超音波センサ装置
【課題】自身の異常有無を診断できる超音波センサ装置を提供する。
【解決手段】超音波センサ装置を、複数の導波管と、導波管の一方の端部にそれぞれ配置された超音波素子としての、導波管を介して超音波を送信する少なくとも1つの送信用超音波素子、及び、超音波を受信して、超音波の強度に応じた受信信号を出力する少なくとも1つの受信用超音波素子と、送信用超音波素子が配置された導波管の素子配置側とは逆の端部から、近傍の受信用超音波素子が配置された導波管内へ直接的に回り込んで伝播される回り込み波の受信信号に基づいて、超音波素子及び導波管の少なくとも一方の異常有無を判定する判定手段と、を備える構成とした。
【解決手段】超音波センサ装置を、複数の導波管と、導波管の一方の端部にそれぞれ配置された超音波素子としての、導波管を介して超音波を送信する少なくとも1つの送信用超音波素子、及び、超音波を受信して、超音波の強度に応じた受信信号を出力する少なくとも1つの受信用超音波素子と、送信用超音波素子が配置された導波管の素子配置側とは逆の端部から、近傍の受信用超音波素子が配置された導波管内へ直接的に回り込んで伝播される回り込み波の受信信号に基づいて、超音波素子及び導波管の少なくとも一方の異常有無を判定する判定手段と、を備える構成とした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波素子と導波管を備える超音波センサ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1,2に示されるように、複数の導波管を有し、それぞれの導波管の一端に超音波素子(送波器、受波器、超音波振動子)が配置され、導波管を介して超音波が伝達される構成の超音波センサ装置が知られている。
【特許文献1】特開昭63−243783号公報
【特許文献2】特開平10−224880号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上述したように、導波管の一端に超音波素子が配置される構成の超音波センサ装置においては、導波管の超音波素子配置側の他端が開口しているため、例えば車両などの移動体に取り付けた場合、石や水、砂、泥などの異物が導波管内に侵入する恐れがある。そして、異物の衝突によって超音波素子がダメージを受けたり、導波管内に存在する異物が超音波の伝播に影響を及ぼすことも考えられる。しかしながら、超音波センサ装置外部の障害物などの反射物による反射波は、反射物の有無、反射物との距離、反射物の種類(表面凹凸など)などによって変化する。例えば反射物が無い場合だけでなく、反射物が存在しても反射波を検出できないこともある。したがって、反射波による受信信号が通常とは異なる状態(例えばピーク値が小さい状態)や検出されない状態であっても、その原因が、反射物によるものなのか、超音波センサ装置自身の異常であるのかを判別することが困難である。
【0004】
本発明は上記問題点に鑑み、自身の異常有無を診断できる超音波センサ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成する為に請求項1に記載の超音波センサ装置は、複数の導波管と、導波管の一方の端部にそれぞれ配置された超音波素子としての、導波管を介して超音波を送信する少なくとも1つの送信用超音波素子、及び、超音波を受信して、超音波の強度に応じた受信信号を出力する少なくとも1つの受信用超音波素子と、送信用超音波素子が配置された導波管の素子配置側とは逆の端部から、近傍の受信用超音波素子が配置された導波管内へ直接的に回り込んで伝播される回り込み波の受信信号に基づいて、超音波素子及び導波管の少なくとも一方の異常有無を判定する判定手段と、を備えることを特徴とする。
【0006】
このように本発明によれば、送信用超音波素子から送信された送信波のうち、超音波センサ装置外部の反射物による反射波ではなく、送信用超音波素子が端部に配置された導波管から、その近傍に位置する受信用超音波素子が端部に配置された導波管に、直接的に回り込んで伝播される回り込み波を利用して、超音波センサ装置の異常を自己診断するようにしている。このような回り込み波による受信信号は、超音波センサ装置外部の反射物の影響(反射物の有無、反射物との距離、反射物の種類)を受けないので、回り込み波による受信信号に基づいて、超音波センサ装置の異常の有無を自己診断することができる。
【0007】
具体的には、請求項2に記載のように、回り込み波が伝播される導波管に異常がない状態の、回り込み波による受信信号のピーク値が第1基準値として記憶された記憶手段を備え、判定手段が、回り込み波が検出されない場合、又は、回り込み波が検出されてその受信信号のピーク値が記憶手段の第1基準値と異なる場合に、異常であると判定する構成としても良い。
【0008】
上述したように回り込み波は、反射物の影響を受けない。したがって、回り込み波が検出されない場合には、例えば超音波素子の故障や導波管の閉塞による異常と判定することができる。また、受信信号のピーク値が記憶手段の第1基準値と異なる場合には、例えば超音波素子の故障や導波管内に侵入した異物による異常と判定することができる。
【0009】
請求項1又は請求項2に記載の発明においては、請求項3に記載のように、判定手段が、送信用超音波素子の出力信号の減衰波形に基づいて、異常である位置を判定する構成としても良い。
【0010】
送信用超音波素子の配置された導波管に異物などの異常があり、送信用超音波素子から出力された送信波の少なくとも一部が導波管の異常部位で反射される場合、送信用超音波素子自身が反射波を受信することとなる。すなわち、その出力信号の減衰波形は、導波管に異常がない場合と異なるものとなる。したがって、送信用超音波素子の出力信号の減衰波形に基づいて、異常である位置を判定することができる。
【0011】
具体的には、請求項4に記載のように、記憶手段には、送信用超音波素子が配置された導波管に異常がない状態の、送信用超音波素子の出力信号の残響時間が第2基準値として記憶され、受信信号のピーク値が記憶手段の第1基準値と異なる場合、判定手段は、送信用超音波素子の出力信号の残響時間が記憶手段の第2基準値よりも長い場合に、この送信用超音波素子が配置された導波管が異常であると判定する構成としても良い。また請求項5に記載のように、送信用超音波素子を複数有し、受信信号のピーク値が記憶手段の第1基準値と異なる場合、判定手段は、複数の送信用超音波素子の出力信号の残響時間を互いに比較して、少なくとも1つの残響時間が他の残響時間よりも長い場合に、残響時間が長い導波管が異常であると判定する構成としても良い。
【0012】
請求項4に記載の発明の場合、全ての送信用超音波素子に対応する導波管に異常があっても、それぞれに異常があると判定することが可能である。また、請求項5に記載の発明の場合、複数の送信用超音波素子の出力信号の残響時間を互いに比較するので、測定条件の変化の影響(例えば温度による残響時間の変化)を相殺することができる。
【0013】
次に、請求項6に記載の超音波センサ装置は、導波管と、導波管の一方の端部に配置された超音波素子としての、導波管を介して超音波を送信する少なくとも1つの送信用超音波素子、及び、超音波を受信して、超音波の強度に応じた受信信号を出力する少なくとも1つの受信用超音波素子と、送信用超音波素子の出力信号の減衰波形に基づいて、導波管の異常常有を少なくとも判定する判定手段と、を備えることを特徴とする。
【0014】
送信用超音波素子の配置された導波管に異物などの異常があり、送信用超音波素子から出力された送信波の少なくとも一部が導波管の異常部位で反射される場合、送信用超音波素子自身が反射波を受信することとなる。すなわち、その出力信号の減衰波形は、導波管に異常がない場合と異なるものとなる。したがって、本発明によれば、送信用超音波素子の出力信号の減衰波形に基づいて、導波管の異常常有を少なくとも判定することができる。
【0015】
なお、請求項7及び請求項8に記載の発明の作用効果は、請求項4及び請求項5に記載の発明の作用効果とそれぞれ同じであるので、その記載を省略する。
【0016】
請求項1〜8いずれか1項に記載の発明においては、請求項9に記載のように、判定手段による判定結果に基づいて、少なくとも異常状態であることを乗員に報知する報知手段を備える構成とすると良い。
【0017】
請求項1〜9いずれか1項に記載の発明は、請求項10に記載のように、導波管の素子配置側とは逆の端部が、移動体の被取り付け部に形成された貫通孔を介して外部に露出され、超音波素子が移動体の内部に配置された構成に対して好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図に基づいて説明する。
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る超音波センサ装置の全体構成を示す構成図である。図2は、超音波センサ装置のうち、超音波センサの概略構成を示す断面図である。図3は、図2を移動体の外面側から見た平面図である。図4は、図2における筐体周囲の拡大断面図である。なお、図2及び図3においては、超音波センサを移動体の被取り付け部に取り付けた状態を図示している。
【0019】
本実施形態においては、超音波センサ装置が、移動体としての車両に用いられる例について説明する。具体的には、車両の周囲に存在する障害物を検出できるように、超音波センサが、例えば車両の前方、後方、或いは四隅側のバンパに取り付けられている。
【0020】
図1に示すように、超音波センサ装置10は、要部として、超音波センサ100、ECU(Electric Control Unit)20、駆動信号生成部30、受信信号処理部40、及び報知部50を有している。
【0021】
超音波センサ100は、図2に示すように、要部として、圧電振動子110、圧電振動子110などを収容する筐体120、車両の外部と圧電振動子110との間で超音波を誘導する導波管としての管部132を有する2つの超音波センサ100a,100bを含んでいる。なお、圧電振動子110を含む筐体120が、特許請求の範囲の超音波素子に相当する。このような超音波センサ100としては、例えば本出願人による特願2007−96704号に記載のされた種々の構成を採用することができる。特願2007−96704号には各構成及び効果が詳細に記載されているので、本実施形態における詳細な説明は割愛する。
【0022】
圧電振動子110は、チタン酸バリウムやPZT等の圧電セラミックスを焼結体とし、電圧を印加して振動を発生させるものであり、例えば円板状に形成されている。本実施形態においては、圧電振動子100として、路面に対して水平方向(図3に示すx方向)に並んで配置された2個の圧電振動子110a,100bを有している。なお、圧電振動子110aが超音波を車両の外部に送信する役割を果たし、圧電振動子100bが超音波を受信する役割を果たすようになっている。
【0023】
圧電振動子110の表面には電極(図示略)が形成され、当該電極にリード111が電気的に接続されている。本実施形態においては、図4に示すように、一方のリード111が電極と電気的に接続された筐体120の内面に接続されている。そして、リード111は、圧電振動子110を振動させて超音波を発生するための駆動信号を出力したり、圧電振動子110に超音波が伝達されて、圧電振動子110に歪みが生じた場合に、圧電効果によって生じる電圧信号を入力する処理回路が形成された回路基板(図示略)と電気的に接続されている。したがって、超音波センサ装置10は、超音波の送信から受信までの時間に基づいて、車両の周囲に存在する障害物までの距離を算出することができる。
【0024】
筐体120は、それぞれ1つの圧電振動子110(110a,110b)を収容すべく、例えばアルミニウムや合成樹脂(本実施形態においてはアルミニウム)を構成材料として、有底筒状に設けられている。そして、図4に示すように、底面部121の内面122に圧電振動子110が設置(例えば固着)されている。すなわち、圧電振動子110の配置された底面部121が振動板としての役割を果たし、底面部121の外面123(内面122の裏面)が振動面となっている。
【0025】
また、圧電振動子110の周囲には、図4に示すように、内面122に面する面を除いて吸音材112が配置されている。この吸音材112は、圧電振動子110が伸縮し、筐体120の底面部121が振動することによって筐体120内に放射される超音波を吸収するためのものであり、例えばシリコンスポンジ等の吸音性能に優れた材質よって構成されている。そして、吸音材112上に封止材113が配置され、この封止材113によって筐体120内が気密に封止されている。
【0026】
導波管ユニット130は、図2に示すように、車両外部と車両内部(バンパ2の内面3側)に配置された圧電振動子110(振動面としての外面123)との間で超音波を誘導する(本実施形態においては、圧電振動子110aが配置された筐体120の外面123から車両外部へ超音波を導くとともに、車両外部からの超音波を圧電振動子100bが配置された筐体120の外面123まで導く)ように構成されている。本実施形態に係る導波管ユニット130は、例えば樹脂材料からなる基材131に対して、導波管としての2つの管部132が形成されている。なお、2つの管部132のうち、管部132aの開口端135aには、圧電振動子110aを含む筐体120が固定されており、管部132bの開口端135bには、圧電振動子110bを含む筐体120が固定されている。このように、超音波センサ100aは、圧電振動子110aを含む筐体120と管部132aを有し、超音波センサ100bは、圧電振動子110bを含む筐体120と管部132bを有する構成となっている。
【0027】
管部132a,132bの、バンパ2側の開口端133a,133bは、図2に示すように、基材131の同一面に互いに近接して開口しており、バンパ2に取り付けられた状態で、バンパ2の貫通孔5を介して車両外部に露出されている。また、他方の開口端135a,135bは、基材131の開口端形成面の対向面側に形成された固定用溝134にそれぞれ連結されている。この固定用溝134は、圧電振動子110を含む筐体120が固定される溝である。
【0028】
また、管部132a,132bは、図2に示すように、それぞれの開口端133a,133bの開口面積が、対応する振動面としての外面123の面積よりも小さくなるように設定されている。本実施形態においては、上述の条件を満たしつつ、開口端133a,133bが、ともに形状及び大きさの等しい円形状とされており、対応する複数の外面123も、形状及び大きさが等しく設定されている。また、それぞれの管部132a,132bは、バンパ2側の開口端133a,133bと振動面側の開口端135a,135bとの間で、断面形状(本実施形態においては円断面)及び断面積がそれぞれ一定となっている。
【0029】
また、図2に示すように、隣接する開口端133a,133b間の開口間隔が、隣接する外面123間の対応する間隔よりも狭く、且つ、超音波の波長に対して半波長以下(本実施形態においては半波長)とされている。さらには、複数の管部132a,132bの長さが等しく設定されている。
【0030】
このように構成される導波管ユニット130は、圧電振動子110を含む筐体120が固定用溝134に固定された状態で、バンパ2に固定されている。本実施形態においては、開口部133a,133bを含む基材131の一部がバンパ2の貫通孔5に挿入され、バンパ2の内面3と対向する基材131の部位が内面2に対して接着固定されている。そして、この固定状態で、開口端133a,133bがバンパ2の外面4と面一とされている。なお、圧電振動子110を含む筐体120は、振動面としての外面123が開口端133a,133b側となるように、対応する固定用溝134に、振動吸収部材124を介してそれぞれ固定されている。また、固定用溝134に筐体120が固定された状態で、管部132a,132bの開口端135a,135bは、外面123との間に若干の隙間をもって開口端133a,133b側に配置された状態となっている。すなわち、振動板としての底面部121は、導波管ユニット130を構成する基材131とは直接接触しておらず、基材131が底面部121の振動を抑制しないようになっている。
【0031】
ECU20は、通常のコンピュータであり、図示されないCPU、ROM、RAM、I/O、及びこれらを接続するバスによって構成される。ECU20は、駆動信号生成部30に対して、所定のタイミングで圧電振動子110aの駆動指示信号及び自己診断用駆動指示信号を出力する。また、ECU20は、圧電振動子100bの受信信号に基づいて、後述する回り込み波及び反射波を検出するとともに、回り込み波のピーク値を検出する。そして、回り込み波が検出されない場合、又は、回り込み波のピーク値が予め設定されている第1基準値と異なるときに、超音波センサ100に異常が生じていると判定する。そして、その判定結果を報知部50が報知するように報知部50の出力を制御する。このように、本実施形態に係るECU20は、記憶、判定、演算、制御の各機能を有している。
【0032】
駆動信号生成部30は、発振回路31と駆動回路32を含んでいる。発振回路31は、ECU20からの駆動指示信号又は自己診断用駆動指示信号を受けて、予め設定された所定周波数のパルス信号を駆動回路32に出力する。そして、駆動回路32は、圧電振動子110aに入力される電源電圧の供給を受けて駆動し、発振回路31からのパルス信号(駆動信号)により圧電振動子110aを駆動させる。これにより、圧電振動子110aが送信振動し、図2に示した筐体120の底面部121を介して車両外部に送信波(超音波)が送信される。
【0033】
検出信号処理部40は、増幅回路41と、振動を電気信号に変換する圧電振動子110bから出力された信号のうち、所定の周波数域のみを選択的に出力するフィルタ回路42とを含んでいる。したがって、増幅され、フィルタリングされた信号が、ECU20に入力される。
【0034】
報知部50は、上述したように、ECU20の判定結果、演算結果に応じた報知を乗員にするものである。本実施形態においては、警報音出力装置と表示装置を採用している。
【0035】
次に、回り込み波に基づいて、超音波センサ装置10の異常有無を判定する原理を、図5及び図6を用いて説明する。図5は、反射波と回り込み波を説明するための図である。図6は、異常有無に伴う受信信号の変化を示す図であり、(a)は異常なし及び障害物ありの状態、(b)は異常なし及び障害物なしの状態、(c)は異常あり及び障害物ありの状態を示す図である。
【0036】
従来から、音波が、遮蔽物などがある場合に裏側に回り込む性質を有し、この性質が、周波数が高い(波長が短い)ほど弱くなり、周波数が低い(波長が長い)ほど強くなることが知られている。本実施形態に示すように、車両用障害物検出装置に適用される超音波センサ装置10の周波数は、一般的に40〜70kHz程度と低周波であり、本実施形態においてもこの範囲内の周波数(例えば40kHz)となっている。したがって、本実施形態に示す構成において、車両外部に障害物1が存在する場合には、圧電振動子100aを送信振動によって発せられた超音波に基づいて、図5に示すように、障害物1による反射波W1と回り込み波W2が受信用の管部132b内に伝播されることとなる。
【0037】
この回り込み波W2は、上述した超音波の回り込みの性質により、送信用の圧電振動子100aが配置された管部132aの開口端133aから、近傍の開口端133bを介して、受信用の圧電振動子100bが配置された管部132bに直接的に回り込んで伝播されるものである。このように、回り込み波W2は、反射波W1よりも超音波の伝播経路が短く、伝播経路に障害物1が含まれないので、障害物1の有無、障害物1との距離、障害物1の種類(表面凹凸や音響インピーダンスなど)といった障害物1の影響を受けない。したがって、回り込み波W2は、反射波W1とは異なり、超音波センサ装置10(超音波センサ100)の変化が色濃く反映される。本実施形態においては、この回り込み波W2による受信信号に基づいて、超音波センサ装置10の異常有無を自己診断するようにしている。
【0038】
例えば超音波センサ装置10(圧電振動子110及び管部132)に異常がなく、且つ、障害物1が存在する場合、圧電振動子110bによって検出される受信信号は、図6(a)に示すようなる。図6(a)に示すように、伝播経路の短い回り込み波W1が先に検出され、次いで反射波W1が検出される。
【0039】
これに対し、図6(a)に示す状態から障害物1を除去した場合(超音波センサ装置10に異常がなく、且つ、障害物1が存在しない場合)、圧電振動子110bによって検出される受信信号は、図6(b)に示すように、回り込み波W2によるもののみとなる。このとき、回り込み波W2による受信信号は、障害物1の影響がないので、図6(a)とほとんど変化がない。
【0040】
また、図6(a)に示す状態から異物を管部132(例えば図5に示すように異物6を受信用の管部132b)内に配置した場合(超音波センサ装置10に異常があり、且つ、障害物1が存在する場合)、回り込み波W2及び反射波W1が、ともに圧電振動子110(110a,110b)及び管部132(132a,132b)の少なくとも1つの異常の影響を受ける。したがって、その受信信号は、図6(c)に示すように図6(a)の状態から変化する。詳しくは、管部132b内に、石など異物6が侵入して管部132が異常となっている場合、管部132b内の媒体(本実施形態においては空気)と異物6との音響インピーダンスの差によって超音波の反射が生じる。したがって、図6(c)に示すように、回り込み波W2及び反射波W1による受信信号は、図6(a)の状態に比べて振幅(ピーク値)が小さくなる。
【0041】
このように、回り込み波W2は、反射波W1とは異なり、障害物1による影響を受けないので、回り込み波W2による受信信号に基づいて、超音波センサ装置10の異常の有無を自己診断することができる。なお、反射波W1は、障害物1による反射波であるので、障害物1によって変化する。例えば障害物1が無い場合だけでなく、障害物1が存在しても反射波を検出できないこともあるし、障害物1との距離や障害物1の種類によって受信信号の強度も変化する。したがって、反射波W2による受信信号に基づいて自己診断するのは困難である。
【0042】
回り込み波W2による受信信号に基づいて、超音波センサ装置10の異常の有無を判定する(自己診断する)判定方法は種々考えられるが、その一例を、図7を用いて説明する。図7は、超音波センサ装置の異常有無を判定する処理の一例を示すフロー図である。例えば本処理は、IGキーがオンされた時点で実行される。
【0043】
先ず、IGキーがオンされると、ECU20は、駆動信号生成部30の発振回路31に自己診断用駆動信号生成指示を出し、これを受けた駆動信号生成部30が、自己診断用駆動信号を送信用の圧電振動子110aに出力する。そして、圧電振動子110aが送信振動し、筐体120の底面部121を介して送信波(超音波)が出力される。この送信波は、管部132a内を誘導されて、開口端133aから外部に出力される。
【0044】
開口端133aから外部に出力された送信波のうち、回り込み波W2が、開口端133aの近傍に位置する開口端133bから受信用の管部132b内に伝播される。そして、管部132b内を誘導されて、開口端135bから筐体120の底面部121に伝達されると、底面部121の振動を受信用の圧電振動子110bが電気的な受信信号に変換する。
【0045】
特に異常がなければ、ECU20が駆動信号生成部30に駆動信号生成指示を出してからほぼ一定の時間で回り込み波W2が圧電振動子110bに到達するはずである。したがって、ECU20が駆動信号生成部30に駆動信号生成指示を出してから所定時間の間、圧電振動子110bが回り込み波W2の検出を行い(S10)、その結果に基づいて、ECU20が回り込み波W2の有無を判定する(S20)。なお、上述の所定時間とは、駆動信号生成指示を出してから回り込み波W2の検出が終了するまでを含み、且つ、反射波W1の検出が始まるまでの間で設定される。
【0046】
回り込み波W2が検出されない場合、圧電振動子110a,110bの少なくとも一方の故障か、管部132a,132bの少なくとも一方の閉塞が生じているものと推測される。したがって、ECU20は、超音波センサ装置10が異常状態にあると判定し、報知部50に報知指示信号を出力する。そして、報知部50は、警報音とモニターへの表示で乗員に報知し(S50)、自己診断処理は終了となる。
【0047】
回り込み波W2が検出された場合、ECU20は、回り込み波W2の受信信号に基づいて回り込み波W2のピーク値(振幅)を検出する(S30)。そして、検出されたピーク値が、メモリに予め記憶された基準値(特許請求の範囲に記載の第1基準値)と一致するか否かを判定する(S40)。
【0048】
検出されたピーク値が基準値とほぼ一致する場合、ECU20は圧電振動子110(110a,110b)及び管部132(132a,132b)に異常が無いものと判定し、自己診断処理は終了となる。
【0049】
検出されたピーク値が基準値と異なる場合、圧電振動子110a,110bの少なくとも一方の故障か、管部132a,132bの少なくとも一方に異物侵入が生じているものと推測される。したがって、ECU20は、超音波センサ装置10が異常状態にあると判定し、報知部50に報知指示信号を出力する。そして、報知部50は、警報音とモニターへの表示で乗員に報知し(S50)、自己診断処理は終了となる。
【0050】
なお、本実施形態においては、誤検出を防止するため、異常判定後においては、リセット処理されない限り、ECU20から駆動信号生成部30に駆動信号生成指示を出力しないように構成されている。換言すれば、点検、修理、乃至取替えされない限り、超音波センサ装置10が障害物検出装置として機能しないように構成されている。なお、報知は、判定処理終了とともにオフとなるようにしても良いし、警報音のみをオフとし、表示はリセット処理されるまで残るようにしても良い。
【0051】
このように本実施形態に示す超音波センサ装置10によれば、送信用の管部132aから、その近傍に位置する受信用の管部132bに、直接的に回り込んで伝播される回り込み波W2の受信信号を用いるので、障害物1による影響を受けることなく、超音波センサ装置10(超音波センサ100)の異常の有無を自己診断することができる。特に、送信用及び受信用に関わらず、異常の有無を判定することができる。
【0052】
なお、本実施形態においては、異常を知らせる報知が警報音とモニターへの表示である例を示した。しかしながら、報知部50は上記例に限定されるものではない。それ以外にも車両のインパネに取り付けられた表示装置などを採用することができる。
【0053】
また、本実施形態においては、IGキーのオンにより、判定処理が実行される例を示した。しかしながら、シフト位置に応じて、判定処理が実行される構成としても良い。例えば、超音波センサ100がリア側のバンパ2に配置されている場合、シフト位置がR(リバース)とされた時点で、図8に示す判定処理が実行されても良い。この場合、障害物検出処理の前段階として判定処理が実行される。図8に示すように、異常有無の判定処理が上述した処理(S10〜S50)と同様に実行される。S40において、ECU20がピーク値と基準値が一致すると判定した場合、検出用の圧電振動子110bによって反射波検出(S60)が検出される。そして、反射波の受信信号に基づいて、ECU20が所定の演算処理(S70)を実行し、演算結果に基づいて障害物有無を判定する(S80)。ECU20は、障害物があると判定した場合にのみ、報知部50に報知指示信号を出力し、報知部50は、例えば警報音で乗員に報知する(S90)。このS60〜S90の処理は、シフト位置の変更(DおやP)があるまで繰り返し実行され、シフト位置の変更(S100)によって、判定処理は終了となる。図8は、変形例を示すフロー図である。なお、図8においては、S60において反射波の検出がなされる例を示したが、反射波の検出は、S10よりも後であってS70までに実行されれば良い。
【0054】
なお、本実施形態においては、最も簡素な例として、超音波センサ100が、圧電振動子110として、送信専用の1つの圧電振動子110aと、受信専用の1つの圧電振動子110bを有する例を示した。しかしながら、超音波センサ100の構成は上記例に限定されるものでは無い。少なくとも2つの圧電振動子110(2つの管部132)を有し、そのうち、少なくとも1つが送信機能を有し、少なくとも1つが受信機能を有する構成であれば良い。例えば送受信機能を有する複数の圧電振動子110を有する構成としても良い。
【0055】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態を、図9〜図11に基づいて説明する。図9は、残響を説明するための図である。図10は、送信波の変化を示す図であり、(a)は受信側に異常がある場合、(b)は送信側に異常がある場合を示す図である。図11は、第2実施形態において、超音波センサ装置の異常有無を判定する処理を示すフロー図である。
【0056】
第2実施形態に係る超音波センサ装置は、第1実施形態に示した超音波センサ装置と共通するところが多いので、以下、共通部分については詳しい説明は省略し、異なる部分を重点的に説明する。なお、第1実施形態に示した要素と同一の要素には、同一の符号を付与するものとする。
【0057】
第1実施形態においては、超音波センサ装置10(超音波センサ100)の異常有無を判定できるものの、送信側と受信側にどちらに異常があるのかまでは判定できなかった。これに対し、本実施形態においては、送信用の圧電振動子110aの出力信号(送信波)の減衰波形(換言すれば、送信波の残響)に基づいて、ECU20が異常である位置(送信側と受信側にどちらに異常があるのか)を判定する点を特徴とする。
【0058】
先ず、送信用の圧電振動子110aの出力信号(送信波)の減衰波形(残響)について説明する。図9に示すように、駆動信号生成部30から例えば自己診断用駆動信号が送信用の圧電振動子110aに入力されると、圧電振動子110aは送信振動し、筐体120の底面部121を介して車両外部に送信波が出力される。自己診断用駆動信号を停止(すなわち圧電振動子110aの送信振動を停止)しても、しばらくの間は振動板である底面部121が振動する。これを残響といい、送信波の出力は、図2に示すように自己診断用駆動信号に対して残響時間分長くなる。なお、以下においては、図9に示す送信波の出力信号を、送信側の超音波センサ100aに異常がない状態のものとする。
【0059】
次に、残響を利用した異常位置を判定する原理を、図10を用いて説明する。例えば受信側の超音波センサ100b(圧電振動子110b及び管部132b)に異常がある場合、送信波の出力信号には異常による影響が無いので、送信波の出力信号は図10(a)に示すようになる。すなわち、送信波の出力信号の減衰波形は、図9に示す基準状態とほぼ同じとなり、例えばその残響時間も基準状態の残響時間(特許請求の範囲に記載の第2基準値に相当)とほぼ等しい値となる。
【0060】
これに対し、受信側の超音波センサ100bにおいて、管部132aに異常(例えば異物6の侵入や管部132aの破損)がある場合、異常部位で反射された超音波を圧電振動子110aが受信することとなる。したがって、送信波の出力信号の減衰波形は、図9に示す基準状態と異なるものとなり、例えばその残響時間は基準状態の残響時間(特許請求の範囲に記載の第2基準値に相当)よりも長くなる。このように、送信波の出力信号の減衰波形に基づいて、異常である位置を判定することができる。
【0061】
なお、送信波の出力信号の減衰波形に基づいて、超音波センサ装置10の異常である位置を判定する方法は種々考えられるが、その一例を、図11を用いて説明する。例えば本処理は、第1実施形態に示した異常有無の判定処理(図7参照)に続いて実行される。S10〜S40までは、第1実施形態に示した図7の判定処理と同様である。なお、S20において、回り込み波W2が検出されない場合、圧電振動子110a,110bの少なくとも一方の故障か、管部132a,132bの少なくとも一方の閉塞が生じているものと推測される。したがって、ECU20は、超音波センサ装置10が異常状態にあると判定し、報知部50に報知指示信号を出力する。そして、報知部50は、警報音とモニターへの表示で乗員に報知し(S110)、自己診断処理は終了となる。
【0062】
S40において、検出されたピーク値が基準値とほぼ一致する場合、ECU20は圧電振動子110(110a,110b)及び管部132(132a,132b)に異常が無いものと判定し、自己診断処理は終了となる。
【0063】
S40において、検出されたピーク値が基準値と異なる場合、ECU20は、超音波センサ装置10が異常状態にあると判定し、駆動信号生成部30の発振回路31に再度自己診断用駆動信号生成指示を出す。これを受けた駆動信号生成部30は、自己診断用駆動信号を送信用の圧電振動子110aに出力し、圧電振動子110aが送信振動されて送信波(超音波)が出力される。
【0064】
このときの送信波の出力信号を圧電振動子110aが検出し(S120)、ECU20は、送信波の出力信号に基づいて残響時間を検出する(S130)。そして、ECU20は、検出された残響時間が、メモリに予め記憶された基準値(第2基準値)よりも長いか否かを判定する(S140)。
【0065】
検出された残響時間が基準値以下の場合、ECU20は送信側の超音波センサ100aに異常が無く、これによって受信側の超音波センサ100bに異常があるものと判定する(S150)。そして、報知部50に報知指示信号を出力し、報知部50は、警報音とモニターへの表示で乗員に報知して(S160)、自己診断処理は終了となる。
【0066】
検出された残響時間が基準値よりも長い場合、ECU20は送信側の超音波センサ100a(管部132a)に異常があるものと判定する(S170)。そして、報知部50に報知指示信号を出力し、報知部50は、警報音とモニターへの表示で乗員に報知して(S180)、自己診断処理は終了となる。例えば、S110,S160,S180における報知において、それぞれの報知音や表示を変えるようにしても良い。S160,S180の場合、異常である位置も判定されているので、その情報も盛り込むようにしても良い。
【0067】
このように本実施形態に示す超音波センサ装置10によれば、送信波の出力信号の減衰波形(残響時間)に基づいて、超音波センサ装置10(超音波センサ100)の異常の位置を判定することができる。
【0068】
なお、本実施形態においては、S40の比較判定終了後、検出されたピーク値が基準値と異なる場合に、再度自己診断用駆動信号生成指示を出して送信用の圧電振動子110aを送信振動させ、S120において送信波の出力信号を検出する例を示した。しかしながら、S10において回り込み波W1を検出する前に、回り込み波W1を生じさせるための送信波の出力信号を検出するようにしても良い。
【0069】
また、本実施形態に示す判定処理は、第1実施形態の図7に示す判定処理との組合せに限定されるものではない。例えば第1実施形態の図8に示す判定処理と組合せることもできる。また、第1実施形態に示した回り込み波W2による判定処理を経ることなく、送信波の出力信号の減衰波形に基づいて、超音波センサ装置10の異常有無の判定と異常位置の判定とを併せて実行することできる。この場合、例えば図11に示したS110〜S180の処理を実行すれば良い。なお、送信波の出力信号が検出されない場合にも、異常であると判定するようにすると良い。ただし、このような構成とすると、圧電振動子110が送信機能を有する側の異常有無と異常位置の判定のみは可能であるが、圧電振動子110が受信機能のみを有する側の異常有無と異常位置の判定ができない。したがって、全ての圧電振動子110が送信機能を有する場合に、送信波の出力信号の減衰波形に基づいて、超音波センサ装置10の異常有無の判定と異常位置の判定を実行するようにすると良い。
【0070】
また、本実施形態においても、最も簡素な例として、超音波センサ100が、圧電振動子110として、送信専用の1つの圧電振動子110aと、受信専用の1つの圧電振動子110bを有する例を示した。しかしながら、超音波センサ100の構成は上記例に限定されるものでは無い。例えば送信機能を有する複数の圧電振動子110(送信専用又は送受信兼用)を有する構成としても良い。この場合、例えば図12に示すように、S120において、ECU20は、送信機能を有する複数の圧電振動子110のうち、1つを選択して送信振動させ、送信波の出力信号を検出させる。そして、ECU20は、送信波の出力信号に基づいて残響時間を検出し(S130)、検出された残響時間が、メモリに予め記憶された基準値(第2基準値)よりも長いか否かを判定する(S140)。その結果、検出された残響時間が基準値以下である場合には、選択された圧電振動子110の配置された管部132に異常が無いと判定し、送信機能を有する別の圧電振動子110を送信振動させるように切り替える。このS120〜145は、S140において、残響時間が基準値よりも長いとの判定がなされるまで、順次圧電振動子110を切り替えて繰り返し実行される。このように、送信機能を有する圧電振動子110を複数有する構成においても、異常である位置を判定することができる。図12は、変形例を示すフロー図である。
【0071】
なお、S120において、送信機能を有する全ての圧電振動子110を送信振動させ、S130において、それぞれの送信波の残響時間を検出し、S140において、各残響時間を基準値とそれぞれ比較するようにしても良い。この場合、送信機能を有する圧電振動子110が配置された管部132全てに異常があっても、異常があると判定することができる。それ以外にも、例えば図13に示すように、S120において、送信機能を有する全ての圧電振動子110を送信振動させ、S130において、ECU20が、それぞれの送信波の残響時間を検出し、S141において、各残響時間を互いに比較するようにしても良い。この場合、他の少なくとも1つよりも残響時間が長いものがあれば、S171において、その残響時間の長い圧電振動子110が配置された管部132に異常があるものと判定し、例えばその位置情報を載せた報知をS180において実行する。なお、全ての残響時間が等しい場合には、全ての管部132に異常があるか、又は、管部132とは別の部位で異常(例えば送信機能を有する全ての圧電振動子110の故障)があるものとして、S180において報知すれば良い。この場合、送信機能を有する複数の圧電振動子110の出力信号の残響時間を互いに比較するので、測定条件の変化の影響(例えば温度による残響時間の変化)を相殺することができる。図13は、変形例を示すフロー図である。
【0072】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態になんら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々変形して実施することが可能である。
【0073】
本実施形態においては、移動体としての車両のバンパ2に、超音波センサ100が取り付けられる例を示した。しかしながら、移動体は車両に限定されるものではなく、被取り付け部もバンパ2に限定されるものではない。車両であっても、例えばボディに取り付けることができる。
【0074】
また、超音波センサ100の構成は、本実施形態に示した構成(圧電振動子110及び管部132の個数、配置、形状、送受信機能)に限定されるものではない。少なくとも2つの圧電振動子110(2つの管部132)を有し、そのうち、少なくとも1つが送信機能を有し、少なくとも1つが受信機能を有していれば良い。また、送信及び受信の少なくとも一方が可能なように、管部132(導波管)の一方の端部に圧電振動子110が1つずつ固定され、各管部132が、反射波及び回り込み波を検出可能に配置された構成であれば良い。また、管部132を、導波管としてそれぞれ独立した構成としても良い。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の第1実施形態に係る超音波センサ装置の全体構成を示す構成図である。
【図2】超音波センサ装置のうち、超音波センサの概略構成を示す断面図である。
【図3】図2を移動体の外面側から見た平面図である。
【図4】図2における筐体周囲の拡大断面図である。
【図5】反射波と回り込み波を説明するための図である。
【図6】異常有無に伴う受信信号の変化を示す図であり、(a)は異常なし及び障害物ありの状態、(b)は異常なし及び障害物なしの状態、(c)は異常あり及び障害物ありの状態を示す図である。
【図7】超音波センサ装置の異常有無を判定する処理の一例を示すフロー図である。
【図8】変形例を示すフロー図である。
【図9】残響を説明するための図である。
【図10】送信波の変化を示す図であり、(a)は受信側に異常がある場合、(b)は送信側に異常がある場合を示す図である。
【図11】第2実施形態において、超音波センサ装置の異常有無を判定する処理を示すフロー図である。
【図12】変形例を示すフロー図である。
【図13】変形例を示すフロー図である。
【符号の説明】
【0076】
1・・・障害物(反射物)
6・・・異物
10・・・超音波センサ装置
20・・・ECU
100・・・超音波センサ
100a・・・送信用の超音波センサ
100b・・・受信用の超音波センサ
110・・・圧電振動子
110a・・・送信用の圧電振動子
110b・・・受信用の圧電振動子
132・・・管部(導波管)
132a・・・送信用の管部
132b・・・受信用の管部
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波素子と導波管を備える超音波センサ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1,2に示されるように、複数の導波管を有し、それぞれの導波管の一端に超音波素子(送波器、受波器、超音波振動子)が配置され、導波管を介して超音波が伝達される構成の超音波センサ装置が知られている。
【特許文献1】特開昭63−243783号公報
【特許文献2】特開平10−224880号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上述したように、導波管の一端に超音波素子が配置される構成の超音波センサ装置においては、導波管の超音波素子配置側の他端が開口しているため、例えば車両などの移動体に取り付けた場合、石や水、砂、泥などの異物が導波管内に侵入する恐れがある。そして、異物の衝突によって超音波素子がダメージを受けたり、導波管内に存在する異物が超音波の伝播に影響を及ぼすことも考えられる。しかしながら、超音波センサ装置外部の障害物などの反射物による反射波は、反射物の有無、反射物との距離、反射物の種類(表面凹凸など)などによって変化する。例えば反射物が無い場合だけでなく、反射物が存在しても反射波を検出できないこともある。したがって、反射波による受信信号が通常とは異なる状態(例えばピーク値が小さい状態)や検出されない状態であっても、その原因が、反射物によるものなのか、超音波センサ装置自身の異常であるのかを判別することが困難である。
【0004】
本発明は上記問題点に鑑み、自身の異常有無を診断できる超音波センサ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成する為に請求項1に記載の超音波センサ装置は、複数の導波管と、導波管の一方の端部にそれぞれ配置された超音波素子としての、導波管を介して超音波を送信する少なくとも1つの送信用超音波素子、及び、超音波を受信して、超音波の強度に応じた受信信号を出力する少なくとも1つの受信用超音波素子と、送信用超音波素子が配置された導波管の素子配置側とは逆の端部から、近傍の受信用超音波素子が配置された導波管内へ直接的に回り込んで伝播される回り込み波の受信信号に基づいて、超音波素子及び導波管の少なくとも一方の異常有無を判定する判定手段と、を備えることを特徴とする。
【0006】
このように本発明によれば、送信用超音波素子から送信された送信波のうち、超音波センサ装置外部の反射物による反射波ではなく、送信用超音波素子が端部に配置された導波管から、その近傍に位置する受信用超音波素子が端部に配置された導波管に、直接的に回り込んで伝播される回り込み波を利用して、超音波センサ装置の異常を自己診断するようにしている。このような回り込み波による受信信号は、超音波センサ装置外部の反射物の影響(反射物の有無、反射物との距離、反射物の種類)を受けないので、回り込み波による受信信号に基づいて、超音波センサ装置の異常の有無を自己診断することができる。
【0007】
具体的には、請求項2に記載のように、回り込み波が伝播される導波管に異常がない状態の、回り込み波による受信信号のピーク値が第1基準値として記憶された記憶手段を備え、判定手段が、回り込み波が検出されない場合、又は、回り込み波が検出されてその受信信号のピーク値が記憶手段の第1基準値と異なる場合に、異常であると判定する構成としても良い。
【0008】
上述したように回り込み波は、反射物の影響を受けない。したがって、回り込み波が検出されない場合には、例えば超音波素子の故障や導波管の閉塞による異常と判定することができる。また、受信信号のピーク値が記憶手段の第1基準値と異なる場合には、例えば超音波素子の故障や導波管内に侵入した異物による異常と判定することができる。
【0009】
請求項1又は請求項2に記載の発明においては、請求項3に記載のように、判定手段が、送信用超音波素子の出力信号の減衰波形に基づいて、異常である位置を判定する構成としても良い。
【0010】
送信用超音波素子の配置された導波管に異物などの異常があり、送信用超音波素子から出力された送信波の少なくとも一部が導波管の異常部位で反射される場合、送信用超音波素子自身が反射波を受信することとなる。すなわち、その出力信号の減衰波形は、導波管に異常がない場合と異なるものとなる。したがって、送信用超音波素子の出力信号の減衰波形に基づいて、異常である位置を判定することができる。
【0011】
具体的には、請求項4に記載のように、記憶手段には、送信用超音波素子が配置された導波管に異常がない状態の、送信用超音波素子の出力信号の残響時間が第2基準値として記憶され、受信信号のピーク値が記憶手段の第1基準値と異なる場合、判定手段は、送信用超音波素子の出力信号の残響時間が記憶手段の第2基準値よりも長い場合に、この送信用超音波素子が配置された導波管が異常であると判定する構成としても良い。また請求項5に記載のように、送信用超音波素子を複数有し、受信信号のピーク値が記憶手段の第1基準値と異なる場合、判定手段は、複数の送信用超音波素子の出力信号の残響時間を互いに比較して、少なくとも1つの残響時間が他の残響時間よりも長い場合に、残響時間が長い導波管が異常であると判定する構成としても良い。
【0012】
請求項4に記載の発明の場合、全ての送信用超音波素子に対応する導波管に異常があっても、それぞれに異常があると判定することが可能である。また、請求項5に記載の発明の場合、複数の送信用超音波素子の出力信号の残響時間を互いに比較するので、測定条件の変化の影響(例えば温度による残響時間の変化)を相殺することができる。
【0013】
次に、請求項6に記載の超音波センサ装置は、導波管と、導波管の一方の端部に配置された超音波素子としての、導波管を介して超音波を送信する少なくとも1つの送信用超音波素子、及び、超音波を受信して、超音波の強度に応じた受信信号を出力する少なくとも1つの受信用超音波素子と、送信用超音波素子の出力信号の減衰波形に基づいて、導波管の異常常有を少なくとも判定する判定手段と、を備えることを特徴とする。
【0014】
送信用超音波素子の配置された導波管に異物などの異常があり、送信用超音波素子から出力された送信波の少なくとも一部が導波管の異常部位で反射される場合、送信用超音波素子自身が反射波を受信することとなる。すなわち、その出力信号の減衰波形は、導波管に異常がない場合と異なるものとなる。したがって、本発明によれば、送信用超音波素子の出力信号の減衰波形に基づいて、導波管の異常常有を少なくとも判定することができる。
【0015】
なお、請求項7及び請求項8に記載の発明の作用効果は、請求項4及び請求項5に記載の発明の作用効果とそれぞれ同じであるので、その記載を省略する。
【0016】
請求項1〜8いずれか1項に記載の発明においては、請求項9に記載のように、判定手段による判定結果に基づいて、少なくとも異常状態であることを乗員に報知する報知手段を備える構成とすると良い。
【0017】
請求項1〜9いずれか1項に記載の発明は、請求項10に記載のように、導波管の素子配置側とは逆の端部が、移動体の被取り付け部に形成された貫通孔を介して外部に露出され、超音波素子が移動体の内部に配置された構成に対して好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図に基づいて説明する。
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る超音波センサ装置の全体構成を示す構成図である。図2は、超音波センサ装置のうち、超音波センサの概略構成を示す断面図である。図3は、図2を移動体の外面側から見た平面図である。図4は、図2における筐体周囲の拡大断面図である。なお、図2及び図3においては、超音波センサを移動体の被取り付け部に取り付けた状態を図示している。
【0019】
本実施形態においては、超音波センサ装置が、移動体としての車両に用いられる例について説明する。具体的には、車両の周囲に存在する障害物を検出できるように、超音波センサが、例えば車両の前方、後方、或いは四隅側のバンパに取り付けられている。
【0020】
図1に示すように、超音波センサ装置10は、要部として、超音波センサ100、ECU(Electric Control Unit)20、駆動信号生成部30、受信信号処理部40、及び報知部50を有している。
【0021】
超音波センサ100は、図2に示すように、要部として、圧電振動子110、圧電振動子110などを収容する筐体120、車両の外部と圧電振動子110との間で超音波を誘導する導波管としての管部132を有する2つの超音波センサ100a,100bを含んでいる。なお、圧電振動子110を含む筐体120が、特許請求の範囲の超音波素子に相当する。このような超音波センサ100としては、例えば本出願人による特願2007−96704号に記載のされた種々の構成を採用することができる。特願2007−96704号には各構成及び効果が詳細に記載されているので、本実施形態における詳細な説明は割愛する。
【0022】
圧電振動子110は、チタン酸バリウムやPZT等の圧電セラミックスを焼結体とし、電圧を印加して振動を発生させるものであり、例えば円板状に形成されている。本実施形態においては、圧電振動子100として、路面に対して水平方向(図3に示すx方向)に並んで配置された2個の圧電振動子110a,100bを有している。なお、圧電振動子110aが超音波を車両の外部に送信する役割を果たし、圧電振動子100bが超音波を受信する役割を果たすようになっている。
【0023】
圧電振動子110の表面には電極(図示略)が形成され、当該電極にリード111が電気的に接続されている。本実施形態においては、図4に示すように、一方のリード111が電極と電気的に接続された筐体120の内面に接続されている。そして、リード111は、圧電振動子110を振動させて超音波を発生するための駆動信号を出力したり、圧電振動子110に超音波が伝達されて、圧電振動子110に歪みが生じた場合に、圧電効果によって生じる電圧信号を入力する処理回路が形成された回路基板(図示略)と電気的に接続されている。したがって、超音波センサ装置10は、超音波の送信から受信までの時間に基づいて、車両の周囲に存在する障害物までの距離を算出することができる。
【0024】
筐体120は、それぞれ1つの圧電振動子110(110a,110b)を収容すべく、例えばアルミニウムや合成樹脂(本実施形態においてはアルミニウム)を構成材料として、有底筒状に設けられている。そして、図4に示すように、底面部121の内面122に圧電振動子110が設置(例えば固着)されている。すなわち、圧電振動子110の配置された底面部121が振動板としての役割を果たし、底面部121の外面123(内面122の裏面)が振動面となっている。
【0025】
また、圧電振動子110の周囲には、図4に示すように、内面122に面する面を除いて吸音材112が配置されている。この吸音材112は、圧電振動子110が伸縮し、筐体120の底面部121が振動することによって筐体120内に放射される超音波を吸収するためのものであり、例えばシリコンスポンジ等の吸音性能に優れた材質よって構成されている。そして、吸音材112上に封止材113が配置され、この封止材113によって筐体120内が気密に封止されている。
【0026】
導波管ユニット130は、図2に示すように、車両外部と車両内部(バンパ2の内面3側)に配置された圧電振動子110(振動面としての外面123)との間で超音波を誘導する(本実施形態においては、圧電振動子110aが配置された筐体120の外面123から車両外部へ超音波を導くとともに、車両外部からの超音波を圧電振動子100bが配置された筐体120の外面123まで導く)ように構成されている。本実施形態に係る導波管ユニット130は、例えば樹脂材料からなる基材131に対して、導波管としての2つの管部132が形成されている。なお、2つの管部132のうち、管部132aの開口端135aには、圧電振動子110aを含む筐体120が固定されており、管部132bの開口端135bには、圧電振動子110bを含む筐体120が固定されている。このように、超音波センサ100aは、圧電振動子110aを含む筐体120と管部132aを有し、超音波センサ100bは、圧電振動子110bを含む筐体120と管部132bを有する構成となっている。
【0027】
管部132a,132bの、バンパ2側の開口端133a,133bは、図2に示すように、基材131の同一面に互いに近接して開口しており、バンパ2に取り付けられた状態で、バンパ2の貫通孔5を介して車両外部に露出されている。また、他方の開口端135a,135bは、基材131の開口端形成面の対向面側に形成された固定用溝134にそれぞれ連結されている。この固定用溝134は、圧電振動子110を含む筐体120が固定される溝である。
【0028】
また、管部132a,132bは、図2に示すように、それぞれの開口端133a,133bの開口面積が、対応する振動面としての外面123の面積よりも小さくなるように設定されている。本実施形態においては、上述の条件を満たしつつ、開口端133a,133bが、ともに形状及び大きさの等しい円形状とされており、対応する複数の外面123も、形状及び大きさが等しく設定されている。また、それぞれの管部132a,132bは、バンパ2側の開口端133a,133bと振動面側の開口端135a,135bとの間で、断面形状(本実施形態においては円断面)及び断面積がそれぞれ一定となっている。
【0029】
また、図2に示すように、隣接する開口端133a,133b間の開口間隔が、隣接する外面123間の対応する間隔よりも狭く、且つ、超音波の波長に対して半波長以下(本実施形態においては半波長)とされている。さらには、複数の管部132a,132bの長さが等しく設定されている。
【0030】
このように構成される導波管ユニット130は、圧電振動子110を含む筐体120が固定用溝134に固定された状態で、バンパ2に固定されている。本実施形態においては、開口部133a,133bを含む基材131の一部がバンパ2の貫通孔5に挿入され、バンパ2の内面3と対向する基材131の部位が内面2に対して接着固定されている。そして、この固定状態で、開口端133a,133bがバンパ2の外面4と面一とされている。なお、圧電振動子110を含む筐体120は、振動面としての外面123が開口端133a,133b側となるように、対応する固定用溝134に、振動吸収部材124を介してそれぞれ固定されている。また、固定用溝134に筐体120が固定された状態で、管部132a,132bの開口端135a,135bは、外面123との間に若干の隙間をもって開口端133a,133b側に配置された状態となっている。すなわち、振動板としての底面部121は、導波管ユニット130を構成する基材131とは直接接触しておらず、基材131が底面部121の振動を抑制しないようになっている。
【0031】
ECU20は、通常のコンピュータであり、図示されないCPU、ROM、RAM、I/O、及びこれらを接続するバスによって構成される。ECU20は、駆動信号生成部30に対して、所定のタイミングで圧電振動子110aの駆動指示信号及び自己診断用駆動指示信号を出力する。また、ECU20は、圧電振動子100bの受信信号に基づいて、後述する回り込み波及び反射波を検出するとともに、回り込み波のピーク値を検出する。そして、回り込み波が検出されない場合、又は、回り込み波のピーク値が予め設定されている第1基準値と異なるときに、超音波センサ100に異常が生じていると判定する。そして、その判定結果を報知部50が報知するように報知部50の出力を制御する。このように、本実施形態に係るECU20は、記憶、判定、演算、制御の各機能を有している。
【0032】
駆動信号生成部30は、発振回路31と駆動回路32を含んでいる。発振回路31は、ECU20からの駆動指示信号又は自己診断用駆動指示信号を受けて、予め設定された所定周波数のパルス信号を駆動回路32に出力する。そして、駆動回路32は、圧電振動子110aに入力される電源電圧の供給を受けて駆動し、発振回路31からのパルス信号(駆動信号)により圧電振動子110aを駆動させる。これにより、圧電振動子110aが送信振動し、図2に示した筐体120の底面部121を介して車両外部に送信波(超音波)が送信される。
【0033】
検出信号処理部40は、増幅回路41と、振動を電気信号に変換する圧電振動子110bから出力された信号のうち、所定の周波数域のみを選択的に出力するフィルタ回路42とを含んでいる。したがって、増幅され、フィルタリングされた信号が、ECU20に入力される。
【0034】
報知部50は、上述したように、ECU20の判定結果、演算結果に応じた報知を乗員にするものである。本実施形態においては、警報音出力装置と表示装置を採用している。
【0035】
次に、回り込み波に基づいて、超音波センサ装置10の異常有無を判定する原理を、図5及び図6を用いて説明する。図5は、反射波と回り込み波を説明するための図である。図6は、異常有無に伴う受信信号の変化を示す図であり、(a)は異常なし及び障害物ありの状態、(b)は異常なし及び障害物なしの状態、(c)は異常あり及び障害物ありの状態を示す図である。
【0036】
従来から、音波が、遮蔽物などがある場合に裏側に回り込む性質を有し、この性質が、周波数が高い(波長が短い)ほど弱くなり、周波数が低い(波長が長い)ほど強くなることが知られている。本実施形態に示すように、車両用障害物検出装置に適用される超音波センサ装置10の周波数は、一般的に40〜70kHz程度と低周波であり、本実施形態においてもこの範囲内の周波数(例えば40kHz)となっている。したがって、本実施形態に示す構成において、車両外部に障害物1が存在する場合には、圧電振動子100aを送信振動によって発せられた超音波に基づいて、図5に示すように、障害物1による反射波W1と回り込み波W2が受信用の管部132b内に伝播されることとなる。
【0037】
この回り込み波W2は、上述した超音波の回り込みの性質により、送信用の圧電振動子100aが配置された管部132aの開口端133aから、近傍の開口端133bを介して、受信用の圧電振動子100bが配置された管部132bに直接的に回り込んで伝播されるものである。このように、回り込み波W2は、反射波W1よりも超音波の伝播経路が短く、伝播経路に障害物1が含まれないので、障害物1の有無、障害物1との距離、障害物1の種類(表面凹凸や音響インピーダンスなど)といった障害物1の影響を受けない。したがって、回り込み波W2は、反射波W1とは異なり、超音波センサ装置10(超音波センサ100)の変化が色濃く反映される。本実施形態においては、この回り込み波W2による受信信号に基づいて、超音波センサ装置10の異常有無を自己診断するようにしている。
【0038】
例えば超音波センサ装置10(圧電振動子110及び管部132)に異常がなく、且つ、障害物1が存在する場合、圧電振動子110bによって検出される受信信号は、図6(a)に示すようなる。図6(a)に示すように、伝播経路の短い回り込み波W1が先に検出され、次いで反射波W1が検出される。
【0039】
これに対し、図6(a)に示す状態から障害物1を除去した場合(超音波センサ装置10に異常がなく、且つ、障害物1が存在しない場合)、圧電振動子110bによって検出される受信信号は、図6(b)に示すように、回り込み波W2によるもののみとなる。このとき、回り込み波W2による受信信号は、障害物1の影響がないので、図6(a)とほとんど変化がない。
【0040】
また、図6(a)に示す状態から異物を管部132(例えば図5に示すように異物6を受信用の管部132b)内に配置した場合(超音波センサ装置10に異常があり、且つ、障害物1が存在する場合)、回り込み波W2及び反射波W1が、ともに圧電振動子110(110a,110b)及び管部132(132a,132b)の少なくとも1つの異常の影響を受ける。したがって、その受信信号は、図6(c)に示すように図6(a)の状態から変化する。詳しくは、管部132b内に、石など異物6が侵入して管部132が異常となっている場合、管部132b内の媒体(本実施形態においては空気)と異物6との音響インピーダンスの差によって超音波の反射が生じる。したがって、図6(c)に示すように、回り込み波W2及び反射波W1による受信信号は、図6(a)の状態に比べて振幅(ピーク値)が小さくなる。
【0041】
このように、回り込み波W2は、反射波W1とは異なり、障害物1による影響を受けないので、回り込み波W2による受信信号に基づいて、超音波センサ装置10の異常の有無を自己診断することができる。なお、反射波W1は、障害物1による反射波であるので、障害物1によって変化する。例えば障害物1が無い場合だけでなく、障害物1が存在しても反射波を検出できないこともあるし、障害物1との距離や障害物1の種類によって受信信号の強度も変化する。したがって、反射波W2による受信信号に基づいて自己診断するのは困難である。
【0042】
回り込み波W2による受信信号に基づいて、超音波センサ装置10の異常の有無を判定する(自己診断する)判定方法は種々考えられるが、その一例を、図7を用いて説明する。図7は、超音波センサ装置の異常有無を判定する処理の一例を示すフロー図である。例えば本処理は、IGキーがオンされた時点で実行される。
【0043】
先ず、IGキーがオンされると、ECU20は、駆動信号生成部30の発振回路31に自己診断用駆動信号生成指示を出し、これを受けた駆動信号生成部30が、自己診断用駆動信号を送信用の圧電振動子110aに出力する。そして、圧電振動子110aが送信振動し、筐体120の底面部121を介して送信波(超音波)が出力される。この送信波は、管部132a内を誘導されて、開口端133aから外部に出力される。
【0044】
開口端133aから外部に出力された送信波のうち、回り込み波W2が、開口端133aの近傍に位置する開口端133bから受信用の管部132b内に伝播される。そして、管部132b内を誘導されて、開口端135bから筐体120の底面部121に伝達されると、底面部121の振動を受信用の圧電振動子110bが電気的な受信信号に変換する。
【0045】
特に異常がなければ、ECU20が駆動信号生成部30に駆動信号生成指示を出してからほぼ一定の時間で回り込み波W2が圧電振動子110bに到達するはずである。したがって、ECU20が駆動信号生成部30に駆動信号生成指示を出してから所定時間の間、圧電振動子110bが回り込み波W2の検出を行い(S10)、その結果に基づいて、ECU20が回り込み波W2の有無を判定する(S20)。なお、上述の所定時間とは、駆動信号生成指示を出してから回り込み波W2の検出が終了するまでを含み、且つ、反射波W1の検出が始まるまでの間で設定される。
【0046】
回り込み波W2が検出されない場合、圧電振動子110a,110bの少なくとも一方の故障か、管部132a,132bの少なくとも一方の閉塞が生じているものと推測される。したがって、ECU20は、超音波センサ装置10が異常状態にあると判定し、報知部50に報知指示信号を出力する。そして、報知部50は、警報音とモニターへの表示で乗員に報知し(S50)、自己診断処理は終了となる。
【0047】
回り込み波W2が検出された場合、ECU20は、回り込み波W2の受信信号に基づいて回り込み波W2のピーク値(振幅)を検出する(S30)。そして、検出されたピーク値が、メモリに予め記憶された基準値(特許請求の範囲に記載の第1基準値)と一致するか否かを判定する(S40)。
【0048】
検出されたピーク値が基準値とほぼ一致する場合、ECU20は圧電振動子110(110a,110b)及び管部132(132a,132b)に異常が無いものと判定し、自己診断処理は終了となる。
【0049】
検出されたピーク値が基準値と異なる場合、圧電振動子110a,110bの少なくとも一方の故障か、管部132a,132bの少なくとも一方に異物侵入が生じているものと推測される。したがって、ECU20は、超音波センサ装置10が異常状態にあると判定し、報知部50に報知指示信号を出力する。そして、報知部50は、警報音とモニターへの表示で乗員に報知し(S50)、自己診断処理は終了となる。
【0050】
なお、本実施形態においては、誤検出を防止するため、異常判定後においては、リセット処理されない限り、ECU20から駆動信号生成部30に駆動信号生成指示を出力しないように構成されている。換言すれば、点検、修理、乃至取替えされない限り、超音波センサ装置10が障害物検出装置として機能しないように構成されている。なお、報知は、判定処理終了とともにオフとなるようにしても良いし、警報音のみをオフとし、表示はリセット処理されるまで残るようにしても良い。
【0051】
このように本実施形態に示す超音波センサ装置10によれば、送信用の管部132aから、その近傍に位置する受信用の管部132bに、直接的に回り込んで伝播される回り込み波W2の受信信号を用いるので、障害物1による影響を受けることなく、超音波センサ装置10(超音波センサ100)の異常の有無を自己診断することができる。特に、送信用及び受信用に関わらず、異常の有無を判定することができる。
【0052】
なお、本実施形態においては、異常を知らせる報知が警報音とモニターへの表示である例を示した。しかしながら、報知部50は上記例に限定されるものではない。それ以外にも車両のインパネに取り付けられた表示装置などを採用することができる。
【0053】
また、本実施形態においては、IGキーのオンにより、判定処理が実行される例を示した。しかしながら、シフト位置に応じて、判定処理が実行される構成としても良い。例えば、超音波センサ100がリア側のバンパ2に配置されている場合、シフト位置がR(リバース)とされた時点で、図8に示す判定処理が実行されても良い。この場合、障害物検出処理の前段階として判定処理が実行される。図8に示すように、異常有無の判定処理が上述した処理(S10〜S50)と同様に実行される。S40において、ECU20がピーク値と基準値が一致すると判定した場合、検出用の圧電振動子110bによって反射波検出(S60)が検出される。そして、反射波の受信信号に基づいて、ECU20が所定の演算処理(S70)を実行し、演算結果に基づいて障害物有無を判定する(S80)。ECU20は、障害物があると判定した場合にのみ、報知部50に報知指示信号を出力し、報知部50は、例えば警報音で乗員に報知する(S90)。このS60〜S90の処理は、シフト位置の変更(DおやP)があるまで繰り返し実行され、シフト位置の変更(S100)によって、判定処理は終了となる。図8は、変形例を示すフロー図である。なお、図8においては、S60において反射波の検出がなされる例を示したが、反射波の検出は、S10よりも後であってS70までに実行されれば良い。
【0054】
なお、本実施形態においては、最も簡素な例として、超音波センサ100が、圧電振動子110として、送信専用の1つの圧電振動子110aと、受信専用の1つの圧電振動子110bを有する例を示した。しかしながら、超音波センサ100の構成は上記例に限定されるものでは無い。少なくとも2つの圧電振動子110(2つの管部132)を有し、そのうち、少なくとも1つが送信機能を有し、少なくとも1つが受信機能を有する構成であれば良い。例えば送受信機能を有する複数の圧電振動子110を有する構成としても良い。
【0055】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態を、図9〜図11に基づいて説明する。図9は、残響を説明するための図である。図10は、送信波の変化を示す図であり、(a)は受信側に異常がある場合、(b)は送信側に異常がある場合を示す図である。図11は、第2実施形態において、超音波センサ装置の異常有無を判定する処理を示すフロー図である。
【0056】
第2実施形態に係る超音波センサ装置は、第1実施形態に示した超音波センサ装置と共通するところが多いので、以下、共通部分については詳しい説明は省略し、異なる部分を重点的に説明する。なお、第1実施形態に示した要素と同一の要素には、同一の符号を付与するものとする。
【0057】
第1実施形態においては、超音波センサ装置10(超音波センサ100)の異常有無を判定できるものの、送信側と受信側にどちらに異常があるのかまでは判定できなかった。これに対し、本実施形態においては、送信用の圧電振動子110aの出力信号(送信波)の減衰波形(換言すれば、送信波の残響)に基づいて、ECU20が異常である位置(送信側と受信側にどちらに異常があるのか)を判定する点を特徴とする。
【0058】
先ず、送信用の圧電振動子110aの出力信号(送信波)の減衰波形(残響)について説明する。図9に示すように、駆動信号生成部30から例えば自己診断用駆動信号が送信用の圧電振動子110aに入力されると、圧電振動子110aは送信振動し、筐体120の底面部121を介して車両外部に送信波が出力される。自己診断用駆動信号を停止(すなわち圧電振動子110aの送信振動を停止)しても、しばらくの間は振動板である底面部121が振動する。これを残響といい、送信波の出力は、図2に示すように自己診断用駆動信号に対して残響時間分長くなる。なお、以下においては、図9に示す送信波の出力信号を、送信側の超音波センサ100aに異常がない状態のものとする。
【0059】
次に、残響を利用した異常位置を判定する原理を、図10を用いて説明する。例えば受信側の超音波センサ100b(圧電振動子110b及び管部132b)に異常がある場合、送信波の出力信号には異常による影響が無いので、送信波の出力信号は図10(a)に示すようになる。すなわち、送信波の出力信号の減衰波形は、図9に示す基準状態とほぼ同じとなり、例えばその残響時間も基準状態の残響時間(特許請求の範囲に記載の第2基準値に相当)とほぼ等しい値となる。
【0060】
これに対し、受信側の超音波センサ100bにおいて、管部132aに異常(例えば異物6の侵入や管部132aの破損)がある場合、異常部位で反射された超音波を圧電振動子110aが受信することとなる。したがって、送信波の出力信号の減衰波形は、図9に示す基準状態と異なるものとなり、例えばその残響時間は基準状態の残響時間(特許請求の範囲に記載の第2基準値に相当)よりも長くなる。このように、送信波の出力信号の減衰波形に基づいて、異常である位置を判定することができる。
【0061】
なお、送信波の出力信号の減衰波形に基づいて、超音波センサ装置10の異常である位置を判定する方法は種々考えられるが、その一例を、図11を用いて説明する。例えば本処理は、第1実施形態に示した異常有無の判定処理(図7参照)に続いて実行される。S10〜S40までは、第1実施形態に示した図7の判定処理と同様である。なお、S20において、回り込み波W2が検出されない場合、圧電振動子110a,110bの少なくとも一方の故障か、管部132a,132bの少なくとも一方の閉塞が生じているものと推測される。したがって、ECU20は、超音波センサ装置10が異常状態にあると判定し、報知部50に報知指示信号を出力する。そして、報知部50は、警報音とモニターへの表示で乗員に報知し(S110)、自己診断処理は終了となる。
【0062】
S40において、検出されたピーク値が基準値とほぼ一致する場合、ECU20は圧電振動子110(110a,110b)及び管部132(132a,132b)に異常が無いものと判定し、自己診断処理は終了となる。
【0063】
S40において、検出されたピーク値が基準値と異なる場合、ECU20は、超音波センサ装置10が異常状態にあると判定し、駆動信号生成部30の発振回路31に再度自己診断用駆動信号生成指示を出す。これを受けた駆動信号生成部30は、自己診断用駆動信号を送信用の圧電振動子110aに出力し、圧電振動子110aが送信振動されて送信波(超音波)が出力される。
【0064】
このときの送信波の出力信号を圧電振動子110aが検出し(S120)、ECU20は、送信波の出力信号に基づいて残響時間を検出する(S130)。そして、ECU20は、検出された残響時間が、メモリに予め記憶された基準値(第2基準値)よりも長いか否かを判定する(S140)。
【0065】
検出された残響時間が基準値以下の場合、ECU20は送信側の超音波センサ100aに異常が無く、これによって受信側の超音波センサ100bに異常があるものと判定する(S150)。そして、報知部50に報知指示信号を出力し、報知部50は、警報音とモニターへの表示で乗員に報知して(S160)、自己診断処理は終了となる。
【0066】
検出された残響時間が基準値よりも長い場合、ECU20は送信側の超音波センサ100a(管部132a)に異常があるものと判定する(S170)。そして、報知部50に報知指示信号を出力し、報知部50は、警報音とモニターへの表示で乗員に報知して(S180)、自己診断処理は終了となる。例えば、S110,S160,S180における報知において、それぞれの報知音や表示を変えるようにしても良い。S160,S180の場合、異常である位置も判定されているので、その情報も盛り込むようにしても良い。
【0067】
このように本実施形態に示す超音波センサ装置10によれば、送信波の出力信号の減衰波形(残響時間)に基づいて、超音波センサ装置10(超音波センサ100)の異常の位置を判定することができる。
【0068】
なお、本実施形態においては、S40の比較判定終了後、検出されたピーク値が基準値と異なる場合に、再度自己診断用駆動信号生成指示を出して送信用の圧電振動子110aを送信振動させ、S120において送信波の出力信号を検出する例を示した。しかしながら、S10において回り込み波W1を検出する前に、回り込み波W1を生じさせるための送信波の出力信号を検出するようにしても良い。
【0069】
また、本実施形態に示す判定処理は、第1実施形態の図7に示す判定処理との組合せに限定されるものではない。例えば第1実施形態の図8に示す判定処理と組合せることもできる。また、第1実施形態に示した回り込み波W2による判定処理を経ることなく、送信波の出力信号の減衰波形に基づいて、超音波センサ装置10の異常有無の判定と異常位置の判定とを併せて実行することできる。この場合、例えば図11に示したS110〜S180の処理を実行すれば良い。なお、送信波の出力信号が検出されない場合にも、異常であると判定するようにすると良い。ただし、このような構成とすると、圧電振動子110が送信機能を有する側の異常有無と異常位置の判定のみは可能であるが、圧電振動子110が受信機能のみを有する側の異常有無と異常位置の判定ができない。したがって、全ての圧電振動子110が送信機能を有する場合に、送信波の出力信号の減衰波形に基づいて、超音波センサ装置10の異常有無の判定と異常位置の判定を実行するようにすると良い。
【0070】
また、本実施形態においても、最も簡素な例として、超音波センサ100が、圧電振動子110として、送信専用の1つの圧電振動子110aと、受信専用の1つの圧電振動子110bを有する例を示した。しかしながら、超音波センサ100の構成は上記例に限定されるものでは無い。例えば送信機能を有する複数の圧電振動子110(送信専用又は送受信兼用)を有する構成としても良い。この場合、例えば図12に示すように、S120において、ECU20は、送信機能を有する複数の圧電振動子110のうち、1つを選択して送信振動させ、送信波の出力信号を検出させる。そして、ECU20は、送信波の出力信号に基づいて残響時間を検出し(S130)、検出された残響時間が、メモリに予め記憶された基準値(第2基準値)よりも長いか否かを判定する(S140)。その結果、検出された残響時間が基準値以下である場合には、選択された圧電振動子110の配置された管部132に異常が無いと判定し、送信機能を有する別の圧電振動子110を送信振動させるように切り替える。このS120〜145は、S140において、残響時間が基準値よりも長いとの判定がなされるまで、順次圧電振動子110を切り替えて繰り返し実行される。このように、送信機能を有する圧電振動子110を複数有する構成においても、異常である位置を判定することができる。図12は、変形例を示すフロー図である。
【0071】
なお、S120において、送信機能を有する全ての圧電振動子110を送信振動させ、S130において、それぞれの送信波の残響時間を検出し、S140において、各残響時間を基準値とそれぞれ比較するようにしても良い。この場合、送信機能を有する圧電振動子110が配置された管部132全てに異常があっても、異常があると判定することができる。それ以外にも、例えば図13に示すように、S120において、送信機能を有する全ての圧電振動子110を送信振動させ、S130において、ECU20が、それぞれの送信波の残響時間を検出し、S141において、各残響時間を互いに比較するようにしても良い。この場合、他の少なくとも1つよりも残響時間が長いものがあれば、S171において、その残響時間の長い圧電振動子110が配置された管部132に異常があるものと判定し、例えばその位置情報を載せた報知をS180において実行する。なお、全ての残響時間が等しい場合には、全ての管部132に異常があるか、又は、管部132とは別の部位で異常(例えば送信機能を有する全ての圧電振動子110の故障)があるものとして、S180において報知すれば良い。この場合、送信機能を有する複数の圧電振動子110の出力信号の残響時間を互いに比較するので、測定条件の変化の影響(例えば温度による残響時間の変化)を相殺することができる。図13は、変形例を示すフロー図である。
【0072】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態になんら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々変形して実施することが可能である。
【0073】
本実施形態においては、移動体としての車両のバンパ2に、超音波センサ100が取り付けられる例を示した。しかしながら、移動体は車両に限定されるものではなく、被取り付け部もバンパ2に限定されるものではない。車両であっても、例えばボディに取り付けることができる。
【0074】
また、超音波センサ100の構成は、本実施形態に示した構成(圧電振動子110及び管部132の個数、配置、形状、送受信機能)に限定されるものではない。少なくとも2つの圧電振動子110(2つの管部132)を有し、そのうち、少なくとも1つが送信機能を有し、少なくとも1つが受信機能を有していれば良い。また、送信及び受信の少なくとも一方が可能なように、管部132(導波管)の一方の端部に圧電振動子110が1つずつ固定され、各管部132が、反射波及び回り込み波を検出可能に配置された構成であれば良い。また、管部132を、導波管としてそれぞれ独立した構成としても良い。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の第1実施形態に係る超音波センサ装置の全体構成を示す構成図である。
【図2】超音波センサ装置のうち、超音波センサの概略構成を示す断面図である。
【図3】図2を移動体の外面側から見た平面図である。
【図4】図2における筐体周囲の拡大断面図である。
【図5】反射波と回り込み波を説明するための図である。
【図6】異常有無に伴う受信信号の変化を示す図であり、(a)は異常なし及び障害物ありの状態、(b)は異常なし及び障害物なしの状態、(c)は異常あり及び障害物ありの状態を示す図である。
【図7】超音波センサ装置の異常有無を判定する処理の一例を示すフロー図である。
【図8】変形例を示すフロー図である。
【図9】残響を説明するための図である。
【図10】送信波の変化を示す図であり、(a)は受信側に異常がある場合、(b)は送信側に異常がある場合を示す図である。
【図11】第2実施形態において、超音波センサ装置の異常有無を判定する処理を示すフロー図である。
【図12】変形例を示すフロー図である。
【図13】変形例を示すフロー図である。
【符号の説明】
【0076】
1・・・障害物(反射物)
6・・・異物
10・・・超音波センサ装置
20・・・ECU
100・・・超音波センサ
100a・・・送信用の超音波センサ
100b・・・受信用の超音波センサ
110・・・圧電振動子
110a・・・送信用の圧電振動子
110b・・・受信用の圧電振動子
132・・・管部(導波管)
132a・・・送信用の管部
132b・・・受信用の管部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の導波管と、
前記導波管の一方の端部にそれぞれ配置された超音波素子としての、前記導波管を介して超音波を送信する少なくとも1つの送信用超音波素子、及び、超音波を受信して、前記超音波の強度に応じた受信信号を出力する少なくとも1つの受信用超音波素子と、
前記送信用超音波素子が配置された導波管の素子配置側とは逆の端部から、近傍の前記受信用超音波素子が配置された導波管内へ直接的に回り込んで伝播される回り込み波の前記受信信号に基づいて、前記超音波素子及び前記導波管の少なくとも一方の異常有無を判定する判定手段と、を備えることを特徴とする超音波センサ装置。
【請求項2】
前記回り込み波が伝播される導波管に異常がない状態の、前記回り込み波による受信信号のピーク値が第1基準値として記憶された記憶手段を備え、
前記判定手段は、前記回り込み波が検出されない場合、又は、前記回り込み波が検出されてその受信信号のピーク値が前記記憶手段の第1基準値と異なる場合に、異常であると判定することを特徴すると請求項1に記載の超音波センサ装置。
【請求項3】
前記判定手段は、前記送信用超音波素子の出力信号の減衰波形に基づいて、異常である位置を判定することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の超音波センサ装置。
【請求項4】
前記記憶手段には、前記送信用超音波素子が配置された導波管に異常がない状態の、前記送信用超音波素子の出力信号の残響時間が第2基準値として記憶され、
前記受信信号のピーク値が前記記憶手段の第1基準値と異なる場合、前記判定手段は、前記送信用超音波素子の出力信号の残響時間が前記記憶手段の第2基準値よりも長い場合に、この送信用超音波素子が配置された前記導波管が異常であると判定することを特徴すると請求項3に記載の超音波センサ装置。
【請求項5】
前記送信用超音波素子を複数有し、
前記受信信号のピーク値が前記記憶手段の第1基準値と異なる場合、前記判定手段は、複数の前記送信用超音波素子の出力信号の残響時間を互いに比較して、少なくとも1つの残響時間が他の残響時間よりも長い場合に、残響時間が長い前記導波管が異常であると判定することを特徴すると請求項3に記載の超音波センサ装置。
【請求項6】
導波管と、
前記導波管の一方の端部に配置された超音波素子としての、前記導波管を介して超音波を送信する少なくとも1つの送信用超音波素子、及び、超音波を受信して、前記超音波の強度に応じた受信信号を出力する少なくとも1つの受信用超音波素子と、
前記送信用超音波素子の出力信号の減衰波形に基づいて、前記導波管の異常常有を少なくとも判定する判定手段と、を備えることを特徴とする超音波センサ装置。
【請求項7】
前記導波管を複数有し、前記導波管の一方の端部に前記超音波素子がそれぞれ配置され、
前記記憶手段には、前記送信用超音波素子が配置された導波管に異常がない状態の、前記送信用超音波素子の出力信号の残響時間が第2基準値として記憶され、
前記判定手段は、前記送信用超音波素子の出力信号の残響時間が前記記憶手段の第2基準値よりも長い場合に、この送信用超音波素子が配置された前記導波管が異常であると判定すると請求項6に記載の超音波センサ装置。
【請求項8】
前記導波管を複数有し、前記導波管の一方の端部に前記超音波素子がそれぞれ配置され、
前記送信用超音波素子を複数有し、
前記判定手段は、複数の前記送信用超音波素子の出力信号の残響時間を互いに比較して、少なくとも1つの残響時間が他の残響時間よりも長い場合に、残響時間が長い前記導波管が異常であると判定することを特徴すると請求項6に記載の超音波センサ装置。
【請求項9】
前記判定手段による判定結果に基づいて、少なくとも異常状態であることを乗員に報知する報知手段を備えることを特徴とする請求項1〜8いずれか1項に記載の超音波センサ装置。
【請求項10】
前記導波管は、素子配置側とは逆の端部が、移動体の被取り付け部に形成された貫通孔を介して外部に露出され、
前記超音波素子は、前記移動体の内部に配置されていることを特徴とする請求項1〜9いずれか1項に記載の超音波センサ装置。
【請求項1】
複数の導波管と、
前記導波管の一方の端部にそれぞれ配置された超音波素子としての、前記導波管を介して超音波を送信する少なくとも1つの送信用超音波素子、及び、超音波を受信して、前記超音波の強度に応じた受信信号を出力する少なくとも1つの受信用超音波素子と、
前記送信用超音波素子が配置された導波管の素子配置側とは逆の端部から、近傍の前記受信用超音波素子が配置された導波管内へ直接的に回り込んで伝播される回り込み波の前記受信信号に基づいて、前記超音波素子及び前記導波管の少なくとも一方の異常有無を判定する判定手段と、を備えることを特徴とする超音波センサ装置。
【請求項2】
前記回り込み波が伝播される導波管に異常がない状態の、前記回り込み波による受信信号のピーク値が第1基準値として記憶された記憶手段を備え、
前記判定手段は、前記回り込み波が検出されない場合、又は、前記回り込み波が検出されてその受信信号のピーク値が前記記憶手段の第1基準値と異なる場合に、異常であると判定することを特徴すると請求項1に記載の超音波センサ装置。
【請求項3】
前記判定手段は、前記送信用超音波素子の出力信号の減衰波形に基づいて、異常である位置を判定することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の超音波センサ装置。
【請求項4】
前記記憶手段には、前記送信用超音波素子が配置された導波管に異常がない状態の、前記送信用超音波素子の出力信号の残響時間が第2基準値として記憶され、
前記受信信号のピーク値が前記記憶手段の第1基準値と異なる場合、前記判定手段は、前記送信用超音波素子の出力信号の残響時間が前記記憶手段の第2基準値よりも長い場合に、この送信用超音波素子が配置された前記導波管が異常であると判定することを特徴すると請求項3に記載の超音波センサ装置。
【請求項5】
前記送信用超音波素子を複数有し、
前記受信信号のピーク値が前記記憶手段の第1基準値と異なる場合、前記判定手段は、複数の前記送信用超音波素子の出力信号の残響時間を互いに比較して、少なくとも1つの残響時間が他の残響時間よりも長い場合に、残響時間が長い前記導波管が異常であると判定することを特徴すると請求項3に記載の超音波センサ装置。
【請求項6】
導波管と、
前記導波管の一方の端部に配置された超音波素子としての、前記導波管を介して超音波を送信する少なくとも1つの送信用超音波素子、及び、超音波を受信して、前記超音波の強度に応じた受信信号を出力する少なくとも1つの受信用超音波素子と、
前記送信用超音波素子の出力信号の減衰波形に基づいて、前記導波管の異常常有を少なくとも判定する判定手段と、を備えることを特徴とする超音波センサ装置。
【請求項7】
前記導波管を複数有し、前記導波管の一方の端部に前記超音波素子がそれぞれ配置され、
前記記憶手段には、前記送信用超音波素子が配置された導波管に異常がない状態の、前記送信用超音波素子の出力信号の残響時間が第2基準値として記憶され、
前記判定手段は、前記送信用超音波素子の出力信号の残響時間が前記記憶手段の第2基準値よりも長い場合に、この送信用超音波素子が配置された前記導波管が異常であると判定すると請求項6に記載の超音波センサ装置。
【請求項8】
前記導波管を複数有し、前記導波管の一方の端部に前記超音波素子がそれぞれ配置され、
前記送信用超音波素子を複数有し、
前記判定手段は、複数の前記送信用超音波素子の出力信号の残響時間を互いに比較して、少なくとも1つの残響時間が他の残響時間よりも長い場合に、残響時間が長い前記導波管が異常であると判定することを特徴すると請求項6に記載の超音波センサ装置。
【請求項9】
前記判定手段による判定結果に基づいて、少なくとも異常状態であることを乗員に報知する報知手段を備えることを特徴とする請求項1〜8いずれか1項に記載の超音波センサ装置。
【請求項10】
前記導波管は、素子配置側とは逆の端部が、移動体の被取り付け部に形成された貫通孔を介して外部に露出され、
前記超音波素子は、前記移動体の内部に配置されていることを特徴とする請求項1〜9いずれか1項に記載の超音波センサ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2008−256521(P2008−256521A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−98751(P2007−98751)
【出願日】平成19年4月4日(2007.4.4)
【出願人】(000004695)株式会社日本自動車部品総合研究所 (1,981)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年4月4日(2007.4.4)
【出願人】(000004695)株式会社日本自動車部品総合研究所 (1,981)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]