説明

超音波センサ

【課題】外力が加わっても破損し難く丈夫な超音波センサを提供する。
【解決手段】各圧電式受信素子11が形成された基板12の前方側には保護膜14が設けられ、その保護膜14と基板12との間には空隙Sが設けられている。そのため、超音波センサの受信部10に外力が加わっても、その外力は保護膜14に印加されるだけで、基板12上に形成された圧電素子を構成する薄い各層(上部電極層、強誘電体の薄膜層、下部電極層)には外力が直接印加されず、各層の機械的強度が低い場合でもその破損を防止して受信部10を故障し難くできる。空隙Sに液体,ゾル,ゲルなどの充填材料を充填した場合には、その充填材料の音響インピーダンスを保護膜14の音響インピーダンスに近づけることにより、保護膜14の振動を当該充填材料を介して各受信素子11へ確実に伝搬させることが可能になり、各受信素子11の受信感度を高めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は超音波センサに係り、詳しくは、受信した超音波を電気信号に変換するか又は電気信号を超音波に変換して発信する超音波センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車(車両)に超音波センサを搭載し、その超音波センサから発信した人体に無害な超音波の反射を受信することにより、自動車の周囲にある物体の位置測定または距離測定や、当該物体の2次元形状または3次元形状の測定などを行い、自動車の周囲を監視して安全走行に役立てる技術の開発がすすめられている。
例えば、自動車の後部に超音波センサを搭載し、自動車の後方に存在する物体(人間や障害物など)を検知する装置(一般に「バックソナー」と呼ばれる)を用い、当該物体との衝突を回避してバックでの駐車を支援する自動駐車支援システムが実用化されている。
【0003】
そして、当該用途に使用される超音波センサとして、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術を利用して作製した圧電(ピエゾ)式や静電容量(コンデンサ)式の超音波センサが知られている。
例えば、MEMS技術を利用した圧電式の超音波センサとして、強誘電体を2つの電極で挟設してなり、所定の共振周波数を有して超音波を検出するそれぞれ圧電センサにてなる複数の超音波センサ素子を並置してなる技術が開示されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−284182号公報(第2〜8頁 図1〜図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された超音波センサは、SOI(Silicon On Insulator)構造を有する半導体チップ上に、強誘電体であるPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)セラミックス薄膜層を薄い2つの電極層(上部電極層、下部電極層)で挟設した構造の圧電素子(圧電センサ)が形成されている。
そのため、各電極層およびPZTセラミックス薄膜層の機械的強度が低く、上部電極層に外力が加わると各電極層またはPZTセラミックス薄膜層が破損して圧電素子が故障しやすいという問題があった。
【0005】
また、MEMS技術を利用した静電容量式の超音波センサは、半導体チップ上に形成された固定電極層と、その固定電極層に対して間隙を設けて配置された薄い可動電極層とを備え、固定電極層と可動電極層から静電容量素子が形成されている。
そのため、可動電極層の機械的強度が低く、可動電極層に外力が加わると可動電極層が破損して静電容量素子が故障しやすいという問題があった。
【0006】
このように、MEMS技術を利用して作製した従来の圧電式や静電容量式の超音波センサは、外力が加わると破損して故障しやすいため、そのまま自動車の外装品として搭載することが難しかった。
【0007】
本発明は上記問題を解決するためになされたものであって、その目的は、外力が加わっても破損し難く丈夫な超音波センサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、受信した超音波を電気信号に変換するか又は電気信号を超音波に変換して発信する複数個の変換手段と、その複数個の変換手段は並べて配置されていることと、前記各変換手段を保護するための保護手段とを備えたことを技術的特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の超音波センサにおいて、前記保護手段は、前記各変換手段の前面側に設けられた保護膜と、その保護膜と変換手段との間に設けられた第1空隙とを備えたことを技術的特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の超音波センサにおいて、前記第1空隙には、液体、ゾル、ゲルのいずれかの充填材料が充填されていることを技術的特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の超音波センサにおいて、前記第1空隙と外部とを連通する通気孔を備えたことを技術的特徴とする。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項2〜4のいずれか1項に記載の超音波センサにおいて、前記各変換手段と当該変換手段の前方に位置する前記第1空隙および前記保護膜とを、前記各変換手段毎に分離する分離手段を備えたことを技術的特徴とする。
【0013】
請求項6に記載の発明は、請求項2〜5のいずれか1項に記載の超音波センサにおいて、前記各変換手段を収容する収容部材と、その収容部材と前記各変換手段とに囲まれた第2空隙と、その第2空隙と外部とを連通する通気孔とを備えたことを技術的特徴とする。
【0014】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の超音波センサにおいて、前記各変換手段は、電気信号を超音波に変換して発信する発信素子であることを技術的特徴とする。
【0015】
請求項8に記載の発明は、請求項2〜5のいずれか1項に記載の超音波センサにおいて、前記各変換手段を収容する収容部材と、その収容部材と前記各変換手段とに囲まれた密閉空間である第2空隙とを備えたことを技術的特徴とする。
【0016】
請求項9に記載の発明は、請求項8に記載の超音波センサにおいて、前記第2空隙には、液体、ゾル、ゲルのいずれかの充填材料が充填されていることを技術的特徴とする。
【0017】
請求項10に記載の発明は、請求項8または請求項9に記載の超音波センサにおいて、前記各変換手段は、受信した超音波を電気信号に変換する受信素子であることを技術的特徴とする。
【0018】
請求項11に記載の発明は、請求項2〜10のいずれか1項に記載の超音波センサにおいて、前記各変換手段と前記保護膜とを、前記各変換手段毎に独立して連結する伝達部材を備えたを技術的特徴とする。
【0019】
請求項12に記載の発明は、請求項1に記載の超音波センサにおいて、前記保護手段は、前記各変換手段の前面側に取付固定された保護部材からなり、その保護部材は前記各変換手段毎に設けられ、各保護部材の間には間隙が設けられ、その間隙により各保護部材は前記各変換手段毎に分離されていることを技術的特徴とする。
【0020】
請求項13に記載の発明は、請求項1〜12のいずれか1項に記載の超音波センサにおいて、前記各変換手段の前面側に設けられた音響ホーンを備え、その音響ホーンは、前記各変換手段毎に設けられ、前記各変換手段の前面側に配置されたスロート部から開口部に向かって横断面積が徐々に増大することを技術的特徴とする。
【0021】
請求項14に記載の発明は、請求項1〜13のいずれか1項に記載の超音波センサにおいて、前記各変換手段は半導体基板の表面上に形成され、その半導体基板の表面側を、前記各変換手段の前面側として超音波の受信面または発信面とし、当該半導体基板の表面側にはボンディングワイヤが接続され、そのボンディングワイヤを介したワイヤボンディング接続法を用いて前記各変換手段をセンサ基板に表面実装したことを技術的特徴とする。
【0022】
請求項15に記載の発明は、請求項1〜13のいずれか1項に記載の超音波センサにおいて、前記各変換手段は半導体基板の表面上に形成され、その半導体基板の裏面側を、前記各変換手段の前面側として超音波の受信面または発信面とし、当該半導体基板の表面側にはバンプが接続され、そのバンプを介したフリップチップ接続法を用いて前記各変換手段をセンサ基板に表面実装したことを技術的特徴とする。
【0023】
請求項16に記載の発明は、請求項1〜15のいずれか1項に記載の超音波センサにおいて、前記変換手段は、圧電式または静電容量式であることを技術的特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
(請求項1)
請求項1の発明では、受信した超音波を電気信号に変換する受信素子、または、電気信号を超音波に変換して発信する発信素子から変換手段が構成され、その変換手段は複数個並べて配置されている。
そして、請求項1の発明によれば、各変換手段を保護するための保護手段が備えられているため、各変換手段の機械的強度が低い場合でも、その破損を防止して故障し難くすることが可能になり、丈夫な超音波センサを得ることができる。
【0025】
(請求項2)
請求項2の発明では、各変換手段の前方側に保護膜が設けられ、その保護膜と変換手段との間には第1空隙が設けられている。そのため、超音波センサに外力が加わっても、その外力は保護膜に印加されるだけで、各変換手段には外力が直接印加されない。
従って、請求項2の発明によれば、各変換手段の機械的強度が低い場合でも、その破損を防止して故障し難くすることが可能になり、丈夫な超音波センサを得ることができる。
【0026】
そのため、請求項2の発明による超音波センサは、そのまま自動車の外装品として搭載することができる。尚、超音波センサを自動車の外装品として搭載する場合には、保護膜として耐候性の高い材料を用いる必要があり、そのような材料として、例えば、各種金属(アルミニウム合金など),各種合成樹脂,ガラス,ゴムなどがある。
【0027】
(請求項3)
請求項3の発明によれば、前記第1空隙に充填した液体,ゾル,ゲルのいずれかの充填材料の音響インピーダンスを保護膜の音響インピーダンスに近づけることにより、保護膜の振動を当該充填材料を介して各変換手段へ確実に伝搬させることが可能になり、各変換手段を受信素子に適用した場合に受信感度を高めることができる。
尚、物質の音響インピーダンスは、その物質の密度と伝搬音速との積である。そして、物質間の音響インピーダンスが異なるほど、その物質間における音波の伝搬特性は悪化する。つまり、第1空隙の充填材料と保護膜の音響インピーダンスが異なるほど、超音波は保護膜で反射して充填材料に伝搬し難くなる。
【0028】
そのため、保護膜として合成樹脂膜を用いる場合には、当該合成樹脂の微粒子を液体中に分散させたゾルや、当該合成樹脂からなる高分子ゲルを充填材料として用いればよい。また、充填材料は変換手段を侵さないものである必要がある。このような要求を満たす充填材料として、例えば、シリコンゲルやフッ素ゲルなどがある。
ちなみに、第1空隙に各種気体(空気、不活性ガスなど)を充填した場合には、保護膜に比べて気体の音響インピーダンスは非常に小さいため、保護膜の振動が各変換手段へ十分に伝搬せず、各変換手段を受信素子に適用した場合に受信感度が低くなるおそれがある。
また、第1空隙に空気が残っていると保護膜の振動が各変換手段へ伝搬し難くなるため、第1空隙から空気を完全に除去して充填材料で満たすことが望ましい。
【0029】
そして、各変換手段を発信素子に適用した場合には、前記第1空隙に充填した液体,ゾル,ゲルのいずれかの充填材料の音響インピーダンスを保護膜の音響インピーダンスに近づけることにより、発信素子の振動を当該充填材料を介して保護膜へ確実に伝搬させることが可能になり、発信素子の発信出力を高めることができる。
また、第1空隙に各種気体を充填した場合には、保護膜に比べて気体の音響インピーダンスは非常に小さいため、発信素子の振動が保護膜へ十分に伝搬せず、発信素子の発信出力が低くなるおそれがある。
また、第1空隙に液体,ゾル,ゲルなどの充填材料を充填した場合には、第1空隙に空気が残っていると発信素子の振動が保護膜へ伝搬し難くなるため、第1空隙から空気を完全に除去して充填材料で満たすことが望ましい。
【0030】
(請求項4:第5実施形態に該当)
請求項4の発明によれば、第1空隙の充填材料に気泡が含まれている場合に、その気泡を通気孔から第1空隙の外部へ排出することができる。
すなわち、第1空隙の充填材料に気泡が含まれている場合には、その気泡により保護膜の振動が各変換手段へ伝搬し難くなる。
それに対して、請求項4の発明では、通気孔から気泡が排出されるため、第1空隙を充填材料で満たすことが可能になり、各変換手段を受信素子に適用した場合において、第1空隙の充填材料に含まれている気泡による受信感度の低下を防止できる。
【0031】
そして、各変換手段を発信素子に適用した場合には、第1空隙の充填材料に含まれている気泡が通気孔から排出されるため、第1空隙を充填材料で満たすことが可能になり、発信素子の振動を当該充填材料を介して保護膜へ確実に伝搬させることにより、発信素子の発信出力の低下を防止できる。
【0032】
(請求項5:第3,第12,第13実施形態に該当)
請求項5の発明では、分離手段により分離された1つの保護膜の振動は、その保護膜の下方に位置する第1空隙を介して変換手段にだけ伝搬し、その他の変換手段には伝搬しない。
従って、請求項5の発明によれば、超音波の伝搬を各変換手段間で完全に分離して行うことが可能になり、各変換手段のクロストーク特性が悪化するのを防止できる。尚、隣接する複数個の変換手段を1グループとし、そのグループ毎に各分離手段を設けて当該グループを他のグループから分離してもよい。
【0033】
尚、分離手段は、上下方向に配置されて1グループとなる保護膜,第1空隙,変換手段の振動が、隣接する他のグループの部材へ伝搬しないように、当該振動を確実に遮断しなければならない。
そのため、分離手段には振動遮断性の高い材料を用いる必要があり、そのような材料として、例えば、ゴムなどがある。
【0034】
(請求項6:第4,第10,第11実施形態、第12〜第14実施形態の各変更例に該当)
請求項6の発明によれば、各変換手段の振動が阻害されないため、各変換手段を受信素子に適用した場合の受信感度の低下を防止できる。
すなわち、第2空隙に通気孔が設けられていない場合には、第2空隙が密閉空間となり、その密閉空間を満たす空気がバネとして作用し、各変換手段の背面側に空気によるダンピング力が印加されるため、各変換手段の自由な振動が阻害される。
それに対して、請求項6の発明では、通気孔を空気が通過するため、各変換手段の背面側に空気によるダンピング力が印加されることがなく、各変換手段は自由に振動可能となる。
【0035】
そして、各変換手段を発信素子に適用した場合には、第2空隙の通気孔を空気が通過するため、発信素子から超音波を発信する発信面の背面側に空気によるダンピング力が印加されることがなく、発信面は自由に振動可能となり振動が阻害されないことから、発信素子の発信出力を大きくすることができる。
尚、通気孔の個数、配置箇所、寸法形状は、前記作用・効果が十分に得られるようにカット・アンド・トライで実験的に最適値を見つけて設定すればよい。
【0036】
(請求項7:第11実施形態、第12〜第14実施形態の各変更例に該当)
第2空隙の通気孔を空気が通過すると、発信素子の背面側に空気によるダンピング力が印加されず、発信面の自由な振動が阻害されないことから、発信素子(変換手段の振動板)の共振値Qが大きくなる。
発信素子の共振値Qと発信出力との間には正の相関関係があり、共振値が大きいほど発信出力が高くなる。
MEMS技術を利用して作製された圧電素子または静電容量素子からなる発信素子は、超音波の発信出力が小さいため発信素子には不向きであるため、発信出力をできるだけ高くすることが要求されている。
従って、請求項7の発明は、特にMEMS技術を利用して作製された発信素子に具体化した場合に、請求項6の発明の作用・効果を発揮することができる。
【0037】
(請求項8:第1,第3,第5,第9,第12〜第14実施形態に該当)
請求項8の発明によれば、密閉空間である第2空隙を満たす空気がバネとして作用し、各変換手段の背面側に空気によるダンピング力が印加されるため、各変換手段の自由な振動が阻害されることから、変換手段の振動板の共振値Qが小さくなる。
そして、請求項8の発明によれば、各変換手段の振動が阻害されるため、各変換手段を受信素子に適用した場合には受信感度が低下する。
【0038】
(請求項9)
請求項8の発明によれば、第2空隙に変換手段の振動板の振動を抑制するような材料(例えば、液体、ゾル、ゲルなど)を充填することにより、変換手段の振動板が過剰に振動して破損するのを防止できる。
【0039】
(請求項10:第11実施形態、第12〜第14実施形態の各変更例に該当)
受信素子の共振値Qと受信感度との間には正の相関関係があり、共振値Qが大きいほど受信感度が高くなる。
ここで、複数個の受信素子には、製造プロセスに起因する1次共振周波数のバラツキがある。
受信素子の共振値Qを大きくすると、受信感度が高くなるものの、その受信感度は周波数の変化に対して急峻な特性になるため、1次共振周波数から僅かでも離れた周波数における受信感度が急激に低下する。
逆に、受信素子の共振値Qを小さくすると、受信感度が低くなるものの、その受信感度は周波数の変化に対して緩やかな特性になるため、1次共振周波数から離れた周波数における受信感度があまり低下しない。
【0040】
MEMS技術を利用して作製された圧電素子または静電容量素子からなる受信素子は、超音波の受信感度が高いため受信素子として好適であるため、1次共振周波数における受信感度を高くすることよりも、広い周波数範囲で受信感度をできるだけ高くすることが要求されている。
従って、請求項10の発明は、特にMEMS技術を利用して作製された受信素子に具体化した場合に、請求項8の発明の作用・効果を発揮することができる。
【0041】
そして、請求項10の発明において、第2空隙に変換手段の振動板の振動を抑制するような材料を充填することにより、第2空隙に空気が満たされている場合に比べて、変換手段の振動板の共振値Qを小さくすることができる。
従って、第2空隙の充填材料を適宜選択すれば、受信素子の構造を変えることなく、所望の共振特性を得ることができる。
【0042】
(請求項11:第6実施形態または第14実施形態に該当)
請求項11の発明では、超音波によって保護膜が振動すると、その保護膜の振動は各伝達部材を介して各変換手段へ伝搬される。
ここで、各伝達部材は各変換手段毎に設けられているため、任意の伝達部材の振動が他の伝達部材に伝搬することはなく、超音波の受信または発信を各変換手段間で分離して行うことが可能になり、各変換手段のクロストーク特性が悪化するのを防止できる。
【0043】
そして、各伝達部材の音響インピーダンスを保護膜の音響インピーダンスに近づけることにより、保護膜の振動を各伝達部材へ確実に伝搬させることが可能になり、各変換手段を受信素子に適用にした場合の受信感度を高めることができる。
また、各伝達部材の音響インピーダンスを各変換手段の音響インピーダンスに近づけることにより、各伝達部材の振動を各変換手段へ確実に伝搬させることが可能になり、各変換手段を受信素子に適用にした場合の受信感度を高めることができる。
従って、伝達部材は、保護膜または変換手段と同一材料で形成することが望ましい。
【0044】
そして、各変換手段を発信素子に適用した場合には、伝達部材の音響インピーダンスを保護膜の音響インピーダンスに近づけることにより、伝達部材の振動を保護膜へ確実に伝搬させることが可能になり、発信素子の発信出力を大きくすることができる。
また、各変換手段を発信素子に適用した場合には、伝達部材の音響インピーダンスを発信素子の音響インピーダンスに近づけることにより、発信素子の振動を伝達部材へ確実に伝搬させることが可能になり、発信素子の発信出力を大きくすることができる。
【0045】
(請求項12:第2実施形態に該当)
請求項12の発明において、各変換手段を受信素子に適用した場合には、受信素子の前面側に保護部材が取付固定されているため、超音波によって保護部材が振動すると、その保護部材の振動は受信素子へ伝搬される。
また、請求項12の発明において、各変換手段を発信素子に適用した場合には、発信素子の前面側に保護部材が取付固定されているため、発信素子が振動すると、その振動は保護部材に伝搬され、保護部材が振動して超音波が発信される。
ここで、各変換手段は保護部材によって補強されているため、超音波センサに外力が加わっても、各変換手段の破損を防止して故障し難くすることが可能になり、丈夫な超音波センサを得ることができる。
【0046】
そのため、請求項12の発明による超音波センサは、そのまま自動車の外装品として搭載することができる。尚、超音波センサを自動車の外装品として搭載する場合には、保護部材として耐候性の高い材料を用いる必要があり、そのような材料として、例えば、各種金属(アルミニウム合金など),各種合成樹脂,ガラス,ゴムなどがある。
尚、各変換手段に保護部材を取付固定するには、どのような方法(例えば、熱溶着法、超音波溶着法、接着剤を用いる接着法など)を用いてもよい。
【0047】
(請求項13:第7,第8〜第13実施形態に該当)
請求項13の発明によれば、各変換手段毎に各音響ホーンを設けることにより、各変換手段に超音波の受信方向または発信方向の指向性を付与することができる。
すなわち、各音響ホーンは、そのホーン軸上に鋭い指向性を有する。そのため、各音響ホーンを同一寸法形状に形成することにより、各音響ホーンのホーン軸を同一方向に設定した場合には、各変換手段の指向性についても同一方向に揃えることができる。また、各音響ホーンの寸法形状を変えることにより、各音響ホーンのホーン軸を任意の異なる方向に設定した場合には、各変換手段の指向性についても任意の方向に設定することができる。
尚、各音響ホーンのホーン壁部材は、超音波によって振動し難い十分な強度を有した材料を用いて形成する必要があり、そのような材料として、例えば、各種金属や各種合成樹脂などがある。
【0048】
(請求項14:第1〜第8実施形態に該当)
請求項14の発明によれば、ワイヤボンディング接続法を用いて前記各変換手段をセンサ基板に表面実装して形成された超音波センサを得ることができる。
【0049】
(請求項15:第9〜第14実施形態に該当)
請求項15の発明によれば、各変換手段とセンサ基板とがバンプを介して接続固定されているため、各変換手段とセンサ基板との電気的接続を確実に保持可能になり、超音波センサの信頼性を高めると共に高寿命化を図ることができる。
また、フリップチップ接続法を用いることにより、ワイヤボンディング接続法を用いる場合に比べて、各変換手段をセンサ基板に表面実装する際の製造コストを低くできる。
【0050】
また、各変換手段を受信素子に適用した場合には、超音波の受信面の上方にボンディングワイヤが張り渡されておらず、受信面の前面側に障害物が無いため、受信面への超音波の到達が阻害されず、受信素子の受信感度を高めることができる。そして、受信素子の受信面の上方にボンディングワイヤが張り渡されていないため、受信素子が受信する超音波により当該ボンディングワイヤが切断されることがない。
また、各変換手段を発信素子に適用した場合には、発信素子の発信面の上方にボンディングワイヤが張り渡されておらず、発信面の前面側に障害物が無いため、発信面からの超音波の発信が阻害されず、発信素子の発信出力を大きくすることができる。そして、発信素子の発信面の上方にボンディングワイヤが張り渡されていないため、発信素子が発信する超音波により当該ボンディングワイヤが切断されることがない。
【0051】
また、ボンディングワイヤに比べてバンプのインダクタンスは小さくなるため、各変換手段における電気信号の伝達速度を速くできる。
また、ボンディングワイヤが接続される電極パッドをセンサ基板に設ける必要が無く、その電極パッドの占有面積分だけセンサ基板が小さくなるため、超音波センサを小型軽量化できる。
【0052】
加えて、請求項15の発明によれば、各変換手段を振動させやすくするため、半導体基板の裏面側に凹部を形成して各変換手段の振動板の板厚を薄くした場合に、当該凹部の形状を音響ホーンにすれば、音響ホーンを別部材として設けることなく、請求項13の発明の作用・効果を容易に得ることができる。
そして、音響ホーンを別部材として設ける必要がないため、製造コストを低くできると共に、超音波センサを小型軽量化できる。
【0053】
(請求項16)
請求項16の発明によれば、圧電式または静電容量式の超音波センサを得ることができる。
【0054】
(用語の説明)
尚、上述した[課題を解決するための手段]に記載した構成要素と、後述する[発明を実施するための最良の形態]に記載した構成部材との対応関係は以下のようになっている。
【0055】
「変換手段」は、受信素子11,111,201,271、発信部31,209,231,Uを構成する発信素子(232,W)に該当する。
「保護手段」は、保護膜14、保護部材41に該当する。
「第1空隙」は、空隙Sに該当する。
「第2空隙」は、空隙Rに該当する。
「分離手段」は、分離部材51,241,251、分離溝52に該当する。
「半導体基板」は、単結晶シリコン基板12,202に該当する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0056】
以下、本発明を具体化した各実施形態について図面を参照しながら説明する。尚、各実施形態において、同一構成部材については符号を等しくすると共に、同一内容の箇所については重複説明を省略してある。
【0057】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態の超音波センサMにおける受信部10を示す概略縦断面図である。
受信部10は、アレイ状に並べて配置された複数個の圧電式受信素子11から構成されている。尚、図1に示す例では、3個の受信素子11の概略縦断面を示す。
各受信素子11は、SOI構造の単結晶シリコン基板(単結晶シリコンチップ)12上に形成されている。
【0058】
基板12は、上方が開口された直方体箱状の収容部材13内に収容されている。 また、基板12の外周縁部は収容部材13の内壁部に対して適宜な方法(例えば、熱溶着法、超音波溶着法、接着剤を用いる接着法など)によって取付固定され、基板12の外周縁部と収容部材13との接続部分の気密化が図られている。
そして、各受信素子11は超音波を受信する受信面11aを収容部材13の開口部13a側に向けて配置されている。
【0059】
収容部材13の開口部13aには、その開口部13aを塞ぐための保護膜14が貼られている。つまり、保護膜14は各受信素子11の前面側に設けられている。
保護膜14の外周縁部は、収容部材13の開口部13aの内周縁部に対して前記適宜な方法によって取付固定され、保護膜14の外周縁部と収容部材13との接続部分の気密化が図られている。
【0060】
保護膜14は、超音波により振動しやすく、超音波を屈折させずに透過させるが、空気,塵埃,水などは通過させない材料によって形成された薄膜である。
保護膜14と基板12との間には空隙Sが設けられており、空隙Sには、気体,液体,ゾル,ゲルなどが充填されている。
基板12の背面側(裏面側)と収容部材13とに囲まれた空隙Rには空気が満たされている。
【0061】
図2は、1個の圧電式受信素子11を示す拡大概略縦断面図である。
基板12には、その基板12の表裏を貫通する貫通孔12aが形成されている。
基板12の表面上には、絶縁層21、シリコン活性層22、絶縁層23がこの順番で形成されており、各層22,23は貫通孔12aの上部を塞ぐように形成されている。
【0062】
貫通孔12aの上方(前方)に位置する絶縁層23の表面上には、下部電極層24、強誘電体(例えば、PZTなど)の薄膜層25、上部電極層26がこの順番で形成されている。
各層24〜26の周囲には絶縁層27が形成され、絶縁層27および上部電極層26の表面(デバイス表面)は平坦化されている。
各電極層24,26にはそれぞれボンディングワイヤ(引出導線)28,29が接続されている。
【0063】
このように、強誘電体の薄膜層25を薄い2つの電極層24,26で挟設した構造の圧電素子(圧電センサ)Eが形成され、このMEMS技術を利用して作製された圧電素子Eにより受信素子11が構成されている。
また、上部電極層26の表面により受信素子11の受信面11aが形成されている。
そして、超音波によって薄膜層25が振動すると圧電効果により電気信号が生成され、その電気信号は各電極層24,26から各ボンディングワイヤ28,29を介して出力される。
尚、貫通孔12aを設けるのは、各層22〜26から構成される振動板を振動させやすくするためである。
【0064】
図3は、超音波センサMを示す概略斜視図である。
超音波センサMは、受信部10、発信部31、センサ基板32、電極パッド33を備えたハイブリッドIC(Integrated Circuit)によって構成されている。
センサ基板32はプリント配線基板であり、絶縁板材からなるセンサ基板32の表面上には、複数個の電極パッド33が形成されると共に、チップ部品である受信部10および発信部31が取付固定されている。
受信部10の各受信素子11から引き出された各ボンディングワイヤ28,29の先端部は、各電極パッド33に接続されている。
尚、図3に示す例では、縦横方向に3個ずつ並べて配置された9個の受信素子11から受信部10が構成されている。
【0065】
発信部31は、受信部10と同じ構成であり、受信素子11と同じ構造の1個の圧電式発信素子を備え、各電極層24,26から強誘電体の薄膜層25に印加される入力信号に応じて、薄膜層25が圧電効果により振動して超音波を発生する。この場合、受信素子11の受信面11aは、発信素子から超音波を発信する発信面として機能する。
つまり、発信部31の発信素子は電気信号を超音波に変換して発信する。
そして、外部からの入力信号に応じて発信部31が超音波を発信し、その超音波が検出対象物に反射した反射音を受信部10の各受信素子11が受信する。
つまり、受信部10の各受信素子11は受信した超音波を電気信号に変換する。
【0066】
そこで、発信部31が発信した超音波と、受信部10の各受信素子11が受信した超音波とを比較し、その音圧差,時間差,位相差を求めることにより、その各差に基づいて、検出対象物の位置測定、超音波センサMと検出対象物との距離測定、検出対象物の2次元形状または3次元形状の測定などを行うことができる。
【0067】
[第1実施形態の作用・効果]
第1実施形態によれば、以下の作用・効果を得ることができる。
【0068】
[1−1]
各受信素子11が形成された基板12の前方側には保護膜14が設けられ、その保護膜14と基板12との間には空隙Sが設けられている。
そのため、超音波センサMの受信部10に外力が加わっても、その外力は保護膜14に印加されるだけで、基板12上に形成された薄い各層22〜26には外力が直接印加されない。
【0069】
従って、第1実施形態によれば、薄い各層22〜26の機械的強度が低い場合でも、各層22〜26の破損を防止して受信部10を故障し難くすることが可能になり、丈夫な受信部10を得ることができる。
また、発信部31の発信素子は受信素子11と同じ構造であるため、各層22〜26の破損を防止して発信部31を故障し難くすることが可能になり、丈夫な発信部31を得ることができる。
そのため、受信部10および発信部31を備えた超音波センサMは、そのまま自動車の外装品として搭載することができる。尚、超音波センサMを自動車の外装品として搭載する場合には、保護膜14として耐候性の高い材料を用いる必要があり、そのような材料として、例えば、各種金属(アルミニウム合金など),各種合成樹脂,ガラス,ゴムなどがある。
【0070】
[1−2]
保護膜14と基板12との間の空隙Sに液体,ゾル,ゲルのいずれかの充填材料を充填した場合には、その充填材料の音響インピーダンスを保護膜14の音響インピーダンスに近づけることにより、保護膜14の振動を当該充填材料を介して各受信素子11へ確実に伝搬させることが可能になり、各受信素子11の受信感度を高めることができる。
尚、物質の音響インピーダンスは、その物質の密度と伝搬音速との積である。そして、物質間の音響インピーダンスが異なるほど、その物質間における音波の伝搬特性は悪化する。つまり、空隙Sの充填材料と保護膜14の音響インピーダンスが異なるほど、超音波は保護膜14で反射して充填材料に伝搬し難くなる。
【0071】
そのため、保護膜14として合成樹脂膜を用いる場合には、当該合成樹脂の微粒子を液体中に分散させたゾルや、当該合成樹脂からなる高分子ゲルを充填材料として用いればよい。また、充填材料は受信素子11を侵さないものである必要がある。このような要求を満たす充填材料として、例えば、シリコンゲルやフッ素ゲルなどがある。
【0072】
尚、空隙Sに充填材料を充填するには、収容部材13に保護膜14を取り付けた後に、空隙Sから空気を抜きながら充填材料を注入すればよい。
また、収容部材13に基板12を収容し、その基板12上に収容部材13の上方開口部から充填材料を流し込んだ後に、収容部材13に保護膜14を取り付けてもよい。
また、スピンコート法を用い、基板12上に充填材料を滴下した後に基板12を回転させ、基板12表面に充填材料の薄膜を形成した後に、その基板12を収容部材13に収容してもよい。
【0073】
ちなみに、空隙Sに各種気体(空気、不活性ガスなど)を充填した場合には、保護膜14に比べて気体の音響インピーダンスは非常に小さいため、保護膜14の振動が受信素子11へ十分に伝搬せず、各受信素子11の受信感度が低くなるおそれがある。
また、空隙Sに液体,ゾル,ゲルなどの充填材料を充填した場合には、空隙Sに空気が残っていると保護膜14の振動が受信素子11へ伝搬し難くなるため、空隙Sから空気を完全に除去して充填材料で満たすことが望ましい。
【0074】
そして、発信部31の発信素子は受信素子11と同じ構造であるため、保護膜14と基板12との間の空隙Sに液体,ゾル,ゲルのいずれかの充填材料を充填した場合には、その充填材料の音響インピーダンスを保護膜14の音響インピーダンスに近づけることにより、発信素子の振動を当該充填材料を介して保護膜14へ確実に伝搬させることが可能になり、発信素子の発信出力を高めることができる。
【0075】
また、空隙Sに各種気体を充填した場合には、保護膜14に比べて気体の音響インピーダンスは非常に小さいため、発信素子の振動が保護膜14へ十分に伝搬せず、発信素子の発信出力が低くなるおそれがある。
また、空隙Sに液体,ゾル,ゲルなどの充填材料を充填した場合には、空隙Sに空気が残っていると発信素子の振動が保護膜14へ伝搬し難くなるため、空隙Sから空気を完全に除去して充填材料で満たすことが望ましい。
【0076】
[1−3]
図3に示す例では9個の受信素子11(圧電素子E)からなる受信部10を備えているが、受信部10を構成する各受信素子11の個数は検出対象物の前記測定(位置測定、距離測定、形状測定)の精度に対応し、受信素子11の個数を増やすほど当該精度を高くすることができる。
また、各受信素子11の配置間隔は、発信部31の発信する超音波の波長よりも短い距離に設定する必要がある。そして、各受信素子11の配置間隔は前記測定精度に対応する。
そのため、受信素子11の個数および配置間隔は、必要な前記測定精度に応じてカット・アンド・トライで実験的に最適値を見つけて設定すればよい。
【0077】
例えば、検出対象物が超音波センサMに対してどの方向に位置するかを測定するだけであれば、数個の受信素子11を設ければよい。しかし、検出対象物の正確な2次元形状を測定するとなると数十〜数百個以上の受信素子11を設ける必要があり、正確な3次元形状を測定するとなるとそれ以上の受信素子11を設ける必要がある。
【0078】
[1−4]
図3に示す例では1個の発信素子からなる発信部31を備えているが、発信部31を構成する発信素子の個数は超音波の発信出力(音響出力)に対応し、その発信素子の個数を増やすほど発信出力を大きくすることができる。
また、発信部31を構成する発信素子の配置状態を適宜設定することにより、超音波の発信方向の指向性を調節することができる。
そのため、発信部31を構成する発信素子の個数および配置状態は、必要な発信出力および指向性に応じてカット・アンド・トライで実験的に最適値を見つけて設定すればよい。
【0079】
(第2実施形態)
図4は、第2実施形態の超音波センサMにおける受信部40を示す概略縦断面図である。
第2実施形態の受信部40において、第1実施形態の受信部10と異なるのは、保護膜14が省かれ、その代わりに、各受信素子11の受信面11a上に薄板状の保護部材41が取付固定されている点だけである。
つまり、受信部40では、各受信素子11の前面側に保護部材41が取付固定されている。そして、各受信素子11の保護部材41の間には間隙Kが設けられ、その間隙Kにより各保護部材41は各受信素子11毎に分離されている。
尚、第2実施形態の超音波センサMの構成は、図3に示す第1実施形態の超音波センサMの受信部10を受信部40に置き換えたものである。
【0080】
[第2実施形態の作用・効果]
第2実施形態によれば、第1実施形態の前記[1−3][1−4]と同様の作用・効果に加えて、以下の作用・効果を得ることができる。
【0081】
[2−1]
各受信素子11の受信面11a上に薄板状の保護部材41が取付固定されているため、超音波によって保護部材41が振動すると、その保護部材41の振動は受信面11aの各層22〜26(図4では図示略。図2参照)に伝搬され、強誘電体の薄膜層25が振動して圧電効果により電気信号が生成される。
ここで、受信面11aの各層22〜26は保護部材41によって補強されているため、超音波センサMの受信部40に外力が加わっても、薄い各層22〜26の破損を防止して受信部40を故障し難くすることが可能になり、丈夫な受信部40を得ることができる。
【0082】
そして、発信部31を受信部40と同じ構造にし、発信素子の発信面上に薄板状の保護部材41を取付固定した場合には、薄膜層25が圧電効果により振動すると、その薄膜層25の振動は保護部材41に伝搬され、保護部材41が振動して超音波が発信される。
ここで、発信素子の発信面の各層22〜26は保護部材41によって補強されているため、超音波センサMの発信部31に外力が加わっても、薄い各層22〜26の破損を防止して発信部31を故障し難くすることが可能になり、丈夫な発信部31を得ることができる。
【0083】
[2−2]
受信部40および発信部31は丈夫なため、受信部40および発信部31を備えた超音波センサMは、そのまま自動車の外装品として搭載することができる。尚、超音波センサMを自動車の外装品として搭載する場合には、保護部材41として耐候性の高い材料を用いる必要があり、そのような材料として、例えば、各種金属(アルミニウム合金など),各種合成樹脂,ガラス,ゴムなどがある。
尚、各受信素子11の受信面11a(発信素子の発信面)上に保護部材41を取付固定するには、どのような方法(例えば、熱溶着法、超音波溶着法、接着剤を用いる接着法など)を用いてもよい。
【0084】
[2−3]
各受信素子11の保護部材41の間には間隙Kが設けられ、その間隙Kにより各保護部材41は各受信素子11毎に分離されている。そのため、1つの保護部材41の振動は、当該保護部材41が取付固定された受信素子11にだけ伝搬し、隣接する保護部材41を介して他の受信素子11には伝搬しない。
従って、第2実施形態によれば、超音波の受信を各受信素子11間で完全に分離して行うことが可能になり、各受信素子11のクロストーク特性が悪化するのを防止できる。
【0085】
(第3実施形態)
図5は、第3実施形態の超音波センサMにおける受信部50を示す概略縦断面図である。
第3実施形態の受信部50において、第1実施形態の受信部10と異なるのは、分離部材51および分離溝52が設けられている点だけである。
各分離部材51の下端部は、各受信素子11間の基板12に形成された各分離溝52に埋め込まれている。また、各分離部材51の上端部は、空隙Sおよび保護膜14を分離している。
【0086】
すなわち、図5に示す例では、3個の受信素子11A〜11C間の基板12に形成された各分離溝52に各分離部材51の下端部が埋め込まれ、各分離部材51および各分離溝52によって受信素子11A〜11Cが分離されている。
そして、各受信素子11A〜11Cの上方(前方)にそれぞれ位置する各空隙SA〜SCおよび保護膜14A〜14Cについても、各分離部材51によって各受信素子11A〜11C毎に分離されている。
尚、第3実施形態の超音波センサMの構成は、図3に示す第1実施形態の超音波センサMの受信部10を受信部50に置き換えたものである。
【0087】
[第3実施形態の作用・効果]
第3実施形態によれば、第1実施形態の前記作用・効果に加えて、以下の作用・効果を得ることができる。
【0088】
[3−1]
各受信素子11と、その受信素子11の上方(前方)に位置する空隙Sおよび保護膜14とは、各分離部材51および各分離溝52によって各受信素子11毎に分離されている。そのため、分離された1つの保護膜14Aの振動は、その保護膜14Aの下方に位置する空隙SAを介して受信素子11Aにだけ伝搬し、その他の受信素子11B,11Cには伝搬しない。
【0089】
従って、第3実施形態によれば、超音波の受信を各受信素子11A〜11C間で完全に分離して行うことが可能になり、各受信素子11A〜11Cのクロストーク特性が悪化するのを防止できる。
尚、隣接する複数個の受信素子11を1グループとし、そのグループ毎に各分離部材51および各分離溝52を設けて当該グループを他のグループから分離してもよい。
【0090】
[3−2]
各分離部材51は、上下方向に配置されて1グループとなる保護膜14A,空隙SA,受信素子11Aの振動が、隣接する他のグループの部材(保護膜14B,14C、空隙SB,SC、受信素子11B,11C)へ伝搬しないように、当該振動を確実に遮断しなければならない。
そのため、各分離部材51には振動遮断性の高い材料を用いる必要があり、そのような材料として、例えば、ゴムなどがある。
【0091】
(第4実施形態)
図6は、第4実施形態の超音波センサMにおける受信部60を示す概略縦断面図である。
第4実施形態の受信部60において、第3実施形態の受信部50と異なるのは、収容部材13の底面における各受信素子11の下方に位置する部分毎に、空隙Rと収容部材13の外部とを連通する通気孔61が形成されている点だけである。
【0092】
尚、第4実施形態の超音波センサMの構成は、図3に示す第1実施形態の超音波センサMの受信部10を受信部60に置き換えたものである。
但し、受信部60をセンサ基板32上に取付固定した際に各通気孔61が塞がれないように、受信部60とセンサ基板32との間に間隙を設けておく必要があり、具体的には、受信部60とセンサ基板32の間にスペーサを設けたり、センサ基板32における各通気孔61に合致する箇所に溝や通気孔を設ければよい。
【0093】
[第4実施形態の作用・効果]
第4実施形態によれば、第3実施形態の前記作用・効果に加えて、各受信素子11の受信面11aの各層22〜26(図6では図示略。図2参照)の振動が阻害されないため、各受信素子11の受信感度の低下を防止できる。
【0094】
すなわち、収容部材13に各通気孔61が設けられていない場合には、基板12と収容部材13とに囲まれた空隙Rが密閉空間となり、その密閉空間を満たす空気がバネとして作用し、各受信素子11の受信面11aの背面側に空気によるダンピング力が印加されるため、受信面11aの各層22〜26の自由な振動が阻害され、各受信素子11の受信感度が低下するおそれがある。
【0095】
それに対して、第4実施形態では、各通気孔61を空気が通過するため、各受信素子11の受信面11aの背面側に空気によるダンピング力が印加されることがなく、受信面11aの各層22〜26は自由に振動可能となる。
尚、各通気孔61の個数、配置箇所、寸法形状は、前記作用・効果が十分に得られるようにカット・アンド・トライで実験的に最適値を見つけて設定すればよい。
【0096】
そして、発信部31を受信部60と同じ構造にし、発信部31の収容部材13に各通気孔61を設けた場合には、各通気孔61を空気が通過するため、発信素子の発信面の背面側に空気によるダンピング力が印加されることがなく、発信面の各層22〜26は自由に振動可能となり振動が阻害されないことから、発信素子の発信出力を大きくすることができる。
【0097】
(第5実施形態)
図7は、第5実施形態の超音波センサMにおける受信部70を示す概略縦断面図である。
第5実施形態の受信部70において、第1実施形態の受信部10と異なるのは、収容部材13の側壁に、空隙Sと収容部材13の外部とを連通する通気孔71が形成されている点だけである。
【0098】
尚、第5実施形態の超音波センサMの構成は、図3に示す第1実施形態の超音波センサMの受信部10を受信部70に置き換えたものである。
但し、受信部70をセンサ基板32上に取付固定した際に通気孔71の開口部が上方を向くように、収容部材13における通気孔71が形成されている側の対面側の側壁をセンサ基板32上に取付固定する必要がある。
【0099】
[第5実施形態の作用・効果]
第5実施形態によれば、第1実施形態の前記作用・効果に加えて、空隙Sに液体,ゾル,ゲルなどの充填材料を充填したとき、その充填材料に気泡が含まれている場合に、その気泡を通気孔71から空隙Sの外部へ排出することができる。
すなわち、空隙Sの充填材料に気泡が含まれている場合には、その気泡により保護膜14の振動が受信素子11へ伝搬し難くなる。
それに対して、第5実施形態では、通気孔71から気泡が排出されるため、空隙Sを充填材料で満たすことが可能になり、空隙Sの充填材料に含まれている気泡による各受信素子11の受信感度の低下を防止できる。
【0100】
そして、発信部31を受信部70と同じ構造にし、発信部31の収容部材13に通気孔71を設けた場合には、空隙Sの充填材料に含まれている気泡が通気孔71から排出されるため、空隙Sを充填材料で満たすことが可能になり、発信素子の振動を当該充填材料を介して保護膜14へ確実に伝搬させることにより、発信素子の発信出力の低下を防止できる。
【0101】
(第6実施形態)
図8は、第6実施形態の超音波センサMにおける受信部80を示す概略縦断面図である。
第6実施形態の受信部80において、第1実施形態の受信部10と異なるのは、各受信素子11の受信面11aと保護膜14とを、各受信素子11毎に独立して連結する柱状の伝達部材81が空隙S内に設けられている点だけである。
尚、第6実施形態の超音波センサMの構成は、図3に示す第1実施形態の超音波センサMの受信部10を受信部80に置き換えたものである。
【0102】
[第6実施形態の作用・効果]
第6実施形態によれば、第1実施形態の前記[1−1][1−3][1−4]の作用・効果に加えて、以下の作用・効果を得ることができる。
【0103】
[6−1]
超音波によって保護膜14が振動すると、その保護膜14の振動は各伝達部材81を介して各受信素子11へ伝搬される。
ここで、各伝達部材81は各受信素子11毎に設けられているため、任意の伝達部材81の振動が他の伝達部材81に伝搬することはなく、超音波の受信を各受信素子11間で分離して行うことが可能になり、各受信素子11のクロストーク特性が悪化するのを防止できる。
【0104】
そして、各伝達部材81の音響インピーダンスを保護膜14の音響インピーダンスに近づけることにより、保護膜14の振動を各伝達部材81へ確実に伝搬させることが可能になり、各受信素子11の受信感度を高めることができる。
また、各伝達部材81の音響インピーダンスを各受信素子11の上部電極層26(図8では図示略。図2参照)の音響インピーダンスに近づけることにより、各伝達部材81の振動を上部電極層26へ確実に伝搬させることが可能になり、各受信素子11の受信感度を高めることができる。
従って、伝達部材81は、保護膜14または上部電極層26と同一材料で形成することが望ましい。
【0105】
そして、発信部31を受信部80と同じ構造にし、発信素子の発信面と保護膜14とを連結する伝達部材81を設けた場合には、伝達部材81の音響インピーダンスを保護膜14の音響インピーダンスに近づけることにより、伝達部材81の振動を保護膜14へ確実に伝搬させることが可能になり、発信素子の発信出力を大きくすることができる。
また、伝達部材81の音響インピーダンスを発信素子の上部電極層26の音響インピーダンスに近づけることにより、発信素子の上部電極層26の振動を伝達部材81へ確実に伝搬させることが可能になり、発信素子の発信出力を大きくすることができる。
【0106】
[6−2]
各受信素子11のクロストーク特性の悪化を防止するには、任意の伝達部材81の振動が空隙Sの充填材料を介して他の伝達部材81に伝搬しないようにする必要がある。
従って、第6実施形態では、空隙Sを真空状態にするのが最も望ましい。
第6実施形態において、空隙Sに充填材料を充填する場合には、その充填材料として、音響インピーダンスが小さな気体を用いるか、振動吸収性の高い材料(例えば、粘性の高いゲルなど)を用いればよい。
【0107】
(第7実施形態)
図9は、第7実施形態の超音波センサMにおける受信部90を示す概略縦断面図である。
第7実施形態の受信部90において、第3実施形態の受信部50と異なるのは、保護膜14の外側に音響ホーン91が設けられている点だけである。
各音響ホーン91は、スロート部91aから開口部91bに向かって横断面積が徐々に増大するように形成されている。
【0108】
各音響ホーン91は各受信素子11毎に設けられている。
各音響ホーン91のスロート部91aは、各受信素子11の上方(前方)に位置する保護膜14上に配置されている。つまり、各音響ホーン91のスロート部91aは各受信素子11の前面側に配置されている。
各音響ホーン91において、スロート部91aの外周のホーン壁部材91cは、各分離部材51の上端部に取付固定されている。
【0109】
すなわち、図9に示す例では、3個の受信素子11A〜11C毎に各音響ホーン91A〜91Cが設けられ、各受信素子11A〜11Cの上方(前方)に位置する各保護膜14A〜14C上に各音響ホーン91A〜91Cのスロート部91aが配置されている。
尚、第7実施形態の超音波センサMの構成は、図3に示す第1実施形態の超音波センサMの受信部10を受信部90に置き換えたものである。
【0110】
[第7実施形態の作用・効果]
第7実施形態によれば、第3実施形態の前記作用・効果に加えて、以下の作用・効果を得ることができる。
【0111】
[7−1]
各受信素子11毎に各音響ホーン91を設けることにより、各受信素子11に超音波の受信方向の指向性を付与することができる。
すなわち、各音響ホーン91A〜91Cは、そのホーン軸α〜γの軸上に鋭い指向性を有する。
【0112】
そのため、図9(A)に示すように、各音響ホーン91A〜91Cを同一寸法形状に形成することにより、各音響ホーン91A〜91Cのホーン軸α〜γを同一方向に設定した場合には、各受信素子11A〜11Cの指向性についても同一方向に揃えることができる。
また、図9(B)に示すように、各音響ホーン91A〜91Cの寸法形状を変えることにより、各音響ホーン91A〜91Cのホーン軸α〜γを任意の異なる方向に設定した場合には、各受信素子11A〜11Cの指向性についても任意の方向に設定することができる。
【0113】
そして、発信部31を受信部90と同じ構造にし、保護膜14の外側に音響ホーン91を設けた場合には、発信素子に超音波の発信方向の指向性を付与することができる。
【0114】
[7−2]
各音響ホーン91において、スロート部91aの外周のホーン壁部材91cは、各分離部材51の上端部に取付固定されている。
従って、各音響ホーン91を設けても各保護膜14A〜14Cの振動が阻害されないため、各受信素子11の受信感度の低下を防止できる。
尚、各音響ホーン91のホーン壁部材91cは、超音波によって振動し難い十分な強度を有した材料を用いて形成する必要があり、そのような材料として、例えば、各種金属や各種合成樹脂などがある。
【0115】
そして、発信部31を受信部90と同じ構造にし、保護膜14の外側に音響ホーン91を設けた場合には、スロート部91aの外周のホーン壁部材91cが各分離部材51の上端部に取付固定され、音響ホーン91を設けても保護膜14の振動が阻害されないため、発信素子の発信出力の低下を防止できる。
【0116】
(第8実施形態)
図10は、第8実施形態の超音波センサMにおける受信部100を示す概略縦断面図である。
第8実施形態の受信部100において、第6実施形態の受信部80と異なるのは、第7実施形態の受信部90と同様に、保護膜14の外側に音響ホーン91が設けられている点だけである。
但し、第8実施形態では、各音響ホーン91において、スロート部91aの外周のホーン壁部材91cが保護膜14上に取付固定されている。
【0117】
尚、第8実施形態の超音波センサMの構成は、図3に示す第1実施形態の超音波センサMの受信部10を受信部100に置き換えたものである。
従って、第8実施形態によれば、第6実施形態の前記作用・効果に加えて、第7実施形態の前記[7−1]の作用・効果を得ることができる。
【0118】
(第1〜第8実施形態の変更例)
ところで、第1〜第8実施形態は以下のように変更してもよく、その場合でも、上記各実施形態と同等もしくはそれ以上の作用・効果を得ることができる。
【0119】
[1]
第1〜第8実施形態の受信部10〜100は、複数個の圧電式受信素子11から構成されている。
しかし、各圧電式受信素子11をそれぞれ静電容量式受信素子111に置き換え、複数個の静電容量式受信素子111により受信部10〜100を構成してもよい。
【0120】
図11は、1個の静電容量式受信素子111を示す拡大概略縦断面図である。
基板12の表面上には絶縁層112が形成され、絶縁層112の表面上には固定電極層113が形成され、固定電極層113の表面上には間隙Pを介して可動電極層114が形成されている。
各電極層113,114の周囲には絶縁層115が形成され、絶縁層115および可動電極層114の表面(デバイス表面)は平坦化されている。
各電極層113,114にはそれぞれボンディングワイヤ28,29が接続されている。
【0121】
このように、間隙Pを設けて薄い2つの電極層113,114が対向した構造の静電容量素子Fが形成され、このMEMS技術を利用して作製された静電容量素子Fにより受信素子111が構成されている。
また、可動電極層114の表面により受信素子111の受信面111aが形成されている。
そして、超音波によって可動電極層114が振動すると各電極層113,114間の距離が変化して静電容量も変化する。そこで、各ボンディングワイヤ28,29に接続された変換回路(図示略)を用い、各電極層113,114間の静電容量の変化を電気信号に変換する。
【0122】
以上のように、複数個の静電容量式受信素子111により受信部10〜100を構成した場合でも、圧電式受信素子11により受信部10〜100を構成した場合と同様に、薄い可動電極層114の機械的強度が低い場合でも、可動電極層114の破損を防止して受信部10〜100を故障し難くすることが可能になり、丈夫な受信部10〜100を得ることができる。
【0123】
[2]
第1〜第8実施形態の発信部31は、圧電式受信素子11と同じ構造の圧電式発信素子から構成されている。
しかし、発信部31は、図10に示す静電容量式受信素子111と同じ構造の静電容量式発信素子により構成してもよく、その場合には、各電極層113,114に印加された入力信号に応じて、各電極層113,114間に静電引力が発生し、その静電引力により可動電極層114が振動して超音波を発生する。
尚、この場合、受信素子111の受信面111aは、発信素子から超音波を発信する発信面として機能する。
【0124】
[3]
第1〜第8実施形態において、基板12と収容部材13とに囲まれた空隙Rには空気が満たされている。
しかし、空隙Rに各層22〜26の過剰な振動を抑制するような材料(例えば、液体、ゾル、ゲルなど)を充填しておけば、各層22〜26が過剰に振動して破損するのを防止できる。
【0125】
[4]
第1〜第8実施形態の超音波センサMは、絶縁板材からなるセンサ基板32上にチップ部品である受信部10〜100および発信部31が取付固定されたハイブリッドICによって構成されている。
しかし、超音波センサMは、1個の基板12上に受信部10〜100と発信部31とが形成されたモノリシックICによって構成してもよく、このようにすれば超音波センサMを更に小型軽量化することができる。
その場合には、基板12上に並べて形成された複数個の受信素子11のうち任意の1個または複数個を発信部31の発信素子として機能させるようにしてもよい。
【0126】
図12は、超音波センサTを示す概略斜視図である。
超音波センサTは、1個の基板12(図12では図示略。図13〜17参照)上に受信部10、40,50,80,90,100と発信部Uとが形成されたモノリシックICと、ボンディングワイヤ28,29、センサ基板32、電極パッド33から構成されている。
そのため、超音波センサTは、超音波センサMよりも更に小型軽量化されている。
【0127】
発信部Uは1個の発信素子Wから構成され、発信素子Wは受信部10、40,50,80,90,100を構成する各受信素子11と同じ構造である。
発信素子Wから引き出された各ボンディングワイヤ28,29の先端部は、受信素子11と同様に、各電極パッド33に接続されている。
そして、受信素子11と同一構造の発信素子Wでは、受信素子11の受信面11a(図12では図示略。図13〜17参照)に該当する発信面Wa(同じく図示略)から超音波を発信する。
【0128】
尚、図12に示す例では、1個の基板12(図示略)上にて縦横方向に3個ずつ並べて形成された同一構造の9個の素子のうち、コーナー部分に配置された1個の素子を発信素子Wとして機能させ、他の8個の素子を受信素子11として機能させている。
しかし、基板12上に並べて形成された同一構造の複数個の素子のうち、任意の複数個を発信素子Wとして機能させてもよい。
【0129】
図13は、第2実施形態を超音波センサTに適用した実施例を示し、その超音波センサTの受信部40および発信部Uを示す概略縦断面図である。
【0130】
図14は、第3実施形態を超音波センサTに適用した実施例を示し、その超音波センサTの受信部50および発信部Uを示す概略縦断面図である。
【0131】
図15は、第6実施形態を超音波センサTに適用した実施例を示し、その超音波センサTの受信部80および発信部Uを示す概略縦断面図である。
【0132】
図16は、第7実施形態を超音波センサTに適用した実施例を示し、その超音波センサTの受信部90および発信部Uを示す概略縦断面図である。
【0133】
図17は、第8実施形態を超音波センサTに適用した実施例を示し、その超音波センサTの受信部100および発信部Uを示す概略縦断面図である。
【0134】
(第9実施形態)
図18は、第9実施形態の超音波センサNにおける受信部200を示す概略縦断面図である。
受信部200は、アレイ状に並べて配置された複数個の圧電式受信素子201から構成されている。尚、図18に示す例では、3個の受信素子201の概略縦断面を示す。
各受信素子201は、SOI構造の単結晶シリコン基板(単結晶シリコンチップ)202上に形成されている。
【0135】
基板202はセンサ基板32上に配置され、基板202の周囲は矩形状の枠部材203によって囲まれ、基板202の外周縁部は枠部材203の内壁部に対して適宜な方法(例えば、熱溶着法、超音波溶着法、接着剤を用いる接着法など)によって取付固定され、基板202の外周縁部と枠部材203との接続部分の気密化が図られている。
【0136】
枠部材203の下端部はセンサ基板32に対して前記適宜な方法によって取付固定され、枠部材203の下端部とセンサ基板32との接続部分の気密化が図られている。
そして、枠部材203およびセンサ基板32により、上方が開口された直方体箱状の収容部材204が形成されている。
つまり、基板202は、上方が開口された直方体箱状の収容部材204内に収容されている。
そして、各受信素子201は超音波を受信する受信面201aを収容部材204の開口部204a側に向けて配置されている。また、各受信素子201の受信面201aは同一平面上に配置されている。
【0137】
収容部材204の開口部204aには、その開口部204aを塞ぐための保護膜14が貼られている。つまり、保護膜14は各受信素子201の前面側に設けられている。
保護膜14の外周縁部は、枠部材203の内周縁部(収容部材204の開口部204aの内周縁部)に対して前記適宜な方法によって取付固定され、保護膜14の外周縁部と枠部材203との接続部分の気密化が図られている。
【0138】
保護膜14と基板202との間には空隙Sが設けられており、空隙Sには、気体,液体,ゾル,ゲルなどが充填されている。
基板202の背面側(裏面側)と収容部材204(枠部材203およびセンサ基板32)とに囲まれた空隙Rには空気が満たされている。
【0139】
図19は、1個の圧電式受信素子201を示す拡大概略縦断面図である。
基板202には、その基板202の表裏を貫通する貫通孔202aが形成されている。
基板202の背面側において、基板202の表面上には、絶縁層21、シリコン活性層22、絶縁層23がこの順番で形成されており、各層22,23は貫通孔202aの下部を塞ぐように形成されている。
【0140】
基板202の背面側において、貫通孔202aの下方(後方)に位置する絶縁層23の表面上には、下部電極層24、強誘電体(例えば、PZTなど)の薄膜層25、上部電極層26がこの順番で形成されている。
センサ基板32はプリント配線基板であり、センサ基板32の表面上には配線層205,206が形成されている。
下部電極層24と配線層205とはバンプ207によって接続され、上部電極層26と配線層206とはバンプ208によって接続されている。
尚、各バンプ207,208は、各種導電材料(ハンダ,金,銅,ニッケルなどの金属、導電性接着剤など)を用いて適宜な方法(メッキ法、スタッド法など)により形成すればよい。
【0141】
このように、強誘電体の薄膜層25を薄い2つの電極層24,26で挟設した構造の圧電素子(圧電センサ)Eが形成され、このMEMS技術を利用して作製された圧電素子Eにより受信素子201が構成されている。
また、貫通孔202aから露出したシリコン活性層22の表面により受信素子201の受信面201aが形成されている。
そして、超音波によって薄膜層25が振動すると圧電効果により電気信号が生成され、その電気信号は各電極層24,26から各バンプ207,208および各配線層205,206を介して出力される。
尚、貫通孔202aを設けるのは、各層22〜26から構成される振動板を振動させやすくするためである。
【0142】
図20は、超音波センサNを示す概略斜視図である。
超音波センサNは、受信部200、発信部209、センサ基板32を備えたハイブリッドICによって構成されている。
センサ基板32の表面上には、チップ部品である受信部200および発信部209が取付固定されている。
尚、図20に示す例では、縦横方向に3個ずつ並べて配置された9個の受信素子201から受信部200が構成されている。
【0143】
発信部209は、各受信部10〜100または受信部200のいずれかと同じ構成であり、受信素子11または受信素子201と同じ構造の1個の圧電式発信素子を備え、各電極層24,26から強誘電体の薄膜層25に印加される入力信号に応じて、薄膜層25が圧電効果により振動して超音波を発生する。
発信部209の発信素子を受信素子201と同じ構造にした場合、受信素子201の受信面201aは、発信素子から超音波を発信する発信面となる。
つまり、発信部209の発信素子は電気信号を超音波に変換して発信する
そして、外部からの入力信号に応じて発信部209が超音波を発信し、その超音波が検出対象物に反射した反射音を受信部200の各受信素子201が受信する。
つまり、受信部200の各受信素子201は受信した超音波を電気信号に変換する。
【0144】
そこで、発信部209が発信した超音波と、受信部200の各受信素子201が受信した超音波とを比較し、その音圧差,時間差,位相差を求めることにより、その各差に基づいて、検出対象物の位置測定、超音波センサNと検出対象物との距離測定、検出対象物の2次元形状または3次元形状の測定などを行うことができる。
【0145】
[第9実施形態の作用・効果]
第9実施形態によれば、第1実施形態の前記[1−1]〜[1−4]と同様の作用・効果に加えて、以下の作用・効果を得ることができる。
【0146】
[9−1]
図1〜図3に示す第1実施形態の各受信素子11では、上部電極層26の表面が受信面11aになる。
それに対して、第9実施形態の各受信素子201では、貫通孔202aの底部から露出したシリコン活性層22の表面が受信面201aになる。
つまり、第9実施形態の各受信素子201は、第1実施形態の各受信素子11の表裏面を裏返して使用していることになる。
【0147】
そして、第1実施形態では、収容部材13内に基板12が収容されてパッケージ化された受信部10をセンサ基板32上に取付固定し、受信部10を構成する各受信素子11の各電極層24,26とセンサ基板32上の各電極パッド33とを、各ボンディングワイヤ28,29によって接続している。
つまり、第1実施形態では、ワイヤボンディング接続法を用いて受信部10(各受信素子11)をセンサ基板32上に表面実装しているため、以下の[A]〜[E]の問題がある。
【0148】
[A]各ボンディングワイヤ28,29が振動により切断されるおそれがある。特に、超音波センサMを自動車に搭載する場合には、エンジンの振動や路面からの振動が超音波センサMに印加されるため、各ボンディングワイヤ28,29が切断されやすい。
【0149】
[B]受信部10をセンサ基板32上に表面実装する際の製造コストが高い。
また、発信部209の発信素子を受信素子11と同じ構造にした場合には、発信部209をセンサ基板32上に表面実装する際の製造コストが高い。
【0150】
[C]各受信素子11の受信面11aの上方に各ボンディングワイヤ28,29が張り渡された状態になるため、各ボンディングワイヤ28,29が障害物となり受信面11aへの超音波の到達が阻害され、各受信素子11の受信感度が低下するおそれがある。
そして、各受信素子11の受信面11aの上方に各ボンディングワイヤ28,29が張り渡された状態になるため、各受信素子11が受信する超音波により、各ボンディングワイヤ28,29が切断されやすい。
【0151】
また、発信部209の発信素子を受信素子11と同じ構造にした場合には、各ボンディングワイヤ28,29が障害物となり発信素子の発信面から超音波が発信されるのが阻害され、発信出力が低下するおそれがある。
そして、発信素子の発信面の上方に各ボンディングワイヤ28,29が張り渡された状態になるため、発信素子が発信する超音波により、各ボンディングワイヤ28,29が切断されやすい。
【0152】
[D]各ボンディングワイヤ28,29の長さ分だけ受信部10の信号配線のインダクタンスが大きくなるため、受信部10の生成した電気信号の伝達速度が低下する。
また、発信部209の発信素子を受信素子11と同じ構造にした場合には、各ボンディングワイヤ28,29の長さ分だけ発信部209の信号配線のインダクタンスが大きくなるため、発信部209への入力信号の伝達速度が遅くなり、発信部209の動作速度が低下する。
【0153】
[E]センサ基板32上に形成された各電極パッド33の占有面積(レイアウト面積)分だけセンサ基板32が大きくなるため、超音波センサMが大型化する。
【0154】
それに対して、第9実施形態の各受信素子201では、パッケージ化されていないベアチップ(ダイ)である基板202を裏返した状態(フェイスダウン)でセンサ基板32に直接搭載し、基板202上に形成された各受信素子201の各電極層24,26とセンサ基板32上の各配線層205,206とを、各バンプ207,208によって接続している。
つまり、第9実施形態では、フリップチップ接続法により各受信素子201をセンサ基板32上に表面実装しているため、前記[A]〜[E]の問題を解決でき、以下の[F]〜[J]の効果が得られる。
【0155】
[F]受信部200(各受信素子201)とセンサ基板32とが各バンプ207,208を介して接続固定されているため、各受信素子201とセンサ基板32との電気的接続を確実に保持可能になり、超音波センサNの信頼性を高めると共に高寿命化を図ることができる。
また、発信部209の発信素子を受信素子201と同じ構造にした場合には、発信素子とセンサ基板32との電気的接続を確実に保持可能になる。
【0156】
[G]受信部200をセンサ基板32上に表面実装する際の製造コストを低くできる。
また、発信部209の発信素子を受信素子201と同じ構造にした場合には、発信部209をセンサ基板32上に表面実装する際の製造コストを低くできる。
【0157】
[H]各受信素子201の受信面201aの上方にボンディングワイヤが張り渡されておらず、受信面201aの前面側に障害物が無いため、受信面201aへの超音波の到達が阻害されず、各受信素子11の受信感度を高めることができる。
そして、各受信素子11の受信面11aの上方にボンディングワイヤが張り渡されていないため、各受信素子11が受信する超音波により当該ボンディングワイヤが切断されることがない。
【0158】
また、発信部209の発信素子を受信素子201と同じ構造にした場合には、発信素子の発信面の上方にボンディングワイヤが張り渡されておらず、発信面の前面側に障害物が無いため、発信面からの超音波の発信が阻害されず、発信素子の発信出力を大きくすることができる。
そして、発信素子の発信面の上方にボンディングワイヤが張り渡されていないため、発信素子が発信する超音波により当該ボンディングワイヤが切断されることがない。
【0159】
[I]各ボンディングワイヤ28,29に比べて各バンプ207,208のインダクタンスは小さいため、受信部200の信号配線のインダクタンスが小さくなり、受信部200の生成した電気信号の伝達速度を速くできる。
また、発信部209の発信素子を受信素子201と同じ構造にした場合には、発信部209の信号配線のインダクタンスが小さくなるため、発信部209への入力信号の伝達速度が速くなり、発信部209の動作速度を速くできる。
【0160】
[J]センサ基板32上に各電極パッド33を設ける必要が無く、各電極パッド33の占有面積分だけセンサ基板32が小さくなるため、超音波センサNを小型軽量化できる。
【0161】
[9−2]
基板202に形成された貫通孔202aの形状を、シリコン活性層22によって閉鎖された貫通孔202aの底部から開口部に向かって横断面積が徐々に増大するように形成すれば、貫通孔202aを第7実施形態の音響ホーン91と同様の音響ホーンとして機能させることができる。尚、この場合には、貫通孔202aの底部が、音響ホーン91のスロート部91aに相当する。
【0162】
このようにすれば、各受信素子201毎に貫通孔202aからなる音響ホーンを設けることが可能になり、第7実施形態の前記[7−1]と同様に、各受信素子201に超音波の受信方向の指向性を付与することができる。
また、発信部209の発信素子を受信素子201と同じ構造にした場合には、発信素子に超音波の発信方向の指向性を付与することができる。
【0163】
そして、第9実施形態によれば、貫通孔202aの形状を適宜形成するだけで音響ホーンとして機能させることが可能であり、第7実施形態のように音響ホーン91を別部材として設ける必要がないため、第7実施形態の受信部90および発信部31に比べて、受信部200および発信部209の製造コストを低くできると共に、受信部200および発信部209を小型軽量化できる。
【0164】
(第10実施形態)
図21は、第10実施形態の超音波センサNにおける受信部220を示す概略縦断面図である。
第10実施形態の受信部220において、第9実施形態の受信部200と異なるのは、センサ基板32における各受信素子201の下方に位置する部分毎に、空隙Rと収容部材204の外部とを連通する1個または複数個(図示例では3個)の通気孔221が形成されている点だけである。
尚、第10実施形態の超音波センサNの構成は、図20に示す第9実施形態の超音波センサNの受信部200を受信部220に置き換えたものである。
【0165】
[第10実施形態の作用・効果]
第10実施形態によれば、第9実施形態の前記作用・効果に加えて、各受信素子201の受信面201aの各層22〜26の振動が阻害されないため、各受信素子201の受信感度の低下を防止できる。
【0166】
すなわち、センサ基板32に各通気孔221が設けられていない場合には、基板202と収容部材204(枠部材203およびセンサ基板32)とに囲まれた空隙Rが密閉空間となり、その密閉空間を満たす空気がバネとして作用し、各受信素子201の受信面201aの背面側に空気によるダンピング力が印加されるため、受信面201aの各層22〜26の自由な振動が阻害され、各受信素子201の受信感度が低下するおそれがある。
【0167】
それに対して、第10実施形態では、各通気孔221を空気が通過するため、各受信素子201の受信面201aの背面側に空気によるダンピング力が印加されることがなく、受信面201aの各層22〜26は自由に振動可能となる。
尚、各通気孔221の個数、配置箇所、寸法形状は、前記作用・効果が十分に得られるようにカット・アンド・トライで実験的に最適値を見つけて設定すればよい。
また、各通気孔221の通気性を阻害しないようなフィルタ材(例えば、メッシュフィルタなど)を取付固定してもよい。
【0168】
そして、発信部209を受信部220と同じ構造にし、センサ基板32における発信部209の各発信素子の下方に位置する部分毎に各通気孔221を設けた場合には、各通気孔221を空気が通過するため、発信素子の発信面の背面側に空気によるダンピング力が印加されることがなく、発信面の各層22〜26は自由に振動可能となり振動が阻害されないことから、発信素子の発信出力を大きくすることができる。
【0169】
(第11実施形態)
図22は、第11実施形態の超音波センサLにおける受信部230および発信部231を示す概略縦断面図である。
図23は、超音波センサLを示す概略斜視図である。
第11実施形態の超音波センサLにおいて、第9実施形態の超音波センサNと異なるのは、以下の点だけである。
【0170】
[ア]
超音波センサLは、1個の基板202上に受信部200と発信部231とが形成されたモノリシックICによって構成され、超音波センサNよりも更に小型軽量化されている。
発信部231は1個の発信素子232から構成され、発信素子232は受信部200を構成する各受信素子201と同じ構造である。
そして、受信素子201と同一構造の発信素子232では、受信素子201の受信面201aに該当する発信面232aから超音波を発信する。
【0171】
尚、図23に示す例では、縦横方向に3個ずつ並べて形成された同一構造の9個の素子のうち、コーナー部分に配置された1個の素子を発信素子232として機能させ、他の8個の素子を受信素子201として機能させている。
しかし、基板12上に並べて形成された同一構造の複数個の素子のうち、任意の複数個を発信素子232として機能させてもよい。
【0172】
[イ]
基板202と収容部材204(枠部材203およびセンサ基板32)とに囲まれた空隙R内には、各仕切部材233が設けられている。
各仕切部材233の下端部はセンサ基板32の上面部に対して適宜な方法(例えば、熱溶着法、超音波溶着法、接着剤を用いる接着法など)によって取付固定され、各仕切部材233の下端部とセンサ基板32との接続部分の気密化が図られている。また、各仕切部材233の上端部は基板202上の絶縁層23の下面部に対して前記適宜な方法によって取付固定され、各仕切部材233の上端部と基板202との接続部分の気密化が図られている。
そして、各仕切部材233は、空隙R内を各素子201,232毎に気密化して仕切っている。
【0173】
[ウ]
センサ基板32における各発信素子232の下方に位置する部分毎に、空隙Rと収容部材204の外部とを連通する1個または複数個(図示例では3個)の通気孔221が形成されている。
尚、センサ基板32における各受信素子201の下方に位置する部分には、通気孔221が形成されていない。
【0174】
[第11実施形態の作用・効果]
第11実施形態によれば、第9実施形態の前記作用・効果に加えて、以下の作用・効果を得ることができる。
【0175】
[11−1]
基板202と収容部材204(枠部材203およびセンサ基板32)とに囲まれた空隙Rを密閉空間にすると、その密閉空間を満たす空気がバネとして作用し、各素子201,232の各面(受信面、発信面)201a,232aの背面側に空気によるダンピング力が印加されるため、各面201a,232aの各層22〜26の自由な振動が阻害されることから、各層22〜26から構成される振動板の共振値Qが小さくなる。
【0176】
それに対して、センサ基板32に各通気孔221が設けられている場合には、各通気孔221を空気が通過するため、各素子201,232の各面201a,232aの背面側に空気によるダンピング力が印加されず、各面201a,232aの各層22〜26の自由な振動が阻害されないことから、各層22〜26から構成される振動板の共振値Qが大きくなる。
【0177】
図24は、振動板の共振値Qと周波数fの関係である共振特性を示す特性図である。
図24(A)に示すように、振動板の共振値Qのピーク値Qaが大きな値をとる場合には、ピーク値Qaに対応した1次共振周波数fa,fbを中心とする周波数fの変化に対して共振値Qが急峻な変化を示す。
図24(B)に示すように、振動板の共振値Qのピーク値Qbが小さな値をとる場合には、ピーク値Qbに対応した1次共振周波数fa,fbを中心とする周波数fの変化に対して共振値Qが緩やかな変化を示す。
【0178】
振動板の共振値Qと発信素子232の発信出力との間には正の相関関係があり、共振値Qが大きいほど発信出力が高くなる。
MEMS技術を利用して作製された圧電素子または静電容量素子は、超音波の発信出力が小さいため発信素子には不向きである。
そのため、MEMS技術を利用して作製された圧電式発信素子232は、発信出力をできるだけ高くすることが要求され、図24(A)に示す共振特性をとる必要がある。
【0179】
従って、第11実施形態によれば、センサ基板32の各通気孔221を空気が通過するため、各発信素子232の発信面232aの背面側に空気によるダンピング力が印加されることがなく、発信面232aの各層24〜26は自由に振動可能となり振動が阻害されないことから、各発信素子232を図24(A)に示す共振特性にして発信出力を大きくすることができる。
【0180】
[11−2]
振動板の共振値Qと受信素子201の受信感度との間には正の相関関係があり、共振値Qが大きいほど受信感度が高くなる。
ここで、各受信素子201には、製造プロセスに起因する1次共振周波数のバラツキがある。
【0181】
例えば、2個の受信素子201が図24(A)に示す共振特性をとり、一方の受信素子201は1次共振周波数faになり、他方の受信素子201は1次共振周波数fbになる場合には、各周波数fa,fbにおける受信感度が非常に高くなるものの、各周波数fa,fbの中間の周波数fcにおける受信感度が非常に低くなってしまう。
それに対して、2個の受信素子201が図24(B)に示す共振特性をとり、一方の受信素子201は1次共振周波数faになり、他方の受信素子201は1次共振周波数fbになる場合には、各周波数fa,fbにおける受信感度が図24(A)に比べて低くなるものの、周波数fcにおける受信感度が図24(A)に比べて高くなる。
【0182】
つまり、受信素子201の共振値Qを大きくすると、受信感度が高くなるものの、その受信感度は周波数の変化に対して急峻な特性になるため、1次共振周波数から僅かでも離れた周波数における受信感度が急激に低下する。
逆に、受信素子201の共振値Qを小さくすると、受信感度が低くなるものの、その受信感度は周波数の変化に対して緩やかな特性になるため、1次共振周波数から離れた周波数における受信感度があまり低下しない。
【0183】
MEMS技術を利用して作製された圧電素子または静電容量素子は、超音波の受信感度が高いため受信素子として好適である。
そのため、MEMS技術を利用して作製された圧電式受信素子201は、1次共振周波数における受信感度を高くすることよりも、広い周波数範囲で受信感度をできるだけ高くすることが要求され、図24(B)に示す共振特性をとる必要がある。
【0184】
従って、第11実施形態によれば、センサ基板32における各受信素子201の下方に位置する部分に通気孔221が形成されていないため、各受信素子201の受信面201aの背面側に空気によるダンピング力が印加され、受信面201aの各層24〜26の振動が阻害されることから、各受信素子201を図24(B)に示す共振特性して広い周波数範囲で受信感度をできるだけ高くすることができる。
【0185】
[11−3]
各受信素子201の下方に位置する空隙Rに各層22〜26の振動を抑制するような材料(例えば、液体、ゾル、ゲルなど)を充填することにより、空隙Rに空気が満たされている場合に比べて、各層22〜26から構成される振動板の共振値Qを小さくすることができる。
【0186】
従って、各受信素子201の下方に位置する空隙Rの充填材料を適宜選択すれば、各受信素子201の構造を変えることなく、所望の共振特性を得ることができる。
また、空隙Rに各層22〜26の過剰な振動を抑制するような材料を充填しておけば、各層22〜26が過剰に振動して破損するのを防止できる。
【0187】
尚、各受信素子201の下方に位置する空隙Rの充填材料は、前記[11−2]の作用・効果が十分に得られるようにカット・アンド・トライで実験的に最適な材料を見つければよい。
また、第1,第3,第5〜第8実施形態においても、空隙Rの充填材料を適宜選択すれば、各受信素子11の構造を変えることなく、所望の共振特性を得ることができる。
【0188】
(第12実施形態)
図25は、第12実施形態の超音波センサNにおける受信部240を示す概略縦断面図である。
第12実施形態の受信部240において、第9実施形態の受信部200と異なるのは、分離部材241が設けられている点だけである。
各分離部材241の下端部は、各受信素子201間の基板202に対して適宜な方法(例えば、熱溶着法、超音波溶着法、接着剤を用いる接着法など)によって取付固定され、各分離部材241の下端部と基板202との接続部分の気密化が図られている。
各分離部材241の上端部は、空隙Sおよび保護膜14を分離している。
【0189】
すなわち、図25に示す例では、3個の受信素子201A〜201C間の基板202に各分離部材241の下端部が取付固定されている。
そして、各受信素子201A〜201Cの上方(前方)にそれぞれ位置する各空隙SA〜SCおよび保護膜14A〜14Cは、各分離部材241によって各受信素子201A〜201C毎に分離されている。
尚、第12実施形態の超音波センサNの構成は、図20に示す第9実施形態の超音波センサNの受信部200を受信部240に置き換えたものである。
【0190】
[第12実施形態の作用・効果]
第12実施形態によれば、第9実施形態の前記作用・効果に加えて、以下の作用・効果を得ることができる。
【0191】
[12−1]
各受信素子201A〜201Cの上方(前方)に位置する空隙SA〜SCおよび保護膜14A〜14Cとは、各分離部材241によって各受信素子201A〜201C毎に分離されている。そのため、分離された1つの保護膜14Aの振動は、その保護膜14Aの下方に位置する空隙SAを介して受信素子201Aにだけ伝搬し、その他の受信素子201B,201Cには伝搬しない。
【0192】
従って、第12実施形態によれば、超音波の受信を各受信素子201A〜201C間で分離して行うことが可能になり、各受信素子201A〜201Cのクロストーク特性が悪化するのを防止できる。
尚、隣接する複数個の受信素子201を1グループとし、そのグループ毎に各分離部材241を設けて当該グループを他のグループから分離してもよい。
【0193】
[12−2]
各分離部材241は、上下方向に配置されて1グループとなる保護膜14Aおよび空隙SAの振動が、隣接する他のグループの部材(保護膜14B,14C、空隙SB,SC)へ伝搬しないように、当該振動を確実に遮断しなければならない。
そのため、各分離部材241には振動遮断性の高い材料を用いる必要があり、そのような材料として、例えば、ゴムなどがある。
【0194】
[12−3]
図26は、第12実施形態の第1変更例の超音波センサNにおける受信部240を示す概略縦断面図である。
図26に示す第1変更例において、図25に示す第12実施形態と異なるのは、センサ基板32における各受信素子201の下方に位置する部分毎に、空隙Rと収容部材204の外部とを連通する各通気孔221が形成されている点だけである。
つまり、第12実施形態の第1変更例は、第12実施形態と第10実施形態とを組み合わせたものであり、第12実施形態の前記作用・効果に加えて、第10実施形態の前記作用・効果を得ることができる。
【0195】
[12−4]
図27は、第12実施形態の第2変更例の超音波センサLにおける受信部240および発信部231を示す概略縦断面図である。
図27に示す第2変更例において、図25に示す第12実施形態と異なるのは、第11実施形態の前記[ア]〜[ウ]と同様の点だけである。
つまり、第12実施形態の第2変更例は、第12実施形態と第11実施形態とを組み合わせたものであり、第12実施形態の前記作用・効果に加えて、第11実施形態の前記作用・効果を得ることができる。
【0196】
(第13実施形態)
図28は、第13実施形態の超音波センサNにおける受信部250を示す概略縦断面図である。
第13実施形態の受信部250において、第9実施形態の受信部200と異なるのは、分離部材251が設けられている点だけである。
各分離部材251の下端部は、センサ基板32の上面部に対して適宜な方法(例えば、熱溶着法、超音波溶着法、接着剤を用いる接着法など)によって取付固定され、各分離部材251の下端部とセンサ基板32との接続部分の気密化が図られている。
各分離部材251の上端部は、空隙Sおよび保護膜14を分離している。
【0197】
すなわち、図28に示す例では、3個の受信素子201A〜201C間のセンサ基板32の上面部に各分離部材251の下端部が取付固定され、各分離部材251によって受信素子201A〜201Cが分離されている。
そして、各受信素子201A〜201Cの上方(前方)にそれぞれ位置する各空隙SA〜SCおよび保護膜14A〜14Cについても、各分離部材251によって各受信素子201A〜201C毎に分離されている。
【0198】
つまり、第9実施形態の受信部200は、1個の基板202上に受信部230の各受信素子201が形成されたモノリシックICによって構成されている。
それに対して、第13実施形態の受信部250は、センサ基板32上にチップ部品である各受信素子201が取付固定されたハイブリッドICによって構成されている。
尚、第13実施形態の超音波センサNの構成は、図20に示す第9実施形態の超音波センサNの受信部200を受信部250に置き換えたものである。
【0199】
[第13実施形態の作用・効果]
第13実施形態によれば、第9実施形態の前記作用・効果に加えて、以下の作用・効果を得ることができる。
【0200】
[13−1]
各受信素子201A〜201Cと、その受信素子201A〜201Cの上方(前方)に位置する空隙SA〜SCおよび保護膜14A〜14Cとは、各分離部材251によって各受信素子201毎に分離されている。そのため、分離された1つの保護膜14Aの振動は、その保護膜14Aの下方に位置する空隙SAを介して受信素子201Aにだけ伝搬し、その他の受信素子201B,201Cには全く伝搬しない。
【0201】
従って、第13実施形態によれば、超音波の受信を各受信素子201A〜201C間で完全に分離して行うことが可能になり、各受信素子201A〜201Cのクロストーク特性が悪化するのを防止できる。
尚、隣接する複数個の受信素子201を1グループとし、そのグループ毎に各分離部材251を設けて当該グループを他のグループから分離してもよい。
【0202】
[13−2]
各分離部材251は、上下方向に配置されて1グループとなる保護膜14A,空隙SA,受信素子201Aの振動が、隣接する他のグループの部材(保護膜14B,14C、空隙SB,SC、受信素子201B,201C)へ伝搬しないように、当該振動を確実に遮断しなければならない。
そのため、各分離部材251には振動遮断性の高い材料を用いる必要があり、そのような材料として、例えば、ゴムなどがある。
【0203】
[13−3]
図29は、第13実施形態の第1変更例の超音波センサNにおける受信部250を示す概略縦断面図である。
図29に示す第1変更例において、図28に示す第13実施形態と異なるのは、センサ基板32における各受信素子201の下方に位置する部分毎に、空隙Rと収容部材204の外部とを連通する各通気孔221が形成されている点だけである。
つまり、第13実施形態の第1変更例は、第13実施形態と第10実施形態とを組み合わせたものであり、第13実施形態の前記作用・効果に加えて、第10実施形態の前記作用・効果を得ることができる。
【0204】
[13−4]
図30は、第13実施形態の第2変更例の超音波センサLにおける受信部250および発信部231を示す概略縦断面図である。
図30に示す第2変更例において、図28に示す第13実施形態と異なるのは、超音波センサLと同様に受信部250を構成する各受信素子201の1個(受信素子201A)を発信部231を構成する発信素子232として機能させている点と、第11実施形態の前記[イ][ウ]と同様の点だけであり、分離部材251は第11実施形態の仕切部材233として機能する。
つまり、第13実施形態の第2変更例は、第13実施形態と第11実施形態とを組み合わせたものであり、第13実施形態の前記作用・効果に加えて、第11実施形態の前記作用・効果を得ることができる。
【0205】
(第14実施形態)
図31は、第14実施形態の超音波センサNにおける受信部260を示す概略縦断面図である。
第14実施形態の受信部260において、第9実施形態の受信部200と異なるのは、各受信素子201の受信面201aと保護膜14とを、各受信素子201毎に独立して連結する柱状の伝達部材261が空隙S内に設けられている点だけである。
尚、第14実施形態の超音波センサNの構成は、図20に示す第9実施形態の超音波センサNの受信部200を受信部260に置き換えたものである。
【0206】
[第14実施形態の作用・効果]
第14実施形態によれば、第9実施形態の前記[9−1]の作用・効果に加えて、以下の作用・効果を得ることができる。
【0207】
[14−1]
超音波によって保護膜14が振動すると、その保護膜14の振動は各伝達部材261を介して各受信素子201へ伝搬される。
ここで、各伝達部材261は各受信素子201毎に設けられているため、任意の伝達部材261の振動が他の伝達部材261に伝搬することはなく、超音波の受信を各受信素子201間で分離して行うことが可能になり、各受信素子201のクロストーク特性が悪化するのを防止できる。
【0208】
そして、各伝達部材261の音響インピーダンスを保護膜14の音響インピーダンスに近づけることにより、保護膜14の振動を各伝達部材261へ確実に伝搬させることが可能になり、各受信素子201の受信感度を高めることができる。
また、各伝達部材261の音響インピーダンスを各受信素子201のシリコン活性層22の音響インピーダンスに近づけることにより、各伝達部材261の振動をシリコン活性層22へ確実に伝搬させることが可能になり、各受信素子201の受信感度を高めることができる。
従って、伝達部材261は、保護膜14またはシリコン活性層22と同一材料で形成することが望ましい。
【0209】
そして、発信部209を受信部260と同じ構造にし、発信素子の発信面と保護膜14とを連結する伝達部材261を設けた場合には、伝達部材261の音響インピーダンスを保護膜14の音響インピーダンスに近づけることにより、伝達部材261の振動を保護膜14へ確実に伝搬させることが可能になり、発信素子の発信出力を大きくすることができる。
また、伝達部材261の音響インピーダンスを発信素子のシリコン活性層22の音響インピーダンスに近づけることにより、発信素子のシリコン活性層22の振動を伝達部材261へ確実に伝搬させることが可能になり、発信素子の発信出力を大きくすることができる。
つまり、第14実施形態によれば、第6実施形態の前記[6−1]と同様の作用・効果が得られる。
【0210】
[14−2]
各受信素子201のクロストーク特性の悪化を防止するには、任意の伝達部材261の振動が空隙Sの充填材料を介して他の伝達部材261に伝搬しないようにする必要がある。
従って、第14実施形態では、空隙Sを真空状態にするのが最も望ましい。
第14実施形態において、空隙Sに充填材料を充填する場合には、その充填材料として、音響インピーダンスが小さな気体を用いるか、振動吸収性の高い材料(例えば、粘性の高いゲルなど)を用いればよい。
つまり、第14実施形態によれば、第6実施形態の前記[6−2]と同様の作用・効果が得られる。
【0211】
[14−3]
図32は、第14実施形態の第1変更例の超音波センサNにおける受信部260を示す概略縦断面図である。
図32に示す第1変更例において、図31に示す第14実施形態と異なるのは、センサ基板32における各受信素子201の下方に位置する部分毎に、空隙Rと収容部材204の外部とを連通する各通気孔221が形成されている点だけである。
つまり、第14実施形態の第1変更例は、第14実施形態と第10実施形態とを組み合わせたものであり、第14実施形態の前記作用・効果に加えて、第10実施形態の前記作用・効果を得ることができる。
【0212】
[14−4]
図33は、第14実施形態の第2変更例の超音波センサLにおける受信部260および発信部231を示す概略縦断面図である。
図33に示す第2変更例において、図31に示す第14実施形態と異なるのは、第11実施形態の前記[ア]〜[ウ]と同様の点だけである。
つまり、第14実施形態の第2変更例は、第14実施形態と第11実施形態とを組み合わせたものであり、第14実施形態の前記作用・効果に加えて、第11実施形態の前記作用・効果を得ることができる。
【0213】
(第9〜第14実施形態の変更例)
ところで、第9〜第14実施形態は以下のように変更してもよく、その場合でも、上記各実施形態と同等もしくはそれ以上の作用・効果を得ることができる。
【0214】
[1]
第9〜第14実施形態の受信部200〜260は、複数個の圧電式受信素子201から構成されている。
しかし、各圧電式受信素子201をそれぞれ静電容量式受信素子271に置き換え、複数個の静電容量式受信素子271により受信部200〜260を構成してもよい。
【0215】
図38は、1個の静電容量式受信素子271を示す拡大概略縦断面図である。
基板202には、その基板202の表裏を貫通する貫通孔202aが形成されている。
基板202の背面側において、基板202の表面上には絶縁層272が形成され、絶縁層272は貫通孔202aの下部を塞ぐように形成されている。
基板202の背面側において、貫通孔202aの下方(後方)に位置する絶縁層272の表面上には固定電極層273が形成され、固定電極層273の表面上には間隙Pを介して可動電極層274が形成されている。
各電極層273,274の周縁部間にはスペーサ275が挟設され、各電極層273,274はスペーサ275を介して接続固定されている。
【0216】
センサ基板32の表面上には配線層205,206が形成されている。
固定電極層273と配線層205とはバンプ207によって接続され、可動電極層274と配線層206とはバンプ208によって接続されている。
【0217】
このように、間隙Pを設けて薄い2つの電極層273,274が対向した構造の静電容量素子Fが形成され、このMEMS技術を利用して作製された静電容量素子Fにより受信素子271が構成されている。
また、貫通孔202aの底部から露出した絶縁層272の表面により受信素子271の受信面272aが形成されている。
そして、超音波によって可動電極層274が振動すると各電極層273,274間の距離が変化して静電容量も変化する。そこで、各配線層205,206に接続された変換回路(図示略)を用い、各電極層273,274間の静電容量の変化を電気信号に変換する。
【0218】
以上のように、複数個の静電容量式受信素子271により受信部200〜260を構成した場合でも、圧電式受信素子201により受信部200〜260を構成した場合と同様に、薄い可動電極層274の機械的強度が低い場合でも、可動電極層274の破損を防止して受信部200〜260を故障し難くすることが可能になり、丈夫な受信部200〜260を得ることができる。
【0219】
[2]
第9〜第14実施形態の発信部209,231は、圧電式受信素子201と同じ構造の圧電式発信素子から構成されている。
しかし、発信部209,231は、図38に示す静電容量式受信素子271と同じ構造の静電容量式発信素子により構成してもよく、その場合には、各電極層273,274に印加された入力信号に応じて、各電極層273,274間に静電引力が発生し、その静電引力により可動電極層274が振動して超音波を発生する。
尚、この場合、受信素子271の受信面271aは、発信素子から超音波を発信する発信面として機能する。
【0220】
[3]
第14実施形態において、保護膜14を省くと共に、伝達部材261を第2実施形態の保護部材41と同様の保護部材に置き換えてもよい。
このようにすれば、第2実施形態と同様の作用・効果を得ることができる。
【0221】
[4]
第9,10,12,14実施形態および第12,14実施形態の第1変更例の超音波センサNは、絶縁板材からなるセンサ基板32上にチップ部品である受信部200,220,240,260および発信部209が取付固定されたハイブリッドICによって構成されている。
しかし、第9,10,12,14実施形態および第12,14実施形態の第1変更例の超音波センサNについても、図23に示す超音波センサLのように、1個の基板202上に受信部200,220,240,260と発信部231とが形成されたモノリシックICによって構成してもよい。
【0222】
また、第13実施形態および第13実施形態の第1変更例の超音波センサNについても、第13実施形態の第2変更例の超音波センサLのように、受信部250を構成する受信素子201のうち任意の1個または複数個を、発信部231を構成する発信素子232として機能させるようにしてもよい。
【0223】
図35は、第9実施形態を超音波センサLに適用した実施例を示し、その超音波センサLの受信部200および発信部231を示す概略縦断面図である。
この実施例において、第9実施形態と異なるのは、第11実施形態の前記[ア]と同様の点だけである。
【0224】
図36は、第12実施形態を超音波センサLに適用した実施例を示し、その超音波センサLの受信部240および発信部231を示す概略縦断面図である。
この実施例において、第12実施形態と異なるのは、第11実施形態の前記[ア]と同様の点だけである。
【0225】
図37は、第13実施形態を超音波センサLに適用した実施例を示し、その超音波センサLの受信部250および発信部231を示す概略縦断面図である。
この実施例において、第13実施形態と異なるのは、 受信部250を構成する各受信素子201の1個(受信素子201A)を、発信部231を構成する発信素子232として機能させている点だけである。
【0226】
図38は、第14実施形態を超音波センサLに適用した実施例を示し、その超音波センサLの受信部260および発信部231を示す概略縦断面図である。
この実施例において、第14実施形態と異なるのは、第11実施形態の前記[ア]と同様の点だけである。
【0227】
(別の実施形態)
ところで、本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、以下のように具体化してもよく、その場合でも、上記各実施形態と同等もしくはそれ以上の作用・効果を得ることができる。
【0228】
[1]
発信部31,209,231については、既存の小型超音波センサを使用してもよい。
MEMS技術を利用して作製された圧電素子または静電容量素子は、超音波の受信感度が高いため受信素子としては好適であるものの、超音波の発信出力が小さいため発信素子には不向きである。
そのため、超音波センサMの使用分野に応じて、最適な形式の発信部31,209,231を選択使用すればよい。
【0229】
[2]
上記各実施形態を適宜組み合わせて実施してもよく、その場合は組み合わせの相乗作用により上記各実施形態の効果を更に高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0230】
【図1】本発明を具体化した第1実施形態の超音波センサMにおける受信部10を示す概略縦断面図。
【図2】受信部10を構成する1個の圧電式受信素子11を示す拡大概略縦断面図。
【図3】超音波センサMを示す概略斜視図。
【図4】本発明を具体化した第2実施形態の超音波センサMにおける受信部40を示す概略縦断面図。
【図5】本発明を具体化した第3実施形態の超音波センサMにおける受信部50を示す概略縦断面図。
【図6】本発明を具体化した第4実施形態の超音波センサMにおける受信部60を示す概略縦断面図。
【図7】本発明を具体化した第5実施形態の超音波センサMにおける受信部70を示す概略縦断面図。
【図8】本発明を具体化した第6実施形態の超音波センサMにおける受信部80を示す概略縦断面図。
【図9】本発明を具体化した第7実施形態の超音波センサMにおける受信部90を示す概略縦断面図。
【図10】本発明を具体化した第8実施形態の超音波センサMにおける受信部100を示す概略縦断面図。
【図11】受信部10〜100を構成する1個の静電容量式受信素子111を示す拡大概略縦断面図。
【図12】超音波センサTを示す概略斜視図。
【図13】第2実施形態を超音波センサTに適用した実施例を示し、その超音波センサTの受信部40および発信部Uを示す概略縦断面図。
【図14】第3実施形態を超音波センサTに適用した実施例を示し、その超音波センサTの受信部50および発信部Uを示す概略縦断面図。
【図15】第6実施形態を超音波センサTに適用した実施例を示し、その超音波センサTの受信部80および発信部Uを示す概略縦断面図。
【図16】第7実施形態を超音波センサTに適用した実施例を示し、その超音波センサTの受信部90および発信部Uを示す概略縦断面図。
【図17】第8実施形態を超音波センサTに適用した実施例を示し、その超音波センサTの受信部100および発信部Uを示す概略縦断面図。
【図18】本発明を具体化した第9実施形態の超音波センサNにおける受信部200を示す概略縦断面図。
【図19】受信部200を構成する1個の圧電式受信素子201を示す拡大概略縦断面図。
【図20】超音波センサNを示す概略斜視図。
【図21】本発明を具体化した第10実施形態の超音波センサNにおける受信部220を示す概略縦断面図。
【図22】本発明を具体化した第11実施形態の超音波センサLにおける受信部230および発信部231を示す概略縦断面図。
【図23】超音波センサLを示す概略斜視図。
【図24】振動板の共振値Qと周波数fの関係である共振特性を示す特性図。
【図25】本発明を具体化した第12実施形態の超音波センサNにおける受信部240を示す概略縦断面図。
【図26】第12実施形態の第1変更例の超音波センサNにおける受信部240を示す概略縦断面図。
【図27】第12実施形態の第2変更例の超音波センサLにおける受信部240および発信部231を示す概略縦断面図。
【図28】本発明を具体化した第13実施形態の超音波センサNにおける受信部250を示す概略縦断面図。
【図29】第13実施形態の第1変更例の超音波センサNにおける受信部250を示す概略縦断面図。
【図30】第13実施形態の第2変更例の超音波センサLにおける受信部250および発信部231を示す概略縦断面図。
【図31】本発明を具体化した第14実施形態の超音波センサNにおける受信部260を示す概略縦断面図。
【図32】第14実施形態の第1変更例の超音波センサNにおける受信部260を示す概略縦断面図。
【図33】第14実施形態の第2変更例の超音波センサLにおける受信部260および発信部231を示す概略縦断面図。
【図34】受信部200〜260を構成する1個の静電容量式受信素子271を示す拡大概略縦断面図。
【図35】第9実施形態を超音波センサLに適用した実施例を示し、その超音波センサLの受信部200および発信部231を示す概略縦断面図。
【図36】第12実施形態を超音波センサLに適用した実施例を示し、その超音波センサLの受信部240および発信部231を示す概略縦断面図。
【図37】第13実施形態を超音波センサLに適用した実施例を示し、その超音波センサLの受信部250および発信部231を示す概略縦断面図。
【図38】第14実施形態を超音波センサLに適用した実施例を示し、その超音波センサLの受信部260および発信部231を示す概略縦断面図。
【符号の説明】
【0231】
10,40,50,60,70,80,90,100、200,210,220,230,240,250,260…受信部
11,111,201,271…受信素子
11a,111a,201a,271a…受信面
12,202…単結晶シリコン基板
13,204…収容部材
14…保護膜
28,29…ボンディングワイヤ
31,209,231,U…発信部
41…保護部材
51,241,251…分離部材
52…分離溝
61,71,221…通気孔
81,261…伝達部材
91(91A〜91C)…音響ホーン
203…枠部材
205,206…配線層
207,208…バンプ
232,W…発信素子
232a,Wa…発信面
233…仕切部材
E…圧電素子
F…静電容量素子
M,T,N,L…超音波センサ
S…第1空隙
R…第2空隙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信した超音波を電気信号に変換するか又は電気信号を超音波に変換して発信する複数個の変換手段と、
その複数個の変換手段は並べて配置されていることと、
前記各変換手段を保護するための保護手段と
を備えたことを特徴とする超音波センサ。
【請求項2】
請求項1に記載の超音波センサにおいて、
前記保護手段は、
前記各変換手段の前面側に設けられた保護膜と、
その保護膜と変換手段との間に設けられた第1空隙と
を備えたことを特徴とする超音波センサ。
【請求項3】
請求項2に記載の超音波センサにおいて、
前記第1空隙には、液体、ゾル、ゲルのいずれかの充填材料が充填されていることを特徴とする超音波センサ。
【請求項4】
請求項3に記載の超音波センサにおいて、
前記第1空隙と外部とを連通する通気孔を備えたことを特徴とする超音波センサ。
【請求項5】
請求項2〜4のいずれか1項に記載の超音波センサにおいて、
前記各変換手段と当該変換手段の前方に位置する前記第1空隙および前記保護膜とを、前記各変換手段毎に分離する分離手段を備えたことを特徴とする超音波センサ。
【請求項6】
請求項2〜5のいずれか1項に記載の超音波センサにおいて、
前記各変換手段を収容する収容部材と、
その収容部材と前記各変換手段とに囲まれた第2空隙と、
その第2空隙と外部とを連通する通気孔と
を備えたことを特徴とする超音波センサ。
【請求項7】
請求項6に記載の超音波センサにおいて、
前記各変換手段は、電気信号を超音波に変換して発信する発信素子であることを特徴とする超音波センサ。
【請求項8】
請求項2〜5のいずれか1項に記載の超音波センサにおいて、
前記各変換手段を収容する収容部材と、
その収容部材と前記各変換手段とに囲まれた密閉空間である第2空隙と
を備えたことを特徴とする超音波センサ。
【請求項9】
請求項8に記載の超音波センサにおいて、
前記第2空隙には、液体、ゾル、ゲルのいずれかの充填材料が充填されていることを特徴とする超音波センサ。
【請求項10】
請求項8または請求項9に記載の超音波センサにおいて、
前記各変換手段は、受信した超音波を電気信号に変換する受信素子であることを特徴とする超音波センサ。
【請求項11】
請求項2〜10のいずれか1項に記載の超音波センサにおいて、
前記各変換手段と前記保護膜とを、前記各変換手段毎に独立して連結する伝達部材を備えたことを特徴とする超音波センサ。
【請求項12】
請求項1に記載の超音波センサにおいて、
前記保護手段は、前記各変換手段の前面側に取付固定された保護部材からなり、
その保護部材は前記各変換手段毎に設けられ、各保護部材の間には間隙が設けられ、その間隙により各保護部材は前記各変換手段毎に分離されていることを特徴とする超音波センサ。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の超音波センサにおいて、
前記各変換手段の前面側に設けられた音響ホーンを備え、
その音響ホーンは、前記各変換手段毎に設けられ、前記各変換手段の前面側に配置されたスロート部から開口部に向かって横断面積が徐々に増大することを特徴とする超音波センサ。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか1項に記載の超音波センサにおいて、
前記各変換手段は半導体基板の表面上に形成され、
その半導体基板の表面側を、前記各変換手段の前面側として超音波の受信面または発信面とし、
当該半導体基板の表面側にはボンディングワイヤが接続され、
そのボンディングワイヤを介したワイヤボンディング接続法を用いて前記各変換手段をセンサ基板に表面実装したことを特徴とする超音波センサ。
【請求項15】
請求項1〜13のいずれか1項に記載の超音波センサにおいて、
前記各変換手段は半導体基板の表面上に形成され、
その半導体基板の裏面側を、前記各変換手段の前面側として超音波の受信面または発信面とし、
当該半導体基板の表面側にはバンプが接続され、
そのバンプを介したフリップチップ接続法を用いて前記各変換手段をセンサ基板に表面実装したことを特徴とする超音波センサ。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか1項に記載の超音波センサにおいて、
前記変換手段は、圧電式または静電容量式であることを特徴とする超音波センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【公開番号】特開2006−94459(P2006−94459A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−42449(P2005−42449)
【出願日】平成17年2月18日(2005.2.18)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【出願人】(000004695)株式会社日本自動車部品総合研究所 (1,981)
【Fターム(参考)】