説明

走行支援装置及び走行支援方法

【課題】 交差点を通過すべき車両の前方に、停止線の手前で停止可能な車両が走行している場合、又は停止すべき車両の後方に、交差点を通過することができる車両がある場合に生じる交差点での追突事故を防ぐ走行支援装置及び走行支援方法を提供する。
【解決手段】 交差点へ向かう複数の車両の走行速度及び走行位置に基づいて、車両が交差点手前の特定領域に入るか否かを判定して、特定領域に入ると判定した車両に通過/停止すべき旨の情報を送信することにより、車両の走行を支援するようにしてある走行支援装置に、通過/停止すべき旨の情報を送信した車両の前方/後方における他の車両の有無を車両の走行位置に基づいて判定する判定手段と、判定手段が有りと判定した場合、他の車両に通過/停止すべき旨の情報を送信する手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、取得した車両の走行位置及び走行速度に基づいて、交差点を通過又は停止すべき旨の情報を送信することにより車両の走行を支援する走行支援方法及び該走行支援方法を実現する走行支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の走行支援装置は、車両の走行位置及び走行速度を車両から取得し、取得した走行位置及び走行速度に基づいて、停止線の手前で車両を停止すべきか否かの判断が困難な走行領域に車両があるか否かを、信号機が青色から黄色に切り替えられる前に判定する。
【0003】
停止線の手前で車両を停止させるべきか否かの判断が困難な走行領域には、信号機が黄色から赤色に切り替わる前に、車両が停止線を越えることができず、減速したとしても停止線の手前で停止することができない走行領域(ジレンマゾーン)と、信号機が黄色から赤色に切り替わる前に、車両が停止線を越えることができ、減速した場合、停止線の手前で停止することができる走行領域(オプションゾーン)とがある。走行している車両が前記走行領域にある場合、該車両の運転者は、停止線の手前で車両を停止すべきか否かためらうため、停止線の手前で減速する車両と、走行を続ける車両とが混在する場合が生じ、追突事故が発生する虞がある(「交通信号の手引」,社団法人 交通工学研究会,平成6年7月,p.40−41,61−63)。
【0004】
走行支援装置は、車両が前記走行領域にあると判定した場合、信号機が青色から黄色に切り替わる前に、前記走行領域にある旨の情報を前記車両に送信して、車両の運転者に予め注意を促すことにより、追突事故を防止する。
【0005】
なお、前記走行領域にある旨の情報を受信した車両の運転者の多くは、交差点を通過すべきと判断する。なぜなら、前記走行領域、特にジレンマゾーンに車両がある場合であっても、信号機が黄色から赤色に切り替わった後に交差点内のすべての信号機が赤色となる時間があるため、交差点進入側の道路に交差する道路側の信号機が青色に切り替わる前に交差点を通過することができ、また、交差点を通過することにより、後方の車両による追突事故を防ぐことができるからである。オプションゾーンに車両がある場合も、交差点を通過することにより、追突事故を防ぐことができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の走行支援装置においては、走行している車両の前方又は後方の車両の走行状態を考慮することなく、前記走行領域にあることを車両毎に判断して、前記走行領域にある旨の情報を送信していたため、前記走行領域にあることを認識し、交差点を通過すべきと判断した運転者の車両の前方に、停止線の手前で停止することができる車両が走行していた場合、該車両が減速したとき、前方の車両に後方の車両が追突する虞があるという問題があった。
【0007】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、交差点を通過すべき特定領域、つまり停止線の手前で停止することができない領域にある車両と、該車両の前方を走行している車両夫々に交差点を通過すべき旨の情報を送信することにより、交差点を通過すべき車両の前方に、停止線の手前で停止することができる車両が走行している場合に生じる交差点での追突事故を防ぐことができる走行支援方法及び該走行支援方法を実現する走行支援装置を提供することを目的とする。
【0008】
また、交差点を通過すべき旨の情報を送信した車両が交差点を通過する通過予定時刻を算出し、交差点進入側の道路に交差した道路の信号機を、赤色から青色に切り替える時刻を、算出した通過予定時刻に変更することにより、交差点を通過すべき旨の情報を受信した車両と、交差点進入側の道路に交差した道路から交差点に進入してくる車両との衝突事故を防ぐことができる走行支援方法及び該走行支援方法を実現する走行支援装置を提供することを他の目的とする。
【0009】
停止線の手前で停止すべき特定領域、つまり停止線の手前で停止することができる領域にあると判定した車両と、該車両の後方を走行している車両夫々に停止すべき旨の情報を送信することにより、停止すべき車両の後方に、交差点を通過することができる車両がある場合に生じる交差点での追突事故を防ぐことができる走行支援方法及び該走行支援方法を実現する走行支援装置を提供することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1発明に係る走行支援装置は、交差点へ向かう複数の車両の走行速度及び走行位置に基づいて車両が交差点手前の特定領域に入るか否かを判定して、前記特定領域に入ると判定した車両に交差点を通過すべき旨の情報を送信することにより、車両の走行を支援するようにしてある走行支援装置において、交差点を通過すべき旨の情報を送信した車両の前方における他の車両の有無を車両の走行位置に基づいて判定する判定手段と、該判定手段が有りと判定した場合、前記他の車両に交差点を通過すべき旨の情報を送信する手段とを備えることを特徴とする。
【0011】
第2発明に係る走行支援装置は、車両の走行速度に基づいて、前記特定領域に入ると判定した車両が交差点を通過する通過予定時刻を算出する算出手段と、該算出手段が算出した通過予定時刻が、前記車両が走行している道路に交差した道路の信号機が赤色から青色に切り替わる切替時刻より後か否かを判定する前後判定手段と、該前後判定手段が、前記通過予定時刻が前記切替時刻よりも後であると判定した場合、前記切替時刻を前記通過予定時刻に変更する手段とを備えることを特徴とする。
【0012】
第3発明に係る走行支援装置は、交差点へ向かう複数の車両の走行速度及び走行位置に基づいて車両が交差点手前の特定領域に入るか否かを判定して、前記特定領域に入ると判定した車両に停止すべき旨の情報を送信することにより、車両の走行を支援するようにしてある走行支援装置において、停止すべき旨の情報を送信した車両の後方における他の車両の有無を車両の走行位置に基づいて判定する判定手段と、該判定手段が有りと判定した場合、前記他の車両に停止すべき旨の情報を送信する手段とを備えることを特徴とする。
【0013】
第4発明に係る走行支援方法は、交差点へ向かう複数の車両の走行速度及び走行位置に基づいて車両が交差点手前の特定領域に入るか否かを判定し、前記特定領域に入ると判定した車両に交差点を通過すべき旨の情報を送信することにより、車両の走行を支援する走行支援方法において、交差点を通過すべき旨の情報を送信した車両の前方における他の車両の有無を車両の走行位置に基づいて判定し、有りと判定した場合、前記他の車両に交差点を通過すべき旨の情報を送信することを特徴とする。
【0014】
第5発明に係る走行支援方法は、走行速度に基づいて、前記特定領域に入ると判定した車両が交差点を通過する通過予定時刻を算出し、算出した通過予定時刻が前記車両が走行している道路に交差した道路の信号機が赤色から青色に切り替わる切替時刻より後か否かを判定し、前記通過予定時刻が、前記切替時刻よりも後であると判定した場合、前記切替時刻を前記通過予定時刻に変更することを特徴とする。
【0015】
第6発明に係る走行支援方法は、交差点へ向かう複数の車両の走行速度及び走行位置に基づいて車両が交差点手前の特定領域に入るか否かを判定し、前記特定領域に入ると判定した車両に停止すべき旨の情報を送信することにより、車両の走行を支援する走行支援方法において、停止すべき旨の情報を送信した車両の後方における他の車両の有無を車両の走行位置に基づいて判定し、有りと判定した場合、前記他の車両に停止すべき旨の情報を送信することを特徴とする。
【0016】
第1及び第4発明にあっては、特定領域に入る車両に交差点を通過すべき旨の情報を送信とともに、交差点を通過すべき旨の情報を送信した車両の前方に他の車両があるか否かを、車両の走行位置に基づいて判定し、有りと判定した場合、他の車両に交差点を通過すべき旨の情報を送信する。従って、交差点を通過すべき旨の情報を受信した車両の前方にある他の車両は、該車両の走行状態に関わりなく交差点を通過すべき旨の情報を受信する。交差点を通過すべき旨の情報を受信した他の車両が交差点を通過する場合、前記特定領域に入る車両が、該車両の前方にある他の車両に追突する虞はない。
【0017】
第2及び第5発明にあっては、交差点を通過すべき旨の情報を受信した車両が交差点を通過する通過予定時刻を算出する。そして、前記車両が走行している道路に交差した道路の信号機が赤色から青色に切り替わる切替時刻より、通過予定時刻の方が後である場合、切替時刻を算出した通過予定時刻に変更する。従って、前記車両は、前記交差した道路の信号機が赤色から青色に切り替わる前に交差点を通過することができる。
【0018】
第3及び第6発明にあっては、特定領域に入る車両に停止すべき旨の情報を送信するとともに、停止すべき旨の情報を送信した車両の後方に他の車両があるか否かを、車両の走行位置に基づいて判定し、有りと判定した場合、他の車両に停止すべき旨の情報を送信する。従って、停止すべき旨の情報を受信した車両の後方にある他の車両は、該車両の走行状態に関わりなく停止すべき旨の情報を受信する。停止すべき旨の情報を受信した他の車両が停止する場合、前記特定領域に入る車両に、該車両の後方にある他の車両が追突する虞はない。
【発明の効果】
【0019】
第1及び第4発明によれば、複数の車両の走行状態を考慮して各車両に走行方法を示す情報を送信することにより、交差点を通過すべき車両の前方に、停止線の手前で停止することができる車両が走行している場合に生じる交差点での追突事故を防ぐことができる。
【0020】
第2及び第5発明によれば、交差点を通過すべき旨の情報を受信した車両と、交差点進入側の道路に交差した道路から交差点に進入してくる車両との衝突事故を防ぐことができる。
【0021】
第3及び第6発明によれば、複数の車両の走行状態を考慮して各車両に走行方法を示す情報を送信することにより、停止すべき車両の後方に、交差点を通過することができる車両がある場合に生じる交差点での追突事故を防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。
【0023】
図1は、走行支援システムを示すブロック図であり、図2は、走行支援システムの全体構成図である。
【0024】
図中1は、本発明の実施の形態に係る走行支援装置であり、走行支援装置1は、進入側道路R1を走行している各車両Aiから送信された各車両Aiに関するデータを受信し、受信したデータに基づいて各車両Aiの走行方法を示すための情報を各車両Aiに送信することにより、車両Aiの走行を支援する。iは、走行支援装置1とデータを送受信する複数の車両夫々を示す自然数である。また、走行支援装置1は、進入側道路R1の路肩に設けられた信号機4、及び進入側道路R1に交差した交差道路R2の路肩に設けられた信号機5を制御する信号制御装置2との間で信号機4及び信号機5の信号切替に関するデータを入出力して、信号切替を間接的に制御する。実施の形態に係る走行支援システムは、車両Aiが備えていて、走行支援装置1との間で車両Aiに関するデータを送受信する装置、走行支援装置1、及び信号制御装置2から構成されている。
【0025】
図3は、走行支援装置の構成を示すブロック図である。走行支援装置1は、進入側道路R1を走行している車両Aiとの間でデータを無線で送受信するためのアンテナ12a及び送受信部12と、送受信するデータを記憶する記憶部11とを備えている。送受信部12によるデータの送受信は、マイクロコンピュータからなる制御部10により制御される。制御部10は、交差点手前の停止線Sの中心位置(X0,Z0)、及び運転者の反応遅れ時間τ=1(秒)、車両の最大減速度d=0.3g(g=9.8(m/s 2):重力加速度)、停止線Sと交差点入口との距離を含む交差道路R2の幅Wを記憶している。制御部10には、信号制御装置2の信号切替に関するデータが入出力するインタフェース13が設けられており、インタフェース13から入力したデータ、記憶部11が記憶したデータ、及び制御部10が記憶しているデータに基づいて、各車両Aiの走行方法、即ち交差点を通過すべきか又は停止すべきかを判断し、判断した走行方法を示す情報を送受信部12及びアンテナ12aから各車両Aiに送信する。また、走行支援装置1は、時計部14を備えている。
【0026】
図4は、信号制御装置の構成を示すブロック図である。信号制御装置2は、信号機4及び信号機5の信号切替を制御するための制御部20を備えている。制御部20には、信号機4を青色から黄色に切り替える黄色切替時刻Ty、黄色点灯時間Y=4(秒)、信号機5を赤色から青色に切り替える青色切替時刻Tgを記憶している記憶部21、及び時計部23が設けられている。また、制御部20は、信号機4及び信号機5の信号切替を制御する制御信号を信号機4及び信号機5に出力するためのインタフェース22を備えている。インタフェース22には、走行支援装置1も接続されていて、信号切替に関するデータが入出力される。
【0027】
図5は、車両の一部の構成を示すブロック図である。車両Aiには、マイクロコンピュータからなる制御部30が設けられており、制御部30には、車両Ai毎に異なり、車両Aiを識別するための車両識別情報Kiを記憶した記憶部31、車両Aiの走行位置(Xi,Zi)、車両Aiの走行速度Viを取得する走行情報取得部32、時計部33を備えている。制御部30は、記憶部31が記憶している車両識別情報Ki、走行情報取得部32が取得した走行速度Vi、走行位置(Xi,Zi)、及び時計部33が計時している時刻Tiのデータを、アンテナ34aで走行支援装置1へ送信し、走行支援装置1から送信されたデータを受信する送受信部34を備えている。走行情報取得部32は、車両Aiの走行速度Viを検出する走行速度検出装置、及び車両Aiの走行位置(Xi,Zi)を特定するカーナビゲーションシステムから構成されている。また、制御部30には、走行支援装置1から送信されたデータに基づいて車両Aiの運転者に、交差点Cを通過又は停止すべき旨の情報を音声、又は映像等で通知する通知部35が接続されている。
【0028】
図6は、制御部の走行支援に係る処理手順を示すフローチャートである。制御部10は、各車両Aiから送信された車両識別情報Ki、走行時刻Ti、走行位置(Xi,Zi)、及び走行速度Viを示す情報を受信し、受信した順に該情報を送信した各車両Aiに付した自然数i、受信した車両識別情報Ki、走行時刻Ti、走行位置(Xi,Zi)、及び走行速度Viを対応付けしたテーブルとして記憶部11に記憶させる(ステップS1)。また、制御部10は、インタフェース13を介して信号制御装置2から黄色切替時刻Ty、黄色点灯時間Y、及び青色切替時刻Tgを取得する(ステップS2)。
【0029】
そして、制御部10は、ステップS1で受信した情報に係る各車両Aiの車両台数Nが1以上であるか否かを判定する(ステップS3)。車両台数Nが1以上であると判定した場合(ステップS3:YES)、制御部10は、ステップS1で取得した走行位置(Xi,Zi)及び、記憶部11が記憶している停止線Sの中心位置(X0,Z0)に基づいて、各車両Aiについて距離Di(T)、距離Di(Ty)、停止距離L1i、及び走行距離L2iを算出する(ステップS4)。距離Di(T)、距離Di(Ty)、停止距離L1i、及び走行距離L2iは、下記式(1),(2),(3),(4)で表される。
Di(T)={(Xi‐X0) 2+(Zi‐Z0) 2 1/2‐Vi・(T−Ti)…(1)
Di(Ty)={(Xi‐X0) 2+(Zi‐Z0) 2 1/2‐Vi・(Ty−Ti)…(2)
L1i=τ・Vi+Vi 2/2d…(3)
L2i=Vi・Y…(4)
【0030】
但し、Di(T)は、時刻Tiから、時計部14が計時している現在の時刻Tまで、車両Aiが等速度Viで走行していると仮定した場合の時刻Tでの車両Aiの走行位置と停止線の中心位置との距離である。Di(Ty)は、時刻Tiから時刻Tyまで、車両Aiが等速度Viで走行していると仮定した場合の時刻Tyでの車両Aiの走行位置と停止線の中心位置との距離である。
【0031】
図7は、停止距離及び走行距離と、走行速度との関係を示すグラフである。停止距離L1i=τ・Vi+Vi 2/2dは、黄色切替時刻Tyで信号機4が青色から黄色に切り替わり、走行速度Viで走行している車両Aiの運転者が反応遅れ時間τ秒後にブレーキ操作をした場合、時間Tyから車両Aiが停止するまでに走行する距離である。上記式(3)中、τ・Viは、反応遅れ時間τ秒で車両Aiが走行する距離であり、Vi 2/2dは、走行速度Viの車両Aiが最大減速度dで減速して停止するまでに走行する距離である。走行距離L2i=Y・Viは、走行速度Viで等速走行している車両Aiが黄色点灯時間Yで走行する距離である。
【0032】
次いで、制御部10は、通過最後尾車両p及び停止先頭車両qの特定に関するサブルーチンを呼び出す(ステップS5)。通過最後尾車両pは、交差点Cを通過すべき車両Ai中、最後尾の車両Aiを示しており、停止先頭車両qは、停止すべき車両Ai中、先頭の車両Aiを示している。
【0033】
図8は、通過最後尾車両p及び停止先頭車両qの特定に関するサブルーチンの処理手順を示すフローチャートである。通過最後尾車両p及び停止先頭車両qの特定に関するサブルーチンが呼び出された場合、制御部10は、変数のp及びqに0を初期設定する(ステップS11)。p又はqの値が0の場合、通過最後尾車両p又は停止先頭車両qが特定されていない状態を示している。
【0034】
また、制御部10は、通過最後尾車両pの走行位置と停止線Sの中心位置との距離Dpに0を初期設定し(ステップS12)、停止先頭車両qの走行位置と停止線Sの中心位置との距離Dqに車両Aiとの通信限界距離を示すDmaxを初期設定する(ステップS13)。
【0035】
次いで、制御部10は、変数のiに1を設定する(ステップS14)。そして、制御部10は、距離Di(Ty)が停止距離L1iより小さいか否かを判定する(ステップS15)。距離Di(Ty)が停止距離L1iより小さいと判定した場合(ステップS15:YES)、制御部10は、距離Di(T)が通過最後尾車両pの走行位置と停止線Sの中心位置との距離Dpより大きいか否かを判定する(ステップS16)。距離Di(T)が距離Dpより大きいと判定した場合(ステップS16:YES)、制御部10は、pにiを設定し(ステップS17)、距離Dpに距離Di(T)を設定する(ステップS18)。
【0036】
距離Di(Ty)が停止距離L1i以上であると判定した場合(ステップS15:NO)、制御部10は、距離Di(Ty)が走行距離L2iより大きいか否かを判定する(ステップS19)。
【0037】
距離Di(Ty)が走行距離L2iより大きいと判定した場合(ステップS19:YES)、制御部10は、距離Di(T)が、停止先頭車両qの走行位置と停止線Sの中心位置との距離Dqより小さいか否かを判定する(ステップS20)。距離Di(T)が距離Dqより小さいと判定した場合(ステップS20:YES)、制御部10は、qにiを設定し(ステップS21)、距離Dqに距離Di(T)を設定する(ステップS22)。
【0038】
ステップS22又はステップS18の処理を終えた場合、距離Di(T)が距離Dq以上であると判定した場合(ステップS20:NO)、距離Di(Ty)が停止距離L2i以下であると判定した(ステップS19:NO)、又は距離Di(T)が距離Dp以下であると判定した場合(ステップS16:NO)、制御部10は、iと車両台数Nとが等しいか否かを判定する(ステップS23)。
【0039】
iと車両台数Nとが等しいと判定した場合(ステップS23:YES)、通過最後尾車両p及び停止先頭車両qの特定に関するサブルーチンの処理を終える。iと車両台数Nとが等しくないと判定した場合(ステップS23:NO)、制御部10は、iに1を加算し(ステップS24)、処理をステップS15へ戻す。
【0040】
通過最後尾車両p及び停止先頭車両qの特定に関するサブルーチンの処理を終えた場合、制御部10は、図6に示すように通過又は停止すべき旨の情報の送信に関するサブルーチンを呼び出す(ステップS6)。
【0041】
図9は、通過又は停止すべき旨の情報の送信に関するサブルーチンの処理手順を示すフローチャートである。通過又は停止すべき旨の情報の送信に関するサブルーチンが呼び出された場合、制御部10は、pが0より大きいか否かを判定する(ステップS31)。pが0より大きい場合、通過最後尾車両pが特定されている状態である。
【0042】
pが0より大きいと判定した場合(ステップS31:YES)、制御部10は、iに1を設定する(ステップS32)。次いで、距離Di(T)が距離Dp(T)以下であるか否かを判定する(ステップS33)。距離Di(T)が距離Dp(T)以下であると判定した場合(ステップS33:YES)、制御部10は、車両識別情報Kiの車両Aiに、交差点Cを通過すべき旨の情報を送信する(ステップS34)。
【0043】
より具体的には、交差点Cを通過すべき旨の情報と、該情報の送信先を示す車両識別情報Kiとを含む情報を送信する。該情報を受信した各車両Aiは、各車両Aiが記憶している車両識別情報Kiと、走行支援装置1から送信された車両識別情報Kiとを比較し、夫々の車両識別情報Kiが一致した場合、受信した情報に基づいて、通知部35から運転者に交差点Cを通過すべき旨を通知する。
【0044】
距離Di(T)が距離Dp(T)より大きいと判定した場合(ステップS33:NO)、制御部10は、車両識別情報Kiの車両Aiに、停止すべき旨の情報を送信する(ステップS35)。該情報を受信した車両Aiの通知部35は、運転手に停止すべき旨を通知する。
【0045】
車両Aiの送受信部34が交差点Cを通過すべき旨の情報、又は停止すべき旨の情報を受信した場合、制御部30は、通知部35を通じて、交差点Cを通過すべき旨又は停止すべき旨を運転者に通知する。
【0046】
ステップS34又はステップS35の処理を終えた場合、制御部10は、iと車両台数Nとが等しいか否かを判定する(ステップS36)。iと車両台数Nとが等しいと判定した場合(ステップS36:YES)、制御部10は、通過又は停止すべき旨の情報の送信に関するサブルーチンの処理を終える。
【0047】
iと車両台数Nとが等しくないと判定した場合(ステップS36:NO)、制御部10は、iに1を加算し(ステップS37)、処理をステップS33へ戻す。
【0048】
pが0より大きくないと判定した場合(ステップS31:NO)、制御部10は、iに1を設定する(ステップS38)。次いで、距離Di(T)が距離Dq(T)以上であるか否かを判定する(ステップS39)。距離Di(T)が距離Dq(T)以上であると判定した場合(ステップS39:YES)、制御部10は、車両識別情報Kiの車両Aiに、停止すべき旨の情報を送信する(ステップS40)。
【0049】
距離Di(T)が距離Dq(T)より小さいと判定した場合(ステップS39:NO)、制御部10は、車両識別情報Kiの車両Aiに、交差点Cを通過すべき旨の情報を送信する(ステップS41)。
【0050】
ステップS40又はステップS41の処理を終えた場合、制御部10は、iと車両台数Nとが等しいか否かを判定する(ステップS42)。iと車両台数Nとが等しいと判定した場合(ステップS42:YES)、制御部10は、通過又は停止すべき旨の情報の送信に関するサブルーチンの処理を終える。
【0051】
iと車両台数Nとが等しくないと判定した場合(ステップS42:NO)、制御部10は、iに1を加算し(ステップS43)、処理をステップS39へ戻す。
【0052】
通過又は停止すべき旨の情報の送信に関するサブルーチンの処理を終えた場合、図6に示すように制御部10は、pが0より大きいか否かを判定する(ステップS7)。pが0より大きいと判定した場合(ステップS7:YES)、制御部10は、車両pが交差点Cを通過する通過予定時刻Tcを算出する(ステップS8)。通過予定時刻Tcは、下記式(5)で表される。
Tc=T+(Dp(T)+W)/Vp…(5)
【0053】
次いで、制御部10は、通過予定時刻Tcが青色切替時刻Tgより大きいか否かを判定する(ステップS9)。通過予定時刻Tcが青色切替時刻Tgより大きいと判定した場合(ステップS9:YES)、制御部10は、信号機5を赤色から青色に切り替える青色切替時刻Tgを通過予定時刻Tcに変更させる制御信号を信号制御装置2に出力する(ステップS10)。
【0054】
ステップS10の処理を終えた場合、通過予定時刻Tcが青色切替時刻Tg以下であると判定した場合(ステップS9:NO)、pが0より大きくないと判定した場合(ステップS7:NO)、又は車両台数Nが1より小さいと判定した場合(ステップS3:NO)、制御部10は、走行支援に係る処理を終える。
【0055】
走行支援装置1は、上述の処理を定期的、例えば0.1秒毎に繰り返し実行する。
【0056】
本実施の形態に係る走行支援装置1にあっては、図7に示すように、停止線Sの手前で停止することができるが、信号機4が黄色から赤色に切り替わる前に停止線Sを越えることができない前方の車両A1の後方に、停止線Sの手前で停止することができず、信号機4が黄色から赤色に切り替わるまでに停止線Sを越えることもできない車両A2が走行している場合、制御部10は、車両A2を通過最後尾車両として判断し、車両A1及び車両A2夫々に、交差点Cを通過すべき旨の情報を送信する。
【0057】
従って、交差点Cを通過すべき車両Aiの前方に、停止線Sの手前で停止することができる車両Aiが走行している場合に生じる交差点Cでの追突事故を防ぐことができる。
【0058】
また、交差点Cを通過すべき旨の情報を受信した車両Aiの中に、信号機4が黄色から赤色に切り替わる前に停止線Sを越えることができない車両Aiがある場合、交差道路R2の信号機5を赤色から青色に切り替える青色切替時刻Tgを、前記車両Aiが交差点Cを通過できる通過予定時刻に変更することにより、交差点Cを通過すべき旨の情報を受信した車両Aiと、交差道路R2から交差点Cに進入してくる車両との衝突事故を防ぐことができる。
【0059】
更に、停止線Sの手前で停止することができるが、信号機4が黄色から赤色に切り替わる前に停止線Sを越えることができない前方の車両Aiの後方に、停止線Sの手前で停止することができ、信号機4が黄色から赤色に切り替わる前に停止線Sを越えることもできる後方の車両Aiが走行している場合、制御部10は、各車両Ai夫々に、停止すべき旨の情報を送信する。
【0060】
従って、停止すべき車両Aiの後方に、交差点Cを通過することができる車両Aiが走行している場合に生じる交差点Cでの追突事故を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】走行支援システムを示すブロック図である。
【図2】走行支援システムの全体構成図である。
【図3】走行支援装置の構成を示すブロック図である。
【図4】信号制御装置の構成を示すブロック図である。
【図5】車両の一部の構成を示すブロック図である。
【図6】制御部の走行支援に係る処理手順を示すフローチャートである。
【図7】停止距離及び走行距離と、走行速度との関係を示すグラフである。
【図8】通過最後尾車両及び停止先頭車両の特定に関するサブルーチンの処理手順を示すフローチャートである。
【図9】通過又は停止すべき旨の情報の送信に関するサブルーチンの処理手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0062】
1 走行支援装置
2 信号制御装置
4 信号機
5 信号機
10 制御部
11 記憶部
12 送受信部
Ai 車両
R1 進入側道路
R2 交差道路
C 交差点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交差点へ向かう複数の車両の走行速度及び走行位置に基づいて車両が交差点手前の特定領域に入るか否かを判定して、前記特定領域に入ると判定した車両に交差点を通過すべき旨の情報を送信することにより、車両の走行を支援するようにしてある走行支援装置において、
交差点を通過すべき旨の情報を送信した車両の前方における他の車両の有無を車両の走行位置に基づいて判定する判定手段と、
該判定手段が有りと判定した場合、前記他の車両に交差点を通過すべき旨の情報を送信する手段と
を備えることを特徴とする走行支援装置。
【請求項2】
車両の走行速度に基づいて、前記特定領域に入ると判定した車両が交差点を通過する通過予定時刻を算出する算出手段と、
該算出手段が算出した通過予定時刻が、前記車両が走行している道路に交差した道路の信号機が赤色から青色に切り替わる切替時刻より後か否かを判定する前後判定手段と、
該前後判定手段が、前記通過予定時刻が前記切替時刻よりも後であると判定した場合、前記切替時刻を前記通過予定時刻に変更する手段と
を備えることを特徴とする請求項1に記載の走行支援装置。
【請求項3】
交差点へ向かう複数の車両の走行速度及び走行位置に基づいて車両が交差点手前の特定領域に入るか否かを判定して、前記特定領域に入ると判定した車両に停止すべき旨の情報を送信することにより、車両の走行を支援するようにしてある走行支援装置において、
停止すべき旨の情報を送信した車両の後方における他の車両の有無を車両の走行位置に基づいて判定する判定手段と、
該判定手段が有りと判定した場合、前記他の車両に停止すべき旨の情報を送信する手段と
を備えることを特徴とする走行支援装置。
【請求項4】
交差点へ向かう複数の車両の走行速度及び走行位置に基づいて車両が交差点手前の特定領域に入るか否かを判定し、前記特定領域に入ると判定した車両に交差点を通過すべき旨の情報を送信することにより、車両の走行を支援する走行支援方法において、
交差点を通過すべき旨の情報を送信した車両の前方における他の車両の有無を車両の走行位置に基づいて判定し、
有りと判定した場合、前記他の車両に交差点を通過すべき旨の情報を送信する
ことを特徴とする走行支援方法。
【請求項5】
走行速度に基づいて、前記特定領域に入ると判定した車両が交差点を通過する通過予定時刻を算出し、
算出した通過予定時刻が、前記車両が走行している道路に交差した道路の信号機が赤色から青色に切り替わる切替時刻より後か否かを判定し、
前記通過予定時刻が前記切替時刻よりも後であると判定した場合、前記切替時刻を前記通過予定時刻に変更する
ことを特徴とする請求項4に記載の走行支援方法。
【請求項6】
交差点へ向かう複数の車両の走行速度及び走行位置に基づいて車両が交差点手前の特定領域に入るか否かを判定し、前記特定領域に入ると判定した車両に停止すべき旨の情報を送信することにより、車両の走行を支援する走行支援方法において、
停止すべき旨の情報を送信した車両の後方における他の車両の有無を車両の走行位置に基づいて判定し、
有りと判定した場合、前記他の車両に停止すべき旨の情報を送信する
ことを特徴とする走行支援方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−252200(P2006−252200A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−68131(P2005−68131)
【出願日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】