説明

超伝導磁石装置および磁気共鳴イメージング装置

【課題】冷凍機のメンテナンス作業とパワーリードの着脱作業をそれぞれ同時に支障なく行うことができる超伝導磁石装置およびMRI装置を提供する。
【解決手段】環状に形成された複数の超伝導コイルを冷媒とともに収納する一対のコイル容器10と、各コイル容器10をそれぞれ収納する一対の真空容器1A,1Bと、真空容器1A,1B間を均一磁場空間として、各真空容器1A,1Bを上下方向に相対向させた状態で互いに連結する一対の支柱7C,7Dと、一対の真空容器1A,1Bのうち、上側に位置する真空容器1A,1Bの上部に設けられた冷凍機20およびパワーリードポート30と、を備え、冷凍機20は、一対の支柱7C,7Dのうち、一方の支柱7Cの上方に配置され、パワーリードポート30は、他方の支柱7Dの上方に配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超伝導磁石装置および磁気共鳴イメージング装置(以下、MRI装置と称す)に係り、特に被検体に閉塞感を与えない開放型のMRI装置に好適な超伝導磁石装置およびこれを用いたMRI装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、超伝導磁石装置を用いて静磁場を生成するMRI装置は、特に、医療診断の分野で広く利用されており、被検体に閉塞感を与えない開放型のMRI装置は、被検体へのアクセスが容易であることから生体検査装置として注目されている。
【0003】
このようなMRI装置は、円筒状もしくは楕円筒状を呈した上下一対の真空容器を備え、これらの真空容器間に磁場空間(撮像領域)を持つ。各真空容器には、径の相異なる複数対の超伝導コイルを冷媒とともに収納するコイル容器が収納されている。複数対の超伝導コイルには、ガントリーギャップ内に中心を有する球状もしくは楕円球状の撮像領域において均一な静磁場が生成されるように、少なくとも一対の超伝導主コイルと少なくとも一対の超伝導遮へいコイルとが含まれる。
【0004】
コイル容器に収納される冷媒としては、液体ヘリウムが使用されており、この液体ヘリウムの消費を低減させるために蒸発ガスを再凝縮する極低温の冷凍機が用いられている。
一般に、冷凍機は、蒸発ガスを再凝縮する必要から上側の真空容器の上部中央位置や、上下一対の真空容器を結合する側方支持部材の上方位置に設置されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
また、超伝導コイルに励磁電流を供給するパワーリード等を備えたサービスポートとして、着脱式とされたもの(例えば、特許文献4参照)や、液体ヘリウムを補給する補給口を備えたものが開示されている(例えば、特許文献5参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2002−17705号公報
【特許文献2】特開2005−237417号公報
【特許文献3】特開2005−185551号公報
【特許文献4】特開平5−217743号公報
【特許文献5】特開2004−51475号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、前記した従来の特許文献5に記載された技術では、冷凍機、パワーリード、および補給口が近接配置された構成となっており、特許文献1〜3に示したような装置においてこのような構成を採用すると、冷凍機に関連するメンテナンス作業、パワーリードの着脱作業、および補給口を通じた液体ヘリウムの補給作業を同時に行うことができない。例えば、冷凍機に関連するメンテナンス作業時には、パワーリードが邪魔であり、また、パワーリードの着脱作業時には、冷凍機が邪魔であった。
また、冷凍機と、パワーリードが接続されるパワーリードポートとを近接配置すると、これらを合わせた全体の形状が大型化したり、冷凍機のポートを冷凍機の外形に合わせた円筒形として構成することができない等、形状が複雑になるおそれもある。
また、特許文献4のような着脱式のパワーリードを用いるパワーリードポートでは、通電中に、ガス冷却が必要であるため、この冷却ガスによる冷却効果でパワーリードポートに結露が生じることがある。この場合に、冷凍機とパワーリードポートとが近接配置されていると、冷凍機の真空閉止に使用している真空用パッキンが劣化する不具合や、結露から発生する水分が真空用パッキンを透過して真空リークが生じる等の不具合を起こし、超伝導磁石装置の真空断熱が低下するおそれがある。真空断熱が低下すると冷媒の減少を生じ、最終的には超伝導磁石のコイルクエンチに至るおそれもある。
【0007】
そこで、本発明の目的は、冷凍機のメンテナンス作業とパワーリードポートの着脱作業をそれぞれ同時に支障なく行うことができる超伝導磁石装置およびMRI装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記した目的を達成するため、本発明では、一対の真空容器を上下方向に相対向させた状態で互いに連結する一対の支柱の上方に、冷凍機とパワーリードポートとを別々に配置する構成としたので、冷凍機に関連するメンテナンス作業時に、パワーリードポートが邪魔にならず、また、パワーリードポートの着脱作業時に、冷凍機が邪魔になることがない。したがって、冷凍機のメンテナンス作業とパワーリードポートの着脱作業をそれぞれ同時に支障なく行うことができる。また、パワーリードポートと冷凍機とが近接しないので、パワーリードポートのガス冷却に起因する冷凍機の真空用パッキンの割れや真空リークを生じることがなく、超伝導磁石装置の性能を長期的に安定して維持することができる。
【0009】
また、このような超伝導磁石装置を用いたMRI装置では、冷凍機のメンテナンス作業とパワーリードポートの着脱作業をそれぞれ同時に支障なく行うことができるので、メンテナンス作業の時間短縮を実現でき、経済効果が高く、コストの低減を図ることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、冷凍機のメンテナンス作業とパワーリードポートの着脱作業をそれぞれ同時に支障なく行うことができる超伝導磁石装置およびMRI装置が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
次に、本発明の超伝導磁石装置を用いたMRI装置の一実施形態を図面を参照して詳細に説明する。MRI装置は、図1に示すように、超伝導磁石装置1と、被検体(不図示、以下同様)を乗せるベッド12と、このベッド12に乗せられた被検体を撮像領域FOV(Field of View)へ搬送する、図示しない駆動機構が設けられた搬送手段13と、この搬送手段13によって撮像領域FOVに搬送された被検体からの核磁気共鳴信号を解析するコンピュータ等の機器からなる解析手段14とから構成され、ベッド12に乗った被検体を通して断層撮影を行うものである。ここで、図1中符号Zを付して示した軸線は、超伝導磁石装置1の中心を通る中心軸であり、撮像領域FOVの中心部を通る鉛直軸である。
【0012】
超伝導磁石装置1は、図2に示すように、内部に、いずれも環状に形成された超伝導主コイル2、超伝導遮へいコイル3が超伝導用冷媒4とともにコイル容器10に収納され、このコイル容器10が、熱シールド11を介して内部を真空に保持された一対の真空容器1A,1Bにそれぞれ収納された構成となっている。そして真空容器1A,1B間を均一磁場として、各真空容器1A,1Bを上下方向に相対向させた状態で互いに連結する一対の支柱7C,7Dと、上側の真空容器1Aの上部に設けられた冷凍機20およびパワーリードポート30を備えている。
【0013】
本実施形態では、一対の支柱7C,7Dのうち、一方の支柱7Cの上方に冷凍機20が配置され、他方の支柱7Dの上方にパワーリードポート30が配置されている。一対の支柱7C,7Dは、中心軸Zを挟んで超伝導磁石装置1の径方向両側に配置(180度反対側に配置)されており、これによって、冷凍機20とパワーリードポート30とは、中心軸Zを挟んで超伝導磁石装置1の径方向両側に離間して配置されるようになっている。
【0014】
超伝導主コイル2、超伝導遮へいコイル3は、コイル線材として、例えば、NbTi線材が用いられ、図示しない支持体によってコイル容器10内にそれぞれ支持されている。
本実施形態では、超伝導主コイル2に所定方向の電流が流れるようにしてあり、また、超伝導遮へいコイル3に、超伝導主コイル2とは逆方向の電流が流れるようにしてある。なお、真空容器1A,1B内には、図示しない補正コイル等が設けられている。また、超伝導用冷媒4としては、例えば、液体ヘリウムが用いられている。
【0015】
上側の真空容器1Aと下側の真空容器1Bとは、支柱7C,7D内において連結されており、各真空容器1A,1B内に収納されるコイル容器10、熱シールド11も支柱7C,7D内でそれぞれ連結された構成となっている。これによって、真空容器1A,1B間で液体ヘリウム4が通流するようになっている。なお、上側の真空容器1Aおよび下側の真空容器1Bには、撮像領域FOVに面するように凹部が形成されており、この凹部に傾斜磁場コイル8が設けられている。この傾斜磁場コイル8には、その撮像領域FOV側にRFコイル9が設けられている。
【0016】
コイル容器10は、その全周を熱シールド11で覆われており、外部との断熱が図られている。また、この熱シールド11を、各真空容器1A,1Bが覆うことで、外部とコイル容器10との間を真空にして断熱が図られている。
【0017】
冷凍機20は、ギフォードマクマホン式冷凍機であり、前記したように、支柱7Cの上方に配置され、真空容器1Aに固定されている。本実施形態では、図2に示すように、真空容器1A(コイル容器10)の径方向において、超伝導主コイル2と超伝導遮へいコイル3との間に冷凍機20が配置される構成としてある。冷凍機20は、図3に示すように、駆動モータ21と、第1シリンダ22と、第2シリンダ23とを備えて構成される。
第1シリンダ22には、第1蓄冷器22aが収納され、第2シリンダ23には第2蓄冷器23aが収納されている。第1蓄冷器22aと第2蓄冷器23aとの間には、不図示の第1膨張室が設けられ、その底部に第1冷却ステージS1が設けられている。また、第2蓄冷器23aと第2シリンダ23の先端壁との間には、不図示の第2膨張室が設けられ、その底部には第1冷却ステージS1より低温とされた第2冷却ステージS2が形成されている。
このような冷凍機20は、第1冷却ステージS1で熱シールド11を冷却し、第2冷却ステージS2でガス状となったヘリウム(蒸発ガスG)を液化する働きを行う。
なお、本実施形態では、熱シールド11が1層のものを例示したが、これに限られることはなく、2層、3層として構成してもよい。その場合には、冷凍機20にも、層数に応じた冷却ステージを設けて、各熱シールドの冷却を好適に行うようにする。
【0018】
冷凍機20の取付位置となる、真空容器1Aの天板には、天板から上方へ一体的に突出形成された円筒状のポート1aが設けられており、このポート1aに図示しないボルト等を用いて冷凍機20の固定用フランジ部20aが固定されるようになっている。冷凍機20は、ポート1aに固定された状態で、第1シリンダ22の下端に設けられたフランジ部22bが、熱シールド11よりも上方に位置するようになっており、このフランジ部22bと熱シールド11との間が、伝熱フレキシブル部材24で熱的に接続されている。このような伝熱フレキシブル部材24を介設することによって、冷凍機20の振動が熱シールド11やコイル容器10に伝わるのを好適に防止することができる。
また、冷凍機20は、ポート1aに図示しない真空用パッキンを介して固定された状態で、その第2冷却ステージS2が、コイル容器10に連通する空間に位置する状態となる。
【0019】
冷凍機20の周囲には、第1シリンダ22を囲むようにして、真空容器1Aの天板と熱シールド11との間に、ベローズ25が設けられている。さらに、冷凍機20の第2シリンダ23を囲むようにして、熱シールド11とコイル容器10との間に、ベローズ26が設けられている。このようなベローズ25,26が設けられていることと、冷凍機20の第2シリンダ23がコイル容器10に臨む空間(蒸発ガスGが存在する空間)に配置されることによって、冷凍機20の振動が、熱シールド11やコイル容器10に伝わるのをさらに好適に防止することができる。
また、冷凍機20の上部は、図示しない磁気シールドで覆われている。
【0020】
ここで、冷凍機20は、その重量が、真空容器1Aの天板の重量と比較して重たくなっている。そのため、真空容器1Aの中央部に従来のように冷凍機20を配置した場合には、冷凍機20の運転時の振動が上側の真空容器1Aから支柱7C,7Dを介して下側の真空容器1Bに伝わり、振動が超伝導磁石装置1の全体に及ぶおそれがある。
これに対して、本実施形態では、冷凍機20が、支柱7Cの上方に配置されているので、図4に示すように、支柱7Cの上方となる部分である、冷凍機20が配置される部分が上側の真空容器1Aの振動の節となる。これによって、支柱7Cを伝わる振動が抑制され、上側の真空容器1Aの振動が下側の真空容器1Bに伝わることが抑制されることとなる。したがって、冷凍機20の振動によって超伝導磁石装置1の全体に振動が及ぶことを好適に防止することができる。このことは、撮像された画像が乱れることを防止し、画像の品質向上に寄与する。
また、超伝導磁石装置1は、振動源として、傾斜磁場コイル8を備えており、従来では、特に、上側の真空容器1Aが下側の真空容器1Bに比べて振動し易い状況にある。
これに対して、本実施形態では、冷凍機20が支柱7Cの上方に配置され、パワーリードポート30が支柱7Dの上方に配置されているので、振動応答変位を好適に抑えることができ、撮像された画像が乱れることを防止して、画像の品質向上を図ることができる。
【0021】
なお、図2に示すように、冷凍機20には、駆動モータ21への図示しない電力線や図示しない圧縮機への高圧ホース等の部材Eが接続されるが、これらの部材Eは、一旦、超伝導磁石装置1の側方の床面へ向けて降ろされて、その後、外部等へ引き回される。本実施形態では、支柱7Cの外周壁に沿わせて電力線や高圧ホース等の部材Eが保持されている。
【0022】
パワーリードポート30は、前記したように、支柱7Dの上方に配置されている。本実施形態では、パワーリードポート30が着脱式であり、低温部で着脱ができるようにコンタクタ31が設けられている。また、パワーリードポート30には、液体ヘリウム4を補給するための補給口35が設けられている。補給口35には、支柱7Dを通じて下側のコイル容器10の最下部近傍へ通じる補給管35aが接続されている。
コンタクタ31と各超伝導主コイル2および各超伝導遮へいコイル3との間は、通電を行うための渡り線32で電気的に接続されている。この渡り線32は、支柱7D内のコイル容器10の連結部分を通じて下側の真空容器1Bにも渡されており、真空容器1Bの超伝導主コイル2,超伝導遮へいコイル3に対して電気的に接続されている。
このように、渡り線32が支柱7Dを通じて渡される構成では、支柱7Dの上方にパワーリードポート30が設けられることによって、渡り線32の全長を短くすることができる。
【0023】
また、パワーリードポート30も前記した冷凍機20と同様に、その重量が真空容器1Aの天板の重量と比較して重たくなっている。このため、仮に、支柱7Dの上方以外の部位に対してパワーリードポート30が配置されるとすると、真空容器1Aの重量バランスが偏り、冷凍機20の運転による上側の真空容器1Aの振動が支柱7Dを伝わって下側の真空容器1Bにも伝わって、超伝導磁石装置1の全体に振動が及ぶおそれがある。
これに対して、本実施形態では、パワーリードポート30が支柱7Dの上方に配置されているので、図4に示すように、支柱7Dの上方、すなわち、パワーリードポート30が配置される部分が、上側の真空容器1Aの振動の節となり、支柱7Dを伝わる振動が抑制される。したがって、前記した支柱7C側における振動の抑制との相乗効果によって、超伝導磁石装置1の全体に振動が及ぶことをより一層好適に防止することができる。これによって、撮像された画像の乱れが防止され、画像の品質向上を図ることができる。
【0024】
なお、パワーリードポート30の通電時には、冷却用としてガス状のヘリウムが流されるようになっているため、真空容器1Aにおけるパワーリードポート30との接触部位では、温度低下を生じやすく、結露が生じるおそれがある。通常、そのような結露が生じないように、図示しない断熱等の処置を施してあるが、仮に、そのような事態が生じたとしても、冷凍機20は、パワーリードポート30とは反対側となる支柱7Cの上方に配置されているので、冷凍機20の真空閉止に使用している図示しない真空用パッキンが劣化する不具合や、結露から発生する水分が真空用パッキンを透過して真空リークが生じる等の不具合を起こすことがない。
【0025】
また、パワーリードポート30の補給口35に接続された補給管35aは、支柱7Dを通じて下側のコイル容器10へ最短距離で引き回すことができ、補給管35aの取扱いが行い易くなっている。
なお、図2に示すように、パワーリードポート30に接続される電力供給線Wは、一旦、超伝導磁石装置1の側方の床面へ向けて降ろされて、その後、外部等へ引き回される。本実施形態では、支柱7Dの外周壁に沿わせて電力供給線Wが保持されている。
【0026】
以下では、本実施形態において得られる効果を説明する。
(1)一対の真空容器1A,1Bを上下方向に相対向させた状態で互いに連結する一対の支柱7C,7Dの上方に、冷凍機20とパワーリードポート30とを別々に配置する構成としたので、冷凍機20に関連するメンテナンス作業時に、パワーリードポート30が邪魔にならず、また、パワーリードポート30の着脱作業時に、冷凍機20が邪魔になることがない。したがって、冷凍機20のメンテナンス作業とパワーリードポート30の着脱作業をそれぞれ同時に支障なく行うことができる。
また、冷凍機20のポート1aとパワーリードポート30とは、離されて構成されるので、これらを一体構造とした場合に比べて、それぞれ小さく形成することができ、外観上、スマートとなる。また、小さく形成することができるので、真空容器1Aの天板に形成されるポート1aとパワーリードポート30との孔径を小さくすることができ、形成が行い易く、形成に伴う変形等も生じ難い。
(2)パワーリードポート30と冷凍機20とが近接しないので、パワーリードポート30のガス冷却に起因する冷凍機20の真空用パッキンの割れや真空リークを生じることがなく、超伝導磁石装置1の性能を長期的に安定して維持することができる。
(3)冷凍機20が、支柱7Cの上方に配置されているので、支柱7Cの上方となる部分である、冷凍機20が配置される部分が上側の真空容器1Aの振動の節となり、支柱7Cを伝わる振動が抑制される。したがって、冷凍機20の振動によって超伝導磁石装置1の全体に振動が及ぶことを好適に防止することができる。このことは、撮像された画像が乱れることを防止し、画像の品質向上に寄与する。
(4)パワーリードポート30が支柱7Dの上方に配置されているので、支柱7Dの上方、すなわち、パワーリードポート30が配置される部分が、上側の真空容器1Aの振動の節となり、支柱7Dを伝わる振動が抑制される。したがって、支柱7C側における振動の抑制との相乗効果によって、超伝導磁石装置1の全体に振動が及ぶことをより一層好適に防止することができる。
(5)冷凍機20に接続される電力線や高圧ホース等の部材Eが、支柱7Cの外周壁に沿わせて設けられるので、電力線や高圧ホース等の部材Eをすっきりと纏まりのある状態に配索することができる。
また、パワーリードポート30に接続される電力供給線Wは、支柱7D側でその外周壁に沿わせて保持されるので、前記した支柱7C側に配索が偏らず、結果として、支柱7C,7Dの外観を細くスマートなものとすることができる。これによって、ガントリーギャップを広く見せる効果があり、被検体により開放感を与える。
(6)パワーリードポート30の補給口35に接続された補給管35aは、支柱7Dを通じて下側のコイル容器10へ最短距離で引き回すことができ、補給管35aの取扱いが行い易く、全長を短くすることができる。
(7)パワーリードポート30が支柱7Dの上方に配置されているので、支柱7D内のコイル容器10の連結部分を通じて、渡り線32を下側の真空容器1Bに渡すことができ、渡り線32の全長を短くすることができる。
(8)冷凍機20が支柱7Cの上方に配置され、パワーリードポート30が支柱7Dの上方に配置されているので、傾斜磁場コイル8によって振動の生じ易い上側の真空容器1Aにおいて、振動応答変位を好適に抑えることができ、撮像された画像が乱れることを防止して、画像の品質向上を図ることができる。
(9)超伝導磁石装置1を用いたMRI装置では、冷凍機20のメンテナンス作業とパワーリードポート30の着脱作業をそれぞれ同時に支障なく行うことができるので、メンテナンス作業の時間短縮を実現でき、経済効果が高く、コストの低減を図ることができる。
【0027】
なお、図5に示すように、補給口35は、パワーリードポート30と別体に設けて、パワーリードポート30の側方に配置してもよい。
また、図3に一点鎖線で示すように、真空容器1Aの天板にリブ1bを設けて天板の強度を高めるように構成してもよい。この場合、リブ1bを、ポート1aとパワーリードポート30(図1参照)との間に設けることで、2つの節間を補強することができ、支柱7C,7Dを介して振動が伝わるのをより好適に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の超伝導磁石装置を備えた磁気共鳴イメージング装置を示す説明図である。
【図2】超伝導磁石装置の構造を示す模式断面図である。
【図3】超伝導磁石装置に用いられる冷凍機を示す模式断面図である。
【図4】超伝導磁石装置の振動の様子を示す模式斜視図である。
【図5】超伝導磁石装置の変形例を示す模式斜視図である。
【符号の説明】
【0029】
1 超伝導磁石装置
1A,1B 真空容器
2 超伝導主コイル
3 超伝導遮へいコイル
4 冷媒
7C,7D 支柱
10 コイル容器
12 ベッド
13 搬送手段
14 解析手段
20 冷凍機
30 パワーリードポート
35 補給口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状に形成された複数の超伝導コイルを冷媒とともに収納する一対のコイル容器と、
前記各コイル容器をそれぞれ収納する一対の真空容器と、
前記真空容器間を均一磁場空間として、各真空容器を上下方向に相対向させた状態で互いに連結する一対の支柱と、
前記一対の真空容器のうち、上側に位置する前記真空容器の上部に設けられた冷凍機およびパワーリードポートと、を備え、
前記冷凍機は、前記一対の支柱のうち、一方の支柱の上方に配置され、
前記パワーリードポートは、前記一方の支柱とは異なる他方の支柱の上方に配置されることを特徴とする超伝導磁石装置。
【請求項2】
前記パワーリードポートには、冷媒を補給するための補給口が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の超伝導磁石装置。
【請求項3】
前記コイル容器は、超伝導主コイルと、この超伝導主コイルよりも径が大きく形成された超伝導遮へいコイルとを含み、
前記冷凍機は、前記コイル容器の径方向において、前記超伝導主コイルと前記超伝導遮へいコイルとの間に配置されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の超伝導磁石装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の超伝導磁石装置を備えた磁気共鳴イメージング装置であって、
被検体を乗せるベッドと、このベッドに乗せられた前記被検体を撮像領域へ搬送する搬送手段と、この搬送手段によって前記撮像領域に搬送された前記被検体からの核磁気共鳴信号を解析する解析手段とを備えたことを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−125589(P2008−125589A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−311277(P2006−311277)
【出願日】平成18年11月17日(2006.11.17)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(000233228)日立協和エンジニアリング株式会社 (35)
【Fターム(参考)】