説明

走行車両のボンネット支持構造

【課題】 支持機構の先端側を取り付ける先端取付部をボンネットに組み付ける構造を簡単化することができて支持機構先端側の取付構造を軽量でかつ製造コストも安上がりになるようにする。
【解決手段】 走行車体に搭載機器を覆う樹脂製のボンネットが設けられ、ボンネットの内側にボンネットを走行車体側に対して開閉自在に支持する支持機構が設けられ、この支持機構が走行車体に支持された走行車両のボンネット支持構造において、
前記ボンネットの天板部に支持機構の先端側を取り付ける先端取付部が天板部の下面から下方突出状に一体成形されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラクタ等の走行車両のボンネット支持構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
トラクタ等の走行車両には、走行車体にエンジン等の搭載機器を覆う樹脂製のボンネットを設け、ボンネットの内側にボンネットを走行車体側に対して開閉自在に支持する支持機構を設け、ボンネットの天板部に支持機構の基部側を取り付けるための基部取付部と、支持機構の先端側を取り付ける先端取付部とを設けたものがあり、この場合、支持機構を、例えば走行車体に立設された支持枠と、支持枠の上部に回転自在に支持された支持軸と、支持軸からボンネットの先端側に突設されかつ先端が前記先端取付部に連結されている支持部材と、支持軸に支持されかつ基部取付部に取り付けられる支持ステーと、支持枠と先端取付部に連結されてボンネットを開方向に付勢するガススプリング等の開放支持具とで構成している(例えば特許文献1,2)。
【0003】
この種の従来の走行車両のボンネット支持構造は、ボンネットを合成樹脂により形成すると共に、ボンネットの天板部に、支持機構の先端側を取り付けるための先端取付部、例えば支持部材の先端部及び開放支持具の先端部を取り付けるための先端取付部を、ボンネットとは別個に板金部品で製作してボンネットに組み付けるのが一般的であった(例えば特許文献1,2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第5535846号明細書
【特許文献2】特開2004−224307号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、従来では、先端取付部の板金部品をボンネットに組み付けるため構造が必要であり、この板金部品を組み付けるための構造が複雑で大きくなるため、支持機構の先端側の取付構造が複雑でその部分の重量が増大し、また、支持機構の先端側の取付構造の製造コストも高くなった。
本発明は前記問題点に鑑みて、支持機構の先端側を取り付ける先端取付部をボンネットに組み付ける構造を簡単化することができて支持機構の先端側の取付構造を軽量でかつ製造コストも安上がりになるようにしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この技術的課題を解決する本発明の技術的手段は、走行車体に搭載機器を覆う樹脂製のボンネットが設けられ、ボンネットの内側にボンネットを走行車体側に対して開閉自在に支持する支持機構が設けられ、この支持機構が走行車体に支持された走行車両のボンネット支持構造において、
前記ボンネットの天板部に支持機構の先端側を取り付ける先端取付部が天板部の下面から下方突出状に一体成形されている点にある。
また、本発明の他の技術的手段は、ボンネットの天板部に支持機構の基部側を取り付ける基部取付部を有し、前記支持機構は、走行車体に設けた支持枠と、支持枠の上部に回転自在に支持された支持軸と、支持軸からボンネットの先端側に突設されかつ先端が前記先端取付部に連結されている支持部材と、支持軸に支持されかつ基部取付部に取り付けられる支持ステーと、支持枠と先端取付部に連結されてボンネットを開方向に付勢する開放支持具とを有している点にある。
【0007】
また、本発明の他の技術的手段は、前記基部取付部はボンネットと一体成形されている点にある。
また、本発明の他の技術的手段は、前記ボンネットは天板部と左右一対の側板部とが一体成形され、天板部の内面と左右一対の側板部の内面とに亘って補強枠体が添設されている点にある。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ボンネットの天板部に支持機構の先端側を取り付ける先端取付部が天板部の下面から下方突出状に一体成形されているので、支持機構の先端側を取り付けるための先端取付部を、ボンネットに組み付ける構造が不要乃至極めて簡単になり、支持機構の先端側の取付構造を簡単化するこができて支持機構先端側の取付構造が軽量でかつ製造コストも安上がりになる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態を示すトラクタ前部の側面図である。
【図2】同トラクタ前部の正面図である。
【図3】同ボンネット後部内の側面図である。
【図4】同支持機構の斜視図である。
【図5】同ボンネット後部内の正面図である。
【図6】同先端取付部部分の側面断面図である。
【図7】同先端取付部部分を下側から見た斜視図である。
【図8】同シュラウド部分の側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
図1はトラクタの前部を示し、同図において、トラクタ車体(走行車体)1はエンジン2、クラッチハウジング3、ミッションケース、前車軸フレーム5等を直結して構成されている。エンジン2から前方へ延出して設けられた前車軸フレーム5の上方には、エンジン2をはじめ、その周辺に付設される各種機器類やエンジン補機等の搭載機器を覆うボンネット7が設けられている。
ボンネット7内には、エンジン2の前部からその前方へ向けて冷却ファン9、ラジエータ10及びバッテリ等が設けられ、冷却ファン9をエンジン2の動力によって回転駆動するように構成されている。
【0011】
ラジエータ10に筒状のシュラウド(風胴)11が後方突出状に設けられ、シュラウド11内に冷却ファン9の前部側が配置され、冷却ファン9によってラジエータ10前方からエンジン2側へ冷却空気を吸引するように構成されている。
図1〜図5に示すように、ボンネット7は樹脂製であって天板部15と左右一対の側板部16とを有する断面コ字状に形成されている。ボンネット7は射出成形等により天板部15と左右一対の側板部16とが一体成形されている。
ボンネット7の内側にボンネット7をトラクタ車体1側に対して開閉自在に支持する支持機構18が設けられている。ボンネット7の天板部15に支持機構18の基部側を取り付ける基部取付部19と支持機構18の先端側を取り付ける先端取付部20とが設けられ、これら基部取付部19と先端取付部20とは天板部15乃至ボンネット7と一体に成形されている。
【0012】
図5に示すように、基部取付部19には天板部15の左右方向内方側の左右一対の内側基部取付部19aと左右方向外方側の左右一対の外側基部取付部19bとがあり、これら複数の基部取付部19は天板部15の後端側に左右方向に配置されている。外側基部取付部19bにはナット等の装着具21がインサート成形されて埋め込まれている。内側基部取付部19aには上下方向に貫通した取付孔22が形成されている。
図4、図6、図7に示すように、先端取付部20は天板部15の前後方向中途部に左右一対設けられている。左右一対の先端取付部20はそれぞれ前後方向の板状に形成されて天板部15の下面から下方突出され、互いに平行に配置されている。左右一対の先端取付部20に左右方向外方に突出した複数(図例では4つ)のリブ25が一体に形成されている。複数のリブ25は前後方向に間隔おいて互いに略平行に配置されている。各先端取付部20の前側の2つのリブ25間に取付片27が一体に形成されており、角板状の頭部29aを有する左右方向の支軸(支持ピン)29が先端取付部20及びその取付片27間に挿入され、支軸29の突出端部に抜止ピン30が挿入されて、支軸29は先端取付部20から抜け止めされている。
【0013】
図1〜図4において、支持機構18は、トラクタ車体1に設けた支持枠33と、支持枠33の上部に回転自在に支持された支持軸34と、支持軸34からボンネット7の先端側に突設されかつ先端が前記先端取付部20に連結されている支持部材35と、支持軸34に支持されかつ基部取付部19に取り付けられる支持ステー36と、支持枠33と先端取付部20に連結されてボンネット7を開方向に付勢する開放支持具37とを有し、支持機構18はトラクタ車体1に支持されている。
前記支持枠33は、トラクタ車体1側のエンジン2又はクラッチハウジング3等にボルト等で固体された取付板41と、取付板41に突設した左右一対の支柱42と、左右一対の支柱42の上端部間に連結した上連結板43と、上連結板43に固定された支持板44と、左右一対の支柱42の上部間に連結した下連結板46と、下連結板46から前方側に突設された補助ステー47とを備える。補助ステー47の基端部(後端部)がボルト等の締結具45により下連結板46に固定され、補助ステー47の突出端部(前端部)側が下方にL字状に屈曲されてボンネット7内の搭載機器側にボルト等の締結具48で固定されている。
【0014】
支持板44の上面に左右一対の筒体53が突設され、上連結板43の下面側にナット54が固設されており、支持板44が上連結板43に上側から重合されて、筒体53に挿通されかつナット54に螺合したボルト等の締結具50により支持板44が上連結板43に着脱自在に固定されている。支持板44の左右両端部に左右一対の支持筒49が固設され、前記支持軸34が支持筒49を介して支持枠33の上部に軸心廻りに回転自在に支持されている。
図4、図5に示すように、支持ステー36は左右一対設けられ、支持軸34の左右両端部にそれぞれ固設されている。各支持ステー36は固定板部36aと支持板部36bとをL字状に有し、固定板部36aが支持軸34の端部にそれぞれ溶接により固着されている。
【0015】
支持ステー36の支持板部36bの左右方向外端部が外側基部取付部19bにその装着具21を利用してボルト等の締結具51により締め付け固定され、支持ステー36の支持板部36bの左右方向内端部が内側基部取付部19aに取付孔22に挿通したボルトナット等の締結具52により締め付け固定されている。これにより、ボンネット7の後部側が左右方向の支持軸34廻りに開閉自在に支持されている。
なお、外側基部取付部19bにはナット等の装着具21が埋め込まれ、内側基部取付部19aには取付孔22が形成されているが、これに代え、内側基部取付部19aと外側基部取付部19bとの両方にナット等の装着具21を埋め込むようにしてもよいし、また、内側基部取付部19aと外側基部取付部19bとの両方に上下方向に貫通した取付孔22を形成するようにしてもよい。
【0016】
図1〜図5において、前記支持部材35は左右一対設けられ、各支持部材35は前後方向に長い板状に形成されて互いに略平行に配置され、左右一対の支持部材35の基部側(後部側)に下側からU字状に切り欠いてなる嵌合凹部55が設けられ、この嵌合凹部55を支持軸34に上側から嵌合して溶接等により固着している。
左右一対の支持部材35の先端側は連結板56により互いに連結され、左右一対の支持部材35の先端部(前端部)に取付孔を有する取付ボス58が設けられている。左右一対の支持部材35の先端部は、左右一対の先端取付部20間に配置されて、支軸29が取付ボス58に挿入されることにより一対の先端取付部20に連結されている。
【0017】
前記開放支持具37はガススプリング等により構成され、開放支持具37の基部側が補助ステー47にブラケット40を介して左右方向の支軸57廻りに回動自在に連結されている。開放支持具37の先端側は、左右一対の支持部材35の先端部間に配置されて支軸29を挿通することにより、先端取付部20に左右方向の支軸29廻りに回動自在に連結されている。
なお、図例では、左右一対の支持部材35の先端部と開放支持具37の先端部とを同一の支軸29により先端取付部20に連結するようにしているが、これに代え、左右一対の支持部材35の先端部と開放支持具37の先端部とを、別々の支軸又は連結ピンその他の連結具により別個に先端取付部20に連結するようにしてもよい
ボンネット7の後部の内側に補強枠体59が設けられている。この補強枠体59は天板部15の内面に沿う上枠部60と左右一対の側板部16の内面に沿う左右一対の側枠部61とを有し、補強枠体59は天板部15の内面と左右一対の側板部16の内面とに亘って添設されている。ボンネット7の天板部15に補強枠体59に対応して左右一対の中間取付部63が一体成形されており、この中間取付部63は前記基部取付部19の内側基部取付部19a又は外側基部取付部19bと同様に形成され、ボルトナット等の締結具64により補強枠体59の上枠部60に固定されている。
【0018】
なお、前記左右一対の支持部材35は補強枠体59の上枠部60の下側に配置されており、支持部材35の前後方向中途部は補強枠体59の上枠部60に溶接等により固着してもよいし、固着しなくてもよい。また、前記支持部材35と支持軸34とは一体に構成してもよい。また、補強枠体59の側枠部61の下部にボンネット7の側板部16の下部がボルト等の締結具により固定される。
図8において、前記風胴11は、ラジエータ10から後方突出した筒状の風胴本体67と、風胴本体67の前後方向中途部から左右方向外方及び上方に突出した閉塞壁体68とを有し、閉塞壁体68はボンネット7の天板部15及び側板部16に沿うように門型に形成されている。ボンネット7の風胴11に対応する内面に、突起部70が天板部15から左右一対の側板部16に亘って門型に突出されている。この突起部70はボンネット7に前記基部取付部19及び先端取付部20と同様に一体成形されたものである。風胴11の閉塞壁体68の外周縁部68aがシール材71を介して門型の突起部70にその上端部の左右全長及び左右外端部の上下方向の略全長に亘って接当されている。これにより、風胴11の風胴本体67内のみを冷却ファン9による冷却風が流れて、風胴11とボンネット7との間を冷却風が逆流しないように構成されている。
【0019】
なお、図1及び図2に示すように、ボンネット7の前部にフロントグリル74が設けられ、フロントグリル74の下方に隣接してヘッドライトカバー75が設けられ、ヘッドライトカバー75に左右一対のヘッドランプが装着されている。また、ボンネット7が閉まった状態は、フロントグリル74の内側等に設けられたロック機構によって保持されるようになっている。
上記実施の形態によれば、ボンネット7を開く場合は、ボンネット7のロック機構を外してボンネット7の遊端側を上方に押圧することにより、開放支持具37が伸長動作しながらボンネット7を開方向に付勢し、ボンネット7が左右一対の支持部材35と共に支持軸34廻りに上方側に揺動して、ボンネット7が軽い力でスムーズに開放する。また、ボンネット7を閉じる場合は、ボンネット7の遊端側を下方に引っ張ることにより、開放支持具37が縮小動作しながらボンネット7を開方向に付勢し、ボンネット7が左右一対の支持部材35と共に支持軸34廻りに下方側に揺動して、ボンネット7がスムーズに閉じる。
【0020】
そして、本実施の形態の場合、ボンネット7の天板部15に支持機構18の先端側を取り付ける先端取付部20が天板部15の下面から下方突出状に一体成形されているので、支持機構18の先端側を取り付けるための先端取付部20を、ボンネット7に組み付ける構造が不要乃至極めて簡単になり、支持機構18先端側の取付構造を簡単化することができて支持機構18先端側の取付構造が軽量でかつ製造コストも安上がりになる。また、このため、ボンネット7の支持機構18の先端側の部品重量を低減することができ、例えば、従来2本必要であったガススプリング等の開放支持具37を1本に低減することができるようになる。また、部品点数の削減によってボンネット7の走行車体1への組み付け工数を大幅に低減することができる。さらに、先端取付部20を、ボンネット7に組み付ける構造が不要になることにより、外観上目立っていたボルト等の締結具を少なくしてボンネット7の外観をより体裁の良いものになし得る。
【0021】
また、基部取付部19がボンネット7と一体成形されているので、基部取付部19をボンネット7に組み付ける構造も不要乃至極めて簡単になり、支持機構18基部側の取付部分の構造を簡単化するこができる。また、ボンネット7は天板部15と左右一対の側板部16とが一体成形され、天板部15の内面と左右一対の側板部16の内面とに亘って補強枠体59が添設されているので、ボンネット7全体が軽量になると共に、補強枠体59でボンネット7を効果的に補強することができる。
なお、前記実施の形態では、トラクタのボンネット支持構造に本願発明を適用実施しているが、本願発明のボンネット支持構造はトラクタ以外のバックホーその他の作業機にも適用実施することができる。
【0022】
また、前記実施の形態では、ボンネット7は天板部15と左右一対の側板部16とが一体成形されているが、これに代え、ボンネット7の天板部15と左右一対の側板部16とを互いに別体に形成した後、天板部15と左右一対の側板部16とを締結具等で互いに連結固定するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0023】
トラクタ、バックホー等の走行車両のボンネットに利用できる。
【符号の説明】
【0024】
1 走行車体
2 エンジン
7 ボンネット
15 天板部
16 側板部
18 支持機構
19 基部取付部
20 先端取付部
33 支持枠
34 支持軸
35 支持部材
36 支持ステー
37 開放支持具
59 補助枠体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車体(1)に搭載機器を覆う樹脂製のボンネット(7)が設けられ、ボンネット(7)の内側にボンネット(7)を走行車体(1)側に対して開閉自在に支持する支持機構(18)が設けられ、この支持機構(18)が走行車体(1)に支持された走行車両のボンネット支持構造において、
前記ボンネット(7)の天板部(15)に支持機構(18)の先端側を取り付ける先端取付部(20)が天板部(15)の下面から下方突出状に一体成形されていることを特徴とする走行車両のボンネット支持構造。
【請求項2】
ボンネット(7)の天板部(15)に支持機構(18)の基部側を取り付ける基部取付部(19)を有し、前記支持機構(18)は、走行車体(1)に設けた支持枠(33)と、支持枠(33)の上部に回転自在に支持された支持軸(34)と、支持軸(34)からボンネット(7)の先端側に突設されかつ先端が前記先端取付部(20)に連結されている支持部材(35)と、支持軸(34)に支持されかつ基部取付部(19)に取り付けられる支持ステー(36)と、支持枠(33)と先端取付部(20)に連結されてボンネット(7)を開方向に付勢する開放支持具(37)とを有していることを特徴とする請求項1に記載の走行車両のボンネット支持構造。
【請求項3】
前記基部取付部(19)はボンネット(7)と一体成形されていることを特徴とする請求項2に記載の走行車両のボンネット支持構造。
【請求項4】
前記ボンネット(7)は天板部(15)と左右一対の側板部(16)とが一体成形され、天板部(15)の内面と左右一対の側板部(16)の内面とに亘って補強枠体(59)が添設されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の走行車両のボンネット支持構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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