超短レーザパルスを使用したレーザシステム
【課題】超短レーザパルスを使用したレーザシステムを提供する。
【解決手段】システムは、レーザと、パルス整形器と、検出機器とを含む。更なる態様では、フェムト秒レーザ及び分光計を利用する。更に別の態様では、レーザビームパルスと、パルス整形器と、SHG結晶とを使用する。更に別の態様においては、多光子パルス内干渉位相走査システム及び方法によって、フェムト秒レーザパルスのスペクトル位相の特徴づけをする。光ファイバ通信システム、光力学療法、及びパルス特性試験において、付加的態様を備えたレーザシステムを使用する。
【解決手段】システムは、レーザと、パルス整形器と、検出機器とを含む。更なる態様では、フェムト秒レーザ及び分光計を利用する。更に別の態様では、レーザビームパルスと、パルス整形器と、SHG結晶とを使用する。更に別の態様においては、多光子パルス内干渉位相走査システム及び方法によって、フェムト秒レーザパルスのスペクトル位相の特徴づけをする。光ファイバ通信システム、光力学療法、及びパルス特性試験において、付加的態様を備えたレーザシステムを使用する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般にレーザシステムに関し、特に、超短レーザパルスを位相変調と共に使用したレーザシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
商業的に実用化されたフェムト秒レーザは、最近まで利用不可能だった。例えば、10フェムト秒以下のレーザパルス持続時間を生成可能なレーザは、従来、極めて高価で、(一例として、広範な冷却のために)非現実的に高いエネルギー消費が必要であり、毎月補充が必要なレーザ色素に依存していたため、商業的には実用不可能となっていた。10フェムト秒以下のレーザの効率は、YAG及びTiの代わりとなる色素及びフラッシュランプ、即ち、発光又はレーザ発光ダイオードによってポンピングされるサファイア結晶の従来の必要性から、2000年までは実用レベルにはなかった。
【0003】
超短パルスは、その広い帯域幅のため、光学素子を介して伝播する際、或いは光学素子から反射される際に、位相歪みの影響を受ける傾向にある。近年、超短パルスの位相を整形する実験的試みが行われている。これは、整形されたパルスが特定の化学反応及び多光子励起の発生を高めることが明らかとなっているためだ。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】アール.トレビーノ外(R. Trebino et al.)、「超短レーザパルスの測定」、オプティックス&フォトニクスニュース第23巻(Optics & Photonics News 23)、2001年6月
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のパルス特徴づけ法は、通常、以下の方法のいずれかによって行われる。自己相関は、パルス持続時間のみを得ることのできる単純な旧来の方法である。更に、周波数分解光ゲート法(以降「FROG」)は、時間−周波数データの反復分析後に位相及び振幅を得る公知の方法である。DOSPM及びスペクトル位相干渉法(以降「SPIDER」)のような干渉法による方法は、周波数分解干渉法データから位相及び振幅を得られる。これらは非常に複雑で高価だが、必要な情報を高い信頼性で提供する。FROG及びSPIDER法は、両方とも、何らかの種類の同期自己相関設定を必要とする。FROG法の場合、自己相関が時間軸を提供するために使用される一方で、分光計が周波数領域情報を提供する。SPIDER法の場合、超短パルスは、自己相関中に三本のビームに分割される。一本のビームのパルスは、剪断基準を提供するために伸長され、他の二つのパルスは、様々な時点で伸長パルスと相互相関される。出力は分光計に送られ、分光計では、信号内の干渉を使用して、電界を再構築する。この余分な同期自己相関ステップは、高い技能を有する操作者を必要とするのに加え、時間及びコストを増加させる。従来の機器及び方法での制限については、上記非特許文献1において説明されている。更に、Grenouille法では、特定のパルス持続時間及び波長のために特別に選択する必要のある倍加結晶及びレンズであるフレネル複プリズムで構成される設備が必要であるため、この方法は柔軟性が低くなる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、超短レーザパルスを使用したレーザシステムが提供される。本発明の別の態様において、システムは、レーザと、パルス整形器と、検出機器とを含む。本発明の更なる態様では、フェムト秒レーザ及び分光計を利用する。本発明の更に別の態様では、レーザビームパルスと、パルス整形器と、SHG結晶とを使用する。本発明の更に別の態様においては、多光子パルス内干渉位相走査(multiphoton intrapulse interference phase scan)(以降「MIIPS」)システム及び方法によって、フェムト秒レーザパルスのスペクトル位相を特徴づける。本発明の別の態様において、システムは、多光子パルス内干渉を利用するために電磁パルス整形設計を利用する。光ファイバ通信システム、光力学療法、及びパルス特性試験では、本発明の付加的態様を備えたレーザシステムを使用する。
【発明の効果】
【0007】
本発明のMIIPSの態様では、反復又は反転手順なしで、二次及び三次位相変調の大きさ及び符号を直接引き出せる単一のビームを利用するため、本発明のレーザシステムは、従来の構成に比べて有利である。したがって、MIIPSシステムは、設定及び使用が遙かに容易であり、これにより、従来のシステム及び方法より正確で、遙かにコストの低いシステムを形成する。更に、本発明のMIIPSシステムは、風、湿度、及びその他の環境的影響による従来のFROG、SPIDER、及びDOSPM法での不正確性を回避する。本発明のMIIPSシステムでは、フェムト秒パルスのような短いレーザビームパルスで最も有効となる全帯域幅を利用しており、これは、一部の従来の機器での単一周波数のみでの最適化とは対照的である。従来は、パルス整形結晶をパルスが通過することよって発生する、複数の対応するパルス ―即ち、第一のポンプ又は基本パルスと、別の第二の基準高調波パルス― の同時使用に起因する固有の時間遅延による時空相関補正のために、低速のピコ秒パルスが必要だったが、本発明のMIIPSシステムによれば、このような必要性を克服する。更に、本発明は、有利なことに、第二の基準パルス(及び対応する時間遅延相関)が必要なくなるように、通信レシーバにおけるパルス信号デコードのための一つ以上の事前に格納された比較値を使用する。本発明は、更に、位相走査により直接、位相関数全体を取得することにより、各パルスに非常に多くの情報を追加することで、パルスのエンコード−デコード相関性を改善する。本発明のパルス内干渉は、自己分離(self separation)を引き起こし(例えば、固有の通信信号ルーティングアドレスの区別)、これにより、非同期の形式で、言い換えると、従来の自己相関又は干渉計等による同期検出の必要性なく、安価なレシーバの使用を可能にする。本発明の更なる利点及び特徴は、添付図面と併せて、以下の説明及び付記した特許請求の範囲から明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、本発明のレーザシステムの第一の好適な実施形態を示す概略図である。
【図2】図2A〜2Cは、本システムで利用される二光子及び三光子励起蛍光の概略的な表現を示す図であり、図2Bは、パルススペクトル(破線)及び位相(実線)の概略図である。
【図3】図3A〜3Dは、それぞれ、一組の二光子及び三光子吸収確率シミュレーション及び利用されたレーザビームパルス形状を示す図であり、図3E〜3Hは、実験結果を示す図である。
【図4】図4A〜4Gは、二光子及び三光子励起蛍光について、システムで得られた実験結果を示す図である。
【図5】図5A〜5Fは、それぞれ、システムで得られたコントラスト比を示す一組の円グラフ及びレーザビームパルス形状グラフを示す図である。
【図6】図6は、光干渉断層計及び光力学療法に応用された本発明のシステムの第二及び第三の好適な実施形態を示す概略図である。
【図7】図7A〜7Cは、システムで利用されたレーザビームパルススペクトル、位相、及びチャープを示すグラフである。
【図8】図8A及び8Bは、システムで得られた、計算による二光子及び三光子吸収確率を示すグラフである。
【図9】図9A〜9Cは、システムで利用された、計算による二光子及び三光子吸収確率を示すグラフである。
【図10】図10は、光ファイバ通信に応用された本発明のシステムの代替実施形態を示す概略図である。
【図11】図11は、光ファイバ通信に応用された本発明のシステムの第四の好適な実施形態を示す概略図である。
【図12】図12A及び12Bは、第四の好適な実施形態のシステムにおいて利用されるコンポーネントを示す概略図である。
【図13】図13は、パルス特徴づけ又は通信で使用される本発明のシステムの第五の好適な実施形態を示す概略図である。
【図14】図14は、第五の好適な実施形態のシステムを示す概略図である。
【図15】図15は、パルス特徴づけで使用される本発明のシステムの第六の好適な実施形態を示す概略図である。
【図16】図16は、第五及び第六の好適な実施形態のシステムの使用によって形成された位相走査を示すグラフである。
【図17】図17A〜17Cは、第六の好適な実施形態のシステムの使用によって形成された位相走査を示すグラフである。
【図18】図18は、第六の好適な実施形態のシステムにおいて利用されるコンピュータソフトウェアのフローチャートである。
【図19】図19は、第六の好適な実施形態のシステムにおいて利用されるコンピュータソフトウェアのフローチャートである。
【図20】図20は、本発明のシステムにおいて利用される固定二次元整形器の好適な実施形態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<透過型能動パルス整形器を備えたシステム>
超短レーザパルスを使用した本発明のレーザシステム21の第一の実施形態は、図1に図示されている。システム21は、フェムト秒レーザ23と、上流格子25と、上流凸面鏡27と、レーザビームパルス整形器29と、下流凹面鏡31と、下流格子33と、検出機器35と、パーソナルコンピュータ37とを含む。パーソナルコンピュータ37は、マイクロプロセッサに基づく電気制御システムと、メモリと、出力画面と、データ記憶装置と、入力キーボードと、リムーバブルディスクとを有する。更に具体的には、検出機器は、分光計39である。レーザビーム43のバーストやパルスは、レーザ23から放出され、光学素子25、27、31、及び33を通り、更には、分光計39による検出及び感知とパーソナルコンピュータ37での更なる評価、分析、比較、及びその後の制御のためにパルス整形器29を通る。
【0010】
レーザは、好ましくは、高ピーク強度(標準的には1010ワット/cm2より大のピーク)を送給可能な超短フェムト秒レーザであり、好ましくは、持続時間100フェムト秒未満のレーザビームパルス、更に好ましくは、50フェムト秒以下、更に好ましい特定の応用例では、持続時間10フェムト秒以下のレーザビームパルスを各パルスバースト又はショットで放出する。材料を改変するのに必要な高強度光学パルスは、カーレンズモードロックチタンサファイア発振器において形成される。こうしたレーザは、数百ナノメートルのコヒーレント帯域幅を生成可能であり、但し、通常は約50nmのみが使用される。出力は、1kHz再生チャープパルス増幅器において増幅してよい。出力パルスは、通常、100fsの長さで、800nmの中心波長と、0.1〜1mJの総パルスエネルギーを有する。好適なレーザとしては、100MHzで15fs未満のパルスを生成可能なKapteyn and Murnaneフェムト秒レーザ発振器や、ダイオードポンピングされ、1kHzで50fs以下のパルスによりパルス当たり0.8mJを提供するSpectra Physics Inc.のHurricaneモデルや、パルス当たり0.2mJを生成し20fs以下のパルスを生成可能なClark−MXR Inc.の非同一線パラメトリック増幅器(以降「NOPA」)をポンピングし、1kHzで150fs以下のパルスによりパルス当たり1.3mJを提供するClark−MXR Inc.のCPA−2001+モデル、が挙げられる。NOPAシステムは、更に10fs〜4.5fsのパルスを生成できる。
【0011】
フーリエ面パルス整形器は、好ましくは、この実施形態で例示した透過型の構成のために、本発明で使用される。超高速レーザパルスは、1〜50回の光学サイクルを含み、数フェムト秒のみ持続する。これは、最新の電子機器より遙かに高速であるため、高速時間ゲートによる整形は非常に困難である。一方、不確定性原理の結果として、光学スペクトルは、数十〜数百ナノメートルに及ぶ。こうした大きな帯域幅は、測定及びフィルタリングが比較的容易であり、スペクトルを周波数領域で整形し、これにより時間パルスを再圧縮時に整形するいくつかの手法が存在する。
【0012】
周波数領域と、パルスを構成する個別の周波数成分とにアクセスするために、二つの連続した分光計を使用した、幾何学的配置が利用される。分光計は、特に、正味の時間的分散を持ち込まないように設計され、即ち、全ての色は、同じ時間内に分光計を通過する。第一の分光計(格子25及びミラー27を含む)は、その分散関数y(α)による線に沿って、非整形パルススペクトルを広げる。光は、この時点で、空間的振幅及び位相マスクパルス整形器29を横切る。マスク出力は、その後、色を再結合して単一の整形パルスにする第二の分光計(格子33及び鏡31を含む)への入口を形成する。
【0013】
パルス整形器29の中心は、フーリエ面に配置された(二つの重複する128ピクセル液晶アレイで構成された)プログラム可能な256ピクセル液晶マスクである。本明細書で想定される応用において、マスクは、個別の周波数の位相をシフトできる必要がある。代替実施形態のパルス整形器用には、位相を制御できる電子的にプログラム可能な別のマスク、即ち、液晶ディスプレイ(以降「LCD」)、音響光学変調器(以降「AOM」)、可変形鏡、及び永久変形鏡が実証されている。LCDパルス整形器は、CRI Co.から入手可能であり、変調器電子ドライバを有する。
【0014】
AOMは、一方の端部に圧電トランスデューサを接着した、反射防止コーティングされた二酸化テルル(TeO2)で構成される。音波の中心周波数は、αc/2π=200MHzである。結晶内の音速vsは、4.2km/sであり、光パルスが結晶内で費やすのは10ps未満となり、音波の移動は、光子場が結晶を通過する間、0.002λ音波長未満となる。光パルスが結晶内を移動する際に、音波は本質的に凍結されるため、y方向で結晶内を移動する音波の複素振幅、A(t)cosαct=A(y/vs)cosαctは、AOMを通過する際に光学場E(α)にマッピングされる。分散光学場の一部が弱い音波に遭遇する場合、その周波数は減衰し、音波搬送波が位相角φによってシフトされる場合、その位相シフトは、光学場に強制(impose)される。このパルス整形器は、AOMの回折効率と格子の回折効率とを含め、約20%の総合効率を有する。整形ビームにおいて振幅及び位相の両方の完全変調を可能にするために、回折光が使用され、非回折の「ゼロ次」ビームは遮断される。整形ビームは、次の形態を有する。
【数1】
ここで、α(ω)xeiφ(ω)=A[y(ω)/vs]であり、αは周波数、eは定数である。図20に関して後で更に説明するように、チャープミラーのような固定パルス整形光学素子も利用可能である。
【0015】
全ての周波数を同位相で有する変換限界パルス(以降「TL」)がパルス整形器に供給され、ここで曲面鏡27がスペクトルをフーリエ面29に焦点合わせする。コンピュータが示すスペクトル成分の位相φ及び振幅Aの変化は、第二の曲面鏡31及び格子33による再構築の前に、レーザパルスを調整するのに使用される。圧縮後、整形パルスは、評価のために分光計39へ向けられる。時間と周波数領域との間のフーリエ変換の関係によって、特定の整形パルスを形成するのに必要なマスクを計算できる。この計算は、以下に基づく。
【数2】
【数3】
ここで、vは波数で示す周波数であり、tは時間、cは光の速度である。
【0016】
この実施形態において、パルス整形器の位相及び振幅マスクはコンピュータによって制御され、これにおいて、レーザパルスの形状は動的な役割を果たす。パーソナルコンピュータ37内のマイクロプロセッサは、その後、レーザ23を制御し、本質的にリアルタイムのフィードバック入力信号を分光計39から受信し、その後、計算、比較、及び評価を実行し、更に、場合によっては、後続のパルス形状の自動変更を実行する。こうした自動化ステップは、必要に応じて、パーソナルコンピュータ出力に基づいた手動によるユーザの計算及び判断に置き換えることができる。
【0017】
<反射パルス整形器を備えたシステム>
本発明の第六の好適な実施形態で利用される反射パルス整形システム121は、図15に図示されており、フェムト秒レーザ123と、上流プリズム125と、部分的に円筒形又は部分的に球形の鏡133と、フーリエ面のパルス整形鏡129と、オフセット又はピックオフ鏡131とを含む。上流プリズム125は、放出されたレーザビームパルスの色を最初に分散させる役割を果たし、一方、鏡133は、パルス整形鏡129に向けて、この分散レーザビームパルスを焦点合わせし、平行化し、その向きを変える役割を果たす。パルス整形鏡129は、所定又は固定のパルス整形面、或いはコンピュータ制御可変形鏡を有する。
【0018】
固定パルス整形器については、図20に図示したように、パターン化整形面は、例えば、周波数分散の方向に沿った正弦波プロフィールを有する。プロフィールが傾斜している場合、垂直軸線は、単一ショットパルスの特徴づけ又は通信用途でのデコーディングに使用可能な異なる位相変調を提供する。表面変調波形は、701として概略的に図示されている。安価なレプリカは、PMMA基板703のようなポリマの射出成形により達成可能であり、反射又は透過モードでの使用に応じて、それぞれ、反射コーティング又は反射防止コーティングできる。実際のパルス整形面の物理特性又は形状は、意図する用途及び意図するレーザビーム入力のための最適化実験により事前に決定され、整形波の各行(又は列)は、直接隣接する行又は整形波形パターンから同位相で移動又はオフセットさせる。余弦波形、階段状波形等、他の波形のパターンを使用することもできる。この実施形態で好適な反射パルス整形器として使用される場合、基板703の前面に銀メッキ705が施される。代替として、固定パルス整形器129が透過光学素子として使用される場合、基板703には反射防止コーティングが施される。基板703は、取り外し可能な形でレセプタクル707にはめ込み可能であり、様々なパルス位相や用途のために、異なる構成とした波形パターンに交換できる。意図する用途での望ましい鏡面形状が把握された後、より安価な固定形状の鏡を利用すれば、実際の生産システムでの機器費用を低減できる。更に、こうしたタイプの公知の設定及び公知の用途では、初期決定が実行された後、コンピュータ及び最適化プログラムは必要ない。恒久的に成形された光学素子によるパルス整形は、fsレーザパルスの位相の特定の調整を達成する。光学素子は、反射式にも透過式にもすることができる。光学素子の運動を使用して、位相関数を奇数から偶数へ走査させることができる。この設定は、fsレーザパルスの位相をエンコード及びデコードするために使用できる。
【0019】
パルス整形器129は、これにより、レーザビームパルスの形状を変えて一つ以上の特定の特性を含め、オフセット又は時間遅延のある形で、同じプリズム及び鏡により逆の順序で反射して戻す。オフセットミラー131は、その後、以降更に詳細に説明するように、分光計、光ファイバセンサ/スイッチ、又は目標となる組織標本等であってもよいレシーバに向けて整形レーザビームを反射する。更に、第一の好適な実施形態で開示したような、インライン光学システムを使用可能であると想定されるが、しかしその場合、フーリエ面におけるパルス整形器は、所定屈折係数の透過光学素子を有する位相マスク整形器、或いは透明な基板上の偏光タイプの正弦マスクに置換される。更に、レーザビームパルス波の位相を遅延できるか、或いは、その波長、タイミング、又は形状特性をその他の形で変更可能なポリマドープガラス又はポリマシートの混合体を利用することができる。
【0020】
代替として、分散光学素子やフーリエ面を必要としないパルス整形にとって十分な、複数の二色性の層を有する背面コーティングチャープミラーのような特定の光学素子も使用できる。許容可能なチャープミラーとしては、Matuschekらの「超平滑広帯域分散特性を有する背面コーティングチャープミラー」、Applied Physics B、第509-522頁(2000年)において開示されている。CVI Laser Corp.の負分散鏡、品番TNM2−735−835−1037も、別の適切な例となる。特定のパルス整形特性をそれぞれが備えた複数の異なるチャープミラーを有する回転可能なホイールも、多数の別個の所定整形パルスを提供するために使用できる。
【0021】
<光干渉断層計>
本発明の第二の好適な実施形態では、レーザ励起又はイオン化のためのレーザシステム221を光干渉断層計(「OCT」)で使用する。一般に、図6は、システム221のOCT用途を例示しており、これには、フェムト秒レーザ223と、レーザビーム整形器229と、ヒト又は動物組織標本241と、光学ゲート251と、画像253とが存在する。レーザ223は、1ピコ秒より短いレーザビームパルスを放出する。整形器229は、三つの部分、即ち、位相マスク要素257を挟む二つの分散要素255で構成される。整形器229は、以降更に詳細に説明するように、ヒト又は動物のDNAに損傷を与える可能性のある多光子励起を本質的に防止する。弾道光子をゲートで制御し、断層計で使用するための画像を描画するために、非整形レーザビームパルスが使用される。光学ゲートは、倍周波数結晶、或いは液体二硫化炭素内のカーゲート、によるアップコンバートによって達成できる。例示のシステム221の構成は、透過画像を想定しており、同じ結果は、代替として、後方散乱画像によっても達成できる。画像253は、ヒト又は動物標本の内部器官のX線タイプの画像のように見えるが、有害な三光子の被曝はない。OCTにおける整形パルスの使用は、優れた画像のためのレーザ強度の増加を提供すると同時に、健康な組織の多光子励起によって発生する悪影響を防止する。後で説明するMIIPSプロセスは、有利なことに、ヒト又は動物組織内の各種色素やその他の化合物を活性化し、化合物特異的又は機能的なOCTないし顕微鏡検査を達成するために使用できる。
【0022】
<光力学療法>
本発明の第三の好適な実施形態では、同じく221に示したようなレーザ励起又はイオン化のためのシステムを光力学療法(「PDT」)で使用する。一般に、図6は、システム221のPDT用途も例示しているが、光学ゲート251及び画像253は必要ない。整形器229は、二光子励起を可能にするが、三光子励起を本質的に防止する。整形器229は、健康な組織の損傷を防止する治療剤のレーザ誘起活性を強化する。本発明のレーザビームパルス整形の使用は、例えば、本明細書に援用する2000年3月28にFisherらに対して発行された米国特許第6,042,603号「分子作用物質の光子活性における選択性を改良する方法」において開示されたような従来の方法により実用可能なものと比較して、PDT用途での優れた制御及び結果を提供する。代替として、パルス整形器は、治療剤の存在に関係なく、多光子遺伝子療法又は破壊のために、健康な組織に損傷を与えることなく、癌細胞を標的とするように調整できる。有利なことに、後で説明するMIIPSプロセスを使用して、特定の薬剤又は化学物質のみを活性化でき、或いは、レーザビームパルスの位相調整及び関連する非線形スペクトル調整に基づいて、レーザパルスを公知の深度までヒト又は動物組織内に入射させることができる。
【0023】
<非線形光学プロセスの制御>
本明細書に全ての用途で応用されるように、蛋白質を含む大分子における一光子又は多光子プロセスの選択的制御は、大きな帯域幅を有する短パルスにおいて発生する多光子パルス内干渉を最大限に利用することに基づいた単純なパルス整形方法を使用することで可能となる。結果は、二桁に近い強度の(裸眼で明確に見える)コントラスト比と共に、堅牢で試料に依存しない並はずれた制御レベルを示す。こうした大きなコントラスト比によって、望ましくない光子及びその他のビーム特性を更に正確にキャンセル制御することが可能となり、各パルスによって引き起こされる非線形遷移が制御されるようになる。鏡129(図15参照)のような受動的光学要素に、単純な位相関数を組み込むことが可能であるため、こうした適用例においては、初期設定後、コンピュータ制御パルス整形器の複雑さや費用を必要としないが、依然としてシステムは利用可能である。
【0024】
本システム及び関連する方法の基礎となる概念を、図2A〜2Cに図示する。多光子遷移は、図2A及び2Cに例示したように、レーザパルスの中心帯域幅ω0が、総遷移エネルギーの数分の一(例えば、二光子では半分、三光子では三分の一)であるときに最適化される。超高速パルスにおいては、帯域幅が大きい場合、パルスの異なる周波数成分(ω0±Ω)が干渉することができ、これにより、多光子励起の確率が減少するのである。図2Bを参照すると、振幅A(Ω)を有する超高速レーザパルスのスペクトルは、中心周波数からの離調の関数としてプロットされる。位相マスクψ(Ω)は、各周波数成分Ωの位相が特定の値を取得するように、パルスに印加される。パルス整形が二光子吸収(以降「2PA」と称す)の確率に与える影響は、次のように計算可能である。
【数4】
三光子吸収(「3PA」と称す)については、次のように同様の式を導くことが可能である。
【数5】
ここで、振幅及び位相は、図2Cに図示したように、二種類の離調値Ω1及びΩ2について導入される。一光子遷移は、パルスの位相によって影響されない。しかしながら、高光子束では、多光子プロセスが開始されるため、排他的な一光子励起の達成は困難となる。
【0025】
二光子及び三光子励起蛍光の概略図を図2A及び2Bにそれぞれ例示する。縦の矢印は、二光子及び三光子遷移を引き起こす超高速パルスを表す。その広い帯域幅から、超高速パルス波は、中心波長ω0から量Ωだけ離調した光子を含む。再び図2Cを参照すると、超高速レーザパルスは、破線の曲線の下に見えるパルススペクトル全体にわたって正弦関数位相マスクを使用して整形されており、発色団の構造も図示されている。
【実施例1】
【0026】
以下の全ての例における実験は、50fsパルスを生成する増幅チタンサファイアレーザを使用して実施した。パルスは、ゼロ分散の二つの格子配置のフーリエ面において空間光変調器(以降「SLM」と称す)を使用して整形した。SLM内の液晶技術に基づいた二つの独立した変調板(それぞれ128ピクセル)は、出力スペクトル、強度、及び極性を変化させずに位相遅延のみが導入されるようにキャリブレートした。809nmを中心とする整形パルスは、二次高調波発生周波数分解光学ゲートにより特徴づけした。全ての位相をゼロに設定した時、レーザパルスは、変換限界近くとなった。特に記載がない場合、測定は、試料において0.4μJ/パルスのパルスエネルギーで行った。実験は、779〜839nmスペクトル域において、図2Bに図示したように、位相関数を正弦波に等しく設定することで実行した。様々な試料からの一光子又は多光子励起プロセスによる放出を、スペクトル全体にわたるマスクの位相シフトδの関数として測定した。最大位相前進又は遅延は、1.5πとなった。
【0027】
式4及び5は、δの関数として二光子及び三光子プロセスで予想される信号を計算するのに使用できる。こうした計算は、位相マスク全体の半分(図3A及び3B)又は全て(図3C及び3D)の期間を有する正弦位相関数について、図3A〜3Hでグラフ化されている。図3A及び3Bにおいて、二光子及び三光子遷移について計算された確率は、πの半整数値でピークに達しているが、図3C及び3Dにおいて、二光子及び三光子遷移について計算された確率は、πの整数値でピークに達している。確率の最大値及び最小値に達する位相関数の形状を、挿入部分として示した。
【0028】
実験データは、図3A〜3Dの計算に使用した位相関数により取得した。これらの実験において、大きな有機分子からの二光子及び三光子放出は、δの関数として検出された。式4及び5によって説明したモデルでは二つのレベルのシステムを仮定しているが、図3E〜3Hは、溶媒の存在によって大きくなった振動状態の多様性を有する複雑なシステムにも、この原理を応用できることを、実験的に証明している。式4及び5によって予測されたピーク及び谷が実験データにおいて観察されたことは注目に値し、本質的に、強度の最大値は、パルスの中心波長に対して位相関数が反対称である場合に見られ、最小値は、対称である場合に見られる。
【0029】
更に具体的には、二光子及び三光子励起蛍光の理論的及び実験的位相マスク制御が、図3A〜3Hに図示されている。式4及び5からは、位相マスクが量δによって変換される時、二光子遷移(以降「P2PA」)及び三光子遷移(以降「P3PA」)の確率が半周期正弦マスク(図3A及び3B)及び全周期正弦マスク(図3C及び3D)について図3A〜3Dに例示したように変調されることが予測される。変換限界パルスは、最大値1をもたらす。図3A及び3Cの小さな挿入部分は、蛍光の最大値及び最小値が発生する特定の位置(図3E〜3H)での位相関数を表示しており、それぞれ、クマリン及びスチルベンで測定された実験的な二光子及び三光子レーザ励起蛍光を、位相マスク位置δの関数として図示している。これらの実験で使用された位相マスクは、計算に使用されたものと同じにした。したがって、パルス整形マスクは、公知の機器及び公知の標本についての計算、実験、又は学習プログラムの値に基づいて、形状を事前に決定又は固定可能である。
【実施例2】
【0030】
全周期正弦位相マスクで得られた様々な試料の実験結果を図4A〜4Gに図示する。図4Aは、位相マスク位置の関数として、842nmで得られたIR144の一光子レーザ励起蛍光(以降「1PLIF」)を示す。この測定は、標本での非線形プロセスを回避するために0.3nJ/パルスで行われた。弱いフィールド形式での一光子プロセスが位相整形への依存を示さないことは注目に値する。図4Bは、500nmで収集したクマリンからの二光子レーザ励起蛍光(以降「2PLIF」)の結果を示す。図4Cのデータは、505nmで検出された組み換え緑色蛍光蛋白質(以降「rGFP」)における2PLIFの依存性を示す。図4Dのデータは、0.3mm β−ホウ酸バリウム結晶からの405nmでの二次高調波発生(以降SHG)信号の強度に対応する。SHGでの最大及び最小の信号は、2PLIFで観察されたものと一致するが、同一ではない。
【0031】
図4Eを参照して、トランススチルベンからの三光子レーザ励起蛍光(以降「3PLIF」)の依存性を例示する。信号は、δの関数として350nmで収集した。この場合、最大コントラスト(最大:最小)は、60:1と測定された。図4Fのデータは、350nmで収集した、Con Aにおけるトリプトファン残基からの3PLIFに対応する。3PLIFにおいて、最大蛍光信号は、変換限界パルス(マスク内の全位相をゼロに等しく設定した時)において得られたものより小さいが、三光子励起での全体的なコントラスト比は優れており、二桁に近づいている。図4Gのデータは、600nmで検出した3mm石英板からの連続スペクトル生成反応(白色光パルスを発生する非線形自己周波数変調プロセス)に対応する。
【0032】
更に具体的には、図4A〜4Gは、位相マスク位置δの関数として取得された一光子放出及び多光子放出の実験測定値を実証している。全てのケースにおいて、位相マスクは、全周期正弦関数である。変換限界パルスで測定された信号は1(unity)である。コントラスト比(最大:最小)は、実験プロットのそれぞれの右上隅に記載されている。ここで、光学非線形性の次数が高くなるほど、観察されるコントラストが大きくなり、したがって、様々な次数のプロセス間での識別が可能になることが見出される。言い換えると、次数が高いほど、光子が多くなり、光子のキャンセルが容易になるのである。更に、コントラスト比が大きくなるほど、多くのバックグラウンドノイズがフィルタで除去される。
【実施例3】
【0033】
図5Aは、高強度パルス(0.5μJ/パルス)で観察された線形及び非線形応答間での最大値の識別を提示している。別個の検出器により、IR144溶液からの1PLIFと、連続スペクトル出力の一部とを同時に収集した。図5A及び5Bに図示したように、一光子プロセス対連続スペクトルについて、それぞれ、>103:1及び1:0.6となる最大値及び最小値のコントラスト比が得られた。この制御は、レーザ顕微鏡又は光ファイバ通信のような高流束の条件下での線形プロセスに関心がある時に極めて価値がある。上述した単純な位相関数を使用することで、図5C及び5Dにおいて実証したように、二次対高次のプロセスを制御する特定の機会の範囲を利用できる。特定のδの値では、比較的高強度のレーザパルス(−1μJ/パルス)についても、連続スペクトルの生成を完全に抑制できる。図5C及び5Dは、2PLIF対連続スペクトルについて、それぞれ、>103:1及び1:4となる最大値及び最小値のコントラスト比が得られることを示している。
【0034】
二光子遷移は、二光子顕微鏡又は二光子PDTでの使用のために三光子プロセスを抑制しつつ達成することができる。このタイプの制御は、遙かに困難である。なぜなら、多光子遷移が一度発生すると、特定の次数で停止させるのが非常に困難であるからだ。2PLIF対3PLIFの制御を調査するために、クマリンとフルオランテンとの混合物を作成した。これら二分子からの蛍光は同じスペクトル領域で重複するため、二信号間の分離は、時間ゲートによって達成した。クマリン蛍光は、最初の20ns中に495nmで検出され、一方、フルオランテン蛍光は、初期立ち上がりから40ns後に開き120nsに渡って持続するゲートにより460nmで検出され、。図5E及び5Fに提示したように、2PLIF対3PLIFについて、それぞれ、1.4:1及び1:2.2となる最大値及び最小値のコントラスト比が得られた。図5A〜5Fに提示したコントラストデータは、変換限界パルスがプロセスに対して等しい強度を発生させる時に得られた。更に優れたコントラストは、特に多光子プロセスが共振から離調される際に、以下の項で説明するような追加パルス整形を使用することで取得できる。
【0035】
fsパルス整形器の仕組みは、多光子パルス内干渉を利用して、バックグラウンドのない機能画像(pH、Na若しくはCa濃度勾配、電界、電荷、蛍光プローブ、ナノクラスタ、又は量子ドット、化学組成)を達成するのに使用できる。例えば、A.H.Buist、M.Muller、R.I.Ghauharali、G.J.Brakenhoff、J.A.Squire、C.J.Bardeen、V.V.Yakovlev、及びK.R.Wilsonの「高強度チャープパルスによる微視的化学環境のプローブ」、Optics Letters 24、第244-246頁、(1999年)がある。Buistらは、線形チャープを使用して、pH感受性色素のpH環境を大まかに識別できることを明らかにしたが、本発明によれば、位相変調、及び多光子パルス内干渉を特異的に利用することにより、更に多数のpH感受性色素による遙かに敏感なpH感度を達成することが可能である。同じ原理を使用して、ナトリウム、カルシウム、又は電荷を含むその他の化学的勾配を、選択的にプローブすることもできる。あるいは、二光子又は三光子励起により、色素、ナノクラスタ、又は量子ドットといった複数のプローブを選択的に励起できる。
【0036】
<多光子プロセスの所定のパルス整形及び位相制御>
本発明では、(a)チャープマスクパルス整形器と、(b)マスクパルス整形器のための位相対周波数の平滑関数との組み合わせにより、大分子、蛋白質、及びその他の凝縮相材料に最適化された「多光子パルス内干渉」として説明される現象を最大限に利用する。以下の式は、適切な位相マスクを見つけるための予測の便宜を与えるものである。二光子遷移の確率は、任意のパルス形状について、次のように計算できる。
搬送波周波数ω0及び遅い振幅E0(t)を有する電界について、次の通りとなる。
【数6】
ここで、搬送波周波数Ω=ω−ω0周辺のフーリエ画像F0(Ω)は、次のように書くことができる。
【数7】
共振周波数ωでの二光子遷移の振幅は、次の通りである。
【数8】
ここで、離調Δ=ω−2ω0であり、二光子遷移の確率は、次の通りである。
【数9】
【0037】
更に、畳み込みのフーリエ画像は、フーリエ画像間の積となる。
【数10】
ここで、二つの関数(f)及び(g)の畳み込み(*,Δからの関数)は、次の通りである。
【数11】
直接(T,Ωからの関数)及び逆(T−1,tからの関数)フーリエ画像は次の通りである。
【数12】
更に、直接及び逆変換の間の関係は、次の通りである。
【数13】
したがって、逆変換を使用することで、式は、次のように書くことができる。
【数14】
また、式14は、積分の形で次のようになる。
【数15】
【0038】
時間−周波数変換を計算できる。式7のスペクトル表現と、式15の畳み込み定理とを使用して、式8は、二光子遷移の式を得るために次のように書き換えることができる。
【数16】
この式は、レーザパルスF0(Ω)のスペクトルと、試料の吸収スペクトルに依存するF0(Δ−Ω)の離調スペクトルとを前提とした二光子吸収振幅を提供する。
【0039】
三光子遷移の確率は、その後、計算可能である。
遷移の複素振幅は、次の通りである。
【数17】
ここで、離調Δ=ω−3ω0となる。式6のフィールドの逆フーリエ表現を使用することで、式17は、次のように書き換えることができる。
【数18】
次に、式18は、新しい関数G(Ω)を使用して書き換えることができる。
【数19】
ここで、G(Ω1)は、積分の核として定義される。
【数20】
更に、畳み込みの式15を使用することで、以下の式が得られる。
【数21】
【0040】
式20の逆フーリエ画像のフーリエ画像は、式13と式15において表現された畳み込み定理の積分の形との関係を使用して、次のように中間関数を定義する。
【数22】
【0041】
離調したΔ=ω−3ω0の三光子遷移に関する最終式は、積分の次数を変更した後、式21及び22を使用することで得られる。
【数23】
確率は、次のようになる。
【数24】
上記の方法によって、漸化式によってn光子遷移に関する式が得られた。
【数25】
ここで、離調はΔ=ω−nω0である。したがって次の通りとなる。
【数26】
【0042】
更に、(溶液及び凝縮相材料において遭遇するような)不均質な広がりを考慮に入れることが望ましい。式25によって定義された振幅を有するスペクトル密度gn(ω)を備えた分子におけるn光子遷移に関する積分された確率は、加重平均に比例する。
【数27】
変換限界レーザパルスの場合の正規化はNnで、次のようになる。
【数28】
ここで、次の通りとなる。
【数29】
【0043】
上の式6〜29は、一般的な結果を提供する。しかしながら、特定の多光子プロセスを最小化又は最大化する位相マスクを定義するためには、ユーザに対して、以下のパラメータを定義する必要がある。第一に、図7Aのレーザパルススペクトルを定義する必要がある。パルスが短いほど(スペクトルが広いほど)、優れた制御となる。45fsパルスは十分に使用できたが、20又は10fsは、更に優れた結果につながる。搬送波周波数(又は中心波長)も、可用であれば定義する必要がある。パルスの波長を調整することで、特定のプロセスを強化できるが、通常は必要ない。第二に、位相変調器(又は、代替として、SLM、可変形鏡、チャープミラー、その他)は、パルススペクトル全体をカバーするべきであり、定義する必要がある。第三に、位相マスクの定義を導入するべきである。図7Bの単純な正弦関数は、極めて良好に機能するが、位置の関数として対称及び反対称となり得るその他の関数も適切となる。第四に、正又は負の線形チャープφの追加は、図7Cにおいて表現されるような、観察される制御を更に高めるものであり、定義するべきである。本明細書で提示した例において使用した位相マスクは、次のように定義される。
【数30】
ここで、δは、スペクトル全体にわたる正弦関数(中心化)の位置であり、φaは、最大位相遅延であり、Npixelは、図7Bに例示したようなSLMにおけるピクセル数である。
【0044】
チャープは、追加された場合、次のように定義できる。
【数31】
ここで、βは、図7Cにおいて表現された線形チャープの量である。したがって、チャープを有する完全な位相マスクは、次のようになる。
【数32】
【0045】
図8A及び8Bは、提示した式と、図9A〜9Cの破線によって計算されるような吸収スペクトルとを使用して計算された、二光子及び三光子吸収確率を示している。図9Cは、図9A及び9Bに記載した吸収スペクトルの二つの異なる組み合わせについての二光子:三光子吸収の計算された比を示している。したがって、分子、蛋白質、及び非線形光学材料における多光子プロセスの堅牢な制御は、適応学習、能動学習、及び自己最適化学習のいずれかのプログラム及び制御システムによって、或いは、計算型、既定型、又は固定型の受動的レーザビームパルス整形機器によって、達成することができる。そのため、安価な固定位相マスクを、実験前に、更にはコンピュータ制御整形器及び学習プログラムなしで設計し、大きく複雑な分子や、光力学療法における蛋白質や、光学断層計や、外科手術(非線形エネルギーを最大化するための五光子以上の光子波伝達によるレーザ切断等)や、例えば、(a)光重合(プロセスにシード(seed)するための光子対のスイッチングによる)、(b)電荷移動、(c)ラジカル反応、(d)求核攻撃、及び(e)求電子攻撃の光化学制御等のための多光子プロセスの次数を制御できる。
【0046】
<通信>
図10を参照すると、本発明のレーザ励起システム421の代替実施形態は、フェムト秒レーザ423と、光ファイバ451と、レーザビームパルス整形機器429と、レーザビームパルス非整形機器453と、光スイッチ又はセンサ並びに関連回路や電気制御ユニットを含むレシーバ441とを利用する。レーザ423は、それぞれが1psより短い一連のレーザビームパルスを、接続されたファイバ451へ放出する。パルス整形機器429は、固定されたパルス特性変更形状を備えた既定マスクタイプ(計算された正弦波表面形状を備えるもの等)であり、ファイバ451に接続された三つの要素、即ち、回折格子を組み込んだファイバ等の分散要素455と、ドープガラス又はポリマシートを使用して作成可能な位相マスク要素457と、スペクトル的に分散した光を受け入れ、再びファイバ451に結合するための、要素455と同様だが反転された分散要素459とを有する。
【0047】
整形レーザビームパルスは、整形機器429において印加又は形成された独自の位相関数のため、非線形歪みの影響を受けずに、ファイバ451を介して長距離を移動できる。例えば、赤色スペクトルは、正確な正弦波の形で、青色スペクトルの前を進ませてよい。非整形機器453は、その後、整形機器429によって持ち込まれた位相の変化を反転させる。非整形機器453は、整形機器と同様に構築されるが、マスク要素457によって生じたパルス特性の変化を相殺する異なる位相マスク要素461を備える。代替として、波の建設的又は破壊的参照による光スイッチングのために、音響光学変調器又は過渡回折格子を使用できる。整形及び非整形は、チャープミラー又はスペクトルマスクを用いても達成できる。
【0048】
したがって、特に非線形又は多光子放出において、レーザビームパルス形状又はその他の特性を正確に制御する本発明の能力は、通信伝送の品質を大幅に改善する一方で、自己収束、自己位相変調、及びファイバの破壊の可能性を最小化する。本明細書の全ての実施形態において説明するような超高速レーザビームパルスのパルス特性制御は、Mitraらの「光ファイバ通信の情報容量の非線形限界」、Nature、第411巻,第1027-1030頁(2001年6月28日)において説明されるような、光ファイバ線における非線形伝播チャネルの乗法的ノイズ効果による混乱を、防止しないとしても最小化するはずである。更に、このタイプのパルス整形システムは、1ps以下の短いレーザパルスを使用した潜水艦同士の通信のために、塩水の海中においても利用できると想定される。このタイプのパルス整形は、ソリトン形成を誘導し、通信用の最低限の歪みを有するパルスを達成するために使用できる。更に、MIIPSを使用して、レーザパルスが空気中又は水中で伝わる際に、取得した二次位相変調の大きさを決定することで、fsレーザエミッタの距離を測定できる。この方法は、反響又は反射を必要としない。水中では、遙かに大きな分散のため、長いパルス(1ps)が望ましい。空気又は水という伝送媒体に応じて、更には、予想される距離に応じて、異なるパルスが必要となる。空気中では、持続時間10〜20fsの短いパルスが好適となる。水中では、遙かに長い持続時間を有するパルスが好適となり、例えば、100mの距離では、100psのパルスが好適となる。
【0049】
図11、12A、及び12Bを参照すると、本発明のシステムの第四の好適な実施形態は、光ファイバ通信に使用される。それぞれが通信メッセージ又は信号を送信する多数の送信ユーザは、電話491、パーソナルコンピュータ、ファクシミリ装置等といった通信機器を、お互いから離れた場所で使用している。こうした遠隔トランスミッタは、電線、光ファイバケーブル、マイクロ波信号等を介して、コンピュータ化された中央演算処理装置493を含む「スマート」な主トランスミッタアセンブリに接続される。位相変調パルス整形器505は、CPU493によって能動的に制御される。レーザ509及び整形器505も、主トランスミッタアセンブリの一部として収容される。レーザ509は、整形後に光ファイバケーブル497内で搬送される超短レーザパルスを放出する。超短レーザビームパルスは、現在利用可能な光ファイバケーブルの制限に基づいて、約100フェムト秒の持続時間を有するが、50フェムト秒未満のパルス持続時間が好適となり、10フェムト秒未満のものが、光ファイバが将来的にこれを可能にする場合、最も望ましい。例えば、内部に穴を備えた光ファイバのような光バンドギャップ材料は、約10フェムト秒のパルスの使用を可能にし得る。
【0050】
パルス整形器/位相マスク505によって、各レーザビームパルス位相は、各ピークの二次及び三次高調波を調整し、例えば、各パルス周波数において複数のピークを発生させる。ただしこのような構成に限定されない。これにより、ルーティングアドレスのエンコードが可能となり、能動的に変更される各放出パルスの整形と組み合わせたレーザビーム放出のCPU制御に基づいて、関連する通信情報を各レーザビームパルス内にエンコードできる。
【0051】
付加的なレーザや複雑な計算機能を必要としない「ダム」な中央レシーバ501は、光ファイバケーブル497の下流端部に接続される。レシーバ501は、収束レンズ515と、厚SHG結晶507’と、検出器511とを含む。光ファイバケーブル497を介して伝送された各レーザビームパルスは、レンズ515上へ分散され、レンズ515は、各パルスの焦点を結晶507’に合わせ、収束角的な態様でこれを結晶507’へ方向付ける役割を果たす。厚光学結晶507’は、本明細書において、約0.5ミリメートルを上回る透過経路の厚さを有するものとして定義され、薄光学結晶507(図15参照)は、本明細書において、約0.5ミリメートルを下回る透過経路の厚さを有するものとして定義される。厚結晶の好適な厚さは、50フェムト秒以下のパルス持続時間で約3.0ミリメートル、50〜200フェムト秒のパルス持続時間で5.0ミリメートルである。厚結晶507’は、パルス整形器によって以前に整形されたように、各パルス内で二次高調波及び二次スペクトルを形成する。言い換えると、厚結晶は、位相整合角度の要件のため、別個の分光計を使用することなく、本質的に色スペクトル全体を分散させる。
【0052】
厚結晶から角度を有して分散した各分離色周波数は、個別の通信ルーティングアドレスと、実際の通信情報とを包含するようにパルス整形器によってエンコードされ、その後、線形アレイを利用したCCDカメラのような、マルチプレクサタイプの検出器511によって検出される。あるいは、検出器511は、もう一つの次元を追加することで高いデータ密度を達成するために使用可能な二次元アレイである。代替として、検出器511は、リモートコントローラ/副検出器に接続される光ファイバアレイであることも想定される。データは、付加的な基準パルスを使用せずに、情報を包含する伝送パルスのみを使用して、非同期で読み取り可能である。単一の検出器511によって、スペクトル全体で分離された各パルスにおいて搬送された検出信号をデジタル化し、電線、光ファイバ、マイクロ波等を介して、レシーバ501内部又は外部の個別のデコードマイクロプロセッサコントローラ503へ送信する動作が可能である。一組の事前に格納された変数又は復号情報若しくは鍵は、トランスミッタ495からの同期通信伝送(言い換えると、補完的な位相を提供する第二のレーザパルス)を必要とすることなく、検出器511が受領した対応する各デジタル化通信信号をデコードするために、各コントローラ503のメモリ内に配置される。デコードされた通信は、その後、所望の識別ルーティングアドレスにおいて、電話505、パーソナルコンピュータ、ファクシミリ装置等によって受信するエンドユーザに送信される。代替として、コントローラ503は、検出器511によって検出された信号に基づくデジタル化オン/オフ自己スイッチングモードにおいて利用可能なフォトダイオードのような単純な光検出機器に置き換えることができ、制御又は遠隔目的地への情報の送信を実行できる。本発明の現時点で好適な通信の実施形態による送信情報のデコードに、干渉法及び同期レーザパルスが必要ないことには大きな意味がある。更に、パルス整形器505が二次高調波発生、或いは、限定を意図しない例として周波数混合、差周波数混合、四波混合を含む他の任意の非線形混合法を用いて各パルスをエンコードできることは、注目に値する。
【0053】
本発明は、単一の特定の波長の放出を制御するために補完的な位相を供給するために処理が困難な同期基準パルスをデコーダにおいて利用する従来の実験と対比させるべきである。この従来例は、Z.Zheng及びA.Weinerの「スペクトル的に位相をコード化したフェムト秒波形を使用した二次高調波発生のコヒーレント制御」、Chemical Physics 267、第161頁(2001年)において開示されている。しかしながら、この従来のアプローチでは、時間及び空間において重複したパルスが必要で、制御が困難であり、単一のパルス周波数のみを対象としていた。
【0054】
<多光子パルス内干渉位相走査>
本発明の多光子パルス内干渉位相走査(以降「MIIPS」)システム及び方法は、フェムト秒レーザパルスのスペクトル位相を特徴づける。この単一ビームの方法では、反復又は反転手順なしで、二次及び三次位相変調の大きさ及び符号(言い換えると、線形及び二次チャープ)を直接取り出せる。MIIPSは、チャープ超短パルスからの正確な位相の取り出しを達成する。二次高調波スペクトルはパルス内の全周波数の相対位相に依存するため、MIIPSでは、同期自己相関、ビーム分割、又は時間遅延を必要としない。パルスの振幅は、通信レシーバ内の分光計から直接取得される。fsレーザ123(図15参照)からのパルス内の全周波数成分の位相を正確に決定するために、A.M.Weinerの「空間光変調を使用したフェムト秒パルス整形」、Rev. Sci. Instrum. 71、第1929-1960頁(2000年)において説明されるもののようなパルス整形器を利用して、後で更に説明するように、この情報を直接得られるように設計された基準位相関数を導入する。この整形パルスは、薄SHG結晶507(図15参照)によって周波数が倍加され、出力は、分光計503に向けられる。
【0055】
本発明のシステム及び方法は、主に、超高速レーザパルスの周波数の関数として位相をデコードすることを目的としている。測定には、レーザパルスの二次電界の強度の決定が必要となる。この特性は、周波数を倍加した後、レーザのスペクトルを測定することで、測定できる。パルスのスペクトルと二次高調波のスペクトルとの比較は、位相歪みをデコードするのに十分である。この単純なアプローチは、あらゆる非対称位相関数において良好に機能する。対称位相関数には、潜在的な曖昧さが存在する。例えば、二次チャープは、二次高調波スペクトルの減衰のみにつながり、この減衰だけでは、チャープの符号を決定することが不可能である。公知の位相関数によって追加的に整形されたパルスからのSHGスペクトルを比較する設定により、こうした曖昧さは解消される。結果的に生じたデータは、符号を含め、超高速パルスのスペクトル位相を決定するのに十分な情報を含む。
【0056】
通信機器として、上記のシステムは、例えば、二次高調波発生スペクトル等の非線形光学変換を調整する多光子パルス間干渉を利用することで、超短パルスに導入された位相を使用して、位相エンコード済みのデータ伝送をデコードできる。エンコーダは、例えば、二次高調波発生等の非線形光学変換の際に特定の波長でのピーク高さの特定のセットが得られるような情報をエンコードするのに使用できる。このエンコーダは、二次スペクトルのピークを形成するために、正弦又は余弦関数を使用できる。逆に言えば、エンコーダは、二次スペクトルの多数のピークを形成し、これにより、更に多数の通信ビットを達成できる。本発明により、本明細書で説明するような位相関数を使用した整形パルス位相の高速エンコード及びほぼ瞬間的なデコードが達成できる。
【0057】
薄倍加結晶を使用する場合、格子、プリズム、又は同様の機器といった分散分光計503(図15参照)は、位相変調によって結果的に発生した波長同調を検出する必要がある。しかしながら、薄二次高調波発生結晶507’(図12B参照)上で信号ビームを厳密に集束させる場合、異なる波長は、異なる場所へ移動する。厳密な集束、例えばf/1は、入射光が、一つのみではなく、多数の位相整合角度をサンプリングする状態を確保する。位相整合ビームが結晶507’に入る際には、メッセージに印加された位相に基づいて、一方向が好適となる。したがって、パルスに印加された位相は、メッセージによる「自らのルート指定」に使用できる。こうした応用は、集束が最低限であるか、或いは存在しないため、位相整合角度によって制限された狭小な周波数変換範囲を有する長いSHG結晶が使用される他の応用とは、関連はあるが異なるものとなる。こうしたケースでは、二つの出力のみが、可能な放出となるか、或いは放出が存在しない。本発明では、多数の波長での放出が可能となり、これにより、大きな多重性を提供する。
【0058】
本発明を特徴づけに使用する場合、基準又は公知の位相関数が、位相整形器129(図15参照)又は代替として505(図14参照)を使用して、未知の位相に重畳されることは注目に値する。二次元プリセット固定パルス整形マスク(図20に図示したもの等)を利用して、位相の決定又は特徴づけ、或いは更に、通信におけるエンコード及びデコードのためのワンショットの方法を可能にできる。このワンショットのアプローチにより、位相マスクパルス整形器は、複合二次元位相を含むパルスを生成する。非線形光学変換後、こうしたパルスは、より従来的なパルス整形器の場合に必要となる多数のパルスではなく、一つのパルスから、数百のスペクトルを発生させる。非線形光信号を検出し、全ての情報を取り出すために、二次元CCDカメラが使用される。この単一ショットシステム及び方法は、多数のパルス間の不安定性を取り除き、従来のアプローチに比べ、遙かに高速となる。更に、二次元CCD検出器511では、可動又は可変形パルス整形マスクを必要とせず、単一の次元の測定値を、位相走査グラフに図示したような更に好ましい二次元の測定値に変換するために、コンピュータ531内で多量の計算を行う従来の必要性が存在しない。実験室での試験及び標本の光学歪み分析に加え、この単一ショット構成を利用したMIIPSシステム及び方法は、大幅に多くのエンコード情報を各パルス位相に追加し、追加的なエンコード変数を供給するために、一部の通信状況にも応用できる。
【0059】
MIIPS法は、二次高調波発生と、他の非線形光学プロセスとがレーザパルスのスペクトル全体で位相関数φ(ω)に依存する原理に基づいている。位相関数は、搬送波周波数Ω=ω−ω0周辺のテイラ級数において以下のように拡張できる。
【数33】
ここで、最初の二項は、それぞれ、相対(共通)位相及び時間遅延を提供している。第三及び第四の項のみが、位相歪みに関与する。こうした高次の項は、MIIPSにおいて、以下を求めるために基準位相関数をパルスに重畳することで取り出される。
【数34】
ここで、第一の項は、整形器によって導入される最大位相振幅α、周期γ、スペクトルウィンドウ内の絶対位置δの基準位相関数である。φ(Ω)は、式33によって提供される。
【0060】
Ωの関数としての最大SHG信号は、d2ψ(Ω)/dΩ2=0の時に得られる。基準位相関数内のパラメータは、レーザパルス内において位相歪み(φ’’、φ’’’、...)を取得可能なプロットを得るために変更できる。(波長δの)MIIPSトレース内の最大信号は、以下によって与えられる一連の線を記述する。
【数35】
ここで、δmaxは、最大SHG信号が取得された位置であり、δ0=arc cos[φ’’/(αγ2)]であり、λmaxは、最大SHG信号の位置である。
【0061】
位相関数を取り出すことが可能な完全なデータセットは、パラメータδの関数として得られた一連のスペクトルで構成される。結果として生じた、図16に図示した実験的MIIPSトレースは、φ’’、φ’’’、及び更に高次の項を以下のように抽出するために必要な情報を含む。第一に、式35から予測されるようなλmax(δmax)に従う一連の線にデータを一致させる。(線形チャープに関与する)二次位相変調は、以下に従って、SHG最大値間の距離x1及びx2から直接決定される(図16参照)。
【数36】
φ’’の大きさ及び符号は、MIIPSトレースから直接取得されることに留意されたい。更に、測定値の精度は、基準位相関数パラメータαγ2を低減することで、小さな位相歪みについて改善される。
【0062】
三次位相変調(二次チャープ)は、最大SHGの特徴がλδ平面において形成する傾斜Δδ/Δλによって決定される。分析上、三次位相変調は、以下によって与えられる。
【数37】
ここで、傾斜は、nm−1の単位で測定される(図16参照)。自己位相変調及び二次位相成分のような高次の位相歪みは、最大SHG応答によって定義される線の曲率から取得できる。こうした高次の項は、常に必要な訳ではなく、MIIPSの裏側にある理論の更に複雑な提示のために残される。図16〜17Cに図示した実験データとの一致は、式35によって提供され、位相パラメータは、式36及び37により抽出される。
【0063】
図15に例示したMIIPSのバージョンは、薄SHG結晶507と、分光計503と、パルス整形器129と、フェムト秒レーザ123とを使用する。fsレーザパルスが好適だが、本明細書で開示した試験データでは、再生増幅したTi:サファイアレーザからの50fsパルスを利用しており、これにおいて、パルスエネルギーは、5μJまで減衰した。本明細書の試験データでは、0.3mmのβBBOタイプI結晶をSHG507に使用しており、出力は、冷却CCD検出器511を備えた分光計503に対して減衰及び方向付けを行った。システム121は、更に、リダイレクトミラー513と、二つの石英円柱レンズ515(焦点距離200mm、上流のものは焦点を合わせるため、下流のものは平行化のため)とを有する。試験には、空間光変調器を、二つの128LCD素子(CRI Inc.より型番SLM−256として入手可能)で構成されたパルス整形器として使用した。試験では、パルス整形器を慎重にキャリブレートし、極性又は振幅に変化のない(1度より優れた)正確な位相遅延を提供した。データを取得するのに使用した位相歪みは、再生増幅後にパルス圧縮器で生成した。
【0064】
図16の実験結果は、変換限界に近いレーザパルスに対応する。データの分析は、二次及び三次成分での残留位相歪みを示す。位相マスク位置dの関数としてのSHG強度は、輪郭として提示されている。斜線は、特徴間の間隔と特徴が形成する角度とを使用して、式35及び36を使用した実験データに一致させている。図17A及び17Bは、正及び負の線形チャープについて得られたデータを提示ししてる。SHG信号の間隔における変化が図示されている。両方のケースにおいて、ある程度の二次チャープが存在する。対照的に、図17Cは、重度の二次チャープについて得られたデータを図示している。この場合、SHGの特徴の角度は、明白に異なっている。このデータは、相対的に少量の線形チャープを有する。言い換えると、図17A〜17Cにおいて、実験データは、パルスについて、大きな位相歪みを有している。図17A及び17BのMIIPSデータは、実質的な三次成分に加え、正及び負の二次位相歪みを示している。特徴間の距離の差は、式36を使用してφ’’の符号及び大きさを取得するために使用できる。検査によって二次位相変調を決定する能力は、超短パルスが任意の光学媒体を介して伝搬する時の正常分散に由来することを考えると、非常に価値がある。
【0065】
著しい三次位相変調を有するパルスについて取得したMIIPSトレースは、図17Cに例示されている。特徴間の角度の差は、式37を使用して定量的に決定される三次位相変調の存在を示している。次のような利点を備えたMIIPS法を使用して、多数の追加的な測定を実行した。設定は、SHG結晶を追加し、出力を分光計に送信する程度の単純なものである。低強度レーザ(<0.1nJ)では、SHG結晶にレーザの焦点を合わせるだけで、変換効率を増加できる。
【0066】
MIIPS法の分解能及び範囲は、基準関数パラメータに正比例するため、必要に応じて調整するのが容易である。範囲は、|φ’’|<αγ2及び|φ’’’|<αγ3によって与えられる。分解能は、整形器の分解能によって決定され、この場合、φ’’及びφ’’’の両方について、全範囲の一パーセント未満となることが確認された。例えば、φ’’値は、10〜100fsパルスに対して10〜105fs2の範囲で決定できる。容易性及び精度から、この方法は、変換限界に近い評価レーザパルス及び光学素子による位相歪みの評価にとって実用的なものとなる。
【0067】
次に、図13及び14を参照すると、自己超高速スイッチングは、パルス整形器505におけるパルス位相変調と、多光子パルス内干渉を発生させる薄SHG結晶507と、分散光学素子523と、CCDカメラ検出器511とに基づいている。
【0068】
図18は、図15に図示したパーソナルコンピュータ531のマイクロプロセッサ制御ユニットにおいて使用されるソフトウェアロジックの流れを例示している。このソフトウェアは、コンピュータのメモリチップのような媒体に格納され、光学素子の分析のために非線形位相歪みを決定する。この方法は、位相走査によるパルスの決定の使用に基づいており、測定は、様々なレーザパルス強度で実行できる。自動パルスチャープ判定のソフトウェアロジックのフローチャートは、図19に図示している。このソフトウェアも、コンピュータのメモリに格納され、パルス圧縮器においてパラメータを調整して、歪みを取得し、チャープのレーザ成分を随意的に調整できる。この方法は、パルス整形器の使用に基づいており、更に、次の基準位相関数を使用して、位相パラメータδの関数として、SHGのスペクトルである位相走査を取得することに基づいている。
【数38】
この方法は、反復されず、学習アルゴリズムなして、所望の値を直接取得する。したがって、この方法は、非常に安定しており、空間及び時間における二つのパルス間の重複に依存しない。単一のレーザビームのパルスは、薄SHG結晶において、自らの分析を行う。
【0069】
要するに、本発明は、フェムト秒パルスのスペクトル位相を特徴づけるシステム及び方法を提供するこの単一ビームの方法は、線形及び二次チャープの大きさ及び符号を高い分解能で取り出すことができる。パルスの取り出しは、反復又は反転手順なしで、位相歪みをもたらす分析的表現に基づく。レーザビーム増幅圧縮器において格子間隔を機械的に調整することで、この歪みを補正するのに使用可能なノブがレーザに存在することから、線形及び二次チャープ値と、ある程度の三次チャープ値とは、重要となる。方法は、非常に短いパルスで使用できる。この調整は、図19において開示したようなコンピュータ制御ソフトウェアにより自動的に制御できる。方法は、非常に多用途であり、低コストの既製のSHG結晶が存在する任意の波長に対して、高強度又は非常に低強度のパルスで使用できる。MIIPSは、更に、気体中で三次以上の高調波を取得することで使用できる。最大信号は同様に式35と一致するため、この方法は、SHG結晶が利用できない波長領域のパルスの特徴づけにも有用となる。要するに、MII及びMIIPSの用途は、次の通りとなる:
MIIは、SHG、和周波数発生、差周波数発生、又は四波混合等、一つの非線形光学プロセスが施される限り、自己スイッチングパルスを形成するのに使用可能であり、
MIIPSは、具体的には二次及び三次位相歪みについて、自動レーザ最適化を可能にするのに使用可能であり、
MIIPSは、パルス特徴づけに使用可能であり、
MIIPSは、光学素子によって誘導された位相変調を測定するのに使用可能であり、同様に、基板の厚さを測定するのに使用可能であり、
MIIPSは、位相内に格納された情報(アドレス及び/又はメッセージ)をデコーディングするのに使用可能であり、
MII現象を最適化するために動作する整形器は、自己デコードメッセージをエンコード可能であり、
MIIは、fsパルスからの三光子によるDNAの損傷を防止するために使用可能であり、
MIIは、明確な特定の深度でPDT作用物質の活性化を最適化するために使用可能である。
【0070】
以下の参考文献は、二光子感光性樹脂開始剤について開示している。
(1)「二光子吸収発色団に基づく新しい感光性樹脂及び三次元微細加工及び光ストレージへの応用」、B. H. Cumpston, J. E. Ehrlich, L. L. Erskine, A. A. Heikal, Z.-Y. Hu, I.-Y. S. Lee, M. D. Levin, S. R. Marder, D. J. McCord, J. W. Perry, H. Rockel,及びX.-L. Wu、Mat. Res. Soc. Symp. Proc.、第488巻、「有機固体材料の電気、光学、及び磁気特性IV」(MRS、ワレンデール、1998年)、第217頁、及び、
(2)「三次元光データストレージ及び微細加工のための二光子重合開始剤」、B. H. Cumpston, S. Ananthavel, S. Barlow, D. L. Dyer, J. E. Ehrich, L. L. Erskine, A. A. Heikal, S. M. Kuebler, I.-Y. Sandy Lee, D. McCord-Maughon, J. Qin, H. Rockel, M. Rumi, X.-L. Wu, S. R. Marder及びJ. W. Perry、Nature、近刊。多光子パルス内干渉は、有利なことに、この非線形光重合を強化するのに使用できると考えられる。
【0071】
以上、本発明の制御システム及びシステムの好適な実施形態について開示してきたが、本発明の趣旨から逸脱することなく、様々な変形を行い得ることは理解されたい。例えば、好適なものとして説明したパルス整形、波長、及び持続時間の特性以外の他のレーザビームパルス特性を本発明により変更及び利用できる。更に、追加のソフトウェアサブルーチン及び統計分析を利用できる。更に、その他の光学及びパルス整形コンポーネントを説明したものの代わりに使用できる。最後に、アナログ、ソリッドステート、及び光ファイバ電気制御回路を、マイクロプロセッサ及びその他のコンピュータ回路に置き換えること、或いは追加して使用することが可能である。レンズ及び鏡を含む様々な光学素子を使用して、反射、平行化、焦点合わせを達成できる。追加として、格子及びプリズムのような分散光学素子は、交換可能である。レーザ誘導プロセスの検出では、レーザ励起蛍光、ラマン分光法、核磁気共鳴、ガスクロマトグラフィ、質量分析法、及び吸収分光法を含め、様々な分光法を使用してよい。様々な材料、標本、コンポーネントについて開示してきたが、他の様々な材料、標本、及びコンポーネントを利用し得ることは理解されたい。前記特許請求の範囲は、本発明の本来の趣旨に含まれる開示実施形態からの上記及び他の任意の逸脱を包含するものである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般にレーザシステムに関し、特に、超短レーザパルスを位相変調と共に使用したレーザシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
商業的に実用化されたフェムト秒レーザは、最近まで利用不可能だった。例えば、10フェムト秒以下のレーザパルス持続時間を生成可能なレーザは、従来、極めて高価で、(一例として、広範な冷却のために)非現実的に高いエネルギー消費が必要であり、毎月補充が必要なレーザ色素に依存していたため、商業的には実用不可能となっていた。10フェムト秒以下のレーザの効率は、YAG及びTiの代わりとなる色素及びフラッシュランプ、即ち、発光又はレーザ発光ダイオードによってポンピングされるサファイア結晶の従来の必要性から、2000年までは実用レベルにはなかった。
【0003】
超短パルスは、その広い帯域幅のため、光学素子を介して伝播する際、或いは光学素子から反射される際に、位相歪みの影響を受ける傾向にある。近年、超短パルスの位相を整形する実験的試みが行われている。これは、整形されたパルスが特定の化学反応及び多光子励起の発生を高めることが明らかとなっているためだ。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】アール.トレビーノ外(R. Trebino et al.)、「超短レーザパルスの測定」、オプティックス&フォトニクスニュース第23巻(Optics & Photonics News 23)、2001年6月
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のパルス特徴づけ法は、通常、以下の方法のいずれかによって行われる。自己相関は、パルス持続時間のみを得ることのできる単純な旧来の方法である。更に、周波数分解光ゲート法(以降「FROG」)は、時間−周波数データの反復分析後に位相及び振幅を得る公知の方法である。DOSPM及びスペクトル位相干渉法(以降「SPIDER」)のような干渉法による方法は、周波数分解干渉法データから位相及び振幅を得られる。これらは非常に複雑で高価だが、必要な情報を高い信頼性で提供する。FROG及びSPIDER法は、両方とも、何らかの種類の同期自己相関設定を必要とする。FROG法の場合、自己相関が時間軸を提供するために使用される一方で、分光計が周波数領域情報を提供する。SPIDER法の場合、超短パルスは、自己相関中に三本のビームに分割される。一本のビームのパルスは、剪断基準を提供するために伸長され、他の二つのパルスは、様々な時点で伸長パルスと相互相関される。出力は分光計に送られ、分光計では、信号内の干渉を使用して、電界を再構築する。この余分な同期自己相関ステップは、高い技能を有する操作者を必要とするのに加え、時間及びコストを増加させる。従来の機器及び方法での制限については、上記非特許文献1において説明されている。更に、Grenouille法では、特定のパルス持続時間及び波長のために特別に選択する必要のある倍加結晶及びレンズであるフレネル複プリズムで構成される設備が必要であるため、この方法は柔軟性が低くなる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、超短レーザパルスを使用したレーザシステムが提供される。本発明の別の態様において、システムは、レーザと、パルス整形器と、検出機器とを含む。本発明の更なる態様では、フェムト秒レーザ及び分光計を利用する。本発明の更に別の態様では、レーザビームパルスと、パルス整形器と、SHG結晶とを使用する。本発明の更に別の態様においては、多光子パルス内干渉位相走査(multiphoton intrapulse interference phase scan)(以降「MIIPS」)システム及び方法によって、フェムト秒レーザパルスのスペクトル位相を特徴づける。本発明の別の態様において、システムは、多光子パルス内干渉を利用するために電磁パルス整形設計を利用する。光ファイバ通信システム、光力学療法、及びパルス特性試験では、本発明の付加的態様を備えたレーザシステムを使用する。
【発明の効果】
【0007】
本発明のMIIPSの態様では、反復又は反転手順なしで、二次及び三次位相変調の大きさ及び符号を直接引き出せる単一のビームを利用するため、本発明のレーザシステムは、従来の構成に比べて有利である。したがって、MIIPSシステムは、設定及び使用が遙かに容易であり、これにより、従来のシステム及び方法より正確で、遙かにコストの低いシステムを形成する。更に、本発明のMIIPSシステムは、風、湿度、及びその他の環境的影響による従来のFROG、SPIDER、及びDOSPM法での不正確性を回避する。本発明のMIIPSシステムでは、フェムト秒パルスのような短いレーザビームパルスで最も有効となる全帯域幅を利用しており、これは、一部の従来の機器での単一周波数のみでの最適化とは対照的である。従来は、パルス整形結晶をパルスが通過することよって発生する、複数の対応するパルス ―即ち、第一のポンプ又は基本パルスと、別の第二の基準高調波パルス― の同時使用に起因する固有の時間遅延による時空相関補正のために、低速のピコ秒パルスが必要だったが、本発明のMIIPSシステムによれば、このような必要性を克服する。更に、本発明は、有利なことに、第二の基準パルス(及び対応する時間遅延相関)が必要なくなるように、通信レシーバにおけるパルス信号デコードのための一つ以上の事前に格納された比較値を使用する。本発明は、更に、位相走査により直接、位相関数全体を取得することにより、各パルスに非常に多くの情報を追加することで、パルスのエンコード−デコード相関性を改善する。本発明のパルス内干渉は、自己分離(self separation)を引き起こし(例えば、固有の通信信号ルーティングアドレスの区別)、これにより、非同期の形式で、言い換えると、従来の自己相関又は干渉計等による同期検出の必要性なく、安価なレシーバの使用を可能にする。本発明の更なる利点及び特徴は、添付図面と併せて、以下の説明及び付記した特許請求の範囲から明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、本発明のレーザシステムの第一の好適な実施形態を示す概略図である。
【図2】図2A〜2Cは、本システムで利用される二光子及び三光子励起蛍光の概略的な表現を示す図であり、図2Bは、パルススペクトル(破線)及び位相(実線)の概略図である。
【図3】図3A〜3Dは、それぞれ、一組の二光子及び三光子吸収確率シミュレーション及び利用されたレーザビームパルス形状を示す図であり、図3E〜3Hは、実験結果を示す図である。
【図4】図4A〜4Gは、二光子及び三光子励起蛍光について、システムで得られた実験結果を示す図である。
【図5】図5A〜5Fは、それぞれ、システムで得られたコントラスト比を示す一組の円グラフ及びレーザビームパルス形状グラフを示す図である。
【図6】図6は、光干渉断層計及び光力学療法に応用された本発明のシステムの第二及び第三の好適な実施形態を示す概略図である。
【図7】図7A〜7Cは、システムで利用されたレーザビームパルススペクトル、位相、及びチャープを示すグラフである。
【図8】図8A及び8Bは、システムで得られた、計算による二光子及び三光子吸収確率を示すグラフである。
【図9】図9A〜9Cは、システムで利用された、計算による二光子及び三光子吸収確率を示すグラフである。
【図10】図10は、光ファイバ通信に応用された本発明のシステムの代替実施形態を示す概略図である。
【図11】図11は、光ファイバ通信に応用された本発明のシステムの第四の好適な実施形態を示す概略図である。
【図12】図12A及び12Bは、第四の好適な実施形態のシステムにおいて利用されるコンポーネントを示す概略図である。
【図13】図13は、パルス特徴づけ又は通信で使用される本発明のシステムの第五の好適な実施形態を示す概略図である。
【図14】図14は、第五の好適な実施形態のシステムを示す概略図である。
【図15】図15は、パルス特徴づけで使用される本発明のシステムの第六の好適な実施形態を示す概略図である。
【図16】図16は、第五及び第六の好適な実施形態のシステムの使用によって形成された位相走査を示すグラフである。
【図17】図17A〜17Cは、第六の好適な実施形態のシステムの使用によって形成された位相走査を示すグラフである。
【図18】図18は、第六の好適な実施形態のシステムにおいて利用されるコンピュータソフトウェアのフローチャートである。
【図19】図19は、第六の好適な実施形態のシステムにおいて利用されるコンピュータソフトウェアのフローチャートである。
【図20】図20は、本発明のシステムにおいて利用される固定二次元整形器の好適な実施形態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<透過型能動パルス整形器を備えたシステム>
超短レーザパルスを使用した本発明のレーザシステム21の第一の実施形態は、図1に図示されている。システム21は、フェムト秒レーザ23と、上流格子25と、上流凸面鏡27と、レーザビームパルス整形器29と、下流凹面鏡31と、下流格子33と、検出機器35と、パーソナルコンピュータ37とを含む。パーソナルコンピュータ37は、マイクロプロセッサに基づく電気制御システムと、メモリと、出力画面と、データ記憶装置と、入力キーボードと、リムーバブルディスクとを有する。更に具体的には、検出機器は、分光計39である。レーザビーム43のバーストやパルスは、レーザ23から放出され、光学素子25、27、31、及び33を通り、更には、分光計39による検出及び感知とパーソナルコンピュータ37での更なる評価、分析、比較、及びその後の制御のためにパルス整形器29を通る。
【0010】
レーザは、好ましくは、高ピーク強度(標準的には1010ワット/cm2より大のピーク)を送給可能な超短フェムト秒レーザであり、好ましくは、持続時間100フェムト秒未満のレーザビームパルス、更に好ましくは、50フェムト秒以下、更に好ましい特定の応用例では、持続時間10フェムト秒以下のレーザビームパルスを各パルスバースト又はショットで放出する。材料を改変するのに必要な高強度光学パルスは、カーレンズモードロックチタンサファイア発振器において形成される。こうしたレーザは、数百ナノメートルのコヒーレント帯域幅を生成可能であり、但し、通常は約50nmのみが使用される。出力は、1kHz再生チャープパルス増幅器において増幅してよい。出力パルスは、通常、100fsの長さで、800nmの中心波長と、0.1〜1mJの総パルスエネルギーを有する。好適なレーザとしては、100MHzで15fs未満のパルスを生成可能なKapteyn and Murnaneフェムト秒レーザ発振器や、ダイオードポンピングされ、1kHzで50fs以下のパルスによりパルス当たり0.8mJを提供するSpectra Physics Inc.のHurricaneモデルや、パルス当たり0.2mJを生成し20fs以下のパルスを生成可能なClark−MXR Inc.の非同一線パラメトリック増幅器(以降「NOPA」)をポンピングし、1kHzで150fs以下のパルスによりパルス当たり1.3mJを提供するClark−MXR Inc.のCPA−2001+モデル、が挙げられる。NOPAシステムは、更に10fs〜4.5fsのパルスを生成できる。
【0011】
フーリエ面パルス整形器は、好ましくは、この実施形態で例示した透過型の構成のために、本発明で使用される。超高速レーザパルスは、1〜50回の光学サイクルを含み、数フェムト秒のみ持続する。これは、最新の電子機器より遙かに高速であるため、高速時間ゲートによる整形は非常に困難である。一方、不確定性原理の結果として、光学スペクトルは、数十〜数百ナノメートルに及ぶ。こうした大きな帯域幅は、測定及びフィルタリングが比較的容易であり、スペクトルを周波数領域で整形し、これにより時間パルスを再圧縮時に整形するいくつかの手法が存在する。
【0012】
周波数領域と、パルスを構成する個別の周波数成分とにアクセスするために、二つの連続した分光計を使用した、幾何学的配置が利用される。分光計は、特に、正味の時間的分散を持ち込まないように設計され、即ち、全ての色は、同じ時間内に分光計を通過する。第一の分光計(格子25及びミラー27を含む)は、その分散関数y(α)による線に沿って、非整形パルススペクトルを広げる。光は、この時点で、空間的振幅及び位相マスクパルス整形器29を横切る。マスク出力は、その後、色を再結合して単一の整形パルスにする第二の分光計(格子33及び鏡31を含む)への入口を形成する。
【0013】
パルス整形器29の中心は、フーリエ面に配置された(二つの重複する128ピクセル液晶アレイで構成された)プログラム可能な256ピクセル液晶マスクである。本明細書で想定される応用において、マスクは、個別の周波数の位相をシフトできる必要がある。代替実施形態のパルス整形器用には、位相を制御できる電子的にプログラム可能な別のマスク、即ち、液晶ディスプレイ(以降「LCD」)、音響光学変調器(以降「AOM」)、可変形鏡、及び永久変形鏡が実証されている。LCDパルス整形器は、CRI Co.から入手可能であり、変調器電子ドライバを有する。
【0014】
AOMは、一方の端部に圧電トランスデューサを接着した、反射防止コーティングされた二酸化テルル(TeO2)で構成される。音波の中心周波数は、αc/2π=200MHzである。結晶内の音速vsは、4.2km/sであり、光パルスが結晶内で費やすのは10ps未満となり、音波の移動は、光子場が結晶を通過する間、0.002λ音波長未満となる。光パルスが結晶内を移動する際に、音波は本質的に凍結されるため、y方向で結晶内を移動する音波の複素振幅、A(t)cosαct=A(y/vs)cosαctは、AOMを通過する際に光学場E(α)にマッピングされる。分散光学場の一部が弱い音波に遭遇する場合、その周波数は減衰し、音波搬送波が位相角φによってシフトされる場合、その位相シフトは、光学場に強制(impose)される。このパルス整形器は、AOMの回折効率と格子の回折効率とを含め、約20%の総合効率を有する。整形ビームにおいて振幅及び位相の両方の完全変調を可能にするために、回折光が使用され、非回折の「ゼロ次」ビームは遮断される。整形ビームは、次の形態を有する。
【数1】
ここで、α(ω)xeiφ(ω)=A[y(ω)/vs]であり、αは周波数、eは定数である。図20に関して後で更に説明するように、チャープミラーのような固定パルス整形光学素子も利用可能である。
【0015】
全ての周波数を同位相で有する変換限界パルス(以降「TL」)がパルス整形器に供給され、ここで曲面鏡27がスペクトルをフーリエ面29に焦点合わせする。コンピュータが示すスペクトル成分の位相φ及び振幅Aの変化は、第二の曲面鏡31及び格子33による再構築の前に、レーザパルスを調整するのに使用される。圧縮後、整形パルスは、評価のために分光計39へ向けられる。時間と周波数領域との間のフーリエ変換の関係によって、特定の整形パルスを形成するのに必要なマスクを計算できる。この計算は、以下に基づく。
【数2】
【数3】
ここで、vは波数で示す周波数であり、tは時間、cは光の速度である。
【0016】
この実施形態において、パルス整形器の位相及び振幅マスクはコンピュータによって制御され、これにおいて、レーザパルスの形状は動的な役割を果たす。パーソナルコンピュータ37内のマイクロプロセッサは、その後、レーザ23を制御し、本質的にリアルタイムのフィードバック入力信号を分光計39から受信し、その後、計算、比較、及び評価を実行し、更に、場合によっては、後続のパルス形状の自動変更を実行する。こうした自動化ステップは、必要に応じて、パーソナルコンピュータ出力に基づいた手動によるユーザの計算及び判断に置き換えることができる。
【0017】
<反射パルス整形器を備えたシステム>
本発明の第六の好適な実施形態で利用される反射パルス整形システム121は、図15に図示されており、フェムト秒レーザ123と、上流プリズム125と、部分的に円筒形又は部分的に球形の鏡133と、フーリエ面のパルス整形鏡129と、オフセット又はピックオフ鏡131とを含む。上流プリズム125は、放出されたレーザビームパルスの色を最初に分散させる役割を果たし、一方、鏡133は、パルス整形鏡129に向けて、この分散レーザビームパルスを焦点合わせし、平行化し、その向きを変える役割を果たす。パルス整形鏡129は、所定又は固定のパルス整形面、或いはコンピュータ制御可変形鏡を有する。
【0018】
固定パルス整形器については、図20に図示したように、パターン化整形面は、例えば、周波数分散の方向に沿った正弦波プロフィールを有する。プロフィールが傾斜している場合、垂直軸線は、単一ショットパルスの特徴づけ又は通信用途でのデコーディングに使用可能な異なる位相変調を提供する。表面変調波形は、701として概略的に図示されている。安価なレプリカは、PMMA基板703のようなポリマの射出成形により達成可能であり、反射又は透過モードでの使用に応じて、それぞれ、反射コーティング又は反射防止コーティングできる。実際のパルス整形面の物理特性又は形状は、意図する用途及び意図するレーザビーム入力のための最適化実験により事前に決定され、整形波の各行(又は列)は、直接隣接する行又は整形波形パターンから同位相で移動又はオフセットさせる。余弦波形、階段状波形等、他の波形のパターンを使用することもできる。この実施形態で好適な反射パルス整形器として使用される場合、基板703の前面に銀メッキ705が施される。代替として、固定パルス整形器129が透過光学素子として使用される場合、基板703には反射防止コーティングが施される。基板703は、取り外し可能な形でレセプタクル707にはめ込み可能であり、様々なパルス位相や用途のために、異なる構成とした波形パターンに交換できる。意図する用途での望ましい鏡面形状が把握された後、より安価な固定形状の鏡を利用すれば、実際の生産システムでの機器費用を低減できる。更に、こうしたタイプの公知の設定及び公知の用途では、初期決定が実行された後、コンピュータ及び最適化プログラムは必要ない。恒久的に成形された光学素子によるパルス整形は、fsレーザパルスの位相の特定の調整を達成する。光学素子は、反射式にも透過式にもすることができる。光学素子の運動を使用して、位相関数を奇数から偶数へ走査させることができる。この設定は、fsレーザパルスの位相をエンコード及びデコードするために使用できる。
【0019】
パルス整形器129は、これにより、レーザビームパルスの形状を変えて一つ以上の特定の特性を含め、オフセット又は時間遅延のある形で、同じプリズム及び鏡により逆の順序で反射して戻す。オフセットミラー131は、その後、以降更に詳細に説明するように、分光計、光ファイバセンサ/スイッチ、又は目標となる組織標本等であってもよいレシーバに向けて整形レーザビームを反射する。更に、第一の好適な実施形態で開示したような、インライン光学システムを使用可能であると想定されるが、しかしその場合、フーリエ面におけるパルス整形器は、所定屈折係数の透過光学素子を有する位相マスク整形器、或いは透明な基板上の偏光タイプの正弦マスクに置換される。更に、レーザビームパルス波の位相を遅延できるか、或いは、その波長、タイミング、又は形状特性をその他の形で変更可能なポリマドープガラス又はポリマシートの混合体を利用することができる。
【0020】
代替として、分散光学素子やフーリエ面を必要としないパルス整形にとって十分な、複数の二色性の層を有する背面コーティングチャープミラーのような特定の光学素子も使用できる。許容可能なチャープミラーとしては、Matuschekらの「超平滑広帯域分散特性を有する背面コーティングチャープミラー」、Applied Physics B、第509-522頁(2000年)において開示されている。CVI Laser Corp.の負分散鏡、品番TNM2−735−835−1037も、別の適切な例となる。特定のパルス整形特性をそれぞれが備えた複数の異なるチャープミラーを有する回転可能なホイールも、多数の別個の所定整形パルスを提供するために使用できる。
【0021】
<光干渉断層計>
本発明の第二の好適な実施形態では、レーザ励起又はイオン化のためのレーザシステム221を光干渉断層計(「OCT」)で使用する。一般に、図6は、システム221のOCT用途を例示しており、これには、フェムト秒レーザ223と、レーザビーム整形器229と、ヒト又は動物組織標本241と、光学ゲート251と、画像253とが存在する。レーザ223は、1ピコ秒より短いレーザビームパルスを放出する。整形器229は、三つの部分、即ち、位相マスク要素257を挟む二つの分散要素255で構成される。整形器229は、以降更に詳細に説明するように、ヒト又は動物のDNAに損傷を与える可能性のある多光子励起を本質的に防止する。弾道光子をゲートで制御し、断層計で使用するための画像を描画するために、非整形レーザビームパルスが使用される。光学ゲートは、倍周波数結晶、或いは液体二硫化炭素内のカーゲート、によるアップコンバートによって達成できる。例示のシステム221の構成は、透過画像を想定しており、同じ結果は、代替として、後方散乱画像によっても達成できる。画像253は、ヒト又は動物標本の内部器官のX線タイプの画像のように見えるが、有害な三光子の被曝はない。OCTにおける整形パルスの使用は、優れた画像のためのレーザ強度の増加を提供すると同時に、健康な組織の多光子励起によって発生する悪影響を防止する。後で説明するMIIPSプロセスは、有利なことに、ヒト又は動物組織内の各種色素やその他の化合物を活性化し、化合物特異的又は機能的なOCTないし顕微鏡検査を達成するために使用できる。
【0022】
<光力学療法>
本発明の第三の好適な実施形態では、同じく221に示したようなレーザ励起又はイオン化のためのシステムを光力学療法(「PDT」)で使用する。一般に、図6は、システム221のPDT用途も例示しているが、光学ゲート251及び画像253は必要ない。整形器229は、二光子励起を可能にするが、三光子励起を本質的に防止する。整形器229は、健康な組織の損傷を防止する治療剤のレーザ誘起活性を強化する。本発明のレーザビームパルス整形の使用は、例えば、本明細書に援用する2000年3月28にFisherらに対して発行された米国特許第6,042,603号「分子作用物質の光子活性における選択性を改良する方法」において開示されたような従来の方法により実用可能なものと比較して、PDT用途での優れた制御及び結果を提供する。代替として、パルス整形器は、治療剤の存在に関係なく、多光子遺伝子療法又は破壊のために、健康な組織に損傷を与えることなく、癌細胞を標的とするように調整できる。有利なことに、後で説明するMIIPSプロセスを使用して、特定の薬剤又は化学物質のみを活性化でき、或いは、レーザビームパルスの位相調整及び関連する非線形スペクトル調整に基づいて、レーザパルスを公知の深度までヒト又は動物組織内に入射させることができる。
【0023】
<非線形光学プロセスの制御>
本明細書に全ての用途で応用されるように、蛋白質を含む大分子における一光子又は多光子プロセスの選択的制御は、大きな帯域幅を有する短パルスにおいて発生する多光子パルス内干渉を最大限に利用することに基づいた単純なパルス整形方法を使用することで可能となる。結果は、二桁に近い強度の(裸眼で明確に見える)コントラスト比と共に、堅牢で試料に依存しない並はずれた制御レベルを示す。こうした大きなコントラスト比によって、望ましくない光子及びその他のビーム特性を更に正確にキャンセル制御することが可能となり、各パルスによって引き起こされる非線形遷移が制御されるようになる。鏡129(図15参照)のような受動的光学要素に、単純な位相関数を組み込むことが可能であるため、こうした適用例においては、初期設定後、コンピュータ制御パルス整形器の複雑さや費用を必要としないが、依然としてシステムは利用可能である。
【0024】
本システム及び関連する方法の基礎となる概念を、図2A〜2Cに図示する。多光子遷移は、図2A及び2Cに例示したように、レーザパルスの中心帯域幅ω0が、総遷移エネルギーの数分の一(例えば、二光子では半分、三光子では三分の一)であるときに最適化される。超高速パルスにおいては、帯域幅が大きい場合、パルスの異なる周波数成分(ω0±Ω)が干渉することができ、これにより、多光子励起の確率が減少するのである。図2Bを参照すると、振幅A(Ω)を有する超高速レーザパルスのスペクトルは、中心周波数からの離調の関数としてプロットされる。位相マスクψ(Ω)は、各周波数成分Ωの位相が特定の値を取得するように、パルスに印加される。パルス整形が二光子吸収(以降「2PA」と称す)の確率に与える影響は、次のように計算可能である。
【数4】
三光子吸収(「3PA」と称す)については、次のように同様の式を導くことが可能である。
【数5】
ここで、振幅及び位相は、図2Cに図示したように、二種類の離調値Ω1及びΩ2について導入される。一光子遷移は、パルスの位相によって影響されない。しかしながら、高光子束では、多光子プロセスが開始されるため、排他的な一光子励起の達成は困難となる。
【0025】
二光子及び三光子励起蛍光の概略図を図2A及び2Bにそれぞれ例示する。縦の矢印は、二光子及び三光子遷移を引き起こす超高速パルスを表す。その広い帯域幅から、超高速パルス波は、中心波長ω0から量Ωだけ離調した光子を含む。再び図2Cを参照すると、超高速レーザパルスは、破線の曲線の下に見えるパルススペクトル全体にわたって正弦関数位相マスクを使用して整形されており、発色団の構造も図示されている。
【実施例1】
【0026】
以下の全ての例における実験は、50fsパルスを生成する増幅チタンサファイアレーザを使用して実施した。パルスは、ゼロ分散の二つの格子配置のフーリエ面において空間光変調器(以降「SLM」と称す)を使用して整形した。SLM内の液晶技術に基づいた二つの独立した変調板(それぞれ128ピクセル)は、出力スペクトル、強度、及び極性を変化させずに位相遅延のみが導入されるようにキャリブレートした。809nmを中心とする整形パルスは、二次高調波発生周波数分解光学ゲートにより特徴づけした。全ての位相をゼロに設定した時、レーザパルスは、変換限界近くとなった。特に記載がない場合、測定は、試料において0.4μJ/パルスのパルスエネルギーで行った。実験は、779〜839nmスペクトル域において、図2Bに図示したように、位相関数を正弦波に等しく設定することで実行した。様々な試料からの一光子又は多光子励起プロセスによる放出を、スペクトル全体にわたるマスクの位相シフトδの関数として測定した。最大位相前進又は遅延は、1.5πとなった。
【0027】
式4及び5は、δの関数として二光子及び三光子プロセスで予想される信号を計算するのに使用できる。こうした計算は、位相マスク全体の半分(図3A及び3B)又は全て(図3C及び3D)の期間を有する正弦位相関数について、図3A〜3Hでグラフ化されている。図3A及び3Bにおいて、二光子及び三光子遷移について計算された確率は、πの半整数値でピークに達しているが、図3C及び3Dにおいて、二光子及び三光子遷移について計算された確率は、πの整数値でピークに達している。確率の最大値及び最小値に達する位相関数の形状を、挿入部分として示した。
【0028】
実験データは、図3A〜3Dの計算に使用した位相関数により取得した。これらの実験において、大きな有機分子からの二光子及び三光子放出は、δの関数として検出された。式4及び5によって説明したモデルでは二つのレベルのシステムを仮定しているが、図3E〜3Hは、溶媒の存在によって大きくなった振動状態の多様性を有する複雑なシステムにも、この原理を応用できることを、実験的に証明している。式4及び5によって予測されたピーク及び谷が実験データにおいて観察されたことは注目に値し、本質的に、強度の最大値は、パルスの中心波長に対して位相関数が反対称である場合に見られ、最小値は、対称である場合に見られる。
【0029】
更に具体的には、二光子及び三光子励起蛍光の理論的及び実験的位相マスク制御が、図3A〜3Hに図示されている。式4及び5からは、位相マスクが量δによって変換される時、二光子遷移(以降「P2PA」)及び三光子遷移(以降「P3PA」)の確率が半周期正弦マスク(図3A及び3B)及び全周期正弦マスク(図3C及び3D)について図3A〜3Dに例示したように変調されることが予測される。変換限界パルスは、最大値1をもたらす。図3A及び3Cの小さな挿入部分は、蛍光の最大値及び最小値が発生する特定の位置(図3E〜3H)での位相関数を表示しており、それぞれ、クマリン及びスチルベンで測定された実験的な二光子及び三光子レーザ励起蛍光を、位相マスク位置δの関数として図示している。これらの実験で使用された位相マスクは、計算に使用されたものと同じにした。したがって、パルス整形マスクは、公知の機器及び公知の標本についての計算、実験、又は学習プログラムの値に基づいて、形状を事前に決定又は固定可能である。
【実施例2】
【0030】
全周期正弦位相マスクで得られた様々な試料の実験結果を図4A〜4Gに図示する。図4Aは、位相マスク位置の関数として、842nmで得られたIR144の一光子レーザ励起蛍光(以降「1PLIF」)を示す。この測定は、標本での非線形プロセスを回避するために0.3nJ/パルスで行われた。弱いフィールド形式での一光子プロセスが位相整形への依存を示さないことは注目に値する。図4Bは、500nmで収集したクマリンからの二光子レーザ励起蛍光(以降「2PLIF」)の結果を示す。図4Cのデータは、505nmで検出された組み換え緑色蛍光蛋白質(以降「rGFP」)における2PLIFの依存性を示す。図4Dのデータは、0.3mm β−ホウ酸バリウム結晶からの405nmでの二次高調波発生(以降SHG)信号の強度に対応する。SHGでの最大及び最小の信号は、2PLIFで観察されたものと一致するが、同一ではない。
【0031】
図4Eを参照して、トランススチルベンからの三光子レーザ励起蛍光(以降「3PLIF」)の依存性を例示する。信号は、δの関数として350nmで収集した。この場合、最大コントラスト(最大:最小)は、60:1と測定された。図4Fのデータは、350nmで収集した、Con Aにおけるトリプトファン残基からの3PLIFに対応する。3PLIFにおいて、最大蛍光信号は、変換限界パルス(マスク内の全位相をゼロに等しく設定した時)において得られたものより小さいが、三光子励起での全体的なコントラスト比は優れており、二桁に近づいている。図4Gのデータは、600nmで検出した3mm石英板からの連続スペクトル生成反応(白色光パルスを発生する非線形自己周波数変調プロセス)に対応する。
【0032】
更に具体的には、図4A〜4Gは、位相マスク位置δの関数として取得された一光子放出及び多光子放出の実験測定値を実証している。全てのケースにおいて、位相マスクは、全周期正弦関数である。変換限界パルスで測定された信号は1(unity)である。コントラスト比(最大:最小)は、実験プロットのそれぞれの右上隅に記載されている。ここで、光学非線形性の次数が高くなるほど、観察されるコントラストが大きくなり、したがって、様々な次数のプロセス間での識別が可能になることが見出される。言い換えると、次数が高いほど、光子が多くなり、光子のキャンセルが容易になるのである。更に、コントラスト比が大きくなるほど、多くのバックグラウンドノイズがフィルタで除去される。
【実施例3】
【0033】
図5Aは、高強度パルス(0.5μJ/パルス)で観察された線形及び非線形応答間での最大値の識別を提示している。別個の検出器により、IR144溶液からの1PLIFと、連続スペクトル出力の一部とを同時に収集した。図5A及び5Bに図示したように、一光子プロセス対連続スペクトルについて、それぞれ、>103:1及び1:0.6となる最大値及び最小値のコントラスト比が得られた。この制御は、レーザ顕微鏡又は光ファイバ通信のような高流束の条件下での線形プロセスに関心がある時に極めて価値がある。上述した単純な位相関数を使用することで、図5C及び5Dにおいて実証したように、二次対高次のプロセスを制御する特定の機会の範囲を利用できる。特定のδの値では、比較的高強度のレーザパルス(−1μJ/パルス)についても、連続スペクトルの生成を完全に抑制できる。図5C及び5Dは、2PLIF対連続スペクトルについて、それぞれ、>103:1及び1:4となる最大値及び最小値のコントラスト比が得られることを示している。
【0034】
二光子遷移は、二光子顕微鏡又は二光子PDTでの使用のために三光子プロセスを抑制しつつ達成することができる。このタイプの制御は、遙かに困難である。なぜなら、多光子遷移が一度発生すると、特定の次数で停止させるのが非常に困難であるからだ。2PLIF対3PLIFの制御を調査するために、クマリンとフルオランテンとの混合物を作成した。これら二分子からの蛍光は同じスペクトル領域で重複するため、二信号間の分離は、時間ゲートによって達成した。クマリン蛍光は、最初の20ns中に495nmで検出され、一方、フルオランテン蛍光は、初期立ち上がりから40ns後に開き120nsに渡って持続するゲートにより460nmで検出され、。図5E及び5Fに提示したように、2PLIF対3PLIFについて、それぞれ、1.4:1及び1:2.2となる最大値及び最小値のコントラスト比が得られた。図5A〜5Fに提示したコントラストデータは、変換限界パルスがプロセスに対して等しい強度を発生させる時に得られた。更に優れたコントラストは、特に多光子プロセスが共振から離調される際に、以下の項で説明するような追加パルス整形を使用することで取得できる。
【0035】
fsパルス整形器の仕組みは、多光子パルス内干渉を利用して、バックグラウンドのない機能画像(pH、Na若しくはCa濃度勾配、電界、電荷、蛍光プローブ、ナノクラスタ、又は量子ドット、化学組成)を達成するのに使用できる。例えば、A.H.Buist、M.Muller、R.I.Ghauharali、G.J.Brakenhoff、J.A.Squire、C.J.Bardeen、V.V.Yakovlev、及びK.R.Wilsonの「高強度チャープパルスによる微視的化学環境のプローブ」、Optics Letters 24、第244-246頁、(1999年)がある。Buistらは、線形チャープを使用して、pH感受性色素のpH環境を大まかに識別できることを明らかにしたが、本発明によれば、位相変調、及び多光子パルス内干渉を特異的に利用することにより、更に多数のpH感受性色素による遙かに敏感なpH感度を達成することが可能である。同じ原理を使用して、ナトリウム、カルシウム、又は電荷を含むその他の化学的勾配を、選択的にプローブすることもできる。あるいは、二光子又は三光子励起により、色素、ナノクラスタ、又は量子ドットといった複数のプローブを選択的に励起できる。
【0036】
<多光子プロセスの所定のパルス整形及び位相制御>
本発明では、(a)チャープマスクパルス整形器と、(b)マスクパルス整形器のための位相対周波数の平滑関数との組み合わせにより、大分子、蛋白質、及びその他の凝縮相材料に最適化された「多光子パルス内干渉」として説明される現象を最大限に利用する。以下の式は、適切な位相マスクを見つけるための予測の便宜を与えるものである。二光子遷移の確率は、任意のパルス形状について、次のように計算できる。
搬送波周波数ω0及び遅い振幅E0(t)を有する電界について、次の通りとなる。
【数6】
ここで、搬送波周波数Ω=ω−ω0周辺のフーリエ画像F0(Ω)は、次のように書くことができる。
【数7】
共振周波数ωでの二光子遷移の振幅は、次の通りである。
【数8】
ここで、離調Δ=ω−2ω0であり、二光子遷移の確率は、次の通りである。
【数9】
【0037】
更に、畳み込みのフーリエ画像は、フーリエ画像間の積となる。
【数10】
ここで、二つの関数(f)及び(g)の畳み込み(*,Δからの関数)は、次の通りである。
【数11】
直接(T,Ωからの関数)及び逆(T−1,tからの関数)フーリエ画像は次の通りである。
【数12】
更に、直接及び逆変換の間の関係は、次の通りである。
【数13】
したがって、逆変換を使用することで、式は、次のように書くことができる。
【数14】
また、式14は、積分の形で次のようになる。
【数15】
【0038】
時間−周波数変換を計算できる。式7のスペクトル表現と、式15の畳み込み定理とを使用して、式8は、二光子遷移の式を得るために次のように書き換えることができる。
【数16】
この式は、レーザパルスF0(Ω)のスペクトルと、試料の吸収スペクトルに依存するF0(Δ−Ω)の離調スペクトルとを前提とした二光子吸収振幅を提供する。
【0039】
三光子遷移の確率は、その後、計算可能である。
遷移の複素振幅は、次の通りである。
【数17】
ここで、離調Δ=ω−3ω0となる。式6のフィールドの逆フーリエ表現を使用することで、式17は、次のように書き換えることができる。
【数18】
次に、式18は、新しい関数G(Ω)を使用して書き換えることができる。
【数19】
ここで、G(Ω1)は、積分の核として定義される。
【数20】
更に、畳み込みの式15を使用することで、以下の式が得られる。
【数21】
【0040】
式20の逆フーリエ画像のフーリエ画像は、式13と式15において表現された畳み込み定理の積分の形との関係を使用して、次のように中間関数を定義する。
【数22】
【0041】
離調したΔ=ω−3ω0の三光子遷移に関する最終式は、積分の次数を変更した後、式21及び22を使用することで得られる。
【数23】
確率は、次のようになる。
【数24】
上記の方法によって、漸化式によってn光子遷移に関する式が得られた。
【数25】
ここで、離調はΔ=ω−nω0である。したがって次の通りとなる。
【数26】
【0042】
更に、(溶液及び凝縮相材料において遭遇するような)不均質な広がりを考慮に入れることが望ましい。式25によって定義された振幅を有するスペクトル密度gn(ω)を備えた分子におけるn光子遷移に関する積分された確率は、加重平均に比例する。
【数27】
変換限界レーザパルスの場合の正規化はNnで、次のようになる。
【数28】
ここで、次の通りとなる。
【数29】
【0043】
上の式6〜29は、一般的な結果を提供する。しかしながら、特定の多光子プロセスを最小化又は最大化する位相マスクを定義するためには、ユーザに対して、以下のパラメータを定義する必要がある。第一に、図7Aのレーザパルススペクトルを定義する必要がある。パルスが短いほど(スペクトルが広いほど)、優れた制御となる。45fsパルスは十分に使用できたが、20又は10fsは、更に優れた結果につながる。搬送波周波数(又は中心波長)も、可用であれば定義する必要がある。パルスの波長を調整することで、特定のプロセスを強化できるが、通常は必要ない。第二に、位相変調器(又は、代替として、SLM、可変形鏡、チャープミラー、その他)は、パルススペクトル全体をカバーするべきであり、定義する必要がある。第三に、位相マスクの定義を導入するべきである。図7Bの単純な正弦関数は、極めて良好に機能するが、位置の関数として対称及び反対称となり得るその他の関数も適切となる。第四に、正又は負の線形チャープφの追加は、図7Cにおいて表現されるような、観察される制御を更に高めるものであり、定義するべきである。本明細書で提示した例において使用した位相マスクは、次のように定義される。
【数30】
ここで、δは、スペクトル全体にわたる正弦関数(中心化)の位置であり、φaは、最大位相遅延であり、Npixelは、図7Bに例示したようなSLMにおけるピクセル数である。
【0044】
チャープは、追加された場合、次のように定義できる。
【数31】
ここで、βは、図7Cにおいて表現された線形チャープの量である。したがって、チャープを有する完全な位相マスクは、次のようになる。
【数32】
【0045】
図8A及び8Bは、提示した式と、図9A〜9Cの破線によって計算されるような吸収スペクトルとを使用して計算された、二光子及び三光子吸収確率を示している。図9Cは、図9A及び9Bに記載した吸収スペクトルの二つの異なる組み合わせについての二光子:三光子吸収の計算された比を示している。したがって、分子、蛋白質、及び非線形光学材料における多光子プロセスの堅牢な制御は、適応学習、能動学習、及び自己最適化学習のいずれかのプログラム及び制御システムによって、或いは、計算型、既定型、又は固定型の受動的レーザビームパルス整形機器によって、達成することができる。そのため、安価な固定位相マスクを、実験前に、更にはコンピュータ制御整形器及び学習プログラムなしで設計し、大きく複雑な分子や、光力学療法における蛋白質や、光学断層計や、外科手術(非線形エネルギーを最大化するための五光子以上の光子波伝達によるレーザ切断等)や、例えば、(a)光重合(プロセスにシード(seed)するための光子対のスイッチングによる)、(b)電荷移動、(c)ラジカル反応、(d)求核攻撃、及び(e)求電子攻撃の光化学制御等のための多光子プロセスの次数を制御できる。
【0046】
<通信>
図10を参照すると、本発明のレーザ励起システム421の代替実施形態は、フェムト秒レーザ423と、光ファイバ451と、レーザビームパルス整形機器429と、レーザビームパルス非整形機器453と、光スイッチ又はセンサ並びに関連回路や電気制御ユニットを含むレシーバ441とを利用する。レーザ423は、それぞれが1psより短い一連のレーザビームパルスを、接続されたファイバ451へ放出する。パルス整形機器429は、固定されたパルス特性変更形状を備えた既定マスクタイプ(計算された正弦波表面形状を備えるもの等)であり、ファイバ451に接続された三つの要素、即ち、回折格子を組み込んだファイバ等の分散要素455と、ドープガラス又はポリマシートを使用して作成可能な位相マスク要素457と、スペクトル的に分散した光を受け入れ、再びファイバ451に結合するための、要素455と同様だが反転された分散要素459とを有する。
【0047】
整形レーザビームパルスは、整形機器429において印加又は形成された独自の位相関数のため、非線形歪みの影響を受けずに、ファイバ451を介して長距離を移動できる。例えば、赤色スペクトルは、正確な正弦波の形で、青色スペクトルの前を進ませてよい。非整形機器453は、その後、整形機器429によって持ち込まれた位相の変化を反転させる。非整形機器453は、整形機器と同様に構築されるが、マスク要素457によって生じたパルス特性の変化を相殺する異なる位相マスク要素461を備える。代替として、波の建設的又は破壊的参照による光スイッチングのために、音響光学変調器又は過渡回折格子を使用できる。整形及び非整形は、チャープミラー又はスペクトルマスクを用いても達成できる。
【0048】
したがって、特に非線形又は多光子放出において、レーザビームパルス形状又はその他の特性を正確に制御する本発明の能力は、通信伝送の品質を大幅に改善する一方で、自己収束、自己位相変調、及びファイバの破壊の可能性を最小化する。本明細書の全ての実施形態において説明するような超高速レーザビームパルスのパルス特性制御は、Mitraらの「光ファイバ通信の情報容量の非線形限界」、Nature、第411巻,第1027-1030頁(2001年6月28日)において説明されるような、光ファイバ線における非線形伝播チャネルの乗法的ノイズ効果による混乱を、防止しないとしても最小化するはずである。更に、このタイプのパルス整形システムは、1ps以下の短いレーザパルスを使用した潜水艦同士の通信のために、塩水の海中においても利用できると想定される。このタイプのパルス整形は、ソリトン形成を誘導し、通信用の最低限の歪みを有するパルスを達成するために使用できる。更に、MIIPSを使用して、レーザパルスが空気中又は水中で伝わる際に、取得した二次位相変調の大きさを決定することで、fsレーザエミッタの距離を測定できる。この方法は、反響又は反射を必要としない。水中では、遙かに大きな分散のため、長いパルス(1ps)が望ましい。空気又は水という伝送媒体に応じて、更には、予想される距離に応じて、異なるパルスが必要となる。空気中では、持続時間10〜20fsの短いパルスが好適となる。水中では、遙かに長い持続時間を有するパルスが好適となり、例えば、100mの距離では、100psのパルスが好適となる。
【0049】
図11、12A、及び12Bを参照すると、本発明のシステムの第四の好適な実施形態は、光ファイバ通信に使用される。それぞれが通信メッセージ又は信号を送信する多数の送信ユーザは、電話491、パーソナルコンピュータ、ファクシミリ装置等といった通信機器を、お互いから離れた場所で使用している。こうした遠隔トランスミッタは、電線、光ファイバケーブル、マイクロ波信号等を介して、コンピュータ化された中央演算処理装置493を含む「スマート」な主トランスミッタアセンブリに接続される。位相変調パルス整形器505は、CPU493によって能動的に制御される。レーザ509及び整形器505も、主トランスミッタアセンブリの一部として収容される。レーザ509は、整形後に光ファイバケーブル497内で搬送される超短レーザパルスを放出する。超短レーザビームパルスは、現在利用可能な光ファイバケーブルの制限に基づいて、約100フェムト秒の持続時間を有するが、50フェムト秒未満のパルス持続時間が好適となり、10フェムト秒未満のものが、光ファイバが将来的にこれを可能にする場合、最も望ましい。例えば、内部に穴を備えた光ファイバのような光バンドギャップ材料は、約10フェムト秒のパルスの使用を可能にし得る。
【0050】
パルス整形器/位相マスク505によって、各レーザビームパルス位相は、各ピークの二次及び三次高調波を調整し、例えば、各パルス周波数において複数のピークを発生させる。ただしこのような構成に限定されない。これにより、ルーティングアドレスのエンコードが可能となり、能動的に変更される各放出パルスの整形と組み合わせたレーザビーム放出のCPU制御に基づいて、関連する通信情報を各レーザビームパルス内にエンコードできる。
【0051】
付加的なレーザや複雑な計算機能を必要としない「ダム」な中央レシーバ501は、光ファイバケーブル497の下流端部に接続される。レシーバ501は、収束レンズ515と、厚SHG結晶507’と、検出器511とを含む。光ファイバケーブル497を介して伝送された各レーザビームパルスは、レンズ515上へ分散され、レンズ515は、各パルスの焦点を結晶507’に合わせ、収束角的な態様でこれを結晶507’へ方向付ける役割を果たす。厚光学結晶507’は、本明細書において、約0.5ミリメートルを上回る透過経路の厚さを有するものとして定義され、薄光学結晶507(図15参照)は、本明細書において、約0.5ミリメートルを下回る透過経路の厚さを有するものとして定義される。厚結晶の好適な厚さは、50フェムト秒以下のパルス持続時間で約3.0ミリメートル、50〜200フェムト秒のパルス持続時間で5.0ミリメートルである。厚結晶507’は、パルス整形器によって以前に整形されたように、各パルス内で二次高調波及び二次スペクトルを形成する。言い換えると、厚結晶は、位相整合角度の要件のため、別個の分光計を使用することなく、本質的に色スペクトル全体を分散させる。
【0052】
厚結晶から角度を有して分散した各分離色周波数は、個別の通信ルーティングアドレスと、実際の通信情報とを包含するようにパルス整形器によってエンコードされ、その後、線形アレイを利用したCCDカメラのような、マルチプレクサタイプの検出器511によって検出される。あるいは、検出器511は、もう一つの次元を追加することで高いデータ密度を達成するために使用可能な二次元アレイである。代替として、検出器511は、リモートコントローラ/副検出器に接続される光ファイバアレイであることも想定される。データは、付加的な基準パルスを使用せずに、情報を包含する伝送パルスのみを使用して、非同期で読み取り可能である。単一の検出器511によって、スペクトル全体で分離された各パルスにおいて搬送された検出信号をデジタル化し、電線、光ファイバ、マイクロ波等を介して、レシーバ501内部又は外部の個別のデコードマイクロプロセッサコントローラ503へ送信する動作が可能である。一組の事前に格納された変数又は復号情報若しくは鍵は、トランスミッタ495からの同期通信伝送(言い換えると、補完的な位相を提供する第二のレーザパルス)を必要とすることなく、検出器511が受領した対応する各デジタル化通信信号をデコードするために、各コントローラ503のメモリ内に配置される。デコードされた通信は、その後、所望の識別ルーティングアドレスにおいて、電話505、パーソナルコンピュータ、ファクシミリ装置等によって受信するエンドユーザに送信される。代替として、コントローラ503は、検出器511によって検出された信号に基づくデジタル化オン/オフ自己スイッチングモードにおいて利用可能なフォトダイオードのような単純な光検出機器に置き換えることができ、制御又は遠隔目的地への情報の送信を実行できる。本発明の現時点で好適な通信の実施形態による送信情報のデコードに、干渉法及び同期レーザパルスが必要ないことには大きな意味がある。更に、パルス整形器505が二次高調波発生、或いは、限定を意図しない例として周波数混合、差周波数混合、四波混合を含む他の任意の非線形混合法を用いて各パルスをエンコードできることは、注目に値する。
【0053】
本発明は、単一の特定の波長の放出を制御するために補完的な位相を供給するために処理が困難な同期基準パルスをデコーダにおいて利用する従来の実験と対比させるべきである。この従来例は、Z.Zheng及びA.Weinerの「スペクトル的に位相をコード化したフェムト秒波形を使用した二次高調波発生のコヒーレント制御」、Chemical Physics 267、第161頁(2001年)において開示されている。しかしながら、この従来のアプローチでは、時間及び空間において重複したパルスが必要で、制御が困難であり、単一のパルス周波数のみを対象としていた。
【0054】
<多光子パルス内干渉位相走査>
本発明の多光子パルス内干渉位相走査(以降「MIIPS」)システム及び方法は、フェムト秒レーザパルスのスペクトル位相を特徴づける。この単一ビームの方法では、反復又は反転手順なしで、二次及び三次位相変調の大きさ及び符号(言い換えると、線形及び二次チャープ)を直接取り出せる。MIIPSは、チャープ超短パルスからの正確な位相の取り出しを達成する。二次高調波スペクトルはパルス内の全周波数の相対位相に依存するため、MIIPSでは、同期自己相関、ビーム分割、又は時間遅延を必要としない。パルスの振幅は、通信レシーバ内の分光計から直接取得される。fsレーザ123(図15参照)からのパルス内の全周波数成分の位相を正確に決定するために、A.M.Weinerの「空間光変調を使用したフェムト秒パルス整形」、Rev. Sci. Instrum. 71、第1929-1960頁(2000年)において説明されるもののようなパルス整形器を利用して、後で更に説明するように、この情報を直接得られるように設計された基準位相関数を導入する。この整形パルスは、薄SHG結晶507(図15参照)によって周波数が倍加され、出力は、分光計503に向けられる。
【0055】
本発明のシステム及び方法は、主に、超高速レーザパルスの周波数の関数として位相をデコードすることを目的としている。測定には、レーザパルスの二次電界の強度の決定が必要となる。この特性は、周波数を倍加した後、レーザのスペクトルを測定することで、測定できる。パルスのスペクトルと二次高調波のスペクトルとの比較は、位相歪みをデコードするのに十分である。この単純なアプローチは、あらゆる非対称位相関数において良好に機能する。対称位相関数には、潜在的な曖昧さが存在する。例えば、二次チャープは、二次高調波スペクトルの減衰のみにつながり、この減衰だけでは、チャープの符号を決定することが不可能である。公知の位相関数によって追加的に整形されたパルスからのSHGスペクトルを比較する設定により、こうした曖昧さは解消される。結果的に生じたデータは、符号を含め、超高速パルスのスペクトル位相を決定するのに十分な情報を含む。
【0056】
通信機器として、上記のシステムは、例えば、二次高調波発生スペクトル等の非線形光学変換を調整する多光子パルス間干渉を利用することで、超短パルスに導入された位相を使用して、位相エンコード済みのデータ伝送をデコードできる。エンコーダは、例えば、二次高調波発生等の非線形光学変換の際に特定の波長でのピーク高さの特定のセットが得られるような情報をエンコードするのに使用できる。このエンコーダは、二次スペクトルのピークを形成するために、正弦又は余弦関数を使用できる。逆に言えば、エンコーダは、二次スペクトルの多数のピークを形成し、これにより、更に多数の通信ビットを達成できる。本発明により、本明細書で説明するような位相関数を使用した整形パルス位相の高速エンコード及びほぼ瞬間的なデコードが達成できる。
【0057】
薄倍加結晶を使用する場合、格子、プリズム、又は同様の機器といった分散分光計503(図15参照)は、位相変調によって結果的に発生した波長同調を検出する必要がある。しかしながら、薄二次高調波発生結晶507’(図12B参照)上で信号ビームを厳密に集束させる場合、異なる波長は、異なる場所へ移動する。厳密な集束、例えばf/1は、入射光が、一つのみではなく、多数の位相整合角度をサンプリングする状態を確保する。位相整合ビームが結晶507’に入る際には、メッセージに印加された位相に基づいて、一方向が好適となる。したがって、パルスに印加された位相は、メッセージによる「自らのルート指定」に使用できる。こうした応用は、集束が最低限であるか、或いは存在しないため、位相整合角度によって制限された狭小な周波数変換範囲を有する長いSHG結晶が使用される他の応用とは、関連はあるが異なるものとなる。こうしたケースでは、二つの出力のみが、可能な放出となるか、或いは放出が存在しない。本発明では、多数の波長での放出が可能となり、これにより、大きな多重性を提供する。
【0058】
本発明を特徴づけに使用する場合、基準又は公知の位相関数が、位相整形器129(図15参照)又は代替として505(図14参照)を使用して、未知の位相に重畳されることは注目に値する。二次元プリセット固定パルス整形マスク(図20に図示したもの等)を利用して、位相の決定又は特徴づけ、或いは更に、通信におけるエンコード及びデコードのためのワンショットの方法を可能にできる。このワンショットのアプローチにより、位相マスクパルス整形器は、複合二次元位相を含むパルスを生成する。非線形光学変換後、こうしたパルスは、より従来的なパルス整形器の場合に必要となる多数のパルスではなく、一つのパルスから、数百のスペクトルを発生させる。非線形光信号を検出し、全ての情報を取り出すために、二次元CCDカメラが使用される。この単一ショットシステム及び方法は、多数のパルス間の不安定性を取り除き、従来のアプローチに比べ、遙かに高速となる。更に、二次元CCD検出器511では、可動又は可変形パルス整形マスクを必要とせず、単一の次元の測定値を、位相走査グラフに図示したような更に好ましい二次元の測定値に変換するために、コンピュータ531内で多量の計算を行う従来の必要性が存在しない。実験室での試験及び標本の光学歪み分析に加え、この単一ショット構成を利用したMIIPSシステム及び方法は、大幅に多くのエンコード情報を各パルス位相に追加し、追加的なエンコード変数を供給するために、一部の通信状況にも応用できる。
【0059】
MIIPS法は、二次高調波発生と、他の非線形光学プロセスとがレーザパルスのスペクトル全体で位相関数φ(ω)に依存する原理に基づいている。位相関数は、搬送波周波数Ω=ω−ω0周辺のテイラ級数において以下のように拡張できる。
【数33】
ここで、最初の二項は、それぞれ、相対(共通)位相及び時間遅延を提供している。第三及び第四の項のみが、位相歪みに関与する。こうした高次の項は、MIIPSにおいて、以下を求めるために基準位相関数をパルスに重畳することで取り出される。
【数34】
ここで、第一の項は、整形器によって導入される最大位相振幅α、周期γ、スペクトルウィンドウ内の絶対位置δの基準位相関数である。φ(Ω)は、式33によって提供される。
【0060】
Ωの関数としての最大SHG信号は、d2ψ(Ω)/dΩ2=0の時に得られる。基準位相関数内のパラメータは、レーザパルス内において位相歪み(φ’’、φ’’’、...)を取得可能なプロットを得るために変更できる。(波長δの)MIIPSトレース内の最大信号は、以下によって与えられる一連の線を記述する。
【数35】
ここで、δmaxは、最大SHG信号が取得された位置であり、δ0=arc cos[φ’’/(αγ2)]であり、λmaxは、最大SHG信号の位置である。
【0061】
位相関数を取り出すことが可能な完全なデータセットは、パラメータδの関数として得られた一連のスペクトルで構成される。結果として生じた、図16に図示した実験的MIIPSトレースは、φ’’、φ’’’、及び更に高次の項を以下のように抽出するために必要な情報を含む。第一に、式35から予測されるようなλmax(δmax)に従う一連の線にデータを一致させる。(線形チャープに関与する)二次位相変調は、以下に従って、SHG最大値間の距離x1及びx2から直接決定される(図16参照)。
【数36】
φ’’の大きさ及び符号は、MIIPSトレースから直接取得されることに留意されたい。更に、測定値の精度は、基準位相関数パラメータαγ2を低減することで、小さな位相歪みについて改善される。
【0062】
三次位相変調(二次チャープ)は、最大SHGの特徴がλδ平面において形成する傾斜Δδ/Δλによって決定される。分析上、三次位相変調は、以下によって与えられる。
【数37】
ここで、傾斜は、nm−1の単位で測定される(図16参照)。自己位相変調及び二次位相成分のような高次の位相歪みは、最大SHG応答によって定義される線の曲率から取得できる。こうした高次の項は、常に必要な訳ではなく、MIIPSの裏側にある理論の更に複雑な提示のために残される。図16〜17Cに図示した実験データとの一致は、式35によって提供され、位相パラメータは、式36及び37により抽出される。
【0063】
図15に例示したMIIPSのバージョンは、薄SHG結晶507と、分光計503と、パルス整形器129と、フェムト秒レーザ123とを使用する。fsレーザパルスが好適だが、本明細書で開示した試験データでは、再生増幅したTi:サファイアレーザからの50fsパルスを利用しており、これにおいて、パルスエネルギーは、5μJまで減衰した。本明細書の試験データでは、0.3mmのβBBOタイプI結晶をSHG507に使用しており、出力は、冷却CCD検出器511を備えた分光計503に対して減衰及び方向付けを行った。システム121は、更に、リダイレクトミラー513と、二つの石英円柱レンズ515(焦点距離200mm、上流のものは焦点を合わせるため、下流のものは平行化のため)とを有する。試験には、空間光変調器を、二つの128LCD素子(CRI Inc.より型番SLM−256として入手可能)で構成されたパルス整形器として使用した。試験では、パルス整形器を慎重にキャリブレートし、極性又は振幅に変化のない(1度より優れた)正確な位相遅延を提供した。データを取得するのに使用した位相歪みは、再生増幅後にパルス圧縮器で生成した。
【0064】
図16の実験結果は、変換限界に近いレーザパルスに対応する。データの分析は、二次及び三次成分での残留位相歪みを示す。位相マスク位置dの関数としてのSHG強度は、輪郭として提示されている。斜線は、特徴間の間隔と特徴が形成する角度とを使用して、式35及び36を使用した実験データに一致させている。図17A及び17Bは、正及び負の線形チャープについて得られたデータを提示ししてる。SHG信号の間隔における変化が図示されている。両方のケースにおいて、ある程度の二次チャープが存在する。対照的に、図17Cは、重度の二次チャープについて得られたデータを図示している。この場合、SHGの特徴の角度は、明白に異なっている。このデータは、相対的に少量の線形チャープを有する。言い換えると、図17A〜17Cにおいて、実験データは、パルスについて、大きな位相歪みを有している。図17A及び17BのMIIPSデータは、実質的な三次成分に加え、正及び負の二次位相歪みを示している。特徴間の距離の差は、式36を使用してφ’’の符号及び大きさを取得するために使用できる。検査によって二次位相変調を決定する能力は、超短パルスが任意の光学媒体を介して伝搬する時の正常分散に由来することを考えると、非常に価値がある。
【0065】
著しい三次位相変調を有するパルスについて取得したMIIPSトレースは、図17Cに例示されている。特徴間の角度の差は、式37を使用して定量的に決定される三次位相変調の存在を示している。次のような利点を備えたMIIPS法を使用して、多数の追加的な測定を実行した。設定は、SHG結晶を追加し、出力を分光計に送信する程度の単純なものである。低強度レーザ(<0.1nJ)では、SHG結晶にレーザの焦点を合わせるだけで、変換効率を増加できる。
【0066】
MIIPS法の分解能及び範囲は、基準関数パラメータに正比例するため、必要に応じて調整するのが容易である。範囲は、|φ’’|<αγ2及び|φ’’’|<αγ3によって与えられる。分解能は、整形器の分解能によって決定され、この場合、φ’’及びφ’’’の両方について、全範囲の一パーセント未満となることが確認された。例えば、φ’’値は、10〜100fsパルスに対して10〜105fs2の範囲で決定できる。容易性及び精度から、この方法は、変換限界に近い評価レーザパルス及び光学素子による位相歪みの評価にとって実用的なものとなる。
【0067】
次に、図13及び14を参照すると、自己超高速スイッチングは、パルス整形器505におけるパルス位相変調と、多光子パルス内干渉を発生させる薄SHG結晶507と、分散光学素子523と、CCDカメラ検出器511とに基づいている。
【0068】
図18は、図15に図示したパーソナルコンピュータ531のマイクロプロセッサ制御ユニットにおいて使用されるソフトウェアロジックの流れを例示している。このソフトウェアは、コンピュータのメモリチップのような媒体に格納され、光学素子の分析のために非線形位相歪みを決定する。この方法は、位相走査によるパルスの決定の使用に基づいており、測定は、様々なレーザパルス強度で実行できる。自動パルスチャープ判定のソフトウェアロジックのフローチャートは、図19に図示している。このソフトウェアも、コンピュータのメモリに格納され、パルス圧縮器においてパラメータを調整して、歪みを取得し、チャープのレーザ成分を随意的に調整できる。この方法は、パルス整形器の使用に基づいており、更に、次の基準位相関数を使用して、位相パラメータδの関数として、SHGのスペクトルである位相走査を取得することに基づいている。
【数38】
この方法は、反復されず、学習アルゴリズムなして、所望の値を直接取得する。したがって、この方法は、非常に安定しており、空間及び時間における二つのパルス間の重複に依存しない。単一のレーザビームのパルスは、薄SHG結晶において、自らの分析を行う。
【0069】
要するに、本発明は、フェムト秒パルスのスペクトル位相を特徴づけるシステム及び方法を提供するこの単一ビームの方法は、線形及び二次チャープの大きさ及び符号を高い分解能で取り出すことができる。パルスの取り出しは、反復又は反転手順なしで、位相歪みをもたらす分析的表現に基づく。レーザビーム増幅圧縮器において格子間隔を機械的に調整することで、この歪みを補正するのに使用可能なノブがレーザに存在することから、線形及び二次チャープ値と、ある程度の三次チャープ値とは、重要となる。方法は、非常に短いパルスで使用できる。この調整は、図19において開示したようなコンピュータ制御ソフトウェアにより自動的に制御できる。方法は、非常に多用途であり、低コストの既製のSHG結晶が存在する任意の波長に対して、高強度又は非常に低強度のパルスで使用できる。MIIPSは、更に、気体中で三次以上の高調波を取得することで使用できる。最大信号は同様に式35と一致するため、この方法は、SHG結晶が利用できない波長領域のパルスの特徴づけにも有用となる。要するに、MII及びMIIPSの用途は、次の通りとなる:
MIIは、SHG、和周波数発生、差周波数発生、又は四波混合等、一つの非線形光学プロセスが施される限り、自己スイッチングパルスを形成するのに使用可能であり、
MIIPSは、具体的には二次及び三次位相歪みについて、自動レーザ最適化を可能にするのに使用可能であり、
MIIPSは、パルス特徴づけに使用可能であり、
MIIPSは、光学素子によって誘導された位相変調を測定するのに使用可能であり、同様に、基板の厚さを測定するのに使用可能であり、
MIIPSは、位相内に格納された情報(アドレス及び/又はメッセージ)をデコーディングするのに使用可能であり、
MII現象を最適化するために動作する整形器は、自己デコードメッセージをエンコード可能であり、
MIIは、fsパルスからの三光子によるDNAの損傷を防止するために使用可能であり、
MIIは、明確な特定の深度でPDT作用物質の活性化を最適化するために使用可能である。
【0070】
以下の参考文献は、二光子感光性樹脂開始剤について開示している。
(1)「二光子吸収発色団に基づく新しい感光性樹脂及び三次元微細加工及び光ストレージへの応用」、B. H. Cumpston, J. E. Ehrlich, L. L. Erskine, A. A. Heikal, Z.-Y. Hu, I.-Y. S. Lee, M. D. Levin, S. R. Marder, D. J. McCord, J. W. Perry, H. Rockel,及びX.-L. Wu、Mat. Res. Soc. Symp. Proc.、第488巻、「有機固体材料の電気、光学、及び磁気特性IV」(MRS、ワレンデール、1998年)、第217頁、及び、
(2)「三次元光データストレージ及び微細加工のための二光子重合開始剤」、B. H. Cumpston, S. Ananthavel, S. Barlow, D. L. Dyer, J. E. Ehrich, L. L. Erskine, A. A. Heikal, S. M. Kuebler, I.-Y. Sandy Lee, D. McCord-Maughon, J. Qin, H. Rockel, M. Rumi, X.-L. Wu, S. R. Marder及びJ. W. Perry、Nature、近刊。多光子パルス内干渉は、有利なことに、この非線形光重合を強化するのに使用できると考えられる。
【0071】
以上、本発明の制御システム及びシステムの好適な実施形態について開示してきたが、本発明の趣旨から逸脱することなく、様々な変形を行い得ることは理解されたい。例えば、好適なものとして説明したパルス整形、波長、及び持続時間の特性以外の他のレーザビームパルス特性を本発明により変更及び利用できる。更に、追加のソフトウェアサブルーチン及び統計分析を利用できる。更に、その他の光学及びパルス整形コンポーネントを説明したものの代わりに使用できる。最後に、アナログ、ソリッドステート、及び光ファイバ電気制御回路を、マイクロプロセッサ及びその他のコンピュータ回路に置き換えること、或いは追加して使用することが可能である。レンズ及び鏡を含む様々な光学素子を使用して、反射、平行化、焦点合わせを達成できる。追加として、格子及びプリズムのような分散光学素子は、交換可能である。レーザ誘導プロセスの検出では、レーザ励起蛍光、ラマン分光法、核磁気共鳴、ガスクロマトグラフィ、質量分析法、及び吸収分光法を含め、様々な分光法を使用してよい。様々な材料、標本、コンポーネントについて開示してきたが、他の様々な材料、標本、及びコンポーネントを利用し得ることは理解されたい。前記特許請求の範囲は、本発明の本来の趣旨に含まれる開示実施形態からの上記及び他の任意の逸脱を包含するものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザビームパルスを放出するように動作可能なレーザと、
前記レーザビームパルスを、エンコード特性を含んで整形するように動作可能なパルス整形器と、
前記パルスの複数の周波数を分離するように動作可能な結晶と、
前記結晶により分離された前記整形レーザビームパルスの前記特性を検出するように動作可能な検出機器と、
前記特性をデコードするように動作可能な前記検出機器に接続されたユニットと、
を備えるシステム。
【請求項2】
前記レーザビームパルスは、ルーティングアドレスを含んでエンコードされる、請求項1記載のシステム。
【請求項3】
前記レーザビームパルスは、複数のルーティングアドレスを含んでエンコードされ、第二の後続のレーザビームパルスは、前記レーザから放出され、同様に、前記パルス整形器によって、複数のルーティングアドレスを含んでエンコードされる、請求項2記載のシステム。
【請求項4】
前記レーザビームパルスに含まれる各ルーティングアドレスは、前記パルス整形器によってエンコードされ、二次高調波発生後に個別の周波数に対応する、請求項3記載のシステム。
【請求項5】
前記レーザビームパルスは、通信メッセージデータを含んでエンコードされる、請求項2記載のシステム。
【請求項6】
前記システムは、更に、
メイン送信コントローラと、
前記送信コントローラに接続された複数の遠隔の初期送信源とを備え、
前記メイン送信コントローラは、前記パルス整形器に、複数の連続するレーザビームパルスを能動的に異なる態様でエンコードさせるように動作可能である、請求項1記載のシステム。
【請求項7】
自己相関及び干渉法なしで非同期の態様で前記特性をデコードするために、前記結晶及び検出機器を含むレシーバに対してエンコード済み光信号を送信すべく、前記メイン送信コントローラとレーザとパルス整形器は、メイン通信トランスミッタとして機能する、請求項6記載のシステム。
【請求項8】
前記結晶は、前記パルス整形器と前記検出機器との間の経路に配置された二次高調波発生結晶である、請求項1記載のシステム。
【請求項9】
前記結晶は、厚結晶である、請求項1記載のシステム。
【請求項10】
前記ユニットは、二次位相変調を決定するように動作可能である、請求項1記載のシステム。
【請求項11】
前記システムは、更に、前記パルス整形器から前記レーザビームパルスを搬送する光ファイバケーブルを備える、請求項1記載のシステム。
【請求項12】
前記パルス整形器は、基板に成形された固定波形を有する、請求項1記載のシステム。
【請求項13】
前記レーザは、パルス持続時間約50フェムト秒未満の単一レーザビームパルスを放出するように動作可能なフェムト秒レーザである、請求項1記載のシステム。
【請求項14】
前記レーザは、持続時間11フェムト秒未満のレーザビームパルスを送信するように動作可能である、請求項1記載のシステム。
【請求項15】
前記パルス整形器は、前記レーザビームパルスの振幅及び位相を制御するように動作可能である、請求項1記載のシステム。
【請求項16】
前記パルス整形器は、可変形鏡を含む、請求項1記載のシステム。
【請求項17】
前記システムは、更に、前記パルス整形器と前記結晶との間に配置されたレンズを備え、前記レンズは、実質的に前記パルスのスペクトル全体にわたって前記結晶によるその後の分散及び分離のために、前記パルスの前記スペクトルを位相整合角度において前記結晶上に収束させる、請求項1記載のシステム。
【請求項18】
前記検出機器は、CCDカメラである、請求項1記載のシステム。
【請求項19】
前記検出機器は、対応するファイバの下流に接続されている複数の前記ユニットを備えた光ファイバアレイを含む、請求項1記載のシステム。
【請求項20】
レーザビームパルスと、
前記パルスを変化させるように動作可能なパルス整形器と、
前記パルス整形器によって整形された前記パルスを収束位相整合角度で受け取り、その後、前記パルスを、個々に分離された色周波数へ発散させるように動作可能な光学コンポーネントと、
を備えるシステム。
【請求項21】
前記システムは、更に、前記光学コンポーネントによって個々に分離された前記整形レーザビームパルスの複数の周波数について特性を同時に検出するように動作可能な単一の検出機器を備え、前記検出機器は、その後、検出した個々の周波数に対応する個別の出力信号を送信する、請求項20記載のシステム。
【請求項22】
単一のレーザビームパルスは、複数の通信ルーティングアドレスを含んでエンコードされる、請求項20記載のシステム。
【請求項23】
前記レーザビームパルスに含まれる各ルーティングアドレスは、前記パルス整形器によって、個別の周波数領域においてエンコードされる、請求項22記載のシステム。
【請求項24】
前記レーザビームパルスは、前記パルス整形器によって、通信メッセージデータを含んでエンコードされる、請求項20記載のシステム。
【請求項25】
前記システムは、更に、送信制御ユニットと、前記送信制御ユニットに接続され、入力信号を送信する複数の通信源とを備え、前記送信制御ユニットは、前記通信源から受信した前記入力信号に従って複数の連続したレーザビームパルスをエンコードするために、前記パルス整形器の態様を変化させるように動作可能である、請求項20記載のシステム。
【請求項26】
前記光学コンポーネントは、結晶である、請求項20記載のシステム。
【請求項27】
前記結晶は、前記パルス整形器と前記検出機器との間の経路に配置された二次高調波発生結晶である、請求項26記載のシステム。
【請求項28】
前記結晶は、厚結晶である、請求項26記載のシステム。
【請求項29】
前記システムは、更に、前記パルス整形器と前記結晶との間に配置されたレンズを備え、前記レンズは、実質的に前記パルスのスペクトル全体にわたって前記結晶によるその後の分散及び分離のために、前記パルスの前記スペクトルを位相整合角度において前記結晶上に収束させる、請求項26記載のシステム。
【請求項30】
前記システムは、更に、
前記レーザビームパルスを放出するように動作可能なレーザと前記パルス整形器とを含む通信トランスミッタアセンブリと、
前記光学コンポーネント及び検出器を含む通信レシーバアセンブリと、
を備え、
前記トランスミッタアセンブリは、エンコード済みレーザ信号を前記レシーバアセンブリに送信するように動作可能であり、前記レシーバアセンブリは、前記レーザ信号を所定の復号コードに基づいて非同期の態様でデコードするように動作可能である、請求項20記載のシステム。
【請求項31】
前記システムは、更に、前記パルス整形器から前記レーザビームパルスを搬送する光ファイバケーブルを備える、請求項20記載のシステム。
【請求項32】
レーザビームパルスを放出するように動作可能なレーザと、
エンコード済み通信データを含むように前記パルスの少なくとも一つの特性を変更するように動作可能な暗号化器と、
変更済みパルス特性を非同期の態様でデコードするように動作可能な遠隔配置された解読器と、
を備える通信システム。
【請求項33】
前記パルスは、アドレスルーティング情報及び関連する通信情報を搬送するためにエンコードされる、請求項32記載のシステム。
【請求項34】
前記システムは、更に、エンコード済みパルスの自己分離を起こさせるように動作可能な前記解読器に関連する少なくとも一つの受動的光学コンポーネントを備える、請求項32記載のシステム。
【請求項35】
パルス内干渉(intrapulse interference)によって、エンコードされた個別アドレスルーティングデータに対応した、パルスの自己ルーティングプロセス及び個別の周波数が生ぜられる、請求項34記載のシステム。
【請求項36】
前記暗号化器は、通信トランスミッタ内に配置されたパルス整形器である、請求項32記載のシステム。
【請求項37】
レーザビームパルスを放出するように動作可能なレーザと、
前記レーザビームパルスの位相変調を発生させるように動作可能な光学素子と、
前記位相変調パルスを受信し、周波数領域における前記位相変調の(a)大きさ及び(b)符号の少なくとも一方を決定するように動作可能なユニットと、
を備えるシステム。
【請求項38】
前記システムは、更に、前記レーザビームパルスが流体を介して移動する際に、取得した二次位相変調の前記大きさを決定することで、前記レーザに関連するコンポーネントから、目標とされる上記受信ユニットまでの距離を計算するコントローラを備える、請求項37記載のシステム。
【請求項39】
前記流体は、水である、請求項38記載のシステム。
【請求項40】
前記コントローラは、目標とされる前記受信ユニットからの反射信号なしで、前記距離計算を行う、請求項38記載のシステム。
【請求項41】
前記ユニットは、高次の位相変調に依存せずに整形パルスから二次位相変調を単独で測定する、請求項37記載のシステム。
【請求項42】
前記光学素子は、前記ユニットが前記パルスにおける未知の位相を分析できるように、公知の基準位相を前記パルスに導入するパルス整形器である、請求項37記載のシステム。
【請求項43】
前記ユニットは、分光計を含む、請求項37記載のシステム。
【請求項44】
前記ユニットは、厚二次高調波発生結晶と測定器とを含む、請求項37記載のシステム。
【請求項45】
前記システムは、更に、二次位相変調を決定し、二次チャープを低減するために前記レーザに関連づけられた部材を自動的に調整するように動作可能なコントローラを備える、請求項37記載のシステム。
【請求項46】
後続のレーザビームパルスは、組織に対する光力学療法のために使用される、請求項37記載のシステム。
【請求項47】
後続のレーザビームパルスは、送信源から遠隔配置された受信源へデータを通信するために使用される、請求項37記載のシステム。
【請求項48】
前記パルスの前記大きさ及び符号の両方は、前記受信ユニットによって決定される、請求項37記載のシステム。
【請求項49】
レーザビームパルスを放出するように動作可能なレーザと、
前記レーザから放出された前記パルスの位相を修正するように動作可能な第一の機器と、
修正されたパルスにおいて搬送された通信データを解釈するように動作可能な第二の機器であって、少なくとも二次高調波発生分離特性を有する結晶を含む第二の機器と、
を備える通信システム。
【請求項50】
前記システムは、更に、前記第一及び第二の機器を接続する、(a)光ファイバ、(b)空気、及び(c)水、の透過媒体のうちの少なくとも一つを備える、請求項49記載の通信システム。
【請求項51】
前記第一の機器は、レーザビームパルス整形器を含む、請求項49記載の通信システム。
【請求項52】
前記レーザは、フェムト秒レーザであり、前記第一の機器は、受動的パルス変更特性を備えたチャープ位相マスク要素と、分散要素とを含む、請求項49記載の通信システム。
【請求項53】
前記システムは、更に、前記レーザビームパルスが流体を介して移動する際に、取得した二次位相変調の前記大きさを決定することで、前記レーザに関連するコンポーネントから、目標とされる前記第二の機器までの距離を計算するように動作可能なコントローラを備える、請求項49記載の通信システム。
【請求項54】
多光子パルス内干渉(multiphoton intrapulse interference)の使用を介して、前記第二の機器によって前記パルスが受信された際に、一次高調波のバックグラウンドのない機能的画像化が生じる、請求項49記載の通信システム。
【請求項55】
前記第一の機器は、可変形鏡であり、前記結晶は、厚結晶である、請求項49記載の通信システム。
【請求項56】
レーザビームパルスと、
前記パルスの特性を変更するように動作可能なパルス整形器と、
前記パルスにおいて多光子パルス内干渉を生じさせるように動作可能な機器と、
を備えるレーザシステム。
【請求項57】
前記機器は、前記パルスが非線形光学プロセスを受ける際に前記パルスが自己スイッチングを起こさせるようにする、請求項56記載のシステム。
【請求項58】
前記非線形光学プロセスは、二次高調波発生を含む、請求項57記載のシステム。
【請求項59】
前記非線形光学プロセスは、和周波数発生を含む、請求項57記載のシステム。
【請求項60】
前記非線形光学プロセスは、差周波数発生を含む、請求項57記載のシステム。
【請求項61】
前記非線形光学プロセスは、四波混合を含む、請求項57記載のシステム。
【請求項62】
二次位相歪みは、それが存在する場合には、感知され、自動的に最小化される、請求項56記載のシステム。
【請求項63】
光学コンポーネントによって引き起こされた位相変調が測定される、請求項56記載のシステム。
【請求項64】
前記システムは、更に、上記整形されたパルスを受信するように動作可能な検出器を備える、請求項56記載のシステム。
【請求項65】
前記検出器は、CCDカメラを含む、請求項64記載のシステム。
【請求項66】
前記検出器は、リモートコントローラに接続された光ファイバアレイを含む、請求項64記載のシステム。
【請求項67】
生体組織で使用するシステムであって、
高ピーク強度レーザビームパルスと、
多光子パルス内干渉の使用を介して、前記生体組織上へ前記パルスを放出する前に、前記パルスの特性を変更するように動作可能な機器と、
を備え、
各パルスによって引き起こされる非線形遷移が制御される、前記システム。
【請求項68】
前記機器は、パルス整形器を使用し、前記組織における所望の励起物質は、二光子吸収を受ける、請求項67記載のシステム。
【請求項69】
前記パルスは、51フェムト秒未満の持続時間を有する、請求項67記載のシステム。
【請求項70】
前記システムは、更に、前記組織を通過する整形されたパルスによって生じた光学断層撮影画像を生成する、請求項67記載のシステム。
【請求項71】
前記機器は、治療物質による二光子吸収を強化し、隣接する健康な組織の、三光子励起による損傷(three photon induced damage)を実質的に防止するパルス整形器である、請求項67記載のシステム。
【請求項72】
前記機器は、前記ビームを変調するように動作可能な位相変調マスクを含む、請求項67記載のシステム。
【請求項73】
前記パルスは、前記生体組織における特定の分子を改変又は破壊するために、目標とする多光子損傷を強化するように整形される、請求項67記載のシステム。
【請求項74】
前記多光子パルス内干渉は、所望の光力学療法の作用物質を所望の組織深度で活性化するように作用可能である、請求項67記載のシステム。
【請求項75】
基板と、前記基板上に配置された恒久的に固定された波パターンとを備え、前記波パターンの少なくとも一部は、互いにオフセットされている、レーザビームパルス整形器。
【請求項76】
前記パターンは、前記波の位相の関数としてオフセットされている、請求項75記載のパルス整形器。
【請求項77】
前記基板は、重合体である、請求項75記載のパルス整形器。
【請求項78】
前記基板及び波パターンは、射出成形によって形成される、請求項75記載のパルス整形器。
【請求項79】
前記波パターンは、前記パターンの隣接する列が互いにオフセットされた状態で、前記基板全体にわたって反復する正弦波である、請求項75記載のパルス整形器。
【請求項80】
前記波パターンは、単一のレーザビームパルスからの出力として、数百のスペクトルを生成するように作用可能である、請求項75記載のパルス整形器。
【請求項81】
前記波パターンは、持続時間約11フェムト秒未満のレーザビームパルス用に構成される、請求項75記載のパルス整形器。
【請求項82】
レーザビームを使用する方法であって、
(a)レーザビームパルスを放出するステップと、
(b)前記レーザビームパルスを、エンコードデータを含んで整形するステップと、
(c)前記レーザビームパルスによって引き起こされた非線形光学プロセスを制御するステップと、
(d)レシーバによって前記データを非同期の態様でデコードするステップと、
を備える方法。
【請求項83】
更に、前記パルスからの二次位相変調を独立して測定するステップを備える、請求項82記載の方法。
【請求項84】
更に、非線形パルス内の大きさ及び符号を取得するステップを備える、請求項82記載の方法。
【請求項85】
更に、持続時間約50フェムト秒未満であるパルスの大きさ及び符号を取得するステップを備える、請求項82記載の方法。
【請求項86】
更に、前記整形されたパルスの未知の位相を分析するために、前記整形パルスに公知の基準位相を導入するステップを備える、請求項82記載の方法。
【請求項87】
更に、分光計を用いて、前記整形されたパルスの位相を走査するステップを備える、請求項82記載の方法。
【請求項88】
更に、厚結晶の助けにより、前記整形されたパルスの位相を走査するステップを備える、請求項82記載の方法。
【請求項89】
レーザビームを使用する方法であって、
(a)レーザビームパルスを放出するステップと、
(b)前記レーザビームパルスを整形するステップと、
(c)結晶を介して前記整形されたパルスを送信するステップと、
(d)前記整形されたパルスの特性を非同期の態様で測定するステップと、
を備える方法。
【請求項90】
更に、前記パルスからの二次位相変調を独立して測定するステップを備える、請求項89記載の方法。
【請求項91】
更に、前記パルスにおける位相変調の大きさ及び符号を取得するステップを備える、請求項89記載の方法。
【請求項92】
更に、持続時間約50フェムト秒未満であるパルスの位相の大きさ及び符号を取得するステップを備える、請求項89記載の方法。
【請求項93】
更に、前記整形されたパルスの未知の位相を分析するために、前記整形パルスに公知の基準位相を導入するステップを備える、請求項89記載の方法。
【請求項94】
更に、非線形光学プロセスと分光計とを用いて、前記整形されたパルスの位相を分析するステップを備える、請求項89記載の方法。
【請求項95】
更に、厚結晶の助けにより、前記整形されたパルスの位相を分析するステップを備える、請求項89記載の方法。
【請求項1】
レーザビームパルスを放出するように動作可能なレーザと、
前記レーザビームパルスを、エンコード特性を含んで整形するように動作可能なパルス整形器と、
前記パルスの複数の周波数を分離するように動作可能な結晶と、
前記結晶により分離された前記整形レーザビームパルスの前記特性を検出するように動作可能な検出機器と、
前記特性をデコードするように動作可能な前記検出機器に接続されたユニットと、
を備えるシステム。
【請求項2】
前記レーザビームパルスは、ルーティングアドレスを含んでエンコードされる、請求項1記載のシステム。
【請求項3】
前記レーザビームパルスは、複数のルーティングアドレスを含んでエンコードされ、第二の後続のレーザビームパルスは、前記レーザから放出され、同様に、前記パルス整形器によって、複数のルーティングアドレスを含んでエンコードされる、請求項2記載のシステム。
【請求項4】
前記レーザビームパルスに含まれる各ルーティングアドレスは、前記パルス整形器によってエンコードされ、二次高調波発生後に個別の周波数に対応する、請求項3記載のシステム。
【請求項5】
前記レーザビームパルスは、通信メッセージデータを含んでエンコードされる、請求項2記載のシステム。
【請求項6】
前記システムは、更に、
メイン送信コントローラと、
前記送信コントローラに接続された複数の遠隔の初期送信源とを備え、
前記メイン送信コントローラは、前記パルス整形器に、複数の連続するレーザビームパルスを能動的に異なる態様でエンコードさせるように動作可能である、請求項1記載のシステム。
【請求項7】
自己相関及び干渉法なしで非同期の態様で前記特性をデコードするために、前記結晶及び検出機器を含むレシーバに対してエンコード済み光信号を送信すべく、前記メイン送信コントローラとレーザとパルス整形器は、メイン通信トランスミッタとして機能する、請求項6記載のシステム。
【請求項8】
前記結晶は、前記パルス整形器と前記検出機器との間の経路に配置された二次高調波発生結晶である、請求項1記載のシステム。
【請求項9】
前記結晶は、厚結晶である、請求項1記載のシステム。
【請求項10】
前記ユニットは、二次位相変調を決定するように動作可能である、請求項1記載のシステム。
【請求項11】
前記システムは、更に、前記パルス整形器から前記レーザビームパルスを搬送する光ファイバケーブルを備える、請求項1記載のシステム。
【請求項12】
前記パルス整形器は、基板に成形された固定波形を有する、請求項1記載のシステム。
【請求項13】
前記レーザは、パルス持続時間約50フェムト秒未満の単一レーザビームパルスを放出するように動作可能なフェムト秒レーザである、請求項1記載のシステム。
【請求項14】
前記レーザは、持続時間11フェムト秒未満のレーザビームパルスを送信するように動作可能である、請求項1記載のシステム。
【請求項15】
前記パルス整形器は、前記レーザビームパルスの振幅及び位相を制御するように動作可能である、請求項1記載のシステム。
【請求項16】
前記パルス整形器は、可変形鏡を含む、請求項1記載のシステム。
【請求項17】
前記システムは、更に、前記パルス整形器と前記結晶との間に配置されたレンズを備え、前記レンズは、実質的に前記パルスのスペクトル全体にわたって前記結晶によるその後の分散及び分離のために、前記パルスの前記スペクトルを位相整合角度において前記結晶上に収束させる、請求項1記載のシステム。
【請求項18】
前記検出機器は、CCDカメラである、請求項1記載のシステム。
【請求項19】
前記検出機器は、対応するファイバの下流に接続されている複数の前記ユニットを備えた光ファイバアレイを含む、請求項1記載のシステム。
【請求項20】
レーザビームパルスと、
前記パルスを変化させるように動作可能なパルス整形器と、
前記パルス整形器によって整形された前記パルスを収束位相整合角度で受け取り、その後、前記パルスを、個々に分離された色周波数へ発散させるように動作可能な光学コンポーネントと、
を備えるシステム。
【請求項21】
前記システムは、更に、前記光学コンポーネントによって個々に分離された前記整形レーザビームパルスの複数の周波数について特性を同時に検出するように動作可能な単一の検出機器を備え、前記検出機器は、その後、検出した個々の周波数に対応する個別の出力信号を送信する、請求項20記載のシステム。
【請求項22】
単一のレーザビームパルスは、複数の通信ルーティングアドレスを含んでエンコードされる、請求項20記載のシステム。
【請求項23】
前記レーザビームパルスに含まれる各ルーティングアドレスは、前記パルス整形器によって、個別の周波数領域においてエンコードされる、請求項22記載のシステム。
【請求項24】
前記レーザビームパルスは、前記パルス整形器によって、通信メッセージデータを含んでエンコードされる、請求項20記載のシステム。
【請求項25】
前記システムは、更に、送信制御ユニットと、前記送信制御ユニットに接続され、入力信号を送信する複数の通信源とを備え、前記送信制御ユニットは、前記通信源から受信した前記入力信号に従って複数の連続したレーザビームパルスをエンコードするために、前記パルス整形器の態様を変化させるように動作可能である、請求項20記載のシステム。
【請求項26】
前記光学コンポーネントは、結晶である、請求項20記載のシステム。
【請求項27】
前記結晶は、前記パルス整形器と前記検出機器との間の経路に配置された二次高調波発生結晶である、請求項26記載のシステム。
【請求項28】
前記結晶は、厚結晶である、請求項26記載のシステム。
【請求項29】
前記システムは、更に、前記パルス整形器と前記結晶との間に配置されたレンズを備え、前記レンズは、実質的に前記パルスのスペクトル全体にわたって前記結晶によるその後の分散及び分離のために、前記パルスの前記スペクトルを位相整合角度において前記結晶上に収束させる、請求項26記載のシステム。
【請求項30】
前記システムは、更に、
前記レーザビームパルスを放出するように動作可能なレーザと前記パルス整形器とを含む通信トランスミッタアセンブリと、
前記光学コンポーネント及び検出器を含む通信レシーバアセンブリと、
を備え、
前記トランスミッタアセンブリは、エンコード済みレーザ信号を前記レシーバアセンブリに送信するように動作可能であり、前記レシーバアセンブリは、前記レーザ信号を所定の復号コードに基づいて非同期の態様でデコードするように動作可能である、請求項20記載のシステム。
【請求項31】
前記システムは、更に、前記パルス整形器から前記レーザビームパルスを搬送する光ファイバケーブルを備える、請求項20記載のシステム。
【請求項32】
レーザビームパルスを放出するように動作可能なレーザと、
エンコード済み通信データを含むように前記パルスの少なくとも一つの特性を変更するように動作可能な暗号化器と、
変更済みパルス特性を非同期の態様でデコードするように動作可能な遠隔配置された解読器と、
を備える通信システム。
【請求項33】
前記パルスは、アドレスルーティング情報及び関連する通信情報を搬送するためにエンコードされる、請求項32記載のシステム。
【請求項34】
前記システムは、更に、エンコード済みパルスの自己分離を起こさせるように動作可能な前記解読器に関連する少なくとも一つの受動的光学コンポーネントを備える、請求項32記載のシステム。
【請求項35】
パルス内干渉(intrapulse interference)によって、エンコードされた個別アドレスルーティングデータに対応した、パルスの自己ルーティングプロセス及び個別の周波数が生ぜられる、請求項34記載のシステム。
【請求項36】
前記暗号化器は、通信トランスミッタ内に配置されたパルス整形器である、請求項32記載のシステム。
【請求項37】
レーザビームパルスを放出するように動作可能なレーザと、
前記レーザビームパルスの位相変調を発生させるように動作可能な光学素子と、
前記位相変調パルスを受信し、周波数領域における前記位相変調の(a)大きさ及び(b)符号の少なくとも一方を決定するように動作可能なユニットと、
を備えるシステム。
【請求項38】
前記システムは、更に、前記レーザビームパルスが流体を介して移動する際に、取得した二次位相変調の前記大きさを決定することで、前記レーザに関連するコンポーネントから、目標とされる上記受信ユニットまでの距離を計算するコントローラを備える、請求項37記載のシステム。
【請求項39】
前記流体は、水である、請求項38記載のシステム。
【請求項40】
前記コントローラは、目標とされる前記受信ユニットからの反射信号なしで、前記距離計算を行う、請求項38記載のシステム。
【請求項41】
前記ユニットは、高次の位相変調に依存せずに整形パルスから二次位相変調を単独で測定する、請求項37記載のシステム。
【請求項42】
前記光学素子は、前記ユニットが前記パルスにおける未知の位相を分析できるように、公知の基準位相を前記パルスに導入するパルス整形器である、請求項37記載のシステム。
【請求項43】
前記ユニットは、分光計を含む、請求項37記載のシステム。
【請求項44】
前記ユニットは、厚二次高調波発生結晶と測定器とを含む、請求項37記載のシステム。
【請求項45】
前記システムは、更に、二次位相変調を決定し、二次チャープを低減するために前記レーザに関連づけられた部材を自動的に調整するように動作可能なコントローラを備える、請求項37記載のシステム。
【請求項46】
後続のレーザビームパルスは、組織に対する光力学療法のために使用される、請求項37記載のシステム。
【請求項47】
後続のレーザビームパルスは、送信源から遠隔配置された受信源へデータを通信するために使用される、請求項37記載のシステム。
【請求項48】
前記パルスの前記大きさ及び符号の両方は、前記受信ユニットによって決定される、請求項37記載のシステム。
【請求項49】
レーザビームパルスを放出するように動作可能なレーザと、
前記レーザから放出された前記パルスの位相を修正するように動作可能な第一の機器と、
修正されたパルスにおいて搬送された通信データを解釈するように動作可能な第二の機器であって、少なくとも二次高調波発生分離特性を有する結晶を含む第二の機器と、
を備える通信システム。
【請求項50】
前記システムは、更に、前記第一及び第二の機器を接続する、(a)光ファイバ、(b)空気、及び(c)水、の透過媒体のうちの少なくとも一つを備える、請求項49記載の通信システム。
【請求項51】
前記第一の機器は、レーザビームパルス整形器を含む、請求項49記載の通信システム。
【請求項52】
前記レーザは、フェムト秒レーザであり、前記第一の機器は、受動的パルス変更特性を備えたチャープ位相マスク要素と、分散要素とを含む、請求項49記載の通信システム。
【請求項53】
前記システムは、更に、前記レーザビームパルスが流体を介して移動する際に、取得した二次位相変調の前記大きさを決定することで、前記レーザに関連するコンポーネントから、目標とされる前記第二の機器までの距離を計算するように動作可能なコントローラを備える、請求項49記載の通信システム。
【請求項54】
多光子パルス内干渉(multiphoton intrapulse interference)の使用を介して、前記第二の機器によって前記パルスが受信された際に、一次高調波のバックグラウンドのない機能的画像化が生じる、請求項49記載の通信システム。
【請求項55】
前記第一の機器は、可変形鏡であり、前記結晶は、厚結晶である、請求項49記載の通信システム。
【請求項56】
レーザビームパルスと、
前記パルスの特性を変更するように動作可能なパルス整形器と、
前記パルスにおいて多光子パルス内干渉を生じさせるように動作可能な機器と、
を備えるレーザシステム。
【請求項57】
前記機器は、前記パルスが非線形光学プロセスを受ける際に前記パルスが自己スイッチングを起こさせるようにする、請求項56記載のシステム。
【請求項58】
前記非線形光学プロセスは、二次高調波発生を含む、請求項57記載のシステム。
【請求項59】
前記非線形光学プロセスは、和周波数発生を含む、請求項57記載のシステム。
【請求項60】
前記非線形光学プロセスは、差周波数発生を含む、請求項57記載のシステム。
【請求項61】
前記非線形光学プロセスは、四波混合を含む、請求項57記載のシステム。
【請求項62】
二次位相歪みは、それが存在する場合には、感知され、自動的に最小化される、請求項56記載のシステム。
【請求項63】
光学コンポーネントによって引き起こされた位相変調が測定される、請求項56記載のシステム。
【請求項64】
前記システムは、更に、上記整形されたパルスを受信するように動作可能な検出器を備える、請求項56記載のシステム。
【請求項65】
前記検出器は、CCDカメラを含む、請求項64記載のシステム。
【請求項66】
前記検出器は、リモートコントローラに接続された光ファイバアレイを含む、請求項64記載のシステム。
【請求項67】
生体組織で使用するシステムであって、
高ピーク強度レーザビームパルスと、
多光子パルス内干渉の使用を介して、前記生体組織上へ前記パルスを放出する前に、前記パルスの特性を変更するように動作可能な機器と、
を備え、
各パルスによって引き起こされる非線形遷移が制御される、前記システム。
【請求項68】
前記機器は、パルス整形器を使用し、前記組織における所望の励起物質は、二光子吸収を受ける、請求項67記載のシステム。
【請求項69】
前記パルスは、51フェムト秒未満の持続時間を有する、請求項67記載のシステム。
【請求項70】
前記システムは、更に、前記組織を通過する整形されたパルスによって生じた光学断層撮影画像を生成する、請求項67記載のシステム。
【請求項71】
前記機器は、治療物質による二光子吸収を強化し、隣接する健康な組織の、三光子励起による損傷(three photon induced damage)を実質的に防止するパルス整形器である、請求項67記載のシステム。
【請求項72】
前記機器は、前記ビームを変調するように動作可能な位相変調マスクを含む、請求項67記載のシステム。
【請求項73】
前記パルスは、前記生体組織における特定の分子を改変又は破壊するために、目標とする多光子損傷を強化するように整形される、請求項67記載のシステム。
【請求項74】
前記多光子パルス内干渉は、所望の光力学療法の作用物質を所望の組織深度で活性化するように作用可能である、請求項67記載のシステム。
【請求項75】
基板と、前記基板上に配置された恒久的に固定された波パターンとを備え、前記波パターンの少なくとも一部は、互いにオフセットされている、レーザビームパルス整形器。
【請求項76】
前記パターンは、前記波の位相の関数としてオフセットされている、請求項75記載のパルス整形器。
【請求項77】
前記基板は、重合体である、請求項75記載のパルス整形器。
【請求項78】
前記基板及び波パターンは、射出成形によって形成される、請求項75記載のパルス整形器。
【請求項79】
前記波パターンは、前記パターンの隣接する列が互いにオフセットされた状態で、前記基板全体にわたって反復する正弦波である、請求項75記載のパルス整形器。
【請求項80】
前記波パターンは、単一のレーザビームパルスからの出力として、数百のスペクトルを生成するように作用可能である、請求項75記載のパルス整形器。
【請求項81】
前記波パターンは、持続時間約11フェムト秒未満のレーザビームパルス用に構成される、請求項75記載のパルス整形器。
【請求項82】
レーザビームを使用する方法であって、
(a)レーザビームパルスを放出するステップと、
(b)前記レーザビームパルスを、エンコードデータを含んで整形するステップと、
(c)前記レーザビームパルスによって引き起こされた非線形光学プロセスを制御するステップと、
(d)レシーバによって前記データを非同期の態様でデコードするステップと、
を備える方法。
【請求項83】
更に、前記パルスからの二次位相変調を独立して測定するステップを備える、請求項82記載の方法。
【請求項84】
更に、非線形パルス内の大きさ及び符号を取得するステップを備える、請求項82記載の方法。
【請求項85】
更に、持続時間約50フェムト秒未満であるパルスの大きさ及び符号を取得するステップを備える、請求項82記載の方法。
【請求項86】
更に、前記整形されたパルスの未知の位相を分析するために、前記整形パルスに公知の基準位相を導入するステップを備える、請求項82記載の方法。
【請求項87】
更に、分光計を用いて、前記整形されたパルスの位相を走査するステップを備える、請求項82記載の方法。
【請求項88】
更に、厚結晶の助けにより、前記整形されたパルスの位相を走査するステップを備える、請求項82記載の方法。
【請求項89】
レーザビームを使用する方法であって、
(a)レーザビームパルスを放出するステップと、
(b)前記レーザビームパルスを整形するステップと、
(c)結晶を介して前記整形されたパルスを送信するステップと、
(d)前記整形されたパルスの特性を非同期の態様で測定するステップと、
を備える方法。
【請求項90】
更に、前記パルスからの二次位相変調を独立して測定するステップを備える、請求項89記載の方法。
【請求項91】
更に、前記パルスにおける位相変調の大きさ及び符号を取得するステップを備える、請求項89記載の方法。
【請求項92】
更に、持続時間約50フェムト秒未満であるパルスの位相の大きさ及び符号を取得するステップを備える、請求項89記載の方法。
【請求項93】
更に、前記整形されたパルスの未知の位相を分析するために、前記整形パルスに公知の基準位相を導入するステップを備える、請求項89記載の方法。
【請求項94】
更に、非線形光学プロセスと分光計とを用いて、前記整形されたパルスの位相を分析するステップを備える、請求項89記載の方法。
【請求項95】
更に、厚結晶の助けにより、前記整形されたパルスの位相を分析するステップを備える、請求項89記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2011−22589(P2011−22589A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−188435(P2010−188435)
【出願日】平成22年8月25日(2010.8.25)
【分割の表示】特願2004−543121(P2004−543121)の分割
【原出願日】平成15年10月2日(2003.10.2)
【出願人】(591154980)ボード オブ トラスティーズ,オブ ミシガン ステイト ユニバーシティ (2)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−188435(P2010−188435)
【出願日】平成22年8月25日(2010.8.25)
【分割の表示】特願2004−543121(P2004−543121)の分割
【原出願日】平成15年10月2日(2003.10.2)
【出願人】(591154980)ボード オブ トラスティーズ,オブ ミシガン ステイト ユニバーシティ (2)
【Fターム(参考)】
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