終了判定に移行する。
【0075】
送信区間判定処理の終了判定に移行した場合、その後、予め定めた規定の走行距離Lend、予め定めた規定の走行時間Tendの両方、若しくは、一方が経過するかどうかを判断する。
【0076】
図2(B)のTcに示すように、予め定めた規定の走行距離Lend、予め定めた規定の走行時間Tendの両方、若しくは、一方が経過する以前に走行速度データが送信区間判定閾値Vtraf以下になった場合には、送信区間判定処理の終了判定を終了し、送信区間判定処理をそのまま継続する。
【0077】
図2(A)、(B)のTdに示すように、送信区間判定処理の終了判定に移行した状態で、予め定めた規定の走行距離Lend、予め定めた規定の走行時間Tendの両方、若しくは、どちらか一方が経過するまでの間、走行速度データが送信区間判定閾値Vtraf以上であった場合には、送信区間判定処理の終了判定を終了し、かつ、送信区間判定処理を終了し、走行速度データが送信区間判定閾値Vtraf以上になった地点を送信区間判定処理の終了地点Tbとする。
【0078】
そして、送信区間判定処理が終了すれば、その後、送信区間判定処理の開始地点Taから送信区間判定処理の終了地点Tbまでの判定区間長Ljudgeと、判定走行時間Tjudgeを算出し、これらを広域無線通信手段4、或いは、狭域無線通信手段5を介してセンタ側に送信する。
【0079】
ここで、本実施の形態では、送信区間判定処理中でも、送信区間判定部14が走行方向の変化を検出可能なように構成されている。そして走行方向の変化を検出した場合には、走行方向の変化地点において、端末装置1を搭載した車両が右折、または、左折したと判断し、この地点を仮の送信区間判定終了地点とし、更に、そのまま送信区間判定処理を継続し、送信区間判定処理中の走行履歴に、右折、または、左折の走行状況があったと判断し、走行履歴送信時に走行履歴の一部として一緒に送信する。
【0080】
次に、狭域無線通信手段3、広域無線通信手段4をどのようにして選択するかについて説明する。
【0081】
図3に示すように、判定区間長Ljudge、或いは、判定走行時間Tjudgeの間に、走行速度データが、予め定めた規定の走行距離Lend、予め定めた規定の走行時間Tendの両方、若しくは、一方が経過するまでにたびたび送信区間判定閾値Vtraf以下になることがある。このような場合、判定区間長Ljudge、或いは、判定走行時間Tjudgeが非常に長くなることが考えられる。そこで、予め、最小許容距離Llow、最小許容時間Tlowを設定しておき、判定区間長Ljudge、判定走行時間Tjudgeをそれぞれこれらの最小許容距離Llow、最小許容時間Tlowと比較する。いずれか一方、若しくは、両方が最小許容値以上である場合、送信判定の対象となる走行履歴の条件を満たしたと判定し、条件を満たさなかった場合には、送信判定の対象外の走行履歴と判定する。
【0082】
送信判定の対象となる走行履歴の条件を満たした場合には、その走行履歴に関し、送信判定閾値Ttraf以下の走行区間の走行距離Llと走行時間Tl、送信判定閾値Ttraf以上の走行区間の走行距離Lhと走行時間Thをそれぞれ算出する。そして、送信判定閾値Ttraf以下の走行区間の走行距離Llと判定区間長Liudge、走行時間Tlと判定走行時間Tjudgeとの比率(Ll/Ljudge、Tl/Tjudge)をそれぞれ算出し、両方、若しくは、どちらか一方の比率が、予め定めた送信判定基準Rjudge以上であった場合には、該当する走行履歴を、広域無線通信手段4を用いてセンタ側に送信すると判定し、条件を満たさない場合は、該当する走行履歴を、狭域無線通信手段3を用いてセンタ側に送信すると判定する。なお、狭域無線通信手段を用いてセンタ側に送信すると判定した場合には、路側機5のある場所まで走行しないと、実際に送信できないので、それまでの間、送信待ちの状態にする。
【0083】
また、図4に示すように、判定区間長Ljudge、或いは、判定走行時間Tjudgeが極端に長くなって、走行履歴の送信が遅れるのを防止するため、予め、送信遅れ許容値として送信遅れ許容処理値Lmax、送信遅れ許容時間値Tmaxを設定しておく。そして、送信区間判定部14で送信区間判定処理を継続している間、送信区間判定処理の継続走行距離と継続走行時間について、それぞれ送信遅れ許容値(Lmax、Tmax)との比較をしておき、両方もしくはどちらか一方が送信遅れ許容値(Lmax、Tmax)以上になったとき、送信区間判定処理の開始地点Taから両方もしくはどちらか一方が送信遅れ許容値以上になった地点Teまでの走行履歴について、図3を用いて説明した前述の方法により、狭域通信手段3、或いは、広域無線通信手段4を用いて、端末装置1からセンタ側に送信する。
【0084】
なお、この場合も、広域無線通信手段4を用いて送信する場合は、直ちに送信可能であるが、狭域無線通信手段3を用いて送信する場合は、路側装置5のある場所でないと送信できないので、それまでは送信待ちの状態にする。
【0085】
このようにして、送信遅れ許容値(Lmax、Tmax)までの走行履歴を、広域無線通信手段4を用いて送信したり、狭域無線通信手段3を用いて送信すべく送信待ちにしたりした場合、その後も、それ以降の走行履歴について、送信区間判定部14で送信区間判定処理を継続して実行する。そして、図2で説明した方法で、送信区間判定処理の終了地点Tbを判定し、その終了地点Tbまでの走行履歴を次のようにしてセンタ側に送信する。
【0086】
すなわち、図4での判定処理において、広域無線通信手段4を用いて送信すると判定した場合には、図5に示すように、送信区間判定処理の開始地点Taからの走行距離、或いは、走行時間のいずれか一方、又は、両方が送信遅れ許容値(Lmax、Tmax)以上になった地点Teから送信区間判定処理の終了地点Tbまでの走行履歴についても、広域無線通信手段4を用いて送信すると判定する。
【0087】
図4での判定処理において、広域無線通信手段4を用いて送信すると判定しなかった場合には、送信区間判定処理の開始地点Ta以降の走行距離、或いは、走行時間のいずれか一方、又は、両方が送信遅れ許容値(Lmax、Tmax)以上になった地点Teから送信区間判定処理の終了地点Tbまでの走行履歴を、図3を用いて説明した方法により、狭域無線通信手段3、広域無線通信手段4のいずれを用いて送信するかの判定を行う。
【0088】
そして、この場合も、狭域無線通信手段を用いて送信すると判断した場合は、路側装置5のある場所まで送信待ちの状態にする。
【0089】
なお、図4、図5において、送信遅れ許容値(Lmax、Tmax)以上になった地点Teからの走行履歴について、送信区間判定部14で送信区間判定処理を継続し、送信区間判定処理の継続走行距離と継続走行時間が、更に、送信遅れ許容値Lmax、Tmax以上になった場合には、該当する走行履歴について、図4で説明した方法により、更に、広域無線通信手段4を用いて送信するかどうかの判定を行う。
【0090】
また、前記2つの判定方法を併用して広域無線通信手段4により送信した走行履歴は、次に狭域無線通信手段3、あるいは、広域無線通信手段4のどちらかで送信する。その際には、既に送信した送信履歴を送信しないように、走行履歴の記録部13から削除する、もしくは、フラグのような送信済みであることを示すタグを付加するなどの方法を用いることが望ましい。
【0091】
次に本発明の一実施の形態における走行履歴収集システムについて、その動作をより詳しく説明する。
【0092】
図6〜図9は、本発明の一実施の形態における走行履歴収集システムの各部の動作を示すフローチャートである。
【0093】
図6に示すように、走行履歴収集用の端末装置1は、車両情報収集部11において、車両センサ2から車両の位置や、走行速度、走行方向などの車両情報を取得する(S601)。取得した車両情報から走行履歴を生成し、走行履歴記録部12を介して走行履歴DB13に記録する(S602)。走行履歴が記録されると、その走行履歴(最新の走行履歴)の記録を送信区間判定部14に通知する(S603)。走行履歴の記録が通知されると、 走行履歴DB13に記録された走行履歴に基づいて、送信区間判定部14において、最新の走行履歴から一定の時間内、あるいは、一定の走行距離内の走行履歴を参照し、低速走行の区間長や走行方向等から送信区間の検出有無の判定を行う(S604)。
【0094】
送信区間判定部14において、送信区間有りと判定した場合(S604のYes)には、送信区間に該当する走行履歴を走行履歴DB13より取得し(S605)、送信区間に該当する走行履歴を走行履歴送信部15に転送し(S606)、転送終了後、再び、車両情報収集部11において、車両センサ2から最新の車両情報の取得を行う。
【0095】
送信区間判定部14において、送信区間無しと判定した場合(S604のNo)には、そのまま、引続いて、車両情報収集部11において、車両センサ2から最新の車両情報の取得を行う。
【0096】
走行履歴送信部15において、送信区間判定部14から送信区間に該当する走行履歴(渋滞区間の走行履歴)を取得した場合(S701)には、図7に示すように、まず、渋滞情報の送信待ち状態であるかどうかを判定し(S702)、送信待ち状態で無い場合(S702のNo)には、送信区間に該当する走行履歴を走行履歴DB13から取得し、狭域無線通信送信用データを作成し(S703)、最新の位置情報を1地点前の情報として記録し、送信区間判定地点からの走行距離Lと走行時間Tとを初期化し(S704)、渋滞情報送信待ち状態に移行する(S705)。
【0097】
渋滞情報の送信待ち状態の判定(S702)において、送信待ち状態と判定した場合(S702のYes)には、新しい送信区間に該当する走行履歴を走行履歴DB13から取得し、先に作成した送信用データ(S703で作成した送信用データ)に新たに追加し(S706)、路側装置の渋滞情報送信待ち状態を継続する(S707)。
【0098】
図8に示すように、走行履歴送信部15において、車両情報収集部11から最新の位置情報を取得した場合(S801)には、その後、渋滞情報送信待ち状態であるかどうかの判定を行い(S802)、渋滞情報送信待ち状態でない場合(S802のNo)には、走行履歴送信部15が狭域無線通信待ち状態に移行し(S810)、渋滞情報送信待ち状態の場合(S802のYes)には、最新の位置情報と1地点前の位置情報とを比較し、走行距離の差分Ldif、走行時間の差分Tdifをそれぞれ算出する(S803)。
【0099】
そして、算出した走行距離の差分Ldif、走行時間の差分Tdifを送信区間判定地点からの走行距離L、走行時間Tにそれぞれ加算し、最新の位置情報を1地点前の位置情報として記録更新する(S804)。
【0100】
更新された送信区間判定地点からの走行距離L及び走行時間Tについて、それぞれそれらが予め定めた許容距離Llim、許容時間Tlim内にあるかどうかの判定を行い(S805)、走行距離L及び走行時間Tが、両方とも許容距離Llim、許容時間Tlim内にある場合(S805のYes)には、走行履歴送信部15を狭域無線通信待ち状態に移行する(S811)。
【0101】
走行距離L及び走行時間Tの内、どちらか一方でも許容値(Llim、Tlim)を超えた場合(S805のNo)には、渋滞情報送信待ち状態を停止し(S806)、送信区間に該当する走行履歴から作成した送信データを、広域無線通信手段4を介して走行センタ側に送信する(S807)。そして、送信後、送信した送信区間の走行履歴を走行履歴DB13から削除し(S808)、走行履歴送信部15を狭域無線通信待ち状態に移行する(S809)。
【0102】
なお、ここで、許容値(Llim、Tlim)を負の値にすれば、送信区間判定部14で判定した送信区間に該当する走行履歴を、走行履歴送信部15において、直ちに広域無線通信手段4を用いて、走行履歴収集センタ装置7に対する送信処理を行うことができるようになる。許容値(Llim、Tlim)を正の値にした場合には、送信区間判定部14で判定した送信区間に該当する走行履歴を、走行履歴送信部15において、一時、送信待ち状態とすることができる。
【0103】
図8に示すように、狭域通信待ち状態(S810、S811)になると、走行履歴送信部15において、図9に示すように、常時、走行履歴収集用の端末装置1が狭域無線通信によるデータ通信が可能な地点に到達したかどうかの判定を実行する状態になる(S901)。その後、データ通信可能な地点に到達し、狭域無線通信が可能か否かを判定する(S902)。判定の結果、狭域無線通信が不可能である場合(S902のNo)には、そのまま、狭域無線通信によるデータ通信が可能な地点に到達したかどうかの判定を継続する(S901)。狭域無線通信が可能な地点に到達し、狭域無線通信可能となった場合(S902のYes)には、渋滞情報送信待ち情報の判定を行い(S903)、渋滞情報送信待ち状態ではない場合(S903のNo)には、走行履歴DB13に蓄積している走行履歴を全て取得し(S905)、渋滞情報送信待ち状態の場合(S903のYes)には、渋滞情報送信待ち状態を終了し(S904)、その後、走行履歴DB13に蓄積している走行履歴を全て取得する(S905)。
【0104】
そして、取得した走行履歴から狭域無線通信手段で送信する送信データを作成し(S906)、作成した送信データを、狭域無線通信手段3から路側装置5を介して走行履歴収集センタ装置7に送信する(S907)。送信した走行履歴は、先と同様、走行履歴DB13から削除し(S908)、再び、狭域無線通信によるデータ通信可能な地点に到達したかどうかの判定を実行する状態(S901)に戻り、同じ動作を繰り返す。
【0105】
図10、図11は、本発明の一実施の形態における走行履歴収集システムにおいて、走行履歴送信部15が、実際にどのようにして狭域無線通信手段3、広域無線通信手段4を選択するかを概念的に説明するための図である。
【0106】
図10(A)に示すように、走行している車両Mが送信区間(渋滞区間)Pを通過し、地点Qで送信区間(渋滞区間)を検出したとき、図10(B)に示すように、送信区間Pの検出地点Qから以降走行した走行距離L及び走行時間Tをそれぞれ算出する。走行距離L及び走行時間Tをそれぞれ算出した段階で、図10(B)に示すように、狭域無線通信用の路側装置5と走行車両Mとが通信可能な地点に到達していない場合には、走行距離L及び走行時間Tについてそれぞれ予め定めた許容走行距離Llimと許容走行時間Tlimとの比較を行う。比較の結果、走行距離L及び走行時間Tがそれぞれ許容走行距離Llim、許容走行時間Tlim内の場合は、広域無線通信手段4による送信待ちを継続し、どちらか一方でも許容走行距離Llim、許容走行時間Tlimを超えた場合には、広域無線通信手段4を用いて送信区間の走行履歴を走行車両Mから走行履歴収集センタ装置7に送信する。
【0107】
図10(C)に示すように、走行距離L及び走行時間Tが許容走行距離Llim、許容走行時間Tlimを超える前に、狭域無線通信手段3を用いて送信可能な地点Rに到達した場合には、走行車両Mで蓄積している全ての走行履歴を、送信区間に該当する部分も含めて、狭域無線通信手段3を用いて、走行車両Mから走行履歴収集センタ装置7に送信する。
【0108】
なお、ここで、許容走行距離Llimと許容走行時間Tlimとは、送信区間を端末装置1で検出し、広域無線通信手段4を用いて走行履歴収集センタ装置7に送信する前に、狭域無線通信手段3を用いて送信することが可能であるかどうかを判定する許容値である。
【0109】
このように、本実施の形態によれば、送信区間を、走行速度が予め定めた送信区間判定閾値より低下し、その後、閾値を越えて予め定めた一定時間又は一定距離継続して走行したときに検出するようにし、その検出を終えて、それ以降、予め定めた一定時間又は一定距離走行しても狭域無線通信手段を介して走行履歴を送信することができない場合に広域無線通信手段を介して送信するようにしており、送信区間を従来に比し正確に検出できると共に、広域無線通信手段、狭域無線通信手段を通して効率よく走行履歴を送信することができ、広域無線通信手段を通しての通信頻度を少なくすることができ、広域無線通信網の通信負担を少なくすることができるという効果を有する。
【0110】
また、本実施の形態によれば、判定区間長Ljudge、Tjudgeの最小許容距離Llow、最小許容時間Tlowや、送信遅れ許容値Lmax、Tmaxをそれぞれ設定するようにしており、端末装置から走行履歴を送信するまでの送信遅れ時間を予め定めた一定範囲内にすることができ、大きな送信遅れが生じることがないという効果を有する。
【0111】
なお、送信区間の判定に用いる閾値Vtrafや、判定区間長Ljudge、Tjudgeの比較に用いる最小許容距離Llow、最小許容時間Tlow、送信遅れ許容値Lmax、Tmax、許容走行時間Tlim、許容走行距離Llimなどは、走行履歴を収集する端末装置を搭載した車両が実際に走行する道路の状況、種別などに応じてそれぞれ任意に設定できるようにしておけばよい。このようにしておけば、より効果的に走行履歴から送信手段を選択することが可能になる。
【0112】
例えば、道路種別として、非常に高速で走行する都市間の高速道路、都市内の高速道路と自動車専用道路、国道や都道府県道などの一般道の3種類に分類し、それぞれの比較基準となる閾値などを、図11に示すように、それぞれ異なるように設定することが可能である。このように設定すれば、それぞれの道路に応じて、どの程度走行速度が低下すれば渋滞と言うか、どの程度走行すれば送信を行うかなど、それぞれ個別に設定でき、より効率的になる。また、図11は、単なる一例であり、道路の状況や季節、地域などにより変更することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0113】
本発明は、車両の走行データを検出する車両センサと、車両センサからの走行データを基に車両の走行履歴を生成し記録する記録手段と、記録した走行履歴から送信区間の判定を行う送信区間判定手段と、判定された送信区間の走行履歴をセンタに送信する走行履歴送信手段とを備え、送信区間判定手段が、走行履歴に含まれる走行速度が最初に閾値以下になったとき、その地点を送信区間判定の開始地点とし、その後、速度データが閾値以上になり閾値以上の状態を予め定めた規定期間を超えて継続した場合、速度データが閾値以上になった地点を送信区間判定の終了地点として送信区間を判定するように構成したものであり、走行速度が最初に閾値以下になったとき、その地点を送信区間判定の開始地点とし、その後、速度データが閾値以上になっても、閾値以上の状態が予め定めた規定期間を超えない限り送信区間判定の終了地点として判定しないため、それまでの間に閾値以上の地点があっても、それらを含め全て閾値以下として所謂渋滞、事故などの渋滞区間と判定することになり、それをセンタに送信するため、送信頻度を少なくすることができ、しかも、渋滞区間もより効率的に判定することができ、走行履歴収集システムとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0114】
【図1】本発明の一実施の形態における送信履歴収集システムの概略構成を示すブロック図
【図2】(A)本発明の一実施の形態における送信履歴収集システムにおいて送信区間内に閾値以上の区間がない場合の判定を説明する模式図(B)同システムにおいて送信区間内に閾値以上の区間がある場合の判定を説明する模式図
【図3】本発明の一実施の形態における送信履歴収集システムにおいて走行履歴の送信方法を説明する第1の模式図
【図4】本発明の一実施の形態における送信履歴収集システムにおいて走行履歴の送信方法を説明する第2の模式図
【図5】本発明の一実施の形態における送信履歴収集システムにおいて走行履歴の送信方法を説明する第3の模式図
【図6】本発明の一実施の形態における送信履歴収集システムにおいて送信区間を判定し走行履歴を蓄積する場合の動作を示すフローチャート
【図7】本発明の一実施の形態における送信履歴収集システムにおいて送信データを作成する場合の動作を示すフローチャート
【図8】本発明の一実施の形態における送信履歴収集システムにおいて送信データを広域無線通信手段を用いて送信する場合の動作を示すフローチャート
【図9】本発明の一実施の形態における送信履歴収集システムにおいて送信データを狭域無線通信手段を用いて送信する場合の動作を示すフローチャート
【図10】(A)本発明の一実施の形態における送信履歴収集システムにおいて送信データを広域無線通信手段を用いて送信する場合の動作を示す第1の模式図(B)同第2の模式図(C)同第3の模式図
【図11】本発明の一実施の形態における送信履歴収集システムにおいて送信区間の判定や送信時期、送信手段の選択などに用いる閾値、許容値などの具体的な例を示す図
【符号の説明】
【0115】
1 端末装置
2 車両センサ
3 狭域無線通信手段
4 広域無線通信手段
5 路側装置
6 広域無線通信アンテナ
7 走行履歴収集センタ装置
11 車両情報収集部
12 走行履歴記録部
13 走行履歴DB
14 送信区間判定部
15 走行履歴送信部
21 GPS装置
22 角速度センサ
23 車速センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車速情報を含む車両情報を検出する車両検出手段と、前記車両検出手段からの前記車両情報を基に前記車両の走行履歴を生成し記録する記録手段と、前記記録手段に記録した前記走行履歴から前記走行履歴の送信区間の判定を行う送信区間判定手段と、前記判定された前記送信区間の前記走行履歴をセンタ手段に送信する走行履歴送信手段とを備え、前記送信区間判定手段は、前記走行履歴に含まれる前記車速情報が最初に閾値以下になった際の地点を送信区間判定の開始地点とし、前記車速情報が前記閾値以上になり、前記閾値以上の状態が予め定めた期間を超えて継続した場合に、前記車速情報が前記閾値以上になった地点を前記送信区間判定の終了地点として前記送信区間を判定することを特徴とする走行履歴収集システム。
【請求項2】
前記予め定めた期間が、前記車速情報が前記閾値以上になってから、予め定めた所定の走行距離、または予め定めた所定の走行時間のいずれか一方、または両方で定められることを特徴とする請求項1記載の走行履歴収集システム。
【請求項3】
前記走行履歴は、前記車両の渋滞または事故の道路状況を表す履歴を含むことを特徴とする請求項1または2記載の走行履歴収集システム。
【請求項4】
前記送信区間判定手段は、前記車速情報が前記閾値以上になってから予め定めた期間継続しない場合には、前記送信区間判定の終了地点として判定しないことを特徴とする請求項1から3までのうちのいずれかに記載の走行履歴収集システム。
【請求項5】
前記走行履歴送信手段は、前記送信区間判定手段が前記判定の終了地点を判定した際に、前記判定の開始地点から終了地点までの前記送信区間の前記走行履歴を前記センタ手段に送信することを特徴とする請求項1から4までのうちのいずれかに記載の走行履歴収集システム。
【請求項6】
前記走行履歴送信手段は、前記送信区間が、予め定めた判定区間最小許容値を超えた場合に、前記送信区間の走行履歴を広域無線通信手段または狭域無線通信手段を用いて前記センタ手段に送信し、前記予め定めた判定区間最小許容値を超えない場合に、前記狭域無線通信手段を用いて前記センタ手段に送信することを特徴とする請求項1から5までのうちのいずれかに記載の走行履歴収集システム。
【請求項7】
前記判定区間最小許容値は、予め定めた判定区間最小許容距離または予め定めた判定区間最小許容時間のいずれか一方、または両方であることを特徴とする請求項6記載の走行履歴収集システム。
【請求項8】
前記走行履歴送信手段は、前記車両情報が前記閾値以上になった場合でも前記予め定めた期間を超えて継続しない状態があった場合、前記継続しない状態の期間の合計と前記継続しない状態以外の状態における期間の合計の少なくとも一方の期間と前記送信区間との比率を基に、前記送信区間の前記走行履歴を前記広域無線通信手段で送信するか前記狭域無線通信手段で送信するかを選択することを特徴とする請求項1から7までのうちのいずれかに項記載の走行履歴収集システム。
【請求項9】
前記少なくとも一方の期間と前記送信区間との比率が、予め定めた送信判定基準値より大きい場合は前記広域無線通信手段を用いて送信し、小さい場合は前記狭域無線通信手段を用いて送信することを特徴とする請求項8記載の走行履歴収集システム。
【請求項10】
前記走行履歴送信手段は、前記送信区間の終了地点を判定しない場合でも、前記送信区間の判定開始地点より予め定めた送信遅れ許容値に達したとき、それまでの前記走行履歴の送信を行なうことを特徴とする請求項1から9までのうちのいずれかに記載の走行履歴収集システム。
【請求項11】
前記送信遅れ許容値は、前記送信区間の前記判定開始地点より予め定めた一定距離、または一定時間のいずれか一方、または両方であることを特徴とする請求項10記載の走行履歴収集システム。
【請求項12】
前記走行履歴送信手段は、前記走行履歴の送信の際に、前記送信遅れ許容値までの区間が予め定めた判定区間最小許容値を超えた場合、前記送信遅れ許容値までの区間の前記走行履歴を前記広域無線通信手段を用いて送信し、前記予め定めた判定区間最小許容値を超えない場合、前記狭域無線通信手段を用いて送信することを特徴とする請求項10または11記載の走行履歴収集システム。
【請求項13】
前記走行履歴送信手段は、前記送信履歴の送信の際に、前記送信遅れ許容値までの前記速度情報が前記閾値以上になった場合でも、前記予め定めた所定区間を超えて継続しない状態があった場合、前記継続しない区間の合計とそれ以外の区間の合計の少なくとも一方の区間と前記送信遅れ許容値までの区間との比率を基に、前記送信遅れ許容値までの前記走行履歴を前記広域無線通信手段で送信するか、前記狭域無線通信手段で送信するかを選択することを特徴とする請求項10または11記載の走行履歴収集システム。
【請求項14】
前記走行履歴送信手段は、前記送信区間の判定開始地点より前記予め定めた前記送信遅れ許容値に達した後も、前記予め定めた送信遅れ許容値に達するごとに、前記送信遅れ許容値の間の走行履歴をそれぞれ送信することを特徴とする請求項10から13までのうちのいずれかに記載の走行履歴収集システム。
【請求項15】
前記走行履歴送信手段は、前記予め定めた送信遅れ許容値に達した後に前記送信区間判定終了地点を判定した際、前記送信遅れ許容値に達した地点から前記送信区間判定終了地点までの区間の前記走行履歴を、前記送信遅れ許容値に達するまでの区間の前記走行履歴の送信状況に応じて前記広域無線通信手段または前記狭域無線通信手段のいずれか一方で送信することを特徴とする請求項10から14までのうちのいずれかに記載の走行履歴収集システム。
【請求項16】
前記走行区間判定手段は、前記走行区間の判定開始地点から判定終了地点までの間に存在する前記車両の右左折地点を検出する検出手段を有し、前記記録手段は、前記検出手段によって前記右左折地点が検出された場合、前記右左折地点から前記判定終了地点までの走行履歴を生成することを特徴とする請求項1から15までのうちのいずれかに記載の走行履歴送信システム。
【請求項17】
前記送信区間判定手段によって判定する送信区間を決定する定数、および前記走行履歴送信手段によって選択する無線通信手段を決定する定数を、前記車両が走行する道路の種別に応じて異なる値に設定可能であることを特徴とする請求項1から16のうちのいずれかに記載の走行履歴収集システム。
【請求項18】
前記定数に、前記送信区間判定の開始地点および終了地点をそれぞれ判定する閾値、前記終了判定用の走行区間長、走行時間、判定区間最小許容距離、判定区間最小許容時間、送信判定基準値、送信遅れ許容距離、送信遅れ許容時間、狭域無線通信待ち許容距離、狭域無線通信待ち許容距離のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項17記載の走行履歴収集システム。
【請求項19】
前記走行履歴送信手段は、前記狭域無線通信手段を用いて前記走行履歴を送信する際に、前記センタ手段と通信可能な状態になるまで、前記走行履歴の送信を待機することを特徴とする請求項6から18のいずれかに記載の走行履歴収集システム。
【請求項20】
前記送信を待機する状態が、予め定めた狭域無線通信待ち許容距離、または予め定めた狭域無線通信待ち許容時間のいずれか一方、または両方を越えたとき、前記広域無線通信手段を用いて前記走行履歴を送信することを特徴とする請求項19記載の走行履歴収集システム。
【請求項21】
車両の車速情報を含む車両情報を検出する車両検出手段と、前記車両検出手段からの前記車両情報を基に前記車両の走行履歴を生成し記録する記録手段と、前記記録手段に記録した前記走行履歴から前記走行履歴の送信区間の判定を行う送信区間判定手段と、前記判定された前記送信区間の前記走行履歴をセンタ手段に送信する走行履歴送信手段とを備え、前記送信区間判定手段は、前記走行履歴に含まれる前記車速情報が最初に閾値以下になった際の地点を送信区間判定の開始地点とし、前記車速情報が前記閾値以上になり、前記閾値以上の状態が予め定めた期間を超えて継続した場合に、前記車速情報が前記閾値以上になった地点を前記送信区間判定の終了地点として前記送信区間を判定することを特徴とする車載装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2006−79504(P2006−79504A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−265149(P2004−265149)
【出願日】平成16年9月13日(2004.9.13)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】